9. 研究結果(2/10)ー調査1
直接的問題(4種類)Type 1~Type 4
Type 1: 下線部説明
(例)【鳥取県】下線部③について、ニックがこのような様子になったのはなぜですか。その理由を、そ
れまでのニックのチームメイトに対する態度をふまえて、45字以内の日本語で答えなさい(旺文社,
2022, p. 219)。
Type 2: 特定部分の内容説明
(例)【埼玉県】本文1で、Ayakoは、自分たちの考えを他の部員たちに伝えようとするのはなぜだと述
べていますか。日本語で書きなさい(旺文社, 2022, p. 102)。
Type 3: 概要説明
(例)【青森県】次の文章は、ミホのスピーチの内容に関する生徒のメモです。スピーチの内容と合う
ように、( ア )~( ウ )に入る最も適切な日本語をそれぞれ書きなさい(旺文社, 2022, p. 75)。
Type 4: 図表等への日本語挿入
(例)【山形県】表中のX~Zには、カナダ、イタリア、オーストラリアのいずれかの国名が入ります。対
話の内容に即して、X~Zのそれぞれにあてはまる国名を、日本語で書きなさい(旺文社, 2022, p. 87)。
9
10. 研究結果(3/10)ー調査1
間接的問題(5種類)Type 5~Type 9
Type 5: 下線部説明の選択
(例)【北海道】下線部において行ったこととして、最も適当なものを、ア~エから選びなさい(旺
文社, 2022, p. 73)。
Type 6: 特定部分の内容説明の選択
(例)【奈良県】他のメンバーとの話し合いを通して、Tatsuyaの意見はどのように変わったと考え
られるか。最も適切なものを、次のア~エから1つ選び、その記号を書け(旺文社, 2022, p. 212)。
Type 7: 単語和訳の選択
(例)【秋田県】下線部perspectiveの意味として最も適切なものを、本文の内容から判断して、次
のア~エから1つ選んで記号を書きなさい(旺文社, 2022, p. 85)。
10
11. 研究結果(4/10)ー調査1
間接的問題(5種類)
Type 8: 図表等の選択
(例)【鹿児島県】下線部This graphとして最も適当なものを下のア~エの中から一つ選び、その
記号を書け(旺文社, 2022, p. 266)。
Type 9: 図表等に挿入する日本語選択
(例)【愛媛県】対話文の内容に合うように、Graph AやGraph Bの(a)、 (b)、 (X)、 (Y)にそれぞ
れ当てはまる最も適当なものの組み合わせを、次のア~エの中から一つ選び、その記号を書け
(旺文社, 2022, p. 240)。
11
15. 研究結果(8/10)ー調査2
グループ3の県のメディエーション問題の出題傾向(例1)
宮崎県
15
2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022
Type 1
Type 7
文和訳
Type 1
Type 5
要約
文章タイプ選択
Type 1
Type 8
並べ替え
Type 1
Type 2
Type 8
Type 1 Type 1
Type 9
出題なし Type 1 Type 9 出題なし
2014年の要約(直接的問題)・・・英語の文章を日本語で要約する(30字以内)。
2014年の文章タイプ選択(間接的問題)・・・英語の文章の種類について、日本語の選択肢から選ぶ。
2015年の並べ替え(間接的問題)・・・イベントの実施順について、日本語の選択肢を並べ替える。
18. 考察(1/8)
メディエーション問題は、生徒の読解力とメディエーション能力を測る問題である。
イギリスのGeneral Certificate of Secondary Education (中等教育修了資格試験)では以下が
出題されることになっている。
translate in writing short sentences or texts, from the language to English and vice versa, using a
range of the vocabulary and grammar specified for each tier (Department for Education, 2022, p.
4).
(各レベルで明記されている語彙や文法を用いて、短い文や文章を目標言語から英語に及び英
語から目標言語に書面で訳す。)
上記問題が出題されるのは、外国語の指導内容として、key stage 3(Year 7 – 9; 11歳~14歳)
(日本の小学6年~中学2年)で訳の活動を通して読解力を育成することが国のカリキュラムに
明示されているからである(Department for Education, 2013, pp. 2-3)。
Year 10 からYear 11を通して、選択した外国語の科目の試験準備を行い、Year 11の終わりに
試験を受ける。
18
19. 考察(2/8)
直接的・間接的問題を含めたメディエーション問題は、複言語主義に基づく参照枠(Council of
Europe, 2020)で育成しようとしているメディエーション能力を測る問題でもある。
下記4つの問題タイプは、CEFRのRelaying specific information(特定の情報を伝える)能力を測る。
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Type 1, Type 2,
Type 5, Type 6
●下線部説明や特定部分の内容説明を日本語で求める問題
→ Relaying specific information (Council of Europe, 2020, pp. 93- 95)
A2レベルの活動:「A言語で書かれたテクストが具体的かつ馴染みのあ
るテーマで、簡潔な日常言語で構成されていれば、短く簡潔な情報テク
ストに記載されている特定の情報をB言語で伝えることができる」
(Council of Europe, 2020, p. 95)。
●下線部説明の中の字数制限を課している問題は、日本語での要約
力も求められるため、Processing text (Council of Europe, 2020, pp. 98-
101)の技能であると考える。
20. 考察(3/8)
Type 3の問題は、CEFRのprocessing text(テクストを要約する)能力を測る。
20
Type 3 ●文章(英語でのスピーチ原稿)の内容について、要点をまとめる問題
→ Processing text (Council of Europe, 2020, pp. 98-101)
A2レベルの活動:「A言語で書かれた短く簡潔なテクストが、具体的か
つ馴染みのあるテーマで簡潔な日常言語のみ含まれていれば、そのテ
クストに含まれている関連のある情報について、要点を箇条書きでB言
語でまとめることができる」(Council of Europe, 2020, p. 101)。
21. 考察(4/8)
Type 7の問題は、CEFRのTranslating a written text(文章を訳す)能力に関連している。
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Type 7 ●下線部の英単語の日本語の意味を選ぶ問題
→ Translating a written text (Council of Europe, 2020, pp. 102-104)
A1レベルの活動:「辞書があれば、簡潔な単語・標識及び句を(A言語
からB言語に)訳すことができる。しかしながら、いつも適切な意味を選
ぶとは限らない」(Council of Europe, 2020, p. 104)。
Type 7の問題は、A2レベル以上のレベルでの文章を訳す活動に必要な
基礎的な能力であると言える。
22. 考察(5/8)
下記3つの問題タイプは、CEFRのexplaining data(図表等のデータを説明する)能力を身につ
けるために必要な力である。
22
Type 4, Type 8,
Type 9
●日本語で示された図表等に適切な日本語を挿入又は選択する問題。本文の
内容に合う図表等を選択する問題。
→ Explaining data (Council of Europe, 2020, pp. 96-97)
A2レベルの活動:「ためらい、出だしの失敗及び言い直しは顕著であるが、(A
言語の原文の中で示されている)馴染みのあるテーマについての簡潔な図表
等(例 天気図、基本的なフローチャート)を、B言語で解釈したり描写したりする
ことができる」(Council of Europe, 2020, p. 97)。
CEFRでは、口頭で伝える活動においてA2レベルの活動から、書面で伝える活
動においてはB1レベルの活動から示されているが、高校入試で出題されてい
る上記問題は、A2レベルの活動を行う際に必要となる基礎力を測ると考える。
23. 考察(6/8)
海外の学校外国語教育では、学習者の将来の言語使用を基に、メディエーション活動を取り
入れている。
例1:イスラエルの外国語としての学校英語教育(Ministry of Education, 2020a)
2020年に改訂されたイスラエルのカリキュラムは、CEFR(Council of Europe, 2018, 2020)の受
容・産出・やり取り・メディエーションのコミュニケーション言語活動を取り入れた、小学校から高
等学校までの統一した外国語目標及び活動を提示している。
CEFRの記述子を参考に、イスラエル独自のcan-do statementsを作成・提示している。
メディエーション活動の例:「A言語で書かれた簡潔な情報テクストの中の特定の情報を、B言
語で書面で伝えることができる」(Ministry of Education, 2020b, p. 8)。この活動を行う能力は、
中等教育修了資格(バグルート)を得るために必要となる。
複言語・複文化能力を育成する観点から、教室内における学習者の母語や方言等の使用を
認めている。
児童生徒を言語使用者(language users)とみなし、イスラエルの人々にとって実生活で使える
言語能力を育成することが必要であると述べている。
23
26. 引用文献(1/2)
26
Australian Curriculum, Assessment and Reporting Authority (ACARA). (2022a). Languages: About the learning area.
https://v9.australiancurriculum.edu.au/downloads/learning-areas#accordion-4f750b9a53-item-c71c0ed634
Australian Curriculum, Assessment and Reporting Authority (ACARA). (2022b). French: F-10 sequence curriculum content.
https://v9.australiancurriculum.edu.au/downloads/learning-areas#accordion-4f750b9a53-item-c71c0ed634
Council of Europe. (2018). Common European framework of reference for languages: Learning, teaching, assessment –
companion volume with new descriptors. https://rm.coe.int/cefr-companion-volume-with-new-descriptors-2018/1680787989
Council of Europe. (2020). Common European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching, assessment – companion volume.
https://rm.coe.int/common-european-framework-of-reference-for-languages-learning-teaching/16809ea0d4
Department for Education. (2013). Languages programmes of study: Key stage 3.
https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/239083/SECON
DARY_national_curriculum_-_Languages.pdf
Department for Education. (2022). French, German and Spanish: GCSE subject content.
https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/1076402/FGS_subject_content_0
9_05_2022.pdf
Lambert, C. (2010). A task-based needs analysis: Putting principles into practice. Language Teaching Research, 14, 99-112.
https://doi.org/10.1177/1362168809346520
Ministry of Education. (2020a). English curriculum 2020.
https://meyda.education.gov.il/files/Mazkirut_Pedagogit/English/Curriculum2020.pdf
Ministry of Education. (2020b). Can-do’s – basic user II – A2.
https://meyda.education.gov.il/files/Mazkirut_Pedagogit/English/CurriculumFilesAugust21/candosA2.pdf
Naimushin, B. (2002). Translation in foreign language teaching: The fifth skill. Modern English Teacher, 11(4), 46-49.
https://www.researchgate.net/publication/251571194_Translation_in_Foreign_Language_Teaching_The_Fifth_Skill
North, B., & Piccardo, E. (2016). Developing illustrative descriptors of aspects of mediation. Education Policy Division, Council of Europe.
https://rm.coe.int/168073ff31