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病院外観・内観から見える理想的な病院像の提案
~主成分分析およびコンジョイント分析から導き出されるモノ~
慶應義塾大学大学院 健康マネジメント研究科 医療マネジメント専修
神戸 翼
要旨:日本の医療制度の特徴の一つとして、フリーアクセスがある。これは患者の意向で好きな医療機関
の受診が可能となるシステムであり、そこには病院間にて僅かながらの競争が垣間見える。昨今では医療
機関はより多くの患者を獲得するために、患者満足度を上昇させるべく独自の戦略を駆使し、差別化を図
っている。しかしながら、その状況はとても容易とは言い切れない状況がある。そこで、本研究では差別
化の策として、アメリカやイギリスを中心に広まってきている医療機関へのアートやネイチャーの導入を
テーマに、施設の有り方を検討し、理想の病院像を創造、提案する事を目的とする。
一般人を対象にアンケート調査を行い、そのデータを基に、主成分分析、選好回帰分析、コンジョイン
ト分析を実施した。その結果、理想的な病院像として、「外観は角ばっている」「外観は芸術性がある」「内
観の芸術性は必要ない」「植物などの自然の活用」「天井が高い空間作り」「窓は自然光のために最大化」「壁
などのベースは白色」の 7 つの要件が導き出され、その妥当性を確認するための調査では、8 割以上の人が
受療行動に対して肯定的な回答を得るに至った。
キーワード:病院建築、医療機関と芸術、医療機関と自然、主成分分析、選考回帰分析、コンジョイント
分析
Proposal of an ideal hospital based on an image of the hospital appearance and introspection
〜The finding of Principal component analysis and Conjoint analysis〜
Graduate School of Health Management, Keio University
Tsubasa Kambe
Abstract: There is free access as one of the features of the Japanese medical care system. This is the system that it becomes
possible to visit the medical agency I like for patient's will, and the competition which is slightly in hospital time can peep
there. I'm using an original strategy and am planning for differentiation to make patient satisfaction rise for a medical
agency to get more patients in these days. However, there is a situation that you can't declare its situation to be very easy.
So I have for my object to consider a way to the facilities with the theme of the introduction of art and nature to the medical
agency spreading centering on United States and United Kingdom as a plan of differentiation by this research, create an
ideal hospital image and propose.A questionnaire survey was performed targeted for the general public and the main
ingredient analysis, a picky regression analysis and a conjoint analysis were put into effect based on the data. As a result, 7
"for the outward appearance, angular" "There is art for the outward appearance." "The artistry of the introspection isn't
necessary." "natural utilization of a plant" important matters of "high-ceilinged space making" "A window is maximized for
natural light." "The base on a wall is white." are derived as an ideal hospital image, and more than 80 percent of person is
affirmative to juryou behavior by the investigation to confirm its validity, an answer, I get it, I came.
Keywords: Architecture of Medical center, Medical center with art, Medical center with nature, Principal component
analysis, Preference recurrence analysis, Conjoint analysis
2
1. はじめに
1.1 研究の背景と意義
日本の医療制度の特徴の一つとして、フリーアクセ
スがある。これは患者の意向で患者自らが好みの医療
機関を選択し、受診が可能なシステムである。日本に
おいては、第 2 次世界大戦後、公衆衛生の向上を目的
に、医療機関の絶対数を増やし、また国民皆保険を実
現するという国策を実行することで、医療の提供体制
が整備されてきた。そして、この過程にてフリーアク
セスと言う日本の医療の特徴的システムが確立して
いった。しかしながら、現在フリーアクセスは患者の
受療行動を加速させることによって、医療費の高騰を
招いたとも言われており、その仕組みの是非について
は、専門家によって意見が異なる。加えて、患者の意
志による医療機関の選択は、医療機関同士の競争を招
く要因にもなっている。日本は他の先進国に比べ、医
療機関数が多いという背景から、医療政策として医療
機関数を縮小する動きも確認されており、このような
背景から、医療機関は患者を集めるための施策を投じ
る必要性、そして医療機関の経営を再度考える時期に
立たされていると考えられる。そこで、本研究では他
の医療機関との差別化の策として、アメリカやイギリ
スを中心に広まってきている医療と Art(芸術)、医療
と Nature(自然)の融合をテーマに、医療機関の構造
に Art や Nature を取り入れることは、患者の受療行
動に影響を与えるか否かを検討したい。そして、理想
の病院において構造的に必要な要素を分析し、実現可
能な範囲にて理想の病院像を創造、提案する事を目的
とする。
1.2 概念図
病院の顧客として最初に考えるべきは患者である。
そして、理想的な病院を作り上げるためには、患者満
足度を考える必要がある。患者満足度は病院が提供す
る医療サービスが齎す治療結果と患者自身の精神的
な安心感に付随するものと考えることができ、そのた
めにも医療サービスの質を検討することが、理想の病
院を考える際に重要である。
Donabedian 1) 2) によると医療の質については、
Structure(構造)、Process(過程)、Outcome(結果)
の 3 段階から評価され、其々の段階に影響を与える構
成要素を分析する事で、病院としての戦略に繋げるこ
とが可能であるとされている。本研究においては、病
院の構造的視点としての『建物外観』と『建物内観』
から、「理想の病院像」へと結びつけるべく、次に示
す概念図を作成し、分析結果への体系付けを行ってい
る。(図 1.1)
図 1.1 概念図(理想の病院)
1.3 特性要因図
患者満足度の向上は受診者の再来院を促し、また未
受診者については、評判などに基づき来院を促す効果
があると考えられる。それと伴に、患者満足度が高い
病院が理想の病院であるという前提を置くと、「受療
行動」と「受療行動に影響を与える要因」を分析する
ことで、理想の病院像の提案に繋げることが可能だと
考えられる。そこで、本研究では受療行動に影響を与
える要因として「ストラクチャ」「プロセス」「アウト
カム」の中でも、「ストラクチャ」に焦点を当ててい
る。そして、施設の構造を『建物内観』と『建物外観』
に分け、これらの観点から構成要素を抽出し分析を行
っている。下記に今回検討した特性要因図を示す。(図
1.2)
3
図 1.2 特性要因図
2. 先行研究、関連文献
聖路加国際病院理事長を務める日野原氏は、特別顧
問を務める近江八幡市民病院整備運営事業に関する
著書 (2006)3)において、「理想の病院とは、患者さん
が『ありがとう』の言葉を残して退院し、または尊厳
をもって人生の幕が閉じられる癒しの場である」と述
べ、また「木を植え、花を咲かせて環境を整備するな
どの建物だけでなく敷地全体の環境も大切であり、美
しい環境は癒す力を持っている」と、病院環境として、
敷地や建物などの「物理的環境」の重要性について、
言及している。
また、ICHG 研究会の発行する病院建築・設計
HANDBOOK (2013)4)では、病院建築ハード面の基本
理念は「ほこりを持ち込まない、ほこりが溜まらない
構造」「結露しにくく、乾燥が保てる構造と材質」「清
掃がしやすい構造と材質」「光・空気(臭い)・音・温
度湿度が快適な構造」「耐久性に優れ、いつまでもキ
レに管理しやすい構造と材質」「明るく楽しいデザイ
ン」であると述べており、感染予防対策とアメニティ
ーに配慮した病院設計が、病院運営には重要であると
述べている。
日本においては、病院環境を自然や芸術面からの癒
しに繋げる取り組みは亀田医療センターや聖路加国
際病院などの一部の医療機関でしか行われていない
のが、現状である。しかしながら、その重要性は海外
の事例や上述した文献にある通り、大きな意味を持つ
と考えられ、今後注目していくべきテーマであると考
えられる。
3. 主成分分析
3.1 解析対象について
本研究では、理想の病院像を明らかにするため、ラ
ダリングを用いて、実在する病院の構造を物理的視点
から患者が病院に対して抱く価値観に至るまで、階層
的に検討し、質問項目を設定している。また、質問の
際に用いる病院サンプルを世界に点在する医療機関
より選定している。(図 3.1、3.2)
図 3.1 ラダリング
図 3.2 サンプル一覧
4
3.2 データの収集方法
20 代から 60 代の日本人の男女を対象にアンケート
調査を実施した。質問項目については、全 16 項目(評
価項目 X1~X13、総合評価 Y1,2,3)を設定し、評点と
して「非常にそう思う」~「全くそう思わない」の 6
段階評点を用いた。尚、属性情報として、各回答者に
対して、性別、年代層、医療関係の職業歴を収集して
いる。(表 3.1)
表 3.1 アンケート項目
3.3 主成分分析の結果と考察
20 代から 60代の日本人の男女 20 人より回答を得た。
また、得られたデータを基に主成分分析を行い、解析
にあたっては JMP11.0 を使用した。主成分分析により
得られた評価データの固有値、寄与率、累積寄与率を
表 3.2 に、固有ベクトル図 3.3 に示す。また、主成分
の負荷量行列を表 3.3 に示す。
主成分分析の結果、13 の主成分が抽出された。寄与
率は、主成分 1 で 37.5%、主成分 2 で 16.6%となり、
2 つの成分合計にて累積寄与率が54%となった。また、
主成分 1~4 で累積寄与率が 7 割を越え、主成分 1~6
で 8 割、主成分 1~9 で 9 割を越えている。(表 3.2)
表 3.2 固有値、寄与率、累積寄与率
図 3.3 固有ベクトル(主成分1,2)
表 3.3 主成分の負荷量行列
X1 温かさがある
X2 清潔感がある
X3 落ち着きそう
X4 高級感がある
X5 開放感がある
X6 楽しめそう
X7 臭わなさそう
X8 癒されそう
X9 芸術性を感じる
X10 自然を感じる
X11 近未来を感じる
X12 子供に対する優しさを感じる
X13 高齢者に対する優しさを感じる
Y1 通院してみたい
Y2 入院してみたい
Y3 見に行ってみたい
総合評価
評価項目
5
4. 選好回帰分析
主成分 1~13 を説明変数、Y1「通院してみたい」,Y2
「入院してみたい」,Y3「見に行ってみたい」を目的
変数として、選好回帰分析を行った。その際、データ
を Z スコアに変換して実施した。解析にあたっては、
JMP11.0 を使用し、ステップワイズ法の変数増減法(p
値<0.05)を使用した。
4.1. 選考回帰分析の結果と考察
選好回帰分析の結果を表 4.1 に示す。
表 4.1 回帰分析結果
解析の結果、主成分 1,2 が評価者全体で有意であっ
た。そのため、主成分 1,2 が全体の選好に与える影響
が大きいと考え、主成分 1,2 について分析を続行した。
主成分 1,2 の詳細を次の図 4.1 に示す。
図 4.1 主成分1と主成分2
4.2 理想ベクトル図
主成分分析および選好回帰分析の結果から描出さ
れる理想ベクトルを図 4.2 に示す。X 軸を主成分 2「緑
のぬくもり感」、Y 軸を主成分 1「現実的未来感」とし
て、選好ベクトルをプロットした結果、サンプル 4,7,9
がベクトルに近接していた。また、Y1 および Y2 の評
点に基づいた単純集計結果においても、サンプル
4,7,9 が上位 3 つに入っていたことから、これら 3 つ
のサンプルが選好される傾向にあることが明らかと
なった。
図 4.2 理想ベクトル
Y 通院してみたい 入院してみたい 見に行ってみたい
自由度
調整済みR2
0.47 0.42 0.39
主成分1 0.78* 0.77* 0.91*
主成分2 -0.37* -0.41*
主成分3 0.10 0.08
主成分4 0.09 -0.10
主成分5 0.15* -0.16*
主成分6
主成分7 -0.11
主成分8 -0.09 -0.09 0.10
主成分9 -0.10 0.22*
主成分10 0.08
主成分11 -0.09
主成分12 -0.08
主成分13
*P値:<0.05
+ -
癒されそう
(0.86)
落ち着きそう
(0.78)
温かさがある
(0.72)
開放感がある
(0.72)
自然を感じる
(0.71)
4>7>9 … 5>8>2
順位(負荷量)
主成分1 「緑のぬくもり感」
+ -
臭わなさそう 高齢者に対する優しさ
(0.58) (-0.49)
芸術性を感じる 子供に対する優しさ
(0.56) (-0.42)
近未来を感じる 温かさがある
(0.52) (-0.40)
清潔感がある
(0.47)
高級感がある
(0.47)
10>1=8 … 7>12
順位(負荷量)
主成分2 「現実的未来感」
6
5. コンジョイント分析
5.1 L8 による実験
主成分分析、選考回帰分析および単純集計の結果を
基に 7 属性を抽出し、それぞれの属性に対して 2 水準
を抽出した。(表 5.1)
表 5.1 L8 で用いる属性と水準
これらを直交法 L8 にあてはめて 8 枚のプロファイ
ルカードを作成し、プロファイルカードの順位付けの
ためのアンケート調査を行った。(図 5.2)尚、データ
解析にあたっては JMP11.0 を使用した。
図 5.1 プロファイルカード
5.2 実験結果
20 代から 60 代の日本人男女を対象としたアンケー
ト調査の結果、男女 18 人から回答を得た。アンケー
ト結果に基づく、コンジョイント分析の結果を図 5.2
および図 5.3 に示す。
コンジョイント分析の結果、属性の注目度として、
「窓の大きさ」、「緑の有無(内観)」、「天井の高さ(空
間)」「アートの有無(内観)」に高い注目度があるこ
とがわかり、続けて「形状(外観)」「アートの有無(外
観)」「ベースとなる色」の順となった。
加えて、部分効用推定値については、「窓が『大き
い』」、「内観の緑が『ある』」、「天井が『高い』」「内観
のアート『なし』」が高い数値を示した。以下「形状
は『角ばっている』」「外観のアートは『ある』」「ベー
スとなる色『白』」の順となった。
図 5.2 注目度
図 5.3 部分効用推定値
属性 水準1 水準2
形状(外観) 角ばっている 丸みがある
アート(外観) あり なし
アート(内観) あり なし
緑(内観) あり なし
天井 高い 低い
窓 大きい 小さい
ベースとなる色 それ以外の色 白
① L1 ⑤ L5
属性 水準1 属性 水準1
形状(外観) 角ばっている 形状(外観) 丸みがある
アート(外観) あり アート(外観) あり
アート(内観) あり アート(内観) なし
緑(内外観) あり 緑(内外観) あり
天井 高い 天井 低い
窓 大きい 窓 大きい
ベースとなる色 それ以外の色 ベースとなる色 白
② L2 ⑥ L6
属性 水準1 属性 水準1
形状(外観) 角ばっている 形状(外観) 丸みがある
アート(外観) あり アート(外観) あり
アート(内観) あり アート(内観) なし
緑(内外観) なし 緑(内外観) なし
天井 低い 天井 高い
窓 小さい 窓 小さい
ベースとなる色 白 ベースとなる色 それ以外の色
③ L3 ⑦ L7
属性 水準1 属性 水準1
形状(外観) 角ばっている 形状(外観) 丸みがある
アート(外観) なし アート(外観) なし
アート(内観) なし アート(内観) あり
緑(内外観) あり 緑(内外観) あり
天井 高い 天井 低い
窓 小さい 窓 小さい
ベースとなる色 白 ベースとなる色 それ以外の色
④ L4 ⑧ L8
属性 水準1 属性 水準1
形状(外観) 角ばっている 形状(外観) 丸みがある
アート(外観) なし アート(外観) なし
アート(内観) なし アート(内観) あり
緑(内外観) なし 緑(内外観) なし
天井 低い 天井 高い
窓 大きい 窓 大きい
ベースとなる色 それ以外の色 ベースとなる色 白
7
5.3 実験の考察
コンジョイント分析の結果から、多くの自然採光が
望める大きな窓を持った構造、屋内でも緑を感じるこ
とができるスペース、開放感を重視した天井の高い構
造、角ばりのあるアーティスティックな外観と機能性
且つ現実味のある内観、清潔感のある白をベースとし
た建物の色、このような属性を持った病院が、日本人
に求められている理想の病院像であると考えられた。
(表 5.2)
表 5.2 理想の病院像の条件
6. 理想像の提案
本研究結果から導き出された属性とその条件を基
に、理想の病院像を提案する。(図 6.1)尚、より実現
可能性の高い提案に繋げるため、条件に合致する病院
デザインの探索は、全世界に実在する病院、又は現在
建築中のプロジェクトのイメージ画像を用いている。
図 6.1 理想の病院像
6.1 確認調査
提案した理想像が受け入れられるかについて確認
するため、図 6.1 のイメージ写真を基に、「通院して
みたいか」「入院してみたいか」について、アンケー
ト調査を行った。
6.2 確認調査の結果
20 代から 60 代の日本人男女を対象としたアンケー
ト調査の結果、男女 25 人から回答を得た。アンケー
トによる調査結果を図 6.2 に示す。
確認調査の結果、「入院してみたい」について、22
名(88%)から「はい」という結果を得た。また、「通
院してみたい」について、20 名(80%)から「はい」
と言う結果を得た。このことから、本研究にて提案し
た新たな病院像について、受療行動に繋がると推測さ
れた。
図 6.2 確認調査結果
7. 本研究の結論
本研究では、理想的な病院像の提案を目的に、主成
分分析、選好回帰分析、及びコンジョイント分析を用
いて、医療サービスの質における構造的視点から分析、
検討を行った。現在、米国や英国などの海外の医療機
関にて話題となっている、医療とアートの融合、医療
と自然の融合は、本研究の結果においても、受療行動
に影響を与える可能性があると結論づけられた。また、
これらが患者満足度の向上に寄与すると推測された。
本研究結果では、特に「自然光を活かす大きな窓の
設置」や「屋内の緑(自然)の設置」が重要視されて
いたことから、病院と自然(Nature)との共生を目的
属性 条件
形状(外観) 角ばっている
アートの有無(外観) あり
アートの有無(内観) なし
緑の有無(内観) あり
天井の高さ 高い
窓の大きさ 大きい
ベースとなる色 白
全体像 病棟廊下
エントランス 屋上
屋内庭園 2階ロビー1階ロビー
20
22
5
3
0% 20% 40% 60% 80% 100%
通院してみたい
入院してみたい
はい いいえ
8
に、病院の建築段階より自然を活かす設計デザインを
する事で、患者や患者家族に対して、プラスの影響を
与えられると期待できる。病院に通院及び入院する人
は何かしらの疾患を持つ患者であり、治療効果は勿論
の事、精神的な安心感とそれに影響する癒しや落ち着
き、温かさも求める傾向があると考えている。特に、
日本人という国民性は自然から、癒しやおちつき、そ
して温かさを感じる者が多いのでないかと個人的見
解として推測している。
また、本研究ではアートとの融合も一つのテーマと
して分析を行ってきたのだが、今回の分析結果では、
あまり重要視されていないとの結果であった。特に外
観ではアーティスティクが望まれているのに対して、
内観では求められていないという結果からも分かる
通り、医療サービスを提供する施設としては、機能性
が重要視されている事を物語っていると考えられる。
ただ、自然という癒しの装置が重要視され、アートと
いう癒しの装置が重要視されないのは、やはり国民性
の問題もあるのかもしれないと考えられる。
以上、本研究では、理想の病院像の体系化に向けて、
一つの提案に結びつけることが出来たと考えている。
今後の新たな病院作りにおいては、病院+α(自然や
アートなど)という考え方を積極的に取り入れていく
事は、世界の流れから考えても重要であることは否定
できない。「今まで通りに」や「先人からの方針」と
いう古い殻に閉じこもりがちの日本の医療機関にお
いても、このような新しい考えを積極的に取り入れて
いくこと、その利点を認識するきっかけに、本研究が
なれば幸いである。
8.本研究の限界と課題
本研究では、アンケートの母集団が少数であること
から、回答に偏りがある可能性があり、得られた結果
を一般化するには限界がある。より社会のニーズを意
識した提案を行うためには、今後は回答者数を増やし,
外的妥当性を高めていきたい。
謝辞
本研究は、多くの皆様のご協力で実施することがで
きました。ご指導、ご協力いただきました全ての方に、
この場を借りて心より感謝申し上げます。
【参考文献】
1) Donabedian A : Evaluating the quality of medical
care. Milbank Mem Fund Q,44(3) : 166-203, 1966
2) Donabedian A : The definition of quality and
approaches to its assessment. Exploration s in
quality assessment and monitoring
( Volume1) .Health Administration Press, Ann
Arbor, Michigan, 1980
3) 近江八幡市立総合医療センター:PFI 方式による
新しい病院づくりへのこころみ―ハードとソフト
からウェットへ―, 2006
4) ICHG 研究会:感染予防対策とアメニティーに配慮
した病院建築・設計 HANDBOOK, 2013
5) 岡田真一:病院建築 建築におけるシステムの意
味,2005

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病院外観・内観から見える理想的なの病院像の提案~主成分分析およびコンジョイント分析から導き出せるモノ~

  • 1. 1 病院外観・内観から見える理想的な病院像の提案 ~主成分分析およびコンジョイント分析から導き出されるモノ~ 慶應義塾大学大学院 健康マネジメント研究科 医療マネジメント専修 神戸 翼 要旨:日本の医療制度の特徴の一つとして、フリーアクセスがある。これは患者の意向で好きな医療機関 の受診が可能となるシステムであり、そこには病院間にて僅かながらの競争が垣間見える。昨今では医療 機関はより多くの患者を獲得するために、患者満足度を上昇させるべく独自の戦略を駆使し、差別化を図 っている。しかしながら、その状況はとても容易とは言い切れない状況がある。そこで、本研究では差別 化の策として、アメリカやイギリスを中心に広まってきている医療機関へのアートやネイチャーの導入を テーマに、施設の有り方を検討し、理想の病院像を創造、提案する事を目的とする。 一般人を対象にアンケート調査を行い、そのデータを基に、主成分分析、選好回帰分析、コンジョイン ト分析を実施した。その結果、理想的な病院像として、「外観は角ばっている」「外観は芸術性がある」「内 観の芸術性は必要ない」「植物などの自然の活用」「天井が高い空間作り」「窓は自然光のために最大化」「壁 などのベースは白色」の 7 つの要件が導き出され、その妥当性を確認するための調査では、8 割以上の人が 受療行動に対して肯定的な回答を得るに至った。 キーワード:病院建築、医療機関と芸術、医療機関と自然、主成分分析、選考回帰分析、コンジョイント 分析 Proposal of an ideal hospital based on an image of the hospital appearance and introspection 〜The finding of Principal component analysis and Conjoint analysis〜 Graduate School of Health Management, Keio University Tsubasa Kambe Abstract: There is free access as one of the features of the Japanese medical care system. This is the system that it becomes possible to visit the medical agency I like for patient's will, and the competition which is slightly in hospital time can peep there. I'm using an original strategy and am planning for differentiation to make patient satisfaction rise for a medical agency to get more patients in these days. However, there is a situation that you can't declare its situation to be very easy. So I have for my object to consider a way to the facilities with the theme of the introduction of art and nature to the medical agency spreading centering on United States and United Kingdom as a plan of differentiation by this research, create an ideal hospital image and propose.A questionnaire survey was performed targeted for the general public and the main ingredient analysis, a picky regression analysis and a conjoint analysis were put into effect based on the data. As a result, 7 "for the outward appearance, angular" "There is art for the outward appearance." "The artistry of the introspection isn't necessary." "natural utilization of a plant" important matters of "high-ceilinged space making" "A window is maximized for natural light." "The base on a wall is white." are derived as an ideal hospital image, and more than 80 percent of person is affirmative to juryou behavior by the investigation to confirm its validity, an answer, I get it, I came. Keywords: Architecture of Medical center, Medical center with art, Medical center with nature, Principal component analysis, Preference recurrence analysis, Conjoint analysis
  • 2. 2 1. はじめに 1.1 研究の背景と意義 日本の医療制度の特徴の一つとして、フリーアクセ スがある。これは患者の意向で患者自らが好みの医療 機関を選択し、受診が可能なシステムである。日本に おいては、第 2 次世界大戦後、公衆衛生の向上を目的 に、医療機関の絶対数を増やし、また国民皆保険を実 現するという国策を実行することで、医療の提供体制 が整備されてきた。そして、この過程にてフリーアク セスと言う日本の医療の特徴的システムが確立して いった。しかしながら、現在フリーアクセスは患者の 受療行動を加速させることによって、医療費の高騰を 招いたとも言われており、その仕組みの是非について は、専門家によって意見が異なる。加えて、患者の意 志による医療機関の選択は、医療機関同士の競争を招 く要因にもなっている。日本は他の先進国に比べ、医 療機関数が多いという背景から、医療政策として医療 機関数を縮小する動きも確認されており、このような 背景から、医療機関は患者を集めるための施策を投じ る必要性、そして医療機関の経営を再度考える時期に 立たされていると考えられる。そこで、本研究では他 の医療機関との差別化の策として、アメリカやイギリ スを中心に広まってきている医療と Art(芸術)、医療 と Nature(自然)の融合をテーマに、医療機関の構造 に Art や Nature を取り入れることは、患者の受療行 動に影響を与えるか否かを検討したい。そして、理想 の病院において構造的に必要な要素を分析し、実現可 能な範囲にて理想の病院像を創造、提案する事を目的 とする。 1.2 概念図 病院の顧客として最初に考えるべきは患者である。 そして、理想的な病院を作り上げるためには、患者満 足度を考える必要がある。患者満足度は病院が提供す る医療サービスが齎す治療結果と患者自身の精神的 な安心感に付随するものと考えることができ、そのた めにも医療サービスの質を検討することが、理想の病 院を考える際に重要である。 Donabedian 1) 2) によると医療の質については、 Structure(構造)、Process(過程)、Outcome(結果) の 3 段階から評価され、其々の段階に影響を与える構 成要素を分析する事で、病院としての戦略に繋げるこ とが可能であるとされている。本研究においては、病 院の構造的視点としての『建物外観』と『建物内観』 から、「理想の病院像」へと結びつけるべく、次に示 す概念図を作成し、分析結果への体系付けを行ってい る。(図 1.1) 図 1.1 概念図(理想の病院) 1.3 特性要因図 患者満足度の向上は受診者の再来院を促し、また未 受診者については、評判などに基づき来院を促す効果 があると考えられる。それと伴に、患者満足度が高い 病院が理想の病院であるという前提を置くと、「受療 行動」と「受療行動に影響を与える要因」を分析する ことで、理想の病院像の提案に繋げることが可能だと 考えられる。そこで、本研究では受療行動に影響を与 える要因として「ストラクチャ」「プロセス」「アウト カム」の中でも、「ストラクチャ」に焦点を当ててい る。そして、施設の構造を『建物内観』と『建物外観』 に分け、これらの観点から構成要素を抽出し分析を行 っている。下記に今回検討した特性要因図を示す。(図 1.2)
  • 3. 3 図 1.2 特性要因図 2. 先行研究、関連文献 聖路加国際病院理事長を務める日野原氏は、特別顧 問を務める近江八幡市民病院整備運営事業に関する 著書 (2006)3)において、「理想の病院とは、患者さん が『ありがとう』の言葉を残して退院し、または尊厳 をもって人生の幕が閉じられる癒しの場である」と述 べ、また「木を植え、花を咲かせて環境を整備するな どの建物だけでなく敷地全体の環境も大切であり、美 しい環境は癒す力を持っている」と、病院環境として、 敷地や建物などの「物理的環境」の重要性について、 言及している。 また、ICHG 研究会の発行する病院建築・設計 HANDBOOK (2013)4)では、病院建築ハード面の基本 理念は「ほこりを持ち込まない、ほこりが溜まらない 構造」「結露しにくく、乾燥が保てる構造と材質」「清 掃がしやすい構造と材質」「光・空気(臭い)・音・温 度湿度が快適な構造」「耐久性に優れ、いつまでもキ レに管理しやすい構造と材質」「明るく楽しいデザイ ン」であると述べており、感染予防対策とアメニティ ーに配慮した病院設計が、病院運営には重要であると 述べている。 日本においては、病院環境を自然や芸術面からの癒 しに繋げる取り組みは亀田医療センターや聖路加国 際病院などの一部の医療機関でしか行われていない のが、現状である。しかしながら、その重要性は海外 の事例や上述した文献にある通り、大きな意味を持つ と考えられ、今後注目していくべきテーマであると考 えられる。 3. 主成分分析 3.1 解析対象について 本研究では、理想の病院像を明らかにするため、ラ ダリングを用いて、実在する病院の構造を物理的視点 から患者が病院に対して抱く価値観に至るまで、階層 的に検討し、質問項目を設定している。また、質問の 際に用いる病院サンプルを世界に点在する医療機関 より選定している。(図 3.1、3.2) 図 3.1 ラダリング 図 3.2 サンプル一覧
  • 4. 4 3.2 データの収集方法 20 代から 60 代の日本人の男女を対象にアンケート 調査を実施した。質問項目については、全 16 項目(評 価項目 X1~X13、総合評価 Y1,2,3)を設定し、評点と して「非常にそう思う」~「全くそう思わない」の 6 段階評点を用いた。尚、属性情報として、各回答者に 対して、性別、年代層、医療関係の職業歴を収集して いる。(表 3.1) 表 3.1 アンケート項目 3.3 主成分分析の結果と考察 20 代から 60代の日本人の男女 20 人より回答を得た。 また、得られたデータを基に主成分分析を行い、解析 にあたっては JMP11.0 を使用した。主成分分析により 得られた評価データの固有値、寄与率、累積寄与率を 表 3.2 に、固有ベクトル図 3.3 に示す。また、主成分 の負荷量行列を表 3.3 に示す。 主成分分析の結果、13 の主成分が抽出された。寄与 率は、主成分 1 で 37.5%、主成分 2 で 16.6%となり、 2 つの成分合計にて累積寄与率が54%となった。また、 主成分 1~4 で累積寄与率が 7 割を越え、主成分 1~6 で 8 割、主成分 1~9 で 9 割を越えている。(表 3.2) 表 3.2 固有値、寄与率、累積寄与率 図 3.3 固有ベクトル(主成分1,2) 表 3.3 主成分の負荷量行列 X1 温かさがある X2 清潔感がある X3 落ち着きそう X4 高級感がある X5 開放感がある X6 楽しめそう X7 臭わなさそう X8 癒されそう X9 芸術性を感じる X10 自然を感じる X11 近未来を感じる X12 子供に対する優しさを感じる X13 高齢者に対する優しさを感じる Y1 通院してみたい Y2 入院してみたい Y3 見に行ってみたい 総合評価 評価項目
  • 5. 5 4. 選好回帰分析 主成分 1~13 を説明変数、Y1「通院してみたい」,Y2 「入院してみたい」,Y3「見に行ってみたい」を目的 変数として、選好回帰分析を行った。その際、データ を Z スコアに変換して実施した。解析にあたっては、 JMP11.0 を使用し、ステップワイズ法の変数増減法(p 値<0.05)を使用した。 4.1. 選考回帰分析の結果と考察 選好回帰分析の結果を表 4.1 に示す。 表 4.1 回帰分析結果 解析の結果、主成分 1,2 が評価者全体で有意であっ た。そのため、主成分 1,2 が全体の選好に与える影響 が大きいと考え、主成分 1,2 について分析を続行した。 主成分 1,2 の詳細を次の図 4.1 に示す。 図 4.1 主成分1と主成分2 4.2 理想ベクトル図 主成分分析および選好回帰分析の結果から描出さ れる理想ベクトルを図 4.2 に示す。X 軸を主成分 2「緑 のぬくもり感」、Y 軸を主成分 1「現実的未来感」とし て、選好ベクトルをプロットした結果、サンプル 4,7,9 がベクトルに近接していた。また、Y1 および Y2 の評 点に基づいた単純集計結果においても、サンプル 4,7,9 が上位 3 つに入っていたことから、これら 3 つ のサンプルが選好される傾向にあることが明らかと なった。 図 4.2 理想ベクトル Y 通院してみたい 入院してみたい 見に行ってみたい 自由度 調整済みR2 0.47 0.42 0.39 主成分1 0.78* 0.77* 0.91* 主成分2 -0.37* -0.41* 主成分3 0.10 0.08 主成分4 0.09 -0.10 主成分5 0.15* -0.16* 主成分6 主成分7 -0.11 主成分8 -0.09 -0.09 0.10 主成分9 -0.10 0.22* 主成分10 0.08 主成分11 -0.09 主成分12 -0.08 主成分13 *P値:<0.05 + - 癒されそう (0.86) 落ち着きそう (0.78) 温かさがある (0.72) 開放感がある (0.72) 自然を感じる (0.71) 4>7>9 … 5>8>2 順位(負荷量) 主成分1 「緑のぬくもり感」 + - 臭わなさそう 高齢者に対する優しさ (0.58) (-0.49) 芸術性を感じる 子供に対する優しさ (0.56) (-0.42) 近未来を感じる 温かさがある (0.52) (-0.40) 清潔感がある (0.47) 高級感がある (0.47) 10>1=8 … 7>12 順位(負荷量) 主成分2 「現実的未来感」
  • 6. 6 5. コンジョイント分析 5.1 L8 による実験 主成分分析、選考回帰分析および単純集計の結果を 基に 7 属性を抽出し、それぞれの属性に対して 2 水準 を抽出した。(表 5.1) 表 5.1 L8 で用いる属性と水準 これらを直交法 L8 にあてはめて 8 枚のプロファイ ルカードを作成し、プロファイルカードの順位付けの ためのアンケート調査を行った。(図 5.2)尚、データ 解析にあたっては JMP11.0 を使用した。 図 5.1 プロファイルカード 5.2 実験結果 20 代から 60 代の日本人男女を対象としたアンケー ト調査の結果、男女 18 人から回答を得た。アンケー ト結果に基づく、コンジョイント分析の結果を図 5.2 および図 5.3 に示す。 コンジョイント分析の結果、属性の注目度として、 「窓の大きさ」、「緑の有無(内観)」、「天井の高さ(空 間)」「アートの有無(内観)」に高い注目度があるこ とがわかり、続けて「形状(外観)」「アートの有無(外 観)」「ベースとなる色」の順となった。 加えて、部分効用推定値については、「窓が『大き い』」、「内観の緑が『ある』」、「天井が『高い』」「内観 のアート『なし』」が高い数値を示した。以下「形状 は『角ばっている』」「外観のアートは『ある』」「ベー スとなる色『白』」の順となった。 図 5.2 注目度 図 5.3 部分効用推定値 属性 水準1 水準2 形状(外観) 角ばっている 丸みがある アート(外観) あり なし アート(内観) あり なし 緑(内観) あり なし 天井 高い 低い 窓 大きい 小さい ベースとなる色 それ以外の色 白 ① L1 ⑤ L5 属性 水準1 属性 水準1 形状(外観) 角ばっている 形状(外観) 丸みがある アート(外観) あり アート(外観) あり アート(内観) あり アート(内観) なし 緑(内外観) あり 緑(内外観) あり 天井 高い 天井 低い 窓 大きい 窓 大きい ベースとなる色 それ以外の色 ベースとなる色 白 ② L2 ⑥ L6 属性 水準1 属性 水準1 形状(外観) 角ばっている 形状(外観) 丸みがある アート(外観) あり アート(外観) あり アート(内観) あり アート(内観) なし 緑(内外観) なし 緑(内外観) なし 天井 低い 天井 高い 窓 小さい 窓 小さい ベースとなる色 白 ベースとなる色 それ以外の色 ③ L3 ⑦ L7 属性 水準1 属性 水準1 形状(外観) 角ばっている 形状(外観) 丸みがある アート(外観) なし アート(外観) なし アート(内観) なし アート(内観) あり 緑(内外観) あり 緑(内外観) あり 天井 高い 天井 低い 窓 小さい 窓 小さい ベースとなる色 白 ベースとなる色 それ以外の色 ④ L4 ⑧ L8 属性 水準1 属性 水準1 形状(外観) 角ばっている 形状(外観) 丸みがある アート(外観) なし アート(外観) なし アート(内観) なし アート(内観) あり 緑(内外観) なし 緑(内外観) なし 天井 低い 天井 高い 窓 大きい 窓 大きい ベースとなる色 それ以外の色 ベースとなる色 白
  • 7. 7 5.3 実験の考察 コンジョイント分析の結果から、多くの自然採光が 望める大きな窓を持った構造、屋内でも緑を感じるこ とができるスペース、開放感を重視した天井の高い構 造、角ばりのあるアーティスティックな外観と機能性 且つ現実味のある内観、清潔感のある白をベースとし た建物の色、このような属性を持った病院が、日本人 に求められている理想の病院像であると考えられた。 (表 5.2) 表 5.2 理想の病院像の条件 6. 理想像の提案 本研究結果から導き出された属性とその条件を基 に、理想の病院像を提案する。(図 6.1)尚、より実現 可能性の高い提案に繋げるため、条件に合致する病院 デザインの探索は、全世界に実在する病院、又は現在 建築中のプロジェクトのイメージ画像を用いている。 図 6.1 理想の病院像 6.1 確認調査 提案した理想像が受け入れられるかについて確認 するため、図 6.1 のイメージ写真を基に、「通院して みたいか」「入院してみたいか」について、アンケー ト調査を行った。 6.2 確認調査の結果 20 代から 60 代の日本人男女を対象としたアンケー ト調査の結果、男女 25 人から回答を得た。アンケー トによる調査結果を図 6.2 に示す。 確認調査の結果、「入院してみたい」について、22 名(88%)から「はい」という結果を得た。また、「通 院してみたい」について、20 名(80%)から「はい」 と言う結果を得た。このことから、本研究にて提案し た新たな病院像について、受療行動に繋がると推測さ れた。 図 6.2 確認調査結果 7. 本研究の結論 本研究では、理想的な病院像の提案を目的に、主成 分分析、選好回帰分析、及びコンジョイント分析を用 いて、医療サービスの質における構造的視点から分析、 検討を行った。現在、米国や英国などの海外の医療機 関にて話題となっている、医療とアートの融合、医療 と自然の融合は、本研究の結果においても、受療行動 に影響を与える可能性があると結論づけられた。また、 これらが患者満足度の向上に寄与すると推測された。 本研究結果では、特に「自然光を活かす大きな窓の 設置」や「屋内の緑(自然)の設置」が重要視されて いたことから、病院と自然(Nature)との共生を目的 属性 条件 形状(外観) 角ばっている アートの有無(外観) あり アートの有無(内観) なし 緑の有無(内観) あり 天井の高さ 高い 窓の大きさ 大きい ベースとなる色 白 全体像 病棟廊下 エントランス 屋上 屋内庭園 2階ロビー1階ロビー 20 22 5 3 0% 20% 40% 60% 80% 100% 通院してみたい 入院してみたい はい いいえ
  • 8. 8 に、病院の建築段階より自然を活かす設計デザインを する事で、患者や患者家族に対して、プラスの影響を 与えられると期待できる。病院に通院及び入院する人 は何かしらの疾患を持つ患者であり、治療効果は勿論 の事、精神的な安心感とそれに影響する癒しや落ち着 き、温かさも求める傾向があると考えている。特に、 日本人という国民性は自然から、癒しやおちつき、そ して温かさを感じる者が多いのでないかと個人的見 解として推測している。 また、本研究ではアートとの融合も一つのテーマと して分析を行ってきたのだが、今回の分析結果では、 あまり重要視されていないとの結果であった。特に外 観ではアーティスティクが望まれているのに対して、 内観では求められていないという結果からも分かる 通り、医療サービスを提供する施設としては、機能性 が重要視されている事を物語っていると考えられる。 ただ、自然という癒しの装置が重要視され、アートと いう癒しの装置が重要視されないのは、やはり国民性 の問題もあるのかもしれないと考えられる。 以上、本研究では、理想の病院像の体系化に向けて、 一つの提案に結びつけることが出来たと考えている。 今後の新たな病院作りにおいては、病院+α(自然や アートなど)という考え方を積極的に取り入れていく 事は、世界の流れから考えても重要であることは否定 できない。「今まで通りに」や「先人からの方針」と いう古い殻に閉じこもりがちの日本の医療機関にお いても、このような新しい考えを積極的に取り入れて いくこと、その利点を認識するきっかけに、本研究が なれば幸いである。 8.本研究の限界と課題 本研究では、アンケートの母集団が少数であること から、回答に偏りがある可能性があり、得られた結果 を一般化するには限界がある。より社会のニーズを意 識した提案を行うためには、今後は回答者数を増やし, 外的妥当性を高めていきたい。 謝辞 本研究は、多くの皆様のご協力で実施することがで きました。ご指導、ご協力いただきました全ての方に、 この場を借りて心より感謝申し上げます。 【参考文献】 1) Donabedian A : Evaluating the quality of medical care. Milbank Mem Fund Q,44(3) : 166-203, 1966 2) Donabedian A : The definition of quality and approaches to its assessment. Exploration s in quality assessment and monitoring ( Volume1) .Health Administration Press, Ann Arbor, Michigan, 1980 3) 近江八幡市立総合医療センター:PFI 方式による 新しい病院づくりへのこころみ―ハードとソフト からウェットへ―, 2006 4) ICHG 研究会:感染予防対策とアメニティーに配慮 した病院建築・設計 HANDBOOK, 2013 5) 岡田真一:病院建築 建築におけるシステムの意 味,2005