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国際会計基準(IFRS)適用企業の財務評価方法
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国際会計基準(IFRS)適用企業の財務評価方法
フィナンシャルサービス部
久保隆宏
JGAAP to analysis IFRS
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Agenda
◼ IFRS適用による財務諸表への影響
◼ 財政状態計算書と貸借対照表の差異
◼ 損益計算書の差異
◼ 差異の影響
◼ IFRS適用による差異の軽減: 注記による補正
◼ 方針: IFRSを日本会計基準へ読み替える
◼ 事例: 注記からの有形固定資産詳細の復元
◼ 事例: 日本基準段階利益の復元
◼ 情報技術による注記解析
◼ 注記による補正でも回避できない差異
◼ 今後の展望
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久保隆宏
TIS株式会社 フィナンシャルサービス部
◼ 化学系メーカーの業務コンサルタント出身。
◼ 既存の技術では業務改善の範囲に限界があると感じ戦略技術センター
へ異動。自然言語処理による企業の非財務情報(特にESG)評価に従事。
◼ 研究テーマとの関連から企業評価のサービスを持つフィナンシャル
サービス部へ移動。財務/非財務一体の評価目指し研究/事業化に従事。
自己紹介
ESG評価を支える自然言語処理
基盤の構築
(@ML@Loft #6)
著作
Pythonで学ぶ強化学習
直感 Deep Learning
財務・非財務一体型の企業分析
に向けて
(@企業分析における自然言語処理を学ぼう)
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企業評価に関するTISの取り組みについて
◼ TISのフィナンシャルサービス部では、財務データの取り込み・診断
サービスを提供しています。
SCORE ENTRY
決算書から勘定と値を読み取るOCRサービス。
国内企業の決算書処理数シェア1位・銀行を中心とした
300を超える企業様に導入頂いています。
SCORE NAVI
財務データの診断サービス。財務上の問題点をコメント
し、グラフを使いわかりやすく提供する。M&Aでの企業
評価には別途Finplusを提供。
◼ 企業評価には財務だけでなく非財務の観点も必要です。現在非財務情報
の活用、特にESG情報の活用に力を入れています。
CoARiJ
財務データと、有価証券報告書の記載内容/CSR報告書と
いった非財務データを組み合わせたデータセット。
非財務の情報(テキストでの記述)がどう財務に影響して
いるか、財務パフォーマンスがどう非財務の活動に影響
を与えるかといった分析が可能。
⇒研究・非財務利活用の土壌を醸成
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Summary
◼ IFRSの適用で企業の財務諸表は大きく変化する。
◼ 注記による補完を行うと変化の影響を部分的に緩和できる。
◼ 補完情報による日本会計基準への読み変えは、 時系列・他社比較を
行うのに有効な手段。
◼ 読み替えを行うことで既存の財務分析手法も適用できる。
◼ 人力で注記を読むのは面倒なため、情報技術による支援が不可欠。
◼ 弊社が提供している決算書の日本会計基準への読み替えサービスでは、
XBRLデータを利用した自動解析を行っている。
◼ 注記は、今後IFRS適用企業以外でも欠かせない情報となる。
◼ IFRSとのコンバージェンスが進むと注記に拠る情報も増えるため。
◼ 注記は財務諸表の数値と同等に重要な定性情報である。
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IFRSとは (1/4)
◼ 「世界共通の会計基準」を目指して、ロンドンを拠点とするIASB(国際
会計基準審議会)が作成している。
日本公認会計士協会「IASBの基礎知識」より引用
IASBには14名のみ(欧州、アジア・オセアニア、南北アメリカの3地域から各4名、
アフリカ1名、その他1名)。日本からはあらた監査法人の鈴木理加さんが加わって
いる。
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IFRSとは (2/4)
◼ 本当に国際的に使用されているのか?
国際取引所連合WFEに加盟する取引所で扱っている上場企業数が48,913のうち、
IFRS適用が求められている/許可されている法域内の企業は約64%。
逆に許可されていない法域内の企業は35.7%でアメリカ・中国・インドが主。
IFRS Foundation “Who uses IFRS Standards?”より引用
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IFRSとは (3/4)
◼ 本当に国際的に使用されているのか?
国際取引所連合WFEに加盟する取引所で扱っている上場企業数が48,913のうち、
IFRS適用が求められている/許可されている法域内の企業は約64%。
逆に許可されていない法域内の企業は35.7%でアメリカ・中国・インドが主。
IFRSコンソーシアム「IFRSの世界的な普及」より引用
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IFRSとは (4/4)
◼ 日本での適用企業数は217社に上る
金融庁 IFRSの任意適用企業の拡大促進
特別な増加があるわけではないが、着実に増えている。
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IFRS適用による財務諸表への影響 (1/2)
◼ IFRSと日本会計基準の差異は多々あるが代表的なものは以下2点となる。
IFRS 日本会計基準
原則主義 細則(ルール)主義
基本的な概念に沿った原則的な会計処理の方
法のみが示され、数値基準を含む詳細な取り
扱いは設けない。
会計処理のために必要な詳細な判断基準や数
値基準を広範に示し、これに沿い会計処理を
行う。
資産負債アプローチ 収益費用アプローチ
純資産(=企業の価値)の増減を利益ととらえ
る(資産・負債の定義が先行し、収益や費用
はその増減と定義する)。
収益は一会計期間における企業活動の成果で
あり、費用は収益を生むためのコスト、収益
と費用との差額を利益と定義する。
原則の適用方法につ
いて注記が多くなる
傾向がある
詳細はKPMG IFRSと日本基準の主要な相違点を参照
- 12. Copyright © TIS Inc. All rights reserved. 12
IFRS適用による財務諸表への影響 (2/2)
◼ 提出する書類も異なる。内容から差異を具体的に知ることができる。
連結純損益及び
その他の包括利益計算書
連結財政状態計算書
連結キャッシュ・フロー計算書
連結持分変動計算書
IFRS 日本会計基準
連結貸借対照表
連結損益及び
包括利益計算書
連結キャッシュ・フロー計算書
連結株主資本等変動計算書
Pickup
Pickup
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財政状態計算書と貸借対照表の差異
◼ 三菱商事の例(資産の部)
IFRS適用前(2012年度) IFRS適用後(2019年度)
全体的に科目数が減り、注記
が増えている=詳細な科目は
注記に記載されている。
IFRS固有集約科目
IFRS固有科目
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損益計算書の差異
◼ 双日の例
IFRS適用前(2011年度) IFRS適用後(2019年度)
営業利益・経常利益等、利益の
段階区分が消失(記載任意化)。
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差異の影響
◼ 財務分析への影響
◼ 詳細な科目が失われたことで分析の解像度が下がる。
◼ 例:営業債権及びその他の債権、有形固定資産
◼ 段階利益の定義/表記の変化で既存評価手法の適用が困難になる。
◼ 例: 売上高対利益率など
◼ 他社比較/経年比較への影響
◼ 原則主義ゆえに、各社の会計処理が異なり比較可能性が低下する。
◼ 原則レベルでの比較可能性は向上するが、科目レベルでの比較可能性
は細則主義より低下する。
◼ 適用前後をまたいだ経年比較/分析が困難になる。
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方針: IFRSを日本会計基準へ読み替える
◼ 日本会計基準へ読み替えを行うメリット
◼ 過去の(日本)会計基準に合わせることで経年比較/分析が可能になる。
◼ 未だ多数派である日本会計基準に合わせることで他社比較が容易に。
◼ 日本会計基準へ読み替えを行うデメリット
◼ 完全な変換は至難なため値の連続性が完璧には保てない。
◼ IFRSの概念に根差した評価手法への切り替えが進まなくなる。
◼ 読み替えを通じIFRSと日本会計基準との差異を学習する必要がある。
◼ 手法
◼ IFRSの注記を参照し科目の内訳と定義を確認
◼ 日本会計基準に合わせて科目・科目内訳を構成しなおす
- 18. Copyright © TIS Inc. All rights reserved. 18
事例: 注記からの有形固定資産詳細の復元 (1/4)
◼ IFRS適用前後の差異(再掲)
IFRS適用前(2012年度) IFRS適用後(2019年度)
- 19. Copyright © TIS Inc. All rights reserved. 19
事例: 注記からの有形固定資産詳細の復元 (2/4)
◼ 例: 伊藤忠商事(2019年度)
注記を参照
有形固定資産の注記から科目の内訳
を取得
リースの注記からファイナンス・
リース/使用権資産の内訳を取得
※使用権資産の登場はIFRS新リース会計
基準(IFRS16号)より。
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事例: 注記からの有形固定資産詳細の復元 (3/4)
◼ 例: 伊藤忠商事(2019年度)
有形固定資産
リース
注記を転記
- 21. Copyright © TIS Inc. All rights reserved. 21
事例: 注記からの有形固定資産詳細の復元 (4/4)
◼ 例: 伊藤忠商事(2019年度)
リース資産について
ファイナンス・リース/使用権資産の合計をリース資産として計上。
リース資産に計上した分は、有形固定資産から差し引く。
※使用権資産はオペレーティングリースを含むため、値が新旧で連続しな
い点に注意
合計 合計
差引 差引
日本会計基準へ復元
- 22. Copyright © TIS Inc. All rights reserved. 22
事例: 日本基準段階利益の復元 (1/4)
◼ IFRS適用前後の差異(再掲)
IFRS適用前(2011年度) IFRS適用後(2019年度)
- 23. Copyright © TIS Inc. All rights reserved. 23
事例: 日本基準段階利益の復元 (2/4)
◼ 例: 三菱商事(2019年度)
注記を参照注記を参照
「販売費及び一般管理費」、「その他の損益」、「金融収益」「金融費
用」の明細を取得
- 24. Copyright © TIS Inc. All rights reserved. 24
事例: 日本基準段階利益の復元 (3/4)
◼ 例: 三菱商事(2019年度)
注記を転記
注記を転記
連結損益計算書
から転記
販売費及び一般管理費
金融商品に係る収益及び費用
販売費及び一般管理費
その他の収益・費用
金融収益・費用
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事例: 日本基準段階利益の復元 (4/4)
◼ 例: 三菱商事(2019年度)
販売費及び一般管理費
その他の収益・費用
金融収益・費用
日本会計基準の段階利益を復元
「その他の収益・費用」と「金融収益・費
用」は、注記を確認し、営業外収益/費用、
特別利益/損失に振り分ける
- 26. Copyright © TIS Inc. All rights reserved. 26
情報技術による注記解析 (1/3)
◼ 弊社(TIS)では日本会計基準へ読み替えた決算書を提供しています。
決算書日本会計基準化サービス
◼ クラウド型のサービスで、ログ
インしてIFRS適用企業の変換済
み決算書を購入/ダウンロードで
きます。
◼ 変換後決算書には注記の科目内
訳が付属します。
(本資料で使用している注記を転
記したシートは、本サービスで
提供しているものです)。
◼ IFRSの学習に使えるガイド・変
換マニュアルも提供(サービス利
用者には無料)。
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◼ 変換を効率化するため、XBRLデータからの自動読み取り/解析を行っ
ている。
情報技術による注記解析 (2/3)
シートへ値を
自動入力
注記箇所の自動取得
注記番号から注記を探すのは骨が折れるため自動化
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◼ 注記の重要性が増す一方、複雑さは増大している。
◼ 企業ごとに異なる書き方、表レイアウト。
◼ 人手を省きつつ注記の情報を最大限活用するため、機械学習・自然言
語処理の適用を検証中。
情報技術による注記解析 (3/3)
例: 「企業結合等関係」の注記から企業結合時の無形資産評価額の読み取り
詳細はこちら
自然言語処理により、
金利/為替/格付け変動
に伴う注記記載の変化
も分析可能に?
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注記による補正でも回避できない差異 (1/3)
日経新聞(2019/7/24) より引用
TAマネージメント かわい公認会計士・税理士事務所 「花
王の売上が減るのはなぜ? -新会計基準」より引用
- 30. Copyright © TIS Inc. All rights reserved. 30
注記による補正でも回避できない差異 (2/3)
◼ 注記に記載がないもの、記載があっても過去の会計基準と対応が取れ
ない場合は補正ができない。
例: 三菱商事(2018年度)
収益が2倍近く増加しているが、新収益認識基準(IFRS第15号
「顧客との契約から生じる収益」)を適用したため。
本人取引か代理人取引かで総額/純額での計上かが切り替わる
(利益自体は変化なし)。新規の定義となるため(日本会計基準
では明確な線引きがない)、対応が取れず読み替えが不可能。
- 31. Copyright © TIS Inc. All rights reserved. 31
注記による補正でも回避できない差異 (3/3)
◼ 補正に使用できないものの、注記が重要であることに変わりはない。
◼ 新収益認識基準の注記では「顧客との契約から認識した収益(※)」
を事業実体/状況に基づき区分して表示するよう規定している。
◼ 端的には企業の通常の活動過程(本業)で生じる収益で、IFRS第9号 金
融商品やIFRS第16号 リースを除く。
収益の分解
顧客との契約か
それ以外かの識別
IFRS適用先で影響を把握しておくことは将来日本会計基準
のコンバージェンスが行われた際の影響認識に役立つ
- 33. Copyright © TIS Inc. All rights reserved. 33
まとめ
◼ IFRS適用による財務諸表の変化を、注記で補正する手法を解説した。
◼ 日本会計基準への読み替えを行うことで、適用の影響を部分的に緩
和できる。
◼ 今後注記はIFRS適用企業以外でも欠かせない情報となる。
◼ IFRSとのコンバージェンスが進むと注記に拠る情報も増えるため。
◼ 2021年4月1日適用の「収益認識に関する会計基準」でも、収益の
分解情報など重要な情報が注記に記載される。
◼ これを利用することで、企業実体をより正確に把握できる。
◼ 注記の読解は手間がかかるため、情報技術による支援が不可欠となる。
◼ 自然言語処理の活用により外部環境変化に伴う注記変更も分析可能
- 35. Copyright © TIS Inc. All rights reserved. 35
◼ IFRS全般
◼ 秋葉 賢一 エッセンシャル IFRS
◼ KPMG 資産負債アプローチ
◼ 双日 IFRS導入
◼ リース会計基準
◼ IFRS 第16号 「リース」の概要
◼ 新収益認識基準
◼ 【IFRSコラム】IFRS新収益認識基準と日本企業への影響
◼ Applying IFRS IFRS第15号の表示 及び開示に関する規定
参考資料 (1/2)