Thinking in water supply, Yamanashi vs Tokyo
Hinweis der Redaktion
- しの)皆さんは最近、蛇口をひねって水が出てこなかった、なんてこと体験したことがありますか?
日本で暮らしていて、そのような経験はまずないと思います。
しかし世界では現在、深刻な水不足が懸念されています。
- (日本ユニセフ協会)こちらの地図をご覧ください。日本ユニセフ協会によると、世界人口の半数以上が水道を使えるようになった今なお、6億万人以上人々が、安心して飲める水が身近になく、整備されていない井戸などから水を汲んでいるという現状があります。そのような地域の多くがサハラ以南のアフリカ諸国に集中しています。ここまで聞くと、「水不足は日本には関係がない」と思うかもしれません。
しかし、実は日本も水不足と密接に関係しているのです。ならぜなら、日本が「水輸入国」であるからです。
- これは、実際に水そのものを輸入しているわけではなく、食料などの輸入を通して、その生産過程で必要な水を輸入しているということを示します。
つまり、普段の生活の中で水不足を直接は感じなくとも、
無意識の間に世界の水を使用しており、世界の水不足に深く関わっているのです。
- さて、こちらのロゴをご存知でしょうか。
これは、国連が2030年までに世界が達成すべき目標として掲げた17個の「持続可能な開発目標」です。
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右上の6番をご覧ください。17の目標の中には、「安全な水とトイレを世界中に」という水に関する目標があります。
- 「世界人口が急増を続ける中、2050年までに4人に1人以上が慢性的な水不足の影響を受ける可能性が高い」と推測され、「世界的な水不足になる」と国連は警告しています。
私たちの生活に必要不可欠でありながら、このような深刻な問題を抱える水資源への理解を深めるため、「上水道」を題材に研究を行いました。
- さや)改めまして、山梨県立大学申ゼミの大山、笹本です。私たちは地方を、学び舎のある「山梨県」、都市を山梨県と隣接している「東京都」とし、山梨県と東京都との対立構造を考えました。
山梨県と東京都を舞台とした、「上水道」についての比較研究の報告を行います。
お手元の資料は文字量が多めになっておりますので、参考程度にしていただき、スライドをご覧になってお聞きください。
- 本日はこのような表題でお話しします。
- 報告を始める前に
の訂正があります。
5ページ第3章第1項の4段落目で、全国平均の金額が1,550円となっておりますが、正しくは1,960円です。
それでは始めます。
- 山梨県と東京都の比較分析に入る前に、まず本研究で扱う「上水道」の定義をします。
水の使われ方は大きく「農業用水」と「都市用水」に分かれます。
都市用水はさらに「工業用水」と「生活用水」に分かれます。
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調理や洗濯、風呂や掃除など家庭で使用される「家庭用水」、またオフィスや飲食店等で使用される「都市生活用水」を合わせた「生活用水」が、本研究で扱う「上水道」となります。
- それでは山梨県と東京都の比較に移っていきます。資料3ぺージ第1章第4項「東京都と山梨県の水道局」をご覧ください。
まず一つ目の相違点は、上水道事業がどの部署によって管理されているかです。
山梨県では、県全体で水道法や流域別総合整備計画の取りまとめを行なっているものの、直接的な上水道事業は、4つの水道圏を中心とした市町村・地区・民間企業によって事業が行われています。つまり、山梨県の水道事業は主に各自治体によって行われています。
- 東京都は、給水人口の約98%の給水を、厚生労働大臣の認可を受けた都営水道「東京都水道局」が行なっています。残り2%は都知事に認可を受けた市営水道と町営水道で、市営水道が3箇所、その他島嶼部の町営水道が2箇所あります。
- 以上より、東京都では東京都水道局が一括に管理し、山梨県は各自治体が管理していることがわかりました。
- では、資料4ページ第2章「データ分析」及び5ページ第3章「データで見る山梨県と東京都」に移ります。
相違点の二つ目として、生活用水使用量の違いが挙げられます。
⭐︎山梨県はの402L、⭐︎東京都は273Lであることが判明しました。⭐︎なぜ極端に山梨県民だけが額面上、水を大量消費していることになっているのでしょうか。私たちはある仮説を見出しました。それは、果樹への上水道の散水量が多いことです。果樹育成の過程で、上水道の散水を行っていることが使用量の増加に繋がっていると推測しました。
- 次に水道料金です。⭐︎山梨県は一月あたり858円、⭐︎東京都は一月あたり1,047円でした。
山梨県の方が割安ですが、⭐︎どちらも軒並み全国平均の金額1,960円を下回っていることが判明しました。水道料金は水質・水源からの距離・人口などから決まっており、山梨は水源が近く水質が良いことこと、東京都は水道に関する建設費が他の自治体に比べ安いことが、平均価格よりも下回る理由になっています。
- 次にミネラルウォーター生産量です。
山梨県は日本のミネラルウォーター発祥の地で、昨年度の2017年では、⭐︎約1,427,000キロリットルを生産しており、全国の40%以上のシェアを占めています。
対して、⭐︎東京都は135キロリットルで全国第36位の生産量でした。⭐︎
以上より、東京都に限らず、日本中で山梨県の水が口に運ばれていることが判明しました。
- 最後に、災害時の水に関するインフラ対策です。資料5ページ第3章第2項「水に関する災害時の対策」に移ります。
山梨県では県全体を管轄している部署がないため、甲府市役所防災企画課・防災指導課に伺い、インタビューを行いました。水のライフライン確保のために、まず指定避難場所に非常用貯水槽が備えられており、緊急時に飲料水が住民1人に対して3日分確保できるシステムが導入されていることがわかりました。
また、全国初の試みとなる市内全域518の自治体にて、緊急時に地域住民の間で扶助共助が行えるよう防災研修が日頃の対策として行われています。さらに、市内にある92の民間企業・水道局・横浜市・水戸市と協定を結び、他県とも水インフラを始めとする災害対策の扶助共助の関係を作り出していることが判明しました。
- 東京都で行われている災害時の対策について、東京都水道局日野サービスステーションに伺い、インタビューを行いました。ハード面の対策として、配水管の耐震化、避難所の給水管の耐震化を行なっていることが判明しました。特に配水管の耐震化については、平常生活へ早期回復することを目的に「水道管の耐震化10ヵ年事業」が都内各所で行われています。
ソフト面に関して、災害時に給水をスムーズに行えるよう、地域住民との訓練も年一回行われていることが判明しました。
- それぞれのインタビューより、
山梨県では、インフラに対する直接的なアプローチは行っていないものの、災害時対策のために特にソフト面の対策が積極的に行われ、
東京都ではハード面のアプローチが積極的に行われていることがわかりました。
- しの)ここから、水資源の有効活用の事例紹介を行います。資料6ページ第4章「事例分析」に移ります。
まず、水源保全のパートナーシップや条例です。冒頭でも紹介した通り、世界では水不足が深刻化しており、2050年までに4人に1人以上が慢性的な水不足の影響を受ける可能性が高いと示唆されています。
国単位での取り組みとして、日本を含むアジア13カ国では、アジア水環境パートナーシップを2004年に締結し、データベースを構築する事業を行なっています。
日本では保安林の75%が水源かん養保安林に指定され、豊かな水の土壌となっている森を守っています。
県単位でも水を守る条例がいくつも制定されており、特に山梨県ではプラスアルファで水のブランディングを盛んに行なっています。
ページ数の都合上資料には載せていませんが、これから山梨県で行われている水源保全の事例を紹介していきます。
- まず、山梨県南西端に位置する早川町での事例です。早川町には行政からの支援と、企業と行政が手を組んだ取り組みがあります。
行政では森林の中に豊かに発達した土壌を造成しようと「早川町森林環境保全基金」を実施しています。
さらに別事業として、企業と行政が手を組み「やまなし水源地ブランド」事業を行なっています。具体的に水の源である森林を守る事業に力をいれており、森林に関わる民間企業・町役場、山梨県工業技術センターなどで成り立っています。
- 次に、山梨県北西部に位置する白州町での事例です。飲料メーカーのサントリーグループでは、水を育む森を守る「水育」活動を推進しています。「水育」とは、子供達が自然の素晴らしさを感じ、水や水を育む森の大切さに気づき、未来に水を引き継ぐために何ができるのかを考させる、次世代に向けたプログラムです。この活動を通して、行政・企業・市民が一体となって自然の仕組みや大切さを教える場を提供しています。
- さや)事例から、山梨県では水そのものの保全はもちろん、水源・供給地としての保護活動を積極的に行なっていることがわかりました。
また、世界的な水不足の危機的状況を受けて「水がどこからやってきたのか」、「水がなくなったらどうなるのか」といった将来を見据えた事業展開をする傾向があることが掴めました。
これらは、水源地が豊富で、水との距離が近い山梨県だからこそできるアプローチではないでしょうか。
また、行政や民間、ボランティア団体などが個々で活動するのではなく、協働という形でタッグを組むことにより様々な観点からの取り組みが可能になっています。世代を超えて水の大切さを伝承していくためには、地域や企業という枠組みを取り除いて活動する必要があると私たちは考えます。
- しの)ここまで水資源をめぐる山梨県と東京都の比較、また、水資源の有効活用の事例紹介を行いました。
もし、全国シェア一位を誇る山梨県の水が急に途絶えるとなった場合、ミネラルウォーターは現在2番目に生産量が多い静岡県の16%、3番目に多い鳥取県10%に頼らざるを得ません。よって山梨県の水はミネラルウォーター市場において無くてはならない存在であることがわかりました。
災害時の調査を講じている中で、「地方は財政的に厳しいからソフト面を重視せざるを得なく、都市は資金があるのでハード面の強化ができるものの、人の流動が激しいのでソフト面に手をつけにくい」というテーゼを見出しました。
事例研究にて、山梨県ではこどもたちがが物心つきはじめる年齢から、水の大切さを学校の授業で学び、周知されているが故に、水源地保護活動が行政・市民・企業までも巻き込んで盛んに行われているのではないか、ということが推測できました。
☆山梨県の水は県内だけでなく、日本全国にとってなくてはならない資源です。その価値を山梨県民自身が分かっているからこそ、単なるインフラとしての上水道を享受するのではなく、水を通してまち全体の共生・共存に繋がっています。
- よって、私たちは「身近な資源の有限性を認めた上で、産業民が一体となって資源の活用を行なっている点において山梨県は東京都より優位に立つ」と考えます。
- 質問は
・担当は関係ない・その場で答えるべき?・本当に判明してる?「まだ調べがついていません…」
・長くなりそう→「時間が迫っておりますので…個別に対応させて頂きます…」
【想定問答】
Q. なぜ、使用量・料金・生産量をピックアップ?
A. 日常生活で馴染み深い使用量と料金をピック、生産量は山梨県がどれだけ水の供給量があるのかを数値化して示したかったから。