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東京都港区愛宕 2-5-1 愛宕グリーンヒルズ MORIタワー 28階 〒105-6228
http://www.smam-jp.com
<2013年4月12日>
モデル予見制御に基づく
共和分ペアトレード戦略
三井住友アセットマネジメント
株式運用G クオンツ運用担当
中川 慧
アウトライン
【1】 研究の背景・目的
【2】 先行研究の整理
【3】 定式化
【4】 実証分析
【5】 まとめと今後の課題
【1】 研究の背景・目的
 運用業界では、「ベンチマーク」を意識した相対収益型の運用から安定的な
収益獲得を目指す絶対収益型の運用へシフトしつつある。
 絶対収益型の代表的な運用戦略が株式ペアトレードである。先行研究は個々の
ペアのポジションの構築・解消の閾値を決定するトレーディング戦略、平均/分散
アプローチによって複数のペアの保有枚数を同時決定するポートフォリオ戦略の
2つに分類できる。
 実運用を意識しポートフォリオ戦略として、共和分性を満たす複数の株式ペアの
モデル予見制御に基づくペアトレード戦略の定式化と実証分析を行い、安定的な
収益獲得が可能であることを示す。
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3/29/2013 4/29/2013 5/29/2013 6/29/2013 7/29/2013 8/29/2013 9/29/2013
Spreadの水準
株価水準
九電-関電のSpread 九州電力 関西電力
ペアトレード
Step 1: 似たような価格変動をするペアを探す。(ここでは九電と関電)
Step 2: ペアの価格差であるSpreadが広がれば、割安な方(関電)を買い、
割高な方(九電)を売る。 (①)
Step 3: Spreadが収束すればポジションを閉じ、利益を得る。(②)
① ②
(データ取得元:Bloomberg)
共和分性
 一般に、株価はランダムウォーク(単位根過程:差分を取ると定常過程)に従
い将来の株価を予測することはできない。
 一方で、株価のペアのSpreadが一定の近傍で変動するという現象が観察さ
れる。計量経済学的には、これを株式のペアは共和分性を満たすという。
定義:共和分
単位根過程に従う 𝑋𝑡, 𝑌𝑡 に対して、𝑌𝑡 − 𝛽𝑋𝑡が定常過程となる定数𝛽(≠ 0)
が存在するとき、 𝑋𝑡, 𝑌𝑡 は共和分性を満たすという。
定義: (弱)定常過程
期待値 𝐸[𝑌𝑡] = 𝜇が時間 𝑡に依存しない。
自己共分散Cov[𝑌𝑡, 𝑌𝑡−𝑠] が時間 𝑡に依存せず、時間幅 𝑠にのみ依存する。
【2】 先行研究の整理
実運用に当たってはポートフォリオで運用する必要がある。
ペアが共和分性を満たすと定常過程(平均と分散共分散が一定)となり 、ポートフォリオ理論と相性が良い。
✓どのようにポートフォリオを構築するか? Myopic/Dynamic/MPC
(山本,枇々木[2015]を参考に作成)
区分 カテゴリ 論文 決定変数 時間区分 手法 概要
[1] トレーディング戦略 理論 Vidyamurthy.G (2004) 閾値 離散 - 共和分性を満たすペアのポジション設定/解消閾値の考察
[2] トレーディング戦略 実証 Gatev etal. (2006) 閾値 離散 バックテスト
米国市場(1996~2002)において、
コスト控除後でもプラスの収益獲得が可能であることの実証
[3] トレーディング戦略 理論/実証 山本,枇々木 (2015) 閾値 離散 DFO手法
リスク・リターン・コストの観点からDFO手法に基づく最適な投資戦略を求め、
様々な状況下での最適戦略の考察
[4] ポートフォリオ戦略 理論 Kim,Pribms,Boyd (2008) 保有枚数 連続 Dynamicポートフォリオ
共和分性を満たす複数ペアがOU過程に従う場合に、
確率制御のアプローチでDynamicポートフォリオに基づく投資枚数の解析解の導出
[5] ポートフォリオ戦略 理論/実証 山田,Pribms (2012) 保有枚数 連続/離散 Dynamicポートフォリオ/Myopicポートフォリオ
上記のDynamicポートフォリオに対応する離散時間版のMyopicポートフォリオの構築と
各ポートフォリオのパフォーマンス比較
[6] ポートフォリオ戦略 理論 Yamada,Pribms (2012) 保有枚数 離散 Model Predictive Control (MPC)ポートフォリオ
共和分性を満たす複数ペアがVAR(1)モデルに従う場合に、
モデル予見制御(Model Predictive Control、MPC)による投資枚数の解析解の導出
- ポートフォリオ戦略 理論/実証 本稿 保有枚数 離散 MPCポートフォリオ
共和分性を満たす複数ペアの従う時系列を拡張し、
コストの観点からターンオーバーにかかる制約を加味したMPCポートフォリオの構築と実証分析
 各ポートフォリオ構築方法の比較
Myopic
Dynamic
・・・
𝑇0 1 2 𝑇 − 1・・・
0:期初
𝜏:予測期間
𝑇:満期
𝑇 − 1 𝑇210
・・・
MPC ・・・
𝑇0 1 2 𝑇 − 1・・・ 𝜏 𝑇 − 𝜏 ・・・・・・𝜏 + 1
✓
1期先の富最大化
満期Tの富最大化
予測期間先τの
富最大化
【2】先行研究の整理
 モデル予見制御(MPC)とは
制御対象をモデル化し、予測期間τ 、リバランス期間𝛿を与え、予測期間分の
ラグを織り込んだ条件付最適化問題(*)をリバランス毎に解く。
[MPCアルゴリズム]
Select 𝜏 > 0, 𝛿 > 0
Set 𝑛 = 0
For 𝑡 = 0 to 𝑇
If 𝑡 = 𝑛 Then
Optimize(*)
Set 𝑛 = 𝑡 + 𝛿
End if
Next 𝑡
[条件付最適化問題]
時点𝑡から𝑡 + τまでのポートフォリオの収益率を𝑅𝑡,𝜏とし、
時点𝑡における各ペアの投資枚数を
𝒖 𝒕 ≔ 𝑢 𝑡
1
, … , 𝑢 𝑡
𝑚
𝑇
∈ 𝑅 𝑚とする。 max
𝒖 𝒕∈𝑅 𝑚
𝐸𝑡 𝑅𝑡,𝜏 −
𝜆
2
𝑉𝑡 𝑅𝑡,𝜏 … (∗)
ただし、𝑉𝑡 𝑅𝑡,𝜏 ≔ 𝑅𝑡,𝜏 − 𝐸𝑡 𝑅𝑡,𝜏
2
,𝜆はリスク回避係数
予測期間𝜏=5
リバランス期間𝛿=3
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
時間軸 𝑡
【3】モデル(定式化)
共和分性を満たす𝑚個の株式のペア(𝑋t
𝑖
, 𝑌t
𝑖
)に対し、多変量スプレッド過程を
𝑺 𝑡 ≔ 𝑆𝑡
1
, … , 𝑆𝑡
𝑚
𝑇
, 𝑆𝑡
𝑖
≔ 𝑋t
𝑖
− 𝛽 𝑖 𝑌t
𝑖
として、
𝒖 𝑡 ≔ 𝑢 𝑡
1
, … , 𝑢 𝑡
𝑚
𝑇
, 𝑢 𝑡
(𝑖)
: 𝑖番目のスプレッド𝑆𝑡
(𝑖)
に対する投資枚数(≠ウェイト)
予測期間𝜏後のポートフォリオの富は
W𝑡+𝜏 = 𝒖 𝑡
𝑇
𝑺 𝑡+𝜏 − 𝑺 𝑡 + 1 + 𝑟 𝜏
𝑊𝑡 − 𝒖 𝑡
𝑇
𝑺 𝑡 −
𝛼
2
𝒖 𝑡 − 𝒖 𝑡−𝛿
2
✓共和分性を満たす(定常過程の)複数のペアに対して定常時系列(VARMA)モデルを仮定。
✓各ペアの投資枚数を決定変数とする、リスク・リターン・コストを
加味した条件付平均分散問題を解く。
スプレッドの損益 余資運用部分 ターンオーバー制約
【3】モデル(定式化)
時点𝑡から予測期間𝜏後のポートフォリオの富の収益率は𝑅𝑡,𝜏 ≔
𝑊𝑡+𝜏
𝑊𝑡
多変量スプレッド過程𝑺 𝑡が次のVARMA(p, q) モデルに従うとする。
𝑨(𝑳)𝑺 𝑡 = 𝑴 𝑳 𝒆 𝑡 + 𝒄, 𝒆 𝒕~𝑵(𝟎, 𝚺)
𝑨 𝑳 ≔ 𝑰 − 𝑨 𝟏 𝑳 − ⋯ − 𝑨 𝒑 𝑳 𝒑, 𝑴 𝑳 ≔ 𝑰 + 𝑴 𝟏 𝑳 + ⋯ + 𝑴 𝒒 𝑳 𝒒
ただし、𝚺, 𝑨𝒊, 𝑴𝒊, 𝑰 ∈ 𝑅 𝑚×𝑚 , 𝒄 ∈ 𝑅 𝑚, 𝑳はラグオペレータ、 𝑰は単位行列
以上のもとで条件付平均分散問題 max
𝒖 𝒕∈𝑅 𝑚
𝐸𝑡 𝑅𝑡,𝜏 −
𝜆
2
𝑉𝑡 𝑅𝑡,𝜏
の解として最適な投資枚数𝒖 𝑡
∗
は以下となる。
𝒖 𝑡
∗
=(
𝛾
𝑊𝑡
𝚺 + 𝜳 𝟏 𝚺𝜳 𝟏 + ⋯ + 𝜳 𝝉−𝟏 𝚺𝜳 𝝉−𝟏 +α𝑰)
−1
[𝐸𝑡 𝑺 𝑡+𝝉 − 1 + 𝑟 𝝉 𝑺 𝑡 + 𝛼𝒖 𝑡−𝛿]
𝜳𝒊 = 𝑴𝒊 + 𝒋=𝟏
𝒊
𝑨𝒋 𝜳𝒊−𝒋
リスクに対する調整項 スプレッドの期待損益(リターン)
Step 1:共和分性を満たすペアの選定(スクリーニング→ペアの選定)
Step 2:共和分性を満たすペアに対して時系列モデルを仮定し、パラメータを推定
Step 3:MPCに基づき最適ポートフォリオを構築しパフォーマンスを計測
1年(営業日)
In Sample:共和分ペアの推定(STEP1)
VARパラメータの推定(STEP2)
1年(営業日)
Out of Sample:
MPCポートフォリオのシミュレーション(STEP3)
・2007/4初をIn Sampleの起点として、
1年づつのローリングで7回繰り返して行う。(データ取得元:Bloomberg)
In Sample:共和分ペアの推定(STEP1)
VARパラメータの推定(STEP2)
①スクリーニングプロセス
基準化株価 𝑃𝑇
(𝑖)
= 𝑡=1
𝑇
1 + 𝑟𝑡
(𝑖)
; 𝑟𝑡
(𝑖)
=
𝑋t
𝑖
𝑋t−1
𝑖 − 1 最小2乗距離 d(𝑖, 𝑗) = 𝑡=1
𝑇
𝑃𝑡
(𝑖)
− 𝑃𝑡
(𝑗) 2
 同一の産業内の全てのペアに対して基準化株価の最小2乗距離を計算する。
(Gatev et al(2006))
 距離の最も近いペアのスプレッドのDF統計量(𝑎𝑗 = 0の場合の𝑡 𝐷𝐹:片側t検定で負に有意)
が一定値(-3)以下のペアを採用する。(ペアを入替え2回計算し、小さい方を取る)
𝑆𝑡
𝑖
≔ Yt
𝑖
− 𝛽 𝑖 Xt
𝑖
− 𝑐(𝑖)∆𝑆𝑡
𝑖
= 𝛿𝑆𝑡−1
𝑖
+
𝑗=1
𝑛
𝑎𝑗∆𝑆𝑡
𝑖
+𝜀𝑡 ∆𝑆𝑡
𝑖
≔ 𝑆𝑡
𝑖
-𝑆𝑡−1
𝑖
𝑡 𝐷𝐹 ≔
𝛿
𝑠 𝑒
𝛿: 𝑂𝐿𝑆推定量 𝑠 𝑒:標準誤差
TOPIX500構成銘柄を65のブルームバーグ産業分類基準(BICS®)に切り分ける。
期初の株価を1にしたリターン指数
②ペア選定プロセス
 スクリーニングを通過したペアをDF統計量の小さい順にソート。
ラグ10までの有意水準1%のEngle-Grangerの共和分検定を行いペアを採用。
 ただし、すでにペア選定プロセスを通過したペアと同一の銘柄を含んだペアは、
銘柄の重複を省くため除外する
In Sample期間 # of Pairs
2007/4初~2008/3末 18
2008/4初~2009/3末 20
2009/4初~2010/3末 26
2010/4初~2011/3末 23
2011/4初~2012/3末 11
2012/4初~2013/3末 14
2013/4初~2014/3末 16
(各年度の共和分ペア数)
Long企業 Short企業 業種
奥村組 大氣社 Engineering&Construction
長谷工コーポレーション 積水化学工業 Home Builders
野村不動産ホールディングス 三菱地所 Real Estate
大日本印刷 凸版印刷 Commercial Services
ローソン イオン Retail
伊藤忠商事 日立ハイテクノロジーズ Distribution/Wholesale
JSR 昭和電工 Chemicals
淀川製鋼所 大和工業 Iron/Steel
ファナック ナブテスコ Machinery-Diversified
アイフル 野村ホールディングス Diversified Finan Serv
常陽銀行 山口フィナンシャルGRP Banks
八十二銀行 千葉銀行 Banks
大垣共立銀行 百五銀行 Banks
スルガ銀行 セブン銀行 Banks
MS&ADインシュアランスグループホールテ 東京海上ホールディングス Insurance
九州電力 関西電力 Electric
 AIC基準でVAR(p)モデルのpを決定。
 各年度ともにVAR(1)が最適であると結果から,本シミュレーションでは
全期間でVAR(1)モデルを使用。
𝑺 𝑡 = 𝑨𝑺 𝑡−1 + 𝒄 + 𝒆 𝑡, 𝒆 𝒕~𝑵 𝟎, 𝚺
𝚺, 𝑨 ∈ 𝑅 𝑚×𝑚
, 𝒄 ∈ 𝑅 𝑚
(各年度のラグpごとのAIC)
In Sample期間 # of Pairs p=1 p=2 p=3 p=4 p=5
2007/4初~2008/3末 18 118.20 118.83 119.32 119.81 119.83
2008/4初~2009/3末 20 138.37 139.20 139.90 140.34 139.88
2009/4初~2010/3末 26 146.64 147.72 148.45 148.07 146.83
2010/4初~2011/3末 23 100.60 101.69 102.28 102.43 101.92
2011/4初~2012/3末 11 47.80 48.25 48.79 49.14 49.49
2012/4初~2013/3末 14 80.62 80.88 81.14 81.42 81.82
2013/4初~2014/3末 16 94.08 94.70 95.23 95.30 95.46
取引コスト
現実的な取引コストを考慮するため、リバランス後のポートフォリオの富は
W𝑡+1 = 𝒖 𝑡
𝑇
𝑺 𝑡+1 − 𝑺 𝑡 + 1 + 𝑟 𝜏
𝑊𝑡 − 𝒖 𝑡
𝑇
𝑺 𝑡 −
𝑖=1
𝑚
𝜌 𝑢t 𝑋t
𝑖
− 𝑢t−𝛿 𝑋t
𝑖
+ 𝑢t 𝛽 𝑖
𝑌t
𝑖
− 𝑢t−𝛿 𝛽 𝑖
𝑌t
𝑖
で計算し(𝜌=15bp)、またショートコスト(借株料など)として、富の1%を日割りで控除する。
レバレッジ ≔
𝑖=1
𝑚
𝑢 𝑡
∗ 𝑖
𝑋𝑡
𝑖
+ 𝛽 𝑖 𝑌𝑡
𝑖
𝑊𝑡
ターンオーバーにかかる制約を考慮せず(α=0)、予測期間とリバランス期間を変更し、
シャープレシオと日々の富の水準を評価する。
 レバレッジ
ロングとショートを足し合わせたレバレッジが2倍程度になるようにリスク回避係数を調整する。
 無リスク利子率𝑟
年率10bpとする。
(Out of Sampleにおける年率シャープレシオの水準:縦軸と予測期間:横軸)
0.00
0.20
0.40
0.60
0.80
1.00
1.20
1.40
1.60
10 20 30 40 50 60 70 80 90
年率換算Sharpe Ratio
[Out of Sample:2014/4~2015/3]
δ:1 δ:10 δ:20 δ:30 δ:40 δ:50 δ:60
0.00
0.20
0.40
0.60
0.80
1.00
1.20
1.40
1.60
10 20 30 40 50 60 70 80 90
年率換算Sharpe Ratio
[Out of Sample:2014/4~2015/3]
δ:1 δ:10 δ:20 δ:30 δ:40 δ:50 δ:60
0.9
0.93
0.96
0.99
1.02
1.05
1.08
1.11
τ=60,δ=20の富の水準
年間
リターン
年率
標準偏差
Sharpe
Ratio
MAX
日次リターン
MIN
日次リターン
MPC 7.84% 7.95% 0.97 1.73% -1.79%
TPX500 26.70% 16.29% 1.64 4.37% -2.89%
(Out of Sampleにおける年率シャープレシオの水準:縦軸と予測期間:横軸)
0.85
0.9
0.95
1
1.05
1.1
1.15
1.2
1.25
1.3
τ=60,δ=20の富の水準
0.00
0.20
0.40
0.60
0.80
1.00
1.20
1.40
1.60
10 20 30 40 50 60 70 80 90
年率換算Sharpe Ratio
[Out of Sample:2008/4~2009/3]
δ:1 δ:10 δ:20 δ:30 δ:40 δ:50 δ:60
0.00
0.20
0.40
0.60
0.80
1.00
1.20
1.40
1.60
10 20 30 40 50 60 70 80 90
年率換算Sharpe Ratio
[Out of Sample:2008/4~2009/3]
δ:1 δ:10 δ:20 δ:30 δ:40 δ:50 δ:60
年間
リターン
年率
標準偏差
Sharpe
Ratio
MAX
日次リターン
MIN
日次リターン
MPC 21.67% 15.56% 1.39 4.45% -3.26%
TPX500 -37.30% 42.13% -0.89 13.80% -9.73%
(Out of Sampleにおける年率シャープレシオの水準:縦軸と予測期間:横軸)
0.00
0.50
1.00
1.50
2.00
2.50
3.00
MPC(τ=60,δ=20)とTPX500の富の水準
MPC(τ=60,δ=20) TPX500
0.00
0.20
0.40
0.60
0.80
1.00
1.20
1.40
1.60
10 20 30 40 50 60 70 80 90
年率換算Sharpe Ratio
[Out of Sample:2008/4~2015/3]
δ:1 δ:10 δ:20 δ:30 δ:40 δ:50 δ:60
0.00
0.20
0.40
0.60
0.80
1.00
1.20
1.40
1.60
10 20 30 40 50 60 70 80 90
年率換算Sharpe Ratio
[Out of Sample:2008/4~2015/3]
δ:1 δ:10 δ:20 δ:30 δ:40 δ:50 δ:60
 予測期間が長いほどパフォーマンスは向上する傾向
 リバランスのタイミングによってパフォーマンスに差が生じる
 次にα(ターンオーバー制約)を考慮して同様のシミュレーションを行う。
係数に誤差を仮定し、正則化解を求める相変原理を参考にαを算出する。
相変原理: 𝑨𝒙 𝜶 − 𝒃 = δ𝒃 として 𝛼を選ぶ。
𝒙 𝜶=(
𝛾
𝑊𝑡
𝚺 + 𝜳 𝟏 𝚺𝜳 𝟏 + ⋯ + 𝜳 𝝉−𝟏 𝚺𝜳 𝝉−𝟏 +α𝑰)
−1
[𝐸𝑡 𝑺 𝑡+𝝉 − 1 + 𝑟 𝝉 𝑺 𝑡 + 𝛼𝒖 𝑡−𝛿]
𝑨=(
𝛾
𝑊𝑡
𝚺 + 𝜳 𝟏 𝚺𝜳 𝟏 + ⋯ + 𝜳 𝝉−𝟏 𝚺𝜳 𝝉−𝟏 )
𝒃 = [𝐸𝑡 𝑺 𝑡+𝝉 − 1 + 𝑟 𝝉
𝑺 𝑡]
δ𝒃 = diag(𝚺)
(Out of Sampleにおける年率シャープレシオの水準:縦軸と予測期間:横軸)
0.00
0.20
0.40
0.60
0.80
1.00
1.20
1.40
1.60
1.80
2.00
10 20 30 40 50 60 70 80 90
年率換算Sharpe Ratio(α考慮)
[Out of Sample:2014/4~2015/3]
δ:1 δ:10 δ:20 δ:30 δ:40 δ:50 δ:60
0.95
1.00
1.05
1.10
1.15
1.20
τ=60,δ=10の富の水準
α考慮 αなし
(Out of Sampleにおける年率シャープレシオの水準:縦軸と予測期間:横軸)
0.60
0.80
1.00
1.20
1.40
1.60
1.80
2.00
10 20 30 40 50 60 70 80 90
年率換算Sharpe Ratio(α考慮)
[Out of Sample:2008/4~2009/3]
δ:1 δ:10 δ:20 δ:30 δ:40 δ:50 δ:60
0.95
1
1.05
1.1
1.15
1.2
1.25
τ=60,δ=10の富の水準
α考慮 αなし
(Out of Sampleにおける年率シャープレシオの水準:縦軸と予測期間:横軸)
0.50
1.00
1.50
2.00
2.50
3.00
τ=60,δ=10の富の水準
α考慮 αなし
0.40
0.60
0.80
1.00
1.20
1.40
1.60
10 20 30 40 50 60 70 80 90
年率換算Sharpe Ratio
[Out of Sample:2008/4~2015/3]
δ:1 δ:10 δ:20 δ:30 δ:40 δ:50 δ:60
A B =B-A
期間 SR SR_α 差異
200804-200903 1.26 1.60 0.33
200904-201003 0.96 0.62 -0.34
201004-201103 1.23 1.44 0.22
201104-201203 0.69 0.96 0.27
201204-201303 0.67 0.73 0.06
201304-201403 0.74 1.12 0.38
201404-201503 1.40 1.72 0.32
A B C D E=A-B F=C-D =C-A =F-E =D-B
期間 Gross Net Gross_α Net_α Cost Cost_α PF差異 Cost差異 総差異
200804-200903 25.36% 20.45% 39.13% 34.79% 4.91% 4.34% 13.77% 0.58% 14.35%
200904-201003 15.88% 10.46% 12.38% 8.15% 5.43% 4.23% -3.50% 1.20% -2.30%
201004-201103 17.14% 12.58% 15.24% 11.58% 4.56% 3.66% -1.90% 0.90% -1.00%
201104-201203 9.45% 4.27% 10.36% 6.41% 5.18% 3.95% 0.91% 1.23% 2.14%
201204-201303 10.85% 6.23% 10.19% 6.92% 4.62% 3.27% -0.66% 1.35% 0.69%
201304-201403 15.84% 10.83% 23.12% 19.61% 5.01% 3.51% 7.28% 1.50% 8.78%
201404-201503 17.21% 11.50% 21.18% 15.92% 5.71% 5.26% 3.97% 0.45% 4.42%
(予測期間60,リバランス期間10におけるリターンの比較)
(予測期間60,リバランス期間10におけるシャープレシオの比較)
 リターンについてはコストの削減により回転率を抑制
 シャープレシオも改善傾向
ただし、ターンオーバーにかかる制約により、適切なリバラン
スを実施できないことでパフォーマンスが劣後する場合も。
0
50
100
150
200
250
300
日次リターンのヒストグラム
平均 0.06%
標準誤差 0.02%
中央値 (メジアン) 0.04%
標準偏差 0.01
分散 0.00
尖度 3.82
歪度 0.35
最小 -3.69%
最大 4.96%
(日次リターンの統計量 )
予測期間60,リバランス期間10における日次リターン
回帰統計
重相関 R 0.31
重決定 R2 0.09
補正 R2 0.06
標準誤差 0.04
観測数 84
分散分析表
自由度 変動 分散 観測された分散比 有意 F
回帰 3 0.01 0.00 2.74 0.05
残差 80 0.10 0.00
合計 83 0.11
係数 標準誤差 t P-値 下限 95% 上限 95%
切片 0.02 0.00 4.21 0.00 0.01 0.03
Monentum -0.88 0.45 -1.93 0.06 -1.78 0.03
Value -1.39 0.55 -2.52 0.01 -2.49 -0.29
TPX500 2.11 0.91 2.31 0.02 0.29 3.93
Monentum Value TPX500 MPC
Monentum 1
Value 0.94 1
TPX500 0.98 0.99 1
MPC -0.14 -0.17 -0.15 1
予測期間60,リバランス期間10におけるリスクの状況
(指数とポートフォリオの相関行列)
 MPCポートフォリオの月次リターンをスタイル指数で回帰した結果
指数は、モメンタム(Citi QuantIFI Index Japan Momentum)、バリュー(大和DSI2 Large Value)、ベータ(TOPIX500)を使用
 Out of Sample期間全体のうち、どれくらいの期間で共和分性が成立していたか
(ラグ10までの有意水準5%のEngle-Grangerの共和分検定)
0
5
10
15
20
25
30
#ofPairs
Out of Sample期間において共和分性が継続した割合
各ペアの共和分性の継続割合
Out of Sample期間 # of Pairs 平均 標準偏差
200804-200903 18 33% 24%
200904-201003 20 55% 28%
201004-201103 26 27% 19%
201104-201203 23 34% 21%
201204-201303 11 32% 27%
201304-201403 14 25% 17%
201404-201503 16 39% 25%
全期間 128 35% 23%
(各年度毎詳細)
 まとめ
各シミュレーション期間で取引コストを控除しても良好なパフォーマンス。
 今後の課題
・ペアのスクリーニングプロセスの改良。
・ペアの時系列モデルを拡張したシミュレーションの実施
(VARMA/DCC-GARCH Modelなど)
・共和分ペアを動的に入れ替えたシミュレーションの実施
・定式化の連続時間への拡張
【参考文献(一部)】
[1]「Pairs Trading:Quantitative Method and Analysis」
Vidyamurthy,G.(2004)
[2] 「Pairs Trading:Performance of a Relative Values Arbitrage Rule」
E.Gatev,et al(2006)
[3] 「ファンド運営を意識した最適ペアトレード戦略-DFO手法を用いた問題設計-」
山本零, 枇々木規雄. (2015)
[4] 「Dynamic Spread Trading」
Kim.S-J,J.Primbs,and S.Boyd (2008)
[5] 「共和分性に基づく最適ペアトレード」
山田雄二,J.Primbs (2012)
[6] 「Model Predictive Control for Optimal Portfolios with Cointegrated Pairs of
Stocks」
Y.Yamada,J.Primbs (2012)
𝑅𝑡,𝜏 − 𝐸𝑡 𝑅𝑡,𝜏 =
𝒖 𝑡
𝑇
𝑊𝑡
[𝑺 𝑡+𝜏 − 𝐸𝑡(𝑺 𝑡+𝜏)] であるので、 𝑺 𝒕の𝑉𝑀𝐴(∞)表現を
𝑺 𝒕 = 𝒆 𝒕 + 𝜳 𝟏 𝒆 𝒕−𝟏 + ⋯ + 𝜳 𝝉−𝟏 𝒆 𝒕− 𝝉−𝟏 + 𝜳 𝝉 𝒆 𝒕−𝝉 + ⋯
⇔ 𝑺 𝑡+𝝉 = 𝒆 𝒕+𝝉 + 𝜳 𝟏 𝒆 𝒕+𝝉−𝟏 + ⋯ + 𝜳 𝝉−𝟏 𝒆 𝒕+𝟏 + 𝜳 𝝉 𝒆 𝒕 + ⋯ , 𝜳𝒊 ∈ 𝑅 𝑚×𝑚
とすると、𝑺 𝑡+𝜏の条件付き期待値は𝐸𝑡 𝑺 𝑡+𝜏 = 𝜳 𝝉 𝒆 𝒕 + 𝜳 𝝉+𝟏 𝒆 𝒕−𝟏 + ⋯ と書けるので、
𝑅𝑡,𝜏 − 𝐸𝑡 𝑅𝑡,𝜏 =
𝒖 𝑡
𝑇
𝑊𝑡
[𝒆 𝒕+𝝉 + 𝜳 𝝉 𝒆 𝒕+𝝉−𝟏 + ⋯ + 𝜳 𝝉−𝟏 𝒆 𝒕+𝟏]
を得て、ゆえに条件付き分散 𝑉𝑡 𝑅𝑡,𝜏 は、
𝑉𝑡 𝑅𝑡,𝜏 =
𝒖 𝑡
𝑇
𝑊𝑡
[𝜮 𝒕+𝝉 + 𝜳 𝟏 𝜮 𝒕+𝝉−𝟏 𝜳 𝟏 + ⋯ + 𝜳 𝝉−𝟏 𝜮 𝒕+𝟏 𝜳 𝝉−𝟏]
𝒖 𝒕
𝑊𝑡
=
𝒖 𝑡
𝑇
𝑊𝑡
[𝜮 + 𝜳 𝟏 𝜮𝜳 𝟏 + ⋯ + 𝜳 𝝉−𝟏 𝜮𝜳 𝝉−𝟏]
𝒖 𝑡
𝑊𝑡
以上から、条件付き平均分散問題は
max
𝒖 𝑡∈𝑅(𝑚)
1 + 𝑟 𝜏
+
𝒖 𝑡
𝑇
𝑊𝑡
𝐸𝑡 𝑺 𝑡+𝜏 − 1 + 𝑟 𝜏
𝑺 𝑡 −
𝛼
2𝑊𝑡
𝒖 𝑡 − 𝒖 𝑡−δ
2
−
𝛾
2
𝒖 𝑡
𝑇
𝑊𝑡
[𝜮 + 𝜳 𝟏 𝜮𝜳 𝟏 + ⋯ + 𝜳 𝝉−𝟏 𝜮𝜳 𝝉−𝟏]
𝒖 𝒕
𝑊𝑡
と書くことができ、𝒖 𝑡について微分すると、(1階の条件)
𝒖 𝑡 =
𝛾
𝑊𝑡
𝜮 + 𝜳 𝟏 𝜮𝜳 𝟏 + ⋯ + 𝜳 𝝉−𝟏 𝜮𝜳 𝝉−𝟏 + 𝛼𝑰
−𝟏
[𝐸𝑡 𝑺 𝑡+𝜏 − 1 + 𝑟 𝜏 𝑺 𝑡+𝛼𝒖 𝑡−δ]
連立方程式
𝑨𝒙 = 𝒃
において
𝑨𝒙 − 𝒃 2 = 0
を最小にする𝒙 を最小自乗解という。これに正則化項のα 𝒙 2を加えた、
J = 𝑨𝒙 − 𝒃 2 + α 𝒙 2
の解𝒙 𝜶を正則化解と呼ぶ。
さらに、𝒃には誤差δ𝒃があり、真の値𝒃∗は不明であるが、その誤差の大きさ δ𝒃 は
わかっていると仮定する。
つまり、𝒃 = 𝒃∗
+ δ𝒃であるが、真の解𝒙 𝒆𝒙が満たすべき
𝑨𝒙 𝒆𝒙 − 𝒃∗ − δ𝒃 = δ𝒃
という関係を正則化解𝒙 𝜶 に対して当てはめ、
𝑨𝒙 𝜶 − 𝒃 = δ𝒃 として 𝛼を選ぶ。

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モデル予見制御に基づくペアトレード戦略

  • 1. 東京都港区愛宕 2-5-1 愛宕グリーンヒルズ MORIタワー 28階 〒105-6228 http://www.smam-jp.com <2013年4月12日> モデル予見制御に基づく 共和分ペアトレード戦略 三井住友アセットマネジメント 株式運用G クオンツ運用担当 中川 慧
  • 2. アウトライン 【1】 研究の背景・目的 【2】 先行研究の整理 【3】 定式化 【4】 実証分析 【5】 まとめと今後の課題
  • 3. 【1】 研究の背景・目的  運用業界では、「ベンチマーク」を意識した相対収益型の運用から安定的な 収益獲得を目指す絶対収益型の運用へシフトしつつある。  絶対収益型の代表的な運用戦略が株式ペアトレードである。先行研究は個々の ペアのポジションの構築・解消の閾値を決定するトレーディング戦略、平均/分散 アプローチによって複数のペアの保有枚数を同時決定するポートフォリオ戦略の 2つに分類できる。  実運用を意識しポートフォリオ戦略として、共和分性を満たす複数の株式ペアの モデル予見制御に基づくペアトレード戦略の定式化と実証分析を行い、安定的な 収益獲得が可能であることを示す。
  • 4. 0 50 100 150 200 250 800 900 1000 1100 1200 1300 1400 1500 1600 3/29/2013 4/29/2013 5/29/2013 6/29/2013 7/29/2013 8/29/2013 9/29/2013 Spreadの水準 株価水準 九電-関電のSpread 九州電力 関西電力 ペアトレード Step 1: 似たような価格変動をするペアを探す。(ここでは九電と関電) Step 2: ペアの価格差であるSpreadが広がれば、割安な方(関電)を買い、 割高な方(九電)を売る。 (①) Step 3: Spreadが収束すればポジションを閉じ、利益を得る。(②) ① ② (データ取得元:Bloomberg)
  • 5. 共和分性  一般に、株価はランダムウォーク(単位根過程:差分を取ると定常過程)に従 い将来の株価を予測することはできない。  一方で、株価のペアのSpreadが一定の近傍で変動するという現象が観察さ れる。計量経済学的には、これを株式のペアは共和分性を満たすという。 定義:共和分 単位根過程に従う 𝑋𝑡, 𝑌𝑡 に対して、𝑌𝑡 − 𝛽𝑋𝑡が定常過程となる定数𝛽(≠ 0) が存在するとき、 𝑋𝑡, 𝑌𝑡 は共和分性を満たすという。 定義: (弱)定常過程 期待値 𝐸[𝑌𝑡] = 𝜇が時間 𝑡に依存しない。 自己共分散Cov[𝑌𝑡, 𝑌𝑡−𝑠] が時間 𝑡に依存せず、時間幅 𝑠にのみ依存する。
  • 6. 【2】 先行研究の整理 実運用に当たってはポートフォリオで運用する必要がある。 ペアが共和分性を満たすと定常過程(平均と分散共分散が一定)となり 、ポートフォリオ理論と相性が良い。 ✓どのようにポートフォリオを構築するか? Myopic/Dynamic/MPC (山本,枇々木[2015]を参考に作成) 区分 カテゴリ 論文 決定変数 時間区分 手法 概要 [1] トレーディング戦略 理論 Vidyamurthy.G (2004) 閾値 離散 - 共和分性を満たすペアのポジション設定/解消閾値の考察 [2] トレーディング戦略 実証 Gatev etal. (2006) 閾値 離散 バックテスト 米国市場(1996~2002)において、 コスト控除後でもプラスの収益獲得が可能であることの実証 [3] トレーディング戦略 理論/実証 山本,枇々木 (2015) 閾値 離散 DFO手法 リスク・リターン・コストの観点からDFO手法に基づく最適な投資戦略を求め、 様々な状況下での最適戦略の考察 [4] ポートフォリオ戦略 理論 Kim,Pribms,Boyd (2008) 保有枚数 連続 Dynamicポートフォリオ 共和分性を満たす複数ペアがOU過程に従う場合に、 確率制御のアプローチでDynamicポートフォリオに基づく投資枚数の解析解の導出 [5] ポートフォリオ戦略 理論/実証 山田,Pribms (2012) 保有枚数 連続/離散 Dynamicポートフォリオ/Myopicポートフォリオ 上記のDynamicポートフォリオに対応する離散時間版のMyopicポートフォリオの構築と 各ポートフォリオのパフォーマンス比較 [6] ポートフォリオ戦略 理論 Yamada,Pribms (2012) 保有枚数 離散 Model Predictive Control (MPC)ポートフォリオ 共和分性を満たす複数ペアがVAR(1)モデルに従う場合に、 モデル予見制御(Model Predictive Control、MPC)による投資枚数の解析解の導出 - ポートフォリオ戦略 理論/実証 本稿 保有枚数 離散 MPCポートフォリオ 共和分性を満たす複数ペアの従う時系列を拡張し、 コストの観点からターンオーバーにかかる制約を加味したMPCポートフォリオの構築と実証分析
  • 7.  各ポートフォリオ構築方法の比較 Myopic Dynamic ・・・ 𝑇0 1 2 𝑇 − 1・・・ 0:期初 𝜏:予測期間 𝑇:満期 𝑇 − 1 𝑇210 ・・・ MPC ・・・ 𝑇0 1 2 𝑇 − 1・・・ 𝜏 𝑇 − 𝜏 ・・・・・・𝜏 + 1 ✓ 1期先の富最大化 満期Tの富最大化 予測期間先τの 富最大化
  • 8. 【2】先行研究の整理  モデル予見制御(MPC)とは 制御対象をモデル化し、予測期間τ 、リバランス期間𝛿を与え、予測期間分の ラグを織り込んだ条件付最適化問題(*)をリバランス毎に解く。 [MPCアルゴリズム] Select 𝜏 > 0, 𝛿 > 0 Set 𝑛 = 0 For 𝑡 = 0 to 𝑇 If 𝑡 = 𝑛 Then Optimize(*) Set 𝑛 = 𝑡 + 𝛿 End if Next 𝑡 [条件付最適化問題] 時点𝑡から𝑡 + τまでのポートフォリオの収益率を𝑅𝑡,𝜏とし、 時点𝑡における各ペアの投資枚数を 𝒖 𝒕 ≔ 𝑢 𝑡 1 , … , 𝑢 𝑡 𝑚 𝑇 ∈ 𝑅 𝑚とする。 max 𝒖 𝒕∈𝑅 𝑚 𝐸𝑡 𝑅𝑡,𝜏 − 𝜆 2 𝑉𝑡 𝑅𝑡,𝜏 … (∗) ただし、𝑉𝑡 𝑅𝑡,𝜏 ≔ 𝑅𝑡,𝜏 − 𝐸𝑡 𝑅𝑡,𝜏 2 ,𝜆はリスク回避係数 予測期間𝜏=5 リバランス期間𝛿=3 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 時間軸 𝑡
  • 9. 【3】モデル(定式化) 共和分性を満たす𝑚個の株式のペア(𝑋t 𝑖 , 𝑌t 𝑖 )に対し、多変量スプレッド過程を 𝑺 𝑡 ≔ 𝑆𝑡 1 , … , 𝑆𝑡 𝑚 𝑇 , 𝑆𝑡 𝑖 ≔ 𝑋t 𝑖 − 𝛽 𝑖 𝑌t 𝑖 として、 𝒖 𝑡 ≔ 𝑢 𝑡 1 , … , 𝑢 𝑡 𝑚 𝑇 , 𝑢 𝑡 (𝑖) : 𝑖番目のスプレッド𝑆𝑡 (𝑖) に対する投資枚数(≠ウェイト) 予測期間𝜏後のポートフォリオの富は W𝑡+𝜏 = 𝒖 𝑡 𝑇 𝑺 𝑡+𝜏 − 𝑺 𝑡 + 1 + 𝑟 𝜏 𝑊𝑡 − 𝒖 𝑡 𝑇 𝑺 𝑡 − 𝛼 2 𝒖 𝑡 − 𝒖 𝑡−𝛿 2 ✓共和分性を満たす(定常過程の)複数のペアに対して定常時系列(VARMA)モデルを仮定。 ✓各ペアの投資枚数を決定変数とする、リスク・リターン・コストを 加味した条件付平均分散問題を解く。 スプレッドの損益 余資運用部分 ターンオーバー制約
  • 10. 【3】モデル(定式化) 時点𝑡から予測期間𝜏後のポートフォリオの富の収益率は𝑅𝑡,𝜏 ≔ 𝑊𝑡+𝜏 𝑊𝑡 多変量スプレッド過程𝑺 𝑡が次のVARMA(p, q) モデルに従うとする。 𝑨(𝑳)𝑺 𝑡 = 𝑴 𝑳 𝒆 𝑡 + 𝒄, 𝒆 𝒕~𝑵(𝟎, 𝚺) 𝑨 𝑳 ≔ 𝑰 − 𝑨 𝟏 𝑳 − ⋯ − 𝑨 𝒑 𝑳 𝒑, 𝑴 𝑳 ≔ 𝑰 + 𝑴 𝟏 𝑳 + ⋯ + 𝑴 𝒒 𝑳 𝒒 ただし、𝚺, 𝑨𝒊, 𝑴𝒊, 𝑰 ∈ 𝑅 𝑚×𝑚 , 𝒄 ∈ 𝑅 𝑚, 𝑳はラグオペレータ、 𝑰は単位行列 以上のもとで条件付平均分散問題 max 𝒖 𝒕∈𝑅 𝑚 𝐸𝑡 𝑅𝑡,𝜏 − 𝜆 2 𝑉𝑡 𝑅𝑡,𝜏 の解として最適な投資枚数𝒖 𝑡 ∗ は以下となる。 𝒖 𝑡 ∗ =( 𝛾 𝑊𝑡 𝚺 + 𝜳 𝟏 𝚺𝜳 𝟏 + ⋯ + 𝜳 𝝉−𝟏 𝚺𝜳 𝝉−𝟏 +α𝑰) −1 [𝐸𝑡 𝑺 𝑡+𝝉 − 1 + 𝑟 𝝉 𝑺 𝑡 + 𝛼𝒖 𝑡−𝛿] 𝜳𝒊 = 𝑴𝒊 + 𝒋=𝟏 𝒊 𝑨𝒋 𝜳𝒊−𝒋 リスクに対する調整項 スプレッドの期待損益(リターン)
  • 11. Step 1:共和分性を満たすペアの選定(スクリーニング→ペアの選定) Step 2:共和分性を満たすペアに対して時系列モデルを仮定し、パラメータを推定 Step 3:MPCに基づき最適ポートフォリオを構築しパフォーマンスを計測 1年(営業日) In Sample:共和分ペアの推定(STEP1) VARパラメータの推定(STEP2) 1年(営業日) Out of Sample: MPCポートフォリオのシミュレーション(STEP3) ・2007/4初をIn Sampleの起点として、 1年づつのローリングで7回繰り返して行う。(データ取得元:Bloomberg) In Sample:共和分ペアの推定(STEP1) VARパラメータの推定(STEP2)
  • 12. ①スクリーニングプロセス 基準化株価 𝑃𝑇 (𝑖) = 𝑡=1 𝑇 1 + 𝑟𝑡 (𝑖) ; 𝑟𝑡 (𝑖) = 𝑋t 𝑖 𝑋t−1 𝑖 − 1 最小2乗距離 d(𝑖, 𝑗) = 𝑡=1 𝑇 𝑃𝑡 (𝑖) − 𝑃𝑡 (𝑗) 2  同一の産業内の全てのペアに対して基準化株価の最小2乗距離を計算する。 (Gatev et al(2006))  距離の最も近いペアのスプレッドのDF統計量(𝑎𝑗 = 0の場合の𝑡 𝐷𝐹:片側t検定で負に有意) が一定値(-3)以下のペアを採用する。(ペアを入替え2回計算し、小さい方を取る) 𝑆𝑡 𝑖 ≔ Yt 𝑖 − 𝛽 𝑖 Xt 𝑖 − 𝑐(𝑖)∆𝑆𝑡 𝑖 = 𝛿𝑆𝑡−1 𝑖 + 𝑗=1 𝑛 𝑎𝑗∆𝑆𝑡 𝑖 +𝜀𝑡 ∆𝑆𝑡 𝑖 ≔ 𝑆𝑡 𝑖 -𝑆𝑡−1 𝑖 𝑡 𝐷𝐹 ≔ 𝛿 𝑠 𝑒 𝛿: 𝑂𝐿𝑆推定量 𝑠 𝑒:標準誤差 TOPIX500構成銘柄を65のブルームバーグ産業分類基準(BICS®)に切り分ける。 期初の株価を1にしたリターン指数
  • 13. ②ペア選定プロセス  スクリーニングを通過したペアをDF統計量の小さい順にソート。 ラグ10までの有意水準1%のEngle-Grangerの共和分検定を行いペアを採用。  ただし、すでにペア選定プロセスを通過したペアと同一の銘柄を含んだペアは、 銘柄の重複を省くため除外する In Sample期間 # of Pairs 2007/4初~2008/3末 18 2008/4初~2009/3末 20 2009/4初~2010/3末 26 2010/4初~2011/3末 23 2011/4初~2012/3末 11 2012/4初~2013/3末 14 2013/4初~2014/3末 16 (各年度の共和分ペア数) Long企業 Short企業 業種 奥村組 大氣社 Engineering&Construction 長谷工コーポレーション 積水化学工業 Home Builders 野村不動産ホールディングス 三菱地所 Real Estate 大日本印刷 凸版印刷 Commercial Services ローソン イオン Retail 伊藤忠商事 日立ハイテクノロジーズ Distribution/Wholesale JSR 昭和電工 Chemicals 淀川製鋼所 大和工業 Iron/Steel ファナック ナブテスコ Machinery-Diversified アイフル 野村ホールディングス Diversified Finan Serv 常陽銀行 山口フィナンシャルGRP Banks 八十二銀行 千葉銀行 Banks 大垣共立銀行 百五銀行 Banks スルガ銀行 セブン銀行 Banks MS&ADインシュアランスグループホールテ 東京海上ホールディングス Insurance 九州電力 関西電力 Electric
  • 14.  AIC基準でVAR(p)モデルのpを決定。  各年度ともにVAR(1)が最適であると結果から,本シミュレーションでは 全期間でVAR(1)モデルを使用。 𝑺 𝑡 = 𝑨𝑺 𝑡−1 + 𝒄 + 𝒆 𝑡, 𝒆 𝒕~𝑵 𝟎, 𝚺 𝚺, 𝑨 ∈ 𝑅 𝑚×𝑚 , 𝒄 ∈ 𝑅 𝑚 (各年度のラグpごとのAIC) In Sample期間 # of Pairs p=1 p=2 p=3 p=4 p=5 2007/4初~2008/3末 18 118.20 118.83 119.32 119.81 119.83 2008/4初~2009/3末 20 138.37 139.20 139.90 140.34 139.88 2009/4初~2010/3末 26 146.64 147.72 148.45 148.07 146.83 2010/4初~2011/3末 23 100.60 101.69 102.28 102.43 101.92 2011/4初~2012/3末 11 47.80 48.25 48.79 49.14 49.49 2012/4初~2013/3末 14 80.62 80.88 81.14 81.42 81.82 2013/4初~2014/3末 16 94.08 94.70 95.23 95.30 95.46
  • 15. 取引コスト 現実的な取引コストを考慮するため、リバランス後のポートフォリオの富は W𝑡+1 = 𝒖 𝑡 𝑇 𝑺 𝑡+1 − 𝑺 𝑡 + 1 + 𝑟 𝜏 𝑊𝑡 − 𝒖 𝑡 𝑇 𝑺 𝑡 − 𝑖=1 𝑚 𝜌 𝑢t 𝑋t 𝑖 − 𝑢t−𝛿 𝑋t 𝑖 + 𝑢t 𝛽 𝑖 𝑌t 𝑖 − 𝑢t−𝛿 𝛽 𝑖 𝑌t 𝑖 で計算し(𝜌=15bp)、またショートコスト(借株料など)として、富の1%を日割りで控除する。 レバレッジ ≔ 𝑖=1 𝑚 𝑢 𝑡 ∗ 𝑖 𝑋𝑡 𝑖 + 𝛽 𝑖 𝑌𝑡 𝑖 𝑊𝑡 ターンオーバーにかかる制約を考慮せず(α=0)、予測期間とリバランス期間を変更し、 シャープレシオと日々の富の水準を評価する。  レバレッジ ロングとショートを足し合わせたレバレッジが2倍程度になるようにリスク回避係数を調整する。  無リスク利子率𝑟 年率10bpとする。
  • 16. (Out of Sampleにおける年率シャープレシオの水準:縦軸と予測期間:横軸) 0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00 1.20 1.40 1.60 10 20 30 40 50 60 70 80 90 年率換算Sharpe Ratio [Out of Sample:2014/4~2015/3] δ:1 δ:10 δ:20 δ:30 δ:40 δ:50 δ:60 0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00 1.20 1.40 1.60 10 20 30 40 50 60 70 80 90 年率換算Sharpe Ratio [Out of Sample:2014/4~2015/3] δ:1 δ:10 δ:20 δ:30 δ:40 δ:50 δ:60 0.9 0.93 0.96 0.99 1.02 1.05 1.08 1.11 τ=60,δ=20の富の水準 年間 リターン 年率 標準偏差 Sharpe Ratio MAX 日次リターン MIN 日次リターン MPC 7.84% 7.95% 0.97 1.73% -1.79% TPX500 26.70% 16.29% 1.64 4.37% -2.89%
  • 17. (Out of Sampleにおける年率シャープレシオの水準:縦軸と予測期間:横軸) 0.85 0.9 0.95 1 1.05 1.1 1.15 1.2 1.25 1.3 τ=60,δ=20の富の水準 0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00 1.20 1.40 1.60 10 20 30 40 50 60 70 80 90 年率換算Sharpe Ratio [Out of Sample:2008/4~2009/3] δ:1 δ:10 δ:20 δ:30 δ:40 δ:50 δ:60 0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00 1.20 1.40 1.60 10 20 30 40 50 60 70 80 90 年率換算Sharpe Ratio [Out of Sample:2008/4~2009/3] δ:1 δ:10 δ:20 δ:30 δ:40 δ:50 δ:60 年間 リターン 年率 標準偏差 Sharpe Ratio MAX 日次リターン MIN 日次リターン MPC 21.67% 15.56% 1.39 4.45% -3.26% TPX500 -37.30% 42.13% -0.89 13.80% -9.73%
  • 18. (Out of Sampleにおける年率シャープレシオの水準:縦軸と予測期間:横軸) 0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 MPC(τ=60,δ=20)とTPX500の富の水準 MPC(τ=60,δ=20) TPX500 0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00 1.20 1.40 1.60 10 20 30 40 50 60 70 80 90 年率換算Sharpe Ratio [Out of Sample:2008/4~2015/3] δ:1 δ:10 δ:20 δ:30 δ:40 δ:50 δ:60 0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00 1.20 1.40 1.60 10 20 30 40 50 60 70 80 90 年率換算Sharpe Ratio [Out of Sample:2008/4~2015/3] δ:1 δ:10 δ:20 δ:30 δ:40 δ:50 δ:60
  • 19.  予測期間が長いほどパフォーマンスは向上する傾向  リバランスのタイミングによってパフォーマンスに差が生じる  次にα(ターンオーバー制約)を考慮して同様のシミュレーションを行う。 係数に誤差を仮定し、正則化解を求める相変原理を参考にαを算出する。 相変原理: 𝑨𝒙 𝜶 − 𝒃 = δ𝒃 として 𝛼を選ぶ。 𝒙 𝜶=( 𝛾 𝑊𝑡 𝚺 + 𝜳 𝟏 𝚺𝜳 𝟏 + ⋯ + 𝜳 𝝉−𝟏 𝚺𝜳 𝝉−𝟏 +α𝑰) −1 [𝐸𝑡 𝑺 𝑡+𝝉 − 1 + 𝑟 𝝉 𝑺 𝑡 + 𝛼𝒖 𝑡−𝛿] 𝑨=( 𝛾 𝑊𝑡 𝚺 + 𝜳 𝟏 𝚺𝜳 𝟏 + ⋯ + 𝜳 𝝉−𝟏 𝚺𝜳 𝝉−𝟏 ) 𝒃 = [𝐸𝑡 𝑺 𝑡+𝝉 − 1 + 𝑟 𝝉 𝑺 𝑡] δ𝒃 = diag(𝚺)
  • 20. (Out of Sampleにおける年率シャープレシオの水準:縦軸と予測期間:横軸) 0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00 1.20 1.40 1.60 1.80 2.00 10 20 30 40 50 60 70 80 90 年率換算Sharpe Ratio(α考慮) [Out of Sample:2014/4~2015/3] δ:1 δ:10 δ:20 δ:30 δ:40 δ:50 δ:60 0.95 1.00 1.05 1.10 1.15 1.20 τ=60,δ=10の富の水準 α考慮 αなし
  • 21. (Out of Sampleにおける年率シャープレシオの水準:縦軸と予測期間:横軸) 0.60 0.80 1.00 1.20 1.40 1.60 1.80 2.00 10 20 30 40 50 60 70 80 90 年率換算Sharpe Ratio(α考慮) [Out of Sample:2008/4~2009/3] δ:1 δ:10 δ:20 δ:30 δ:40 δ:50 δ:60 0.95 1 1.05 1.1 1.15 1.2 1.25 τ=60,δ=10の富の水準 α考慮 αなし
  • 22. (Out of Sampleにおける年率シャープレシオの水準:縦軸と予測期間:横軸) 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 τ=60,δ=10の富の水準 α考慮 αなし 0.40 0.60 0.80 1.00 1.20 1.40 1.60 10 20 30 40 50 60 70 80 90 年率換算Sharpe Ratio [Out of Sample:2008/4~2015/3] δ:1 δ:10 δ:20 δ:30 δ:40 δ:50 δ:60
  • 23. A B =B-A 期間 SR SR_α 差異 200804-200903 1.26 1.60 0.33 200904-201003 0.96 0.62 -0.34 201004-201103 1.23 1.44 0.22 201104-201203 0.69 0.96 0.27 201204-201303 0.67 0.73 0.06 201304-201403 0.74 1.12 0.38 201404-201503 1.40 1.72 0.32 A B C D E=A-B F=C-D =C-A =F-E =D-B 期間 Gross Net Gross_α Net_α Cost Cost_α PF差異 Cost差異 総差異 200804-200903 25.36% 20.45% 39.13% 34.79% 4.91% 4.34% 13.77% 0.58% 14.35% 200904-201003 15.88% 10.46% 12.38% 8.15% 5.43% 4.23% -3.50% 1.20% -2.30% 201004-201103 17.14% 12.58% 15.24% 11.58% 4.56% 3.66% -1.90% 0.90% -1.00% 201104-201203 9.45% 4.27% 10.36% 6.41% 5.18% 3.95% 0.91% 1.23% 2.14% 201204-201303 10.85% 6.23% 10.19% 6.92% 4.62% 3.27% -0.66% 1.35% 0.69% 201304-201403 15.84% 10.83% 23.12% 19.61% 5.01% 3.51% 7.28% 1.50% 8.78% 201404-201503 17.21% 11.50% 21.18% 15.92% 5.71% 5.26% 3.97% 0.45% 4.42% (予測期間60,リバランス期間10におけるリターンの比較) (予測期間60,リバランス期間10におけるシャープレシオの比較)  リターンについてはコストの削減により回転率を抑制  シャープレシオも改善傾向 ただし、ターンオーバーにかかる制約により、適切なリバラン スを実施できないことでパフォーマンスが劣後する場合も。
  • 24. 0 50 100 150 200 250 300 日次リターンのヒストグラム 平均 0.06% 標準誤差 0.02% 中央値 (メジアン) 0.04% 標準偏差 0.01 分散 0.00 尖度 3.82 歪度 0.35 最小 -3.69% 最大 4.96% (日次リターンの統計量 ) 予測期間60,リバランス期間10における日次リターン
  • 25. 回帰統計 重相関 R 0.31 重決定 R2 0.09 補正 R2 0.06 標準誤差 0.04 観測数 84 分散分析表 自由度 変動 分散 観測された分散比 有意 F 回帰 3 0.01 0.00 2.74 0.05 残差 80 0.10 0.00 合計 83 0.11 係数 標準誤差 t P-値 下限 95% 上限 95% 切片 0.02 0.00 4.21 0.00 0.01 0.03 Monentum -0.88 0.45 -1.93 0.06 -1.78 0.03 Value -1.39 0.55 -2.52 0.01 -2.49 -0.29 TPX500 2.11 0.91 2.31 0.02 0.29 3.93 Monentum Value TPX500 MPC Monentum 1 Value 0.94 1 TPX500 0.98 0.99 1 MPC -0.14 -0.17 -0.15 1 予測期間60,リバランス期間10におけるリスクの状況 (指数とポートフォリオの相関行列)  MPCポートフォリオの月次リターンをスタイル指数で回帰した結果 指数は、モメンタム(Citi QuantIFI Index Japan Momentum)、バリュー(大和DSI2 Large Value)、ベータ(TOPIX500)を使用
  • 26.  Out of Sample期間全体のうち、どれくらいの期間で共和分性が成立していたか (ラグ10までの有意水準5%のEngle-Grangerの共和分検定) 0 5 10 15 20 25 30 #ofPairs Out of Sample期間において共和分性が継続した割合 各ペアの共和分性の継続割合 Out of Sample期間 # of Pairs 平均 標準偏差 200804-200903 18 33% 24% 200904-201003 20 55% 28% 201004-201103 26 27% 19% 201104-201203 23 34% 21% 201204-201303 11 32% 27% 201304-201403 14 25% 17% 201404-201503 16 39% 25% 全期間 128 35% 23% (各年度毎詳細)
  • 28. 【参考文献(一部)】 [1]「Pairs Trading:Quantitative Method and Analysis」 Vidyamurthy,G.(2004) [2] 「Pairs Trading:Performance of a Relative Values Arbitrage Rule」 E.Gatev,et al(2006) [3] 「ファンド運営を意識した最適ペアトレード戦略-DFO手法を用いた問題設計-」 山本零, 枇々木規雄. (2015) [4] 「Dynamic Spread Trading」 Kim.S-J,J.Primbs,and S.Boyd (2008) [5] 「共和分性に基づく最適ペアトレード」 山田雄二,J.Primbs (2012) [6] 「Model Predictive Control for Optimal Portfolios with Cointegrated Pairs of Stocks」 Y.Yamada,J.Primbs (2012)
  • 29. 𝑅𝑡,𝜏 − 𝐸𝑡 𝑅𝑡,𝜏 = 𝒖 𝑡 𝑇 𝑊𝑡 [𝑺 𝑡+𝜏 − 𝐸𝑡(𝑺 𝑡+𝜏)] であるので、 𝑺 𝒕の𝑉𝑀𝐴(∞)表現を 𝑺 𝒕 = 𝒆 𝒕 + 𝜳 𝟏 𝒆 𝒕−𝟏 + ⋯ + 𝜳 𝝉−𝟏 𝒆 𝒕− 𝝉−𝟏 + 𝜳 𝝉 𝒆 𝒕−𝝉 + ⋯ ⇔ 𝑺 𝑡+𝝉 = 𝒆 𝒕+𝝉 + 𝜳 𝟏 𝒆 𝒕+𝝉−𝟏 + ⋯ + 𝜳 𝝉−𝟏 𝒆 𝒕+𝟏 + 𝜳 𝝉 𝒆 𝒕 + ⋯ , 𝜳𝒊 ∈ 𝑅 𝑚×𝑚 とすると、𝑺 𝑡+𝜏の条件付き期待値は𝐸𝑡 𝑺 𝑡+𝜏 = 𝜳 𝝉 𝒆 𝒕 + 𝜳 𝝉+𝟏 𝒆 𝒕−𝟏 + ⋯ と書けるので、 𝑅𝑡,𝜏 − 𝐸𝑡 𝑅𝑡,𝜏 = 𝒖 𝑡 𝑇 𝑊𝑡 [𝒆 𝒕+𝝉 + 𝜳 𝝉 𝒆 𝒕+𝝉−𝟏 + ⋯ + 𝜳 𝝉−𝟏 𝒆 𝒕+𝟏] を得て、ゆえに条件付き分散 𝑉𝑡 𝑅𝑡,𝜏 は、 𝑉𝑡 𝑅𝑡,𝜏 = 𝒖 𝑡 𝑇 𝑊𝑡 [𝜮 𝒕+𝝉 + 𝜳 𝟏 𝜮 𝒕+𝝉−𝟏 𝜳 𝟏 + ⋯ + 𝜳 𝝉−𝟏 𝜮 𝒕+𝟏 𝜳 𝝉−𝟏] 𝒖 𝒕 𝑊𝑡 = 𝒖 𝑡 𝑇 𝑊𝑡 [𝜮 + 𝜳 𝟏 𝜮𝜳 𝟏 + ⋯ + 𝜳 𝝉−𝟏 𝜮𝜳 𝝉−𝟏] 𝒖 𝑡 𝑊𝑡 以上から、条件付き平均分散問題は max 𝒖 𝑡∈𝑅(𝑚) 1 + 𝑟 𝜏 + 𝒖 𝑡 𝑇 𝑊𝑡 𝐸𝑡 𝑺 𝑡+𝜏 − 1 + 𝑟 𝜏 𝑺 𝑡 − 𝛼 2𝑊𝑡 𝒖 𝑡 − 𝒖 𝑡−δ 2 − 𝛾 2 𝒖 𝑡 𝑇 𝑊𝑡 [𝜮 + 𝜳 𝟏 𝜮𝜳 𝟏 + ⋯ + 𝜳 𝝉−𝟏 𝜮𝜳 𝝉−𝟏] 𝒖 𝒕 𝑊𝑡 と書くことができ、𝒖 𝑡について微分すると、(1階の条件) 𝒖 𝑡 = 𝛾 𝑊𝑡 𝜮 + 𝜳 𝟏 𝜮𝜳 𝟏 + ⋯ + 𝜳 𝝉−𝟏 𝜮𝜳 𝝉−𝟏 + 𝛼𝑰 −𝟏 [𝐸𝑡 𝑺 𝑡+𝜏 − 1 + 𝑟 𝜏 𝑺 𝑡+𝛼𝒖 𝑡−δ]
  • 30. 連立方程式 𝑨𝒙 = 𝒃 において 𝑨𝒙 − 𝒃 2 = 0 を最小にする𝒙 を最小自乗解という。これに正則化項のα 𝒙 2を加えた、 J = 𝑨𝒙 − 𝒃 2 + α 𝒙 2 の解𝒙 𝜶を正則化解と呼ぶ。 さらに、𝒃には誤差δ𝒃があり、真の値𝒃∗は不明であるが、その誤差の大きさ δ𝒃 は わかっていると仮定する。 つまり、𝒃 = 𝒃∗ + δ𝒃であるが、真の解𝒙 𝒆𝒙が満たすべき 𝑨𝒙 𝒆𝒙 − 𝒃∗ − δ𝒃 = δ𝒃 という関係を正則化解𝒙 𝜶 に対して当てはめ、 𝑨𝒙 𝜶 − 𝒃 = δ𝒃 として 𝛼を選ぶ。

Hinweis der Redaktion

  1. ではモデル予見制御に基づく共和分ペアトレード戦略と題しまして、三井住友アセットの中川が報告します。 武蔵大学の山本先生、本日は討論者を快く引き受けてくださりありがとうございます。
  2. こちらがアウトラインです。 始めに研究の概要を述べます。それから重要な基本概念を紹介したあと、 ペアトレードに関連する先行研究を整理します。 そして、今回使用するアルゴリズム、モデル予見制御に基づいた問題の定式化を行います 最後にそれを用いた実証分析の結果を紹介します。
  3. 運用業界では、従来のベンチマークを意識した相対収益型の運用から、相場環境にかかわらず安定的な収益獲得を目指す絶対収益型の運用へとシフトしつつあります。 運用業界にいる身として、顧客のニーズもあり、このような流れがますます強くなっていくだろうと実感しております。 そこで絶対収益型の運用商品の開発が課題であり、その一助となることが本研究の目的です。 さて、そのような絶対収益型の運用手法の代表的な戦略に株式のペアトレード戦略があります。 ペアトレードの先行研究は理論・実証含め、数多くあり、大きく2つに分類できます。 1つが個別ペアのポジションの構築や解消のタイミングを決定する、いわゆるトレーディング戦略と呼べるのもの。 もう一つが、平均分散アプローチによって、複数ペアの保有枚数を同時決定するポートフォリオ戦略と呼べるものです。 本研究では、実際のファンド運用を意識し、モデル予見制御に基づくペアトレード戦略の定式化を行い、その実証分析に取り組みます。 そして当戦略が、実運用に近い条件下で、安定的な収益獲得が見込めることを実証します。
  4. 先ほどのスライドで、いくつかのキーワードが出ましたが、最初にペアトレードを簡単に紹介します。 ペアトレードでは、STEP1として、似たような価格変動をするようなペアを探します。ここでは例として電力会社の九州電力と関西電力を取り上げます。 STEP2として、ペアの価格差であるスプレッドに着目します。図では右軸がスプレッドの水準です。 そして、スプレッドが広がったところ<押>①で、割高な方、九電を売って、割安な方、関電を買います。 STEP3、最後に、ペアの価格差であるスプレッドが収束すれば、<押>②ポジションを解消します。すると、①のスプレッドの分だけ利益を得ることができます。 これがペアトレード、あるいはスプレッドトレードです。0 繰り返しですが、この例の①や②のようなポジションの構築や解消のタイミングを決めるのが、トレーディング戦略です。 またこのようなペアが複数あったときに、どのように各ペアに配分を行うかがポートフォリオ戦略となります。
  5. 次に、ペアトレードを行うに当たって、似たような価格変動をするペアを見つけると申しましたが、その際に重要な概念である共和分性の定義を確認します。 よく言われるように、一般に株価はランダムウォークしていて、将来の株価を予測することはできません。 しかし、先ほど見た、九電、関電のように、似たようなペアのスプレッドが、ある一定のレンジで変動するという現象も、実際の株式市場では多く観測されます。 計量経済学的にこれを、共和分性を満たすといいます。 正確な定義はスライドの通り、単位根過程に従う、つまりランダムウォークする2つの時系列に対し、その線形の組み合わせが定常過程になるとき、共和分性を満たすといいます。 そして、このときの定数βを共和分ベクトルといいます。
  6. 次に先行研究の整理を行います。 トレーディング戦略としての先行研究は、理論実証ともにかなりの数があります。理論面の代表的なものが[1]のビディヤマーフィーの研究です。 ビディヤマーフィーは共和分ペアの選定方法等、幅広く理論的な考察を行いました。 実証例の一つとして、[2]ガテフの研究があります。 これは共和分ペアトレード戦略が、米国市場において、現実的な取引コストを控除しても、なお良好なパフォーマンスを得られる、ということを実証しています。 また、[3]山本・枇々木では、ペアトレード戦略の様々な先行研究の体系だった整理を行いました。この表もこの論文を参考に作成しました。 そのうえでDFO手法に基づいて、リスクリターンコストの観点から、最適な投資戦略を求め、様々な状況下での考察を行いました。   次に、ポートフォリオ戦略としてのペアトレードの先行研究を整理します。 これは、どのようにペアのポートフォリオを構築するかという点で、大きく3つの構築手法が提案されています。 それぞれMyopic、Dynamic、そしてModel Predictive Control、モデル予見制御によるポートフォリオです。 これらはいずれもリバランスを前提とした多期間のポートフォリオ構築手法です。 先行研究として、 [4]のキム、プリムス、ボイドは、連続時間設定の下で、Dynamicポートフォリオの定式化と、その解析解を求めました。 次に、[5]の山田、Primbsにおいては、Dynamicポートフォリオと、Myopicポートフォリオの実証分析を日経225銘柄を対象に行っています。 さらに、[6] の同じく山田、Primbsにおいては、離散時間設定のもと、モデル予見制御、以下MPCと略しますが、MPCに基づく定式化とその解析解を導出しました。   本研究では、実証分析のほとんどない、ポートフォリオ戦略としてのペアトレードの実証分析に取り組みます。 その際、実運用で使用しやすい、[6]の山田・Primbsから時系列モデルを拡張します。 さらにターンオーバーにかかる制約を加味したリスクリターンコストの観点から、MPCに基づくポートフォリオの構築と実証分析を行います。
  7. では、先ほど、出てきたMyopicとDynamic、およびMPCそれぞれのポートフォリオ構築手法がどのようなものか、というイメージを非常にざっくりと説明します。〈押〉×2 まずMyopicポートフォリオは、現時点のポートフォリオの状態をもとに、一期先の富の期待効用を最大化します。これを、満期Tまで繰り返します。 〈押〉×4 Myopic、近視眼的なという英語の通り、常に1期間先の富のみを最大化の目的関数とするところが特徴です。 次に、Dynamicポートフォリオは、1期間先のみを見るMyopicに対して、満期までの期間に依存する形で、満期Tの富の最大化を行います。 イメージはこのような感じです。〈押〉×4 最後の期間は1期間なので、先ほどのMyopicポートフォリオと一致します。〈押〉 実際に、問題を解くときはバックワードに解いていきます。 Dynamicポートフォリオは、常に満期Tの富が最大化の目的関数となり、それ以外の期中は考慮しないところが特徴です。 最後にMPCでは、まずτという予測期間を導入します。 そして、常にτという、予測期間先の富を最大化する。これを繰り返し行っていきます。〈押〉 MPCは、1期先ではなく、また満期の富というわけでもなく、DynamicとMyopicのちょうど中間のようなポートフォリオとなります。
  8. では、MPCのもう少し具体的なアルゴリズムを説明します。 先ほど導入した、予測期間τの他に、もうひとつ、リバランスのタイミングであるδをパラメータとして与えます。 例えば、予測期間τが5、リバランス期間δが3の場合〈押〉、今、時点0にいて、リバランスのタイミングだとします。 すると予測期間である、5期先の条件付平均と分散を、VARのような何らかのモデルを用いて予測します。 それを用いた(*)の条件付き最適化問題を解いて、投資単位を決定します。 その後、〈押〉時点3までは投資単位を変更しません。 時点3にまた、予測期間である5期先の時点8の条件付き平均と分散に基づき、最適化を行います。以下これの繰り返しです。
  9. 次に、MPCに基づく、ペアポートフォリオの具体的な定式化に移ります。 今回はペアのモデルとして定常過程の代表的なモデルであるVARMAモデルを仮定します。 そのうえで各ペアの投資枚数を決定係数とするような、リスクリターンコストを加味した条件付きの平均分散問題を解きます。 まず、時点tにおけるペアS_tを、X株の1枚買い、Y株のβ枚売り、の組み合わせで表現します。このβは、共和分ベクトルです。 このペアS_t自体を取引可能な、一つの銘柄のようなもの、と考えることができます。 また、このペアはそれぞれ共和分性を満たすと仮定しているので、各ペアの平均と分散は、時間を通して一定であることが期待されます。 そのようなペアがm個あるとします。 次に、u_tを、それぞれのペアに対する投資枚数とします。 通常の平均分散ポートフォリオ最適化では、各銘柄のウェイトベースで定式化を行います。 しかし、注意点として、今回はスプレッドのキャッシュフローに対して、直接ポートフォリオを構築するため、u_tは投資枚数です。 そうすると、現時点tから予測期間τ後の、ポートフォリオの価値W_t+tauはこのようになります。 第一項が、ペアのスプレッドのτ後の水準から、現在のスプレッドの水準を引いて、それぞれの投資枚数をかけています。これはτ後の各ペアの損益部分となっています。 二項目が、現在の富のうち、ペアに投資した部分以外を、無リスク利子率rで運用した部分です。この項は余資運用部分です。 そして一般に、ロングショートポートフォリオでは、ロング側とショート側両方で取引を行うため、非常に回転率が高くなりがちです。 そこで第三項に、ターンオーバーを抑制するためのペナルティーを、定数αと二乗ノルムで表現しています。 解析的な解がほしいので、二乗ノルムの形で制約を入れています。 ターンオーバーは式の通り、投資枚数の変更に対してのペナルティーとなっており、これをコストに対する制約としています。
  10. すると最大化すべきτ後のポートフォリオの収益率は現時点の富で割ることで計算できます。 そして、ペアのスプレッドにVARMAモデルを仮定します。 このモデルは、現時点のスプレッドの値を、スプレッド自身の過去の値と、その過去のノイズの線形和として表現する、定常過程のモデルです。 これを用いると, τ後のスプレッドの条件付き平均と分散を求めることができます。 そしてスライドの、条件付き最適化問題の解として、このように最適な投資単位u*を求められます。 なお、ガンマγはリスク回避係数です。 ここの導出部分の詳細は手元の補論Aを参考にしてください。 これに基づき、リバランスのタイミングで各ペアの投資枚数を変更します。 通常の平均分散アプローチの解と同様に、インバースの中身が各スプレッドのリスクに対する調整項となっています。 またインバースの次のかっこ内が予測期間後に期待されるスプレッドの水準から現在のスプレッドを引いた、いわば各スプレッドのリターンの項となっています。 そのリスクとリターンに基づき、投資枚数を決定しています。
  11. では以上のようなMPCポートフォリオの実証分析に移ります。 分析のユニバースとしては、機関投資家の日本株ロングショート戦略のユニバースとなることが多いTOPIX500を選びました。 TOPIX500は比較的大型銘柄で構成されており、ペアトレードに不可欠な空売りを容易に行うことができます。 分析の期間としては、マーケットの上昇時と下落時の両方を含むように、2007/4から直近の2015/3までとしています。 〈押〉分析の手順としては、最初に、1年分のデータをIn Sample期間として使用し、共和分ペアの選定を行います。 次に、同じ期間でペアの時系列モデルの当てはめとパラメータ推定を行います。 〈押〉それを用いて、翌1年間をOut of Sample期間として、MPCポートフォリオのシミュレーションを行います。 〈押〉これを、2007/4/1をIn Sample期間の起点とし、1年づつのローリングで7回繰り返し行います。 なお、使用するデータは全てブルームバーグから取得し、株価は株式分割を調整した株価を使用しています。
  12. では、STEP1の具体的なペアの選定方法ですが、先行研究にならい、まずは候補となるペアのスクリーニングを行います。 そしてスクリーニングを通過したペアに対して、共和分ペアの選定を行う方法をとります。 スクリーニングの手順として、まずTOPIX500の構成銘柄を65の産業グループに分類します。 実際にペアトレードはその戦略上、業種を跨いで行うことが少ないため業種に基づきペアの選定を行いました。 そして、同一産業グループ内の全てのペアに対して、基準化株価に基づく最小2乗距離を計算します。 また基準化株価とは、期初の株価を1に統一したリターン指数です。これらはGatevの先行研究で使用されています。 次に、2乗距離の最も近いペアのスプレッドに対して、DF統計量を計算し、それが-3以下のペアをスクリーニングに通過させます。 その際、ペアの説明変数と被説明変数を入替えて2回計算し、DF統計量の小さい方を取ります。 なお、DF統計量は与えられた時系列が単位根であるかどうかを検定するために使用され、負に有意な統計量です。
  13. 次にペアの選定プロセスです。 先ほどのスクリーニングを通過したペアをDF統計量の小さい順にソートを行います。 そして、その順にEngle-Grangerの共和分検定を行い、検定を通過したペアを採用します。 この共和分ペアの選定結果、各年度のペア数はスライドの通りで、10~20前後のペアが選定されました。 〈押〉最新のペアについてはこちらの通りで、最初に紹介した九電と関電を含めて似たような銘柄が選定されています。
  14. 共和分ペアが決まったので、このペアのスプレッドに当てはめるべき、時系列モデルの推定に移ります。 先ほどの定式化において、VARMAモデルを使用しましたが、これは式の通り非常にパラメータ数が多く、また推定が困難です。 そのため、まずはよりシンプルで、推定の容易なVARモデルで各次数のAICを計算します。 結果、VARモデルの次数が大きい方がフィットしていれば、MA項を加える方針をとりました。 VARの次数毎のAICはスライドの通りです。全期間においてp=1で最適となっているため、今回はMA項を加えず全期間でVAR(1)モデルを採用しました。 なお、BIC等の他の基準で見ても、結果はおおむね同様でした。
  15. 最後にシミュレーションを行うに当たって、実運用に近い形でその他のパラメータを設定します。 現実的な取引コストを考慮するため、ポジションの変更にたいして線形に取引コストをかけます。この比例取引コストをリバランス後のポートフォリオから控除します。 係数はTOPIX500が大型銘柄であることを考慮して片道15bpで計算します。 加えて空売りにかかるショートコストとして、富の1%を日割りでポートフォリオから控除しました。 また、レバレッジの水準も実運用では重要になってくるため、買いと売りのグロス合計がおよそ2倍になるようにリスク回避係数をリバランスの都度調整します。 無リスク利子率については年率10bpとしました。 以上の設定のもと、まずはターンオーバーにかかる制約であるαを0にして予測期間とリバランス期間を変更しシミュレーションを行います。 そして日々の富の水準とシャープレシオを評価します。
  16. こちらがアウトオブサンプルの期間を最新の2014/4から2015/3までとした結果です。 左側がMPCポートフォリオの年率換算したシャープレシオを記載しております。横軸が予測期間、色別にリバランス期間を区切ってます。 傾向として予測期間を長くすればするほど、シャープレシオが上昇し、ある程度のところで頭打ちになっています。 これは先行研究と整合的な結果です。 また、δ=1にした場合つまり、毎日リバランスを実施した場合は取引コストが嵩んでしまい、他と比べてうまくいっていません。 しかし、それ以外の場合についてはいずれもシャープレシオが1前後の良好な結果となっています。   また予測期間とリバランス期間を60、20とした場合の富のサンプルパスが右のグラフです。 この年、昨年は非常に相場が良かったのでユニバースが高いリターンを挙げています。
  17. 次にユニバースの下落時、2008/4から2009/3のアウトオブサンプル期間の結果を見てみます。 ここではきれいに予測期間が長いほど、シャープレシオが向上しています。 この年はリーマンショックの影響で、ユニバースがかなり下落していますが、MPCの方は対照的に20%超という高いパフォーマンスを上げています。
  18. こちらが、以上の期間を含めたOut of Sample全期間の結果です。 全体で見てもシャープレシオが、予測期間が長いほど向上する傾向が見られます。 また、毎日リバランスを実施した場合には他と比べてうまくいっていません。 富の水準では、変動が激しいユニバースに対して、MPCポートフォリオは各年度、安定して右肩上がりのパフォーマンスを挙げています。
  19. さて、この実証分析の結果から、基本的に予測期間は長い方がパフォーマンスが向上しました。 そして、リバランスのタイミングによってパフォーマンスに差が生じました。 次にコストに対する制約を考慮したシミュレーションを実施します。 ターンオーバーにかかる係数αはスライドにあるように、逆問題の分野で使われる相変原理を参考に決定しました。 これは、係数に誤差を仮定して、その誤差の大きさに基づいてパラメータαを決定する方法です。 今回は誤差の大きさとして、スプレッドの分散の合計を使用しました。 この係数αはリバランスの都度再推定を行います。
  20. その結果がこちらのスライドです。先ほど同様に左側に、年率換算したシャープレシオを記載しております。 特徴として、コストに関する制約を入れたことによって、基本的にリバランスタイミングが短いときにシャープレシオが向上する傾向があります。   また予測期間を60、リバランス期間を10とした場合のターンオーバー制約αを考慮した場合と除いた場合、それぞれの富のサンプルパスが右のグラフです。 ターンオーバー制約をいれた方が最終的な富の水準が向上しています。
  21. 次にさきほど同様ユニバースの下落時、2008/4から2009/3のアウトオブサンプル期間の結果を見てみます。 ここでも、ターンオーバー制約を入れたことによって、基本的にリバランスタイミングが短いときにパフォーマンスが向上する傾向があります。 また、右図の最終的な富の水準も、若干ですが上回っています。
  22. こちらが、以上の期間を含めたOut of Sample全期間の結果です。 コストに関する制約を入れても、予測期間が長いほどシャープレシオが向上する傾向が見られます。 またターンオーバー制約αを考慮したほうが、制約のない場合を安定して上回っています。
  23. ターンオーバー制約を考慮した場合としない場合の詳細な比較がこちらのスライドになります。 グロスと書かれている項が、線形の取引コストを控除する前のパフォーマンスで、Netが取引コスト控除後のパフォーマンスです。 このグロスとネットの差の部分、赤く囲っている部分が取引コストに係った部分です。 結果から制約を考慮すると、コストがどの期間においても削減されているため、狙い通り回転率を抑制できていることがわかります。 シャープレシオについては、09-10年を除き全て向上しています。
  24. こちらが先ほどまでの年度ベースのリターンに対して、日次のリターンをヒストグラムでみたものになります。 点線が、同じ平均と分散の正規分布のヒストグラムです。統計量からもわかる通り、正規分布に対して、尖りのある分布となっています。
  25. こちらがリスクの状況です。 MPCポートフォリオの月次のリターンを、スタイル指数で重回帰した結果となっています。 スタイルとして、今回はTOPIX500という大型銘柄をユニバースにしたため、サイズを省き、モメンタム、バリュー、βを選びました。 MPCポートフォリオ自体は、モメンタムともバリューともTPX500とも弱い逆相関です。 回帰係数としては、モメンタムが負、すなわちリバーサル傾向が出ており、ペアの平均回帰性にベットしていることがわかります。 また切片項も有意に正となっており、スタイルでは説明できない部分も収益の源泉としてあることがわかります。
  26. 補足として、このスライドは各ペアの共和分性がどれだけ継続しているかを調べたものになります。 Out of Sample期間中にローリングウィンドウ方式で、共和分検定を行いました。 予想に反して、長く共和分性が成り立つペアは少ないという結果になっています。 ほとんどのペアがOut of Sample期間全体の1/3程度しか共和分性を満たしていません。
  27. では、まとめです。 リスクリターンコストの観点から構築したMPCによるポートフォリオは各Out of Sample期間において、狙い通り、取引コストを控除しても、なお良好なパフォーマンスを挙げました。   今後の課題としては、ペアのスクリーニングプロセスの改良や、ペアの時系列モデルに条件付き分散を考慮したシミュレーションの実施。 さらに今回はOut of Sample期間でペアを固定していたのですが、それらを動的に入れ替えたうえで、シミュレーションを実施すること。 またMPCの定式化を連続時間へ拡張すること等が挙げられると思います。