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考古学情報の公開と権利・ライセンス問題について
人間文化研究機構本部
清野 陽一
Background Image: 愛知県埋蔵文化財センター 1989 『下山古墳』
http://www.maibun.com/DownDate/PDFdate/s0060.pdf
Creative Commons Licese BY 3.0 UnportedThis work is provided under the terms of Creative Commons Public License - Atribution 2.1 Japan.
2/17
注意
● 本発表はあくまで法律の専門家ではない一研究者
が行うものです。実際の問題に際しては法律の専
門家にご相談の上対応して下さい。
3/17
http://www.jaet.gr.jp/hougaku/ より
参考文献
● 漢字文献情報処理研究会
2014 『人文学と著作権
問題』 好文出版
● 本体 2,500 円 + 税
● 人文系研究活動における著
作権やデジタル公開に際し
て、具体例を示しながら、架
空の人物が対話形式で話を
進めていく。非常に読みやす
く、取り上げられている実例
も、現場で起こりうるシーン
が多く参考になる。
4/17
参考文献
● 雑誌『 DHjp 』 勉誠出
版
● 1,600 円 + 税
● 第 3 号が著作権に関する記
事
● 電子版もあります。
● 1,000 円
● PayPal 支払い
http://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&cPath=18_54&products_id=100328 より
5/17
考古学における情報
● どんなものが情報になるでしょうか ?
● 考えてみましょう
● 情報の形態による区別
● テキスト
● 図面 ( ベクトルデータ )
● 写真 ( ラスターデータ )
● 情報の種類 ? 内容 ? による区別
● 管理に関する情報
● 管理者
● 位置
● etc.
6/17
考古学における情報発信
● On Site
● 現地説明会
● As is
● 博物館等での展示
● しかし、時空間を超えて最も広がるのはドキュメント
化された情報
7/17
情報発信のメディア
● ドキュメント化された情報って ?
● 文章や写真、図面、地図等
● 発掘調査報告書
● 論文
● Web ← イマココ !
● Web には様々な種類の情報を載せることが出来る
● 動的なコンテンツも
● etc.
8/17
情報発信に際して気をつけたい権利
● 知的財産権
● 著作権
● 著作物とは ?
● 思想又は感情を創作的に表現したものであ
つて、文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属
するもの ( 第 2 条第 1 項第 1 号 )
● 特に、報告書 ( の内容 ) を Web
で配信する際に気をつけるべき
なのは
● 複製権
● 公衆送信権
● 権利の保護期間 ( 第 51-62 条 )
● 50 年 ( 翌年の 1 月 1 日から起算 )
● 個人なら死後
● 無名・変名・団体名義は公表
後
いずれも、文化庁長官官房著作権課 2013 『著作権テキスト』より
上図 P.1 より、下図 P.3 より
9/17
情報の再利用に際して
● 引用
● 引用は正統な権利
● 著作権法にも記載あり ( 第 32 条 )
● 第三十二条  公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公
正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわ
れるものでなければならない。
● 2  国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知させることを
目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類
する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを
禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。
● ルールを守って ( 第 48 条出所の明示 )
● 「当該著作物につき表示されている著作者名を示さなければならない」
● 複製・公衆送信・再配布
● フェアユースの考え方
● 前述もその一部であるが、日本でも著作権の制限される条件は著作権法上で示されている ( 第 30-50 条)
● 日本は限定列挙主義。フェアユースを定めるアメリカは一般条項主義。
● 最終的には裁判で司法判断。判例を積み上げる。
● 基本的な考え方の違い。民主主義とは何か ?
● 日本国内においては、アメリカ合衆国ではフェアユースで OK な場合でも NG なことがある。注意が必要。
10/17
そもそも報告書って著作物なの ?
● 著作物とは ?( 再掲 )
● 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸,学術,美術又は音楽
の範囲に属するもの ( 第 2 条第 1 項第 1 号 )
● 権利の目的とならない著作物 ( 第 13 条 )
1. 憲法その他の法令
2. 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人(独立行政法人通則法 (平成十一年法
律第百三号)第二条第一項 に規定する独立行政法人をいう。以下同じ。)又は地方独立
行政法人(地方独立行政法人法 (平成十五年法律第百十八号)第二条第一項 に規定
する地方独立行政法人をいう。以下同じ。)が発する告示、訓令、通達その他これらに類す
るもの
3. 裁判所の判決、決定、命令及び審判並びに行政庁の裁決及び決定で裁判に準ずる手続
により行われるもの
4. 前三号に掲げるものの翻訳物及び編集物で、国若しくは地方公共団体の機関、独立行政
法人又は地方独立行政法人が作成するもの
現状では著作権で保護される対象と理解される。ただし、思想または感情を
創作的に表現していない部分も混在している。
※ 但し、前ページ第 32 条 2 により、刊行物には転載は可能 (Web はダメ
という説もある ) 。
11/17
発掘調査報告書の特殊性
● 著作権の問題だけで単純に議論していいのか ?
● 発行主体が多種多様
● お金の出処が色々
● 行政組織・各種外郭団体・大学・公的 / 民間調査機関・営利企業・個人 (!)
……
● コンテンツも雑多
● 前回ワークショップで話した通り
● 創作性のある部分と無い部分 ( 事実情報 ) が渾然一体
● データベース化した方が良い部分、個人の業績として論文などとして
切り離したほうが良い部分
● 図形で表されるような情報をどうするか
● 本来は 3 次元 + 時間の属性を持つ情報
● 誰に届けたいのか ?
● 情報の鮮度、伝達の速報性の有無、厳密性・オーセンティシティの担保
● 発掘調査報告書の位置付け・解体新書
12/17
ライセンスとは
● 当事者間が結ぶ「契約」
● 当事者間で個別の意思確認が必要
● 以下に紹介する方法が正式な「契約」を取り交わしたと
言えるかどうかは議論がある
13/17
なぜ適切なライセンスを付ける必要があるのか
● 情報の拡散・活用を促進
● 誰かに届いて使われてこその情報
● 流通を阻害する要因
● 事前・事後の承諾が必要
● 誰に問い合わせるのか ?
● 問い合わせたらいつ許諾が受けられるのか ?
● 人は死んでも情報は残る
● 「オレオレライセンス」の弊害
● 互換性の問題
14/17
ライセンスの実例
● 著作権法を前提としたライセンス
● クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(Creative Commons License)
● maibun.com
● 海外の事例
● パブリックドメイン・ CC0
● 文化庁の自由利用マーク……orz 制限多すぎ…自由とは?
● 文章や図と言ったもの以外の著作物に付けられるライセンスにはどう
いったものがあるか ?
● プログラム/ ソースコード
● GPL ・ BSD ・ MIT/X11 etc...
● データベースは?
● ODbL ・ ODC-by etc...
● ( コンピュータ) プログラムやデータベース( 全体として。要素はEUでは保護され
る) も著作物
● 報告書に記載されている表などの数値データ ( 特に事実情報 ) はどうす
ればいいか ? 特にそれが著作物の中に混ざっている場合。
15/17
ライセンスを考えるときに理解しておくべき考え方
● クリエイティブ・コモンズ・ライセンスを例に取ると…
● 表示義務はデフォルト。日本の著作権法でも出所の明
示義務。
● 商用・非商用の別も日本では比較的議論の俎上にのぼ
ることが多い。
● 改変・非改変の議論もその次くらいに議論の俎上にの
ぼるか。
● 継承 (Share-Alike) の効能が一番理解されていない気
がする。
● GPL や GFDL 、 ODbL などでも。
● 自由の強制とは ? なぜ強制的に守る必要があるのか ?
● 自由は大事なの ? 意識的に守らないと守られないの ?
16/17
関連して考えるべきこと
● メタデータの整備
● 電子配信する場合
● Machine Readable Human Readable
● どう使う / 使われるのか ?
● 自由とは
● 利用 / 使用の制限
● 近年の政府や研究業界の動向
● 地方自治体、政府のオープンデータの取り組み
● 事実情報も多いが、「 CC BY 2.1 日本」を付けている場合が多い。
● 学術情報のオープンアクセス化の流れ
● 博士論文デジタル化・オープンアクセス化、機関リポジトリの隆盛
● 公共性と民業圧迫の視点
詳しくはこの後の討論で
17/17
著作権法をめぐる最近のトピック
● 2012 年改正、 2013 年施行 ( 一部は 2012 年 ) の
著作権法のポイントについては
● http://www.bunka.go.jp/chosakuken/24_houkaise
i.html
● 等を参照
● 写り込み
● 国立国会図書館における複製
● 技術的保護手段
● 違法ダウンロード刑事罰化
● DHjp 第 3 号も参照
● 2014 年は電子出版に出版権を認める改正が行わ
れ、 2015 年 1 月 1 日施行の予定

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  • 1. 考古学情報の公開と権利・ライセンス問題について 人間文化研究機構本部 清野 陽一 Background Image: 愛知県埋蔵文化財センター 1989 『下山古墳』 http://www.maibun.com/DownDate/PDFdate/s0060.pdf Creative Commons Licese BY 3.0 UnportedThis work is provided under the terms of Creative Commons Public License - Atribution 2.1 Japan.
  • 3. 3/17 http://www.jaet.gr.jp/hougaku/ より 参考文献 ● 漢字文献情報処理研究会 2014 『人文学と著作権 問題』 好文出版 ● 本体 2,500 円 + 税 ● 人文系研究活動における著 作権やデジタル公開に際し て、具体例を示しながら、架 空の人物が対話形式で話を 進めていく。非常に読みやす く、取り上げられている実例 も、現場で起こりうるシーン が多く参考になる。
  • 4. 4/17 参考文献 ● 雑誌『 DHjp 』 勉誠出 版 ● 1,600 円 + 税 ● 第 3 号が著作権に関する記 事 ● 電子版もあります。 ● 1,000 円 ● PayPal 支払い http://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&cPath=18_54&products_id=100328 より
  • 5. 5/17 考古学における情報 ● どんなものが情報になるでしょうか ? ● 考えてみましょう ● 情報の形態による区別 ● テキスト ● 図面 ( ベクトルデータ ) ● 写真 ( ラスターデータ ) ● 情報の種類 ? 内容 ? による区別 ● 管理に関する情報 ● 管理者 ● 位置 ● etc.
  • 6. 6/17 考古学における情報発信 ● On Site ● 現地説明会 ● As is ● 博物館等での展示 ● しかし、時空間を超えて最も広がるのはドキュメント 化された情報
  • 7. 7/17 情報発信のメディア ● ドキュメント化された情報って ? ● 文章や写真、図面、地図等 ● 発掘調査報告書 ● 論文 ● Web ← イマココ ! ● Web には様々な種類の情報を載せることが出来る ● 動的なコンテンツも ● etc.
  • 8. 8/17 情報発信に際して気をつけたい権利 ● 知的財産権 ● 著作権 ● 著作物とは ? ● 思想又は感情を創作的に表現したものであ つて、文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属 するもの ( 第 2 条第 1 項第 1 号 ) ● 特に、報告書 ( の内容 ) を Web で配信する際に気をつけるべき なのは ● 複製権 ● 公衆送信権 ● 権利の保護期間 ( 第 51-62 条 ) ● 50 年 ( 翌年の 1 月 1 日から起算 ) ● 個人なら死後 ● 無名・変名・団体名義は公表 後 いずれも、文化庁長官官房著作権課 2013 『著作権テキスト』より 上図 P.1 より、下図 P.3 より
  • 9. 9/17 情報の再利用に際して ● 引用 ● 引用は正統な権利 ● 著作権法にも記載あり ( 第 32 条 ) ● 第三十二条  公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公 正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわ れるものでなければならない。 ● 2  国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知させることを 目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類 する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを 禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。 ● ルールを守って ( 第 48 条出所の明示 ) ● 「当該著作物につき表示されている著作者名を示さなければならない」 ● 複製・公衆送信・再配布 ● フェアユースの考え方 ● 前述もその一部であるが、日本でも著作権の制限される条件は著作権法上で示されている ( 第 30-50 条) ● 日本は限定列挙主義。フェアユースを定めるアメリカは一般条項主義。 ● 最終的には裁判で司法判断。判例を積み上げる。 ● 基本的な考え方の違い。民主主義とは何か ? ● 日本国内においては、アメリカ合衆国ではフェアユースで OK な場合でも NG なことがある。注意が必要。
  • 10. 10/17 そもそも報告書って著作物なの ? ● 著作物とは ?( 再掲 ) ● 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸,学術,美術又は音楽 の範囲に属するもの ( 第 2 条第 1 項第 1 号 ) ● 権利の目的とならない著作物 ( 第 13 条 ) 1. 憲法その他の法令 2. 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人(独立行政法人通則法 (平成十一年法 律第百三号)第二条第一項 に規定する独立行政法人をいう。以下同じ。)又は地方独立 行政法人(地方独立行政法人法 (平成十五年法律第百十八号)第二条第一項 に規定 する地方独立行政法人をいう。以下同じ。)が発する告示、訓令、通達その他これらに類す るもの 3. 裁判所の判決、決定、命令及び審判並びに行政庁の裁決及び決定で裁判に準ずる手続 により行われるもの 4. 前三号に掲げるものの翻訳物及び編集物で、国若しくは地方公共団体の機関、独立行政 法人又は地方独立行政法人が作成するもの 現状では著作権で保護される対象と理解される。ただし、思想または感情を 創作的に表現していない部分も混在している。 ※ 但し、前ページ第 32 条 2 により、刊行物には転載は可能 (Web はダメ という説もある ) 。
  • 11. 11/17 発掘調査報告書の特殊性 ● 著作権の問題だけで単純に議論していいのか ? ● 発行主体が多種多様 ● お金の出処が色々 ● 行政組織・各種外郭団体・大学・公的 / 民間調査機関・営利企業・個人 (!) …… ● コンテンツも雑多 ● 前回ワークショップで話した通り ● 創作性のある部分と無い部分 ( 事実情報 ) が渾然一体 ● データベース化した方が良い部分、個人の業績として論文などとして 切り離したほうが良い部分 ● 図形で表されるような情報をどうするか ● 本来は 3 次元 + 時間の属性を持つ情報 ● 誰に届けたいのか ? ● 情報の鮮度、伝達の速報性の有無、厳密性・オーセンティシティの担保 ● 発掘調査報告書の位置付け・解体新書
  • 12. 12/17 ライセンスとは ● 当事者間が結ぶ「契約」 ● 当事者間で個別の意思確認が必要 ● 以下に紹介する方法が正式な「契約」を取り交わしたと 言えるかどうかは議論がある
  • 13. 13/17 なぜ適切なライセンスを付ける必要があるのか ● 情報の拡散・活用を促進 ● 誰かに届いて使われてこその情報 ● 流通を阻害する要因 ● 事前・事後の承諾が必要 ● 誰に問い合わせるのか ? ● 問い合わせたらいつ許諾が受けられるのか ? ● 人は死んでも情報は残る ● 「オレオレライセンス」の弊害 ● 互換性の問題
  • 14. 14/17 ライセンスの実例 ● 著作権法を前提としたライセンス ● クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(Creative Commons License) ● maibun.com ● 海外の事例 ● パブリックドメイン・ CC0 ● 文化庁の自由利用マーク……orz 制限多すぎ…自由とは? ● 文章や図と言ったもの以外の著作物に付けられるライセンスにはどう いったものがあるか ? ● プログラム/ ソースコード ● GPL ・ BSD ・ MIT/X11 etc... ● データベースは? ● ODbL ・ ODC-by etc... ● ( コンピュータ) プログラムやデータベース( 全体として。要素はEUでは保護され る) も著作物 ● 報告書に記載されている表などの数値データ ( 特に事実情報 ) はどうす ればいいか ? 特にそれが著作物の中に混ざっている場合。
  • 15. 15/17 ライセンスを考えるときに理解しておくべき考え方 ● クリエイティブ・コモンズ・ライセンスを例に取ると… ● 表示義務はデフォルト。日本の著作権法でも出所の明 示義務。 ● 商用・非商用の別も日本では比較的議論の俎上にのぼ ることが多い。 ● 改変・非改変の議論もその次くらいに議論の俎上にの ぼるか。 ● 継承 (Share-Alike) の効能が一番理解されていない気 がする。 ● GPL や GFDL 、 ODbL などでも。 ● 自由の強制とは ? なぜ強制的に守る必要があるのか ? ● 自由は大事なの ? 意識的に守らないと守られないの ?
  • 16. 16/17 関連して考えるべきこと ● メタデータの整備 ● 電子配信する場合 ● Machine Readable Human Readable ● どう使う / 使われるのか ? ● 自由とは ● 利用 / 使用の制限 ● 近年の政府や研究業界の動向 ● 地方自治体、政府のオープンデータの取り組み ● 事実情報も多いが、「 CC BY 2.1 日本」を付けている場合が多い。 ● 学術情報のオープンアクセス化の流れ ● 博士論文デジタル化・オープンアクセス化、機関リポジトリの隆盛 ● 公共性と民業圧迫の視点 詳しくはこの後の討論で
  • 17. 17/17 著作権法をめぐる最近のトピック ● 2012 年改正、 2013 年施行 ( 一部は 2012 年 ) の 著作権法のポイントについては ● http://www.bunka.go.jp/chosakuken/24_houkaise i.html ● 等を参照 ● 写り込み ● 国立国会図書館における複製 ● 技術的保護手段 ● 違法ダウンロード刑事罰化 ● DHjp 第 3 号も参照 ● 2014 年は電子出版に出版権を認める改正が行わ れ、 2015 年 1 月 1 日施行の予定