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椙山女学園大学 文化情報学部脇田泰子准教授 講座:出版文化論


電子書籍と図書館




                 ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也   2012年6月19日 0
■ 狙い

   いつでもアクセスできる「知」の蔵を準備しておいて、時々の必要に応じて参照したい、とするニーズは昔
    からあり、図書館、資料室、本棚などの物理的設備(≒アーカイブ)や、辞書、百科事典、ハンドブック、便
    覧などの編集形態(=レファレンス)が産み出された。

   デジタル化は検索性とアクセス性という点で、上のニーズに多大な便宜を提供することから期待が高まっ
    ている一方で、図書館の機能、書籍のあり方に重大な変更を迫ってもいる。

   本講義において、図書館と電子書籍をめぐり、ビジネスの現場で実際に起きていることを報告し、出版文
    化を考える「思考の補助線」を提供したい。




                      ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也      2012年6月19日 1
■ 構成

1.「所有」と「利用」~電子書籍編
2.「利用/フィー型」の事例~B2B/専門書
3.「売り切り型」が欧米では主流
4.「楽しむ読書」と「知る読書」~一般書と専門書
5.「所有」と「利用」~図書館編
6.「蔵書管理」から「意味検索」へ~デジタル化の意義(1)
7.「所有から利用」そして「共有」へ~デジタル化の意義(2)
8.まとめよう:デジタル化が引き起こす「知の流通」の大変化

            ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也   2012年6月19日 2
1.「所有」と「利用」~電子書籍編




           ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也   2012年6月19日 3
1.1 電子辞書は高いか、安いか


                            ・英語の辞書だけでも26種類、
                             国語系、ビジネス系、トラベ
                             ル系、生活・実用系の辞典
                             /事典も含めると全部で
                             170コンテンツ
                            ・書籍で購入すると80万円

                            ・小売実勢価格 4万円弱



                       ・でも、本当に全部使ってる?
         (HPより)



             ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也      2012年6月19日 4
1.2 広辞苑は高いか安いか

                  ◆第六版刊行にあたって
                    『広辞苑』が,国語辞典と百科事典を兼ね備えた画
        本体価格       期的な辞書として刊行されてから50年余が経ちまし
                   た.(中略)今日では1100万人の読者を持つ国民的
        8400円      辞書に育ち,日本語の規範として,ゆるぎない信頼を
                   いただいております.         (HPより)




                  ×「いま、情報を得たい」から買う
                  ○「将来、必要な時」のために買う

                     全頁読むと思って買ってない

                  安心感(いつでも/質)への対価?
           ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也           2012年6月19日 5
1.3 「買い得」より「安心感(いつでも使える/高い質)」?


   レファレンスは全頁通読することを想定していない

   「所有」は「利用」するための前提条件に過ぎない

      いつでも使える安心感に対価を支払う

     「所有」を経由しない「利用」ってないの?

  「利用」に対応したモデル(=フィー型)があるとうれしい

           ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也   2012年6月19日 6
1.4 図書館は「利用」の前提として、「所有」している


   出版社             大学図書館                     学生・教授




         売切り                           貸出
         /所有                           /利用


    B2B=ビジネス対ビジネス                B2C=ビジネス対消費者
                               註:厳密には図書館にはB2Cという言い方はしません。
                                あくまで有償のビジネスの世界で使われるいいかた。

               ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也                  2012年6月19日 7
1.5 お金を支払う裏側に、異なる価値観/利用法がある


    椙山女学園                      今日の晩御飯のために
   大学図書館蔵書                      人参、ベーコンなどを
     43万冊                          買った
   学生数6千人                          晩御飯材料費1千円也!
 仮に平均単価3千円とすると、
   一人当たり21万5千円                    ・10年後の晩御飯のために
                                   取っておこう!百分の一だ
 ・たとえ10年に一度その項目                    け使っておこう!
  が閲覧されるのでも、たとえ
  それが数ページであろうと、                    なんて考える人はいない。
  それで読者があるインスピ                    ・たいていその日のうちに使
  レーションを得られ、学習や                    い切る。
  研究に役に立ったのであれ
  ば、十分意義がある。                      ・それも、全部を使い切る。

                  ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也           2012年6月19日 8
1.6 図書館(価値観/利用法)の個人版がレファレンス


    椙山女学園                   もう一歩、図書館に近づ
   大学図書館蔵書                      けるには?
     43万冊
                              ・電子辞書
 購入総額12億9千万円
                              小売実勢価格 4万円弱

  43万冊にはかなわな                  ・英語の辞書だけでも26
  いけれど、エッセンス                   種類、国語系、ビジネス
  がバンドルされている                   系他 辞典/事典も含
  レファレンスなら。                    めると全部で170コンテ
 → 広辞苑 8400円                   ンツ

               ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也          2012年6月19日 9
1.7 「安心感(いつでも使える/高い質)」の対価モデル?


   レファレンスは全頁通読することを想定していない

   「所有」は「利用」するための前提条件に過ぎない

      いつでも使える安心感に対価を支払う

     「所有」を経由しない「利用」ってないの?

  「利用」に対応したモデル(=フィー型)があるとうれしい

           ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也   2012年6月19日 10
1.8 映画や音楽では、その方向へ踏み出している(1)

  月額○○円で、見放題、聴き放題のサービス




                                       (HPより)


       映画700本、テレビ番組5000話が、月額980円で。
               ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也     2012年6月19日 11
1.9 映画や音楽では、その方向へ踏み出している(2)

   月額○○円で、見放題、聴き放題のサービス




                                      (HPより)

                            月額1480円
   レコチョク:国内外3万5千アーティスト、1百万曲がiPhoneで。

              ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也     2012年6月19日 12
1.10 デジタル化は「利用」価値を顕在化させる


       映像、音楽、テキストをデジタル化

       コンテナとしてのパッケージ不要



     ・パッケージ(DVD、CD、本)制作代不要
         パッケージ流通費用不要
       ・アクセス「可能性」の飛躍的拡大


           ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也   2012年6月19日 13
1.11 ただし技術要因(デジタル化)だけでは実現できない



     ・パッケージ(DVD、CD、本)制作代不要
         パッケージ流通費用不要
       ・アクセス「可能性」の飛躍的拡大


      ・技術的可能性を具体化するにはビジネ
       スモデルの構築が必要。
      ・ビジネスモデル構築の成否は産業構造
       や市場特性に依存する。


           ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也   2012年6月19日 14
1.12 電子辞書の場合:産業構造や市場特性のポイント


 43万冊にはかなわな                     もう一歩、図書館に近づけ
 いけれど、エッセンス          デ               るには?
                     ジ
 がバンドルされている          タ
 レファレンスなら。           ル          ・電子辞書
                     化
 → 広辞苑 8400円                    小売実勢価格 4万円弱



     <デジタル化>~カシオという家電メーカーの参入

        ・家電量販店が流通のキー(産業構造)
     ・白物家電の価格帯の中での品定め(市場特性)

               ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也      2012年6月19日 15
2.「利用/フィー型」の事例~B2B/専門書




           ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也   2012年6月19日 16
2.1 「売り切り型」と「フィー型」

  理念形としては、価値観と価格体系の間に下記のよ
  うな相関関係を想定しうる

                 所有価値             利用価値
                  重視               重視
       売り切り型         ○
       フィー型                            ○

      売り切り型:通常の売買の形態
      フィー型:月額や年額で定額を
            継続的に支払う
               ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也       2012年6月19日 17
2.2 書籍の世界での実際事例

 実際は.....
            所有価値重視             利用価値重視   

                            丸善ebookLibrary
    売り切り型 ③ B2C電子書籍     ②
                            紀伊國屋NetLibrary


    (従量性)                   (データベースサービス)

                          小学館 ジャパンナレッジ
                          有斐閣 VPASS
    フィー型                ①
                          医学書院 今日の診療
                          丸善出版 化学書資料館


            一般書/B2C           専門書/B2B(2C)
              ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也          2012年6月19日 18
2.3 小学館 ジャパンナレッジ(フィー型)



                                       総項目数約218万、
                                       総文字数約16億文字


                                       国内の大学約300校、
                                       海外の大学約250校を
                                       はじめとした約800の機関


                                       年間フィー
 日本大百科全書(ニッポニカ) 日本国語大辞典
                                         252,000円から
 デジタル大辞泉 字通 数え方の辞典   国史大辞典
                                              数値等はHPより
 日本歴史地名大系 誰でも読める 日本史年表 江戸名所図会 他

                      ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也          2012年6月19日 19
2.4 有斐閣 VPASS(フィー型)




                                    (HPより)


            ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也   2012年6月19日 20
2.5 医学書院 今日の診療(フィー型)

                         「今日の治療指針2011年版」
                         「今日の治療指針2010年版」
                         「今日の診断指針 第6版」
                         「今日の整形外科治療指針 第6版」
                         「今日の小児治療指針 第14版」
                         「救急マニュアル 第3版」
                         「臨床検査データブック2011-2012」
                         「治療薬マニュアル2011」
                         「新臨床内科学 第9版」
                         「内科診断学 第2版」
                         「今日の皮膚疾患治療指針 第3版」
                         「臨床中毒学」
                         「医学書院医学大辞典 第2版」



                               年間フィー 40万円から
                                        数値等はHPより


           ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也             2012年6月19日 21
2.6 丸善出版 化学書資料館(フィー型)




  『化学便覧』『化学実験講座』など、7万ページのコンテンツ
    年間フィー21万円から              数値等はHPより

             ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也   2012年6月19日 22
3.「売り切り型」が欧米では主流




           ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也   2012年6月19日 23
3.1 米国大学図書館の図書購入費推移

・売り切り型が中心で、新規市場を創出。
 a.雑誌は「カニバルが、トータルでプラス」(カニバル=シェアを喰う)
 b.書籍では新規市場、ただしパターン3の可能性(次頁)

 (百万ドル)       98年             2006 年            2008 年
  書籍(冊子体)     514   94.8%     572       85.9%   611   82.1%
  書籍(電子版)      28    5.2%       94      14.1%   133   17.9%


  雑誌(冊子体)     850   87.2%     830       54.5%   700   41.1%
  雑誌(電子版)     125   12.8%     692       45.5% 1,004   58.9%
            出典:IES Academic Libraries:2008 他
                ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也                    2012年6月19日 24
3.2 電子書籍は新規市場を創出するか?

 ・おそらく分野により異なる変化(パターン)となろう。 (分野=P55)




                                      「電子書籍論」の5つの次元
                                      ~メディア論からみた「電子書籍」論
                                         2012日本出版学会資料 林 智彦
              ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也                   2012年6月19日 25
3.3 紀伊國屋NetLibrary(売り切り型)~海外から参入

                        NetLibrary(ネットライブラリー)のシステムはどの
                         ような仕組みになっているのでしょうか?
                         まず、図書館がNetLibraryのeBookを購入します。
                         eBookはすべてNetLibraryのサーバーで提供さ
                         れます。


                        レベル的にはどの程度のレベルなのでしょうか?
                         学部生・大学院生を主な対象とした、基本的な
                         学術図書のコレクションです。


                        閲覧中はどのようなことができますか?
                         コンテンツの全文検索、内蔵辞書参照、付箋・メ
                         モ機能、印刷、コピー、ダウンロードなどの機能
                         が使用できます。


                                                 (HPより)
            ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也               2012年6月19日 26
3.4 丸善ebookLibrary(売り切り型)~和製

                         ○学内すべてが利用対象
                          図書館に行かなくても、研究室や教室、PCルー
                          ムなど学内のネットワーク内のPCから図書資料
                          にアクセスできます。同じ学内なら離れたキャン
                          パスからもアクセスできます。


                         ○目次リンク、検索機能の充実
                          目次からのリンク機能のほか、複数のタイトル
                          を横断する全文検索機能を備えています。


                         ○PDFファイルダウンロード機能
                          60ページまでの範囲でダウンロード(PDF)できま
                          すが、ウォーターマーク(すかし)および書籍情報
                          などが欄外に印刷されています。ダウンロード
                          ファイルは個人目的に限り閲覧可能です。
                                              (HPより)

             ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也            2012年6月19日 27
4.「楽しむ読書」と「知る読書」~一般書と専門書




           ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也   2012年6月19日 28
4.1 ふたつの読書


 【楽しむ読書/時間消費】               【知る読書/知的生産】


                         ・知的生産の[時間特性]
・楽しむ読書の[時間特性]            =効率性が重要。
 =終わってほしくない。
                         ・ 紙の一覧性(=曖昧探索)
                           +デジタルの検索性(=ピ
・ 「この興奮、感覚が長く続             ンポイント)
  いてほしい」。端末がそれ
                         ・ 早く内容を理解したい=
  をサポートするようなら電
                           紙の通読性(←コンテンツ
  子書籍へ読者のシフトも。
                           の体系性・論理性)
             ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也   2012年6月19日 29
4.2 ふたつの読書と端末/フォーマット

  ・テキスト主体の本=XMDFやePub=PCでもケータイでも
                                      一般書
                                      が中心



 ・レイアウトが重要な本=PDF=PCまたはタブレット
                                      専門書
                                      が中心




              ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也    2012年6月19日 30
4.3 楽しむ読書のデジタル化/電子書籍化のポイント

 ・楽しむ読書の[時間特性]
    =終わってほしくない
 ・ 「この興奮、感覚が長く続
   いてほしい」。端末がそれ
   をサポートするようなら電
   子書籍へ読者のシフトも。

◎配信の仕組み/端末/コ
 ンテンツをトータルでデザ
 インすることが必要。
                                   時事ドットコム【 図解・経済産業】日米の電子書籍流通モデル


           ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也                         2012年6月19日 31
4.4 日米の相違~出版業界の構造

            日本               米国
                                         ・デジタル化
 組版データ    印刷会社              出版社
                                          へ経営の舵
                                          取りを切り替
  著作権      著者               出版社           えにくい日本

   文      漢字かな混じり文   単語の組合せ
  文字種       数万                26         ・デジタル化
                                          に伴う技術的
  OCR     95~97%            99%           課題が多い
                                          日本
  検索      形態素解析          形態素解析
           不可欠            不要             分野や会社により濃淡。
                                         上述は一般論。

                 ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也         2012年6月19日 32
4.5 日米の相違~市場特性(嗜好・選好・読書シーン)

 日本:本好き > 読書好き              米国:本好き < 読書好き

 ・文字、紙質、匂い、手触りなど          ・読書は消費行為で、終われば
  にもこだわり。                  本を捨てる。

 ・所有欲が強い。捨てられない。          ・所有より、利用。
 ・黙読に閉じ込められる読書 。          ・社交の中に読書=引用の文化。

 ・旅行に本は持っていかない。           ・旅行に数冊の本を持っていく。

 ・通勤車中も読まなくなった。           ・車通勤中にオーディオブック。

 ・学生は本を買わない。              ・学生は分厚い本をたくさん読
                           む。

               ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也   2012年6月19日 33
5.「所有」と「利用」~図書館編




            ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也   2012年6月19日 34
5.1 スタンフォード大学図書館の「Bookless Libraries」

★Facing the Facts:                                       ★Stanford Ushers In
University Presses in                                    The Age Of Bookless
the Digital Age                                          Libraries
                                                         http://www.npr.org/templates/story/story.php?stor
http://www.publishersweekly.com/pw/print/43600
                                                          yId=128361395
 -facing-the-facts-university-presses-in-the-digital-
 age.htm



・ある米国大学図書館で、過                                            ・工学関連図書館が2011年
 去10年間の購入書籍のうち                                            8月に新規オープン。新刊増
 47%は一度も貸し出されて                                            加に耐えられなくなったのが
 いない。今後は電子版で需                                             新館建設のきっかけ。しかし
 要を確認してから、冊子体の                                            そこは工学の府。データ検証
 購入を決める、と。                                                を踏まえた。調べてみると貸
                                                          出実績に濃淡。蔵書8割減と
                                                          し、空いたスペースで「新しい
                                                          図書館(員)」像を追求する!
                                             ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也                                  2012年6月19日 35
5.2 千葉大学図書館のLearningCommons




                                      (HPより)

   ラーニングコモンズ:これまでの重厚で堅い大学図書館のイメージから、
   新しい図書館の姿を表現するものとして使われるようになっている。パ
   ソコンを自由に使えるスペースを設けたり、丸い形のテーブルや座り心
   地のいいソファを設置してコーヒーを飲みながら話ができるカフェなどを
   併設している場合もある。図書館はただ本を借りるだけ、あるいはそこ
   で静かに調べ物をしたりするだけの場所ではなく、仲間とともにディス
   カッションをしたり、自分たちが情報を発信する場にもなるように変えて
   いきたいという意向がある。(ジャパンナッレッジより)
              ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也            2012年6月19日 36
5.3 図書館は本来「利用」価値の牙城のはずだが。。。

                          ・学習(者)観:
 ・Booklessより
  LearningCommonsの方       受動的学習者に勉学をさせる
  が、変化の本質。                VS 能動的学習者の勉学を
                          サポートする
 ・大学図書館は大学の一組織。
                          ・大学観:
 大学が直面する課題に対す
 る解答を要求される存在。             研究と研究者を育てる場所
                          VS 実社会で役に立つ人を
                          育てる場所


        図書館の役割も再構築が必要になっている

              ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也   2012年6月19日 37
6.「蔵書管理」から「意味検索」へ~デジタル化の意義(1)




           ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也   2012年6月19日 38
6.1 図書館像の変容の裏にある(or 促す)大変化


       「コノ本はどこにある?」から

   「コレはどこ(どの本)に書いてある?」へ




        蔵書管理から意味検索へ


           ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也   2012年6月19日 39
6.2 情報整理の第一段階~蔵書管理


・いつでもアクセスできる「知」           <情報整理の第一段階>
 の蔵を準備しておいて、時々             =モノに序列を与える。
 の必要に応じて参照したい、
 とするニーズは昔からあり、
 図書館の歴史は古い。           ・最初のころは本の大きさの順に。
                      ・ある時期から本をアルファベット
                       順に並べた。
・収集がある規模を超えると、
 「整理」の問題が出てきた。
                      ・読みたい本が決まっていて、タイ
                       トルがわかっているときは便利。


            ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也    2012年6月19日 40
6.3 情報整理の第二段階~蔵書管理の発想を意味検索に

・<第一段階>では、読みた         1876年デューイは「十進分類法」
 い本が決まっていない(=「こ        を発表。
 ういうことはどの本に書いて        →「意味」の序列化を着想。
 あるんだろう」)時は不便。        →棚を「知識の地図」に。
        ↓
                      ・「本」に分類記号を付与、図書
    司書の登場              カード(代理変数)に書き留め、
                       カードをアルファベット順にするこ
                       とで、本を探しやすくした。
・「司書のような専門家がいな
 いと図書館は使えない」ので         <情報整理の第二段階>
 は「知識の民主化」に反する。
 (デューイ)               =モノに「意味」の序列を与える。

            ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也    2012年6月19日 41
6.4 情報整理の第二段階~配架記号


                             019 は分類番号
                             ←日本十進分類法




                                   玉川大図書館HPより




          ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也           2012年6月19日 42
6.5 情報整理の第三段階~意味検索全面開花の可能性

                              デジタル化時代の到来
・<第二段階>もモノの呪縛
 から逃げ切れていない。             ・コンテンツと意味を分離記述
                          する手法の開発
・物理的空間を占有するモノの
 世界は<1:1>対応の原則           (=メタデータ)
 が支配。
→ひとつの本にひとつの分類             <情報整理の第三段階>
 番号(配架記号)。              意味をデジタル化/メタデータ化

 ・本の内容は多義的              ・「本」のメタデータに、タグを付与
                         することで、無限に「意味」を付与
 ・読み手はその文脈の中で、           することが可能に。
  本を理解していく。

             ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也     2012年6月19日 43
6.6 引用が意味検索の機能を果たす~inBook(1)




 InBookを使うとこんなことができます。
 ・好きなセリフや感動した名言を記録し、気軽に自分の本棚で管理出来ます。
 ・自分が読まないジャンルに挑戦したい時、名言をヒントに本が探し出せます。
 ・「好きなセリフや感動したセリフを誰かに伝えたい、共有したい。」「みんなの好き
  なセリフ、名言を多く知りたい。」みんなと繋がることで新しい発見が出来ます。
                                        (HPより)


                ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也     2012年6月19日 44
6.7 引用が意味検索の機能を果たす~inBook(2)

                         ・引用箇所がタグの機能を果たす
                         ・「コレはどこに書いてある」への一歩



様々な
 書き                                        様々な
 手                                          書籍




                                        (HPより)


           ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也           2012年6月19日 45
7.「所有から利用」そして「共有」へ~デジタル化の意義(2)




           ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也   2012年6月19日 46
7.1 ネットの力~ネット世界がもたらしたルールの変化

  【これまでのルール】                            【これからのルール】
         B to C                            B with C
                                           B for F

 Attention(注意)―TVCMなどで注意を引かれる          Attention (注意が喚起され)

 Interest(関心)―商品に対する興味を持つ              Interest (興味が生まれ)

 Desire(欲望)―アノ商品を欲しい                   Search (検索し)
                                                               ネット世界に
 Memory(記憶)―商品やブランドを覚える                                      a.評判のループ
   「売り場」でコレといって欲しい   覚えさせる             Action (購買し)          b.意味循環の 
                         ための             ネットで即購買               エコシステム
                       大規模広告費
 Action(行動)―購買行動を起こす                   Share (情報を共有する)



                         ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也                   2012年6月19日 47
7.2 「読書」にもたらした変化→「共有」の可能性

    【これまで】                            【これから】
     B to C                            B with C
                                       B for F
     読書 1.0                       読書 3.0
    一人で楽しむ
                                ネット世界を通じ
    読書 2.0                      共有・共感・協読
   内容を活用する
 ソーシャル・リーディングの時代へ
       = クラウド力 + モバイル力
              ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也               2012年6月19日 48
7.3 たとえば、こんなことが近未来?

 紙の本では実現できない、電子ならではの「横串検索」


                                   横   自    異
                                   串   分    な
                                   検   の    る
                                   索   購    出
                                       入    版
                                       し    社
                                       た    を
                                       新    横
                                       書    断
                                       を    し
                                            て
                                            、




           ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也           2012年6月19日 49
7.4 7インチサイズのタブレット

軽量382g。通勤途上インテリジェンス系縦書き新書をTabletで読む
                Tabの内寸                       Tabの外寸

                7インチ
 1              1                            1
 8              5                            9
 2              5                            0




                     90
     103mm
 新書と                                  382g
                                                 120

 Tabletの相性のよさ
                    ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也              2012年6月19日 50
7.5 読書3.0の実現

     【自分】レポート書くとき、使えそ               【他の人】:この本って、こう
      うなフレーズをメモっとこ                   いうことが書いてあるんだ




              読書




読書3.0:                              紙の本・電子書籍
ネット世界を通じ共有・共感・協読
            ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也
                                    両方の情報流
                                             2012年6月19日 51
8.まとめよう:デジタル化が引き起こす「知の流通」の大変化




           ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也   2012年6月19日 52
8.1 本の分解 コンテンツの分解


    A:本の分解               パッケージ
                       (モノとしての本)
       本
                           コンテンツ


    B:コンテンツの分解         全体のコンテンツ
                       (編集された本)
     コンテンツ
                       部分のコンテンツ


             ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也   2012年6月19日 53
8.2 本の分解が引き起こす変化


    A:本の分解               パッケージ
                       (モノとしての本)
       本
                           コンテンツ


    <図書館への影響>            <本/読書への影響>
   ・物理的空間的制約から          ・本好きか読書好きかの
   解放される                リトマス紙的効果。
    例:副本を減らせる。           ・分野や種類ごとに何が
                        求められているのか、につ
                        いて意識的になる。
             ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也     2012年6月19日 54
8.3 本の分野 読書の種類

○分類記号(Cコード)の一桁目                             ○分野や種類によりデジタル化
 『漢字文化の源流』                   1381           の影響は様々
 『宗教学事典』                     3514
                                              ・書籍と雑誌
  第1桁(販売対象) 第3-4桁(内容)
  コード 内容    コード 内容      40   自然科学総記
    0 一般     00 総記      41   数学               ・書籍の内訳(楽しむと知るを更に分解)
    1 教養     01 百科事典    42   物理学
    2 実用     11 心理(学)   43   化学
    3 専門     12 倫理(学)   44   天文・地学            ①ことばを味わう:詩 エッセー
    5 婦人     14 宗教      45   生物学
    6 学参I(小中) 経営
             34         47   医学・歯学・薬学         ②読んで楽しむ:小説 児童書 絵本
    7 学参II(高校) 社会
             36         50   工学・工学総記
    8 児童     37 教育      51   土木               ③見て楽しむ :写真集
    9 雑誌扱い   39 民族・風習   52
                        53
                             建築
                             機械               ④読んで do :レシピ本、工作本
  第2桁(発行形態)
                        54
                        55
                             電気
                             電子通信
                                              ⑤話の種にする:ノウハウ本
  コード 内容
    0 単行本
                        56
                        57
                             海事
                             採鉱・冶金
                                              ⑥調べる(生活シーン):実用書
    1 文庫
    2 新書
                        58
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                                              ⑦調べる(学習・研究) :専門書
    3 全集・双書             77   家事               ⑧自己学習 :教科書 問題集 学参
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    5 事・辞典                                    ⑨必要に応じて引く :レファレンス
    6 図鑑
    7 絵本                                      (辞書、百科事典、ハンドブック、便覧)
    8 磁性媒体など
    9 コミック


                                 ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也         2012年6月19日 55
8.4 コンテンツの分解が引き起こす変化


    B:コンテンツの分解          全体のコンテンツ
                        (編集された本)
     コンテンツ
                        部分のコンテンツ


    <図書館への影響>            <本/読書への影響>
   ・「本の蔵」から「知を産み ・本が包摂している様々
   出す場」への転身に道。   な意味の「見える化」。
   ←「蔵」機能や「司書」機能 →マイクロコンテンツ化
   はネット空間がその一部を ・「本の流通」から「意味の
   になってくれる。      流通」へ道を拓いた。
             ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也    2012年6月19日 56
○ 参考~電子書籍論の5つの領域




                                  「電子書籍論」の5つの次元
                                  ~メディア論からみた「電子書籍」論
                                     2012日本出版学会資料 林 智彦
          ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也                   2012年6月19日 57
○ 参考~新商品(サービス・市場)が産まれるには



                ニーズ
                                        ビ
                                        ジ
                             シーズ        ネ
         経営判断                           ス
                            (技術要因)
  企業文化                                  モ
                                        デ
                                        ル
                                        の
                                        構
          産業構造          市場特性            築



                ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也   2012年6月19日 58
ご清聴ありがとうございました。


                                                  2012年6月19日
                                                 丸善出版株式会社
                                                   新規事業開発部
                                                      神宮司信也
                                  shinya.jingushi@maruzen.co.jp

                              http://www.facebook.com/sjingushi
                               https://twitter.com/#!/sasazamani
                                     。

          本スライドは教材として作成しましたので、その範囲でご活用ください。また、
本スライドの内容はすべて個人の見解に基づくもので、会社の意見を述べたものではありません。




          ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也                         2012年6月19日 59

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電子書籍と図書館 120619Ver.3

  • 1. 椙山女学園大学 文化情報学部脇田泰子准教授 講座:出版文化論 電子書籍と図書館 ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 0
  • 2. ■ 狙い  いつでもアクセスできる「知」の蔵を準備しておいて、時々の必要に応じて参照したい、とするニーズは昔 からあり、図書館、資料室、本棚などの物理的設備(≒アーカイブ)や、辞書、百科事典、ハンドブック、便 覧などの編集形態(=レファレンス)が産み出された。  デジタル化は検索性とアクセス性という点で、上のニーズに多大な便宜を提供することから期待が高まっ ている一方で、図書館の機能、書籍のあり方に重大な変更を迫ってもいる。  本講義において、図書館と電子書籍をめぐり、ビジネスの現場で実際に起きていることを報告し、出版文 化を考える「思考の補助線」を提供したい。 ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 1
  • 4. 1.「所有」と「利用」~電子書籍編 ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 3
  • 5. 1.1 電子辞書は高いか、安いか ・英語の辞書だけでも26種類、 国語系、ビジネス系、トラベ ル系、生活・実用系の辞典 /事典も含めると全部で 170コンテンツ ・書籍で購入すると80万円 ・小売実勢価格 4万円弱 ・でも、本当に全部使ってる? (HPより) ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 4
  • 6. 1.2 広辞苑は高いか安いか ◆第六版刊行にあたって 『広辞苑』が,国語辞典と百科事典を兼ね備えた画 本体価格 期的な辞書として刊行されてから50年余が経ちまし た.(中略)今日では1100万人の読者を持つ国民的 8400円 辞書に育ち,日本語の規範として,ゆるぎない信頼を いただいております. (HPより) ×「いま、情報を得たい」から買う ○「将来、必要な時」のために買う 全頁読むと思って買ってない 安心感(いつでも/質)への対価? ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 5
  • 7. 1.3 「買い得」より「安心感(いつでも使える/高い質)」? レファレンスは全頁通読することを想定していない 「所有」は「利用」するための前提条件に過ぎない いつでも使える安心感に対価を支払う 「所有」を経由しない「利用」ってないの? 「利用」に対応したモデル(=フィー型)があるとうれしい ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 6
  • 8. 1.4 図書館は「利用」の前提として、「所有」している 出版社 大学図書館 学生・教授 売切り 貸出 /所有 /利用 B2B=ビジネス対ビジネス B2C=ビジネス対消費者 註:厳密には図書館にはB2Cという言い方はしません。 あくまで有償のビジネスの世界で使われるいいかた。 ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 7
  • 9. 1.5 お金を支払う裏側に、異なる価値観/利用法がある 椙山女学園 今日の晩御飯のために 大学図書館蔵書 人参、ベーコンなどを 43万冊 買った 学生数6千人 晩御飯材料費1千円也! 仮に平均単価3千円とすると、 一人当たり21万5千円 ・10年後の晩御飯のために 取っておこう!百分の一だ ・たとえ10年に一度その項目 け使っておこう! が閲覧されるのでも、たとえ それが数ページであろうと、 なんて考える人はいない。 それで読者があるインスピ ・たいていその日のうちに使 レーションを得られ、学習や い切る。 研究に役に立ったのであれ ば、十分意義がある。 ・それも、全部を使い切る。 ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 8
  • 10. 1.6 図書館(価値観/利用法)の個人版がレファレンス 椙山女学園 もう一歩、図書館に近づ 大学図書館蔵書 けるには? 43万冊 ・電子辞書 購入総額12億9千万円 小売実勢価格 4万円弱 43万冊にはかなわな ・英語の辞書だけでも26 いけれど、エッセンス 種類、国語系、ビジネス がバンドルされている 系他 辞典/事典も含 レファレンスなら。 めると全部で170コンテ → 広辞苑 8400円 ンツ ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 9
  • 11. 1.7 「安心感(いつでも使える/高い質)」の対価モデル? レファレンスは全頁通読することを想定していない 「所有」は「利用」するための前提条件に過ぎない いつでも使える安心感に対価を支払う 「所有」を経由しない「利用」ってないの? 「利用」に対応したモデル(=フィー型)があるとうれしい ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 10
  • 12. 1.8 映画や音楽では、その方向へ踏み出している(1) 月額○○円で、見放題、聴き放題のサービス (HPより)  映画700本、テレビ番組5000話が、月額980円で。 ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 11
  • 13. 1.9 映画や音楽では、その方向へ踏み出している(2) 月額○○円で、見放題、聴き放題のサービス (HPより) 月額1480円  レコチョク:国内外3万5千アーティスト、1百万曲がiPhoneで。 ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 12
  • 14. 1.10 デジタル化は「利用」価値を顕在化させる 映像、音楽、テキストをデジタル化 コンテナとしてのパッケージ不要 ・パッケージ(DVD、CD、本)制作代不要 パッケージ流通費用不要 ・アクセス「可能性」の飛躍的拡大 ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 13
  • 15. 1.11 ただし技術要因(デジタル化)だけでは実現できない ・パッケージ(DVD、CD、本)制作代不要 パッケージ流通費用不要 ・アクセス「可能性」の飛躍的拡大 ・技術的可能性を具体化するにはビジネ スモデルの構築が必要。 ・ビジネスモデル構築の成否は産業構造 や市場特性に依存する。 ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 14
  • 16. 1.12 電子辞書の場合:産業構造や市場特性のポイント 43万冊にはかなわな もう一歩、図書館に近づけ いけれど、エッセンス デ るには? ジ がバンドルされている タ レファレンスなら。 ル ・電子辞書 化 → 広辞苑 8400円 小売実勢価格 4万円弱 <デジタル化>~カシオという家電メーカーの参入 ・家電量販店が流通のキー(産業構造) ・白物家電の価格帯の中での品定め(市場特性) ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 15
  • 17. 2.「利用/フィー型」の事例~B2B/専門書 ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 16
  • 18. 2.1 「売り切り型」と「フィー型」 理念形としては、価値観と価格体系の間に下記のよ うな相関関係を想定しうる 所有価値 利用価値 重視 重視 売り切り型 ○ フィー型 ○ 売り切り型:通常の売買の形態 フィー型:月額や年額で定額を       継続的に支払う ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 17
  • 19. 2.2 書籍の世界での実際事例 実際は..... 所有価値重視 利用価値重視    丸善ebookLibrary 売り切り型 ③ B2C電子書籍 ② 紀伊國屋NetLibrary (従量性) (データベースサービス) 小学館 ジャパンナレッジ 有斐閣 VPASS フィー型 ① 医学書院 今日の診療 丸善出版 化学書資料館 一般書/B2C   専門書/B2B(2C) ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 18
  • 20. 2.3 小学館 ジャパンナレッジ(フィー型) 総項目数約218万、 総文字数約16億文字 国内の大学約300校、 海外の大学約250校を はじめとした約800の機関 年間フィー 日本大百科全書(ニッポニカ) 日本国語大辞典 252,000円から デジタル大辞泉 字通 数え方の辞典 国史大辞典 数値等はHPより 日本歴史地名大系 誰でも読める 日本史年表 江戸名所図会 他 ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 19
  • 21. 2.4 有斐閣 VPASS(フィー型) (HPより) ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 20
  • 22. 2.5 医学書院 今日の診療(フィー型) 「今日の治療指針2011年版」 「今日の治療指針2010年版」 「今日の診断指針 第6版」 「今日の整形外科治療指針 第6版」 「今日の小児治療指針 第14版」 「救急マニュアル 第3版」 「臨床検査データブック2011-2012」 「治療薬マニュアル2011」 「新臨床内科学 第9版」 「内科診断学 第2版」 「今日の皮膚疾患治療指針 第3版」 「臨床中毒学」 「医学書院医学大辞典 第2版」 年間フィー 40万円から 数値等はHPより ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 21
  • 23. 2.6 丸善出版 化学書資料館(フィー型) 『化学便覧』『化学実験講座』など、7万ページのコンテンツ 年間フィー21万円から 数値等はHPより ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 22
  • 24. 3.「売り切り型」が欧米では主流 ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 23
  • 25. 3.1 米国大学図書館の図書購入費推移 ・売り切り型が中心で、新規市場を創出。 a.雑誌は「カニバルが、トータルでプラス」(カニバル=シェアを喰う) b.書籍では新規市場、ただしパターン3の可能性(次頁) (百万ドル) 98年 2006 年 2008 年 書籍(冊子体) 514 94.8% 572 85.9% 611 82.1% 書籍(電子版) 28 5.2% 94 14.1% 133 17.9% 雑誌(冊子体) 850 87.2% 830 54.5% 700 41.1% 雑誌(電子版) 125 12.8% 692 45.5% 1,004 58.9% 出典:IES Academic Libraries:2008 他 ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 24
  • 26. 3.2 電子書籍は新規市場を創出するか? ・おそらく分野により異なる変化(パターン)となろう。 (分野=P55) 「電子書籍論」の5つの次元 ~メディア論からみた「電子書籍」論 2012日本出版学会資料 林 智彦 ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 25
  • 27. 3.3 紀伊國屋NetLibrary(売り切り型)~海外から参入 NetLibrary(ネットライブラリー)のシステムはどの ような仕組みになっているのでしょうか? まず、図書館がNetLibraryのeBookを購入します。 eBookはすべてNetLibraryのサーバーで提供さ れます。 レベル的にはどの程度のレベルなのでしょうか? 学部生・大学院生を主な対象とした、基本的な 学術図書のコレクションです。 閲覧中はどのようなことができますか? コンテンツの全文検索、内蔵辞書参照、付箋・メ モ機能、印刷、コピー、ダウンロードなどの機能 が使用できます。 (HPより) ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 26
  • 28. 3.4 丸善ebookLibrary(売り切り型)~和製 ○学内すべてが利用対象 図書館に行かなくても、研究室や教室、PCルー ムなど学内のネットワーク内のPCから図書資料 にアクセスできます。同じ学内なら離れたキャン パスからもアクセスできます。 ○目次リンク、検索機能の充実 目次からのリンク機能のほか、複数のタイトル を横断する全文検索機能を備えています。 ○PDFファイルダウンロード機能 60ページまでの範囲でダウンロード(PDF)できま すが、ウォーターマーク(すかし)および書籍情報 などが欄外に印刷されています。ダウンロード ファイルは個人目的に限り閲覧可能です。 (HPより) ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 27
  • 29. 4.「楽しむ読書」と「知る読書」~一般書と専門書 ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 28
  • 30. 4.1 ふたつの読書 【楽しむ読書/時間消費】 【知る読書/知的生産】 ・知的生産の[時間特性] ・楽しむ読書の[時間特性] =効率性が重要。 =終わってほしくない。 ・ 紙の一覧性(=曖昧探索) +デジタルの検索性(=ピ ・ 「この興奮、感覚が長く続 ンポイント) いてほしい」。端末がそれ ・ 早く内容を理解したい= をサポートするようなら電 紙の通読性(←コンテンツ 子書籍へ読者のシフトも。 の体系性・論理性) ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 29
  • 31. 4.2 ふたつの読書と端末/フォーマット ・テキスト主体の本=XMDFやePub=PCでもケータイでも 一般書 が中心 ・レイアウトが重要な本=PDF=PCまたはタブレット 専門書 が中心 ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 30
  • 32. 4.3 楽しむ読書のデジタル化/電子書籍化のポイント ・楽しむ読書の[時間特性] =終わってほしくない ・ 「この興奮、感覚が長く続 いてほしい」。端末がそれ をサポートするようなら電 子書籍へ読者のシフトも。 ◎配信の仕組み/端末/コ ンテンツをトータルでデザ インすることが必要。 時事ドットコム【 図解・経済産業】日米の電子書籍流通モデル ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 31
  • 33. 4.4 日米の相違~出版業界の構造  日本  米国 ・デジタル化 組版データ  印刷会社 出版社 へ経営の舵 取りを切り替 著作権 著者 出版社 えにくい日本 文  漢字かな混じり文   単語の組合せ 文字種   数万   26 ・デジタル化 に伴う技術的 OCR  95~97% 99% 課題が多い 日本 検索  形態素解析  形態素解析 不可欠 不要 分野や会社により濃淡。 上述は一般論。 ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 32
  • 34. 4.5 日米の相違~市場特性(嗜好・選好・読書シーン) 日本:本好き > 読書好き 米国:本好き < 読書好き ・文字、紙質、匂い、手触りなど ・読書は消費行為で、終われば にもこだわり。 本を捨てる。 ・所有欲が強い。捨てられない。 ・所有より、利用。 ・黙読に閉じ込められる読書 。 ・社交の中に読書=引用の文化。 ・旅行に本は持っていかない。 ・旅行に数冊の本を持っていく。 ・通勤車中も読まなくなった。 ・車通勤中にオーディオブック。 ・学生は本を買わない。 ・学生は分厚い本をたくさん読 む。 ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 33
  • 35. 5.「所有」と「利用」~図書館編 ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 34
  • 36. 5.1 スタンフォード大学図書館の「Bookless Libraries」 ★Facing the Facts: ★Stanford Ushers In University Presses in The Age Of Bookless the Digital Age Libraries http://www.npr.org/templates/story/story.php?stor http://www.publishersweekly.com/pw/print/43600 yId=128361395 -facing-the-facts-university-presses-in-the-digital- age.htm ・ある米国大学図書館で、過 ・工学関連図書館が2011年 去10年間の購入書籍のうち 8月に新規オープン。新刊増 47%は一度も貸し出されて 加に耐えられなくなったのが いない。今後は電子版で需 新館建設のきっかけ。しかし 要を確認してから、冊子体の そこは工学の府。データ検証 購入を決める、と。 を踏まえた。調べてみると貸 出実績に濃淡。蔵書8割減と し、空いたスペースで「新しい 図書館(員)」像を追求する! ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 35
  • 37. 5.2 千葉大学図書館のLearningCommons (HPより) ラーニングコモンズ:これまでの重厚で堅い大学図書館のイメージから、 新しい図書館の姿を表現するものとして使われるようになっている。パ ソコンを自由に使えるスペースを設けたり、丸い形のテーブルや座り心 地のいいソファを設置してコーヒーを飲みながら話ができるカフェなどを 併設している場合もある。図書館はただ本を借りるだけ、あるいはそこ で静かに調べ物をしたりするだけの場所ではなく、仲間とともにディス カッションをしたり、自分たちが情報を発信する場にもなるように変えて いきたいという意向がある。(ジャパンナッレッジより) ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 36
  • 38. 5.3 図書館は本来「利用」価値の牙城のはずだが。。。 ・学習(者)観: ・Booklessより LearningCommonsの方 受動的学習者に勉学をさせる が、変化の本質。 VS 能動的学習者の勉学を サポートする ・大学図書館は大学の一組織。 ・大学観: 大学が直面する課題に対す る解答を要求される存在。 研究と研究者を育てる場所 VS 実社会で役に立つ人を 育てる場所 図書館の役割も再構築が必要になっている ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 37
  • 39. 6.「蔵書管理」から「意味検索」へ~デジタル化の意義(1) ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 38
  • 40. 6.1 図書館像の変容の裏にある(or 促す)大変化 「コノ本はどこにある?」から 「コレはどこ(どの本)に書いてある?」へ 蔵書管理から意味検索へ ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 39
  • 41. 6.2 情報整理の第一段階~蔵書管理 ・いつでもアクセスできる「知」 <情報整理の第一段階> の蔵を準備しておいて、時々 =モノに序列を与える。 の必要に応じて参照したい、 とするニーズは昔からあり、 図書館の歴史は古い。 ・最初のころは本の大きさの順に。 ・ある時期から本をアルファベット 順に並べた。 ・収集がある規模を超えると、 「整理」の問題が出てきた。 ・読みたい本が決まっていて、タイ トルがわかっているときは便利。 ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 40
  • 42. 6.3 情報整理の第二段階~蔵書管理の発想を意味検索に ・<第一段階>では、読みた 1876年デューイは「十進分類法」 い本が決まっていない(=「こ を発表。 ういうことはどの本に書いて →「意味」の序列化を着想。 あるんだろう」)時は不便。 →棚を「知識の地図」に。 ↓ ・「本」に分類記号を付与、図書 司書の登場 カード(代理変数)に書き留め、 カードをアルファベット順にするこ とで、本を探しやすくした。 ・「司書のような専門家がいな いと図書館は使えない」ので <情報整理の第二段階> は「知識の民主化」に反する。 (デューイ) =モノに「意味」の序列を与える。 ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 41
  • 43. 6.4 情報整理の第二段階~配架記号 019 は分類番号 ←日本十進分類法 玉川大図書館HPより ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 42
  • 44. 6.5 情報整理の第三段階~意味検索全面開花の可能性 デジタル化時代の到来 ・<第二段階>もモノの呪縛 から逃げ切れていない。 ・コンテンツと意味を分離記述 する手法の開発 ・物理的空間を占有するモノの 世界は<1:1>対応の原則 (=メタデータ) が支配。 →ひとつの本にひとつの分類 <情報整理の第三段階> 番号(配架記号)。 意味をデジタル化/メタデータ化 ・本の内容は多義的 ・「本」のメタデータに、タグを付与 することで、無限に「意味」を付与 ・読み手はその文脈の中で、 することが可能に。 本を理解していく。 ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 43
  • 45. 6.6 引用が意味検索の機能を果たす~inBook(1) InBookを使うとこんなことができます。 ・好きなセリフや感動した名言を記録し、気軽に自分の本棚で管理出来ます。 ・自分が読まないジャンルに挑戦したい時、名言をヒントに本が探し出せます。 ・「好きなセリフや感動したセリフを誰かに伝えたい、共有したい。」「みんなの好き なセリフ、名言を多く知りたい。」みんなと繋がることで新しい発見が出来ます。 (HPより) ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 44
  • 46. 6.7 引用が意味検索の機能を果たす~inBook(2) ・引用箇所がタグの機能を果たす ・「コレはどこに書いてある」への一歩 様々な 書き 様々な 手 書籍 (HPより) ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 45
  • 47. 7.「所有から利用」そして「共有」へ~デジタル化の意義(2) ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 46
  • 48. 7.1 ネットの力~ネット世界がもたらしたルールの変化 【これまでのルール】 【これからのルール】 B to C B with C B for F Attention(注意)―TVCMなどで注意を引かれる Attention (注意が喚起され) Interest(関心)―商品に対する興味を持つ Interest (興味が生まれ) Desire(欲望)―アノ商品を欲しい Search (検索し) ネット世界に Memory(記憶)―商品やブランドを覚える a.評判のループ   「売り場」でコレといって欲しい 覚えさせる   Action (購買し) b.意味循環の  ための      ネットで即購買 エコシステム 大規模広告費 Action(行動)―購買行動を起こす Share (情報を共有する) ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 47
  • 49. 7.2 「読書」にもたらした変化→「共有」の可能性 【これまで】 【これから】 B to C B with C B for F 読書 1.0 読書 3.0 一人で楽しむ ネット世界を通じ 読書 2.0 共有・共感・協読 内容を活用する ソーシャル・リーディングの時代へ = クラウド力 + モバイル力 ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 48
  • 50. 7.3 たとえば、こんなことが近未来? 紙の本では実現できない、電子ならではの「横串検索」 横 自 異 串 分 な 検 の る 索 購 出 入 版 し 社 た を 新 横 書 断 を し て 、 ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 49
  • 51. 7.4 7インチサイズのタブレット 軽量382g。通勤途上インテリジェンス系縦書き新書をTabletで読む Tabの内寸 Tabの外寸 7インチ 1 1 1 8 5 9 2 5 0 90 103mm 新書と 382g 120 Tabletの相性のよさ ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 50
  • 52. 7.5 読書3.0の実現 【自分】レポート書くとき、使えそ 【他の人】:この本って、こう うなフレーズをメモっとこ いうことが書いてあるんだ 読書 読書3.0: 紙の本・電子書籍 ネット世界を通じ共有・共感・協読 ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 両方の情報流 2012年6月19日 51
  • 53. 8.まとめよう:デジタル化が引き起こす「知の流通」の大変化 ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 52
  • 54. 8.1 本の分解 コンテンツの分解 A:本の分解 パッケージ (モノとしての本) 本 コンテンツ B:コンテンツの分解 全体のコンテンツ (編集された本) コンテンツ 部分のコンテンツ ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 53
  • 55. 8.2 本の分解が引き起こす変化 A:本の分解 パッケージ (モノとしての本) 本 コンテンツ <図書館への影響> <本/読書への影響> ・物理的空間的制約から ・本好きか読書好きかの 解放される リトマス紙的効果。 例:副本を減らせる。 ・分野や種類ごとに何が 求められているのか、につ いて意識的になる。 ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 54
  • 56. 8.3 本の分野 読書の種類 ○分類記号(Cコード)の一桁目 ○分野や種類によりデジタル化 『漢字文化の源流』 1381 の影響は様々 『宗教学事典』 3514 ・書籍と雑誌 第1桁(販売対象) 第3-4桁(内容) コード 内容 コード 内容 40 自然科学総記 0 一般 00 総記 41 数学 ・書籍の内訳(楽しむと知るを更に分解) 1 教養 01 百科事典 42 物理学 2 実用 11 心理(学) 43 化学 3 専門 12 倫理(学) 44 天文・地学 ①ことばを味わう:詩 エッセー 5 婦人 14 宗教 45 生物学 6 学参I(小中) 経営 34 47 医学・歯学・薬学 ②読んで楽しむ:小説 児童書 絵本 7 学参II(高校) 社会 36 50 工学・工学総記 8 児童 37 教育 51 土木 ③見て楽しむ :写真集 9 雑誌扱い 39 民族・風習 52 53 建築 機械 ④読んで do :レシピ本、工作本 第2桁(発行形態) 54 55 電気 電子通信 ⑤話の種にする:ノウハウ本 コード 内容 0 単行本 56 57 海事 採鉱・冶金 ⑥調べる(生活シーン):実用書 1 文庫 2 新書 58 65 その他の工業 交通・通信 ⑦調べる(学習・研究) :専門書 3 全集・双書 77 家事 ⑧自己学習 :教科書 問題集 学参 4 ムック・その他 81 日本語 5 事・辞典 ⑨必要に応じて引く :レファレンス 6 図鑑 7 絵本 (辞書、百科事典、ハンドブック、便覧) 8 磁性媒体など 9 コミック ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 55
  • 57. 8.4 コンテンツの分解が引き起こす変化 B:コンテンツの分解 全体のコンテンツ (編集された本) コンテンツ 部分のコンテンツ <図書館への影響> <本/読書への影響> ・「本の蔵」から「知を産み ・本が包摂している様々 出す場」への転身に道。 な意味の「見える化」。 ←「蔵」機能や「司書」機能 →マイクロコンテンツ化 はネット空間がその一部を ・「本の流通」から「意味の になってくれる。 流通」へ道を拓いた。 ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 56
  • 58. ○ 参考~電子書籍論の5つの領域 「電子書籍論」の5つの次元 ~メディア論からみた「電子書籍」論 2012日本出版学会資料 林 智彦 ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 57
  • 59. ○ 参考~新商品(サービス・市場)が産まれるには ニーズ ビ ジ シーズ ネ 経営判断 ス (技術要因) 企業文化 モ デ ル の 構 産業構造 市場特性 築 ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 58
  • 60. ご清聴ありがとうございました。 2012年6月19日 丸善出版株式会社 新規事業開発部 神宮司信也 shinya.jingushi@maruzen.co.jp http://www.facebook.com/sjingushi https://twitter.com/#!/sasazamani 。 本スライドは教材として作成しましたので、その範囲でご活用ください。また、 本スライドの内容はすべて個人の見解に基づくもので、会社の意見を述べたものではありません。 ©丸善出版(株)新規事業開発部 神宮司信也 2012年6月19日 59