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1
早稲田大学
産学連携とベンチャー起業の基礎B
「枠組みの外へ」
“De-framing between Science and Business”
2015.01.09
石井 遼介
2
石井 遼介(いしい りょうすけ)
1985年神戸生まれ。29歳。
科学サイドとビジネスサイドを渉猟しつつ、根本はやっぱり好奇心。
ひと、組織、社会、自然、宇宙のことが、もっと知りたい!
・2005年 東京大学 教養学部理科1類入学
・2007年 教育系サービスで学生起業。
・2009年 東京大学 工学部 システム創生学科(精密機械系) 卒業
卒業論文「曲率極値線を用いた現物スキャニングに
於ける溶接部部分分解」にて日本設計工学会より受賞。同コース首席卒業。
・2010年 ブランディング・コンサルティングサービスで起業。取締役就任。
東京大学大学院工学系研究科 精密機械工学専攻 中途退学。
・2013年 慶応義塾大学 福澤諭吉記念文明塾 卒業
・2013年 日本環境設計(株)入社。現在同社シニアマネジャー。
携帯電話リサイクルプロジェクト、投資案件等、多数のプロジェクトに関わる。
3
Contents
Ⅰ:経験の中で学ぶ
Ⅱ:「社会」と「ビジネス」
Ⅲ:「世界」が教えてくれること
4
Ⅰ:経験の中で学ぶ
5
学部2年生:教育系サービスをつくった。
中学受験をする小学生に、
勉強を教えるサービス・・・
では、ありません。
ご家庭を「学習の環境」と捉え、お父さんお母
さんにその環境づくりを教える・サポートする。
6
最初失敗した!
「高校生に大学受験のやり方、勉強法を教え
る」サービスをスタートした。
・ウェブサイトをつくって
・広告を打ってスタート!
→お客様「ゼロ人」獲得!なぜ!?
7
顧客の意思決定のプロセスが違う
大学受験 中学受験
サービス提供者
お金を払
う人【親】
サービス
を受ける
人【子】
大学受験では、高校生が自分で調べるが、
支払う為には親を説得しないといけない。
中学受験ではどちらも親がやる。
説得
サービス提供者
お金を払
う人【親】
サービス
を受ける
人【子】
調べる 調べる・決める
8
コミットメントは、動いた後にうまれる。
やっていくうちに、より興味をもった。
やっていくうちに、課題を知れた。
やっていくうちに、解決が見えてきた。
やっていくうちに、より深い課題が見えてきた。
「正解」はなく、TrialとFeedbackを繰り返す。
やった後に、やりたいことが見えてくる。
9
最終的には、なにが「やりたく」なったのか?
「知能観(マインドセット)の研究」を知る。
人は、その人自身が知能に対して抱いている信念通りの
知能に育つ、という研究。
・拡張的知能観(growth mindset):
知能は努力や方法に応じて知能は伸びる。
・固定的知能観(fixed mindset):
知能が固定的な(天与の)もの。変わらない。
そして子供時代の知能観は、環境(親、学校、友人)で左右できる。
Carol S.Dweck,Ph.D, ”Mindset: The New Psychology of Success”, 2006
邦訳「やればできる」の研究
10
大学受験
中学受験
勉強の仕方・勉強法
学習の環境づくり
講座
WEBサービス
コンサルティング
「やってみなはれ」が意味するところ
顧客
なし!市
場
提
供
価
値
チ
ャ
ネ
ル
11
まとめ
・やってみてから、やりたいことは生まれる。
・「失敗」は常にある。
成功へのフィードバックだと思おう。
・自分自身が「固定的知能観」を持ってい
たことに気づき、そこから少しづつ出れた。
12
Ⅱ「社会」と「ビジネス」
1:新しい価値の創造
2:人は枠組みの中で生きる
3:自分の枠組みを検証する
13
新しい価値の創造
ビジネス=顧客にとっての価値の創造。
その対価として金銭を頂くこと。
そのためには、
あたらしい「こと」をやるか
あたらしい「やりかた」でやるかが必要だ。
14
新しい価値の創造
・あたらしい「こと」
新サービス、新プロダクト、新商品、
軽量化、省力化、小型化、
・あたらしい「やりかた」
フリーミアム、効率化、カイゼン、
バリューチェーンの組み換え(HP、トヨタ)
海外市場進出、ローカルへの進出
15
価値とは、モノではなく人とモノの「つながり」
「1930年代の大恐慌の頃、修理工からスタートしたキャデ
ラック事業部の経営を任されるに至ったドイツ生まれのニコ
ラス・ドレイシュタットは、「我々の競争相手は
ダイヤモンドやミンクのコートだ。顧客
が購入するのは、輸送手段ではなく
ステータスだ」と言った。この答えが破産寸前の
キャデラックを救った。わずか2.3年のうちに、あの大恐慌時
にもかかわらず、キャデラックは成長事業へと変身した。」*
*P.F. Drucker:Management 「マネジメント」
**キャデラック公式WEB http://www.cadillac.co.jp/lineup/ats/new_year/
顧客は、モノ・サービスそれ自体でない。
「効用」を買う。効用は自分とモノ・サービス
のあいだ に立ち現れるつながり。
**
16
人は、自分とモノの「つながり」=「効用」を買う
・なぜあなたは、電車に乗るのか?
行きたい場所に行ける、逢いたい人に逢える。
(電車というインフラがあるのは、本当はとても奇跡的なことだ)
・なぜ子供を塾に行かせるのか?
良い中学校に入れることと子供の将来の成功を同一視しておりそ
の手段として最適と考えた。 ◆子供の知的好奇心に応えたい、
◆ 「賢い子を育てた」という自己イメージを得たい。◆子育てを自
分の役割として課した為、どうしても成果が欲しい。
17
人は、自分とモノの「つながり」=「効用」を買う
・なぜあなたは、本を買うのか?
紙の束とインクの染みが欲しいのではない。
知識を増やす、楽しい読書の時間を過ごす、
部屋の本棚にアクセントを加える、単位を取る、etc
【課題1】なぜ人は、リサイクルに参加するのか?
価値/効用は、人の置かれた状況・立場に
よって様々に変わる。
18
価値を産むには、枠の外へ出ること
新しい価値をつくるには、
「顧客」と「なにか」の
あたらしい繋がりをつくることが大切。
新しい繋がりを見つけるには、
「いま当たり前だと思っていること」
= 枠組み・フレーム を疑うこと。
そこから、ささやかなイノベーションが産まれる
19
ささやかなイノベーション:ケアレスミスの克服
中学受験のビジネスで、子どもたちが
「ケアレスミスの克服」ができるようにした。
ケアレスミス=
注意不足。次は
気をつけよう!
ケアレスミス=
適切なプロセス
で撲滅できる
これまでの「当たり前」 これから
20
ケアレスミスの克服
課題の発見:新しい枠組みで問題を視る。
ケアレスミスの定義は、不正解かつ実力アリ。
実
力
が
あ
る
ケアレスミス 順当に正解
実
力
が
な
い
順当に不正解 まぐれ
✕がついている ○がついている
ホント!?
21
ケアレスミスの克服
本当の課題:○✕は、見ればわかるが、
実力の有無はそれほど明確ではない。
子供がケアレスミスと言い張ることの多くは、実力不足。
ケアレスミス
順当に不正解
ホント!?
100 ÷ 60 = 1 あまり 4
40
子どもたちは、平気でこれを
「ゼロつけわすれた!ケアレスミスだ!」
と言い張る。
22
ケアレスミスの克服
顧客に価値を届けるまでが仕事。講座を実施。
ひと月半前になってしまいましたが、
ケアレスミス対策講座では、大変お
世話になりました。
ありがとうございました。
講座を受けてより、日頃の学習で
も実践するようになり、10月度のサ
ピックスマンスリー テストでは、ク
ラスを上げることが出来ました。
解答用紙を見ますと、以前よりケ
アレスミスが減っております。
本当にありがとうございました。
ひと月半前になってしまいましたが、
ケアレスミス対策講座では、大変お
世話になりました。
ありがとうございました。
講座を受けてより、日頃の学習で
も実践するようになり、10月度のサ
ピックスマンスリー テストでは、ク
ラスを上げることが出来ました。
解答用紙を見ますと、以前よりケ
アレスミスが減っております。
本当にありがとうございました。
23
3.11後の、非被災地の観光業
3.11は建物や土地だけではなく、人々の心に
も傷跡を残した。震災に沈む自粛ムードは、
実は観光地への”二次災害”となっていた。
震災後1ヶ月経って、箱根・小田原の観光地
では、前年の20%だった。
24
ささやかなイノベーション:3.11「箱根バスツアー」
25
ささやかなイノベーション:3.11「箱根バスツアー」
26
考えたこと
・観光地として、お客様が居ないのは困る。
・被災地のことを考え自粛する気持ちも、よく
わかる。
・「このご時世にカネ儲け」と思われては元も
子もない。
・何より「最初に動く」のはリスクが高い。
27
考えたこと・世に問うたこと。
【大切にしたこと(コンセプト)】
沈んだ雰囲気・気持ちの人を観光地へ送り、人と観光地
両方に元気になってもらい、震災疲れしている日本の暗
いムードに良い影響を与える。
【本当に考えていることを、お伝えした】
・箱根をはじめ、観光業が困っていること。
・長い復興を考えた時、経済活動をすること自体に
価値があると信じていること。
28
まとめ
価値は「人」と「モノ・サービス」の
「あいだ」に産まれる。
「モノそれ自体」に
価値があるわけではない。
※薬は病気の時だけ価値がある。
29
まとめ
すべての人は、何らかの「枠組み」の中で
生きている(それは、悪いことではない)。
価値を産むには「いま当たり前だと思って
いること」=枠組み・フレーム を疑うこと。
自らの認識を過去のものとすること。
ちなみに、日本環境設計のものの見方は、
「地上資源の完全循環」です。
30
Ⅱ「社会」と「ビジネス」
1:新しい価値の創造
2:人は枠組みの中で生きる
3:自分の枠組みを検証する
31
人間は、世界をありのままに捉えることができない。
知覚された世界は、無意識が構成したもの
1)外部刺激を受容体が
感覚として神経に伝える
削除・補完・
構成
過去の記憶=
外部刺激と感情のセット
影
響
2)構成された
イメージを知覚する
3)意識的無意識的に
焦点を当て認識し、
感情が産まれる
感情の揺れが
大きい場合
刺激とセットで
記憶される
32
感覚器官による刺激の報告
受容体が神経を介して「感覚」を伝える
①外部からの全接触のうち
受容体が受容したもの
(全感覚)を神経に伝える
②末梢神経系(知覚神経系)を
通じて、大脳皮質に達する
*http://www2j.biglobe.ne.jp/~fkamiya/HB/C12_57.html
*
33
2)無意識的に構成されたイメージの「知覚」
感覚したものは、無意識のイメージとして
構成される。
Matsumoto M and Komatsu H. J. Neurophysiology, 93: 2374‐2387, 2005 
http://www.nips.ac.jp/scinfo/2005matsumoto.htm
なお「第一次視覚野(V1)が盲点における補完に
関わっていることが示唆されている*」 が、これら
の補完のメカニズムは知られていない。
・盲点の情報は自動的に補完され、
視野に欠損は見られない。
・ 2つの目で光を捉えるが、
その境界なく、むしろ立体的に
世界を眺めることができる。
34
2)無意識的に構成されたイメージの「知覚」
このイメージの無意識的構成では、
・非重要な情報の削除(参考:服の触感)
・情報の合成(参考:視覚野の合成)
が起きている。
この無意識的構成は、
過去の記憶=「外部刺激と感情のセット」
によって左右される。
35
3)知覚されたイメージの認識
知覚された世界から、
時に無意識的に、時に意識的に、
人は認識を組み立て、感情を産む。
・網膜に映った赤い物体はリンゴだ(認識)
・この時に強い感情の起伏があると、
外部刺激と感情のセットとして記憶される。
36
枠組み/フレームとは
枠組みの最小単位=「刺激と感情」のセット
1)外部刺激を受容体が
感覚として神経に伝える
削除・補完・
構成
過去の記憶
=刺激と感情のセット
影
響
2)構成された
イメージを知覚する
3)意識的無意識的に
焦点を当て認識し、
感情が産まれる
感情の揺れが
大きい場合
刺激とセットで
記憶される
37
枠組み/フレームとは
枠組みの最小単位=「刺激と感情」のセット
・火に手をいれると熱かったので、
二度と火を直接触らないようにした。
・プレゼンテーション、最初の3回失敗したら、
プレゼンが嫌いになった。
・たまたま最初に点数がよくて褒められたので、
算数、理科が好きになった。
生命は、過去積み上げた枠組みを参照して生きる。
38
Ⅱ「社会」と「ビジネス」
1:新しい価値の創造
2:人は枠組みの中で生きる
3:自分の枠組みを検証する
39
あなたが信じていること
【課題2】
あなたが、気づかないうちに信じてきた
「あたりまえの常識」は何でしょうか。
自分は、どういう世界の中で
暮らしているでしょうか。
40
枠組みから出る前に、自分の枠組みを知る
ここでは、人がよく入っている
「枠組みのリスト」を提示します。
枠組みだと知った上で、
そこに留まることも、選択できる。
41
次に来る数字2桁は何か?
2119678716034475116563217044041605351341390173136689
4638873855531386368243369975985970616457062670413045
9126437284989148356890455609093481011580923180730184
5998408799090461574931098614313315919784060635683188
4195057075962103268508407539511046071367743150631865
5681175045684291098593609486346869593672277580773060
7288379881424681003426858744195332034222592225911315
6871855129884383997718184817757527652868727478679975
6095598144332697980232246925174800848043735402673868
4446482509456837198696619833088985878352579323281004
7849800001659240729031466028150564724110345203157652
7657717145051080460305129759639033690487822708390133
1040053851493735
?
42
答えは「03」。円周率の小数点第195871桁目~
2119678716034475116563217044041605351341390173136689
4638873855531386368243369975985970616457062670413045
9126437284989148356890455609093481011580923180730184
5998408799090461574931098614313315919784060635683188
4195057075962103268508407539511046071367743150631865
5681175045684291098593609486346869593672277580773060
7288379881424681003426858744195332034222592225911315
6871855129884383997718184817757527652868727478679975
6095598144332697980232246925174800848043735402673868
人は法則性を帰納するが、複雑な世界/社会の中での
未来予測の精度は高くない
43
どちらが長い?
A
B
44
どちらが長い?
*三谷宏治 ハカる考動学
人は知識/経験にも騙される。知覚ではなく「測る」
A
B
45
失敗は避けるべきもの?
●なぜ避けたいのか?
○失敗=恥ずかしい
○失敗=取り返しがつかない
こういうフレームでも捉えられる:
○失敗していない=チャレンジしていない
○失敗してもどうせ死なへん
46
夢は、お金持ちになること・成長すること?
こういうフレームでも捉えられる:
○お金が十分にたくさんあって、
それでもなおやりたいことが夢
○十分に能力が身について、
そのときに成し遂げたいことが夢
47
優秀であることは成功の必要条件?
こういうフレームでも捉えられる:
○「優秀」かどうかは「社会」が決めるとする。
社会は優秀の条件を過去の成功事例から
帰納していくが、
もしかしたらその「物差し」は、新しいこと、
未知を測るのに適していないかもしれない。
48
成功することで幸福になれる?
幸福は条件の問題、外部環境の問題という
捉えかた。
こういうフレームでも捉えられる:
○生きているだけで奇跡的なことであり、
成功や失敗という浮き沈みはもちろんあるが
生きているだけで素晴らしい。
うまくいくと、もっとしあわせ!
49
栄養のあるものは、摂れば摂るほどよい?
これは(現在の科学が知っている限りにおい
ては)間違ったフレーム。
水でも塩でもカフェインでも、致死量はある。
量
効果
0
最適値
致死量
50
価値と価格は一致する?
・価値=主観的な体験、イメージ
・価格=客観的な数値
所有/体験する主観的価値>その価格のお
金を持ち続けることの主観的価値 の時、人
はモノを買う。
51
モノを買うと所有できる?
こんな考え方も(今日までのところ)真実
この部屋の多くの人は、100年も経たないうち
に土に還る。
買ったものは所有したようでいて、
最長130年(?)のレンタルにすぎない。
52
理解とは物事の本質が分かること?
●多くの場合、理解とは慣れかもしれない。
の証明できますか?できなくても「使える」。
定義:
両辺に を掛ける:
分配法則:
だから :
両辺に して :
定義より なので:
53
理解とは物事の本質が分かること?
●多くの場合、理解とは慣れかもしれない。
我々はあまりに
「生きていること」に慣れているが、
現代科学は未だ生命を作れない。
(既に生きているものを培養することはできる)
54
Ⅲ
「世界」が教えてくれること
1:「科学」が教えてくれること
2:「社会」が教えてくれること
55
「科学」で興奮したこと。
東京大学(精密機械工学
系)で卒論を書いたとき。
「新しい知識の創造をし
た!」という感覚。
小さな領域だったが、自分
が産んだ「知」は、
まだ世界の誰も知らない!
石井 遼介「三次元スキャニングにおける曲率極値線を用いた溶接部分解」
http://ryosukeishii.com/archives/090222_grad_thesis.pdf
56
科学という「ものの観かた」が優れているところ
「枠組み=フレーム=前提」を疑うことこそ、
科学の本懐。
力学:
相対論的 :
57
いまいる教室は静止している?
自転速度:地球の円周約4万km÷24時間=1600km/h
公転速度:2π×太陽との距離1.5億km÷1年=17000km/h
銀河系の移動速度:近傍の銀河の観測位置に対して約600km/s
正確には、教室と自分の相対位置が静止
58
記号化:地図は土地ではない
地図は土地(現地)ではない。
ものの名前は、名付けられたもの自体ではない。
国旗を燃やす人と、国旗を燃やされて怒る人は、
国家(土地)と旗(地図)を同一視するという意味では
同じフレームの中に居る。
一方で、人間というものは地図と土地を混同しや
すいものだ、ということも一つのフレーム。
アルフレッド・コージプスキー 一般意味論
59
ひとつの情報より、ふたつ以上の方がよい
両目で見たとき、
同じものを見ても、
片目で見るより
深い情報が得られる。
視差から、世界が立体的に立ち現れる。
BA
AB
Gregory Bateson; Steps to an Ecology of Mind, (Ballantine Book, 1972). 
Mind and Nature: A Necessary Unity, (Wildwood House, 1979).
60
ひとつの情報より、ふたつ以上の方がよい
= + の「説明」
分配法則で説明ができるが、幾何学的にもできる。
Gregory Bateson; Steps to an Ecology of Mind, (Ballantine Book, 1972). 
Mind and Nature: A Necessary Unity, (Wildwood House, 1979).
61
「才能」は遺伝子で決まらない
●遺伝子とは:
人の細胞ひとつひとつの中にある細胞核の
中にある23対46本の染色体を構成する長大な
DNAのうち、タンパク質がコード化された部分。
●遺伝子は生きた細胞と相互作用する中で、
オンオフを切り替えるが、例えば環境によっ
てもそのタイミングは変わる。
62
一般システム:ランダムさと数と予測可能性
ランダムさと、数が多すぎも少なすぎもしない
「中数システム」は、予測が難しい。
G.M.ワインバーグ『一般システム思考入門』
63
論理階型(ロジカルタイピング)
ひとは、クラスとメンバの話を混同しやすい
ラッセル
テレビ 掃除機
メ
ン
バ
ク
ラ
ス
ク
ラ
ス
の
ク
ラ
ス
家電
64
論理階型(ロジカルタイピング)
クラス(集合)が予測できるからといって、
メンバ(個別)が予測できるとは限らない。
ラッセル
液体
メ
ン
バ
ク
ラ
ス
H2O
分子
沸騰するタイミングは予測可能
(約100℃)
どのH2O分子が、最初に
気体分子になるかは謎
H2O
分子
H2O
分子
ぜんぜん違うはなし!
65
論理階型(ロジカルタイピング)
どの階層の話をしているのか。
ラッセル
男性
メ
ン
バ
ク
ラ
ス
ク
ラ
ス
の
ク
ラ
ス
人間
Aさん Bさん あなた
男性のためのモテる方法!
他でもないあなたが、
あの子とうまくいく方法!
ぜんぜん違うはなし!
66
学習の3段階(Gregory.Bateson)
三次学習:二次学習の学習、メタメタ学習
(二次学習ができるということを学ぶ。【学習環境】)
二次学習:学習の学習、メタ学習
(勉強の仕方を学ぶ、学び方を学ぶ、
学ぶことができるということを学ぶ、思考法)
一次学習:直接学ぶ
(英語の勉強、算数の勉強、目の前のこと)
Gregory Bateson; Steps to an Ecology of Mind, (Ballantine Book, 1972). 
Mind and Nature: A Necessary Unity, (Wildwood House, 1979).
67
認識論
知覚(perception)は常に受動的に外界の
刺激を受け取っている。
目で「視る」と言語は記述するが、
飛んでくる光を受け取り網膜に
結像させているにすぎない。
認識(recognition)は半自動で組みあがる
認知(cognition)は主体的。
Gregory Bateson; Steps to an Ecology of Mind, (Ballantine Book, 1972). 
Mind and Nature: A Necessary Unity, (Wildwood House, 1979).
68
認識論
生命は「情報」を直接受け取ることはできない。
「(エネルギー量や振動数の)差異の知らせ」を
受け取る。
例えば、光量の多寡=エネルギー量の差異を受け
取って、白黒を見分け「文字」として認識し、
認識した文字を、記憶や経験と突合し情報に変換
する。生命とは実は、情報について閉じ、
エネルギーについて開いたシステム。
Gregory Bateson; Steps to an Ecology of Mind, (Ballantine Book, 1972). 
Mind and Nature: A Necessary Unity, (Wildwood House, 1979).
69
Ⅲ
「世界」が教えてくれること
1:「科学」が教えてくれること
2:「社会」が教えてくれること
70
「正しい」ことは、案外正しくない。
お客様を正しさで「論破」しても意味はない。
むしろ、客観的な「正しさ」はなく、
主観的な「顧客にとっての価値」が「正しい」
「わかってない顧客」が居るのではなく、
顧客を分かっていないか、間違った顧客を選
んでいる。
71
多様性・差異を歓迎しよう
違った才能をチームに入れる。
自分と違ったフレームで世の中を見ている
人と話し考えるから、
その視差から、世界は立体的に見える。
【課題2】を隣の人と話すとどうだろうか。
72
リーダーシップとは?
リーダーの大きな仕事の1つが、
ビジョンを示すこと。
それは、社会を枠組みの外に連れ出す試み。
73
今日、一番伝えたいこと。
事業=新しい価値の創造。
その為には、フレームから出ること。
世界をちょっと違った角度から見ること。
まずは、いま自分がその中で生きている
フレームを知ること。居るフレームを選ぶこと。
フレームから出るには、科学の方法・知見や、
目の前のひとを、ちゃんと見て話す。
74
課題
【課題3】
今日の講義の中で、
一番心に残ったフレーズ・箇所と、
なぜそこが心に残ったのかを教えて下さい。
75
ありがとうございました。

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