【要約】若年1型糖尿病患者における金銭的インセンティブの自己管理行動改善に対する効果検証

若年1型糖尿病患者における
金銭的インセンティブの
自己管理行動改善に対する効果検証
Diabetes Care July 22, 2015
doi: 10.2337/dc15-0765
http://care.diabetesjournals.org/content/early/
2015/07/16/dc15-0765.abstract
要約：谷口諭
Nancy M. Petry, Eda Cengiz, Julie A.
Wager, Kate Weyman, Eileen Tichy,
and William V. Tamborlane

金銭的インセンティブを提供することで生活習慣病
に関連した行動変容を促すことが証明されている。
糖尿病治療における金銭的インセンティブの効果検
証もされているが、金銭の影響を十分抽出するに
至っていない
既知：
1型糖尿病患者に対して、一定の条件・ルールの元、
自己血糖測定を行うことに金銭的インセンティブを
付与することの行動変容への影響・効果を検証する
実験
目的
■研究背景
金銭的インセンティブが自己血糖測定回数を増加さ
せるのに有効であるか、明確でない
未知：

■対象
１２－１９歳の1型糖尿病患者10名が対象となった
・医師より1日4回以上自己血糖測定をするよう指示されている
・診断を受けてから1年以上経過している
・血糖自己管理が不良である
・携帯及び携帯につながる自己血糖測定器を持っている
＞ 1日の平均SMBG回数 1.8回
＞平均HbA1c 9.3%

■手法
臨床研究事務局が各患者の血糖測定結果を把握し、フィードバックできる仕組
みを導入した
• 血糖測定を行うと、その結果が事務局に携帯経由で送信される
※既存の管理システムを利用： Diasend / Carelink
• 事務局は結果を受け取り、ルールに則って獲得金額、累積獲得金額をメール
で返信した
1回自己血糖測定をするごとに
$0.10USD獲得できるルールを設定
被験者にはそれぞれ1日4回の血糖
測定時間が設定され、携帯や自己血
糖測定機でアラームを設定した
設定時刻の前後2時間以内に血糖測
定を行った場合、1回$0.10USDを
提供した
継続するとボーナスを提供した
被験者が連続して推奨時間に血糖測定
を行ったり、そのような日が連続して
あった場合に、ボーナスを獲得できる
ようにした
＞最大1日$2.50USDまでボーナスを付
与した
インセンティブプログラムを12週間運営し、効果を検証した

■結果
自己血糖測定回数が上昇した
平均1.8 → 平均4.9
HbA1cが低下した
平均9.3% → 平均8.4%
1年後フォローアップでも平均8.4%だった
平均$122USDのインセンティブを獲得した
最高$251.40USD

■考察
金銭的インセンティブの付与は自己血糖測定の回数増加に有
効であると考えられる
金銭的インセンティブでの介入が、その後の行動変容ももた
らすレガシー・エフェクトを持つ可能性が示唆された
罹病期間が長い1型糖尿病において、発症間もない時期にこの
ような介入を行い、自己管理行動を身に着けさせることは、
生涯医療費を抑制する効果が期待できる
その他：金銭的インセンティブによる行動変容は公衆衛生分野において注目をされて
いる。参考文献として下記を推奨したい
Incentivizing use of health care - William Dow and Justin White
http://www.un.org/en/development/desa/population/publications/expert/index.shtml

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