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一緒に勉強しましょう!
今回のテーマは
「腫瘍マーカーについて」
下の資料を見て
下さい!
読売新聞の医療サイト yomiDr.(ヨミドクター)
がん診療の誤解を解く 腫瘍内科医Dr.勝俣の視点
2016年2月22日
私は33歳のMです。卵巣がんで手術をした後、定期的
に採血をしていました。「CA19―9」という腫瘍
マーカーが先月から高くなったというのです。
コンピューター断層撮影法(CT)や陽電子放射断層
撮影(PET)検査も行いましたが、画像診断では、
がんは映っておらず、再発とは診断できませんでした。
しかし、主治医から、「腫瘍マーカーが異常高値を示
すので、再発の可能性が高いから、抗がん剤を始めま
しょう」と言われました。ショックで眠れません・・。
腫瘍マーカーは、採血をすることによって測れ
るものですが、実際に、どのようなものがあり、
どれくらい有効なのかを解説してみたいと思い
ます。
1ページ
1.腫瘍マーカーとは
腫瘍マーカーとは、血液中の腫瘍に関連した物質を
測ることによって、がんの診断や治療効果の判定に
使おうとするものです。
がんの組織標本を使って、組織の中の物質を測って、
がんの診断に使うのも広い定義からしますと、腫瘍
マーカーの一つであり、バイオマーカーなどと呼ばれ
ますが、ここでは、血液の腫瘍マーカーについて説明
していきます。
2ページ
2.腫瘍マーカーの種類
現在、使うことのできる腫瘍マーカーは、ざっと40種類以上あり
ます。腫瘍マーカーは、採取した血液を使って簡単に検査ができま
すが、がんの診断には、あくまでも補助的に用いられるものと考え
てください。
現時点では、腫瘍マーカーのみでがんと確実に診断できるものでな
く、画像診断の補助という位置づけになります。
腫瘍マーカーには限界があり、マーカーが高いからといって、そ
れだけでがんとすぐに診断できるものではないということなのです。
では、次のページに比較的有用性が高い主な腫瘍
マーカーを示しますので見てみましょう!
3ページ
HCG
CA125
CA19-9
AFP
CA15-3
CEA
NSE
PSA
SCC
肝臓がん、胚細胞性腫瘍
絨毛性腫瘍、胚細胞性腫瘍
卵巣がん
消化器がんなど
乳がん、胃がん、肺がん、卵巣がんなど
消化器がん、乳がんなど
肺小細胞がん、神経内分泌腫瘍
前立腺がん
扁平上皮がん
腫瘍マーカーがんの種類
4ページ
3.腫瘍マーカーは、がんの早期発見に使える?
血液検査のみで、がんの早期発見、早期治療ができれば、がんの治
療もかなり進歩するでしょうが、現段階でそのような腫瘍マーカーは
存在しません。
早期発見に使える腫瘍マーカーには、大腸がんの術後患者さんの
CEAがあります。ステージⅡまたはⅢの大腸がんの手術後、定期的
に3か月ごとにCEAを測定することは、再発の早期発見につながり、
生存率も向上したというエビデンス(科学的証拠)があり、国際的に推
奨されています(注1)。
また、肝硬変の患者さんに、定期的にAFPを測ることは、肝臓がん
の早期発見につながり、その後の病状の経過を改善する可能性があり、
推奨されています(注2)
5ページ
4.一般検診に有用な腫瘍マーカーはない
一般市民の検診に推奨できる腫瘍マーカーはあるのか?
会社の検診は、人間ドックなどで、腫瘍マーカーの項目があります。
定期検査として、やっているところは少ないと思いますが、
オプションとして、CEAやCA19-9、PSAなどが選択できるよう
になっている場合があります。
しかし、積極的に勧められる有効な腫瘍マーカー検診はない、
というのが現状です。
医学的に、がん検診の有効性を示すためには、単に診断率を向上
させるだけではいけません。最終的に、がんの死亡率を減少させる
ことができなければ、がん検診が有効であったとは言えないのです。
6ページ
腫瘍マーカー検診の問題点としては、陽性率が極端に低いこと、
見逃し例(がんがあるのに、異常なしとしてしまうこと:偽陰性)、
過剰診断例(がんがないのに、異常としてしまうこと:偽陽性)が
多いということです。
消化器がんでよく使われる CEAやCA19-9は、偽陰性や偽陽性が多く、
そもそも一般検診に使うことのメリットは少ないと考えられていて、
一般市民に対する検診の研究は現在まで行われていません。
卵巣がんのCA125を検診に使おうという試みは、海外でいくつか行
われました。
もっとも大規模な研究は、米国で行われたPLCOと呼ばれる研究
です。
では次のページを見てみましょう!
7ページ
55~74歳の78216人の一般女性を年に1度、CA125の採血と、
経膣(けいちつ)超音波検査を行う検診群と、検診を行わな
い非検診群とをランダムに振り分けて、長期の経過を比
較しました。結果は、検診群の方が、卵巣がんと診断さ
れた人数はやや多かった(212人対176人)ものの、統計
学的有意差(意味のある差)はありませんでした。
また、卵巣がんによる死亡数は、検診群118人、非検診
群100人と、検診群のほうが、逆にやや死亡数が多い結果
となりました(統計学的有意差はなし)。検診群で、
8.4%(3285人)に偽陽性がありました(注3)。
このように、CA-125の一般市民に対する検診は、早期
発見に関しても、治療結果により死亡率を低下させ
ることのメリットも見いだせなかったことになりま
す。
8ページ
前立腺がんに対するPSA検診については、年に1度のPSA検診
を行うことによって死亡率をさせたという欧州の報告(注4)と、死
亡率を減少させなかったという米国の報告(注5)とがあり、結果が
異なっています。
前立腺がんは、ゆっくりと進行するものが多く、また、治療にもよ
く反応するため、必ずしも早期発見・早期治療が、長期的な死亡率を
減少させるという良い結果と結びつかないことを示しているものと思
います。
PSA検診は、過剰に診断され、過剰な治療も行われているという
指摘もあるので、積極的に推奨できる検診とは言えないと思います。
厚生労働省がん研究助成金「がん検診の適切な方法とその評価法の確立に関する
研究」班では、PSA検診は推奨度I(証拠不十分)としています(注6)
9ページ
5.治療効果の判定に使える腫瘍マーカーは?
腫瘍マーカーのもう一つの使い道として、抗がん剤などの治療効果
の判定に使うという使い方があります。
抗がん剤に効果があるかどうかは、一般的には、CTなどの画像診
断などで判断されるのが原則です。
腫瘍マーカーは、採血だけで簡単にわかるので、抗がん剤を投与し
ている最中に、腫瘍マーカーが測られることが多いです。4ページの
表に掲げたような腫瘍マーカーは、抗がん剤の治療中などにもよく使
われるものです。ただし、これらの中で、画像診断の代わりに腫瘍
マーカーのみで、効果判定をしてもよいと、ガイドラインなどでも推
奨されているものを、次のページのものに限られます。
10ページ
胚細胞性腫瘍のAFP、胚細胞性腫瘍、絨毛(じゅうもう)性腫瘍の
HCG、卵巣がんのCA125、前立腺がんのPSA。
この4つの腫瘍マーカー以外のものは、腫瘍マーカー単独での効
果判定をすることができません。腫瘍マーカーが高くなった、低く
なったのみで、効果があるかどうかはわからないということになり
ます。
腫瘍マーカーが高くなったけれど、画像診断では、がんが大きく
なっていない(すなわち、偽陽性)ということはいくらでもあるこ
とです。
上記の4つの腫瘍マーカー以外の腫瘍マーカーは、効果判定をす
る際には、あくまでも参考程度にして、画像診断でしっかりと確認
をする、ということが大切です。
11ページ
4つの腫瘍マーカーの効果の判定基準も厳密にどれくらい高く
なったら(低くなったら)、効果なし(効果あり)と判定するか
は、それぞれ細かく決められています。大まかに言うと、治療前
の値の2倍以上高くなったり、低くなったりしないと判定はでき
ません。
例えば、卵巣がんで、治療前の腫瘍マーカーのCA125値が、
100であったものが、抗がん剤治療後に120になったとします。
患者さんは、120になると、「20もマーカー値が増えた。どうし
よう」などとつい考えてしまうものですが、この時点では効果判
定ができません。効果ありとも、効果なしとも判定できないとい
うことになります。
12ページ
6.腫瘍マーカーで一喜一憂しないこと
このように腫瘍マーカーとは、採血で簡単に数字がわかってしま
うので、患者さんにとってはわかりやすい検査とは言えますが、こ
れまで述べてきたように、安易に数字だけを信じてしまわないよう
にしてほしいです。
Mさんの例は、卵巣がんの術後で、CA19-9が上昇してきたという
ことですが、画像診断ではがんの再発は認められませんでした。
当院でも再検査をしましたが、卵巣がんで有用性の高いCA125は
正常値であり、CA19-9が高いのは偽陽性と考えられます。抗がん剤
はせず、経過観察としていますが、1年後の現在までCA19-9は高値
を持続していますが、再発は認められていません。
13ページ
腫瘍マーカーは日常的によく使われることが多い
のですが、有効な腫瘍マーカーは、多くはありませ
ん。もっと医学が進歩して、画像診断をしなくても、
がんの診断ができるようになってほしいと思います
し、我々の夢でもあります。
採血だけでがんを診断するという研究は、現在で
も進められていますが、今後の研究に期待したいも
のです。
現在の腫瘍マーカーは、有効性は限られています。
検査の数字にとらわれないで、一喜一憂しないこと
が大切と思います。
14ページ
参考文献
1.Locker GY, Hamilton S, Harris J, et al. ASCO 2006 update of recommendations for the
use of tumor markers in gastrointestinal cancer. J Clin Oncol 2006;24:5313-27.
2.日本肝臓学会. 肝癌診療ガイドライン 2013 年版.
3.Buys SS, Partridge E, Black A, et al. Effect of screening on ovarian cancer mortality:
the Prostate, Lung, Colorectal and Ovarian (PLCO) Cancer Screening Randomized
Controlled Trial. JAMA 2011;305:2295-303.
4.Schroder FH, Hugosson J, Roobol MJ, et al. Screening and prostate cancer mortality:
results of the European Randomised Study of Screening for Prostate Cancer (ERSPC) at
13 years of follow-up. Lancet 2014;384:2027-35.
5.Andriole GL, Crawford ED, Grubb RL, 3rd, et al. Mortality results from a randomized
prostate-cancer screening trial. N Engl J Med 2009;360:1310-9.
6.有効性評価に基づく前立腺がん検診ガイドライン. 2008.

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