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早期からの緩和ケアをどう実践していくか?

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早期からの緩和ケアをどう実践していくか?

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早期からの緩和ケアをどう実践していくか?

  1. 1. 診断時からの緩和ケアをどう 実践していくか? 2015/1/23 Department of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital 日本医科大学武蔵小杉病院 腫瘍内科 勝俣範之 nkatsuma@nms.ac.jp
  2. 2. 本日のトピック • 日本のがん医療・緩和ケアの実状は? • 早期からの緩和ケアとは? • 早期からの緩和ケアをどうやってすすめていくのか? 2015/1/23 Department of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital
  3. 3. 生存率の向上を目指すばかりで治療が引き起こす諸問 題を顧みないのは、先進技術を使って溺れる人を水か ら引き揚げたあと、咳きこんで水を吐くその人をそのまま 放置しているようなものだ。 F. ミュラ ン Mullan F. Seasons of survival: reflections of a physician with cancer. New England Journal of Medicine. 1985; 313(4): 270-273. がんの治療は、本当にその人の 幸せにつながるのか? Department of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital
  4. 4. 緩和医療(ケア)とは? • 緩和ケアは、生命を脅かす疾患による問題に直面する患者とその家 族に対して、痛みやその他の身体的、心理的、社会的な問題、さらに スピリチュアル(宗教的、哲学的なこころや精神、霊魂、魂)な問題を 早期に発見し、的確な評価と処置を行うことによって、 苦痛を予防した り和らげることで、クオリティオブ・ライフ(QOL)(人生の質、生活の質) を改善する行為である(WHOの定義文2002より)。 2015/1/23 Department of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital 緩和ケアの目標は、進行がんの抗がん剤治療と同じ!
  5. 5. がん治療医にとって必要なものは? 2015/1/23 Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital ブラックジャックによろしく 漫画on Webより
  6. 6. 日本のがん患者の死亡場所 厚生労働省人口動態調査厚生労働省終末期医療に関する調査検討会 一般人に対するアンケート調査結果 (平成16年) 実際の死亡場所 (平成14年) 自宅 58.8% 緩和ケア 病棟 49.6% 一般病院 9.5% その他 5.6% がんセン ターなど 3.2% 自宅 6.2% 緩和ケア 病棟 3.4% 一般病院 87.3% 診療所 1.4% 老人福祉 施設0.8% Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital
  7. 7. 海外のホスピスケアの現状 海外では終末期ケアは在宅が中心  英国 • ホスピスプログラム909 (入院ホスピス217、在宅ホスピス 413、デイケアセンター279) • 死亡場所: 入院ホスピス40%、在宅ホスピス40%、病院20%  米国 • ホスピスプログラム3300 • 死亡場所:入院ホスピス40%、在宅ホスピス40%、病院20%  参考: 日本の緩和ケア病棟数274 (2013)
  8. 8. 日本のがん医療の実状 • 外科医が中心のがん医療 • 減らないがん難民 • 治療の選択肢の増加(分子標的薬な ど)による過剰な抗がん剤の継続 • 怪しげな民間クリニックの横行 • 医療者のコミュニケーション不足 Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital 日本医療政策機構2006年
  9. 9. 日本の緩和ケア、緩和ケアチームの実態 • 外来予約を取るのにも1ヶ月以上待ちの緩和ケア病棟 • 外来緩和ケアを導入している施設が少ない • 早期緩和ケアが大切ということで、化学療法を施行中から、ホス ピスに紹介したら、「早すぎる、治療が終わってから来てくださ い。」と言われた。 • コンサルテーションのみの緩和ケアチーム。処方しない。看取りも しない、外部緩和ケアとの連携もしない。積極的治療に関する治 療方針には口出ししない。主治医に最終責任。 2015/1/23 Department of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital
  10. 10. NSAIDs またはアセトアミノフェン ±鎮痛補助薬 コデイン トラマドール モルヒネ オキシコドン フェンタニル タペンタド-ル Ⅰ Ⅱ Ⅲ タペンタドールの位置づけ WHOがん疼痛治療法を引用改変
  11. 11. 2015/1/23 Department of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital H23 厚生労働省資料
  12. 12. 緩和ケアという「第4の治療」 化学療法 + 緩和ケアチーム(緩和ケア医、専門看護 師)による月1度以上のサポート 化学療法のみ 手術適応のない肺がん患者 n=151 NEJM 2010;363:8 結果: • QOL (FACT-L)の向上 (P=0.03) • うつ症状の軽減 (38% vs. 16%, P=0.01) • 末期状態での積極治療(死亡の4日以内の化学療 法、ホスピスケアなし、3日以内のホスピス入院)の 減少(54%vs.33%, P=0.05) • 生存期間の向上(8.9 vs. 11.6 mos. P=0.02) Early Palliative Care
  13. 13. 亡くなる2ヶ月以内に化学療法していた患者の割合 2015/1/23 Department of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital 早期緩和ケア群(n=32) 対照群(n=25) P=0.02 亡くなる2ヶ月以内の化学療法 亡くなる2ヶ月以内に化学療法なし J Clin Oncol 29:2319-2326: 2011
  14. 14. 亡くなる3ヶ月以内に化学療法していた患者の割合 (国立がん研究センター中央病院) 2015/1/23 Department of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital n=255 P<0.01 亡くなる3ヶ月以内の化学療法 亡くなる3ヶ月以内に化学療法なし 47%53 % Hashimoto, Katsumata et al. The Oncologist 2009;14:752–759 医師A(n=22) 医師B(n=24) 医師C(n=123) 医師D(n=68) 医師E(n=12) 医師F(n=6) 50%50% 51%41% 33% 67% 60% 40% 83% 17% 50%50%
  15. 15. 亡くなる3ヶ月以内に化学療法をすることに影響した因子 ~多変量解析の結果~ 2015/1/23 Department of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital Hashimoto, Katsumata et al. The Oncologist 2009;14:752–759 OR 95% C.I P value 緩和ケアの話し合いをしなかった (緩和ケアへの紹介なし) 10.3 4.3-24.4 <.0001 身体症状を伴っていた 2.23 1.15-4.3 0.018 45歳以下 2.73 1.26-5.70 0.0008 男性 2.26 0.81-6.34 0.11
  16. 16. Provisional clinical opinion: the integration of palliative care into standard oncology care. 1. 進行がんと診断された時から、標準的抗がん剤治療と同 時に緩和ケアを行っていくことは、患者・家族のQOLを向 上させ、無駄な抗がん剤治療を避け、延命にも寄与する 可能性がある 2. 治療医は、化学療法ができなくなってきてからでなく、進 行がんと診断された時から、ホスピスケアについての情 報提供、治療の目的(治癒でなくより良い共存)、(余命告 知でなく)予後について話し合うべきである 米国臨床腫瘍学会(ASCO) 2012 Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital J Clin Oncol. 2012 10;30(8):880-7
  17. 17. 早期からの緩和ケアをどう実践するのか? 2015/1/23 Department of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital
  18. 18. 早期の緩和ケアを実践するために 転移・再発した時点で以下の、話し合いを繰り返しすること 1. 病状の理解 • がんを治すことは困難であること 2. 意思決定支援 • 緩和ケア・緩和療法という治療オプションがあること 3. ACP(Advanced Care Planning) 1. 大切にしたいことは?楽しみにしていることは?(生活の質について) 2. 身の回りのことができなくなってきた場合、どこで(在宅・入院・ホスピ ス)どのように過ごしたいか?(End of Life Discussion) 3. 余命宣告をしない(Hope the Best, Prepare the Worst) 4. どんな状況になっても見放さないこと(孤独にさせないこと、将来の約束) 2015/1/23 Department of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital
  19. 19. こんな緩和ケアしてませんか? • まだ症状がないので、緩和ケアとしては何もすることはありま せん。 • 痛み止めを使わなくても、それであなたが幸せなら使わなく てもよいです。 • 余命は○ヶ月です。やりたいことをやることをお勧めします。 • 治療のことはわかりませんので、主治医の先生と話し合うこ とを勧めます。 2015/1/23 Department of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital
  20. 20. あなたの大切にしたいことは何ですか? Patient Values (患者の希望・価値観・生活の質)を聞くこと • 家族と普通の生活がしたい • 婚約者と結婚式をあげたい • 治らないんだったら、世界一周旅行に行きたい • 来年4月には、一人娘が高校生になるんです。それまでは親 として何としてもしっかりと見届けたいんです • 髪の毛が抜けたままで死ぬのは嫌なんです。最後はきれいな 体でいたいんです。 • 海の見えるホスピスに行きたい Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital
  21. 21. 1. 最後の最後まで抗がん剤をやってしまうこと 2. もう治療法はありません。ここでやることはありません 3. どうしようもなくなってから、緩和ケアの話をすること オンコロジストのやってはいけない掟 2015/1/23
  22. 22. 最後の最後まで抗がん剤をやると…… • QOLが低下する • 在宅・ホスピスで亡くなる率が低下する • ICUで亡くなる率が高くなる • 最後に心肺蘇生をされてしまう • 生存期間が短くなる Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital BMJ. 2014 Mar 4;348:g1219. NEJM 2010;363:8
  23. 23. 標準治療終了後の化学療法が死亡場所に及ぼ す影響 化学療法あり N=216 (56%) 化学療法なし N=170 (44%) P value ICU 11% 2% 0.02 病院 25% 15% 0.4 在宅 47% 66% 0.03 ホスピス 13% 11% 0.6 ナーシングホーム 3% 5% 0.6 希望した場所で亡く なったか? 65% 80% 0.03 Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital BMJ. 2014 Mar 4;348:g1219. 全米8つのがんセンターでのコホート研究
  24. 24. 余命は告げるべき?告げないべき? 2015/1/23 Department of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital
  25. 25. 臨床医は正確な予後予測ができているか? BMJ 2003: 327; 195-200 →長く予測短く予測← 日数
  26. 26. 国立がん研究センターで治療を受けた再発卵巣がん112名の予後 中央値 1.5年 (範囲 0ヶ月~10.5年) 「あなたの余命は1年です」と言ってはいけない ~生存期間中央値は余命ではない?~ 累積生存率 生存期間(年) Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital 累積生存率 0 2 4 6 8 10 12 0 .2 .4 .6 .8 1 1.5年 カプランマイヤー曲線 半分の患者さんが亡くなるまでの期間 患者数 生存期間(年) ヒストグラム(度数分布表) 0 1 2 3 4 5 6 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 がん患者の予後データは 正規分布をなさないので 平均値ではなく、中央値で示す!
  27. 27. 余命告知でなく、予後について話し合うこと Telling prognosis(余命告知) • 医師から患者への一方通行 • 「あなたの余命は○ヶ月です」 End of life discussion(予後に ついて話し合う) • 医師患者のコミュニケーション • 緩和ケアの重要性 • 「身の回りのことができなくなった 場合に、どこでどのように過ごし たいですか?」 Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital
  28. 28. がん患者が医師から言われる最も傷つく言葉 • もう何も治療法がない • 可能性・範囲を言わない断定的な余命告知 • 感情への配慮がない 全国19施設ホスピスへ入院した630名の家族へのアンケート調査より Morita et al. Ann Oncol 15:1551, 2004 Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital
  29. 29. 誤ったインフォームドコンセント • 裁判で訴えられないようにするため、医療者の防衛 の手段として使う • 医療者は情報提供のみを行い、後は患者が決める • ICします!?(ムンテラをICにしただけ)
  30. 30. インフォームド・コンセントの理念 • 医療者と患者の相互の尊重と参加に基づいた意思決定を 協力して行う過程 1982 米国大統領委員会報告書 (A report on ethical and legal implications of informed consent in the patient-practitioner relationship 1-3.1982)より インフォームド・コンセントとは、 「医師と患者の共同作業」であり、 「医療者と患者の意思決定の共有」が大切!
  31. 31. 適切なインフォームド・コンセント とは? Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital 医師が情報を持ち、 医師が決める オレが決める型 医師と患者が情報を 共有し、決定も 共有する 共有型 患者が情報をもら い、患者が決定 する 患者が決めな型 Shared Decision Making (意思決定の共有) に基づく インフォームド・コンセント
  32. 32. 情報を提供する 目的・内容・リスク・利益他 治療との比較 質問・自分の希望を 伝える 提案する、意見を調 整する Shared Decision Makingの実際 双方向のコミュニケーション 納得する →満足する Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital
  33. 33. 臨床医が最も難しいコミュニケーションは? 米国臨床腫瘍学会Breaking Bad News シンポジウム1998 再発を伝える がんの診断を伝える 積極的治療中止、緩 和ケアへの移行 終末期ケア(蘇生の有 無)の相談 その他 Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital
  34. 34. 患者とのコミュニケーション技術 (わが国における患者の意向を基に作成) 悪いニュースを伝える方法 -SHARE- Supportive environment (支持的な場の設定) How to deliver the bad news (悪い知らせの伝え方) Additional information (付加的な情報) Reassurance and Emotional support (安心感と情緒的 サポート) Fujimori et al. (2007) Psychoncology 16:573-81 Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital 内富庸介, がん医療におけるコミュニケーション・スキル 悪い知らせをどう伝えるか. 医学書院, 2007
  35. 35. コミュニケーション技術による患者への精神状態への影響 研修を受けた 介入群 (n=292) 平均値±標準偏差 研修を受けて いない対照群 (n=309) 平均値±標準偏差 P値 不安* 4.83±3.75 5.17±3.42 0.333 抑うつ* 4.59±3.75 5.32±4.04 0.027 満足度** 8.58±1.62 8.35±1.74 0.095 信頼感** 9.15±1.28 8.87±1.54 0.009 Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital 30名のオンコロジストをコミュニケーション技術研修を受ける群と、受けない群に ランダムに割り付け患者の精神状態を評価: 国立がん研究センターで施行 Fujimori, Katsumata et al. J Clin Oncol 32, 2014 *HADS:不安、抑うつを評価する尺度、数値が高いと悪い傾向 **数値が高いと良い傾向
  36. 36. Hope the Best, and Prepare the Worst (最善を期待し、最悪に備えましょう) 患者  私は少しでも長く生きたいんです。  治療がうまくいってほしいんです。  最悪を考えるということは、あきらめて しまうような気がするのです。  今後は、妻や子供のことが心配なので す。 Ann Intern Med. 2003;138:439-443. 医師  私もそう期待したいです。○○さんにとって一番大切 なことは何でしょうか?  私も治療がうまくいってほしいと思います。もし治療 がうまくいったら何を大切にしたいですか?また、治 療がうまくいかなかったらどうするかということについ て話したいのです。  ○○さんの心配するお気持ちは理解できます。準備 をする、ということはあきらめてしまう、ということでは ありませんよ。  大切なことを話してくださってありがとうございます。 奥様や子供さんのことについて、一緒に考えていき ましょう。 Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital
  37. 37. 早期の緩和ケアを誰がやる? 2015/1/23 Department of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital がん治療医?緩和ケアチーム?緩和ケア医? 看護師?ソーシャルワーカー? 1. 役割分担でなく、役割をシェアする こと(共同作業) 2. 主体的に関わること チーム医療とは?
  38. 38. 早期緩和ケアの実践をするために、緩和ケア医 としてできること • 治療医(オンコロジスト)との連携(チーム医療・責任のシェア) • 患者さんの主治医になる(主治医は何人いてもかまわない) • 治療方針に口出しする(治療のコーディネーターをする) • 緩和ケアは「治療の一つ」と言う 2015/1/23 Department of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital
  39. 39. 患者さんから教えられたこと 現在、抗がん剤中 で~す 患者サロン中で ~っす
  40. 40. ご静聴ありがとうございました。 医局員募集中です!! 勝俣nkatsuma@nms.ac.jp がん患者さんの笑顔と 希望のために

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