2015年未踏忘年会での発表です。

1. 創造的人材のための知財LT
一般社団法人未踏 理事・生産性向上WG
サイボウズ・ラボ
知的財産管理技能士
西尾泰和
「生産性向上ワーキンググループ」の西尾です。
今回はみなさんの今後の人生の生産性を向上するために、知財についてLTします。

2. このLTの目的
創造的人材の将来の
生産性向上のために
知財に関する思い込みを壊す
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3. いきなり○×クイズ
プログラムはそれ自体では特許が取れないので
「～をする装置」などの形にする必要がある
○か×か？
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4. プログラムは物
×
2002年の特許法改正で
「プログラムは物である」と明記されたので
「～プログラム」という形でも問題ない。
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https://www.jpo.go.jp/shiryou/hourei/kakokai/pdf/h14_kaisei/h14_kaisei_1.pdf
この質問に○と答える人は情報が10年以上古いことがわかる！有用な試金石！

5. いきなり○×クイズ
特許はお金も時間も膨大に掛かる、
個人で使うことを期待されていない制度だ
○か×か？
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6. いきなり○×クイズ
×
個人や中小企業を対象とした手数料軽減*
個人や中小企業の出願は早期審査の対象**
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* https://www.jpo.go.jp/tetuzuki/ryoukin/genmensochi.htm
** https://www.jpo.go.jp/seido/tokkyo/tetuzuki/shinsa/souki/index.html
条件についてはリンク先参照。審査請求料や特許料の免除、1/3への軽減、
平均11か月かかる審査請求後の待ち時間を平均1.9か月に短縮する、など。
個人にやさしい制度設計＆これらの情報もウェブ上にあり全部ググれば出てくる。

7. いきなり○×クイズ
とはいっても現実的には無理でしょ
○か×か？
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8. いきなり○×クイズ
×
事例を見てみよう！
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9. J-PlatPatで検索
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特許等が無償で公開しているJ-PlatPatで適当なキーワードで検索
例として「落合陽一」（2009年上期未踏ユース）で試してみると5件ヒットした

10. 出願の一覧
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今回はこの「電圧可視化静電配線式ブレッドボード」を見てみよう。
(何のことかわからない人は https://www.youtube.com/watch?v=nsL8t_pgPjs を参照)

11. 詳細情報
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この「審査書類情報」をクリック！

12. 審査書類情報
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そうするといつどんな書類を出したかが一覧で見られる。
2009年7月に出願し、2012年7月に早期審査請求を掛け、
8月に拒絶理由通知が来て、10月に修正して、3月に査定

13. わかること
弁理士が代理出願している場合は
特許願に【代理人】の節がつくはずだが
落合さんの出願にはそれがない
→自分で出願している！
あと、早期審査請求もしている。
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14. 出願内容を見ることができる
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皆さん他人が書いたプログラムを読んで
「なるほど、こう書くのか」と学んだことがあるはず。
特許出願は公開されるので、他人の出願を読んで学ぶことができる。

15. ソースコード（請求の範囲）
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特許は、自分の発明を開示する代わりに、ある技術的範囲の実施の独占権をもらう制度。
「特許請求の範囲」とは「この範囲の独占権をください」という一番重要な部分。

16. エラーメッセージ（拒絶理由通知）
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要約：
・請求項バラバラでだめよ
・熱で色の変わる先行事例あるよ
この出願書類というソースコードを
特許庁と言うリポジトリにpushすると
審査官と言う人間コンパイラがチェックして
エラーメッセージを返してくる。
それが拒絶理由通知書。

17. チェンジセット（手続補正書）
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要約：
・請求項くっつけて1個にするよ
・電流による熱の可視化ではなく、電圧を測ってLEDで可視化するんだよ、と明記
エラーメッセージが返ってきたら、ソースコードを修正する。
その更新差分、チェンジセットが「手続補正書」

18. 正常終了（特許査定）
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修正の結果、バグ（拒絶の理由）がなくなれば
「これで特許にしてOKですよ」というメッセージが返ってくる。

19. つまり
個人で出願して特許を得ることは
現実的に実行可能だし、実際やってる。
「できるはずがない」ってのは
やらない言い訳に過ぎない。
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20. まとめ
特許出願するか、しないか？
弁理士を使うか、使わないか？
それは個々のプロジェクトの戦略判断であり
特定の戦略をプッシュはしない。
しかし、先輩の事例が見れるってことは
もっと知られてもよいのではないか？
選択肢を知り、広げることは、
きっとみんなのためになるはず。
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21. [PR]ワーキンググループ
未踏社団の生産性向上WGでは、
最小限の労力で大きな成果を出すことに
興味がある人をのんびりと募集中です。
今回のような話を深く話せるイベントを
生産性向上WGで2～3月に開催する予定です。
後でFacebookグループにURLを貼ります。
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発表者と質問を募集します！
また今回のスライドを見て自分でも検索してみて、
何か面白い事例を見つけたらぜひ教えてください！

22. 質疑応答
Q: 早期審査請求掛けても3年半かかってる？
A: いや、早期審査請求してからは10ヶ月。
審査請求を掛けずに出願だけして3年弱寝かして
いた。
2009/07/27 出願
2012/05/16 早期審査請求
2012/08/28 拒絶理由通知
2012/10/29 手続補正書
2013/03/19 特許査定
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出願しても審査請求をしないと審査されない。放置すると3年で無効になる。

23. 質疑応答
Q: 「請求項バラバラでダメよ」って？
A: （単一性の要件：特許法37条）ざっくり言っ
て「共通部分がある」が要件。落合さんは、発明
の構成要素を並列で請求項にしてしまっていて、
請求項間に共通部分がない。
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24. 単一性の要件 つづき
よくあるやり方は以下のように分ける方法
・AでBな装置(A && B)
・Cである請求項1の装置（A && B && C）
・Dである請求項1の装置（A && B && D）
これは請求項の間に共通部分を作ると共に
もし請求項1が既存の発明A && B && Eで拒絶
されたときに「じゃあ請求項1を取り下げます」
で補正ができるって戦略。
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知財の強い会社の出願と補正を見るとこの辺のテクニックがわかるかも。

25. 質疑応答
Q: 特許査定？登録と違うの？
A: 特許査定（登録してもOKですよ）の後、
特許料を払うと登録される。その情報は
「登録情報」のタブで見れる。
この事例だと以下のような感じ。
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26. 質疑応答
Q: だけどお高いんでしょう？
A: 詳しくは下記料金表を参照。
手数料軽減なしだと今回のケースは
出願15,000円、審査請求122,000円、
特許料3年分37,200円、合計18万って感じ
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https://www.jpo.go.jp/tetuzuki/ryoukin/hyou.htm
これを高いと思うか安いと思うかは主観なのでさておき、
「この発明でビジネスする権利を独占する」という特許の効果で
何が得られるか考えるとよい。例えばこの発明を使いたい企業がいる場合
特許登録後の実施権（使う権利）とバーターで出願費用を出させるなど
戦略的に動けば手持ち資金が少なくても取れる方法がある。
条件を満たせば手数料免除で0円とか、1/3の6万円とかになる。

27. 質疑応答
Q: 自分の特許は拒絶査定を受けて、
拒絶査定不服審判を掛けたら金がかかったが…
A: 審判請求料は49,500円＋(請求項の数×5,500円)
これは全出願のうちのおよそ1割が通る道。
審判請求料を払って「審査をやり直せ」と言うか
払わずに「拒絶(NG)」を受け入れるかの二択。
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資金的余裕がないなら「審判請求しないで特許化を諦める」という選択肢も
十分検討に値すると思う。というのも拒絶査定に至るということは、
出願時の「これで取れるだろう」という仮説が審査官の示す先行事例などで
覆され、しかもその後の修正でもそれを修復できなかった、という状態。
最初のプランのまま突き進むべきかどうか、検討すべき状況と思う。
(なお、特許件数がKPIな人は請求の範囲を狭めてでも特許にしようとするが、
それをやるとその特許のビジネス上の価値は最悪ゼロになるので要注意)