https://youtu.be/gq5A_xz2aUM イノベーションマネジメント/基礎科目 大阪大学 経済学研究科・経済学部　中川 功一准教授

1. イノベーション マネジメント
第7回
事業モデルのデザイン
ビジネスモデル・キャンバス
中川功一
大阪大学大学院経済学研究科
Koichi NAKAGAWA
Graduate School of Economics, Osaka University

3. イノベーションとは、
新しい製品・サービスを生み出すことではない。
商業的な成功を収めるかどうか。
→事業モデルとして存続可能な状態になっているかが問われる。

4. イノベーターは、
事業企画全体のつくり方をも
理解している必要がある
（むしろこちらのほうが大切）。

5. ビジネスモデルの設計ツール “ビジネスモデルキャンバス”
• あらゆる設計作業と同様、必要パーツと順序とがある
パートナー
主要活動
リソース
価値提案 顧客関係
チャネル
顧客
セグメント
コスト構造 収益の流れ

6. １．マーケティング・サイドの検討
誰に
Target
何を
Product
どういう経路で
Place
Promotion
どういう関係で
Relation
どういう収益モデルで
Price ⇒ Revenue Stream
1.まず「どういう未来を創造するか」「誰に、
どういう価値を提供できるのか」を考える
2.売れてこその事業が成立するので、
どうやったら普及するか、どう顧客に届け
るか、どう関係を維持するかを設計しな
ければならない
3.儲かってこそ持続できる事業。
収益モデルも現代では多様な選択肢が
ある
4.これらマーケット・サイドを総合的に
調整する

7. ２．バリュー・チェーンの構築
1.自社のコア（資源と活動）を定める
＝これは同時に、何を誰に頼るかの判断でもある
2.コスト構造を見積もる
何を使って
Resources
何をして
Activities
誰に、
何を頼るか
Partners
コスト見積り
Cost structure
誰に
Target
何を
Product
どういう
経路で
Place
Promotion
どういう
関係で
Relation
どういう収益モデルで
Revenue Stream

8. ３．全体のチューニング！
誰に
Target
何を
Product
どういう
経路で
Place
Promotion
どういう
関係で
Relation
何を使って
Resources
何をして
Activities
誰に、
何を頼るか
Partners
コスト見積り
Cost structure
どういう収益モデルで
Revenue Stream
コスト構造と収益モデルとを対比し、黒字化のための損益分岐点を理解する
損益分岐点を改善し、利益の出やすいビジネスモデルとするべく、全体を調整する

9. 過小評価もせず、過大評価もせず
• BMCは、「使えばたちどころに事業プランが湧き出る魔法の道具」
ではない。
• BMCは、新規事業開発に必要な項目を「過不足なく揃えるための
リスト」として有用
– 商品案 ≠ 事業戦略
– マーケティング案 ≠ 事業戦略
– マーケティング案+バリューチェーンの設計 = 事業戦略
• BMCは、埋めていく順番を守らないと本領を発揮しない
！！重要！！

10. 事例
光ディスクメディア産業
三菱化学メディアの事業転換
「新しいビジネスモデル」創造に力点のあるアプローチ

11. 光ディスクの普及
0
1000
2000
3000
4000
5000
6000
7000
8000
9000
1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004
CD-R/CD-RW
記録型DVD
フロッピーディスク
百万枚

12. 光ディスク産業の競争
日系シェアの急落と台湾の台頭
0
2000
4000
6000
8000
10000
12000
14000
16000
1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004
インド・中国
台湾
日本・米国

13. 急激な事業環境の変化の中で
日本企業は赤字転落
✓価格の暴落
✓誰でも生産可能になる
✓要求品質水準の低下

14. ビジネスモデルを見直してみる
誰に
Target
世界の
一般消
費者に
何を
Product
CD-Rを
どういう
経路
Place
量販店
販売
どういう
関係で
Relation
売り切りで
何を使って
Resources
開発部門
生産部門
販売部門
何をして
Activities
自社で材料
から一貫生
産し販売
誰に、
何を頼るか
Partners
誰にも
何も頼らず
コスト見積り
Cost structure
全て抱え込んでいる
高コスト体質
どういう収益モデルで
Revenue Stream
廉価商品を売るビジネス
マーケティング・サイドの戦略と、
サプライ・サイドの仕組みがかみ合っていない！

15. 小林喜光社長の改革
三菱化学メディアは親会社から事業撤退か
否かという最後通告をから受け取るまでに
追い込まれ、
社長に就任した小林喜光氏は、失敗すれ
ば事業撤退という条件のもと、本格的な事
業再建に乗り出した

16. マーケティング・サイドの検討
誰に
Target
台湾の
ディスク
生産企業
何を
Product
ディスク
材料
“色素”
どういう経路で
Place
自社工場から、
相手工場へ直送
どういう関係で
Relation
生産技術を指導
するパートナー
どういう収益モデルで
材料販売＆技術指導料
1.現在の光ディスク業界の課題：
「品質差のないコモディティ品で
の競争で赤字転落」「廉価で低品
質なディスクが氾濫し、記録メディ
アの信頼が揺らいでいる」
→「100年使えるディスクを」
2.高品質なディスクは、優れた材
料と生産管理から。この2つが、
業界で不足している！
3.台湾企業に「生産技術の指導
を行うパートナー」という提携関係
を作りながら、自社開発の材料を
売る

17. バリュー・チェーンの構築
・生産を止め、販売も販社に頼ることで巨大な
在庫・物流網を持たずに済む
・自社は開発に集中し、そこに資源重点投入
・利益の出やすいスリムな体制に
何を使って
Resources
開発部門
材料部門
試作部門
何をして
Activities
生産技術と
材料技術の
進化
誰に、
何を頼るか
Partners
製品生産は
台湾企業に、
製品販売は
販社に
コスト見積り
Cost structure
開発だけのスリムな体制

18. バランスの取れたビジネスモデルキャンバスに！
誰に
Target
台湾の
生産
企業に
何を
Product
高品質な
材料を
「100年も
つディス
クのため
に」
どういう
経路
Place
工場から
相手工場へ
どういう
関係で
Relation
技術指導と共
にパートナー
に
何を使って
Resources
開発部門
材料部門
試作部門
何をして
Activities
材料と
生産技術の
進化
誰に、
何を頼るか
Partners
製品生産を
台湾企業に、
製品販売を
販売会社に
コスト見積り
Cost structure
開発・材料生産だけのスリム体制
どういう収益モデルで
Revenue Stream
材料販売と技術指導料
社会ニーズに合致したバリューある事業活動を
スリムなチェーンで実現！

19. まとめ
損益分岐点を意識せよ
• 結局のところ、黒字化こそがビジネスとしての正しさを証明する
唯一の手段。
• であるなら、売上（利益）の最大化と、コストの最小化こそが本質。
• いかに革新的・魅力的な製品であろうと儲け方なしにはイノベー
ションにはならない！
19

20. デザイン思考ー新しい発想を得るツール
その現代的意義
• 従来型のビジネススクール教育の限界：頭のよい人が論
理的に考えれば、みな、ほぼ同じ答えにたどり着く
• 皆が同じ行動をすればレッドオーシャンになってしまう
考え方を変えよう！
20詳細はまた後日