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首都大学東京
金崎雅博
首都大学東京におけるHPC環境の利用と
FaSTARの空力最適設計への応用
FaSTARユーザフォーラム 2016
目次
はじめに
大学における航空宇宙機最適設計
空力評価の設計への活用
HPC環境の構築・利用
自前のPCクラスタ
他大学スパコン設備との連携
JHPCN
FaSTARの設計への活用事例
旅客機の離着陸経路最適化
火星探査航空機の展開シミュレーション
超音速航空機エンジン統合最適設計
FaSTARへの期待
2
はじめに(1/2)
大学における航空宇宙機最適設計
 概念設計(ポテンシャルソルバ,DATCOMなど)
 詳細設計(Euler,RANS計算)
 時系列的分析(非定常流れ,動特性,飛行力学)
ターゲットの設定
 翼型,既存型航空機
 革新的航空機,超音速航空機,宇宙往還機
 詳細特性の把握,ハザードシミュレーション,帰還・
着陸時の制御性
3
はじめに(2/2)
空力評価の設計への活用
 ポテンシャルソルバ → 汎用PC程度
 Euler,RANSソルバ → 研究室のPCクラスタくらい
でもなんとか?
 高詳細なRANS, LES, DESを用いた研究 → スパ
コンが無いと厳しい
設計・分析の活用においては
 多数のパラスタ (データ分析・飛行力学連成)
 進化計算法では数千~の計算ケース
 Surrogate modelを用いて対応も,やはり100ケース程度は必要
 揚力=重量と中立安定の条件の下で最適化を行うこ
とが適切
4
HPC環境の構築・利用(1/3)
FaSTARの利用に当たっては,何らかの研究に関わる
関係が必要(JAXAとの共同研究,委託,研修生など)
使うノードのMACアドレスなどが必要
自前のPCクラスタ
数百万円程度のものが主力?
6~8coresのCPUが64個程度
メモリ:128GB
• CPU : Six-Core Intel Xeon Processor X5690(130W)
(3.46GHz/12MB/QPI=6.4GT/s)×2CPU (計12Core)
• メモリ : 32GB (16GB×2),HDD : 2TB(7200rpm /SATA)×4 とは言え
,1度に適切な格子を用いたRANS計算が出来るのは1-2個の計
算で,数時間はかかる.
学生16人×100サンプル?
5
HPC環境の構築・利用(2/3)
他大学スパコン設備との連携
外部利用者としてお金を払う
2,700,000秒で約10万円(北海道大学情報技術スパコン
センター)
首都大学東京は,北大と名古屋大のセンターと法人
契約がある
学生は使えない,時間も少ない
HPC研究を行わない教員もいるので,いつ教員毎課金に
なってしまうか…
ほとんどの施設に提案公募型共同研究がある
今年度,4機関6名の代表として北大の公募に採択
ほとんどは毎年採択される必要がある
6
HPC環境の構築・利用(3/3)
学際大規模情報基盤共同利用・共同研究拠点
(JHPCN)
計画に基づいて,複数個所の施設を組み合わせて
用いることができる
チームを組むことが理想的
• 過去に共同研究者として採択経験あり,次年度は代表で1件(6
機関11名),副代表(4機関6名)で1件申請済み
メンバーの管理が割と大変,報告書もきっちり
申請時にHPCI IDを取得する必要がある(共同研究者全
員)
複数のリソースを使えるが,計算結果の一意性などは自
身で調べる必要がある.
内容によっては企業も出すことができる
7
FaSTARの設計への活用事例(1/19)
旅客機の離着陸経路最適化
目的:Hi-fidelityな計算に基づく空力を用いた動特性
の取得,経路計算とハザード時の最適空力制御設
計が出来るフレームワークの構築
問題点:経路中で時系列的に空力を取得する必要
性,Hi-fidelityな計算に時間がかかる,データ量が
膨大
解決策:データベースを構築,Kriging法による
期待する成果:ハザード時の空力制御特性の事前
取得,革新的航空機への適用
8
FaSTARの設計への活用事例(2/19)
FaSTARによる空力係数・微係数の導出例
9
FaSTARの設計への活用事例(3/19)
旅客機の離着陸経路最適化
 Kriging予測を用いるために必要なデータベース規模
 Mach数と迎角を実験計画法によりサンプリング
 50以上のサンプル点が必要
10
FaSTARの設計への活用事例(4/19)
旅客機の離着陸経路最適化
Common Research Model に対する空力係数の取得
11
1ケース当た
り,5000-
8000sec.(
80並列計算
の場合)
FaSTARの設計への活用事例(5/19)
旅客機の離着陸経路最適化
マイクロバーストを受ける航空機の着陸経路最適化
着陸進入開始の高度,迎角,エレベータ角が変数
Cost関数を最小化する方向にそれぞれを時間変化
最適化にはEfficient Global Optimizationを用いる
12
FaSTARの設計への活用事例(6/19)
旅客機の離着陸経路最適化
着陸進入開始の高度,迎角,エレベータ角が変数
Cost関数を最小化する方向に時間変化させる
最適化にはEfficient Global Optimizationを用いる
13
w/o microburst effect
w/ microburst effect
FaSTARの設計への活用事例(7/19)
火星探査航空機展開時空力に関する検証
目的:ヒンジ部に不適当な空力モーメントがかかると
探査航空機が飛行に遷移できないことから,ヒンジ
に対する空力モーメントなどの調査
問題点:形態が複雑である,条件が多様
期待する成果:ヒンジ角をtoe-outするようにつけると
,頭から離脱できた際にはヒンジ周りのモーメントを
大きくできるのではないか,と言う仮説の実証
14
FaSTARの設計への活用事例(8/19) 15
火星探査航空機展開時空力に関する検証
格子形成にはMEGG3Dを利用
(Hexameshを用いると,折りたたま
れている形態で,ヒンジ部が埋めら
れてしまったため(Concave形状に
対する稜線情報が不十分?))
1ケース当たり,5000-8000sec.(
128並列計算の場合)
FaSTARの設計への活用事例(9/19) 16
火星探査航空機展開時空力に関する検証
CM_open
CM_open
CM_open
CM_open
FaSTARの設計への活用事例(10/19) 17
火星探査航空機展開時空力に関する検証
FaSTARの設計への活用事例(11/19) 18
火星探査航空機展開時空力に関する検証
 翼展開中の翼間干渉に関して理解された
揚力
流線
循環
揚力
循環循環
胴体
翼
胴体
FaSTARの設計への活用事例(12/19)
超音速航空機エンジン統合設計
 目的:エンジン統合・非統合もFidelityとして扱う「形
状fidelity」と言う考えを導入した,Multi-fidelity設計
法の確立・設計の効率化
期待する成果:揚力・安定に関わる部分を中心的に
設計することを主眼に,Hi-fidelity計算をエンジン統合
設計の効率化をはかる,概念設計と詳細設計を(より
)シームレスにつなげることによる実務の効率化も
19
FaSTARの設計への活用事例(13/19)
超音速航空機エンジン統合設計
 ハイブリッド近似関数法による手法により試行
20
FaSTARの設計への活用事例(14/19)
超音速航空機エンジン統合設計
 50人乗り程度の機体を想定
21
z zxxc
rc
zc
xc
ate
zte
x
キャンバー
 設計空間
FaSTARの設計への活用事例(15/19)
超音速航空機エンジン統合設計
 サンプリングの結果(FaSTARによる計算分)
22
FaSTARの設計への活用事例(16/19)
超音速航空機エンジン統合設計
 サンプリングの結果・分析の妥当性
23
 High-Fidelity解析を含むサ
ンプリングではエンジンナセ
ルと主翼との距離を変化さ
せる設計変数の感度が高い
 主翼内翼後縁に正圧領域
⇒エンジンナセルからの流
れの影響
FaSTARの設計への活用事例(17/19)
超音速航空機エンジン統合設計
24
FaSTARの設計への活用事例(18/19)
超音速航空機エンジン統合設計
25
FaSTARの設計への活用事例(19/19)
Hybrid近似関数法を適用したMulti-Fidelity最適設計に
より,優良な翼型形状を獲得
低抵抗に関する知見の獲得
寄与度解析により高感度となる設計変数を確認
• エンジンナセルからの流れの干渉により,ナセルと主
翼の距離に関わる設計変数が高感度となる.
• 主流と後縁の衝突による影響から,捩り下げ&最大
キャンバー高さが高感度となる.
• エンジンナセルと主翼の距離をとりつつ,後縁が下に
出ないように設計し,流れの干渉,乱れを抑制するこ
とで低抵抗化
26
FaSTARへの期待(不安も)
 Hexameshとの組み合わせにより,手戻りが少なく設計サイクルへ
の組み込みが容易なソルバ― (自動化にはストレージ容量などが問題)
 Euler,RANSからLES,DESまでの実行が可能
 スキームなども各種
 ポータルサイトから質問が出来る,などのサポート体制
コードの中身は(例外を除き)公開され無いことから,研究・教育の
面で不安
 プログラミング教材の充実に期待 (物体適合,時間発展など)
スパコンの申請に通らなければ,詳細な計算が出来ない
 例えば,他施設への提案公募に出す努力をしたものの,採択
に至らなかったユーザーにはJSS2などの一部リソースを解放
するなどの制度が整備されると嬉しい.
計算機が変わった際に,継続的に研究しずらい
 FaSTAR使用認証法を何か御検討頂ければ.
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