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災害時地域ハッシュタグ
の活用
◆住⺠による住⺠のための災害情報ハブ◆
平成29年4月18日
稲野 茂
一般財団法人 道路新産業開発機構
(元 国⼟交通省 国⼟技術政策総合研究所)
1
自己紹介と注意事項
名前:稲野 茂(いなの しげる)
Twitter @rugeshino
昭和末期に建設省に⼊り、以降、国⼟交通省、
出先機関、自治体などで勤務
平成27年9月まで、つくば市内の研究所(国総研)
同年10月から、道路新産業開発機構に出向
このスライドは、個人的な取り組みをベースに、
個人の考えをまとめたものであり、国⼟交通省や
現所属組織との関係はありません。
2
災害の発生直後
現地の情報が不⾜
• 被災地の人
➡ 周囲は、今、どんな状況なのか?
• 被災地に家族・知人がいる人
➡ 電話は繋がらず、テレビは目⽴つ映像ばかり
➡ ⾏政の情報発信は遅い、不⼗分
3
3
情報不⾜の解決策
基本的な考え方
• 災害発生時、現地の人が現地の状況を、
共通のハッシュタグを付け
場所と状況がわかるように
ツイッターに投稿する
▼
多くの人が実践すれば
迅速に現地状況を把握できる
4
4
埼玉県和光市の事例
① 災害時のツイッター活用訓練を実施
(平成26年6月1日)
• 現地状況の投稿を市⺠に呼びかけ
• ハッシュタグは「#和光市災害」
• 訓練参加者の大多数が的確な投稿
② 後日、豪雨の際、状況把握に役⽴った
• 6月25日、ゲリラ豪雨で市内各所が冠水
• 市⺠が自発的に市内の状況を投稿
5
5
和光市は防災訓練で
ツイッター投稿を呼びかけた
6
6
和光市 防災訓練の投稿例
7
7
防災訓練の結果
大多数は訓練に沿った投稿
71.7%
6.8%
3.7% 5.8%
12.0%
訓練に沿った投稿
訓練に沿わない投稿
タグだけの投稿
事務局からの連絡
その他(感想等)
8
全投稿191件のうち、
訓練に沿った投稿は137件(72%)
訓練は成功
• 多数(137件)の的確な投稿
• イタズラ投稿は、少数(13件)かつ一過性、
➡ 気にする必要なし
• 日本初のツイッターハッシュタグを活用した
防災訓練は成功
…と思っていたところ、
6月25日にゲリラ豪雨が発生
9
9
ゲリラ豪雨、当日の投稿例
10
10
11
11
新聞記事によると
これは使える!
• 和光市は、大雨への対応検討において
ツイッター情報を参考にした、とのこと
• 和光市の松本市⻑のコメント
「ビジュアル面も含め、瞬時に被害の把握が
できたことは大きい。」
12
12
茨城県龍ケ崎市の事例
• 平成28年6月5日、茨城県龍ケ崎市は、
災害時ツイッター活用訓練を実施
• ハッシュタグは「#龍ケ崎市災害」
• 訓練により、市内の状況を伝える多くの
ツイッター投稿が得られた
• イタズラ投稿は少数
13
龍ケ崎市
訓練の
お知らせ
14
龍ケ崎市 訓練の投稿例
15
• 自治体から市⺠にツイッター投稿を呼びかける
防災訓練等の実施事例
• 平成28年10月30日#富山市災害
• 平成28年9月4日#かすみがうら市災害
• 平成27年5月31日#福岡市災害
その他の事例
16
• #和光市災害、#龍ケ崎市災害、#富山市災害な
ど ➡災害時地域ハッシュタグ と呼ぶ
• 独自命名のハッシュタグでは、覚えられない
➡ #◯◯市災害 を標準にしたい
• DITS※を使えば、ハッシュタグとジオタグが、
自動で付与され、投稿が簡単に
※DITS(Disaster Information Tweeting System)東海大学内田
研究室が開発したシステム。和光市他の訓練で活用実績あり。
災害時地域ハッシュタグ
#◯◯市災害
17
① これまでに、和光市、龍ケ崎市、富山市などで、
ツイッター活用の防災訓練を実施
② 一部の訓練で、少数のイタズラ投稿があったが、
大多数の投稿は、訓練に沿ったもの
③ 和光市で大雨の際、市⺠から市内の状況を伝える
ツイッター投稿があり、状況把握に役⽴った
④ 総括すると
• ツイッター活用訓練は、災害時に役⽴つ
• 根本的な課題点は、ゼロ
事例総括
18
18
注意事項
• 避難等が必要な危険な状況下では、住⺠に
投稿を求めてはいけない
• 人がいない場所の情報は得られない
• 通信が途絶したエリアの情報は得られない
• 個別投稿の信頼性は保証されない
• それでも、メリット絶大!
19
注意事項!
万能ではない
• 基本的にコストゼロで実施可能
(個人のスマホ+日常使用のPC+無料アプリを活用)
• 情報発信(投稿)と情報収集(抽出)が簡単で誰でも使える
• 浸透すれば、多数の情報が迅速に得られ、状況把握に有効
• 災害専用システムは、災害時に使われないと⾔われており、日常利用の
システムを災害時に活用する発想が重要 ➔ まさに
• ジオタグ付き投稿は、俯瞰的な状況把握が容易
• イタズラ投稿は気にする必要なし ➔ 投稿の信頼性評価は対処可能
• 災害に強いシステム(自治体が被災し機能停止しても使える。自治体の
HPは災害時にアクセス集中で閲覧不可のケースあり。ツイッターはバル
スに耐えた強靭なシステム)
ツイッター活用のメリット
20
20
災害時の自情、共情、公情
(誤字・誤変換ではありません。造語です。)
■自情
– 自分自⾝で、直接、現地を⾒て確認した情報
– 情報を取得できる範囲が限定される
■共情
– 各自が得た情報(自情)をネット上に投稿して共有
– 情報共有ツールとしてツイッターを活用
■公情
– 公的機関やマスコミから出される情報
– 公的機関の情報は、出るまで遅いケースが多い←個人の感想
– テレビのニュースは目⽴つ映像が中⼼で、知りたい箇
所の情報が得られない←個人の感想
21
遠くの親戚より近くの他人
• 遠くに住んでいるSNSのフォロワーに、
救助など助けを求めても、すぐには無理
• 災害時地域ハッシュタグの活用
➔ 近所で困っている人の存在を把握
➔ 速やかな共助活動が展開(期待)
22
遠くのフォロワーより
災害時地域ハッシュタグを使う近所の人
よくある質問1
ツイッター使えない人は?
• 災害時のツイッター活用は、従来の方法の代替で
はなく、現状にプラスの方法と位置づける
• 被災地でツイッターを使えない人が、情報不⾜で
困っているなら、ご近所で助けあう
– 例えば、ツイッター情報に基づき自主避難する時には、
ご近所にも呼びかけて
23
よくある質問2
投稿が多いと自治体として
全てに迅速対応できない
• 災害時地域ハッシュタグ付き投稿の主目的は、
• ✕ 壊れているから速やかに修繕求む、と⾏政
へ迅速対応を求める通報ではない
• ◯ 住⺠相互の情報共有
• 自治体など災害対応関係機関は、投稿に基づき
被害の全容を把握した上で、緊急性を考慮し、
最善を尽くすべし
24
よくある質問3
デマをどうする?
• 熊本地震では「動物園からライオンが逃げた」と
デマがツイッターに投稿され、現地が混乱した。
• ほとんど匿名投稿のツイッターは、そもそも信頼
できず、デマが投稿され、その対策が課題
➔回答は次々頁
25
悪質なデマ投稿者は、逮捕
26
• 熊本地震で「ライオンが逃げた」と投稿した者
は、その後逮捕 ➔ このことは、今後の災害時の
デマ投稿の抑止効果があると考えられる。
• 怪しい投稿をデマと判定することは容易
• 実態としてデマ投稿者は少数 ➔ 少数デマが拡散
➔ 盲信する者が出て混乱 ➔ これが問題
• 災害時地域ハッシュタグを付け、デマの否定情報
を投稿 ➔ デマの拡散防止や混乱予防に効果的
27
ツイッターのデマ対策
• 災害時地域ハッシュタグを用いて、
➡ 住⺠が災害情報をツイッターに投稿・共有
➡ 住⺠のための災害情報ハブ
• 仮に、自治体が機能停止しても、スマホの通信が
利用可能なら⼗分に機能する
※災害時に自治体が一時的に機能停止する事例が複数あり、それを前提とすべき
• 住⺠以外(⾏政や建設会社等)も参加自由
28
住⺠による住⺠のための災害情報ハブ
• 群馬県建設業協会は、地域への貢献活動として、
現地の災害情報をツイッターに投稿している
• 投稿には、災害時地域ハッシュタグとジオタグ、
写真が添付されている
• 住⺠が、群馬県内の詳細な災害情報を得るための
有効な情報源となっている
※群馬県内で災害時地域ハッシュタグを定めた自治体は、現時点でゼロ
29
群馬県建設業協会の取り組み
北関東豪雨時の投稿例
30
他の投稿例
31
全ての投稿にジオタグ付き
webサイト「ちずツイ」による表示
32
地図上に展開して閲覧可能
対応サービスの例
webサイトちずツイ、DIMS。アンドロイドアプリTwitmapなど
33
俯瞰的な状況把握が可能
ジオタグ付きの投稿
• 地域住⺠だけでなく、建設会社など関係機関が
独自情報を投稿することで、情報が充実する
• 仮にデマが投稿されても、迅速に否定情報が投稿
され、拡散・混乱には至らない(想定)
• 投稿を整理・再発信するサービスも今後期待
• 投稿・閲覧を簡単にするアプリも開発(DITS等)
34
多様な主体の参画で発展性大
やってみなはれ
やらなわからしまへんで
35
サントリー創業者 ⿃井信治郎 の⾔葉
⼩理屈を並べても、物事は運ばない
とにかく実⾏して、そこから学びながら
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