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クラウドがもたらす
パラダイムシフトと
デベロッパーへのインパクト

#-#-#                  栗原 潔
                       株式会社テックバイザージェイピー
                       株式会社テックバイザージェイピー
                       kkurihara@techvisor.jp

        Developers Summit 2010
自己紹介
    ITコンサルタント
     主にインフラ系、データ・マネジメント系
    弁理士
     主にソフトウェア特許、商標関係
    翻訳家
     IT、経営学、知財専門
    金沢工業大学客員教授
     今年は虎ノ門校知的創造システム専攻(社会人向け大学院)で「知
     財特論」、「IT要論」を担当
    ライター/ブロガー
     公式ブログ(http://techvisor.jp/blog)
     Twitter: kurikiyo
     ITmedia, CNET, IT Leaders, EnterpriseZine, IT Initiative
     などの媒体に不定期寄稿
2                      Developers Summit 2010    TechVisor.JP
略歴
     1981年: 東京大学工学部卒
     同年~: 日本IBM
     インフラ系SEとしてキャリアを開始(メインフレーム→OS/2→AIX)
     後に分散システム系設計コンサルタント
     1990年: 米MIT Laboratory for Computer Science修士課程
     に企業留学、専攻は並列処理アーキテクチャ
     ※<自慢>同じフロアにRichard Stallmanがいました


     1995年~: ガートナージャパン
     インフラ系を中心にIT業界アナリスト活動
     2004年: 弁理士試験合格
     2005年~:独立開業・弁理士登録

3                        Developers Summit 2010   TechVisor.JP
主な訳書・著書
  「戦略的データマネジメント」トーマス・レドマン著
     • データ管理テクノロジーではなくデータそのものにフォーカスした実践的ガイド
     • 著者の長年のコンサルティング経験に基づく豊富な事例と具体的指針を提供

  「デジタルネイティブが世界を変える」 ドン・タプスコット著
     • 「ウィキノミクス」の著者による最新作
     • デジタル・テクノロジーに囲まれて育ってきた世代が成人になることで、社会・教育・ビ
       ジネス・政治・家庭がどのように変化してきたかを膨大なデータに基づき分析
  「ライフサイクル イノベーション」 ジェフリー・ムーア著
     • ビジネス書の古典的名著「キャズム」の著者による最新作
     • 企業がイノベーションを継続的に行っていくためのフレームワークの提言


  「イノベーションへの解 実践編」 スコット・アンソニー他著
     • 「イノベーションのジレンマ」で知られるハーバードビジネススクール教授クレイトン・クリ
       ステンセンが設立したコンサルティング会社のパートナーによる著書
     • 一般企業における「破壊的イノベーション理論」の実践についての豊富な事例とフレー
       ムワーク、ツールによる解説
  「グリーンIT」 (書き下ろし)
     • ITプロフェッショナルに向けたグリーンITの基本解説書
     • ITの効率化と環境対応性を両立させるための戦略について広範に解説


              Developers Summit 2010   TechVisor.JP
アジェンダ

     クラウドとは?(再考)

     クラウドの本質とパラダイムシフト

     4大クラウド事業者の戦略分析

     クラウドのパラダイムシフトがデベロッパーにもた
     らすインパクトとデベロッパーの心構え




5            Developers Summit 2010   TechVisor.JP
クラウドとは?
     NIST(アメリカ国立標準技術研究所)による定義
     5つの特徴
          •   オンデマンド/セルフサービス
          •   広範なネットワーク・アクセス
          •   リソースのプーリング
          •   迅速な弾力的規模拡大・縮小
          •   測定されたサービス

     3つのサービスモデル              4つの展開モデル
       • SaaS                  • プライベートクラウド
       • PaaS                  • コミュニティクラウド
       • IaaS                  • パブリッククラウド
                               • ハイブリッドクラウド

6                Developers Summit 2010   TechVisor.JP
クラウド定義の3カテゴリー
                                           広義のクラ
    データセンター・アウトソーシング全般                     ウド
    キーワード: データセンター、Web

                                           最も一般的
           IaaS+SaaS+PaaS                  と思われるク
           キーワード: オンデマンド、従量制料金、
                                           ラウドの定義
           リソース・プーリング、プロビジョニング
              大規模水平スケーリングに基づく
              IaaS+SaaS+PaaS
              キーワード:Amazon, Google,        狭義のクラ
              NoSQL, KVS                   ウド


    企業や人によりクラウドの定義は様々であり混乱の原因になっ
    ている
7                 Developers Summit 2010   TechVisor.JP
クラウドのローカル定義

     誰もが納得できるクラウドの定義を行なうことは困
     難(不可能?)

     議論の最初に、その議論におけるクラウドの
     「ローカル」な定義を行なうことをお勧めします

     特にプライベート・クラウドをクラウドの(ローカル)
     定義に含めるかどうかをはっきりさせないと議論
     が拡散します




8            Developers Summit 2010   TechVisor.JP
クラウドの本質
                                                  今、クラ
                                                  ウドと呼
                  所有から利用へ
    メ                                             ばれてい
                                                   るもの
    ガ         サーバ中心型コンピューティング
    ト
    レ
    ン             データセンター集約

    ド
                     選択と集中


         クラウドとは既に進行中のメガトレンドにキャッ
         チーな名前を付けたもの(Web 2.0に類似)
         「クラウド」という言葉が陳腐化しても、今クラウド
         と呼ばれている概念が陳腐化することはない
9                 Developers Summit 2010   TechVisor.JP
クラウド・コンピューティングがもたらす変化
               従来型コンピューティング的                              クラウド・コンピューティング的
     Software as a Deliverable               Software as a Service
     所有指向                                    利用指向
     資産                                      経費
     一括料金                                    従量制料金
     Best in Class                           Good Enough + Speed
     長期計画                                    "Fail Often, Fail Quick, Fail Cheap"
     予測可能性                                   弾力性
     トランザクション                                インタラクション
     設計時統合                                   実行時統合
     Web as a Channel                        Web as a Platform
     密結合                                     疎結合
     Strong Consistency                      Eventual Consistency
     ACID                                    ウィーク・トランザクション
     RDBMS                                   NoSQL
     3NF                                     KVS
     バイナリ                                    スクリプト
     スケールアップ+スケールアウト                         スケールアウト

10                               Developers Summit 2010                    TechVisor.JP
AmazonのSWOT分析

     Strength
        現時点では最も幅広いサービスを提供するクラウド・プロバイダー
        クラウドビジネスの実質的コストはきわめて低い
     Weakness
        エンタープライズ・コンピューティングでの経験不足
        クラウドは「副業」に過ぎない
     Opportunities
        物販ビジネスの顧客データの活用
        企業コンピューティング向け機能の段階的拡充
     Threat
        電子書籍市場、コンテンツ販売市場をAppleに浸食される
        エンタープライズ向け汎用クラウドとしての地位をAzureに奪われる


11                   Developers Summit 2010   TechVisor.JP
GoogleのSWOT分析
     Strength
        サーチエンジンという「金のなる木」ビジネス
        クラウドビジネスの実質的コストはきわめて低い
        データセンター/大規模並列処理分野における人材/ノウハウ蓄積
     Weakness
        業務系には適用しにくいPaaSアーキテクチャ
        AdSense/AdWordsに過剰に依存したビジネス・モデル
        一般企業・一般社会とは時に相容れない「先進性」
     Opportunities
        広告テクノロジーによる「無料サービス」の収益化
        Chrome/Chrome OSによるマイクロソフト・デスクトップの中立化
     Threat
        Bingによるサーチエンジン・ビジネスの浸食
        "Don't Be Evil"のモットー崩壊によるユーザーからの反感
12                       Developers Summit 2010 TechVisor.JP
Microsoft AzureのSWOT分析
     Strength
        Software+Service戦略(.NETアプリケーションとの互換性)
        資金力/マーケティング力
     Weakness
        歴史的に見てネット事業はマイクロソフトのウィークポイント
        歴史的に見て非PCデバイスはマイクロソフトのウィークポイント
        クラウド基盤への投資をほとんど一から行なわなければならない
     Opportunities
        .NETデベロッパーのマインドシェア獲得
        業務アプリケーションにも十分使えるクラウドとしての地位獲得
     Threat
        既存ビジネスのカニバライズを恐れた中途半端なクラウド戦略
        Apple、Google、Amazon等にクライアント機器の主導権を奪われる

13                   Developers Summit 2010   TechVisor.JP
Salesforce.comのSWOT分析
     Strength
        CRM/SFA SaaSによる企業コンピューティング市場への浸透
        AppExchangeのエコシステム
        敷居の低いForce.comプラットフォーム
     Weakness
        RDBMSの巨大インスタンスに依存した独特のアーキテクチャ
        CRM/SFAアプリケーションに依存
     Opportunities
        Force.comを定番開発プラットフォームのひとつに
        Chatterを企業内のリアルタイム・コラボレーション・ツールに
     Threat
        CRM/SFA SaaS市場の飽和
        AzureのSoftware+Service型戦略からのプレッシャー

14                   Developers Summit 2010   TechVisor.JP
事例: Salesforce.com Chatter




       Saleforce.comが提供するTwitterライクな企
       業内コラボレーション機能
       Saleforce.comアプリケーション基盤のセキュリティ機能と統合
       Saleforce.comアプリケーションのイベントとユーザー間の対話と
       を統合(アプリケーションが「つぶやく」)
15                 Developers Summit 2010   TechVisor.JP
4大クラウド - プラットフォームとしての比較
                   Amazon          Google            Microsoft       SFDC
     汎用性
     ラーニングカー
     ブ(1:難しい-5:
     易しい)
     エンタープライズ
     適合性
     NoSQL度
     スケーラビリティ
     典型的利用シナ      • 現時点では • Google    • オンプレミ    • 比較的シンプ
     リオ             最も汎用性     Appsの補助   ス.NETアプリ   ルなWebア
                    が高いクラ     的アプリケー    ケーションの     プリケーショ
                    ウド・プラット   ション       クラウド化      ン(社内外)
                    フォーム    • 大規模なコラ • 将来的には       の短期立ち
                              ボレーション、   Amazonに    上げ
                              メディア共有    肉薄?
16                          Developers Summit 2010               TechVisor.JP
クラウドがもたらすパラダイムシフト
      インフラ管理を(ほとんど)気にしなくて良くなる
      →インフラのお守りビジネスでクライアントから収益を得る
      ことが困難に
      → 「箱売りビジネス」がますます困難に
      スピード最優先のビジネスモデルがますます重要に
      → 小規模SIや「ノマド」ワーカーが有利な立場に
      データやアプリケーションの場所と利用者の場所の結び
      付が自由に
      →「ノマド」ワーカーの新たな機会
      →オフショアとの競合がますます過激に

     クラウドは新しいシフトをもたらしているというよりは、既に起
     きているシフトをさらに加速していると言うべき
17             Developers Summit 2010   TechVisor.JP
各国の年齢別人口比




同僚との競争、他社との競争に加えて他国との競争を考え
るべき(直接的に競合しているようには見えなくてもあなたと
同じ仕事を奪い合っているかもしれません!)
          Developers Summit 2010   TechVisor.JP
コアvsコンテキスト

      コア: 差別化要素
      コンテキスト: コア以外
      コア=コア・ビジネスとは限らない
      コア=ミッション・クリティカルとは限らない
      ある時点でのコアは時間の経過と共にコンテキスト
      となっていく
      企業も人もリソースの何割かをコアに割り振るべき
          思考実験:
          • 石川遼の年収約5億円のうち、ゴルフ賞金は1億円、スポン
            サーからの収入は4億円
          • 石川遼にとっての「コア」とは?
          • 石川遼は自分のリソース(時間)をどのように配分すべきか
19              Developers Summit 2010   TechVisor.JP
コアとして追求すべき要素(例)

      ビジネス分析
       ITとビジネスの橋渡し
       戦略的データ活用
      コミュニケーション・スキル
       グローバル・ソーシングにおけるブリッジSE
      先進的テクノロジー
       並列アルゴリズム(MapReduce、マルチスレッド等)
       NoSQLベース・システムのデザイン・スキル
       水平スケール型システムの構築スキル

     テクノロジーをコアとして維持できる期間は短いが、プリンシ
     プル(規範・原則)やヒューマンスキルはより長期的にコアと
     しての地位を維持できる可能性が高い
20                Developers Summit 2010   TechVisor.JP
まとめ

      クラウドとは進行中の重要メガトレンドの集合に
      キャッチーな名前を付けたもの
      重要なのは「クラウド」そのものよりもその背後にあるメガトレンド
      クラウド普及は既に進行しているパラダイムシフト
      をさらに加速している
      「わかっている人」にとっては大きなチャンス、「わかっていない人」に
      とっては大きなリスク
      エンジニア/デベロッパーとしてのコア(差別化要
      素)を見つけ出し、自分のリソース(お金、時間、
      体力)の一定割合をコアに向けよう
      クラウド関連テクノロジーは一定期間のコアになり得るが、より長期
      的に大事なのはテクノロジーの裏にある規範とヒューマンスキル

21              Developers Summit 2010   TechVisor.JP

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クラウドがもたらすパラダイムシフト

  • 1. クラウドがもたらす パラダイムシフトと デベロッパーへのインパクト #-#-# 栗原 潔 株式会社テックバイザージェイピー 株式会社テックバイザージェイピー kkurihara@techvisor.jp Developers Summit 2010
  • 2. 自己紹介 ITコンサルタント 主にインフラ系、データ・マネジメント系 弁理士 主にソフトウェア特許、商標関係 翻訳家 IT、経営学、知財専門 金沢工業大学客員教授 今年は虎ノ門校知的創造システム専攻(社会人向け大学院)で「知 財特論」、「IT要論」を担当 ライター/ブロガー 公式ブログ(http://techvisor.jp/blog) Twitter: kurikiyo ITmedia, CNET, IT Leaders, EnterpriseZine, IT Initiative などの媒体に不定期寄稿 2 Developers Summit 2010 TechVisor.JP
  • 3. 略歴 1981年: 東京大学工学部卒 同年~: 日本IBM インフラ系SEとしてキャリアを開始(メインフレーム→OS/2→AIX) 後に分散システム系設計コンサルタント 1990年: 米MIT Laboratory for Computer Science修士課程 に企業留学、専攻は並列処理アーキテクチャ ※<自慢>同じフロアにRichard Stallmanがいました 1995年~: ガートナージャパン インフラ系を中心にIT業界アナリスト活動 2004年: 弁理士試験合格 2005年~:独立開業・弁理士登録 3 Developers Summit 2010 TechVisor.JP
  • 4. 主な訳書・著書 「戦略的データマネジメント」トーマス・レドマン著 • データ管理テクノロジーではなくデータそのものにフォーカスした実践的ガイド • 著者の長年のコンサルティング経験に基づく豊富な事例と具体的指針を提供 「デジタルネイティブが世界を変える」 ドン・タプスコット著 • 「ウィキノミクス」の著者による最新作 • デジタル・テクノロジーに囲まれて育ってきた世代が成人になることで、社会・教育・ビ ジネス・政治・家庭がどのように変化してきたかを膨大なデータに基づき分析 「ライフサイクル イノベーション」 ジェフリー・ムーア著 • ビジネス書の古典的名著「キャズム」の著者による最新作 • 企業がイノベーションを継続的に行っていくためのフレームワークの提言 「イノベーションへの解 実践編」 スコット・アンソニー他著 • 「イノベーションのジレンマ」で知られるハーバードビジネススクール教授クレイトン・クリ ステンセンが設立したコンサルティング会社のパートナーによる著書 • 一般企業における「破壊的イノベーション理論」の実践についての豊富な事例とフレー ムワーク、ツールによる解説 「グリーンIT」 (書き下ろし) • ITプロフェッショナルに向けたグリーンITの基本解説書 • ITの効率化と環境対応性を両立させるための戦略について広範に解説 Developers Summit 2010 TechVisor.JP
  • 5. アジェンダ クラウドとは?(再考) クラウドの本質とパラダイムシフト 4大クラウド事業者の戦略分析 クラウドのパラダイムシフトがデベロッパーにもた らすインパクトとデベロッパーの心構え 5 Developers Summit 2010 TechVisor.JP
  • 6. クラウドとは? NIST(アメリカ国立標準技術研究所)による定義 5つの特徴 • オンデマンド/セルフサービス • 広範なネットワーク・アクセス • リソースのプーリング • 迅速な弾力的規模拡大・縮小 • 測定されたサービス 3つのサービスモデル 4つの展開モデル • SaaS • プライベートクラウド • PaaS • コミュニティクラウド • IaaS • パブリッククラウド • ハイブリッドクラウド 6 Developers Summit 2010 TechVisor.JP
  • 7. クラウド定義の3カテゴリー 広義のクラ データセンター・アウトソーシング全般 ウド キーワード: データセンター、Web 最も一般的 IaaS+SaaS+PaaS と思われるク キーワード: オンデマンド、従量制料金、 ラウドの定義 リソース・プーリング、プロビジョニング 大規模水平スケーリングに基づく IaaS+SaaS+PaaS キーワード:Amazon, Google, 狭義のクラ NoSQL, KVS ウド 企業や人によりクラウドの定義は様々であり混乱の原因になっ ている 7 Developers Summit 2010 TechVisor.JP
  • 8. クラウドのローカル定義 誰もが納得できるクラウドの定義を行なうことは困 難(不可能?) 議論の最初に、その議論におけるクラウドの 「ローカル」な定義を行なうことをお勧めします 特にプライベート・クラウドをクラウドの(ローカル) 定義に含めるかどうかをはっきりさせないと議論 が拡散します 8 Developers Summit 2010 TechVisor.JP
  • 9. クラウドの本質 今、クラ ウドと呼 所有から利用へ メ ばれてい るもの ガ サーバ中心型コンピューティング ト レ ン データセンター集約 ド 選択と集中 クラウドとは既に進行中のメガトレンドにキャッ チーな名前を付けたもの(Web 2.0に類似) 「クラウド」という言葉が陳腐化しても、今クラウド と呼ばれている概念が陳腐化することはない 9 Developers Summit 2010 TechVisor.JP
  • 10. クラウド・コンピューティングがもたらす変化 従来型コンピューティング的 クラウド・コンピューティング的 Software as a Deliverable Software as a Service 所有指向 利用指向 資産 経費 一括料金 従量制料金 Best in Class Good Enough + Speed 長期計画 "Fail Often, Fail Quick, Fail Cheap" 予測可能性 弾力性 トランザクション インタラクション 設計時統合 実行時統合 Web as a Channel Web as a Platform 密結合 疎結合 Strong Consistency Eventual Consistency ACID ウィーク・トランザクション RDBMS NoSQL 3NF KVS バイナリ スクリプト スケールアップ+スケールアウト スケールアウト 10 Developers Summit 2010 TechVisor.JP
  • 11. AmazonのSWOT分析 Strength 現時点では最も幅広いサービスを提供するクラウド・プロバイダー クラウドビジネスの実質的コストはきわめて低い Weakness エンタープライズ・コンピューティングでの経験不足 クラウドは「副業」に過ぎない Opportunities 物販ビジネスの顧客データの活用 企業コンピューティング向け機能の段階的拡充 Threat 電子書籍市場、コンテンツ販売市場をAppleに浸食される エンタープライズ向け汎用クラウドとしての地位をAzureに奪われる 11 Developers Summit 2010 TechVisor.JP
  • 12. GoogleのSWOT分析 Strength サーチエンジンという「金のなる木」ビジネス クラウドビジネスの実質的コストはきわめて低い データセンター/大規模並列処理分野における人材/ノウハウ蓄積 Weakness 業務系には適用しにくいPaaSアーキテクチャ AdSense/AdWordsに過剰に依存したビジネス・モデル 一般企業・一般社会とは時に相容れない「先進性」 Opportunities 広告テクノロジーによる「無料サービス」の収益化 Chrome/Chrome OSによるマイクロソフト・デスクトップの中立化 Threat Bingによるサーチエンジン・ビジネスの浸食 "Don't Be Evil"のモットー崩壊によるユーザーからの反感 12 Developers Summit 2010 TechVisor.JP
  • 13. Microsoft AzureのSWOT分析 Strength Software+Service戦略(.NETアプリケーションとの互換性) 資金力/マーケティング力 Weakness 歴史的に見てネット事業はマイクロソフトのウィークポイント 歴史的に見て非PCデバイスはマイクロソフトのウィークポイント クラウド基盤への投資をほとんど一から行なわなければならない Opportunities .NETデベロッパーのマインドシェア獲得 業務アプリケーションにも十分使えるクラウドとしての地位獲得 Threat 既存ビジネスのカニバライズを恐れた中途半端なクラウド戦略 Apple、Google、Amazon等にクライアント機器の主導権を奪われる 13 Developers Summit 2010 TechVisor.JP
  • 14. Salesforce.comのSWOT分析 Strength CRM/SFA SaaSによる企業コンピューティング市場への浸透 AppExchangeのエコシステム 敷居の低いForce.comプラットフォーム Weakness RDBMSの巨大インスタンスに依存した独特のアーキテクチャ CRM/SFAアプリケーションに依存 Opportunities Force.comを定番開発プラットフォームのひとつに Chatterを企業内のリアルタイム・コラボレーション・ツールに Threat CRM/SFA SaaS市場の飽和 AzureのSoftware+Service型戦略からのプレッシャー 14 Developers Summit 2010 TechVisor.JP
  • 15. 事例: Salesforce.com Chatter Saleforce.comが提供するTwitterライクな企 業内コラボレーション機能 Saleforce.comアプリケーション基盤のセキュリティ機能と統合 Saleforce.comアプリケーションのイベントとユーザー間の対話と を統合(アプリケーションが「つぶやく」) 15 Developers Summit 2010 TechVisor.JP
  • 16. 4大クラウド - プラットフォームとしての比較 Amazon Google Microsoft SFDC 汎用性 ラーニングカー ブ(1:難しい-5: 易しい) エンタープライズ 適合性 NoSQL度 スケーラビリティ 典型的利用シナ • 現時点では • Google • オンプレミ • 比較的シンプ リオ 最も汎用性 Appsの補助 ス.NETアプリ ルなWebア が高いクラ 的アプリケー ケーションの プリケーショ ウド・プラット ション クラウド化 ン(社内外) フォーム • 大規模なコラ • 将来的には の短期立ち ボレーション、 Amazonに 上げ メディア共有 肉薄? 16 Developers Summit 2010 TechVisor.JP
  • 17. クラウドがもたらすパラダイムシフト インフラ管理を(ほとんど)気にしなくて良くなる →インフラのお守りビジネスでクライアントから収益を得る ことが困難に → 「箱売りビジネス」がますます困難に スピード最優先のビジネスモデルがますます重要に → 小規模SIや「ノマド」ワーカーが有利な立場に データやアプリケーションの場所と利用者の場所の結び 付が自由に →「ノマド」ワーカーの新たな機会 →オフショアとの競合がますます過激に クラウドは新しいシフトをもたらしているというよりは、既に起 きているシフトをさらに加速していると言うべき 17 Developers Summit 2010 TechVisor.JP
  • 19. コアvsコンテキスト コア: 差別化要素 コンテキスト: コア以外 コア=コア・ビジネスとは限らない コア=ミッション・クリティカルとは限らない ある時点でのコアは時間の経過と共にコンテキスト となっていく 企業も人もリソースの何割かをコアに割り振るべき 思考実験: • 石川遼の年収約5億円のうち、ゴルフ賞金は1億円、スポン サーからの収入は4億円 • 石川遼にとっての「コア」とは? • 石川遼は自分のリソース(時間)をどのように配分すべきか 19 Developers Summit 2010 TechVisor.JP
  • 20. コアとして追求すべき要素(例) ビジネス分析 ITとビジネスの橋渡し 戦略的データ活用 コミュニケーション・スキル グローバル・ソーシングにおけるブリッジSE 先進的テクノロジー 並列アルゴリズム(MapReduce、マルチスレッド等) NoSQLベース・システムのデザイン・スキル 水平スケール型システムの構築スキル テクノロジーをコアとして維持できる期間は短いが、プリンシ プル(規範・原則)やヒューマンスキルはより長期的にコアと しての地位を維持できる可能性が高い 20 Developers Summit 2010 TechVisor.JP
  • 21. まとめ クラウドとは進行中の重要メガトレンドの集合に キャッチーな名前を付けたもの 重要なのは「クラウド」そのものよりもその背後にあるメガトレンド クラウド普及は既に進行しているパラダイムシフト をさらに加速している 「わかっている人」にとっては大きなチャンス、「わかっていない人」に とっては大きなリスク エンジニア/デベロッパーとしてのコア(差別化要 素)を見つけ出し、自分のリソース(お金、時間、 体力)の一定割合をコアに向けよう クラウド関連テクノロジーは一定期間のコアになり得るが、より長期 的に大事なのはテクノロジーの裏にある規範とヒューマンスキル 21 Developers Summit 2010 TechVisor.JP