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水分特性曲線の回帰プログラム
‐ Fredlund and Xing モデルの実装 -
東洋大学 関 勝寿
第51回地盤工学研究発表会
2016年9月15日
岡山大学
SWRC Fit (Seki, 2007) の紹介
 水分特性曲線(水分保持曲線)の実測値を
モデルに非線形回帰してパラメータを
推定するプログラム
 簡単に精度良い推定ができる
◦ 初期パラメータの設定は自動
◦ ウェブからワンクリックで計算
 多くの利用実績がある
 論文の被引用件数 86件 (Google Scholar Citations)
 様々な土壌に対する汎用性
 高い利便性
 プログラムのコードを公開している
SWRC Fit の構成
ウェブインターフェイス
• Perl 言語の CGI スクリプト
• ウェブブラウザから実行
オフライン版
• 数値計算言語 GNU Octave
• ダウンロードして実行
• ウェブ版よりも多様な設定で計算可能
水分特性曲線のモデル
 4つの単峰性モデル (間隙径分布が1つのピーク)
◦ BCモデル (Brooks and Corey, 1964)
◦ VGモデル (van Genuchten, 1980)
◦ LNモデル (Kosugi, 1996)
◦ FXモデル (Fredlund and Xing, 1994) [New]
 アメリカの地盤工学者からのメールによるリクエスト
 修正関数 C(h) はオフライン版で実装
 2つの二峰性モデル(略)
 
  
m
nrsr
ahe








/ln
1

土壌水分特性曲線の非線形回帰プログラム - SWRC Fit -
ウェブインターフェイス オフライン版
使い方はホームページの
ユーザーマニュアルを参照
SWRC Fit 検索
入力画面
①Excel からデータを
コピーペースト
赤池情報量規準(AIC)
AIC = n ln(RSS/n) + 2k
n: 標本サイズ
RSS: 残差2乗和
k: パラメータの数
②計算ボタンをクリック
結果表示①
結果表示②
計算アルゴリズム
入力データ
① BCモデル
② VGモデル ③ LNモデル
④ FXモデル
R2比較
パラメータ変換
初期パラメータ
推定パラメータ
非線形回帰
Levemberg-Marquardt 法
パラメータ変換方法は要旨に記載
初期値を設定しやすいモデルからはじめて、順次複雑なモデルへ
フィッティング力の検証
表1. UNSODA データベースの700 個の
土壌水分特性データにおける
R2>0.98 となるデータの割合
モデルの優劣比較ではない(自由度が異なる)
モデル θr 変数 θr = 0
BC 63.4% 53.3%
VG 80.0% 55.0%
LN 86.6% 49.3%
FX 90.3% 86.1%
モデルの比較
表2. UNSODA データベースの700 個の
土壌水分特性データのフィッティングで
赤池情報量規準(AIC)によって最適なモデルと
されたデータの数
モデル θr 変数 θr = 0
BC 45 46
VG 53 66
LN 56 102
FX 156 176
FXモデルが特に有効な例
図1. デンマークの砂質土 (UNSODA 3332) (Jacobsen, 1989)
FXモデル a=18.2, m=0.697, n=8.69 (mが小さい)
間隙径の対数確率密度分布の歪度が大きい(2.5)
歪度を適合させる自由度がVGモデルにはない
結論
 水分特性曲線の非線形回帰プログラム
SWRC Fit (http://swrcfit.sourceforge.net/)
に、地盤工学の分野でよく使われる
Fredlund and Xing (1994) のモデルを実
装した。
 UNSODAデータベースの700個のデータ
に対して、全体の半分近くの土壌試料で
他の3モデルと比較してFredlund and
Xing (1994) のモデルが最適であるとさ
れた。
 ぜひSWRC Fitを使ってみてください。
学会発表後の質疑応答より
(質問)検証に使われた UNSODA データベースは海外の土壌
のデータが多い。日本の土壌ではどうなのか?
(回答)日本の火山灰性土壌は、団粒が発達していて間隙径分
布が2つのピークを持つことがある。その時には、今回の発表
では省略した二峰性モデルを使う。SWRC Fit では、二峰性モ
デルを使ったフィッティングもできる。
二峰性モデルによる
フィッティングの例
Silty loam
Switzerland
Richard et al. (1983)
UNSODA 2760

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