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アナフィラキシー 講義用
- 1. アナフィラキシー
2011. 11. 30 宇治徳洲会病院 朝レク
総合診療科 高岸勝繁
- 3. Anaphylaxisとは?
• 統一された定義は無し
– 急性の1つ以上の臓器症状を来すアレルギー反応
24hr以上は持続しない反応
(Canadian Pediatric Surveillance Program)
– “Severe, life-threatening, generalized
or systemic hypersensitivity reaction”
(AAGBI guideline; Anaesthesia 2009;64:199-221)
• Allergic, non-allergic Anaphylaxisの2種に分類され
– 臨床的にそれら2つを判別するのは不可能
– Allergic; 免疫複合体によるIgE, IgG, 補体の活性化に起因
– Non-Allergic; “Anaphylactoid”と呼び, IgEが関与しない反応を呼ぶ
– どちらにしろ, 急性期治療方法, 方針は同じであり,
厳密に区別をする必要はないとする動きもあり.
- 4. アナフィラキシーの機序
Allergic Other
Allergic 免疫活性(IVIG etc) Non-allergic
機序 IgE/FceRI 補体系活性 運動, 寒冷
トリガー 虫刺傷 凝固系活性 薬剤(オピオイド)
食物, 薬剤, その他 自己免疫性 その他
Key
Cells Mast cell Basophils
ヒスタミン Chymase プロスタグランジン ロイコトリエン
Mediators
トリプターゼ カルボキシペプチダーゼ PAF その他
皮膚 呼吸器 消化器 心血管系 CNS
掻痒感 咳嗽, 嗄声 悪心 めまい 頭痛
Organs 低血圧
紅潮 呼吸苦 嘔吐
Symptoms
蕁麻疹 Stridor 下痢 Shock
Wheeze 失禁
血管浮腫 腹痛 Kounis Syn
J Allergy Clin Immunol 2008;121:S402-7
- 5. Anaphylaxis Arch Intern Med 2001;161:15-21
J Allergy Clin Immunol 2009;124:625-36
• ここ20年間増加傾向にあり, 1980年代は21/100 000pt-yrであったのが,
– 1990年代は49.8/100 000pt-yrまで増加
– 0-19歳で70/100 000pt-yrと若年で多い
– 若年では食物が原因であることが多く, 中高年では薬品, 虫が多い
• 食物によるAnaphylaxisは一般人口の1-2%を占めるとされる
– 実際はそれよりも少なく, 0.0004%が毎年食物による
重度のアレルギー, Anaphylactic reactionを生じる
– ピーナッツ, 木の実, 魚介類, 牛乳, 卵, 大豆, 小麦
- 6. Arch Intern Med 2001;161:15-21
J Allergy Clin Immunol 2009;124:625-36
• 薬剤性では, 抗生剤, 造影剤, オピオイド, NSAIDによるものが多い
– 入院患者の2-3%で薬剤性アレルギーを生じる
• Penicillin, 造影剤では1/5000でアナフィラキシーを生じる
アナフィラキシーによる死亡の主な原因の一つである
– PCでの致命的なアナフィラキシーは全人口の0.002%.
非致死的を含めると0.7-10%ともされる
• 造影剤によるアナフィラキシーは0.22-1%で生じる
– Lower-osmolar RCMではアナフィラキシーのRiskは低下する
(0.004-0.04% vs 0.04-0.22% in high-osmolar)
(The British Journal of Radiology 2005;78:686-93)
– 造影剤に対するアレルギー歴(+) 16-44%が再発のRisk
– 造影剤アレルギーは, Lower-osmolar RCM,
抗ヒスタミン, ステロイド投与にてRiskを軽減できる(後述)
- 7. • Latexアレルギーは近年増加傾向にあり
– 一般人口の1-6%, 医療従事者8-17%
– 二分脊椎患者の67%がLatexアレルギーとの報告もあり
(J Allergy Clin Immunol 1994;93:813-6)
– 発症初期は皮膚炎症状 暴露を繰り返すと重症化する
• 昆虫刺症によるアレルギー反応
– 0.5%-5%を占める
– また, 再発率も30-60%高いため, Immunotherapy, エピペンは必須
– Immunotherapy施行患者ではRiskは3%と改善するが,
6%は治療自体でアレルギー反応を来す
- 8. 数字のまとめ
Subtype 頻度 in US Anaphylaxis Risk 死亡数 in US
/ 1,000,000
食物 1-2% 2.7-5.4 100
薬剤
Penicillin 0.7-10% 1.9-27.2 400
造影剤 0.22-1% 0.022-0.1 900
Latex 1-6% 2.7-16.3 3
虫刺症 0.5-5% 1.4-13.6 40-100
合計 8.7-62.6 1443-1503
- 10. アナフィラキシーの症状
症状 頻度 † 症状 Allergic Non-allergic
皮膚症状 蕁麻疹 90% 88% 心血管系
紅潮 50% 46% 低血圧 74.7% 33.9%
掻痒感のみ 4.5% 循環不全 50.8% 11.1%
呼吸器症状 呼吸困難, 喘鳴 45-50% 47% 徐脈 1.3% 0.7%
上気道浮腫 50-60% 56% 心停止 5.9% ―
鼻炎 16% 気管攣縮 39.8% 19.2%
循環障害 めまい, 低血圧 10-45% 33% 皮膚症状 71.9% 93.7%
胸痛 6% 血管浮腫 12.3% 7.7%
消化器症状 嘔吐, 下痢, 腹痛 25-30% 30% Anaesthesia 2009;64:199-221
中枢神経 痙攣, 頭痛 10-15% 15%, 1.5%
† AFP 2003;68:1325-32
• 蕁麻疹が最多で>90%で認める
• 喉頭浮腫, 気道閉塞は60%程度であるが, 死亡の主な原因となる
• 腸管浮腫に伴う嘔吐, 下痢, 腹痛も重要な情報
- 12. アナフィラキシーの治療
• エピネフリン(1:1000) IM 大 四頭筋
– 成人 0.3-0.5mg. 小児 0.01mg/kg(Max 0.3mg, 1:1000) 5-15min毎
– 低血圧あれば 1:10000製剤のDIVも可
• H1 blocker, H2 blockerの併用
– ジフェンヒドラミン 20-40mg DIV (小児1mg/kg)
– 塩酸ラニチジン 50mg DIV (小児1mg/kg)
• ステロイド投与
– 成人; Dexamethasone 6-10mg IV, IM, PO
Methylprednisolone 125mg IV, Prednisone 50mg PO
– 小児; Methylprednisolone 1-2mg/kg IV
• 数時間経過後に再度症状増悪することがあり(2相性反応)
経過観察を忘れない, 入院管理となる
- 13. • エピネフリンはSQ or IM?
– 1:1000製剤0.3mLを各部位にSC, IM投与し, ピーク濃度を比較
ルート EpiPen IM Epi IM Epi IM Epi SC NS IM NS SC
部位 大 大 上腕 上腕 上腕 上腕
Cmax(pg/mL) 12,222±3829 9722±4801 1821±426 2877±567 1458±444 1495±524
– 筋肉量 血流量となり,
大 でIMするのがBest.
– 臀部は脂肪が厚いので不適
- 14. • H1 + H2 Blockerの併用に関して
– 皮膚のHistamin-RはH1が85%, H2が15%
– Diphenhydramine + 【Ranitidine vs Placebo】で比較
(RCT, DB, N=91, 投与後1-2hrでの症状を比較)(Ann Emerg Med 2000;36:462-8)
– 対象患者は食物摂取, 薬剤暴露後に
皮膚症状, 気道症状, 血管浮腫が出現した成人患者(Shockではない)
– 治療開始2hr後の皮疹+血管浮腫残存 29% vs 53% RD 24%[5-44]
呼吸数, 血圧は有意差なし. 心拍数はRanitidine群 > Placeboとなる
– Evidenceが不十分として, 2008年AAGBI Guidelineでは併用を推奨されていない
(Anaesthesia 2009;64:199-221)(Association of Anaesthetists of Great Britain and Ireland)
– ERで, 蕁麻疹がひどい人には使用する価値があるかもしれない
• エピネフリン IM x2でも改善しない場合
– サルブタモール吸入; 0.5mL(2.5mg) (小児0.1-0.3mL)
効果が速く, 十分量の使用でアミノフィリンと同等の効果
– グルカゴン DIV 5-15mcg/min
β受容体を介さず, 陽性変力作用, 変時作用を示す(cAMP活性化)
β-Blocker使用中の患者でも有効
- 15. 2相性反応
• Late-phase allergic response
– 持続的吸収によるアレルギー反応と, 2相性反応による機序
• 2相性反応 (Immunol Allergy Clin N Am 2007;27:309-26)
– アナフィラキシーの1-20%に合併し, 重症のアレルギー反応
– 90%が初期反応改善後, 4-12hr以内に生じるが,
1-78hrで起こりえるため、24hrの経過観察以降も生じる可能性あり
– 1/3が初発よりも重症, 1/3が軽症, 1/3が同等(CMAJ 2003;169:307-12)
– Epinephrine, Steroidの使用の有無,
初期アナフィラキシー症状は発症に関与しない
– 一部StudyではSteroidが2相性反応を抑制するとの記載があるも,
それを証明したRCT, Review, Cohortは無く, あくまでも可能性.
– 2相性反応(-)群 vs (+)群ではEpinephrine投与までの時間が
48min vs 190min 早期のEpinephrine投与が予防に関連?
(Pediatrics 2000;106:762-66)
- 16. 症例; 74歳男性
• 3日前より排尿時痛、頻尿あり,
当日に泌尿器科外来を受診.
• 尿路感染症との診断で, PIPC/TAZを外来にてDIV.
• DIVが開始すると不快感, 胸部絞扼感を自覚.
• この患者は実は開業医の医師.
• 『アナフラキシーだっ!!』
と叫んで、その後意識消失. → CPAに.
• 皮疹は目立たず.
• CPR開始されながらERへ搬送.
初期波形はVFだが, 結局救命できず. 16
- 17. アナフィラキシーによる死亡
• アナフィラキシーによる死亡例はアメリカでも年間1500程度
– 基本的には稀(<0.01%)と考えるべきであるが,
特にHigh RiskといえるのはPenicillinと造影剤(87%)によるもの.
• アナフィラキシーによる死亡例130例中, 56例を病理解剖したStudy
(J of Clin Pathol 2000;53:273-76)(28.5%が食物, 24.6%が動物毒, 46.2%が医原性)
– 臨床, 解剖所見 皮膚所見は乏しく, 肺水腫が多い傾向にある
所見 動物毒(19) 食物(16) 薬剤(21) Total(56)
Anaphylaxis発症までの時間 20min(5-120) 20min(13-53) 5min(1-120) 20min(1-127)
Immediate death 84% 81% 48% 70%
皮膚紅斑, 浮腫 5.3% 12.5% 0% 5.4%
上気道浮腫 32% 62.5% 33% 41%
気管支閉塞 37% 31% 14% 27%
点状出血 21% 31% 4.8% 18%
肺水腫 74% 56% 86% 71%
– 23/56(41%)が肉眼的にAnaphylaxisを示唆する所見を認めなかった.
– このStudyでは心筋虚血に関しては評価されていない.
- 18. Kounis Syndrome Cardiol J 2008;15:220-5
• アナフィラキシーに伴う, ヒスタミンなどサイトカインの影響で
冠動脈が縮窄し, 虚血性心疾患を伴う病態.
– 心筋, 冠動脈内皮にあるMast cellの関与が強い.
(動脈硬化部位にはMast cellの数も多い)
• Type I; 冠動脈造影にて狭窄を認めないタイプ
内皮細胞の傷害を認め, ヒスタミンにより血管攣縮を来す
• Type II; 造影にて動脈硬化像が認められる
血管収縮によりアテロームが破裂し, 冠動脈閉塞を来す
• Anaphylaxisによる血圧低下, 心収縮力低下, 徐脈が起こり,
冠動脈血流低下 心筋虚血 といった機序もあるが,
厳密にはKounis Syndromeに含まれない.(実際は重複がほとんど)
– Anaphylaxisによる心機能低下には,
Epinephrine IMは効果が乏しいとの報告が多く,
持続点滴; 1mg/100mlを30-100ml/hrでの点滴を推奨するものもある
(Current Opinion in Allergy and Clinical Immunology 2005;5:359-64)
- 19. 造影剤アレルギー
• 造影剤によるアナフィラキシーは0.22-1%で生じる
– 造影剤に対するアレルギー歴(+) 16-44%が再発のRisk
– Asthma, β阻害薬内服, 心疾患患者ではRisk↑
OR* OR†
Asthma 4.54[1.03-20.05] 8.74[2.36-32.35]
*Ann Intern Med 1991;115:270-6
β阻害薬内服 2.67[1.01-7.05] 3.73[1.18-11.75] †Arch Intern Med 1993;153:2033-40
(Case-control Study)
心血管疾患 NA 7.71[1.04-57.23]
– Lower-osmolar RCMではアナフィラキシーのRiskは低下する
Adverse Ionic CM Nonionic OR
Reaction (n=169284) (n=168363)
全副作用 12.66% 3.13% 0.22[0.22-0.23]
(Radiology 1991;178:363-7) Severe 0.22% 0.04% 0.19[0.15-0.24]
Very Severe 0.04% 0.004% 0.10[0.05-0.19]
– 造影剤アレルギーは, Lower-osmolar RCM,
抗ヒスタミン, ステロイド投与にてRiskを軽減できる
- 20. • 造影検査前の少量造影剤投与の意味は無し
– Ionic CMのPretestの感度 3.7%[1.5-5.8], PPV 1.2%[0.5-1.8]
– Nonionicでは感度 0.0%[0.0-0.5], PPV 0.0%[0.0-6.4]
– まったくアレルギー反応を予測できるものではなく, 行う価値無し
(Radiology 1991;178:363-7, 日本国内でのStudy)
• CMに対するアレルギーの病歴も
アナフィラキシーを予測するものではない
- 21. 造影剤アレルギーを予防してみる
• 造影剤アレルギー予防に関するMeta-analysis (BMJ 2006;333:675-80)
– 造影剤アレルギー歴がない患者を対象(3 trials), 制限なし(6 trials)
– H1 antihistamines, Corticosteroids, H1 & H2 combination
– Outcome; Outcome Drug Premedi Control OR NNT
低血圧 ステロイド 0.0% 0.4% 0.14[0.01-1.30] ―
呼吸症状 抗H1ブロッカー 1.0% 2.3% 0.46[0.15-1.39] ―
呼吸症状 ステロイド 0.4% 1.4% 0.31[0.11-0.88] 100
皮膚症状 抗H1ブロッカー 2.0% 6.1% 0.36[0.22-0.60] 24
皮膚症状 ステロイド 0.6% 2.0% 0.36[0.15-0.87] 71
– Methylprednisolone 2x 32mg(2hr or/and 6-24hr前に投与)と,
症状の組み合わせ, 重症度で評価した表
Grade MP 2x32mg Control OR NNT
1 Single Episode; 嘔吐, 悪心, 鼻汁, めまい 2.8% 4.1% 0.62[0.46-0.98] 77
2 >1回; じん麻疹, 発赤, 嘔吐, 発熱, 悪寒 2.6% 2.9% 0.80[0.61-1.04] 333
Shock, 気道狭窄, 喉頭攣縮, 喉頭浮腫, 意識低下,
3 0.2% 0.9% 0.28[0.13-0.60] 143
痙攣, 血圧変動, 不整脈, 狭心症, 血管浮腫, 肺水腫
致命的なアレルギー反応は<0.5%のみ
- 22. 運動誘発性アレルギー
• アナフィラキシーの5%を占める
– アナフィラキシー601名の解析;
Food 22%
Medication 11%
Exercise 5%
(Am Allergy Asthma Immunol 2006;97:39-43)
• 発作時, 表皮内Mast Cellの脱顆粒を認める
– Cholinergic urticariaでは, 血管壁のNeu, Mo, Eo浸潤を認め
– 血中ヒスタミン値上昇も認められる
Am Fam Physician 2001;64:1367-72
Mayo Clin Proc 1997;72:140-147
- 23. • 3 typeに分類; Cholinergic urticaria, Classic, Variant
– Cholinergic Urticaria;
誘因; 運動, 感情ストレス, Passive body warming
皮疹; 2-5mmの点状丘疹, 周囲の紅斑
10-20cmの掻痒感を伴う紅斑の場合もあり
持続; 15-20min持続し, その後消失, 再発もあり得る
その他; 血管浮腫, Vital不安定, 気道閉塞は稀
– Classic Exercise-Induced Anaphylaxis
誘因; 運動のみ(ジョギングが多い),
皮疹; 全身性の掻痒感, じん麻疹
持続; 運動終了後30min-4hr持続, 24hr以上持続も
その他; Anaphylaxis症状(気道, 循環, 神経, 消化器症状)
– Variant Exercise-Induced Anaphylaxis 10%程度
誘因; 運動のみ
皮疹; Cholinergic Urticaria様で, 血中ヒスタミン濃度も上昇
違いは, Anaphylaxisへ進展することと, 誘因が運動のみ
Am Fam Physician 2001;64:1367-72
Mayo Clin Proc 1997;72:140-147
- 24. その他
• Familial Exercise-Induced Anaphylaxis
– Case Report程度の稀な病態
– HLA A3-B8-DR3を共通に持つ血縁者に生じたAnaphylaxis
• Food-Dependent, Exercise-Induced Anaphylaxis
– 特異的な食物の摂取 + 運動にて起こる病態
– 食物のPrick skin testは通常陽性となることが多い
– 食事のみ、運動のみでは生じない
- 25. 診断検査
• 診断はHistoryが基本
• Passive Rewarming Test
– 深部体温を0.5-1.5℃上昇させる
Cholinergic urticariaでは皮疹の有無にかかわらず,
血中Histamin値の上昇を認める
Exercise-Induced Anaphylaxisでは上昇認めない
• 運動負荷試験(トレッドミル)
– 感度は良くない 陰性でも否定できない
Am Fam Physician 2001;64:1367-72
Mayo Clin Proc 1997;72:140-147
- 26. 治療
• 運動制限とEpi-penの使用, 教育が基本
– 抗ヒスタミン剤, 抗アレルギー剤は一部の症例で効果を示す
Am Fam Physician 2001;64:1367-72
Mayo Clin Proc 1997;72:140-147