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- 3. 研究の背景と目的 ■ 限界化する社会 中山間地域 担い手不足 ソーシャル・キャピタルの視点から ■ 無縁社会 家族(イエ)のバラバラ化 コミュニティのバラバラ化 労働力の供給源 農林水産物の生産 これまで 人口減少 高齢化 現在 問題の複雑化 今後 ■ 目的 「共食」をキーワードに 地域社会の現状について確認 Ⅰ 家庭内共食->幸福感・誇り Ⅱ 共食を加えた分析モデルの提示
- 4. 研究の背景と目的 ■ ソーシャル・キャピタル(以下「 SC 」と省略)とは 協調的行動を容易にすることにより社会の効率を改善しうる 信頼 、 規範 、 ネットワーク のような社会的組織の特徴 ( Putnam ) 一般化された互酬関係の規範と 市民的活動参加 のネットワークは、離反しようというインセンティブを低め、不確実性を削減し、そして将来へ向けての協力のモデルを提供することによって社会的信頼と協力とを促進する ( Putnam ) ■ SC の類型 結合型(ボンディング) SC 橋渡し型(ブリッジング) SC 特定集団内における仲間的結びつき 集団外の異質な人びととの結びつき
- 5. 研究の背景と目的 ■ 分析モデル 社会関係資本 ( Social Capital ) 信頼 公式的参加 ネットワーク 互酬性の規範 共食(非公式的参加) 5 つの指標を得点化->評価モデルへの組み込み
- 6. なぜ共食か? ■ 共食とは 「神事の儀礼的な意味であった『共食』」(表、 2010 ) 「年一度の氏神祭りに 同じ火で炊いた食物を分け合って食べる 神と村民と、そして村民相互の共食の形」(瀬川、 1976 ) 従来:地域としての「共食」 子どもの個食/孤食 高齢者の個食/孤食 昨今:家族の「共食」
- 10. 先行研究の整理 ■ 関連諸分野の現状 ソーシャル・ キャピタル 共食 幸福感 現状 応用分野の広がり ↓ ○ 経済活動領域 ○ ガバナンス領域 ○ 健全性の領域 ○ 健康・福祉領域 研究の隆盛 ↓ 集落としての共食 ↓ 家族内共食 ↓ ○ 共食がもたらす母親のネットワーク研究(松島) ブータン王国による「幸福感」の政策目標化 ↓ ○ 荒川区民総幸福度( GAH) ○ 「県民幸福度の最大化」の議論(静岡県) ○ 幸福度調査(鳩山政権)
- 12. 弥栄らぼ(浜田市) ■ 弥栄らぼ概要 設立時期 : 2007 (平成 19 )年度設立 契機 :国の調査事業のモデル地区に指定されたことを受け、 地域内で活動する組織が必要となったため 構成 :地元住民、中山間地域研究 C 研究員他 約 10 名 趣旨・目的 : ①持続的な生活スタイルの追求 ②地域資源の活用・開発・流通 ③エリア外との連携・交流の促進を実践 その他特徴 :地域外から 2 名の若者が住み込み、住民と協働で 活動に取り組む( 集落支援員等の先駆け )
- 13. 弥栄らぼ(浜田市) ■ 結合型 SC の減少と橋渡し型 SC の醸成 集落 地域として I ターン者の受け入れ推進 よそ者への抵抗:小(筆者主観) 橋渡し型 SC の醸成 集落の食事会の減少 集落内部の凝集性:小(筆者主観) 結合型 SC の減少 I ターン者コミュニティ内 受け皿企業等における凝集性:高 I ターン者の集団の結合型 SC 醸成 I ターン者コミュニティ
- 14. 設立時期 : 2008 (平成 20 )年度設立 契機 :弥栄らぼの成果等を受け、島根県内 5 市町をモデル地区とし、 同様の地域自治組織として設立 (県中山間地域コミュニティ再生重点プロジェクト事業) 構成 :地元住民約 30 名 趣旨・目的 : ①新たな地域運営の仕組みを提示する ②住民の自治意識高揚 その他特徴 : 地域マネージャーと呼ばれる人材を投入 、地域内外を “繋ぐ”役割が期待される @歩夢(隠岐の島町) ■ @歩夢(あっとふーむ)概要
- 15. @歩夢(隠岐の島町) ■ 結合型/橋渡し型の同時醸成 隠岐ケース @歩夢が取り組む「ふるさと小包便」の枠組み 活動を通じて住民の「参加」促進 島外住民との「つながり」再構築 地域内外での「信頼」構築・向上 「支え合い」の仕組みづくり @歩夢 商品提供 還元・対価 地域サービス 小包便 防災マップやイベント、講座など地域に役だつ事業 島の物産や情報、思い出をお届けする交流事業 行政 (隠岐の島町・島根県) 都市等 対価 商品 地 域 住 民 活用 支援等 相談・連携
- 18. インタビュー調査 参加 誇り 責任 ・ 祭りに参加 するという極めて濃い地域民族としての活動 ・粛々と 繋げていってることが地区の誇り 祭りもしんどいし 止めっかあ、っていうことに簡単にならない いろんな人がエネルギーを持っていろんな 活動が生まれてくる かなってことを期待してた やっぱり 地元のプライドづくり (地域よりも) 隠岐全体を考えて やらないとだめじゃないか お客さんが楽しんでもらえる環境を隠岐につくりたいと思ってるんです 地区総出 でやらないとできない(伝統行事) ふるさとというものはこういうもんだったということをしっかりと認識して島から離れてちょうだい
- 19. 2009 アンケート調査 ■ 家族・地域社会と公共意識 【概要】 ・ 時 期 : 2009 年 12 月に実施 ・ 対 象 : 隠岐の島町 の 30 ~ 40 歳代の 男女 600 名 神戸市東灘区 の 30 ~ 40 歳代の 男女 1,000 名 ・ 配布・回収法 :郵送法 ・ 回収率 :隠岐の島町 275 ( 45.8 %) 神戸市東灘区 405 票( 40.5 %) ・ 分 析 :ソーシャル・キャピタルに関わる項目を 因子分析にかけ、因子を抽出
- 21. 2009 アンケート調査 ■ 家族・地域社会と公共意識 ・隠岐の島と神戸との比較では 「信頼」の差は大きくない ・地域活動への参加に地域の間の 差が見られる 隠岐の島の SC は「参加」に特徴 づけられている、と考えられる 高 高 低
- 22. 2009 アンケート調査 ■ 家族・地域社会と公共意識 ・隠岐と神戸では「地域活動参加」 に大きな差がある ・隠岐では家族の絆、共食の頻度 が高いほど参加と信頼が高い、 という傾向があると思われる ・しかしその程度は小さい 隠岐の島で詳細に把握するために 2010 年に追加調査を実施した
- 23. 2010 アンケート調査 ■ 共食関係から見た地域力 【概要】 ・ 時 期 : 2010 年 12 月に実施 ・ 対 象 :島根県隠岐郡隠岐の島町の布施地区 3 区と 武良地区 3 区に住む 18 歳以上の男女 421 人 。 ・ 配布・回収法 :区長・隣保長による訪問留置 ・ 回収率 : 228 票( 54.2 %) ソーシャル・キャピタルに関わる項目を因子分析にかけたところ 5 つの因子が抽出された
- 25. 2010 アンケート調査 ■ 地域における「共食」と SC 指標との関係 相関 逆相関 信頼との関係において逆相関となっている -> 「信頼」との関係に留意することが必要
- 29. 2010 アンケート調査 ■ 共食を含めてみた SC の賦存状況(年齢別) 10 代・・・「参加」と「ネットワーク」得点が低い。「共食」得点は高い 60 ・ 70 代・・・ 0 点付近 80 歳以上・・・「参加」と「信頼」「共食」得点が高い
- 30. 2010 アンケート調査 ■ 共食を含めてみた SC の賦存状況(地区別) 地区別(布施/武良) ○ 差は相対的 武良は「参加」と「信頼」 がやや高い得点 布施は「ネットワーク」と 「互酬性」がやや高い 両地区とも「共食」得点 は同程度
- 35. 提案 ■ 具体的な共食機会の創出 宮崎県えびの市の「モエ」 同窓生で気の合うもの同士、職場の仲間、スポ少のお母さんなど様々な形の 「モエ」が存在 特徴 会食の存在: 1 ヶ月~ 2 ヶ月に 1 回のペース 効果 様々な悩みや生活課題の相談による安心感 「モエ」の人たちが一番信頼できる 徳野貞雄( 2010 )
Hinweis der Redaktion
- 離島集落における「共食」の視点からみたソーシャル・キャピタルの構造 島根県隠岐郡隠岐の島町を事例に というテーマで地域産業人育成コースの白石から発表させていただきます。
- 早速、序論として、まず研究の背景と目的および研究の方法についてです。
- ここ島根県は県土の約85%が、中山間地域に指定される、条件不利地域です。 この中山間地域は、■これまで労働力の供給源、農林水産物の生産という大きく二つの役割を担ってきました。 しかし現在は■人口減少と高齢化二つの問題が進行し、これらが絡み合うことで問題はさらに複雑化していくことが懸念されます。 つまり、■地域における担い手不足という根本的な問題が拡大していくのではないか、ということです。 ここまでが「地域」に関する問題意識、背景です。 次に、「家族」に関する背景についてふれると、昨今「無縁社会」という言葉が非常に危機感を持って語られています。■ 時間の都合で詳細は割愛しますが、無縁社会とは家族すなわちイエのバラバラ化、そして人びとの結びつきの希薄化すなわち コミュニティのバラバラ化を示していると考えます。 地域コミュニティの結びつきが弱くなるという流れと、家族においても家族の結びつきが弱くなっているという 新たな流れが重なる点が現在ではないかと考えています。 こうした状況の中、「共食」をキーワードに地域社会の現場について、■ソーシャル・キャピタルの視点から確認してみよう、ということが目的となっております。 とくに、家庭内における共食関係と家族の「幸福感」や「地域への誇り」醸成との関係、 地域内における共食をソーシャル・キャピタルのひとつの指標として組み込んだモデルの提示、の2点を主要な目的としています。
- 次に、ソーシャル・キャピタルとは、ということを押さえてから話を進めたいと思います。 ソーシャル・キャピタルの研究者であるロバートパットナムはソーシャル・キャピタルを次のように定義し、「信頼」「規範」「ネットワーク」 といったキーワードを示しています。 またパットナムは『 Making Democracy Work 』の中で、「参加」の重要性も指摘しています。 ■ なお、ソーシャル・キャピタルには大きく二つの類型があり、ひとつは特定集団内における仲間的な結びつきである、 結合型 SC と、集団の外側に存在する異質な人びととの結びつきである橋渡し型 SC がよく知られています。
- ソーシャル・キャピタルを構成する指標として一般的に用いられるのがパットナムが示した「信頼」「参加」「ネットワーク」「互酬性の規範」の4つですが、 本研究においては、これらに「共食」というひとつの現象を取り入れることができないかということで検討してまいります。■ ただし、共食は他の指標とは次元が違うということは認識した上で、地域づくりの現場における判断材料としての有効性に着目し、 あえてこのような形のモデルを検討してみました。
- 次に、ソーシャル・キャピタルを把握するのに、なぜ今回「共食」に着目したのかということについてご説明します。 その前に、共食というあまり聞きなれないワードについて簡単に押さえておきますと、 表(おもて)、瀬川によれば、共食とはもともとは「神事」にまつわる行為で、同じ窯の火で炊いた食物を分け合って食べるということになります。 この共食は、瀬川の「村民相互」という表現があるように、集落内における共食を指していると言えるでしょう。 しかし、近年は共食の概念も広がってきており、集落としての共食よりも、家族に関する文脈での研究が盛んで とくに、子どもや高齢者の「こしょく」に関する研究が主流となっています。
- もともと、集落住民の間にあった共食が今では家族内における共食へと認識が変化しています。 ではなぜ今共食を持ち出したのかというと、単純なきっかけで、後述する弥栄に業務として関わっているときに、 集落活動が活発かどうかということが集落としての共食機会の有無あるいは回数で測定できそうだと感じたためです。 もう少し具体的にいえば、行政から見ると「元気で活発」だと認識されている、 集落が最近では実はそうではなかった、恒例だった共食イベントも開催されなくなっているという状況がありました。 そこから、信頼や参加、規範といった意識の側面からソーシャル・キャピタルを捉えることも重要ですが、 もっと直接的に見えるもの、本論文では共食機会を指標と扱うことで生々しい現状が切り取れないかということから発想したものです。
- 論文の構成はこのようになっております。 今序論として研究の背景と目的および方法を確認しました。 以下、ソーシャル・キャピタル、共食、幸福感に関する先行研究を整理した上で 3 章 参与観察において、新たなタイプの地域自治組織の登場と参与観察結果をまとめています。 参与観察の結果を踏まえ、 4 章ではインタビュー調査およびアンケート調査を実施し、 隠岐の島の SC の賦存状況の把握に努めました。 5 章で一定の結論を示し、 6 章で所属コースの趣旨も踏まえ、簡単ですが提案をさせていただきます。
- では、先行研究について簡単に整理していきます。
- ソーシャル・キャピタル、共食、幸福感に関する現状について整理します。 ソーシャル・キャピタルについては、研究対象の分野が拡大しています。 共食については一部繰り返しになりますが、子どもや高齢者の「こしょく」に注目した家族内の共食へと移っていき、 その分析も主に対象者の「健康状態」やメンタルヘルスに関するものです。 そんななか松島が共食を通じた子育て期の母親のネットワークに関する研究を行い、共食を通じた、母親の 相談ネットワークの存在とその有効性を示しています。 幸福感については、近年注目を集めている大きな要因は、ブータン王国がきわめて主観的だと思われる「幸福感」を 国家の政策目標に据えたことから始まります。 それが広がり、鳩山政権下で幸福度調査が行われたり、東京都荒川区や静岡県などでも同様の趣旨で 幸福度を政策目標に掲げる動きが始まっています。
- 第 3 章 地域振興組織への参与観察です。 ここでは浜田市の弥栄らぼと隠岐の島町の@歩夢について整理します。
- 弥栄らぼの概要はご覧のとおりです。 弥栄らぼの設立は 2007 年度の国土創発調査事業のモデル地区に弥栄自治区が指定されたことを契機としています。 現在の構成は、地元住民と中山間地域研究センターの研究員および県立大学学生などが主要なメンバーです。 趣旨・目的はご覧のとおりとなっており、特徴としては現在総務省や農水省が進めている、農山村への人材投入の先駆けとなった点であると言えます。
- 弥栄での体験と、弥栄らぼとして関わった経験をソーシャル・キャピタルに引き寄せて考えてみると、 弥栄の中には、結束型のソーシャル・キャピタルと橋渡し型のソーシャル・キャピタルが複雑に 醸成されていることがわかりました。 集落の中では、結束型のソーシャル・キャピタルが減退していることは明らかでした。 その象徴が、集落で盛んに行われてきた共食機会の減少に象徴されていると感じました。 他方、行政は過疎化に比較的早めに対応しており、平成 3 年頃から UI ターン促進を推進してきました。 その結果、弥栄自治区には I ターン者が比較的多く移り住んでおり、よそ者への抵抗感は他地域と比べるとあまり感じませんでした。 I ターン者の受け入れを通じて、橋渡し型のソーシャル・キャピタルが醸成されているのだろうと理解しています。 そして、もう一点面白いと思ったのは、 I ターン者のコミュニティです。■ 住民のよそ者に対する抵抗感が小さくなっているとはいえ、そうすんなりと入り込めるものでもないため、 I ターン者同士のコミュニティが形成されています。 そこでは、結合型 SC が醸成されているように感じました。 橋渡し型の役割を期待される I ターン者が自ら結合型のソーシャル・キャピタルを醸成しているという、 地域内外をつなぐ難しさが表れていると思います。
- 次に@歩夢についてです。組織概要はご覧のとおりです。 @歩夢は、弥栄らぼなどの成果を受け、島根県で始まった中山間地域コミュニティ再生重点プロジェクト事業のモデル地区となったことを受けて設立されました。 特徴は、地域マネージャーという人材を雇用し、地域内外を繋ぐ役割などを担っている点が挙げられます。
- @歩夢を SC に引き寄せて整理すると、@歩夢が志向しているのは、 橋渡し型と結合型を同時に醸成していこうとする取り組みであることがわかります。 まず橋渡し型 SC について説明すると、図の右側、黄緑色の部分との矢印の関係になります。 隠岐出身者の会との繋がりを構築し、商品・サービスの提供による精神的・経済的繋がりを持ち、 島外住民との交流促進を図っており、これは橋渡し型 SC を醸成しようという試みであると理解できます。 一方、島外住民との交流等によって得た収益を地域活動として還元していこうという計画があり、 これは、従来提供されてきた相互扶助の動きが現在はできなくなりつつあることを踏まえ、 これまでとは違う形で支援・サポートを提供していこうという、 結合型ソーシャル・キャピタルを醸成する試みであると理解できます。
- 弥栄らぼと@歩夢の活動から見えてくるものがいくつかあります。 ひとつは、橋渡し型を醸成しながらも、最終的な目的は地域内に向かっているということ。 その手段は、従来から考えられている「結合型」ともまた少し異なるように思われる。 それが 2 つめに見えてくるもので、その最終目的を果たすためには従来型の組織では対応できず、 らぼや@歩夢といった新しい組織が発生しているということです。 つまり、これまで住民が自発的、自然発生的に結合型 SC を醸成してきて、 さまざまな形で相互扶助の活動や人づきあいが確立されていたものが、高齢化等によって難しくなってきた。 そこで、新しい組織の必要性が高まり、実際に生まれつつある、という状況が、現場では起こっています。 そこで、現在の隠岐の島において、どんな SC が賦存しているのかを把握するために、以下で、都市部との比較を行い、 さらに SC の詳細を把握するためにアンケート調査を行っています。
- 2009 年に、隠岐の島の地域づくりのキーマンを対象にインタビュー調査を行いました。 その結果から代表的な意見を整理したものが表になっています。 キーワードとして、参加、誇り、責任といったものが出ていました。 例えば参加では、祭りに参加するという極めて濃い地域民族としての活動、という表現。 誇りに関しては伝統行事を粛々とつなげることが地区の誇りという言葉、地元のプライドづくりという言葉。 責任に関しては、止めるとは簡単にならない、隠岐全体、地区総出など個人よりも地域を優先する言葉が見られます。
- インタビュー調査の結果を受け、 2009 年 12 月にはアンケート調査を隠岐の島町と神戸市で行いました。 概要はご覧のとおりです。 隠岐の島と都市部との比較ということで神戸市を調査地としています。 得られた結果からソーシャル・キャピタルに関わる項目を因子分析にかけて因子を抽出しました。 その結果、地域活動参加にかかわる因子と信頼にかかわる因子が抽出されています。
- 字が小さくて見づらいかと思いますが、第 1 因子が参加、第 2 因子が信頼、第 3 因子が地域に対する誇り、第 4 因子が官公庁への信頼、第 5 因子がサークル活動への参加に関わる因子です。 累積寄与率は 54.0 %です。 ここでは、第 1 因子の参加と第 2 因子の信頼によって構成される平面上でどのような属性の人びとが位置づけられるのかを見ていきます。
- 図は、抽出された因子の平面上に、回答者の属性別因子得点平均をプロットしたものです。 グリーン系統のマークが隠岐、ピンク系統のマークが神戸のデータです。 隠岐と神戸を比較すると、信頼の差はそれほど大きくないことがわかります。 隠岐と神戸を分けるものはむしろ地域活動への参加という側面で特徴付けられます。
- この図は、同じ平面上に、夕食を家族そろって食べるという項目と家族が強い絆で結びついているという項目の 因子得点平均をプロットしたものです。 隠岐では、例外はありますが、やはり傾向としては地域活動参加得点が高く、神戸では低いという結果となっています。 これをもう少し詳細に把握するために、 2010 年に隠岐の島に絞って追加調査を行いました。
- 2010 年調査の概要はご覧のとおりです。 配布数 421 に対し、回収数は 228 で率にして 54.2 %です。 得られた結果から、ソーシャル・キャピタルに関わる項目を因子分析にかけ、 5 つの因子が抽出されました。
- 字が小さくて見づらいかと思いますが、第 1 因子が公式的参加、第 2 因子が信頼、第 3 因子が人づきあいなどのネットワーク、第 4 因子が互酬性、第 5 因子が共食に関わる因子です。 累積寄与率は 69.9 %です。 公式的参加はまちづくり活動や自治会活動などオフィシャルな活動への参加から構成されています。 信頼は団体や地域の人、行政等への信頼から構成されています。 ネットワークとは、普段の人付き合いや地区として集まる機会への出席などから構成されています。 互酬性は近隣同士の助け合い意識や自治組織の重要性などから構成されています。 共食は共食機会への参加と年間の頻度から構成されています。
- ここでは地域における共食と、ソーシャル・キャピタル指標との関係について確認しています。 図はいずれも、公式的参加を横軸にとり、縦軸が左から信頼、ネットワーク、互酬性となっており、 それぞれの平面上に、地域としての共食機会への参加度をプロットした物です。 右 2 つの図はいずれも正の相関が見られます。 左の図は公式的参加と信頼の平面上に落としたものですが、信頼との関係において地域内共食は 逆相関という結果になりました。 以上から、信頼との関係について留意は必要ではあるが、他のソーシャル・キャピタル指標との 相関は確認されたため、共食がソーシャル・キャピタルを測定する一つの指標となりうるという仮定のもと進めます。
- ここではまず、家族内における共食と幸福感や地域への誇り・愛着との関係について確認します。 表は夕食時の共食状況と、幸福感とのクロス表です。 共食頻度が低いグループでは、■幸福感を感じる度合いが弱いことが明らかになりました。 また共食頻度が高いグループでは■幸福感を強く感じると回答した人の割合が、共食頻度が低いグループと 比べて高いという結果が得られました。
- 次に、食事のタイミング別の影響をみると、共食頻度が高いグループでは食事のタイミングによる差はありませんでした。 他方、共食頻度が低いグループでは、朝食に比べて夕食時の方が「どちらともいえない」と回答する割合が高い結果となり、 夕食時の共食頻度の「低さ」が朝食や昼食よりも影響を与えていることが示唆されています。
- ここでは、家族内共食と関連があると確認できた「幸福感」と「地域への誇り」が、 地域の「まとまり」の評価とどのような関係かを示しています。 まず幸福感と地域のまとまりをみると、■幸福感が弱いグループでは、まとまりが弱いと感じている人の割合が高く、 幸福感が強いグループではまとまりも強いと感じている人の割合が高くなりました。 ■ 次に地域への誇りと、地域のまとまりですが、■こちらも同様に、誇りが弱いグループではまとまりが弱いという割合が高く、 誇りが強いグループではまとまりも強いと評価しています。 これらから、因果関係については明らかにはなりませんが、幸福感や地域への誇りと、地域がまとまっているかという評価、 すなわち地域の安定度との間には何らかの関係があることが明らかになり、間接的には家族内共食も何らかの影響があると言えるかと思います。 以上のことから、参加、信頼、ネットワーク、互酬性に共食を加えた評価モデルを検証していきます。
- 図は共食を加えた五角形の評価モデルに、回答者の年齢別因子得点平均をプロットしたものです。 ちょっと見づらいかと思いますが、寒色系が比較的若い世代、暖色系の色が比較的高齢世代になっています。 特徴的な点をあげていくと、 10 代では参加とネットワーク得点が低く、共食得点は高くなっています。 (得点が低いことは、地域社会との直接のかかわりが少ないことが影響していると考えられますが、 共食得点が高いのは、子どもでも祭など伝統行事に参加するため、そのなおらいが影響していると考えられます。) 80 代では、他の年齢層と比較して相対的に参加と信頼の得点が高くなりました。 参加については、インタビュー調査でも聞かれたように、伝統行事の継承に関する責任といったことが影響しているのかもしれません。 (信頼については長年暮らしてきた当地で、すでに信頼関係は確立していると考えている人が多いのではないでしょうか。)
- こちらは、布施、武良の地区別にプロットしたものです。 布施と武良いずれも原点付近でその差は小さいものですが、 相対的に、布施は互酬性とネットワーク得点が高く、 武良は参加と信頼が高い傾向にあります。 相対的な差ではありますが、このように地区の SC の特色が 本評価モデルを使うことで把握できることがわかるかと思います。
- 結論です。 まず家庭内における共食の効果ですが、家庭内の共食と幸福感、地域への誇り・愛着との間には相関が認められました。■ 共食のタイミングとしては、朝食昼食よりも夕食の影響が大きいことが明らかになりました。■ また、幸福感、地域への誇り・愛着と、地域としての「まとまり」の間にも関連が認められました。■ これらのことから、幸福であることなど家庭が安定していることと地域のまとまりとの間には■間接的に関連性があると言えると思われます。
- 次に地域内における共食についてです。 隠岐の場合、地域内共食は祭などの行事後に開催される「なおらい」が主要な共食機会でした。 そして、当初の目的であった地域内共食と他の SC 指標との関係は、■ 信頼とは逆相関という結果だったものの、■他の指標とは正の相関という結果が得られました。 もう少し検討が必要ではありますが、共食を SC 指標群のひとつに加えることは、まあ可能ではないかという結論です。
- 最後に、考察になりますが。 まず残された課題としては、信頼との関係性を整理し、分析ツールとしての精度を挙げなければならないでしょう。 以下、提案になります。在籍コースの趣旨を考慮し、今後の業務展開に活かすため、また地域への何がしかの貢献という視点も含め、 事例も交えて簡潔に述べます。 具体的に地域において共食機会を創出するように働きかけていくことが有効ではないかと考えています。 スライドに示しているのは宮崎県えびの市の事例で、「モエ」と呼ばれる、もやいの一種による共食機会の活用事例です。
- こうした共食機会は、自発的に形成される方が有効ですが、本県のように、条件の厳しい地域においては例えば公民館などが従来の活動の延長線上と 位置づけ、多様なグループ、団体が共食機会を容易に創出できる環境づくりと、負担感のない参加が求められると考えます。 この提案については、今後さらに検討し関係各所に提案していきたいと考えています。 以上で、白石の発表を終ります。 ありがとうございました。