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MPD Osaka Extra #1
August 3, 2019
Atsuhiro Kubo@iteman
Enaction, Not Design
Copyright (c) 2019 Atsuhiro Kubo@iteman
“If you want to design a new
flower, you will design the seed
and let it grow.”
(p.449)
――クリストファー・アレグザンダー, 「時を超えた建設の道」,
鹿島出版会, 1993
Copyright (c) 2019 Atsuhiro Kubo@iteman
“運慶は今太い眉を一寸の高さに横へ彫り抜いて、鑿の歯を竪(たて)
に返すや否や斜すに、上から槌(つち)を打ち下した。堅い木を一
(ひ)と刻(きざ)みに削って、厚い木屑が槌の声に応じて飛んだと
思ったら、小鼻のおっ開いた怒り鼻の側面がたちまち浮き上がって来
た。その刀の入れ方がいかにも無遠慮であった。そうして少しも疑念を
挾んでおらんように見えた。
「よくああ無造作に鑿を使って、思うような眉や鼻ができるものだな」
と自分はあんまり感心したから独言のように言った。するとさっきの若
い男が、
「なに、あれは眉や鼻を鑿で作るんじゃない。あの通りの眉や鼻が木の
中に埋っているのを、鑿と槌の力で掘り出すまでだ。まるで土の中から
石を掘り出すようなものだからけっして間違うはずはない」と云っ
た。”
――夏目漱石, 「夢十夜」
Copyright (c) 2019 Atsuhiro Kubo@iteman
“ある場所が見せかけだけで、生き生きとしていない
場合、必ずといってよいほどその背後には主導者の
存在がある。作り手の意図が強すぎて、本来の特性
が出現する余地が生まれてこないのである。”
(p.31)
――クリストファー・アレグザンダー, 「時を超えた建設の道」,
鹿島出版会, 1993
Copyright (c) 2019 Atsuhiro Kubo@iteman
“以下の9つの章で主として扱うのは、無名の質は人
為的につくるものではなく、単にプロセスによって
生成されるにすぎないということである。
 それは人々の行為から、それもごく自然に湧き出
てくるものであり、つくってつくれるものではな
い。発明したり、考案したり、設計するものではな
く、それ自体の創造プロセスから自然に湧き出る
時、無名の質が現れてくるのである。”
(p.133)
――クリストファー・アレグザンダー, 「時を超えた建設の道」,
鹿島出版会, 1993
Copyright (c) 2019 Atsuhiro Kubo@iteman
“ものをつくる時、そこには作り手の意図が含まれ
る。だが、ものが生成される場合は、自我の入り込
まないルールによって自由に生成される。そのルー
ルは情況の現実に作用し、自然にものを生み出して
いく・・・。”
(pp.133-134)
――クリストファー・アレグザンダー, 「時を超えた建設の道」,
鹿島出版会, 1993
Copyright (c) 2019 Atsuhiro Kubo@iteman
“頭に浮かんでくる意図は追い払うこと。雑誌で見た
写真や友人の家も忘れ去ること・・・ひらすら、パ
タンだけにこだわっていればよい。
 その気になりさえすれば、さしたる努力もなし
に、パタンと現実の局面が一体となって、頭の中に
正しい形態が生み出されるのである。
 これこそが、ランゲージのもつ力であり、ラン
ゲージが創造的であるゆえんである。”
(p.319)
――クリストファー・アレグザンダー, 「時を超えた建設の道」,
鹿島出版会, 1993
Copyright (c) 2019 Atsuhiro Kubo@iteman
“あなたの頭は一つの媒体である。そこでパタンと現
実世界との間の創造の火花をちらすことができる。
あなた自身は、この創造の火花の単なる媒介にすぎ
ず、その発生源ではない。”
(p.319)
――クリストファー・アレグザンダー, 「時を超えた建設の道」,
鹿島出版会, 1993
Copyright (c) 2019 Atsuhiro Kubo@iteman
“そうするには、自分で制御しようとせず、パタンの
なすがままに任せればよい。このように、基本的な
確信をもたずに決断することなどできないのが普通
である。だが、自分の用いるパタンをよく知ってお
り、自分にとって意味があり、パタンが深遠で有効
であるという確信があれば、何も恐れる必要はない
し、設計に対する制御を失うことを恐れる理由もな
い。パタン自体に意味があれば、設計を制御する必
要はまったくないのである。”
(p.320)
――クリストファー・アレグザンダー, 「時を超えた建設の道」,
鹿島出版会, 1993
Copyright (c) 2019 Atsuhiro Kubo@iteman
“19章で述べたように、ランゲージの順序は、パタン
が相互に作用しながら全体を形成するのに必要な順
序である。それは、胎児の進化過程に不可欠な順序
と似て、形態学的な順序である。
 個々のパタンの最大効果をもって展開させるの
も、まさにこの順序である。ランゲージの順序が正
しければ、一度に一つのパタンに、それも最も強力
な形で集中していくことができる。というのも、パ
タン間の干渉や矛盾なども、このランゲージの順序
に従えばほとんど無きに等しくなるからである。”
(p.322)
――クリストファー・アレグザンダー, 「時を超えた建設の道」,
鹿島出版会, 1993
Copyright (c) 2019 Atsuhiro Kubo@iteman
“ここまでくれば、パタンのシーケンスによって、頭
の中で建物がどのように作り出されるかがわかる。
 それは驚くほど容易に発生する。ちょうど話すと
きに文章が思い浮かぶのと同様に、建物がほとんど
自動的に「湧き出て」くるのである。”
(p.327)
――クリストファー・アレグザンダー, 「時を超えた建設の道」,
鹿島出版会, 1993
Copyright (c) 2019 Atsuhiro Kubo@iteman
“――だができた建物は、私がつくったもの、自分自
身の感覚から生まれたものにもかかわらず、同時
に、私の思考を経て、あたかも建物が自らの力と意
志によって具現したかのようであった。
 これは、水に飛び込む時のように身がすくむよう
な体験である。しかも、きわめて刺戟的である――
つまり、自分ではとても制御できないことなのであ
る。人は単なる媒体にすぎず、そこでパタンに生命
が吹き込まれ、ひとりでに新しい何かが生み出され
るのである。”
(pp.341-342)
――クリストファー・アレグザンダー, 「時を超えた建設の道」,
鹿島出版会, 1993
Copyright (c) 2019 Atsuhiro Kubo@iteman
“つまり、時を超えた道の中枢には、これまでに述べ
ていない核心または根源的な教えが存在するからで
ある。
この核心に不可欠なのは、生き生きとした建物は、
無我の状態で臨まない限りつくれないということで
ある。”
(p.435)
――クリストファー・アレグザンダー, 「時を超えた建設の道」,
鹿島出版会, 1993
Copyright (c) 2019 Atsuhiro Kubo@iteman
“このような無我の建物をつくるには、意図的なイメージをすべて捨て去り、ま
ず頭を空(くう, void)にして始めねばならない。
設計に当たって最初に必要なのが「イメージ」で、それによって全体に一貫性
と秩序が確保される、という建築家がよくいる。
 だが、このような心構えでは、決して自然なものは作り出せない。もし自分
の考えがあって――パタンをそれに合わせようとすれば、その考えが、パタン
自体が頭の中でやろうとしていた作業を支配し、ねじ曲げ、人為的なものにし
てしまう。
 したがって、まず頭を無(nothing)にして着手せねばならないのである。
それには、何も起こらないのではないかという恐怖を克服しなければ、自分の
イメージを捨て去ることはできない。”
(p.437)
――クリストファー・アレグザンダー, 「時を超えた建設の道」,
鹿島出版会, 1993
Copyright (c) 2019 Atsuhiro Kubo@iteman
“初めは、パタン・ランゲージによって頭の中で本当
に形態が生成されることに確信がもてず、イメージ
なしでは何も残らないのではとの恐怖から、自分の
持つイメージのすべてにしっかりとしがみついてい
る。だが、パタン・ランゲージと敷地が一体とな
り、本当に頭のカで無から形態を生成することが分
かりさえすれば、安心して自分のイメージをすっか
り捨て去ることができる。”
(p.437)
――クリストファー・アレグザンダー, 「時を超えた建設の道」,
鹿島出版会, 1993
Copyright (c) 2019 Atsuhiro Kubo@iteman
“自由でない人間にとって、ランゲージが単なる情報
にしか見えないのは、自分が支配権を握り、自分が
創造的刺戟を注ぎ、設計を制御するイメージを自分
が提供せねばならないと思い込んでいるからであ
る。”
(pp.437-438)
――クリストファー・アレグザンダー, 「時を超えた建設の道」,
鹿島出版会, 1993
Copyright (c) 2019 Atsuhiro Kubo@iteman
参考文献
●
クリストファー・アレグザンダー, 「時を超えた建設の道」, 鹿島出版会, 1993
●
夏目漱石,「夢十夜」, https://www.aozora.gr.jp/cards/000148/files/799_14972.html
●
井庭崇, 「What Occurs in Egoless Creation with Pattern Languages (PURPLSOC2017)」,
2017 , https://www.slideshare.net/takashiiba/what-occurs-in-egoless-creation-with-pattern-languages-purplsoc2017

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Enaction, Not Design on MPD Osaka Extra 1

  • 1. MPD Osaka Extra #1 August 3, 2019 Atsuhiro Kubo@iteman Enaction, Not Design
  • 2. Copyright (c) 2019 Atsuhiro Kubo@iteman “If you want to design a new flower, you will design the seed and let it grow.” (p.449) ――クリストファー・アレグザンダー, 「時を超えた建設の道」, 鹿島出版会, 1993
  • 3. Copyright (c) 2019 Atsuhiro Kubo@iteman “運慶は今太い眉を一寸の高さに横へ彫り抜いて、鑿の歯を竪(たて) に返すや否や斜すに、上から槌(つち)を打ち下した。堅い木を一 (ひ)と刻(きざ)みに削って、厚い木屑が槌の声に応じて飛んだと 思ったら、小鼻のおっ開いた怒り鼻の側面がたちまち浮き上がって来 た。その刀の入れ方がいかにも無遠慮であった。そうして少しも疑念を 挾んでおらんように見えた。 「よくああ無造作に鑿を使って、思うような眉や鼻ができるものだな」 と自分はあんまり感心したから独言のように言った。するとさっきの若 い男が、 「なに、あれは眉や鼻を鑿で作るんじゃない。あの通りの眉や鼻が木の 中に埋っているのを、鑿と槌の力で掘り出すまでだ。まるで土の中から 石を掘り出すようなものだからけっして間違うはずはない」と云っ た。” ――夏目漱石, 「夢十夜」
  • 4. Copyright (c) 2019 Atsuhiro Kubo@iteman “ある場所が見せかけだけで、生き生きとしていない 場合、必ずといってよいほどその背後には主導者の 存在がある。作り手の意図が強すぎて、本来の特性 が出現する余地が生まれてこないのである。” (p.31) ――クリストファー・アレグザンダー, 「時を超えた建設の道」, 鹿島出版会, 1993
  • 5. Copyright (c) 2019 Atsuhiro Kubo@iteman “以下の9つの章で主として扱うのは、無名の質は人 為的につくるものではなく、単にプロセスによって 生成されるにすぎないということである。  それは人々の行為から、それもごく自然に湧き出 てくるものであり、つくってつくれるものではな い。発明したり、考案したり、設計するものではな く、それ自体の創造プロセスから自然に湧き出る 時、無名の質が現れてくるのである。” (p.133) ――クリストファー・アレグザンダー, 「時を超えた建設の道」, 鹿島出版会, 1993
  • 6. Copyright (c) 2019 Atsuhiro Kubo@iteman “ものをつくる時、そこには作り手の意図が含まれ る。だが、ものが生成される場合は、自我の入り込 まないルールによって自由に生成される。そのルー ルは情況の現実に作用し、自然にものを生み出して いく・・・。” (pp.133-134) ――クリストファー・アレグザンダー, 「時を超えた建設の道」, 鹿島出版会, 1993
  • 7. Copyright (c) 2019 Atsuhiro Kubo@iteman “頭に浮かんでくる意図は追い払うこと。雑誌で見た 写真や友人の家も忘れ去ること・・・ひらすら、パ タンだけにこだわっていればよい。  その気になりさえすれば、さしたる努力もなし に、パタンと現実の局面が一体となって、頭の中に 正しい形態が生み出されるのである。  これこそが、ランゲージのもつ力であり、ラン ゲージが創造的であるゆえんである。” (p.319) ――クリストファー・アレグザンダー, 「時を超えた建設の道」, 鹿島出版会, 1993
  • 8. Copyright (c) 2019 Atsuhiro Kubo@iteman “あなたの頭は一つの媒体である。そこでパタンと現 実世界との間の創造の火花をちらすことができる。 あなた自身は、この創造の火花の単なる媒介にすぎ ず、その発生源ではない。” (p.319) ――クリストファー・アレグザンダー, 「時を超えた建設の道」, 鹿島出版会, 1993
  • 9. Copyright (c) 2019 Atsuhiro Kubo@iteman “そうするには、自分で制御しようとせず、パタンの なすがままに任せればよい。このように、基本的な 確信をもたずに決断することなどできないのが普通 である。だが、自分の用いるパタンをよく知ってお り、自分にとって意味があり、パタンが深遠で有効 であるという確信があれば、何も恐れる必要はない し、設計に対する制御を失うことを恐れる理由もな い。パタン自体に意味があれば、設計を制御する必 要はまったくないのである。” (p.320) ――クリストファー・アレグザンダー, 「時を超えた建設の道」, 鹿島出版会, 1993
  • 10. Copyright (c) 2019 Atsuhiro Kubo@iteman “19章で述べたように、ランゲージの順序は、パタン が相互に作用しながら全体を形成するのに必要な順 序である。それは、胎児の進化過程に不可欠な順序 と似て、形態学的な順序である。  個々のパタンの最大効果をもって展開させるの も、まさにこの順序である。ランゲージの順序が正 しければ、一度に一つのパタンに、それも最も強力 な形で集中していくことができる。というのも、パ タン間の干渉や矛盾なども、このランゲージの順序 に従えばほとんど無きに等しくなるからである。” (p.322) ――クリストファー・アレグザンダー, 「時を超えた建設の道」, 鹿島出版会, 1993
  • 11. Copyright (c) 2019 Atsuhiro Kubo@iteman “ここまでくれば、パタンのシーケンスによって、頭 の中で建物がどのように作り出されるかがわかる。  それは驚くほど容易に発生する。ちょうど話すと きに文章が思い浮かぶのと同様に、建物がほとんど 自動的に「湧き出て」くるのである。” (p.327) ――クリストファー・アレグザンダー, 「時を超えた建設の道」, 鹿島出版会, 1993
  • 12. Copyright (c) 2019 Atsuhiro Kubo@iteman “――だができた建物は、私がつくったもの、自分自 身の感覚から生まれたものにもかかわらず、同時 に、私の思考を経て、あたかも建物が自らの力と意 志によって具現したかのようであった。  これは、水に飛び込む時のように身がすくむよう な体験である。しかも、きわめて刺戟的である―― つまり、自分ではとても制御できないことなのであ る。人は単なる媒体にすぎず、そこでパタンに生命 が吹き込まれ、ひとりでに新しい何かが生み出され るのである。” (pp.341-342) ――クリストファー・アレグザンダー, 「時を超えた建設の道」, 鹿島出版会, 1993
  • 13. Copyright (c) 2019 Atsuhiro Kubo@iteman “つまり、時を超えた道の中枢には、これまでに述べ ていない核心または根源的な教えが存在するからで ある。 この核心に不可欠なのは、生き生きとした建物は、 無我の状態で臨まない限りつくれないということで ある。” (p.435) ――クリストファー・アレグザンダー, 「時を超えた建設の道」, 鹿島出版会, 1993
  • 14. Copyright (c) 2019 Atsuhiro Kubo@iteman “このような無我の建物をつくるには、意図的なイメージをすべて捨て去り、ま ず頭を空(くう, void)にして始めねばならない。 設計に当たって最初に必要なのが「イメージ」で、それによって全体に一貫性 と秩序が確保される、という建築家がよくいる。  だが、このような心構えでは、決して自然なものは作り出せない。もし自分 の考えがあって――パタンをそれに合わせようとすれば、その考えが、パタン 自体が頭の中でやろうとしていた作業を支配し、ねじ曲げ、人為的なものにし てしまう。  したがって、まず頭を無(nothing)にして着手せねばならないのである。 それには、何も起こらないのではないかという恐怖を克服しなければ、自分の イメージを捨て去ることはできない。” (p.437) ――クリストファー・アレグザンダー, 「時を超えた建設の道」, 鹿島出版会, 1993
  • 15. Copyright (c) 2019 Atsuhiro Kubo@iteman “初めは、パタン・ランゲージによって頭の中で本当 に形態が生成されることに確信がもてず、イメージ なしでは何も残らないのではとの恐怖から、自分の 持つイメージのすべてにしっかりとしがみついてい る。だが、パタン・ランゲージと敷地が一体とな り、本当に頭のカで無から形態を生成することが分 かりさえすれば、安心して自分のイメージをすっか り捨て去ることができる。” (p.437) ――クリストファー・アレグザンダー, 「時を超えた建設の道」, 鹿島出版会, 1993
  • 16. Copyright (c) 2019 Atsuhiro Kubo@iteman “自由でない人間にとって、ランゲージが単なる情報 にしか見えないのは、自分が支配権を握り、自分が 創造的刺戟を注ぎ、設計を制御するイメージを自分 が提供せねばならないと思い込んでいるからであ る。” (pp.437-438) ――クリストファー・アレグザンダー, 「時を超えた建設の道」, 鹿島出版会, 1993
  • 17. Copyright (c) 2019 Atsuhiro Kubo@iteman 参考文献 ● クリストファー・アレグザンダー, 「時を超えた建設の道」, 鹿島出版会, 1993 ● 夏目漱石,「夢十夜」, https://www.aozora.gr.jp/cards/000148/files/799_14972.html ● 井庭崇, 「What Occurs in Egoless Creation with Pattern Languages (PURPLSOC2017)」, 2017 , https://www.slideshare.net/takashiiba/what-occurs-in-egoless-creation-with-pattern-languages-purplsoc2017