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PBLにおいて
学び合いを引き出す
組織的メンタリング
渡辺知恵美(筑波大学),嵯峨智(筑波大学)
永瀬美穂(産業技術大学院大学),森本千佳子
(東京工業大学), 河辺徹(筑波大学)
ISECON2016
本資料はクリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。 1
2017/3/11
ISECON2016
渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを引き出す組織的メンタリング」,
ISECON2016, 2017.3.11
本資料について
• 本資料は、一般社団法人 情報処理学会 情報処理教育委
員会 情報システム教育委員会主催による第9回情報シ
ステム教育コンテスト(ISECON2016)の本審査用資
料を元に再編集されたものです。
• 本資料(渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを
引き出す組織的メンタリング」,ISECON2016,
2017.3.11)は、クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0
国際 ライセンスの下に提供されています。
2
ISECON2016
渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを引き出す組織的メンタリング」,
ISECON2016, 2017.3.11
背景
3
文部科学省 情報技術人材育成のための実践教育ネットワーク形成事業
「分野・地域を超えた実践的情報教育協働ネットワーク(enPiT)」
(2012年度〜2016年度)
大学間/大学・企業間で緊密に連携をとりながら、社会の新たな価値
や産業の創出を情報技術の応用を通じて行える人材育成を実施
問題解決のスキルを
プロジェクトベース学習(Project Based Learning: PBL)にて
実践的に学ぶ
PBLでの指導を行うためには、従来の講義・演習とは異なる
PBLによる学びを引き出す”メンタリング”スキルが必要
 ある問題に対してチーム一体で取り組み,高度な情報技術
を使って解決する→問題に対する柔軟な対応が要求される
ISECON2016
渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを引き出す組織的メンタリング」,
ISECON2016, 2017.3.11
実施概要
• 専任教員,関連教員,企業協力者,前年度修了生によっ
てPBLのメンターチームを組み,受講生チームの問題解
決プロセスを支援する
• 問題解決プロセスを妨げる要因をあきらかにし,それら
を解決するための多様な仕組みを提供する
• メンターチームも一つのPBLチームとし,振り返りを通
してメンタリング実施法を改善する
システム開発によるPBLにおいて,
受講生の自発的な学び合いを引き出す
組織的メンタリングの実施
4
ISECON2016
渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを引き出す組織的メンタリング」,
ISECON2016, 2017.3.11
実施期間 -カリキュラムの実施 -
• 文部科学省「enPiT」事業の枠組みで実施
• 事業期間:2013年度〜 2016年度
• 応募対象:2015年度, 2016年度
• 受講生:
• 2015年度:13大学, 93名, 5〜6名で17チーム
• 2016年度:13大学, 93名, 5〜7名で16チーム
• 年間カリキュラム:
分散PBL
成果
報告会
8/17 – 8/31 10月-11月 12月中旬
短期集中
合宿
基礎知識
学習
4月-7月
個別に開発スキル
を身につける
チームを結成
プロダクトの提案
プロトタイプの開発
システムの開発
ユーザテスト
システムの改善
5
ISECON2016
渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを引き出す組織的メンタリング」,
ISECON2016, 2017.3.11
合宿第2週
実施期間(2) -チームによるメンタリング期間-
• 短期集中合宿におけるPBLの流れ
分散PBL
成果
報告会
8/17 – 8/31 10月-11月
12月中旬
短期集中
合宿
基礎知識
学習
4月-7月
個別に開発スキル
を身につける
開発チームを結成
プロダクトの提案
プロトタイプの開発
システムの開発
ユーザテスト
システムの改善
チームによる
メンタリング
専任教員と協力教員/
企業(任意参加)による
遠隔メンタリング
応募対象
チ
ー
ム
結
成
方
針
会
議
前
回
振
り
返
り
振
り
返
り
合宿第1週
チームビルディング・開発構想の洗練
初
日
:
研
修
開
発
構
想
の
発
表
プロトタイプ開発・開発計画を組む
初
日
:
研
修
プ
ロ
ト
タ
イ
プ
デ
モ
発
表
午前:講義(ロジカルシン
キング,ドキュメンテーショ
ン, UI, プレゼン)
午後:PBL
午前:講義(Rails, Android,
セキュリティ)
午後:PBL
6
ISECON2016
渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを引き出す組織的メンタリング」,
ISECON2016, 2017.3.11
実施内容:PBLにおける組織的メンタリング
• メンタリング
• メンターが受講者との対話によって、問題点や解決法に関する気づき
を促したり適切な助言をする
• 本実施におけるメンターの役割
• チーム開発の経験者として、技術の指導だけでなく経験則に基づいて
問題解決の糸口を提供する
• 受講生の目標となる先輩,社会人の姿を見せる
• チーム構成
• 専任教員,協力教員:PBLカリキュラムを設計、
教育方針を元にメンターチームを取りまとめる
• 協力企業:第一線でチーム開発を行っているエンジニア
• 修了生:前年度のenPiT修了生.enPiT経験者として身近な相談者
専任教員 協力教員
(※)
協力企業(※) 修了生
2015年度 2 12
5 (1社)
ゲストメンター
としてスポット参加
8
2016年度 2 11 11(5社) 11
※ 講義または報告会のみの参加者を除く
7
ISECON2016
渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを引き出す組織的メンタリング」,
ISECON2016, 2017.3.11
教育対象者と教育目標
• PBL(プロジェクトベース学習)を履修する情報科学
系学科の学部生および大学院生
• PBLを実施する情報科学系学科の教員
• PBLを履修し、メンターとして再度PBLに関わる学生
• 学習者が積極的にチームメンバーやメンターに質問や
相談をし、自ら学ぶ力を獲得する
• 学習者同士、チーム内およびチーム間で学び合う
教育目標
教育目標
• 学習者の学び合い(問題の発見と解決方の探索)を促す
ためのメンタリング手法について、PDCAサイクルを通し
て改善しながら学ぶ
8
ISECON2016
渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを引き出す組織的メンタリング」,
ISECON2016, 2017.3.11
PBLで「学び合う」もの
1. PBL実施期間を通して学ぶこと
• 実社会の問題を発見し、その問題を最先端の情報科学技術(に基づいたアプリ
ケーション開発)によって解決するスキル
• 2015年度, 2016年度開発テーマ「自分または身近な人が抱える困り事」
• 例)勉強中についネットで遊ぶ, 傘をすぐなくす, 実家の親からPC操作の質問が来る
2. PBLの実施を通して経験する,問題の発見と解決
• チームビルディング
• 意見の衝突,スキルの差,協力体制
• システム開発
• 需要の検証,利用シナリオ,本当に必要な機能,UI/UX設計, アーキテクチャ,
開発環境設定, 設計,開発,テスト, プレゼンテーション
• プロジェクトマネジメント
• タスク管理,開発計画と見積もり,リスク管理
応募の対象
9
ISECON2016
渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを引き出す組織的メンタリング」,
ISECON2016, 2017.3.11
PBLでの学びを妨げる学習者/教育者の問題
プロジェクトの実施
において、学習者が
問題に気付く
他人、もしくはチーム
の間で問題に対する
共有意識を持つ
問題に対する解決策を
様々なチャネルから
収集する
良いと思われる
解決策を試行し
検証する
問題の
発見
問題の
共有
解決策
の探索
解決策
の試行
- 問題解決のプロセスに沿って -
学
習
者
教
育
者
に
起
き
る
問
題
に
起
き
る
問
題
 漠然とした問題を
一人で抱えたまま
顕在化しない
 状況を把握できず問
題を引き出せない
 教育者が解決法を考える
 学習者に報告を求める
 問題を隠す
 チームで共有せず
教育者に報告する
 質問を躊躇する
 教育者が解決して
しまう
 矛盾するアドバイス
に混乱する
 異なる教育者で矛盾
したアドバイス
解決を教育者に委ねる
学習者の解決の機会を奪う
問題が共有されない
学習者の状況が把握できない
10
ISECON2016
渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを引き出す組織的メンタリング」,
ISECON2016, 2017.3.11
学び合いを促進するメンタリングの方針
• 学習者チームが主体的に問題や解決法の共有をできる仕組みを提供する
• 各チームの状況やメンターへの相談事などをオープンにし、互いが参照できるようにする
学習者
問題が共有されない 学習者の状況が把握できない
教育者(メンター)
定期 不定期
学生チームが発信 デイリースクラム
(→p.11)
メンター呼び出し(→p.13)
チームボード(→p.14)
メンターが観察 スクラムオブ
スクラムズ(→p.12)
巡回
解決を教育者に委ねる 学習者の解決の機会を奪う
学習者 教育者(メンター)
• 学習者がメンターに報告する体制でなく、チーム主体の活動を支える形でアドバイスする
メンター→はい、昨日の
作業は…
進捗を報告
しなさい。
口を出さず様子を観察
し、必要に応じてアド
バイスする
表裏一体
表裏一体
11
ISECON2016
渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを引き出す組織的メンタリング」,
ISECON2016, 2017.3.11
導入したメンタリング手法と狙い(1)
• デイリースクラム
• PBLの最初10分間に実施.
• 各メンバーが順番に以下の3点を報告
• Done: 昨日やったこと
• Problem: 今抱えている問題
• ToDo: 今日やること
シンプルなプロトコルで定期的に互いの状況を伝え合い,
問題の顕在化を早める
デイリースクラム
ボード
狙い
12
ISECON2016
渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを引き出す組織的メンタリング」,
ISECON2016, 2017.3.11
導入したメンタリング手法と狙い(2)
• スクラムオブスクラムズ
• 本来は大規模な組織でスクラム開発する際の課題管理法
• デイリースクラムの際、そばでメンター様子を観察
• デイリースクラム終了後メンターミーティングを行い、各チームの状況を伝え
合う(進捗のほかチームの様子なども)
• その日のメンタリング方針を決める
メンターがチームの状況を把握する
手段として採用しカスタマイズ
メンターミーティングメンターは
そばで観察
• 「教育者が学習者に報告させない」進捗把握ができる
• メンター間でお互いの意識を共有
→チームとしてまとまったメンタリングができる
狙い
13
ISECON2016
渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを引き出す組織的メンタリング」,
ISECON2016, 2017.3.11
導入したメンタリング手法と狙い(3)
• メンター呼び出しシステム “enPiT GO”
• 修了生の提案「学習者が質問したいときに誰を呼んで良いかわ
からない」という問題に対するソリューション
Webアプリで相談内容を送信
PBL教室内の
ディスプレイに表示
(ポケモン風)
チャットシステムに表示
相談している様子がわかる
→ 相乗効果
チーム名、相談内容
メンターの指定が出来る
• 気楽に相談できる仕組み
• 学生メンターが先輩として見本となる”成果物”を見せる
狙い
14
ISECON2016
渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを引き出す組織的メンタリング」,
ISECON2016, 2017.3.11
導入したメンタリング手法と狙い(4)
• チームボード
• 提案内容の最新状態とタスク状況が一目でわかるボードを作業
エリアの近くに掲示
エレベータピッチ→提案内容を可視化
かんばん
デイリースクラムの
ログ
→今日のチーム状況
タスクの進捗をTodo, Doing, Done
で可視化
• 自チームの状況を常に把握できる
• 他チームメンバーも覗いて、参考にできる
• メンターも状況を把握して、アドバイスの糸口にできる
狙い
15
ISECON2016
渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを引き出す組織的メンタリング」,
ISECON2016, 2017.3.11
メンターチームの学び
• 2015年度、2016年度に実施した振り返りと改善
• 合宿開始前:前年度修了生が受講生の視点から
振り返り,それを元に今年度の改善点を議論
• 合宿終了後:合宿アンケート結果を元に振り返り
振り返り 問題点 改善
2015
年度
合宿前
• 誰がメンターかわからない
• 相談に躊躇する
• 進捗報告で時間を取られる
• メンターTシャツの作成
• メンター呼び出しシステム
(p.13)
• スクラムオブスクラムズ
(p.12)
合宿後
• 企業メンター(ゲスト的参加)が
状況を把握できず関われない
• 企業メンターの本格参加
2016
年度
合宿前
• 留学生がチームにうまく混れない
• チームの様子が見えづらい
• 留学生メンターの参加
• チームボードの導入(p.14)
合宿後
• スポット参加メンターの関わり
• サポートの度合いにムラがある
2016年メンターTシャツ(青)
16
ISECON2016
渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを引き出す組織的メンタリング」,
ISECON2016, 2017.3.11
受講生への教育効果 (1)
–メンタリングでサポートした問題解決の事例-
• 2016年度 enpitsu –集GO!-
• 2015年度 みんなといっしょ
• 子供の学校帰りなどの安全性を確認するモバイルアプリケーション
混雑した場所での待ち合わせを支援するWebアプリケーション
問題:待ち合わせ相手の場所の提示方法
最小限の実現方法「相手が近く
にいたら通知する」を祭り会場
で検証し、有効性を確認
ARで正確な場所を
表示したいが
技術面で苦戦
「最小限できることで有効性を評価しよう」
実現可能な技術について相談に乗る
最初の提案:子供の帰宅路の
怪しい人情報を提示
疑心暗鬼になり
余計心配
というコメント
提案内容の変更:子供が信頼できる人や
友人と一緒にいるかをどうかを提示
親が本当に知りたいことは何か
インタビューから議論
17
ISECON2016
渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを引き出す組織的メンタリング」,
ISECON2016, 2017.3.11
受講生への教育効果 (2)
-受講生のコンピテンシー向上-
• PROG コンピテンシーテスト結果
• 2014年度(実施前)と2015年度(実施期間)で比較
0
1
2
3
4
5
6
7
2014年
2015年
対自己基礎力(特に自身創出力,行動持続力)と
対課題基礎力(特に課題発見力,計画立案力)が向上
18
ISECON2016
渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを引き出す組織的メンタリング」,
ISECON2016, 2017.3.11
メンタリングに関する評価 (1)
-メンター呼び出しシステムの利用-
• 呼び出し傾向
• 第一週前半および,第二週後半にシステム利用が増加
• 第一週はテーマ洗練のためのアイディア確認,コメント
• 第二週は実装に関する対応
• 質問内容
• AndroidやRuby on Railsなど開発技術に関する質問が最多 (35%)
• 法律や位置情報など専門的な知識も多い (8%)
• メンターへの参考意見聴取 (11%)
• 備品不足(付箋,紙など) (12%)
• アンケートのコメントより抜粋
• enPiT GOはかなり面白い取り組み
だと思った
• enPiT GOのおかげでメンターとの距離が
遠くても呼びやすかったのが良かった
• くだらないことでも呼んでも大丈夫だと言う点(メンターGOはその存在自体が
キャッチーで、なおかつとても有用でした)が本当に楽でした。いいアドバイ
スじゃなかったな?と思ったら次の方、っていうように楽に次も声をかけるこ
とが出来たので有りがたかったです。
0% 20% 40% 60% 80% 100%
1
質問内容内訳
開発技術 専門知識 備品 参考意見 その他
19
ISECON2016
渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを引き出す組織的メンタリング」,
ISECON2016, 2017.3.11
メンタリングに関する評価 (2)
- 受講生へのアンケート -
• アンケートは2016年度のみ実施
• コメントより抜粋
• 親身になって相談に乗ってくださりました
• こうすることもできるよねという新しいアイデアや指針を頂けたのは非常に良
かったです。
• 幅広い知識で様々な角度から考えていただき、とても助かりました。
• 授業外でも親しく話しかけてくださったりして、2週目はとくに親身になって
くださって、大変助かりました。うまくいかなかったら聞いてもいいんだ、と
いう気持ちでチームづくりができて、存在だけでもとても支えてもらいました!
ありがとうございました!
• 今までの大学生活では考えられないような能力をみせてもらった。そういう人
に近づけるようになりたい。
 約9割の受講生から「声をかけやすく的確な対応である」と評価
 合宿中の改善により,合宿2週目の評価が上がった
20

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PBLにおいて学び合いを引き出す組織的メンタリング

  • 2. ISECON2016 渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを引き出す組織的メンタリング」, ISECON2016, 2017.3.11 本資料について • 本資料は、一般社団法人 情報処理学会 情報処理教育委 員会 情報システム教育委員会主催による第9回情報シ ステム教育コンテスト(ISECON2016)の本審査用資 料を元に再編集されたものです。 • 本資料(渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを 引き出す組織的メンタリング」,ISECON2016, 2017.3.11)は、クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。 2
  • 3. ISECON2016 渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを引き出す組織的メンタリング」, ISECON2016, 2017.3.11 背景 3 文部科学省 情報技術人材育成のための実践教育ネットワーク形成事業 「分野・地域を超えた実践的情報教育協働ネットワーク(enPiT)」 (2012年度〜2016年度) 大学間/大学・企業間で緊密に連携をとりながら、社会の新たな価値 や産業の創出を情報技術の応用を通じて行える人材育成を実施 問題解決のスキルを プロジェクトベース学習(Project Based Learning: PBL)にて 実践的に学ぶ PBLでの指導を行うためには、従来の講義・演習とは異なる PBLによる学びを引き出す”メンタリング”スキルが必要  ある問題に対してチーム一体で取り組み,高度な情報技術 を使って解決する→問題に対する柔軟な対応が要求される
  • 4. ISECON2016 渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを引き出す組織的メンタリング」, ISECON2016, 2017.3.11 実施概要 • 専任教員,関連教員,企業協力者,前年度修了生によっ てPBLのメンターチームを組み,受講生チームの問題解 決プロセスを支援する • 問題解決プロセスを妨げる要因をあきらかにし,それら を解決するための多様な仕組みを提供する • メンターチームも一つのPBLチームとし,振り返りを通 してメンタリング実施法を改善する システム開発によるPBLにおいて, 受講生の自発的な学び合いを引き出す 組織的メンタリングの実施 4
  • 5. ISECON2016 渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを引き出す組織的メンタリング」, ISECON2016, 2017.3.11 実施期間 -カリキュラムの実施 - • 文部科学省「enPiT」事業の枠組みで実施 • 事業期間:2013年度〜 2016年度 • 応募対象:2015年度, 2016年度 • 受講生: • 2015年度:13大学, 93名, 5〜6名で17チーム • 2016年度:13大学, 93名, 5〜7名で16チーム • 年間カリキュラム: 分散PBL 成果 報告会 8/17 – 8/31 10月-11月 12月中旬 短期集中 合宿 基礎知識 学習 4月-7月 個別に開発スキル を身につける チームを結成 プロダクトの提案 プロトタイプの開発 システムの開発 ユーザテスト システムの改善 5
  • 6. ISECON2016 渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを引き出す組織的メンタリング」, ISECON2016, 2017.3.11 合宿第2週 実施期間(2) -チームによるメンタリング期間- • 短期集中合宿におけるPBLの流れ 分散PBL 成果 報告会 8/17 – 8/31 10月-11月 12月中旬 短期集中 合宿 基礎知識 学習 4月-7月 個別に開発スキル を身につける 開発チームを結成 プロダクトの提案 プロトタイプの開発 システムの開発 ユーザテスト システムの改善 チームによる メンタリング 専任教員と協力教員/ 企業(任意参加)による 遠隔メンタリング 応募対象 チ ー ム 結 成 方 針 会 議 前 回 振 り 返 り 振 り 返 り 合宿第1週 チームビルディング・開発構想の洗練 初 日 : 研 修 開 発 構 想 の 発 表 プロトタイプ開発・開発計画を組む 初 日 : 研 修 プ ロ ト タ イ プ デ モ 発 表 午前:講義(ロジカルシン キング,ドキュメンテーショ ン, UI, プレゼン) 午後:PBL 午前:講義(Rails, Android, セキュリティ) 午後:PBL 6
  • 7. ISECON2016 渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを引き出す組織的メンタリング」, ISECON2016, 2017.3.11 実施内容:PBLにおける組織的メンタリング • メンタリング • メンターが受講者との対話によって、問題点や解決法に関する気づき を促したり適切な助言をする • 本実施におけるメンターの役割 • チーム開発の経験者として、技術の指導だけでなく経験則に基づいて 問題解決の糸口を提供する • 受講生の目標となる先輩,社会人の姿を見せる • チーム構成 • 専任教員,協力教員:PBLカリキュラムを設計、 教育方針を元にメンターチームを取りまとめる • 協力企業:第一線でチーム開発を行っているエンジニア • 修了生:前年度のenPiT修了生.enPiT経験者として身近な相談者 専任教員 協力教員 (※) 協力企業(※) 修了生 2015年度 2 12 5 (1社) ゲストメンター としてスポット参加 8 2016年度 2 11 11(5社) 11 ※ 講義または報告会のみの参加者を除く 7
  • 8. ISECON2016 渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを引き出す組織的メンタリング」, ISECON2016, 2017.3.11 教育対象者と教育目標 • PBL(プロジェクトベース学習)を履修する情報科学 系学科の学部生および大学院生 • PBLを実施する情報科学系学科の教員 • PBLを履修し、メンターとして再度PBLに関わる学生 • 学習者が積極的にチームメンバーやメンターに質問や 相談をし、自ら学ぶ力を獲得する • 学習者同士、チーム内およびチーム間で学び合う 教育目標 教育目標 • 学習者の学び合い(問題の発見と解決方の探索)を促す ためのメンタリング手法について、PDCAサイクルを通し て改善しながら学ぶ 8
  • 9. ISECON2016 渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを引き出す組織的メンタリング」, ISECON2016, 2017.3.11 PBLで「学び合う」もの 1. PBL実施期間を通して学ぶこと • 実社会の問題を発見し、その問題を最先端の情報科学技術(に基づいたアプリ ケーション開発)によって解決するスキル • 2015年度, 2016年度開発テーマ「自分または身近な人が抱える困り事」 • 例)勉強中についネットで遊ぶ, 傘をすぐなくす, 実家の親からPC操作の質問が来る 2. PBLの実施を通して経験する,問題の発見と解決 • チームビルディング • 意見の衝突,スキルの差,協力体制 • システム開発 • 需要の検証,利用シナリオ,本当に必要な機能,UI/UX設計, アーキテクチャ, 開発環境設定, 設計,開発,テスト, プレゼンテーション • プロジェクトマネジメント • タスク管理,開発計画と見積もり,リスク管理 応募の対象 9
  • 10. ISECON2016 渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを引き出す組織的メンタリング」, ISECON2016, 2017.3.11 PBLでの学びを妨げる学習者/教育者の問題 プロジェクトの実施 において、学習者が 問題に気付く 他人、もしくはチーム の間で問題に対する 共有意識を持つ 問題に対する解決策を 様々なチャネルから 収集する 良いと思われる 解決策を試行し 検証する 問題の 発見 問題の 共有 解決策 の探索 解決策 の試行 - 問題解決のプロセスに沿って - 学 習 者 教 育 者 に 起 き る 問 題 に 起 き る 問 題  漠然とした問題を 一人で抱えたまま 顕在化しない  状況を把握できず問 題を引き出せない  教育者が解決法を考える  学習者に報告を求める  問題を隠す  チームで共有せず 教育者に報告する  質問を躊躇する  教育者が解決して しまう  矛盾するアドバイス に混乱する  異なる教育者で矛盾 したアドバイス 解決を教育者に委ねる 学習者の解決の機会を奪う 問題が共有されない 学習者の状況が把握できない 10
  • 11. ISECON2016 渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを引き出す組織的メンタリング」, ISECON2016, 2017.3.11 学び合いを促進するメンタリングの方針 • 学習者チームが主体的に問題や解決法の共有をできる仕組みを提供する • 各チームの状況やメンターへの相談事などをオープンにし、互いが参照できるようにする 学習者 問題が共有されない 学習者の状況が把握できない 教育者(メンター) 定期 不定期 学生チームが発信 デイリースクラム (→p.11) メンター呼び出し(→p.13) チームボード(→p.14) メンターが観察 スクラムオブ スクラムズ(→p.12) 巡回 解決を教育者に委ねる 学習者の解決の機会を奪う 学習者 教育者(メンター) • 学習者がメンターに報告する体制でなく、チーム主体の活動を支える形でアドバイスする メンター→はい、昨日の 作業は… 進捗を報告 しなさい。 口を出さず様子を観察 し、必要に応じてアド バイスする 表裏一体 表裏一体 11
  • 12. ISECON2016 渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを引き出す組織的メンタリング」, ISECON2016, 2017.3.11 導入したメンタリング手法と狙い(1) • デイリースクラム • PBLの最初10分間に実施. • 各メンバーが順番に以下の3点を報告 • Done: 昨日やったこと • Problem: 今抱えている問題 • ToDo: 今日やること シンプルなプロトコルで定期的に互いの状況を伝え合い, 問題の顕在化を早める デイリースクラム ボード 狙い 12
  • 13. ISECON2016 渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを引き出す組織的メンタリング」, ISECON2016, 2017.3.11 導入したメンタリング手法と狙い(2) • スクラムオブスクラムズ • 本来は大規模な組織でスクラム開発する際の課題管理法 • デイリースクラムの際、そばでメンター様子を観察 • デイリースクラム終了後メンターミーティングを行い、各チームの状況を伝え 合う(進捗のほかチームの様子なども) • その日のメンタリング方針を決める メンターがチームの状況を把握する 手段として採用しカスタマイズ メンターミーティングメンターは そばで観察 • 「教育者が学習者に報告させない」進捗把握ができる • メンター間でお互いの意識を共有 →チームとしてまとまったメンタリングができる 狙い 13
  • 14. ISECON2016 渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを引き出す組織的メンタリング」, ISECON2016, 2017.3.11 導入したメンタリング手法と狙い(3) • メンター呼び出しシステム “enPiT GO” • 修了生の提案「学習者が質問したいときに誰を呼んで良いかわ からない」という問題に対するソリューション Webアプリで相談内容を送信 PBL教室内の ディスプレイに表示 (ポケモン風) チャットシステムに表示 相談している様子がわかる → 相乗効果 チーム名、相談内容 メンターの指定が出来る • 気楽に相談できる仕組み • 学生メンターが先輩として見本となる”成果物”を見せる 狙い 14
  • 15. ISECON2016 渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを引き出す組織的メンタリング」, ISECON2016, 2017.3.11 導入したメンタリング手法と狙い(4) • チームボード • 提案内容の最新状態とタスク状況が一目でわかるボードを作業 エリアの近くに掲示 エレベータピッチ→提案内容を可視化 かんばん デイリースクラムの ログ →今日のチーム状況 タスクの進捗をTodo, Doing, Done で可視化 • 自チームの状況を常に把握できる • 他チームメンバーも覗いて、参考にできる • メンターも状況を把握して、アドバイスの糸口にできる 狙い 15
  • 16. ISECON2016 渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを引き出す組織的メンタリング」, ISECON2016, 2017.3.11 メンターチームの学び • 2015年度、2016年度に実施した振り返りと改善 • 合宿開始前:前年度修了生が受講生の視点から 振り返り,それを元に今年度の改善点を議論 • 合宿終了後:合宿アンケート結果を元に振り返り 振り返り 問題点 改善 2015 年度 合宿前 • 誰がメンターかわからない • 相談に躊躇する • 進捗報告で時間を取られる • メンターTシャツの作成 • メンター呼び出しシステム (p.13) • スクラムオブスクラムズ (p.12) 合宿後 • 企業メンター(ゲスト的参加)が 状況を把握できず関われない • 企業メンターの本格参加 2016 年度 合宿前 • 留学生がチームにうまく混れない • チームの様子が見えづらい • 留学生メンターの参加 • チームボードの導入(p.14) 合宿後 • スポット参加メンターの関わり • サポートの度合いにムラがある 2016年メンターTシャツ(青) 16
  • 17. ISECON2016 渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを引き出す組織的メンタリング」, ISECON2016, 2017.3.11 受講生への教育効果 (1) –メンタリングでサポートした問題解決の事例- • 2016年度 enpitsu –集GO!- • 2015年度 みんなといっしょ • 子供の学校帰りなどの安全性を確認するモバイルアプリケーション 混雑した場所での待ち合わせを支援するWebアプリケーション 問題:待ち合わせ相手の場所の提示方法 最小限の実現方法「相手が近く にいたら通知する」を祭り会場 で検証し、有効性を確認 ARで正確な場所を 表示したいが 技術面で苦戦 「最小限できることで有効性を評価しよう」 実現可能な技術について相談に乗る 最初の提案:子供の帰宅路の 怪しい人情報を提示 疑心暗鬼になり 余計心配 というコメント 提案内容の変更:子供が信頼できる人や 友人と一緒にいるかをどうかを提示 親が本当に知りたいことは何か インタビューから議論 17
  • 18. ISECON2016 渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを引き出す組織的メンタリング」, ISECON2016, 2017.3.11 受講生への教育効果 (2) -受講生のコンピテンシー向上- • PROG コンピテンシーテスト結果 • 2014年度(実施前)と2015年度(実施期間)で比較 0 1 2 3 4 5 6 7 2014年 2015年 対自己基礎力(特に自身創出力,行動持続力)と 対課題基礎力(特に課題発見力,計画立案力)が向上 18
  • 19. ISECON2016 渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを引き出す組織的メンタリング」, ISECON2016, 2017.3.11 メンタリングに関する評価 (1) -メンター呼び出しシステムの利用- • 呼び出し傾向 • 第一週前半および,第二週後半にシステム利用が増加 • 第一週はテーマ洗練のためのアイディア確認,コメント • 第二週は実装に関する対応 • 質問内容 • AndroidやRuby on Railsなど開発技術に関する質問が最多 (35%) • 法律や位置情報など専門的な知識も多い (8%) • メンターへの参考意見聴取 (11%) • 備品不足(付箋,紙など) (12%) • アンケートのコメントより抜粋 • enPiT GOはかなり面白い取り組み だと思った • enPiT GOのおかげでメンターとの距離が 遠くても呼びやすかったのが良かった • くだらないことでも呼んでも大丈夫だと言う点(メンターGOはその存在自体が キャッチーで、なおかつとても有用でした)が本当に楽でした。いいアドバイ スじゃなかったな?と思ったら次の方、っていうように楽に次も声をかけるこ とが出来たので有りがたかったです。 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1 質問内容内訳 開発技術 専門知識 備品 参考意見 その他 19
  • 20. ISECON2016 渡辺知恵美, et. al,「PBLにおいて学び合いを引き出す組織的メンタリング」, ISECON2016, 2017.3.11 メンタリングに関する評価 (2) - 受講生へのアンケート - • アンケートは2016年度のみ実施 • コメントより抜粋 • 親身になって相談に乗ってくださりました • こうすることもできるよねという新しいアイデアや指針を頂けたのは非常に良 かったです。 • 幅広い知識で様々な角度から考えていただき、とても助かりました。 • 授業外でも親しく話しかけてくださったりして、2週目はとくに親身になって くださって、大変助かりました。うまくいかなかったら聞いてもいいんだ、と いう気持ちでチームづくりができて、存在だけでもとても支えてもらいました! ありがとうございました! • 今までの大学生活では考えられないような能力をみせてもらった。そういう人 に近づけるようになりたい。  約9割の受講生から「声をかけやすく的確な対応である」と評価  合宿中の改善により,合宿2週目の評価が上がった 20