プルトニウムのリサイクル: 国際的安全保障、経済性、そして廃棄物処分 ヴィクター・ギリンスキー

1. プルトニウムのリサイクル：
国際的安全保障、経済性、
そして廃棄物処分
Victor Gilinsky
ヴィクター・ギリンスキー
東京
2015年11月6日

2. プルトニウムを燃料として扱うか、
核爆発の材料として扱うか？
• 世界の原子力界の元々のゴールは、いずれプルトニウムを燃
料とする新型原子炉を活用することだった。
• これは魅力のある概念だが、無視されていたものがある：（１）経
済性､それに（２）核爆発の材料に頼ることの国際的危険性だ。
• 後になって、何処かの国がプルトニウムを核兵器用に使うことを
決めた場合、それを防ぐ適切な手段が存在しない。
• IAEAの査察で探知して警鐘をというのでは間に合わない。なぜ
なら分離済みプルトニウムは短期間で核兵器製造に使えるから。
• このため、フォード米大統領は1976年に次のように結論：プルト
ニウム燃料の使用は、世界が「関連した核拡散リスクを効果的
に克服できる」まで中止すべきである。
• 我々は、まだ、リスクを「効果的に克服」できていない。
• 制限が必要である。だが、これが受け入れられるのは、先進国、
核兵器国も含めすべての国に適用された場合だけである。

3. プルトニウム：芳しくない経済性
• 今日では、六ヶ所運転を支持する日本の著名な科学者・元政府
関係者らも、プルトニウムのリサイクルは経済的でないと認めて
いる（vimeo.comでCSISのインタビューを参照）。
• たとえば、鈴木篤之東京大学名誉教授は、プルトニウム・リサイ
クル技術の実証が重要だと言うが、プルトニウム燃料サイクルを
商業的に運用することは「経済的には必要ない」と述べる。
• 六ヶ所再処理工場は、「無用の長物」となってしまっている。
• それにもかかわらず原子力界の支持派は、この工場をプルトニ
ウムを燃料とする新型原子炉という元の夢へのリンクと見ている。
• しかし、プルトニウムを燃料とする将来という目標は、経済的に
いってますます非現実的になっているように見える。
• さらに重要なのはこの目標は国際的安全保障と相容れないとい
うことだ。国際的安全保障こそが最優先事項でなければならない。

4. 再処理は廃棄物処分の助けになるか？
• 再処理推進論の一つは、廃棄物の量を減らし、費用のかかる地層
処分場での処分を単純化するというものだ。
• 実際には、再処理は放射性廃棄物の貯蔵・処分を複雑にし、事故
や漏れのリスクを大きくする。
• また、少なくとも米・日・英のような民主主義国家においては、住民
による抵抗のため、地層処分場ができるかどうかが疑わしい。
• 原子力関連機関がいろいろ約束しているが、これらの国々の何処
も、地層処分場の建設開始にさえ至っていない。
• 現実的には、放射性廃棄物は－－使用済み燃料にせよ再処理廃
棄物にせよ－－地表の施設に無期限に置かれ続けることになる。
• 最も単純で、安上がりかつ安全なアプローチは、使用済み燃料を
「乾式貯蔵キャスク」に入れることだ（一つの炉の運転期間全体で
必要なキャスク数：100基）。