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AHPワークショップにおける
選択肢と評価基準の決め方
Ver. 6
北海道大学CoSTEP
石村源生
2014/12/21
AHPワークショップの目的とAHPにおける目的
• AHPワークショップの目的≠ AHPにおける目的
• AHPワークショップの目的
– ワークショップの目的は、「主催者が達成したいこと」である。
• 例:当事者と費等自社のギャップを、主催者ならびに参加者が知る
– その際、合意形成や意思決定といった「結果」よりも、単独での
作業とグループワークを通じた気づきとその共有、というプロセ
スを重視する。
• AHPにおける目的
– AHPのシナリオの中で「達成すべきこと」として主催者が設定する
もの
– 例:科学館の特定の既存の展示を、それが扱う内容自体は変え
ずに、「未来の科学館」の展示にふさわしいものにつくりかえる
AHPにおける目的、手段の関係
手段1
目的
手段2 手段3 手段4
目指すべきゴール
目的を達成する
ための手段
・・・
たくさん
ある
AHPにおける目的、機能、手段の関係
機能1
手段1
機能2 機能3
目的
手段2 手段3 手段4
目指すべきゴール
目的を達成する
ための手段
「目的を達成するため
の手段」のもたらす価
値・機能・副作用
・・・
・・・
たくさん
ある
たくさん
ある
AHPにおける目的、選択肢、評価基準の関係
評価基準A
選択肢A
評価基準B 評価基準C
目的
選択肢B 選択肢C 選択肢D
目指すべきゴール
「目的を達成す
るための手段」
のうち代表的な
もの
「目的を達成するため
の手段」のもたらす価
値・機能・副作用のう
ち、選択肢を評価す
る際に特に重視した
いもの
絞り込む
絞り込む
AHPにおける目的、選択肢、評価基準の意味
概念 意味 満たすべき条件 特徴
目的 目指すべきゴール •ワークショップの参加者にとって現実感があり、取り組むべき意義
があると感じられるもの
選択肢 「目的を達成するた
めの手段」のうち代
表的なもの
•複雑な説明を必要としない、わかりやすいもの
•複数の中から一つだけ選択するもの
•現実に選択できるもの(抽象的なものではなく具体的な製品、行
為、場所、時期、政策、企画、事業活動などであること)。
•実現可能性の高いもの(コスト、必要時間、難易度、合法性、倫
理性などの観点から)
•すでに「選択肢」として現実社会に存在しており、リアリティーのあ
るものが一番良い。
•わざわざ新しい「企画」などを考案しなければならないものは非常
に手間がかかる上にそれが有効な選択肢になっているという保証
も無いので、できるだけパッケージになっている既存のものを選択
肢として流用し、ワークショップ設計者はむしろ評価基準の設定に
おいてオリジナリティを追求した方がよい。
•あるいは折衷案として、既存のもの同士の新しい「組み合わせ」を
選択肢にすることはそれなりに妥当と言える。
一つの選択
肢には、様々
な価値・機
能・副作用が
含まれている
評価基準 「目的を達成するた
めの手段」のもたら
す価値・機能・副作
用のうち、選択肢を
評価する際に特に
重視したいもの
•程度の差こそあれ「目的の達成に結びつく」とそれなりに納得でき
るもの
•価値・機能・副作用(がいかに少ないか)を表す言葉であること
•互いに重複しないこと
•その評価基準の観点から見て、評価の対象となるものが優れてい
るかどうかを判断できること
別の言い方をすると・・・
• 目的
– 目指すべきゴール
– 達成すべき課題、あるいは、現状において何か問題
があって、それを解決するということ
– 例:
• 問題:青少年科学館には20代以上の来館者が少ない
• 目的:青少年科学館に20代以上の来館者を増やす
別の言い方をすると・・・
• 選択肢
– 選択肢とは、課題を達成するため、あるいは問題を解決するた
めの手段である。
– したがって、前述した「できるだけパッケージになっている既存
のものを流用」という条件は、「取り扱おうとしている対象の現
状のなかにすでに存在しているもの」という意味ではない。「対
象が現状において抱えている問題を解決するために、“対象の
外の”現実社会から調達可能なもの」という意味。
• 例:「携帯電話を3種類の中から選ぶ」という場合
– 取り扱おうとしている対象:自分
– 現状が抱えている問題:今持っている携帯電話の機種が古く、様々なコミュニ
ケーションや業務に支障を来していること
– 問題解決の手段(=選択肢):「既存の」携帯電話3種類のうちいずれかを買う
こと
• この場合、自分は現状で最新の携帯電話を持っていないわけだから、
自分の中に当然解決手段は無い。自分の外に存在する「既存の」携帯
電話を買う、ということが「問題を解決すること」になる。
別の言い方をすると・・・
• 選択肢
– またこれは、選択肢はあまり考えずに適当に決めても良い
という意味では無い。
– 「問題解決の手段」である以上、それを選択したならば「何
らかの具体的なアクション」を始められるような内容・形式
もの(少なくとも、回答者にそのような具体的なアクション
をイメージさせるようなもの)であり、なおかつそれが問題
の解決のためのアクションであると理解されるような内容・
形式のものでなければならない。
– そのためには、たとえ「パッケージになっている既存のもの
を流用」するのであっても、どの既存のものを選択肢として
流用するか、については熟慮が必要である。
別の言い方をすると・・・
• 選択肢
– 「現実社会から調達可能」「既存」とは
• 「現実社会から調達可能」「既存」とは、必ずしも既に現在製品やサービスとし
て売られているもの、といった意味ではない。新しく作るものであってもよい。
• 「新しく作るもの」でなおかつ「現実社会から調達可能」「既存」とはどういう意
味か。それは、「現実社会において既に存在する手段によって妥当なコストで
実現可能なこと(あるいは、少なくとも実現に向けてどう努力すれば良いか)
がほぼ明白であるようなもの(あるいは具体的なイメージがわくもの)」という
意味である。
– 選択肢は「コンセプト」ではない
• コンセプトそのものを直接手に入れることはできない。我々が手に入れること
が出来るのは、せいぜいコンセプトを実現する(であろう)ような具体的なモノ
やサービスである。
• 選択肢が抽象的になればなるほど、選択肢自体の共通イメージを持ちにくく
なるので、できるだけ具体的に。あるいは共通イメージを持ちやすい表現で。
• 繰り返しになるが、選択肢は「問題解決の手段」である以上、それを選択した
ならば「何らかの具体的なアクション」を始められるようなもの(少なくとも、回
答者にそのような具体的なアクションをイメージさせるようなもの)でなければ
ならない。
別の言い方をすると・・・
• 選択肢
– 選択肢と現実社会
• 選択肢とは、現状において生じている問題を解決するための手段
であり、その手段を調達することができる場所が「現実」社会である。
「今見えている現実社会の中でせいぜいがんばって用意できる問
題解決手段」が「選択肢」である。
• 短く言うと、選択肢とは「現実の中から調達可能な問題解決手段」
であると言ってもいい。
– 「不完全な混合物」としての選択肢
• 選択肢は、現実社会から調達してくるものである。現実社会は、
AHPで設定した「目的」のために存在するわけではないから、当然、
目的を達成するためのちょうどよい手段がごろごろ転がっているわ
けではない。従って選択肢は不完全であり、かつ、色々なものが混
ざっている。
• だからこそ、複数の「評価基準」によって「選択肢」を評価する必要
性が生じるのである。
別の言い方をすると・・・
• 選択肢
– やってはならないこと
• 選択肢の中に「問題が解決された状態」を組み込んではならない。
– 例1:「20代以上の来館者がたくさん来るような科学館」→×
– 例2:「様々な業務に支障を来さないような携帯電話」→×
– 選択肢とは、あくまで問題を解決するための具体的な手段として、現実社会か
ら調達できるものでなければならない。
• 選択肢を適当に決めてはならない。
– AHPワークショップにおいて「プロセスを重視する」とは、「ワークショップの結果
選択肢の中のどれが選ばれるかは必ずしも最重要ではない」という意味であり、
ワークショップの設計段階で主催者が選択肢をどう決めるか、ということとは全
く別の話である。
– また、「できるだけパッケージになっている既存のものを選択肢として流用」とい
うのは、一から「企画」を立ててそれを選択肢とするのは主催者側に非常に大
きな負担がかかる割には参加者に伝わりにくいので原則として避けるべき、と
いう意味であり、既存のものをあまり深く考えずにひっぱってくればよいという
意味では無い。
– つまり、決して選択肢の決め方はどうでもよい、という意味では無い。むしろ、
熟慮の末適切に決められた選択肢があってこそ、豊かなプロセスが産まれる。
– 繰り返しになるが、選択肢は「問題解決の手段」である以上、それを選択したな
らば「何らかの具体的なアクション」を始められるようなものでなければならない。
別の言い方をすると・・・
• 評価基準
– 「現実」社会から調達した選択肢が、目的=目指すべきゴールに対してどれ
だけ有効かを測る基準。
– 評価基準は、選択肢の調達元の「現実」社会がどうであろうと、選択肢が
目指すべきゴールに対してどれだけ有効かを測る。
– 「目指すべきゴールに対してどれだけ有効かを測る」ということは、言い換え
れば「理想」にどれだけ近づいているかを問う、ということ。
– 一方、選択肢は、現状において生じている問題を解決するための手段であ
り、その手段を調達することができる場所が「現実」である。 「今見えている
現実社会の中でせいぜいがんばって用意できる問題解決手段」が「選択
肢」なのである。
– 短く言うと、選択肢とは「現実の中から調達可能な問題解決手段」であると
言ってもいい。
– したがって大雑把には、 「選択肢=現実」「評価基準=理想」 と言うことが
できる。
– つまりAHPとは、「選択肢=現実」を「評価基準=理想」の観点から評価し、
目的を達成するために最も優れた選択肢はどれか、を考えることであるとも
言える。
テーマと目的(今回の例)
• テーマ
– 未来の科学館
• 目的設定の方針:
– テーマの範囲内で、達成を目指すべき具体的な状態を(色々と思い浮かぶだろ
うが)どれか一つ「目的」として定める。
• 目的設定の例:
– 科学館の特定の既存の展示を、それが扱う内容自体は変えずに、「未来の科
学館」の展示にふさわしいものにつくりかえる
– 「位置エネルギーと運動エネルギーの関係を学ぶ展示」を「未来の科学館」の展
示にふさわしいものにつくりかえる
– 「位置エネルギーと運動エネルギーの関係を学ぶ展示」と関連づけて、 「未来の
科学館」の展示にふさわしいイベントやワークショップを行う。
– 科学館の中で、直接的には科学とは全く関係のないイベントを行い、科学の無
関心層が積極的に施設に足を運ぶような「未来の学びと体験の場」を創り出す。
– 科学館が、直接的には科学とは全く関係の無い施設や団体、企業と全面的に
連携することによって、科学館のイメージを一新し、科学の無関心層が積極的
に施設に足を運ぶような「未来の学びと体験の場」を創り出す。
目的設定にあたって決めなければならない
こと
• 目的として採りあげるのは施設「全体」なのか、「個別の展示」な
のか、「個別の活動プログラム」なのか
• 目的として採りあげる施設、展示、プログラムは「既存のもの」な
のか「今までに存在しない全く新しいもの」なのか
– 「既存のもの」の例:
• 青少年科学館の実在する展示
• 目黒寄生虫博物館
• チームラボの作品群
• 科学館の展示の範囲で考えるのか、それ以外のものも含めて考
えるのか
– 「それ以外のもの」の例:
• 遊園地/家電量販店/書店/スーパーマーケット/スポーツジムなど
他の施設と融合した科学館
• テレビ/新聞/ウェブなど他のメディアと融合した科学館
例1:青少年科学館に実在する展示の
バージョンアップ
概念 意味 例
目的 目指すべきゴール 「位置エネルギーと運動エネルギーの関係を学ぶ展示」を「未来の科学
館」の展示にふさわしいものにつくりかえる
選択肢 「目的を達成するための
手段」のうち代表的なも
の
1. 来館者自身が「位置エネルギーと運動エネルギー」を持つ「物体」に
なって、両者の関係を体験できる展示
2. 自然界や社会の中にある様々な「位置エネルギーと運動エネルギー
の関係」の例を、画面上のリンクをたどりながら関連性の高い順にど
んどん調べることができる展示
3. 来館者が見つけた「位置エネルギーと運動エネルギーの関係」を動
画で投稿でき、他の来館者と共有できる展示
評価基準 「目的を達成するための
手段」のもたらす価値・
機能・副作用のうち、選
択肢を評価する際に特
に重視したいもの
1. 学びの動機付けの強さ
• この展示がきっかけとなって、自分でもっと調べたり考えたり
実験したりしてみたくなるか
2. 体験の楽しさ
• 必ずしも科学や学習と関係ない部分でどれだけ楽しい体験を
提供できるか
3. 独自性
• 他のメディアでは代替できない、科学館展示ならではの体験
を提供できるか
例2:科学館と「既存の別のもの」の組
み合わせ
概念 意味 例
目的 目指すべきゴー
ル
科学館と「既存の別のもの」を組み合わせることによって、来館者に、従来に無い体験価値を
提供する。
(※実際に物理的に融合させて新しい施設をつくるとコストがかかりすぎるので既存の施設は
そのままにして主としてソフト面で連携していく。)
選択
肢
「目的を達成する
ための手段」のう
ち代表的なもの
1. 科学館と「家電量販店」を組み合わせる
• 家電量販店の商品に使われている科学の原理やテクノロジーを解説したり、体験の場を提供し
たりする。
2. 科学館と「美術館」を組み合わせる
• 科学館の個々の展示物、展示ゾーンと関係する美術作品を同じ場所に展示する。
• 科学館展示」の写生教室、撮影教室を開く。
3. 科学館と「図書館」を組み合わせる
• 各展示に関係する書籍が、各展示ゾーンに配置されていて、その場で読んだり借りたりできる。
書籍は絵本から専門書まで。自分に合ったレベル、切り口のものを探せる。
4. 科学館と「100円ショップ」を組み合わせる
• 100円ショップの商品を使う科学工作教室を開催したりする。
評価
基準
「目的を達成する
ための手段」のも
たらす価値・機
能・副作用のうち、
選択肢を評価す
る際に特に重視
したいもの
1. 学びの動機付けの強さ
2. 体験の楽しさ
3. 独自性
4. 相乗効果
• 科学館と組み合わせる「既存の別のもの」にとって、どれだけメリットがあるか
作業の進め方(1)
1. テーマの範囲内で、達成を目指すべき具体的な状態をどれか
一つ「目的」として定める。
2. 「目的を達成するために役に立ちそうな手段」をできるだけたく
さん挙げてみる。
3. 全く白紙の状態だと発想が出にくく、出ても発散するので、
「手段の種類、カテゴリ」に何らかの具体的・現実的な縛りを設
ける(例1、2参照)。
4. 実現可能性を考慮して上記「手段」を絞り込む。
5. 挙げられた「目的を達成するための手段」のうち代表的なもの
を、前述の基準に照らし合わせながらいくつか選び、これを
「選択肢」とする。
作業の進め方(2)
5. 「目的を達成するための手段」のもたらす価値・機能・副作用のうち、
選択肢を評価する際に特に重視したいものをいくつか選び、これを
「評価基準」とする。
– 質の高いゴールに向かってワークショップを行えるかどうかを決めるの
はこの部分。ここで最も知恵を絞る必要がある(むしろこの作業自体を
ワークショップにしてもいいくらい)。
– 「価値・機能・副作用」を表す言葉を安易に決めてしまわない。最初は
ブレスト的に直感的に言葉を挙げてもいいが、可能な限り練り上げて
いく。この選択肢のリストが、目的が達成されるかどうかを判断する関
門になる。
– また、「テーマに興味を持った理由」を思い出して、求めている結果がう
まくあぶり出せるように評価基準を設定する。
6. このとき、「選択肢」ではなく、絞り込む前の「目的を達成するための
手段」のもたらす価値・機能・副作用のうちから選ぶことが大切。
– 選択肢を出発点にすると「選択肢」と「評価基準」が一対一対応になっ
てしまう危険性がある。
– 本来抽出したい価値は、便宜的に数を減らした選択肢の中ではなく、
最初に列挙した「目的を達成するための手段」の中にこそより豊かな形
でちりばめられてはずだからである。
作業の進め方(3)
7. 決定した各評価基準の観点から、一つ一つの選択肢がどの程度優
れているかをおおまかに考えてみる。
8. ここで、ある評価基準の観点から見たとき、次のようなことが見いだ
されたとすると、選択肢もしくは評価基準が不適切と言える。特に、
選択肢を見直した方がよい場合が多い。
– どの選択肢も極めて低い評価しか与えられなかったり、逆に全ての選
択肢が評価基準を高い水準で満たしていたりする。→評価基準のハー
ドルと選択肢のクオリティが噛み合っていない。
– どの選択肢も、評価に差が出ない。
– どの評価基準の観点から見ても評価の高い選択肢と、逆にどの評価
基準から見ても表顔低い選択肢しか無い。→選択肢がジレンマ状況
(トレードオフ)を含んでいない。選択肢に、あらゆる点から素晴らしいも
のと、あらゆる点からダメなものしかない。
– 評価のしようがないような漠然とした選択肢が並んでいる。
– 選択肢は具体的だが、逆に評価基準がわかりにくすぎて、選択肢を評
価するための適切な「モノサシ」になっていない。
作業の進め方(4)
9. 上記のような問題が生じた時には、その問題を解決する方向
に選択肢を変えていく。できるだけここで解決する。
10. それでもダメな場合は、評価基準を再検討する。
11. それでもダメな場合は、目的を再検討する。
作業の全体像
機能1
手段1
機能2 機能3
目的
手段2 手段3 手段4
・・・
・・・
選択肢1 選択肢2 選択肢3
評価基準1 評価基準2
目指すべきゴール
目的を達成するための手段
「目的を達成するための手段」
のもたらす価値・機能・副作用
①目的を達成するため
に役立つ手段を考える
②手段のもたらす価値・
機能・副作用を考える
④「手段」のうち代表的なもの
を「選択肢」として抜き出す
⑤「機能」のうち特に重視したいも
のを「評価基準」として抜き出す
③機能と目的の
整合性をチェック
⑥目的、手段、評価基準全体の整合性をチェック
評価基準の作り方についての別案
• チームラボの展示を利用する
– まず、みんなで体験してみる。
– どこに魅力があるか、列挙する。
• 「参加体験型」「インタラクティブ」「テクノロジーがふんだんに使われている」「アートとテクノ
ロジーの融合」などはダメ。なぜなら、それらの魅力を持っているものは他にもいくらでもあ
るから。「チームラボの展示」ならではの、唯一無二の価値、魅力の本質を探り当てて言葉
で表現することを目標にして、できる限り知恵を絞る。
– グルーピングなどにより、3つ程度重要な、「魅力を生み出す原因や特徴」を抽出する。
– これらをそのまま、先ほどの例1、2の「選択肢」の「評価基準」として採用する。
• 目黒の寄生虫博物館など、他の面白い科学館、博物館、美術館などに関して
同じ作業を行って「評価基準」をつくり、先ほどの例1、2に適用する。
• 科学館、博物館、美術館にしばられず、身の回りのあらゆるモノやコト、ヒトなど
で、自分が興味を持っているもの、はまっているもの、好きなもの、気になって仕
方ないものを列挙し、それぞれについて、どこに魅力があるかについて上記と同
様の手順で作業を行って「評価基準」をつくり、先ほどの例1、2に適用する。

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生成AIの回答内容の修正を課題としたレポートについて:お茶の水女子大学「授業・研究における生成系AIの活用事例」での講演資料
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生成AIの回答内容の修正を課題としたレポートについて:お茶の水女子大学「授業・研究における生成系AIの活用事例」での講演資料
 

AHPワークショップにおける選択肢と評価基準の決め方

  • 2. AHPワークショップの目的とAHPにおける目的 • AHPワークショップの目的≠ AHPにおける目的 • AHPワークショップの目的 – ワークショップの目的は、「主催者が達成したいこと」である。 • 例:当事者と費等自社のギャップを、主催者ならびに参加者が知る – その際、合意形成や意思決定といった「結果」よりも、単独での 作業とグループワークを通じた気づきとその共有、というプロセ スを重視する。 • AHPにおける目的 – AHPのシナリオの中で「達成すべきこと」として主催者が設定する もの – 例:科学館の特定の既存の展示を、それが扱う内容自体は変え ずに、「未来の科学館」の展示にふさわしいものにつくりかえる
  • 4. AHPにおける目的、機能、手段の関係 機能1 手段1 機能2 機能3 目的 手段2 手段3 手段4 目指すべきゴール 目的を達成する ための手段 「目的を達成するため の手段」のもたらす価 値・機能・副作用 ・・・ ・・・ たくさん ある たくさん ある
  • 5. AHPにおける目的、選択肢、評価基準の関係 評価基準A 選択肢A 評価基準B 評価基準C 目的 選択肢B 選択肢C 選択肢D 目指すべきゴール 「目的を達成す るための手段」 のうち代表的な もの 「目的を達成するため の手段」のもたらす価 値・機能・副作用のう ち、選択肢を評価す る際に特に重視した いもの 絞り込む 絞り込む
  • 6. AHPにおける目的、選択肢、評価基準の意味 概念 意味 満たすべき条件 特徴 目的 目指すべきゴール •ワークショップの参加者にとって現実感があり、取り組むべき意義 があると感じられるもの 選択肢 「目的を達成するた めの手段」のうち代 表的なもの •複雑な説明を必要としない、わかりやすいもの •複数の中から一つだけ選択するもの •現実に選択できるもの(抽象的なものではなく具体的な製品、行 為、場所、時期、政策、企画、事業活動などであること)。 •実現可能性の高いもの(コスト、必要時間、難易度、合法性、倫 理性などの観点から) •すでに「選択肢」として現実社会に存在しており、リアリティーのあ るものが一番良い。 •わざわざ新しい「企画」などを考案しなければならないものは非常 に手間がかかる上にそれが有効な選択肢になっているという保証 も無いので、できるだけパッケージになっている既存のものを選択 肢として流用し、ワークショップ設計者はむしろ評価基準の設定に おいてオリジナリティを追求した方がよい。 •あるいは折衷案として、既存のもの同士の新しい「組み合わせ」を 選択肢にすることはそれなりに妥当と言える。 一つの選択 肢には、様々 な価値・機 能・副作用が 含まれている 評価基準 「目的を達成するた めの手段」のもたら す価値・機能・副作 用のうち、選択肢を 評価する際に特に 重視したいもの •程度の差こそあれ「目的の達成に結びつく」とそれなりに納得でき るもの •価値・機能・副作用(がいかに少ないか)を表す言葉であること •互いに重複しないこと •その評価基準の観点から見て、評価の対象となるものが優れてい るかどうかを判断できること
  • 7. 別の言い方をすると・・・ • 目的 – 目指すべきゴール – 達成すべき課題、あるいは、現状において何か問題 があって、それを解決するということ – 例: • 問題:青少年科学館には20代以上の来館者が少ない • 目的:青少年科学館に20代以上の来館者を増やす
  • 8. 別の言い方をすると・・・ • 選択肢 – 選択肢とは、課題を達成するため、あるいは問題を解決するた めの手段である。 – したがって、前述した「できるだけパッケージになっている既存 のものを流用」という条件は、「取り扱おうとしている対象の現 状のなかにすでに存在しているもの」という意味ではない。「対 象が現状において抱えている問題を解決するために、“対象の 外の”現実社会から調達可能なもの」という意味。 • 例:「携帯電話を3種類の中から選ぶ」という場合 – 取り扱おうとしている対象:自分 – 現状が抱えている問題:今持っている携帯電話の機種が古く、様々なコミュニ ケーションや業務に支障を来していること – 問題解決の手段(=選択肢):「既存の」携帯電話3種類のうちいずれかを買う こと • この場合、自分は現状で最新の携帯電話を持っていないわけだから、 自分の中に当然解決手段は無い。自分の外に存在する「既存の」携帯 電話を買う、ということが「問題を解決すること」になる。
  • 9. 別の言い方をすると・・・ • 選択肢 – またこれは、選択肢はあまり考えずに適当に決めても良い という意味では無い。 – 「問題解決の手段」である以上、それを選択したならば「何 らかの具体的なアクション」を始められるような内容・形式 もの(少なくとも、回答者にそのような具体的なアクション をイメージさせるようなもの)であり、なおかつそれが問題 の解決のためのアクションであると理解されるような内容・ 形式のものでなければならない。 – そのためには、たとえ「パッケージになっている既存のもの を流用」するのであっても、どの既存のものを選択肢として 流用するか、については熟慮が必要である。
  • 10. 別の言い方をすると・・・ • 選択肢 – 「現実社会から調達可能」「既存」とは • 「現実社会から調達可能」「既存」とは、必ずしも既に現在製品やサービスとし て売られているもの、といった意味ではない。新しく作るものであってもよい。 • 「新しく作るもの」でなおかつ「現実社会から調達可能」「既存」とはどういう意 味か。それは、「現実社会において既に存在する手段によって妥当なコストで 実現可能なこと(あるいは、少なくとも実現に向けてどう努力すれば良いか) がほぼ明白であるようなもの(あるいは具体的なイメージがわくもの)」という 意味である。 – 選択肢は「コンセプト」ではない • コンセプトそのものを直接手に入れることはできない。我々が手に入れること が出来るのは、せいぜいコンセプトを実現する(であろう)ような具体的なモノ やサービスである。 • 選択肢が抽象的になればなるほど、選択肢自体の共通イメージを持ちにくく なるので、できるだけ具体的に。あるいは共通イメージを持ちやすい表現で。 • 繰り返しになるが、選択肢は「問題解決の手段」である以上、それを選択した ならば「何らかの具体的なアクション」を始められるようなもの(少なくとも、回 答者にそのような具体的なアクションをイメージさせるようなもの)でなければ ならない。
  • 11. 別の言い方をすると・・・ • 選択肢 – 選択肢と現実社会 • 選択肢とは、現状において生じている問題を解決するための手段 であり、その手段を調達することができる場所が「現実」社会である。 「今見えている現実社会の中でせいぜいがんばって用意できる問 題解決手段」が「選択肢」である。 • 短く言うと、選択肢とは「現実の中から調達可能な問題解決手段」 であると言ってもいい。 – 「不完全な混合物」としての選択肢 • 選択肢は、現実社会から調達してくるものである。現実社会は、 AHPで設定した「目的」のために存在するわけではないから、当然、 目的を達成するためのちょうどよい手段がごろごろ転がっているわ けではない。従って選択肢は不完全であり、かつ、色々なものが混 ざっている。 • だからこそ、複数の「評価基準」によって「選択肢」を評価する必要 性が生じるのである。
  • 12. 別の言い方をすると・・・ • 選択肢 – やってはならないこと • 選択肢の中に「問題が解決された状態」を組み込んではならない。 – 例1:「20代以上の来館者がたくさん来るような科学館」→× – 例2:「様々な業務に支障を来さないような携帯電話」→× – 選択肢とは、あくまで問題を解決するための具体的な手段として、現実社会か ら調達できるものでなければならない。 • 選択肢を適当に決めてはならない。 – AHPワークショップにおいて「プロセスを重視する」とは、「ワークショップの結果 選択肢の中のどれが選ばれるかは必ずしも最重要ではない」という意味であり、 ワークショップの設計段階で主催者が選択肢をどう決めるか、ということとは全 く別の話である。 – また、「できるだけパッケージになっている既存のものを選択肢として流用」とい うのは、一から「企画」を立ててそれを選択肢とするのは主催者側に非常に大 きな負担がかかる割には参加者に伝わりにくいので原則として避けるべき、と いう意味であり、既存のものをあまり深く考えずにひっぱってくればよいという 意味では無い。 – つまり、決して選択肢の決め方はどうでもよい、という意味では無い。むしろ、 熟慮の末適切に決められた選択肢があってこそ、豊かなプロセスが産まれる。 – 繰り返しになるが、選択肢は「問題解決の手段」である以上、それを選択したな らば「何らかの具体的なアクション」を始められるようなものでなければならない。
  • 13. 別の言い方をすると・・・ • 評価基準 – 「現実」社会から調達した選択肢が、目的=目指すべきゴールに対してどれ だけ有効かを測る基準。 – 評価基準は、選択肢の調達元の「現実」社会がどうであろうと、選択肢が 目指すべきゴールに対してどれだけ有効かを測る。 – 「目指すべきゴールに対してどれだけ有効かを測る」ということは、言い換え れば「理想」にどれだけ近づいているかを問う、ということ。 – 一方、選択肢は、現状において生じている問題を解決するための手段であ り、その手段を調達することができる場所が「現実」である。 「今見えている 現実社会の中でせいぜいがんばって用意できる問題解決手段」が「選択 肢」なのである。 – 短く言うと、選択肢とは「現実の中から調達可能な問題解決手段」であると 言ってもいい。 – したがって大雑把には、 「選択肢=現実」「評価基準=理想」 と言うことが できる。 – つまりAHPとは、「選択肢=現実」を「評価基準=理想」の観点から評価し、 目的を達成するために最も優れた選択肢はどれか、を考えることであるとも 言える。
  • 14. テーマと目的(今回の例) • テーマ – 未来の科学館 • 目的設定の方針: – テーマの範囲内で、達成を目指すべき具体的な状態を(色々と思い浮かぶだろ うが)どれか一つ「目的」として定める。 • 目的設定の例: – 科学館の特定の既存の展示を、それが扱う内容自体は変えずに、「未来の科 学館」の展示にふさわしいものにつくりかえる – 「位置エネルギーと運動エネルギーの関係を学ぶ展示」を「未来の科学館」の展 示にふさわしいものにつくりかえる – 「位置エネルギーと運動エネルギーの関係を学ぶ展示」と関連づけて、 「未来の 科学館」の展示にふさわしいイベントやワークショップを行う。 – 科学館の中で、直接的には科学とは全く関係のないイベントを行い、科学の無 関心層が積極的に施設に足を運ぶような「未来の学びと体験の場」を創り出す。 – 科学館が、直接的には科学とは全く関係の無い施設や団体、企業と全面的に 連携することによって、科学館のイメージを一新し、科学の無関心層が積極的 に施設に足を運ぶような「未来の学びと体験の場」を創り出す。
  • 15. 目的設定にあたって決めなければならない こと • 目的として採りあげるのは施設「全体」なのか、「個別の展示」な のか、「個別の活動プログラム」なのか • 目的として採りあげる施設、展示、プログラムは「既存のもの」な のか「今までに存在しない全く新しいもの」なのか – 「既存のもの」の例: • 青少年科学館の実在する展示 • 目黒寄生虫博物館 • チームラボの作品群 • 科学館の展示の範囲で考えるのか、それ以外のものも含めて考 えるのか – 「それ以外のもの」の例: • 遊園地/家電量販店/書店/スーパーマーケット/スポーツジムなど 他の施設と融合した科学館 • テレビ/新聞/ウェブなど他のメディアと融合した科学館
  • 16. 例1:青少年科学館に実在する展示の バージョンアップ 概念 意味 例 目的 目指すべきゴール 「位置エネルギーと運動エネルギーの関係を学ぶ展示」を「未来の科学 館」の展示にふさわしいものにつくりかえる 選択肢 「目的を達成するための 手段」のうち代表的なも の 1. 来館者自身が「位置エネルギーと運動エネルギー」を持つ「物体」に なって、両者の関係を体験できる展示 2. 自然界や社会の中にある様々な「位置エネルギーと運動エネルギー の関係」の例を、画面上のリンクをたどりながら関連性の高い順にど んどん調べることができる展示 3. 来館者が見つけた「位置エネルギーと運動エネルギーの関係」を動 画で投稿でき、他の来館者と共有できる展示 評価基準 「目的を達成するための 手段」のもたらす価値・ 機能・副作用のうち、選 択肢を評価する際に特 に重視したいもの 1. 学びの動機付けの強さ • この展示がきっかけとなって、自分でもっと調べたり考えたり 実験したりしてみたくなるか 2. 体験の楽しさ • 必ずしも科学や学習と関係ない部分でどれだけ楽しい体験を 提供できるか 3. 独自性 • 他のメディアでは代替できない、科学館展示ならではの体験 を提供できるか
  • 17. 例2:科学館と「既存の別のもの」の組 み合わせ 概念 意味 例 目的 目指すべきゴー ル 科学館と「既存の別のもの」を組み合わせることによって、来館者に、従来に無い体験価値を 提供する。 (※実際に物理的に融合させて新しい施設をつくるとコストがかかりすぎるので既存の施設は そのままにして主としてソフト面で連携していく。) 選択 肢 「目的を達成する ための手段」のう ち代表的なもの 1. 科学館と「家電量販店」を組み合わせる • 家電量販店の商品に使われている科学の原理やテクノロジーを解説したり、体験の場を提供し たりする。 2. 科学館と「美術館」を組み合わせる • 科学館の個々の展示物、展示ゾーンと関係する美術作品を同じ場所に展示する。 • 科学館展示」の写生教室、撮影教室を開く。 3. 科学館と「図書館」を組み合わせる • 各展示に関係する書籍が、各展示ゾーンに配置されていて、その場で読んだり借りたりできる。 書籍は絵本から専門書まで。自分に合ったレベル、切り口のものを探せる。 4. 科学館と「100円ショップ」を組み合わせる • 100円ショップの商品を使う科学工作教室を開催したりする。 評価 基準 「目的を達成する ための手段」のも たらす価値・機 能・副作用のうち、 選択肢を評価す る際に特に重視 したいもの 1. 学びの動機付けの強さ 2. 体験の楽しさ 3. 独自性 4. 相乗効果 • 科学館と組み合わせる「既存の別のもの」にとって、どれだけメリットがあるか
  • 18. 作業の進め方(1) 1. テーマの範囲内で、達成を目指すべき具体的な状態をどれか 一つ「目的」として定める。 2. 「目的を達成するために役に立ちそうな手段」をできるだけたく さん挙げてみる。 3. 全く白紙の状態だと発想が出にくく、出ても発散するので、 「手段の種類、カテゴリ」に何らかの具体的・現実的な縛りを設 ける(例1、2参照)。 4. 実現可能性を考慮して上記「手段」を絞り込む。 5. 挙げられた「目的を達成するための手段」のうち代表的なもの を、前述の基準に照らし合わせながらいくつか選び、これを 「選択肢」とする。
  • 19. 作業の進め方(2) 5. 「目的を達成するための手段」のもたらす価値・機能・副作用のうち、 選択肢を評価する際に特に重視したいものをいくつか選び、これを 「評価基準」とする。 – 質の高いゴールに向かってワークショップを行えるかどうかを決めるの はこの部分。ここで最も知恵を絞る必要がある(むしろこの作業自体を ワークショップにしてもいいくらい)。 – 「価値・機能・副作用」を表す言葉を安易に決めてしまわない。最初は ブレスト的に直感的に言葉を挙げてもいいが、可能な限り練り上げて いく。この選択肢のリストが、目的が達成されるかどうかを判断する関 門になる。 – また、「テーマに興味を持った理由」を思い出して、求めている結果がう まくあぶり出せるように評価基準を設定する。 6. このとき、「選択肢」ではなく、絞り込む前の「目的を達成するための 手段」のもたらす価値・機能・副作用のうちから選ぶことが大切。 – 選択肢を出発点にすると「選択肢」と「評価基準」が一対一対応になっ てしまう危険性がある。 – 本来抽出したい価値は、便宜的に数を減らした選択肢の中ではなく、 最初に列挙した「目的を達成するための手段」の中にこそより豊かな形 でちりばめられてはずだからである。
  • 20. 作業の進め方(3) 7. 決定した各評価基準の観点から、一つ一つの選択肢がどの程度優 れているかをおおまかに考えてみる。 8. ここで、ある評価基準の観点から見たとき、次のようなことが見いだ されたとすると、選択肢もしくは評価基準が不適切と言える。特に、 選択肢を見直した方がよい場合が多い。 – どの選択肢も極めて低い評価しか与えられなかったり、逆に全ての選 択肢が評価基準を高い水準で満たしていたりする。→評価基準のハー ドルと選択肢のクオリティが噛み合っていない。 – どの選択肢も、評価に差が出ない。 – どの評価基準の観点から見ても評価の高い選択肢と、逆にどの評価 基準から見ても表顔低い選択肢しか無い。→選択肢がジレンマ状況 (トレードオフ)を含んでいない。選択肢に、あらゆる点から素晴らしいも のと、あらゆる点からダメなものしかない。 – 評価のしようがないような漠然とした選択肢が並んでいる。 – 選択肢は具体的だが、逆に評価基準がわかりにくすぎて、選択肢を評 価するための適切な「モノサシ」になっていない。
  • 22. 作業の全体像 機能1 手段1 機能2 機能3 目的 手段2 手段3 手段4 ・・・ ・・・ 選択肢1 選択肢2 選択肢3 評価基準1 評価基準2 目指すべきゴール 目的を達成するための手段 「目的を達成するための手段」 のもたらす価値・機能・副作用 ①目的を達成するため に役立つ手段を考える ②手段のもたらす価値・ 機能・副作用を考える ④「手段」のうち代表的なもの を「選択肢」として抜き出す ⑤「機能」のうち特に重視したいも のを「評価基準」として抜き出す ③機能と目的の 整合性をチェック ⑥目的、手段、評価基準全体の整合性をチェック
  • 23. 評価基準の作り方についての別案 • チームラボの展示を利用する – まず、みんなで体験してみる。 – どこに魅力があるか、列挙する。 • 「参加体験型」「インタラクティブ」「テクノロジーがふんだんに使われている」「アートとテクノ ロジーの融合」などはダメ。なぜなら、それらの魅力を持っているものは他にもいくらでもあ るから。「チームラボの展示」ならではの、唯一無二の価値、魅力の本質を探り当てて言葉 で表現することを目標にして、できる限り知恵を絞る。 – グルーピングなどにより、3つ程度重要な、「魅力を生み出す原因や特徴」を抽出する。 – これらをそのまま、先ほどの例1、2の「選択肢」の「評価基準」として採用する。 • 目黒の寄生虫博物館など、他の面白い科学館、博物館、美術館などに関して 同じ作業を行って「評価基準」をつくり、先ほどの例1、2に適用する。 • 科学館、博物館、美術館にしばられず、身の回りのあらゆるモノやコト、ヒトなど で、自分が興味を持っているもの、はまっているもの、好きなもの、気になって仕 方ないものを列挙し、それぞれについて、どこに魅力があるかについて上記と同 様の手順で作業を行って「評価基準」をつくり、先ほどの例1、2に適用する。