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チラシでたどる震災1000日 
http://www.asahi.com/shinsai_fukkou/otsuchiad/ 
新聞社がデータジャーナリズムに取り組んだ時に起きたこと 
朝日新聞デジタル編集部奥山晶二郎
それまでに取り組んでいたこと 
• ソーシャルリスニング 
「チラシでたどる震災1000日」の前には、ソーシャ 
ルリスニングに取り組んでいました。 
「ビリオメディア」という企画では、衆院選や参院選 
にからめて、 
ツイッター上で関心の高かった政策、候補者のツ 
イート分析などを記事にしました。 
参院選ツイッター分析-ビリオメディア 
http://ow.ly/BxOwg 
2013年7月26日朝日新聞紙面から
それまでに取り組んでいたこと 
• 研究室とのコラボ 
東京大学大学院の松尾豊研究室とはツイッター上 
の候補者の関係を可視化しました。 
参議院選挙立候補者相関図 
http://ow.ly/BxOEv 
2013年7月3日朝日新聞紙面から
チラシでたどる震災1000日とは 
• 5551枚のチラシの存在 
「チラシでたどる震災1000日」は5551枚の新聞 
折り込みチラシを分析し、 
そこから見えた被災地の日常を伝えました。 
パララックスを使った特設サイトを作り、紙面でも伝 
えました。 
2013年12月4日朝日新聞紙面から
チラシでたどる震災1000日とは 
• チラシに現れたもう一つの日常 
震災から2ヶ月はチラシが途絶えていました。 
町外の重機リース会社が出した1枚をきっかけ 
にチラシが再開。 
その後、店舗再開を知らせるチラシが相次ぎま 
した。
チラシでたどる震災1000日とは 
• 被災地の課題がチラシにも反映 
震災前はなかった不動産のチラシが急増したり、 
法律相談の案内が増えたり。 
チラシには、被災地の抱える課題が現れていま 
した。 
2013年12月4日朝日新聞紙面から
「何のために」常に考えた 
• 記憶の風化 
新しい領域に手を広げるからこそ、 
何のためにその手段やデータを使うのかを、常 
に考えるようにしました。 
「チラシでたどる震災1000日」で意識したのは、 
記憶の風化です。 
震災関連のニュースが少なくなる一方で、 
震災発生から1000日を迎える被災地の課題 
は深刻さを増していました。 
結果的に、住宅問題や人手不足など、これまで 
報道されてきたことを、 
あらためてチラシを通して確認してもらうというコ 
ンテンツになりました。 
2014年3月11日朝日新聞紙面から
研究室と一緒に作る 
• 専門分野は専門家へ 
「チラシでたどる震災1000日」は東京大学大学 
院の林香里研究室と、 
共同研究という形で取り組みました。 
専門家の力を借りることで広がる可能性を発見 
することができました。 
加えて、新聞社にしかできないことが何かを再 
確認することもできました。 
新聞社の強みである「課題設定能力」「価値判 
断」「発信力」を活かしながら、 
それ以外の部分は外部と積極的に連係していく 
意義を認識することができました。 
2013年12月4日朝日新聞紙面から
数字と現場のコラボ 
• 切り口のヒントは現場に 
• 数字を食べやすく 
5551枚のチラシから得られる情報は膨大なも 
のでした。 
そこから何が大事なのか整理するには現場の 
記者の情報が必要でした。 
役所やボランティア団体などから得られる情報 
とチラシのデータを突き合わせることで、 
「混乱期」「復旧期」「停滞期」という三つの時期 
の視点が生まれました。 
現地でしか得られないエピソードと数字を組み 
合わせることで、 
データを読みやすく、「食べやすく」することがで 
きました。 
2013年12月4日朝日新聞紙面から
ぱたぱたと現れるチラシ 
• 3つの要素を1つの器に 
素材を揃えた上で、ウェブならでの見せ方にもこ 
だわりました。 
最初の画面は5551枚というチラシの圧倒的な 
枚数を伝えるため、 
グリット上にチラシを並べマウスオーバーで拡大 
する動きをつけました。 
本編では、震災1000日という区切りを意識して、 
積み上がるチラシとその時点の日数を表現しま 
した。 
チラシの枚数を起点に、その時にあったエピ 
ソードを中央に配置し、 
対応する町の出来事を左側で年表にしました。 
それらの情報をページスクロールさせることで 
次々と現れるようにしました。
わかりやすさとの葛藤 
• 融通の効かないデータ 
目的をしっかり設定しつつ、先入観には引っ張 
られないよう気をつけました。 
求人チラシの変化を分析した際には、 
現地の人手不足を反映してチラシも増加してい 
るという仮説を立てました。 
被災地では、民宿が予約でいっぱいだったり、 
人手不足で工場が閉鎖したり、 
様々な話を聞いていたからです。 
しかしデータを見る限り、チラシの数は減ってい 
ました。 
チラシを使った求人は効果がなかったからです。 
データを出発点にするかぎり、わかりやすくない 
結果も受け入れざるを得ませんでした。
やることはいっぱい 
• カジュアルにデータジャーナリズム 
• ソーシャルリスニングとのほどよい距離感 
• マッピングの可能性 
データジャーナリズムの対象は震災のような大きなテーマだけではありません。 
突発の事件事故が起きたら、即日コンテンツ化できるような動きが求められます。 
汚職事件で議員が減っていく様子は、単純なgifアニメでも表現することができます。 
(例:市議20人中15人が逮捕、を見える化してみた:http://ow.ly/BxQa1 ) 
ソーシャルリスニングではノイズの多さから、データ分析は困難だと思われがちです。 
しかし、人の眼と組み合わせることで、ある程度の精度を担保することもできます。 
(例:日本戦ツイート分析:http://ow.ly/BxQib ) 
地図上にコンテンツを配置することで、新たな視点を提供することもできます。 
(例:東京オリンピック1964:http://labo.wtnv.jp/2014/05/olympic1964.html) 
データジャーナリズムと一口に言っても、様々な舞台があるのです。
一緒にやりませんか? 
データジャーナリズムはデータを組み合わせることで、 
新しい視点や発見を発掘していきます。 
組み合わせるものはデータに限りません。 
新聞社と研究室のように、お互いの長所を活かせる組み合わせは、 
もっと積極的に広げていくべきだと思っています。 
データを持っているけれど発表の場がない団体。 
効果的な見せ方を知っているけど、載せるデータがないチーム。 
関心の持つ色々な人たちが一緒に取り組めるのが、 
データジャーナリズムの本当の面白さではないでしょうか。 
こんなデータ持っている、 
こんな見せ方を知っている、 
関心のある人がいたら、ぜひ声をかけてください!
チラシでたどる震災1000日 
http://www.asahi.com/shinsai_fukkou/otsuchiad/ 
okuyama-s@asahi.com 
https://twitter.com/o98mas

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朝日新聞チラシでたどる震災1000日

  • 2. それまでに取り組んでいたこと • ソーシャルリスニング 「チラシでたどる震災1000日」の前には、ソーシャ ルリスニングに取り組んでいました。 「ビリオメディア」という企画では、衆院選や参院選 にからめて、 ツイッター上で関心の高かった政策、候補者のツ イート分析などを記事にしました。 参院選ツイッター分析-ビリオメディア http://ow.ly/BxOwg 2013年7月26日朝日新聞紙面から
  • 3. それまでに取り組んでいたこと • 研究室とのコラボ 東京大学大学院の松尾豊研究室とはツイッター上 の候補者の関係を可視化しました。 参議院選挙立候補者相関図 http://ow.ly/BxOEv 2013年7月3日朝日新聞紙面から
  • 4. チラシでたどる震災1000日とは • 5551枚のチラシの存在 「チラシでたどる震災1000日」は5551枚の新聞 折り込みチラシを分析し、 そこから見えた被災地の日常を伝えました。 パララックスを使った特設サイトを作り、紙面でも伝 えました。 2013年12月4日朝日新聞紙面から
  • 5. チラシでたどる震災1000日とは • チラシに現れたもう一つの日常 震災から2ヶ月はチラシが途絶えていました。 町外の重機リース会社が出した1枚をきっかけ にチラシが再開。 その後、店舗再開を知らせるチラシが相次ぎま した。
  • 6. チラシでたどる震災1000日とは • 被災地の課題がチラシにも反映 震災前はなかった不動産のチラシが急増したり、 法律相談の案内が増えたり。 チラシには、被災地の抱える課題が現れていま した。 2013年12月4日朝日新聞紙面から
  • 7. 「何のために」常に考えた • 記憶の風化 新しい領域に手を広げるからこそ、 何のためにその手段やデータを使うのかを、常 に考えるようにしました。 「チラシでたどる震災1000日」で意識したのは、 記憶の風化です。 震災関連のニュースが少なくなる一方で、 震災発生から1000日を迎える被災地の課題 は深刻さを増していました。 結果的に、住宅問題や人手不足など、これまで 報道されてきたことを、 あらためてチラシを通して確認してもらうというコ ンテンツになりました。 2014年3月11日朝日新聞紙面から
  • 8. 研究室と一緒に作る • 専門分野は専門家へ 「チラシでたどる震災1000日」は東京大学大学 院の林香里研究室と、 共同研究という形で取り組みました。 専門家の力を借りることで広がる可能性を発見 することができました。 加えて、新聞社にしかできないことが何かを再 確認することもできました。 新聞社の強みである「課題設定能力」「価値判 断」「発信力」を活かしながら、 それ以外の部分は外部と積極的に連係していく 意義を認識することができました。 2013年12月4日朝日新聞紙面から
  • 9. 数字と現場のコラボ • 切り口のヒントは現場に • 数字を食べやすく 5551枚のチラシから得られる情報は膨大なも のでした。 そこから何が大事なのか整理するには現場の 記者の情報が必要でした。 役所やボランティア団体などから得られる情報 とチラシのデータを突き合わせることで、 「混乱期」「復旧期」「停滞期」という三つの時期 の視点が生まれました。 現地でしか得られないエピソードと数字を組み 合わせることで、 データを読みやすく、「食べやすく」することがで きました。 2013年12月4日朝日新聞紙面から
  • 10. ぱたぱたと現れるチラシ • 3つの要素を1つの器に 素材を揃えた上で、ウェブならでの見せ方にもこ だわりました。 最初の画面は5551枚というチラシの圧倒的な 枚数を伝えるため、 グリット上にチラシを並べマウスオーバーで拡大 する動きをつけました。 本編では、震災1000日という区切りを意識して、 積み上がるチラシとその時点の日数を表現しま した。 チラシの枚数を起点に、その時にあったエピ ソードを中央に配置し、 対応する町の出来事を左側で年表にしました。 それらの情報をページスクロールさせることで 次々と現れるようにしました。
  • 11. わかりやすさとの葛藤 • 融通の効かないデータ 目的をしっかり設定しつつ、先入観には引っ張 られないよう気をつけました。 求人チラシの変化を分析した際には、 現地の人手不足を反映してチラシも増加してい るという仮説を立てました。 被災地では、民宿が予約でいっぱいだったり、 人手不足で工場が閉鎖したり、 様々な話を聞いていたからです。 しかしデータを見る限り、チラシの数は減ってい ました。 チラシを使った求人は効果がなかったからです。 データを出発点にするかぎり、わかりやすくない 結果も受け入れざるを得ませんでした。
  • 12. やることはいっぱい • カジュアルにデータジャーナリズム • ソーシャルリスニングとのほどよい距離感 • マッピングの可能性 データジャーナリズムの対象は震災のような大きなテーマだけではありません。 突発の事件事故が起きたら、即日コンテンツ化できるような動きが求められます。 汚職事件で議員が減っていく様子は、単純なgifアニメでも表現することができます。 (例:市議20人中15人が逮捕、を見える化してみた:http://ow.ly/BxQa1 ) ソーシャルリスニングではノイズの多さから、データ分析は困難だと思われがちです。 しかし、人の眼と組み合わせることで、ある程度の精度を担保することもできます。 (例:日本戦ツイート分析:http://ow.ly/BxQib ) 地図上にコンテンツを配置することで、新たな視点を提供することもできます。 (例:東京オリンピック1964:http://labo.wtnv.jp/2014/05/olympic1964.html) データジャーナリズムと一口に言っても、様々な舞台があるのです。
  • 13. 一緒にやりませんか? データジャーナリズムはデータを組み合わせることで、 新しい視点や発見を発掘していきます。 組み合わせるものはデータに限りません。 新聞社と研究室のように、お互いの長所を活かせる組み合わせは、 もっと積極的に広げていくべきだと思っています。 データを持っているけれど発表の場がない団体。 効果的な見せ方を知っているけど、載せるデータがないチーム。 関心の持つ色々な人たちが一緒に取り組めるのが、 データジャーナリズムの本当の面白さではないでしょうか。 こんなデータ持っている、 こんな見せ方を知っている、 関心のある人がいたら、ぜひ声をかけてください!