日本生態学会第65回全国大会 自由集会 W01 3月14日 16:00-18:00 A会場 画像認識・分類技術の生態学への応用と課題　～特に機械学習，深層学習を中心に http://www.esj.ne.jp/meeting/abst/65/W01.html 三好担当分「地理情報へのDeep Learning活用の可能性と、学習データセットに求められる要件」の発表資料

1. 地理情報への
Deep Learning活用の可能性と、
学習データセットに求められる要件
日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月 札幌)
自由集会 W01 3月14日 16:00-18:00 A会場
株式会社 Preferred Networks
三好 邦彦

2. 自己紹介
● 経歴
○ 十勝地方幕別町出身
○ 2008年3月 北海道大学大学院 情報科学研究科 修士卒業
○ 2008年4月～2017年3月 : 精密機器メーカー研究開発
○ 2016年4月～2018年3月 : 釧路公立大学皆月研究室 学術研究員
○ 2017年4月～現在 : 株式会社 Preferred Networks エンジニア
○ 2017年9月〜現在 : 東京大学生産技術研究所 関本研究室 協力研究員
● 受賞歴
○ 2015年 北海道オープンデータハッカソン クリプトンフューチャーメディア賞
○ 2016年 アーバンデータチャレンジ2015 ファイナル アプリケーション部門 金賞
○ 2016年 Mashup Awards Civil Tech部門 ファイナリスト

3. これまでの地理情報
● 地図としての利用
○ 交通網の記述
○ ランドマークの検索
○ 都市の記録
● 統計データとしての利用
○ 人口、土地利用、気象情報、標高、植生
年単位で変化する情報
手作業でメンテナンスされる(できる)情報

4. 地理情報の現況
● インターネットによる航空写真・衛星写真の入手性の向上
● 地理情報の検索頻度の増大(経路探索、ランドマーク検索)
● 億単位の端末から生み出されるGPSトラックデータの登場
● 各社Street View、ドローン等による撮影頻度・解像度の増大
データの更新頻度が秒〜月単位に
= 人手で扱いきれない情報量

5. 地理情報の活用例 : 自動化
● リアルタイムに使う
○ 位置情報を活用したアプリの流行
(Foursquare、Facebook、Ingress、Pokemon Go)
● 高度に可視化して使う
○ deck.gl、CS立体図、古地図
● データを推定・補完して使う
○ 位置情報をフル活用したテック企業の登場(Uber、Mobike)
さらなる活用の可能性は？

6. Deep Learningの応用例
Mask R-CNN (K. He et al., 2017) PaintsChainer (Preferred Networks, 線画: でろりさん)

7. 地理情報へのDeep Learningの活用の可能性
● データの種類・時間・空間をまたいで情報を転移できる
○ 人口密集地から過疎地への情報転移させる
○ 現在の情報を過去に転移させる
○ 他地域の統計情報を元に未測定地域を推定する
○ 高解像度情報と低解像度情報を組み合わせて解像度を補完する

8. 例 : 航空写真からのセグメンテーション・地図生成
https://github.com/phillipi/pix2pixhttps://www.azavea.com/blog/2017/05/30/deep-learning-on-aerial-imagery/

9. 例 : 航空写真からの境界データ生成
https://github.com/jremillard/images-to-osm

10. 地理情報と機械学習
● 地図を中心にタイル形式が活用されてきた
○ 緯度、経度、粒度によるインデキシング・単位の統一が同時に達成される
○ 世界ですでにメジャーな座標系
■ Googleマップ、Bingマップ、Yahoo!マップで用いられる
● 画像ベースの分析手法と親和性が高いため、機械学習とも相性が良い
○ 他分野の研究成果を地理情報にも適用できる可能性がある
https://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/bb259689.aspx

11. タイル = メルカトル投影法ベースの符号化
● 緯度経度をそれぞれ2^nで分割する手法で、検索性・可搬性に優れる
● ズームレベル(粒度)z、経度x、緯度yの3変数で1枚の画像を指す
● 一般的に「XYZ形式」のURLで提供される :
http://foo.com/map/bar/{z}/{x}/{y}.jpg
https://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/bb259689.aspx

12. 国土地理院もタイル形式でデータを提供
● 航空写真に限らず統計データ・リモートセンシングデータも配信中
● 生態に関するデータも入手可能
https://maps.gsi.go.jp/development/ichiran.html

13. 単位が揃えばなんでも組み合わせられる
● データ
○ 航空写真、地図、リモートセンシングデータ、DEM
● 緯度、経度
● 粒度
● 時間

14. 国土地理院タイルの活用例
(pix2pixによるモノクロ航空写真の着色)
模倣
生成
脱色
色復元
最新の航空写真
色復元モデルの学習
1930年代の航空写真
適用
航空写真は
国土地理院より

15. タイル化されているものは良いが…
● タイル化されていないデータに対してどう対処すべきか
● メッシュデータ
● 境界データ
● GPS等のトラックデータ
● タイルと同じ座標系に変換する必要がある
● R-Tree等の空間インデキシングはスパースな物体検索には向くが、
生態調査のような広域分析には向かない

16. XYZ形式のタイルの欠点
● 面積に比例して件数が増えるメッシュを
タイル単位で引き当てる探索コストが高い
● ズームレベルの異なるデータの重ねあわせが煩雑
● 2次元空間探索・粒度変化に対する可搬性が高いQuadKeyを導入すると解決

17. QuadKeyとは
● 緯度経度を2x2で4分割し、Z走査でハッシュコードを割り当てたもの
○ 各領域が0〜3の文字列で表現され、緯度経度の2軸分の情報を持つ
○ 階層的になっているので、必要な精度で止められる
○ 「タイル」と相互変換可能
● 文字列先頭一致検索で範囲を絞れる
● 東札幌駅
(東経141.3830度, 北緯43.0488度)の
ハッシュコードは
1312232010001210
出典:https://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/bb259689.aspx

18. 国勢調査メッシュの対処法
● 国勢調査メッシュとタイル≒QuadKeyは緯度経度を分割符号化する点では同
じ
● しかし、日本付近しか符号化できない上、緯度経度の分割比が異なる
● → タイルの座標系に線形変換すると利便性が増す (ただし境界誤差は不可避)
○ QuadKeyに符号化してRDB・KVS等に格納

19. 境界データの対処法
● 国土数値情報の行政区域データから市町村とQuadKeyの対応表を作成
○ 国土数値情報の行政区域データ(ベクトル)をQuadKey空間にラスタライズ
○ 市町村名とQuadKeyの対応を総当りでデータベース化する

20. QuadKey To ○○ に統一すると
● 「各市町村の人口」を求めるなら
○ QuadKey to 人口
○ QuadKey to 市町村
● 「各市町村の傾斜地に住んでいる人口」を求めるなら
○ QuadKey to 人口
○ QuadKey to 市町村
○ QuadKey to 傾斜
JOINで様々な組み合わせの集計ができる

21. 傾斜度ごとの人口を計算するSQL
select q.commune, sum("0-5"), sum("5-10"), sum("10-15"), sum("15-20"), sum("20-25"), sum("25-30"), sum("30-") from
(select * from mesh_population join (select inclination.qkey,
case when inclination.value between 0 and 5 then mesh_population.value else 0 end as "0-5",
case when inclination.value between 5 and 10 then mesh_population.value else 0 end as "5-10",
case when inclination.value between 10 and 15 then mesh_population.value else 0 end as "10-15",
case when inclination.value between 15 and 20 then mesh_population.value else 0 end as "15-20",
case when inclination.value between 20 and 25 then mesh_population.value else 0 end as "20-25",
case when inclination.value between 25 and 30 then mesh_population.value else 0 end as "25-30" ,
case when inclination.value > 30 then mesh_population.value else 0 end as "30-"
from mesh_population join inclination on inclination.qkey = mesh_population.qkey) as inclination
on inclination.qkey = mesh_population.qkey) as mp
inner join (select * from commune_qkey as cq inner join communes as c
on c.commune_id = cq.commune_id) as q
on mp.qkey = q.qkey
group by q.commune

22. タイルとほぼ同じ使い勝手で画像化もできる
国土数値情報のデータより作成

23. まとめ
● 画像ベースのDeep Learning手法と地理情報の親和性が高い
○ データ・時間・空間を組み合わせた情報の転移が可能になる
● 学習データセットに求められる要件は単位を統一すること
○ 粒度、緯度、経度を効果的に符号化できるタイル形式、QuadKey形式が有用