Weitere ähnliche Inhalte
Ähnlich wie ライブラリー・リソース・ガイド別冊Vol.1 (20)
ライブラリー・リソース・ガイド別冊Vol.1
- 1. アカデミック・リソース・ガイド株式会社
LRG別冊 Vol. 1
Library Resource Guide Special Issue
LRG
Library Resource Guide Special Issue
ライブラリー・リソース・ガイド 別冊 Vol. 1
https://www.facebook.com/LRGjp
発 行 日:2015年10月30日
発 行 人:岡本真
編 集 人:岡本真、李明喜
編 集:大谷薫子(モ・クシュラ株式会社)
デザイン:佐藤理樹(アルファデザイン)
写 真:太田拓実
発 行:アカデミック・リソース・ガイド株式会社
Academic Resource Guide, Inc.
〒231-0012 神奈川県横浜市
中区相生町3-61 泰生ビル
さくらWORKS<関内> 408
無断転載を禁ず 究極のエンターテインメントとしての図書館へ
富山市立図書館リニューアルオープン!
岡本 真 隈 研吾
- 2. 01
はじめに 伝統に根ざした新たなチャレンジ 岡本 真
昨今、「賑わいのある図書館」や「図書館を起点と
したまちづくり」が大きな注目を集めつつ、同時に
大きな論議の対象ともなっています。私自身、小
著『未 来 の 図 書 館、は じ め ま せ ん か?』(青 弓 社、
2014年)や、これまでの各所での講演や論考で述べ
てきたように、「賑わい」や「まちづくり」と図書館
の関わりを否定するものではありません。しかし、
ともすれば昨今の図書館づくりでは、「賑わい」や
「まちづくり」に注力するあまり、図書館の原理原
則が軽んじられるケースが一部に見受けられます。
他方、富山市立図書館の新本館は、富山市の長
い図書館史のなかで育んできた図書館の原理原則
を維持・発展させながら、同時に新たなチャレン
ジに挑んでいます。つまり、従来から富山市の図
書館が持つ日本で最大級の地域館や分館や移動図
書館の体制のほか、広く深い図書館サービスの展開、
連日行われる子ども向けおはなし会の開催、公共
図書館としては異例のコレクション、独自の調査、
研究といった、これらの歴史の地道な蓄積のうえに、
「賑わい」と「まちづくり」を目指す新図書館が存在
しているのです。
伝統とそのうえに広がる革新。ぜひその2つの面
を意識しながら、富山市立図書館の新本館の真の
姿を読み解いていただければ幸いです。
2015年8月22日、隈研吾氏の設計によりオープ
ンした複合施設「TOYAMA キラリ」は、富山市立
図書館新本館と富山市ガラス美術館によって構成
されます。アカデミック・リソース・ガイド株式
会社は、2012年度、2013年度にかけて、このうち
主に富山市立図書館新本館の整備計画と運営実施
計画の作成支援に携わりました。この間、新図書
館で実現したWiFiの導入、ガラス芸術に関する資
料のコレクション構築、観光情報の発信、新たに
揃える500誌に及ぶ購入雑誌の候補作成等、多方面
における調査を行っています。
弊社としても、これだけ大規模な図書館の整備
にかかわるのは初めてのことであり、富山市立図
書館の方々を始め、弊社に本業務を委託していた
だいた株式会社乃村工藝社や施設全体の設計にあ
たった隈研吾建築都市設計事務所、株式会社アー
ル・アイ・エー、三四五建築研究所ほか、数多く
のみなさまのご助力をいただき、心から御礼申し
上げます。
さて、新たな富山市立図書館は、連日大変な賑
わいを見せています。現在のペースを維持すれば、
初年度の来館者数は100万名を超えることでしょう。
また、この建物が、現代日本を代表する建築家の
一人である隈研吾氏の新作ということもあり、図
書館関係者のみならず、建築界やまちづくりに関
わる方々からも大きな注目を集めています。
このように大きな注目を集めている「TOYAMA
キラリ」ですが、その主要な機能の一つである富山
市立図書館の新本館は、どのような意義と可能性
を持っているのでしょうか。計画策定支援に関わっ
た立場から、この点について少しだけ私たちの考
えを述べておきたいと思います。
「ライブラリー・リソース・ガイド(LRG)」はア
カデミック・リソース・ガイド株式会社(ARG社)
が2012年11月に創刊した、新しい図書館系専
門雑誌です。特別寄稿と特集を2本の柱とし、年
4回の刊行で図書館に新しい風を吹き込みます。
本冊子はこの「LRG」の別冊として、撮りおろし
のビジュアルと対談を中心に、ARG社の最新プ
ロジェクトを紹介するために刊行されました。
- 5. Library Resource Guide Special Issue
04
密な自然から学べるのではないかと思いました。吹き
抜けを斜めにしたのは、森の中にいるような光の状態
をつくりたいということもあったんです。ベニアでは
なくて無垢の木、しかも節だらけの木を使ったルー
バーで吹き抜け全体を包んで、そこから差してくる光
がその木を滑りながら、やわらなかな光に転換して
いって、下まで降りていく。それが富山らしさにつな
がるんじゃないかと思ったんです。
あれだけの面積に木を使った公共建築は、ほとんど例
がないのではないかと思いますけど、それにチャレン
ジしたら富山の木は応えてくれて、僕たちが思った以
上に、あるリアリティをくれた感じがします。
★公共空間に仕掛ける興味のフック
岡本 今回、図書館側が終始、気にしていたのが音の
問題です。もともと私は「図書館でお静かに」という
文化はもうやめて、大人用、子ども用、それぞれ静寂
にしたい人のためにドアを閉めることができる部屋さ
え確保すれば、それでいいのではないかという持論を
もっています。そもそも図書館というのは公共空間で
すから、公共の場で過度な静寂を要求することのほう
がおかしいんじゃないかと思うんです。図書館という
のは、少々、賑やかなくらいがいいのではないか。
とはいえ、図書館側がそう思ったとしても、図書館で
静寂を望む人はまだまだ多いので、利用者側から音の
クレームって多いんですね。最近だと、図書館の近隣
に幼稚園があることを許容しないという問題も起きま
した。
それで、今回、「キラリ」の各フロアーごとに音を計っ
てみたんです。そうしたら、本当に素晴らしいと思っ
たのですが、1階から6階までの平均が50デシベル
くらいでした。最も静寂を保っている図書館でも40
デジベルくらいですから、50デジベルというのは、
ほとんど気にならない。音を吸音するような工夫がな
されているのでしょうか?
隈 一番、効果が効いてるのは、天井を張っていない
ことだと思います。今のビルはダクトを隠したいから、
天井を張るんですね。でも、天井を張った瞬間、ある
意味では空間が死んでしまうんですよ。ロフトとか古
い倉庫を利用したかっこいいオフィスって、天井を貼
らないというのが原則なんですが、天井を張らないと
いうことは、そこに音の溜まりをつくることができる。
あとは、鉄骨の梁にある耐火被覆とその下にある木の
ルーバーが、音を吸収したり乱反射しています。木と
耐火被覆で、普通の建築にはないような音響的なバッ
ファになっているんですよね。
僕たちの意図としては、吹き抜けの天井空間を心理的
公共空間に仕掛ける興味のフック