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ウィキペディアと翻訳を振り
返る:コミュニティの形成と
いう観点から
渡辺智暁(慶應大学)
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所情報資源利用研究セン
ター「IRC設立20周年・ウィキペディア日本語版始動15周年記念ワーク
ショップ『世界の知識を翻訳しよう』」
2017.10.28. 於:東京外国語大学付属図書館
自己紹介
・研究:ICT政策、情報社会論
・インフラ政策、オープン教育、オープン・データ、等
・アドボカシー等:クリエイティブ・コモンズ(ライセンス)、
オープンデータ
・ウィキペディアについての研究上の興味:
組織形態、品質管理、法との関係、等
ウィキペディアの特徴
・グローバルに展開
・多言語
・非営利
(米国に本拠をおくウィキメディア財団)
・参加者主導
参加者と「財団」の分担
参加者は基本的に無償ボランティア
・執筆・編集
・制度設計(サイトの「自治」的運営)
・ソフトウェアの開発*、サーバーの管理*
ウィキメディア財団とスタッフ
・寄付を募る
・通信費支払い、商標管理、パートナーシップ、有償でのコン
テンツなどの開拓、他
「財団」
・当初はジミー・ウェールズが資金提供
・非営利事業路線を固めたのち、財団法人を形成
・初期は理事の多くも参加者の中から、参加者の投票により選出
グローバルなプロジェクトと
言語別のコミュニティ
・メディア資料は集約
・コードベースも集約
・データベースも共通
・アカウントも共通
・記事は言語別
・方針・指針類もほぼ言語別
効率性を考えると、半ば必然
・読者の利便性
・執筆者の利便性
・運営者の利便性
使えない言語の方が多い → 使える言語の情報
国ではなく言語別?
法環境を考えると国別の方が合理的な面も
フェアユース問題、名誉毀損に関する責任、等
英語と英語話者の影響力が相対的に大
・「曖昧さ回避」のような言葉が象徴的
・「ウィキペディア」という名称、ドメイン名
←→ Simple English、エスペラント、ヴォラピュクなどハブと
なることを意識した言語もあった
国際連携の地域格差
アジアの困難
・言語的多様性、交通の利便性、経済的な発展度合いの多様性、
などが原因となってアジア(東~南アジア)は地域内交流が難し
いのでは
日本の困難
・オープン教育、オープンデータ領域など:「活動レベルは高い
が、何をしているかわかりにくい国」
→ウィキペディアは日本語圏だが、類似の傾向
展望:自動翻訳の高度化とガバナンス
・プロジェクト全体のガバナンスへの参加の敷居が下がる
・母語でないプロジェクトへの参加の敷居も下がる
・(言語的に見て)「質の低い」発言、執筆者の増加
ルールへの理解が不十分
他の参加者の言動への理解が不十分
空気を読むのも上手ではない
他言語版の制度や常識を日本語版に持ち込む
本資料のライセンス
・この資料はCC BY 4.0 国際 (creativecommons.org/licenses/by/4.0/)で提供され
ています。
・著作者名:渡辺智暁
なお、著作権表示、無保証を参照する表示はありません。
「本パブリック・ライセンスを参照する表示」にあたるのは上の一文だけです。
そこで、この資料を利用して別の資料を作成した場合などには、たとえば、以下
のような表示をすればよいことになります。(それに加えて、合理的に実施可能
な場合にはこの資料のURLを記載します。)
「この資料の一部は、渡辺智暁による資料を改変の上利用しています。
利用した資料のライセンスを参照する表示:『この資料はCC BY 4.0 国際
(creativecommons.org/licenses/by/4.0/)で提供されています。』

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