14. 経営トップの明確なビジョンと従業員への発信は,組織に⼤きな影響を与える
1: Baum, J. R., Locke, E. A., & Kirkpatrick, S. A. (1998). A longitudinal study of the relation of vision and vision communication to venture growth in entrepreneurial
firms. Journal of applied psychology, 83(1), 43-54.
ビジョンは組織を牽引する
• CEOが優れたビジョンを有している企業の⽅が成⻑率が⾼い
• 優れたビジョンの要件は,
- 簡潔である
- 明快である
- ある程度抽象的である
- チャレンジングである
- 未来志向である
- ⼀貫性がある
アメリカの183社のCEOと従業員への調査から導出した結論1
18. 技術進化が早い市場では,トライ&エラーを市場で⾏って発展させる⽅法が求められる
• 業界構造が安定している寡占市場 (例︓コーラ,通信)
• 差別化戦略によってブランドを確⽴し,独⾃のポジションを構築
IO型
(industrial organization)
• 技術開発が活発で,競争が激しい市場 (例︓⾃動⾞)
• ⼈材という経営資源に投資し,技術⼒を積み上げるRBV戦略
チェバレン型
• 技術が⽇進⽉歩で進化する不確実な競争環境 (例︓IT)
• 早期から市場に投⼊し,改善していくリアルオプション戦略
シュンペーター型
内容
戦略
Barney, J. B. (1986). Types of competition and the theory of strategy: Toward an integrative framework. Academy of management review, 11(4), 791-800.
市場特性に合わせた戦略
(Resource Based View)
25. ブランドマネジメント
ブランドは,⾶び道具や突⾶な訴求ではなく,コンセプトの⼀貫した具現化で創造
ブランドマネジメント = コンセプト + ⼀貫した具現化
コンセプト ⼀貫した具現化
実⽤的+⼼理的な問題を解決する
時代によらない価値の定義
定義したコンセプトを
⼀貫して具現化・訴求
Concept
ZMOT
(Zero Moment of Truth)
Webサイトや⼝コミを⾒たとき
FMOT
(First Moment of Truth)
店頭で商品を⾒たとき
SMOT
(Second Moment of Truth)
商品・サービスを利⽤したとき
流⾏
性能・技術
デザイン・UX
本質的な
価値
Who
What
How
どんな困っている⼈に?
どんな価値を︖
どうやって提供するか︖
狙いどころ
35. しかし,真のグローバル企業は意外に少ない
「グローバル企業」という思い込みをすることなく,適切な商品企画・資源配分をすべき
• 「真のグローバル企業」として以下の条件を設定
- 本社が置かれる本拠地の売り上げが50%以下
- 他の2地域からの売り上げが20%以上
• Fortune 500のうち,該当するグローバル企業は9社のみ1
(IBM, Intel, Philips, Nokia, Coca-Cola, Flex, LVMH, Sony, Canon)
1: Rugman, A. M., Verbeke, A. (2004). A perspective on regional and global strategies of multinational enterprises. Journal of international business studies, 35(1), 3-18.
2: Collinson, S., & Rugman, A. M. (2008). The regional nature of Japanese multinational business. Journal of international business studies, 39(2), 215-230.
37. 戦略の⼀貫性に優れる同族経営 (Family Business)
同族経営には,正と負の両⾯があるが,マーケティングの観点では良い条件が揃う
1: La Porta, R., Lopez-de-Silanes, F., & Shleifer, A. (1999). Corporate ownership around the world. The journal of finance, 54(2), 471-517.
2: Anderson, R. C., & Reeb, D. M. (2003). Founding-family ownership and firm performance: evidence from the S&P 500. The journal of finance, 58(3), 1301-1328.
• 世界27過酷の企業規模上位20社を対象に,「創業者⼀族が株式の20%
以上を保有する企業」を抽出すると,平均で約30%にも達する1
• S&P500のうち,1/3の企業は同属経営であり,⾮同属企業よりも経営
業績が良い傾向がある2
• 同族経営の場合,⽬先の利益よりも⻑期的な反映を⽬指すため,⼀貫し
た戦略を実⾏できることなどが要因として考えられる
• ただし,経営トップの資質が伴わない場合は,暴⾛してしまう懸念あり
39. 流⾏の考え⽅を盲⽬的に信じることは危険であり,効果を科学的に検証すべき
1: Joshi, A., & Roh, H. (2009). The role of context in work team diversity research: A meta-analytic review. Academy of management journal, 52(3), 599-627.
2: Horwitz, S. K., Horwitz, I. B. (2007). The effects of team diversity on team outcomes: A meta-analytic review of team demography. Journal of management, 33(6), 987-1015.
3: Earley, C. P., & Mosakowski, E. (2000). Creating hybrid team cultures: An empirical test of transnational team functioning. Academy of Management journal, 43(1), 26-49.
多様性は本当に効果的か︖
• 多様性には,能⼒多様性と属性多様性(性別,国籍等)に分けられる
• 能⼒多様性は,組織のパフォーマンスに正の影響を与える1
• ⼀⽅で,属性多様性は,影響がない,あるいは負の影響を与える1,2
• ただし,属性多様性は,時間の経過とともにコミュニケーションが盛
んになり,軋轢が消えていく3
45. トヨタ⽣産⽅式 (Toyota Production System, TPS)
「徹底したムダの排除」を基本思想とするトヨタ⽣産⽅式は,JITと⾃働化の2本柱
⼤野耐⼀. (1978).トヨタ⽣産⽅式――脱規模の経営をめざして. ダイヤモンド社.
ジャ ス ト・ イ ン・ タ イ ム (Ju s t i n T i m e, JI T )
• 組み⽴て⼯程にて,必要な部品が,必要な時に,必要な量だけ,届く仕組み
• 「後⼯程が前⼯程に取りにいく」という逆転の発想で,必要なものはかんばんに表⽰
• 物理的にも,財務的にも,経営を圧迫する在庫をゼロに近づける
⾃働化 (ニンベ ンの ⾃働)
• ニンベンのある⾃働化とは,機械が異常検知して⾃動停⽌する装置を組み込んだもの
• 単なる⾃動化は,つくり過ぎや不良品という重⼤なムダを⽣み出してしまう
• 管理者が常時機械の近くにいる必要がなく,⽣産効率が⾶躍的に向上する
56. 「会議の準備」という膨⼤な作業
意思決定の根拠が乏しく,判断⽅法が⼈によってバラバラならば,時間は当然かかる
1: Mankins, M. (2014). Yes, You Can Make Meetings More Productive. Harvard Business Review, https://hbr.org/2014/06/yes-you-can-make-meetings-more-productive.
2:パーソル総合研究所. (2018).無駄な社内会議による企業の損失額を算出従業員1万⼈規模で年間15億円,1500⼈規模で年間2億円の損失. https://rc.persol-
group.co.jp/news/201809060935.html
3: Mankins, M. C. (2004). Stop wasting valuable time. Harvard Business Review, 82(9), 58-67.
• ある⼤企業では,経営会議の準備に,150⼈分の年間業務量を費やしている1
• 1万⼈規模の企業では,無駄な会議時間は年間332⼈分の年間業務量に達する2
• 経営会議の65%以上は,意思決定ではなく,単なる情報交換等に使われる3
意思決定の根拠が曖昧なまま,決裁者によって求めるものが異なるため,
会議の準備・会議⾃体に膨⼤なムダが発⽣
57. 技術の発展が⽇進⽉歩な領域では,専⾨家の知⾒なくして意思決定すべきではない
Podolny, J. M., & Hansen, M. T. (2020). How Apple Is Organized for Innovation. Harvard Business Review Nov.-Dec, 86-95.
Appleの組織構造と意思決定
• ジョブズ復帰前は,事業部制の分権型で,
同じ職能が重複し,対⽴が発⽣
• 意思決定はその領域の専⾨家が⾏うべきと
の考えから,職能専⾨性を軸とした組織へ
• ゼネラリストに専⾨性を備えるのではなく,
専⾨家にマネジメント能⼒を育成する
• 1998年と⽐べて収益が40倍になった現在で
も職能別組織を維持している
(Jobs復帰時)
61. 全員で考えてはいけない
集団での会議は,個⼈の能⼒を封じ込め,同調圧⼒が働き,⽬的が置き去りになる
1: Taylor, D. W., Berry, P. C., & Block, C. H. (1958). Does group participation when using brainstorming facilitate or inhibit creative thinking?. Administrative science
quarterly, 23-47.
「全員で集まって,話し合いによって問題を解く」よりも,
「⼀⼈⼀⼈が個別に問題を解き,回答を持ち寄る」⽅が効率的1
全員で考える会議が機能しない理由
• 集まることで個々⼈の責任が曖昧になり,社会的⼿抜きが発⽣
• 他⼈からの⾃分の評価が気になり,斬新な意⾒を出しにくい
• 多数派意⾒が明らかになると,問題解決よりも同調の⽅が重要になる
62. Amazonの”Two-Pizza Rule”1
少⼈数チームだと,個々⼈が責任を感じ,チャレンジを怖がらなくなり,無駄がなくなる
1: Hern, A. (2018). The two-pizza rule and the secret of Amazon's success. The Guardian, 24 April, https://www.theguardian.com/technology/2018/apr/24/the-two-
pizza-rule-and-the-secret-of-amazons-success
社内のすべてのチームは2枚のピザを⾷べるのに
ちょうど良い⼈数でなければいけない
64. トランザクティブ・メモリー
「全員が同じことを知っている」より「誰が何を知っているかを知っている」ことが組織能⼒
1: Wegner, D. M., Erber, R., & Raymond, P. (1991). Transactive memory in close relationships. Journal of personality and social psychology, 61(6), 923-929.
2: Lewis, K. (2004). Knowledge and performance in knowledge-worker teams: A longitudinal study of transactive memory systems. Management science, 50(11), 1519-
1533.
• イノベーションの創出には「知の組み合わせ」が重要とされる
• その促進に効果的なことは,「知を共有」することではなく,「誰が
何を知っているかを共有すること」である1,2
• トランザクティブ・メモリーを⾼めるには,,直接的な対話が効果的
である⼀⽅で, eメールや電話は負の効果になる2
73. イノベーターのジレンマを超える
既存事業と対⽴しようが,“社内コメンテーター”を遠ざけ,ひたすら⼿を動かせる環境があるか︖
1: Christensen, C. M. (1997). The innovatorʼs dilemma. Harvard Business School Press
コンセプトが⾰新的であればあるほど,その意義と価値を理解できず,
顧客だけでなく,社内でも否定的な反応になる.
その結果,多くの”優良企業”と呼ばれる⼤企業組織では,
既存事業を第⼀に考えるために,新市場を開拓できない.1
• 筋が通っているならば,反対されようが,何度も具現化・検証すべき
(むしろ反対勢⼒が現れないプロジェクトの⽅が問題)
• ここがマフィアの出番であり,ジレンマを超えられるか否かの鍵
79. 多様な業界で実証されている従業員満⾜度(ES)の効果
理論だけでなく,実証としても古くから多様な業界で⽰されているESの価値
1: Rucci, A. J., Kirn, S. P., & Quinn, R. T. (1998). The employee-customer-profit chain at Sears. Harvard Business Review, 76, 82-98.
2: Gelade, G. A., & Young, S. (2005). Test of a service profit chain model in the retail banking sector. Journal of occupational and organizational Psychology, 78(1), 1-22.
3: Banker, R. D., & Mashruwala, R. (2007). The moderating role of competition in the relationship between nonfinancial measures and future financial performance.
Contemporary Accounting Research, 24(3), 763-793.
4:鈴⽊研⼀, 松岡孝介. (2014). 従業員満⾜度, 顧客満⾜度, 財務業績の関係―ホスピタリティ産業における検証―. 管理会計学:⽇ 本管理会計学会誌: 経営管理のための総合雑誌, 22(1), 3-25.
5: ⽊⽥世界. (2018). ⾃動⾞販売店舗における従業員満⾜度と顧客満⾜度の関係の試験的実証研究. ⽇本経営倫理学会誌, 25, 89-100.
• ⽶国⼩売チェーンのシアーズでは,ESが5ポイント改善するとCSは1.3ポイン
ト改善し,売上⾼を0.5%増⼤させる1
• 銀⾏において,ESはCSに正の影響を与え、売り上げ⽬標達成率に貢献する2
• ⼩売チェーンでは、競争環境が厳しいほど、ESはCSに影響を与える3
• ホテル業界では,ES→サービス品質→CS→利益と有意に影響を与える4
• ⾃動⾞販売店では,ESとCSに正の相関(r=0.23)が確認された5