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HASCミーティング2015
角速度センサによる
歩行および階段昇降の識別
2016/01/20 (水)
名田 太河
1/10
滋賀県立大学 工学部 電子システム工学科
ネットワーク情報工学分野
名田 太河
宮城 茂幸 准教授
ライトニングトーク
1. 概要
– 背景
• 加速度を用いた閾値等による
歩行と階段昇降の識別は難しい。
• 脚の角度による識別を行った研究[1]がある。
– 目標
• ポケット内のスマートフォンの角速度センサーにより
歩行と階段昇降時の角度の違いを求め
各状態の識別を行う。
2016/01/20 (水)
名田 太河
2/10
[1] Diaz, E. (2015). Inertial Pocket Navigation System: Unaided 3D Positioning. Sensors, 15(4), 9169.
2. 先行研究
– 歩行時の平均値と比較
– 脚の角度は角速度、加速度センサより推定
• 角速度センサーの積分値ではドリフト誤差が生じる。
2016/01/20 (水)
名田 太河
3/10
図1: 脚の角度による歩行状態の識別結果
Diaz, E. (2015). Inertial Pocket Navigation System: Unaided 3D Positioning. Sensors, 15(4), 9169. から引用
階段上昇 階段下降歩行
3. 前提条件
– 重力加速度と進行方向に垂直な軸を
脚に生じる角速度として利用
• 主に一軸に歩行による角度変動が現れると想定する。
– 歩行状態はバッチ式に識別
• オフセット補正に静止区間が必要なため。
– 動作区間の両端に静止区間を用意
• オフセット補正に静止区間が必要なため。
– 最初の非静止区間は歩行状態に設定
• 識別に歩行状態での平均値が必要なため。
2016/01/20 (水)
名田 太河
4/10
4. 角度の推定
– 角速度センサーの積分値より脚の角度を推定
• ドリフト誤差に対するオフセット補正が必要となる。
2016/01/20 (水)
名田 太河
5/10
図2: 角速度及び角度に対するオフセット補正の適用結果
20160114132737-0-gyro.csv
角速度を
台形積分
↓
静止時に
0に戻らない
角度に対して
オフセット補正
↓
静止時に
0に戻る
4. 角度の推定
– 移動平均によるオフセット補正
• 階段上昇、下降の特徴が失われる。
– 静止時と動作時で補正値を変更
• 静止区間: 移動平均による補正値を適用する。
• 非静止区間: 区間端の補正値から一次関数を求め
一次関数から求まる補正値を適用する。
2016/01/20 (水)
名田 太河
6/10
図3: 本研究で用いるオフセット補正の手法
time
offset
5. 歩行状態の推定
– 先行研究のアルゴリズムを利用
• 歩行開始、終了時の状態は前後の推定を参照した。
2016/01/20 (水)
名田 太河
7/10
図4: ステップ検出の実行結果の一部
20151118142100-0-gyro.csv
端は脚の角度が
小さい
⇩
後続の推定に支障
↓
歩行状態の
平均値に用いない
&
端の推定が不正確
↓
前後の推定を利用
階段上昇階段下降
歩行
6. 評価
– 独自に計測したデータ
• Xperia™ Z3 Compact、Galaxy™ S2 / S3で計測した。
• サンプリングレートはそれぞれ
約200 Hz (Xperia)、約100Hz (Galaxy)となった。
– 評価方法
• 各状態が生じている時間を推定した時間と比較した。
• 12人で測定し時間に基づく推定割合を求めた。
2016/01/20 (水)
名田 太河
8/10
歩行 階段上昇 階段下降
歩行 76.1% 13.7% 10.1%
階段上昇 1.6% 97.7% 0.7%
階段下降 18.2% 4.7% 77.1%
推定割合
状態
表1: 独自に計測したデータに対する推定結果
6. 評価
– HASCコーパス(2012, 2013, 2015, IPSC)
• 装着位置が「waist」の角速度データを用いた。
• 「jog」や「skip」のデータを除外した。
• 「walk」のデータが先頭に来るようにした。
– 評価方法
• ラベルの区間における主状態をラベルと比較した。
2016/01/20 (水)
名田 太河
9/10
静止 歩行 階段上昇 階段下降
静止 91.7% 4.5% 3.0% 0.8%
歩行 7.1% 57.9% 27.4% 7.6%
階段上昇 25.9% 22.2% 45.7% 6.2%
階段下降 27.7% 27.7% 7.2% 37.3%
推定割合(推定時間/ラ ベル付けさ れた時間)
ラ ベル
表2: HASCコーパスに対する推定結果
7. 結論
– 結果
• 独自に計測したデータにおける推定では
各状態において76.1%以上の精度を示した。
• HASCコーパスのデータにおける推定では
階段上昇は45.7%、階段上昇は37.3%と
独自に計測したデータより悪い精度を示した。
– 課題
• 曲がりながら歩行する場合に積分値が大きくずれる。
• 積分値のずれにより強力なオフセット補正がかかる。
• 最大→最小あるいは最小→最大の角度差が小さくなる。
• ステップとして検出されなくなる。
2016/01/20 (水)
名田 太河
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角速度センサによる 歩行および階段昇降の識別

  • 1. HASCミーティング2015 角速度センサによる 歩行および階段昇降の識別 2016/01/20 (水) 名田 太河 1/10 滋賀県立大学 工学部 電子システム工学科 ネットワーク情報工学分野 名田 太河 宮城 茂幸 准教授 ライトニングトーク
  • 2. 1. 概要 – 背景 • 加速度を用いた閾値等による 歩行と階段昇降の識別は難しい。 • 脚の角度による識別を行った研究[1]がある。 – 目標 • ポケット内のスマートフォンの角速度センサーにより 歩行と階段昇降時の角度の違いを求め 各状態の識別を行う。 2016/01/20 (水) 名田 太河 2/10 [1] Diaz, E. (2015). Inertial Pocket Navigation System: Unaided 3D Positioning. Sensors, 15(4), 9169.
  • 3. 2. 先行研究 – 歩行時の平均値と比較 – 脚の角度は角速度、加速度センサより推定 • 角速度センサーの積分値ではドリフト誤差が生じる。 2016/01/20 (水) 名田 太河 3/10 図1: 脚の角度による歩行状態の識別結果 Diaz, E. (2015). Inertial Pocket Navigation System: Unaided 3D Positioning. Sensors, 15(4), 9169. から引用 階段上昇 階段下降歩行
  • 4. 3. 前提条件 – 重力加速度と進行方向に垂直な軸を 脚に生じる角速度として利用 • 主に一軸に歩行による角度変動が現れると想定する。 – 歩行状態はバッチ式に識別 • オフセット補正に静止区間が必要なため。 – 動作区間の両端に静止区間を用意 • オフセット補正に静止区間が必要なため。 – 最初の非静止区間は歩行状態に設定 • 識別に歩行状態での平均値が必要なため。 2016/01/20 (水) 名田 太河 4/10
  • 5. 4. 角度の推定 – 角速度センサーの積分値より脚の角度を推定 • ドリフト誤差に対するオフセット補正が必要となる。 2016/01/20 (水) 名田 太河 5/10 図2: 角速度及び角度に対するオフセット補正の適用結果 20160114132737-0-gyro.csv 角速度を 台形積分 ↓ 静止時に 0に戻らない 角度に対して オフセット補正 ↓ 静止時に 0に戻る
  • 6. 4. 角度の推定 – 移動平均によるオフセット補正 • 階段上昇、下降の特徴が失われる。 – 静止時と動作時で補正値を変更 • 静止区間: 移動平均による補正値を適用する。 • 非静止区間: 区間端の補正値から一次関数を求め 一次関数から求まる補正値を適用する。 2016/01/20 (水) 名田 太河 6/10 図3: 本研究で用いるオフセット補正の手法 time offset
  • 7. 5. 歩行状態の推定 – 先行研究のアルゴリズムを利用 • 歩行開始、終了時の状態は前後の推定を参照した。 2016/01/20 (水) 名田 太河 7/10 図4: ステップ検出の実行結果の一部 20151118142100-0-gyro.csv 端は脚の角度が 小さい ⇩ 後続の推定に支障 ↓ 歩行状態の 平均値に用いない & 端の推定が不正確 ↓ 前後の推定を利用 階段上昇階段下降 歩行
  • 8. 6. 評価 – 独自に計測したデータ • Xperia™ Z3 Compact、Galaxy™ S2 / S3で計測した。 • サンプリングレートはそれぞれ 約200 Hz (Xperia)、約100Hz (Galaxy)となった。 – 評価方法 • 各状態が生じている時間を推定した時間と比較した。 • 12人で測定し時間に基づく推定割合を求めた。 2016/01/20 (水) 名田 太河 8/10 歩行 階段上昇 階段下降 歩行 76.1% 13.7% 10.1% 階段上昇 1.6% 97.7% 0.7% 階段下降 18.2% 4.7% 77.1% 推定割合 状態 表1: 独自に計測したデータに対する推定結果
  • 9. 6. 評価 – HASCコーパス(2012, 2013, 2015, IPSC) • 装着位置が「waist」の角速度データを用いた。 • 「jog」や「skip」のデータを除外した。 • 「walk」のデータが先頭に来るようにした。 – 評価方法 • ラベルの区間における主状態をラベルと比較した。 2016/01/20 (水) 名田 太河 9/10 静止 歩行 階段上昇 階段下降 静止 91.7% 4.5% 3.0% 0.8% 歩行 7.1% 57.9% 27.4% 7.6% 階段上昇 25.9% 22.2% 45.7% 6.2% 階段下降 27.7% 27.7% 7.2% 37.3% 推定割合(推定時間/ラ ベル付けさ れた時間) ラ ベル 表2: HASCコーパスに対する推定結果
  • 10. 7. 結論 – 結果 • 独自に計測したデータにおける推定では 各状態において76.1%以上の精度を示した。 • HASCコーパスのデータにおける推定では 階段上昇は45.7%、階段上昇は37.3%と 独自に計測したデータより悪い精度を示した。 – 課題 • 曲がりながら歩行する場合に積分値が大きくずれる。 • 積分値のずれにより強力なオフセット補正がかかる。 • 最大→最小あるいは最小→最大の角度差が小さくなる。 • ステップとして検出されなくなる。 2016/01/20 (水) 名田 太河 10/10

Hinweis der Redaktion

  1. 滋賀県立大学、工学部、電子システム工学科の学部4年生、名田太河と申します。 本日は、角速度センサによる、歩行および階段昇降の識別について、説明いたします。
  2. まず、本研究について、説明いたします。 歩行および階段昇降の識別が、本研究のテーマとなっておりますが、加速度センサの測定値による識別が困難であるという点が出発点となっております。 一方で、センサから脚の角度を求め、この角度から識別を行った研究があり、本研究では、スマートフォンの角速度センサから脚の角度を求め、歩行および階段昇降の識別を行うことを目標に設定しました。
  3. 本研究の前に、脚の角度による識別を行った先行研究についてご説明します。 図をご覧ください。歩行、階段上昇、歩行、階段下降と変化した場合の脚の角度のプロットになります。 ここで、歩行時の平均より差と最高角度が大きい場合には階段上昇、平均より差が小さく最小角度が大きい場合には階段下降、その他を歩行と推定しています。 したがって、スマートフォンの角速度センサから、脚の角度を求め、脚の角度から一歩における最大角度と最小角度を求める必要があります。 しかし、スマートフォンの角速度センサを積分するだけでは、センサのドリフト誤差により、この図のような角度を得ることはできませんでした。
  4. 本研究での前提条件をご説明します。 まず、状態推定に必要な脚の角度が、重力加速度と進行方向に対して垂直な軸に生じると考え、対象の一軸の測定値より推定を行いました。 また、オフセット補正の方法より、状態推定はバッチ式に適用し、かつデータの両端には静止区間を設けて推定を行いました。 さらに、識別アルゴリズムには歩行状態での平均値が必要なため、最初の非静止区間は歩行状態と想定して推定を行いました。
  5. それでは、実際の推定の流れを説明していきたいと思います。 図において、赤線が脚の角度とみなす角度となりますが、先ほど申しました通り、角速度センサの積分値は、静止状態において0度に戻らず、角度にはズレが生じているため、補正を適用する必要があります。
  6. オフセット補正の手法ですが、単純に移動平均によりドリフト誤差を打ち消した場合、階段上昇や階段下降といった状態における角度差も消えてしまうため、静止時と動作時で補正値を変更することにしました。 下の図のように、静止区間においては、移動平均を用いますが、非静止区間においては、移動平均により求められた非静止区間の両端の補正値から一時関数を求め、一次関数から直線的な補正値を計算して適用しました。
  7. 続いて、求められた角度から最高角度と最小角度を求め、先行研究に沿ったアルゴリズムを適用しました。 図において、赤が歩行、青が階段下降、緑が階段上昇となり、背景が実際の区間、線の色が推定値になりますが、一定の推定が行えていることがわかります。 今回、歩き始めと終わりは、歩幅が小さくなることにより推定に誤りが生じるため、端の状態においては、歩行状態の平均値に用いず、前後の推定を参照するように実装しました。
  8. 次に、評価結果についてご説明します。 今回はまず、複数端末で同時に測定するためのアプリを製作し、それを用いて独自に計測したデータを用いて評価を行いました。 評価基準としては、測定データの一歩一歩の正確な状態を推定結果と比較し、状態の時間に基づいて、各状態の推定割合を求めました。 表から、歩行状態と階段下降は4分の3以上、階段上昇に関しては概ね正確に推定されたことがわかります。
  9. 一方で、HASCコーパスのデータをもとに推定した結果、先ほどより悪化した推定結果が得られました。 データは、前提条件に沿うように修正したものを利用しましたが、測定条件が独自に計測したデータとは異なるものがあったこと、また歩行時に曲がっていた場合のオフセット補正に異常がみられたことから、推定に誤りが多く生じたと考えられました。
  10. 結果として、独自に計測したデータでは各状態で76%以上と良い推定が得られましたが、HASCコーパスのデータでは階段上昇が37%と良い推定は得られませんでした。 課題として、一つは曲がりながらのオフセット補正に追考の余地があると考えられました。 現状では、曲がる際に強力なオフセット補正が適用され、最大から最小方向への角度差、あるいはその逆の差が小さくなり、ステップとして検出されない、静止状態に識別されていると考えられました。