20171026内閣府研修資料
- 3. • 専門は公共政策の社会学。情報と政治、民主主義の普及、
無業社会等を研究。
• 問題意識:
– 与件としての「新自由主義」のもとで、「寛容な社会」を擁護する論理
と政策は、いかにして可能か
– 社会政策と政治参加の同時再検討
• その他実務経験等
– 毎日新聞社ネット選挙報道
• 2013年参院選、2014年東京都知事選、2014年衆院選
– 朝日新聞社「わたしの紙面批評」(2016年〜)
– Abema NEWS 12時〜「けやきヒル’s NEWS」水曜日レギュラーコメン
テータほか、メディア関係の実務にも携わる。
3
- 14. 「無業社会」の関連プロジェクト
• 『若年無業者白書』
– 若年無業者の支援を行う認定NPO法人育て上げネットと2000人の若年無業者の生活実態に関する定量的分析と白書を作成。
• 『無業社会』
– 育て上げネット理事長工藤啓との新書による普及啓発(2014年6月)。韓国語版発売(2015年12月)。韓国講演、取材対応
(2016年3月)
• 政策提言『若者と仕事』
– 省庁を越えた若年無業者支援関連の法と政策を洗い出し、政治と社会に対する政策提言(2015年1月)。下記URLからダウン
ロード可(PDF)( http://go.microsoft.com/?linkid=9875960)
• 育て上げネット「ジョブトレ」フィールドワーク
– ジョブトレを体験受講し、フィールドワーク。支援の「質」を部分的に体験。『AERA』誌等に一部掲載。
• 西田亮介,2015,「ニートとひきこもり」『日本労働研究雑誌』 657: 72-3.
– 下記URLからダウンロード可(PDF)( http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2015/04/pdf/072-073.pdf)。
• 『若年無業者白書2014-2015-個々の属性と進路決定における多面的分析』
– 若年無業者白書の第2弾。
14
- 20. 無業社会とその現代的意味
• 1990年代後半以後、就労、とくに若年者の就労の問題が社会問題として顕在化。
• 社会学者、経済学者、当事者らが議論を活発に展開。
– 佐藤俊樹,2000,『不平等社会日本――さよなら総中流』中央公論新社.
– 玄田有史・曲沼美恵,2004,『ニート――フリーターでも失業者でもなく』幻冬舎.
– 本田由紀・後藤和智・内藤朝雄,2006,『「ニート」って言うな!』光文社.
– 橘木俊詔,2006,『格差社会――何が問題なのか』岩波書店.
– 斎藤環,2007,『社会的ひきこもり 終わらない思春期』PHP出版.
– 赤木智弘,2007,『若者を見殺しにする国――私を戦争に向かわせるものは何か』双風社.
– 井出草平,2007,『引きこもりの社会学』世界思想社.
– NHK,2010,「無業社会」.2011、「孤族の国」
– 城繁幸,2012,『若者を殺すのは誰か?』扶桑社.
– 玄田有史,2013,『孤立無業(SNEP)』日本経済新聞社.
20
- 21. 無業社会の現状
• 内閣府『平成29年版 子ども・若者白書』
– 15歳〜39歳の若年無業者の数:約77万人。
– 人口に占める割合:2.3%。
– 平成27年版白書には「2014年は56万人で,前年より
4万人減少」との記述が見られるが、人口構成の変化
に伴う自然減少の影響の可能性が高い。
※ その他、さまざまな試算、推計が存在。
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- 24. 日本の無業社会とその意味
• 日本の完全失業率は、世界的に見ると顕著に低い。
– ただし、若年世代に限れば、6〜8%台で推移し、全世代平均よりも高い。
• 世界的にはグローバル化に伴う流動性の向上や、情報社会論的な「機械との競争」が課題に。
• 日本の「無業社会」の個別的特徴
– 独特の就労習慣と労働市場が無業を固定化。世代によって見える「景色」に差異。
– 人口ボリュームやラベリングの観点を加味すると、「深刻さ」の程度は比較不可。
– 無業と社会関係資本喪失のポジティブ・フィードバック、無業期間の長期化。
– 課題先進国の「無業社会」。東アジアの共通課題としての無業社会。
24
日本の完全失業率。総務省統計局「労働力調査 長期時系列データ」より作成。単位は%
総数 15~24 25~34 35~44 45~54 55~64
(2012) 4.3 8.1 5.5 4.1 3.3 4.1
(2013) 4.0 6.9 5.3 3.8 3.3 3.7
(2014) 3.6 6.3 4.6 3.4 3.0 3.2
(2015) 3.4 5.5 4.6 3.1 2.8 3.1
(2016) 3.1 5.1 4.3 2.9 2.5 2.9
- 25. 世代別完全失業率
25
4.4
4.1
3.9 4.0
5.1 5.1
<4.6>
4.3
4.0
3.6
3.4
8.7
8.0
7.7
7.2
9.1
9.4
<8.2> 8.1
6.9
6.3
5.55.6
5.2
4.9
5.2
6.4
6.2
<5.8>
5.5
5.3
4.6 4.6
3.8
3.0 2.9 2.8 2.9
3.9 3.9
<3.6>
3.3 3.3
3.0
2.8
4.1
3.9
3.4
3.6
4.7
5.0
<4.5>
4.1
3.7
3.2 3.1
2.0 2.1
1.8
2.1
2.6
2.4
<2.2> 2.3 2.3 2.2
2.0
0.0
1.0
2.0
3.0
4.0
5.0
6.0
7.0
8.0
9.0
10.0
2005年 2006 2007 2008 2009 2010 # 2011 2012 2013 2014 2015
年齢階級別完全失業率
総務省「労働力調査(基本集計) 平成28年(2016年)1月分 (2016年3月1日公表)」より作成
全世代平均 15〜24歳 25〜34歳 35〜44歳 45〜54歳 55〜64歳 65歳以上
- 34. 「寛容な社会」モデル
• 包摂性
• 連続性
• 再挑戦の支援
– キャス・サンスティーン「ミニマリスト/トリマー」(『Conspiracy Theory and Other Dangerous Ideas』)。
↓
• 生活困窮者自立支援法と生活困窮者自立支援制度
– 2015年4月施行。生活全般にわたる相談窓口が全国に設置。
– 自立相談支援事業
– 就労準備支援事業
– 就労訓練事業
– 一時生活支援事業
– 住居確保給付金の支給
– 家計相談支援事業
– 生活困窮世帯の子どもの学習支援
※
– 各分野で「就労」の重要性は増しているが、「就労」や「支援」のメカニズム、モデルについては未だ
不透明。社会週間、制度、歴史的側面を踏まえた、実証的分析の必要性。
– 制度の効果の継続的把握とPDCAサイクルの必要性。
34
- 38. 補足2: 若年世代を対象とした
就労支援事業への批判
38
「働く意欲のない若年無業者=ニート」対策と して始まった地域若者サポートステーション
事業 は,就労を阻害するようなさまざまな不利な事情 をもち,社会から排除されている若
者たちを発見してきた。しかし,サポステ事業の限界も見えて いる。
第一に,就労支援という政策によっては100% の自立ができない若者の存在が発見され
た以上,賃金を補う多様な所得保障と住宅保障などの現物 を組み合わせた自立の道を想
定すべきなのだが検討は始まっていない。これらの若者の生活保障をどうするのかという
問題は残されたままである。
第二に,社会的包摂政策になりえない政策上の限界がある。2000年代に広がった社会
的格差の拡大は,若者自立挑戦プランの段階では予想されなかったほど,若い社会的排
除層を生み出した。それゆえ,サポステを含む若者自立支援策は,社会 から排除される若
者の増加に歯止めをかけ,社会的統合を回復するという使命を課せられている。 しかしサ
ポステをはじめとする若者支援策は,親 (家族)の扶養を暗黙の前提としたうえで,支援
サービスを提供するというスタンスに終始している。親に頼れない若者は,公的保障のない
なかで 自己責任によって自立することを迫られているが,それができないまま若者期が終
わる層を公的責任で引き受けざるをえない時期がやがて来るだ ろう。しかしその事態に直
面することを危惧して, 一定の財政支出をしてでも社会的包摂策を推進す るという若者政
策にはなっていない。地域若者 サポートステーションは隘路(あいろ)にはまっ ている。
宮本みち子「若年無業者と地域若者サポートステーション事業」(2015, 『季刊・社会保障研究』vol.51 No.1 p.8.)より引用。