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エクスポージャー療法の歴史
権上 慎
医療法人翠星会 松田病院
西広島CBT勉強会
2018年9月29日
己斐公民館
48
目的:エクスポージャー療法の歴史を概観する
 大きな流れ
‒ 初期:系統的脱感作とエクスポージャー
‒ エクスポージャーと反応妨害法
‒ 情動処理理論
‒ 制止学習アプローチ
発表の内容
初期の研究
系統的脱感作とフラッディング
1920年 Watson & Rayner 条件づけられた情動反応
J. Exp. Psychol. 3, 1-14
1924年 Jones 恐怖の実験室研究:ピーターの事例
J. Genet. Psychol., 31,308-315
1958年 Wolpe J. 逆制止による心理療法
Stanford, CA: Stanford University Press
1973年 Morganstern K. P. インプロ―ジョン療法と
フラッディング手続き:臨床レビュー
Psychol. Bull., 79(5), 318–334.
1975年 Marks 恐怖症と強迫性障害の行動的治療:
批判的評価 Prog. Behav. Modif., 1, 65-158
年表
古典的条件づけの消去 拮抗条件づけ
古典的条件づけと拮抗条件づけ
 対象者:アルバート(生後11か月)
‒ ネズミが目の前に置かれ、アルバートは手で触れよう
とした(恐怖反応なし)
‒ アルバートがネズミに触れた瞬間に、鉄の棒をハン
マーで叩き、大きな音を提示する
‒ 複数回の対呈示後
➡ ネズミのみを見て泣き出すようになる
‒ 恐怖はウサギ、犬、毛皮のコートへと広がる
 主張:恐怖症の多くも条件づけられた
感情反応かその学習の転移である
‒ フロイトへの批判
 アルバートの恐怖反応は消去される
予定だったが、その前にアルバートは退院
 非倫理的な実験であると痛烈に批判される
Watson & Rayner (1920) 条件づけられた情動反応
Watson B, & Rayner R. (1920). Conditioned emotional reactions. Journal of Experimental Psychology, 3(1), 1-14
 エクスポージャー様の手法を初めて用いた
 対象者:ピーター(2歳10か月の男の子)
‒ IQ:102(ビネー式知能検査クールマン改訂版)
‒ 恐怖の対象:ウサギ、ネズミ、毛布、羽毛
‒ 恐怖獲得過程は不明
‒ 反応:泣き叫ぶ、驚いてうつ伏せになる
‒ 介入:他の子どもとプレイルームで遊ぶ
①遊んでいる時にウサギを近づける
②アメを舐めている時に近づける
Jones (1924). 恐怖の実験室研究:ピーターの事例
Jones (1924) A Laboratory Study of Fear: The Case of Peter. First published in Pedagogical
Seminary, 31, 308-315.
指を甘噛みさせる
やさしく撫でる
ウサギとケージに一緒に入る
ウサギと同じ部屋にいる
膝の上でウサギを抱く
実験者がウサギをケージに運ぶのを手伝う
ウサギのそばで無防備にしゃがむ
ウサギを幼児用の椅子の台に乗せる
手の届く範囲にいる
部屋で自由にしているウサギに触れる
実験者が抱いたウサギに触る
部屋の中でウサギが自由な状態でいる
ケージに入り近くにいることが許容される
ケージに入り3フィートの距離が許容される
ケージに入り4フィートの距離が許容される
ケージに入り12フィートの距離が許容される
ケージに入ったウサギが部屋内にいると恐怖が生じる
ウサギへの恐怖に対する介入効果
しょうこう熱で2ヶ月入院
犬に飛びかかられる
手を引っ掻かれる
単純な
接 近
アメを舐めている所へ接近
介入によってウサギに対する恐怖反応は低減
介入効果は、ネズミや毛布などへも般化
エクスポージャーと、拮抗反応条件づけを併用している
 Mary Cover Jones
 どんな言語がこの条件づけ解除の
プロセスに付随していたかを見極
める試みを度々行った。
言語の影響は当初より考慮の対象だった
ぼくは友だちと遊ぶよ。
友だちを連れてきてよ。
ピーター、プレイルームで何をする?
ブロックだよ。
他に何と会うだろう?
ぼくはウサギ、好きだよ介入が終わろうとする時期
 不安状況をその強さから並べ
不安階層表を作成する
 不安と拮抗する筋弛緩訓練を行う
=リラクセーション法の習得
 階層表で不安の低い項目から、不安状況の短
時間(通常数秒)のイメージによる体験し、
 筋弛緩法を実行し、拮抗条件づけを行う
 階層表のより強い項目へ段階的に進めていく
系統的脱感作の手続き
山上敏子 (2007). 「系統的脱感作の適用についての 一考察」. 精神神経学誌, 109 (12), 1095-1099.
Wolpe (1958) 系統的脱感作
ウォルピ (1958) の
「逆制止による心理療法」は
金久によって翻訳されている。
Wolpe, J. (1958). Psychotherapy by reciprocal inhibition. Stanford, CA: Stanford University Press.
(ウォルピ,J. 金久卓也(監訳)(1977).逆制止による心理療法 誠信書房)
 不安・恐怖誘発刺激をクライエントに提示
 強い不安・恐怖を引き起こす刺激
‒ 階層表の低い項目から段階的に進めない
 不安・恐怖に拮抗する反応を用いない
‒ リラクセーションは行わない
フラッディング
Morganstern, K. P. (1973). Implosive therapy and flooding procedures: A critical review.
Psychological Bulletin, 79(5), 318-334.
 系統的脱感作とフラッディ
ングの多くの比較研究
 左図はMarks et al. 1971
 フラッディングの方が
系統的脱感作より有効
 子どもにとってフラッディ
ングは受入れにくい (King
& Gullone, 1990)
リラクセーションは必要か?
Marks, I. M., Boulougouris, J. C., & Marset, P. (1971). Flooding versus desensitization in the treatment
of phobic patients: A crossover study. British Journal of Psychiatry, 119, 353–375..
エクスポージャー形態の検討 (Marks, 1975)
想像/映像/実際場面± 想像曝露と現実曝露の間のインターバル
± 行動リハーサル
テープレコード/セラピスト教示
緩やかに(脱感作)/急速(フラッディング)
階層表のトップから始める/ボトムから始める
高い-低い/低い-高い の順番
個人/集団 ー まとまりをもった/構造化されない
±セルフエクスポージャーのホームプログラム
手がかり:ー 患者/セラピストによって供給/制御される
セラピストによって外的に課されるか、患者が自発的に行うか
ー コンタクト:恐怖刺激 ± 接近/恐怖症と関連の無い刺激/精神力動
ー スタイル:コーピング/熟達/無力感
ー 情動:不安(カタルシス)/怒り/リラクセーション/瞑想/ユーモア
± セラピーへの期待
± ストレス免疫、コーピング、不安マネジメント
± 想像/映像/ライブでのモデリング
± 報酬
間隔 [短い/長い、間隔をあける/集中的]
エンドポイント [セッション:良好な雰囲気で終わるのがベストだろうか?]
[治療:安定した改善のためにどのくらい必要だろうか?]
 筋弛緩訓練は大抵は余分であり、想像を用いた脱
感作のアウトカムにほとんど貢献しない
 一時的に全体的な緊張を緩和するものの、
恐怖症を低減するのには役立たない
 拮抗条件づけのWolpeのモデル(逆制止)は最近
の実験では支持されていない
➡ 治療の有効成分はリラクセーションでなく暴露
 このレビュー出版が与えた影響
‒ フラッディングの有効性を示していたが...
‒ その後の行動変容の研究と理論は
「エクスポージャー療法」に焦点を当てていく
Marks (1975) のレビューによる結論づけ
Marks, I. M. (1975). Behavioral treatments of phobic and obsessive-compulsive disorders:
A critical appraisal. Progress in Behavior Modification, 1, 65–158.
エクスポージャーと反応妨害法
 限局性恐怖症などに有効
 強迫症などに効果を示さない場合がある
エクスポージャーの課題
 恐怖は、古典的条件づけによって獲得され、
オペラント条件づけ過程によって維持される。
Mowrer の二要因説
US
(犬に咬まれる)
CS
(犬)
CR
(古典的条件づけ
によって獲得され
た犬への恐怖)
古典的条件づけ
オバートな
回避反応
刺激もしくは動
機づけとしての
強い恐怖反応
オペラント条件づけ
Mowrer O. H. (1960). Learning Theory and Behavior. New York, NY: John Wiley..
 受動的回避行動 (passive avoidance behavior)
‒ 行動しないことにより嫌悪刺激を回避すること
‒ 実験:明暗2つの部屋のうち一方で嫌悪刺激を提示
すると、もう一方の部屋にとどまるようになる
 能動的回避行動 (active avoidance behavior)
‒ 恐怖の到来を防ぐ or 和らげるための意図的行動
‒ 実験:所定の反応を行うと刺激提示を防ぐ・遅延
 安全(希求)行動
‒ 回避行動とほぼ同義だが認知療法・認知行動療法
の文脈でよく用いられる
回避行動の種類
Krypotos et al., (2015). Avoidance learning: a review of theoretical models and
recent developments. Frontiers in Behavioral Neuroscience, 9, 189.
 広場恐怖を伴うパニック症の患者
 安全行動をして or せずにエクスポージャー
 安全行動を行わない群の方が不安と信念の改善が大きかった
Salkovskis の安全行動についての実験
Salkovskis, Clark , Hackmann , Wells, & Gelder. (1999). An experimental investigation of the role of safety-seeking
behaviours in the maintenance of panic disorder with agoraphobia. Behaviour Research and Therapy 37, 559–574.
 ERP (Exposure & Response Prevention)
 2つの手法の組合せ
 エクスポージャー:不安誘発刺激に接近する
 反応妨害法:積極的回避行動
(手洗い、気逸らし)を行わない
エクスポージャー&反応妨害法
事例1
 33歳の女性の教員
 夫と子どもがいる
 30歳で子どもを授かってから、ドアノブや
衣服、ゴミなどに「汚染されてしまった」と
いう思考が生じる。
 洗浄、衣服の洗い直し、掃除を繰り返す。
 電気けいれん療法(ECT)、支持的精神療
法、薬物療法、行動療法の効果なし
Meyer (1966) のERPのはじめての応用①
Meyer, V. (1966). Modification of expectations in case with obsessional ritual. Behavior
research and therapy, 4, 273-280.
事例1:介入と結果
 入院
 蛇口の水を止め、洗浄剤を制限
 困難であった活動への従事
‒ ドアノブ、子どもの玩具を扱う、公共交通
機関を利用する。
 儀式を止めるよう説得・エンパワメント
 洗浄:4回/日、回避:3回/日程度に低減
 退院し家族との関係が改善。趣味も始める。
ERPのはじめての応用②
事例2
 47歳の女性教員(非常勤)
 夫と娘
 10歳時「精霊に対する冒涜は赦されない」
という聖書の一説を聞き、その考えに固執
 汚い言葉、性的なイメージが頭に浮かぶ
 文字の書き直し、着替え、歩き直しの儀式
 32歳:夫と娘を殺す思考→ロボトミー手術
 ECT、支持的精神療法、薬物療法、精神分析
ERPのはじめての応用③
事例2:介入と結果
 入院
 精霊と性的内容のイメージ、パイプを掃除す
る、悪態をつく、引き返さず歩く
 儀式を止めるよう説得とエンパワメント
 「永遠の罪」について牧師と話すよう促す
 Pt.に対する対応方法について夫へ教育
 侵入思考:80回→8回/日、儀式:6.5回へ
 退院後も十分に対処可能、常勤職を得た
ERPのはじめての応用④
Emotional Processing Theory
情動処理理論
 なぜエクスポージャーは効果があるのか?
 恐怖は3種類の情報の記憶ネットワーク
‒ 恐怖刺激・状況についての情報
‒ 言語行動、生理的反応、オバートな行動
‒ 意味づけ
⇒ これを「恐怖構造」と呼ぶ
 恐怖構造の変容
‒ 恐怖記憶を活性化する
‒ 新しい情報を取込み、構造を変化させる
Foa & Kozak (1986) の情動処理理論
Foa, E. B., & Kozak, M. J. (1986). Emotional processing of fear: Exposure to corrective
information. Psychological Bulletin, 99(1), 20–35.
記憶構造を活性化して情報を取り込む
今は安全
思い返せば…エクスポージャー
トラウマ記憶に
くり返しさらす
不
安
時 間
活性化、セッション内・間馴化が効果指標
セッション内馴化とセッション間馴化
不安のキッカケ 1回目
2回目
3回目セッション間
馴化
 エクスポージャーが記憶構造を変化させる
ERPによる恐怖ネットワークの変化
Foa & Kozak. (1986) Emotional Processing of Fear: Exposure to Corrective Information. Psychological
Bulletin. 99(1), 20-35
危険
悪い心臓発作
恐れ 漠然
窒息
頻脈 過呼吸
歩く
自己
人混み お店 家から遠く
危険
悪い心臓発作
恐れ 漠然
窒息
頻脈 過呼吸
歩く
自己
人混み お店 家から遠い
意味づけ要素 反応要素 刺激要素
Y-BOCS合計得点の平均
アセスメントポイント(週目)
a
線形混合モデル
エクスポージャーと儀式妨害(ERP)
クロミプラミン
ERP + クロミプラミン
プラセボ
 強迫症の患者を対象に
した無作為化比較試験
 ERP、ERP+薬物療法は
プラセボ、薬物療法単
独を上回った
 ERPは単独で用いた場
合も、薬物療法を併用
した場合も効果に違い
はなかった
強迫症への無作為化比較試験 (Foa et al, 2005)
Foa et al. (2005). Randomized, Placebo-Controlled Trial of Exposure and Ritual Prevention, Clomipramine, and Their
Combination in the Treatment of Obsessive-Compulsive Disorder. American Journal of Psychiatry , 162, 151-162
 セッション内馴化はアウトカムを予測しない
 不安・恐怖はディストラクション (気逸らし)
によっても低下する
 ディストラクションは恐怖構造の活性化に干
渉する
 しかし、説明理論としては曖昧性を残す
情動処理理論は他の学派から馴化への依存を
批判されるが、Foa は自らデータに基づいて
モデルを修正している
Foa et al. (2006) の情動処理理論の修正
Foa, Huppert, & Cahill. (2006). Emotional Processing Theory: An Update. In Rothbaum (Ed.), Pathological
anxiety: Emotional processing in etiology and treatment (pp. 3-24). New York, NY, US: Guilford Press.
Inhibitory learning approach
くわしい説明は以下のSlideShare参照
制止学習理論とエクスポージャー療法
制止学習アプローチ
 古典的条件づけ(制止学習)の知見をエクス
ポージャー療法にとり入れることで、その効
果を高めようとした。
‒ Craske, M. G., Kircanski, K., Zelikowsky, M., Mystkowski, J. L.,
Chowdhury, N., & Baker, A. S. (2008). Optimizing inhibitory learning
during exposure therapy. Behaviour Research and Therapy, 46(1), 5–27.
‒ Craske, M. G., Treanor, M., Conway, C. C., Zbozinek, T. D., & Vervliet, B.
(2014). Maximizing exposure therapy: An inhibitory learning approach.
Behaviour Research and Therapy, 58, 10–23.
制止学習理論とエクスポージャー
 パブロフの条件反射説の中心概念
 興奮:反応を出力するプラスの連合過程
‒ よだれが出る
‒ 不安・恐怖反応が生じる
 制止:反応を抑制するマイナスの連合過程
‒ よだれが出なくなる
‒ 不安・恐怖反応が生じなくなる
‒ エクスポージャーでの不安の改善
興奮と制止
古典的条件づけ研究の中核理論の1つ
簡潔かつ非常に大きな説明力がある
⊿V: ある試行でCSが獲得する連合強度の増加分
αβ:CSの強度(明瞭度)とUSの強度によって
決定されるパラメータ、0~1の値をとる
λ: USの強度によって決定される連合強度の最大値
V: その試行までに獲得されている連合強度
おどろき(予期と現実のギャップ)が学習を促進!
Rescorla-Wagner理論 (1972)
⊿V = αβ(λ - V)
レスコーラ・ワグナー理論からの条件づけの予測
0
0.5
1
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
連
合
強
度
V
音と電気ショック!?
おどろき!
予期できる
電気ショックでしょ…
いきなり消去!?
アレ?電気こないの!?
おどろき!
予期が明確な時の驚きを伴う体験が制止学習を促進
実験場面を通じて存在する背景刺激(中島・獅々見, 2003)
CSと同様にUSと連合する可能性
文脈とは
刺激 実験室・部屋
薬物・ホルモン 気分・思考
条件づけ 消去 検索テスト
復元
消去文脈から別の文脈へ移ると恐怖が再び生じ
消去で仮定される記憶構造 (Bouton, 1994)
US
CS 文脈
興奮性連合
制止性連合
制止性連合では文脈がCS-US連合を媒介する
消去文脈が
検索されるか
 不安階層表の低い項目から取りくむ
 段階的に不安の強い項目に進む
 不安が下がるまで十分な頻度・時間をかける
‒ 1回2時間の練習を週5日(Foa et al., 2005)
従来のエクスポージャー療法の方法
直線的
Foa et al. (2005). Randomized, Placebo-Controlled Trial of Exposure and Ritual Prevention, Clomipramine, and Their
Combination in the Treatment of Obsessive-Compulsive Disorder. American Journal of Psychiatry , 162, 151-162
 目標:制止性連合の獲得を最大化する
治療と多様な文脈とを結びつける
 予期を妨害しておどろきを体験する
 エクスポージャーに変動性を組み込む
‒ 課題の時間、用いる刺激を変える
‒ 挑戦する課題を段階的にせずランダムにする
制止学習アプローチに基づく方法
CS
CS
CS
恐怖レベルの変動性 ➡ 日常(検索必要場面)と類似 ➡ 復元の相殺
① 予期の妨害
② 消去の深化
③ 消去中の時折の強化
④ 安全信号・安全行動の除去
⑤ 変動性
⑥ 検索手がかり
⑦ 多様な文脈で
⑧ 感情ラベリング
制止学習を促進するための方略
Craske et al. (2014). Maximizing exposure therapy: An inhibitory learning
approach. Behaviour Research and Therapy, 58, 10–23.
 予期と結果のミスマッチを起こす
 恐怖のきっかけ(CS)は良くないこと
(US)が起こる予感を高める
 きっかけはあるが恐れていたことは生じない
CS-noUSの連合を学習していく
予期の妨害
CS noUS
おどろき!
 恐れている結果(US)が何か明確化する
‒ 「不安になる」では不十分
‒ 予期(予感)の明確化
 恐れている結果が生じる確率を尋ねる
予期の妨害:その最大化のために
動悸をそのままに
すると不安になる
動悸をそのままにす
ると10分以内に心臓
発作で死ぬ
予感が
外れた90%
予期の妨害の具体例
恐ろしいと感じるのはどのような状況ですか?
専門家として同僚に意見を述べることは怖くてできないです
何が起こることが恐ろしいですか?また、恐れていることが
起こる確率はどのくらいだと思いますか?予期/USの明確化
きっと同僚は「何を言っているんだという」軽蔑した目で私
を見て、何も答えずに去っていくと思います。95%です。
恐れていたことは起こりましたか?そう言える理由は?
いいえ。同僚はすぐに答えてくれ、僕の意見に同意してくれまし
た。その後も暖かい雰囲気で話せましたから。予期の妨害
何を学びましたか? 同僚はいつも僕の意見を無視する訳
じゃないということです。認知変容
エクスポージャー
 複数の文脈でエクスポージャーを行う
 外的文脈(その場所にあるもの)
内的文脈(その時の状態、感情、思考)
 単独で、馴染みのない場所で、様々な曜日、
時間帯、内部感覚、イメージ、in vivoで。
多様な文脈で
US
CS 文脈
 本発表で触れることのできていない内容
‒ インプロ―ジョン、シンプローシブ療法
‒ モデリング
‒ マインドフルネスとの組み合わせ
‒ 薬物(Dサイクロセリン)によるエクス
ポージャー効果の増強など
‒ さまざまな病態への適用方法
など
本発表の課題

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