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企業予想の特性分析
-外生的ショック下におけるバイアスと異質性-
弘前大学 栗原 由紀子
2015年9月3日 於・首都大学東京
1
第43回日本行動計量学会
国内需要のBSI 販売価格のBSI
「好況期には市場全般において楽観的予想となり,不況期には悲観的予想となる」
→ 個別企業により,予想の傾向(強気・弱気)は異なる可能性がある
2
はじめに
大企業・製造業
-100-50050100-100-50050100-100-50050100
実 績
1期 先 予 想
2機 先 予 想
05Q1 07Q1 09Q1 11Q1 13Q1
shock shock
-100-50050100-100-50050100-100-50050100
実 績
1期 先 予 想
2機 先 予 想
05Q1 07Q1 09Q1 11Q1 13Q1
shock shock
予測誤差と損失コストに関する研究
上野・難波(2013): 消費動向調査(内閣府)個票の利用
非対称損失関数LINEXから,消費者は過小予想傾向にあり
年齢や所得により予測値に違いがあることを示す
 本研究の目的
法人企業景気予測調査(財務省)の調査票情報(カテゴリカルデータ)より
① 法人企業の予想パフォーマンスと予想誤差の特性を捉える
② 予想誤差から,企業予想の異質性を計測する
3
先行研究
分析対象サンプルと変数
データ: 法人企業景気予測調査(財務省・内閣府)の調査票情報
対象期間: FY2004Q1~FY2013Q4
※判断項目は,実績値,1期先予想値,2期先予想値が得られている
季節的要因は除いた,実勢として質問している
4
調査項目 比較時点 カテゴリー区分
国内需要 前期比 1減少, 2不変, 3増加
販売価格 前期比 1下降, 2不変, 3上昇
サンプルサイズ 資本金(億円) 従業員数
分析対象サンプルの特徴
5
500100015002000500100015002000
05Q1 07Q1 09Q1 11Q1 13Q1
リーマンショック 大震災
全サンプル( 1499 )
5期パネル( 1339 )
11期パネル( 1096 )
809010011012080901001101208090100110120 p0
p5
p11
05Q1 07Q1 09Q1 11Q1 13Q1
shock shock
100012001400100012001400100012001400
p0
p5
p11
05Q1 07Q1 09Q1 11Q1 13Q1
shock shock
分析対象: 製造業・大企業(資本金20億以上は全数調査)
パネル期間: 5期以上連続パネル -分析時点から過去に4期以上連続回答している
11期以上連続パネル -分析時点から過去に11期以上連続回答している
予想パフォーマンスと予想バイアスの計測
𝑋𝑡
𝑋𝑡−1
∗ 1(-) 2(=) 3(+)
1(-) 𝑝11,𝑡 𝑝12,𝑡 𝑝13,𝑡
2(=) 𝑝21,𝑡 𝑝22,𝑡 𝑝23,𝑡
3(+) 𝑝31,𝑡 𝑝32,𝑡 𝑝33,𝑡
一致率
𝜃ℎ𝑖𝑡,𝑡 = 𝑝11,𝑡 + 𝑝22,𝑡 + 𝑝33,𝑡
過大予想率
𝜃 𝑜𝑒,𝑡 = 𝑝21,𝑡 + 𝑝31,𝑡 + 𝑝32,𝑡
過小予想率
𝜃 𝑢𝑒,𝑡 = 𝑝12,𝑡 + 𝑝13,𝑡 + 𝑝23,𝑡
予想バイアス指標
𝜃 𝐵𝐼𝐴𝑆,𝑡 =
𝜃 𝑜𝑒,𝑡 − 𝜃 𝑢𝑒,𝑡
𝜃 𝑜𝑒,𝑡 + 𝜃 𝑢𝑒,𝑡
予想-実績値表 {𝑋𝑡 × 𝑋𝑡−1
∗
}
Kawasaki & Zimmerman(1986)より
※ 2期先予想値を用いても同様の分析を行う
{ 𝑋𝑡 × 𝑋𝑡−2
∗∗
}
6
国内需要の予想誤差に関する特性
7
0.00.20.40.60.81.00.00.20.40.60.81.0
05Q1 07Q1 09Q1 11Q1 13Q1
shock shock
1期 先 予 想 ( 0.72 )
2期 先 予 想 ( 0.68 )
-1.0-0.50.00.51.0-1.0-0.50.00.51.0
05Q1 07Q1 09Q1 11Q1 13Q1
shock shock
1期 先 予 想 ( 0.13 )
2期 先 予 想 ( 0.17 )
一致率の推移 予想バイアス指標の推移
1期先予想の一致率は,ショック後に低
下し,一致率の回復までに1年前後か
かっている
1期先予想のバイアスは,ショック後に過
大となるが,その後,反動減で過小とな
る
国内需要の予想誤差に関するパネル的特性
8
0
5
10
15
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50
0 1 2 3 4 5 6 7 8
相対度数(%)
8期パネルの一致回数
増加 不変 減少
0
5
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45
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0 1 2 3 4 5 6 7 8
相対度数(%) 8期パネルの一致回数
増加 不変 減少
0
5
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45
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0 1 2 3 4 5 6 7 8
相対度数(%)
8期パネルの一致回数
増加 不変 減少
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0 1 2 3 4 5 6 7 8
相対度数(%)
8期パネルの一致回数
増加 不変 減少
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-1
(-1,-0.5]
(-0.5,0)
0
(0,0.5)
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1
相対度数(%)
0
5
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-1
(-1,-0.5]
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[0.5,1)
1
相対度数(%)
0
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0
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0
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[0.5,1)
1
相対度数(%)
2004Q3-2006Q1 2008Q1-2009Q4 2010Q3-2012Q2 2011Q4-2013Q
リーマン・ショック期 震災期 アベノミクス前後
一致率
予想バイアス指標
販売価格の予想誤差に関する特性
9
0.00.20.40.60.81.00.00.20.40.60.81.0
05Q1 07Q1 09Q1 11Q1 13Q1
shock shock
1期 先 予 想 ( 0.81 )
2期 先 予 想 ( 0.79 )
-1.0-0.50.00.51.0-1.0-0.50.00.51.0
05Q1 07Q1 09Q1 11Q1 13Q1
shock shock
1期 先 予 想 ( 0.01 )
2期 先 予 想 ( -0.05 )
一致率の推移 予想バイアス指標の推移
1期先予想の一致率は,ショック後に低
下するが,その幅は国内需要ほどでは
ない
平常時には過小予想傾向にあるが,
ショック期には過大予想傾向となる
10
販売価格の予想誤差に関するパネル的特性
0
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0 1 2 3 4 5 6 7 8
相対度数(%)
8期パネルの一致回数
増加 不変 減少
0
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50
60
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0 1 2 3 4 5 6 7 8
相対度数(%)
8期パネルの一致回数
増加 不変 減少
0
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0 1 2 3 4 5 6 7 8
相対度数(%)
8期パネルの一致回数
増加 不変 減少
0
10
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70
0 1 2 3 4 5 6 7 8
相対度数(%)
8期パネルの一致回数
増加 不変 減少
0
5
10
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-1
(-1,-0.5]
(-0.5,0)
0
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[0.5,1)
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相対度数(%)
0
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(-0.5,0)
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[0.5,1)
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相対度数(%)
0
5
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(0,0.5)
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1
相対度数(%)
0
5
10
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-1
(-1,-0.5]
(-0.5,0)
0
(0,0.5)
[0.5,1)
1
相対度数(%)
2004Q3-2006Q1 2008Q1-2009Q4 2010Q3-2012Q2 2011Q4-2013Q一致率一致率
予想バイアス指標
 損失関数 Linex(Linear exponential) Loss Function
予測者は,良い予測をするために何らかの損失関数 𝐿 ・ に従い予測している。その損失関数Lには,
予想誤差により発生するコストがウェイトとして含まれている。
𝐿 𝑒𝑡+1,𝑡; 𝜓 =
1
𝜓2 exp 𝜓𝑒𝑡+1,𝑡 − 𝜓𝑒𝑡+1,𝑡 − 1
予測誤差: 𝑒𝑡+1,𝑡 = 𝜋 𝑡+1 − 𝑓𝑡+1,𝑡
実績値: 𝜋 𝑡+1, 予測値: 𝑓𝑡+1,𝑡
非対称損失ウェイト: 𝜓
ここで, 𝜋 𝑡+1|Ω 𝑡 ~𝑁(𝜇 𝑡+1,𝑡, 𝜎𝑡+1,𝑡
2
) ,Ω 𝑡: t期の情報
損失を最小とする解は,𝑓𝑡+1,𝑡 = 𝜇 𝑡+1,𝑡 +
𝜓
2
𝜎𝑡+1,𝑡
2
さらに,予測は実績から一定の乖離(𝜋 𝑏)があると仮定する
𝑓𝑡+1,𝑡 = 𝜇 𝑡+1,𝑡 +
𝜓
2
𝜎𝑡
2
− 𝜋 𝑏
予測誤差: 𝑏𝑖𝑎𝑠𝑡+1,𝑡,𝑖(𝑓𝑡+1,𝑡 − 𝜇 𝑡+1,𝑡) = −𝜋 𝑏 +
𝜓 𝑖
2
𝜎𝑡
2
,
※個体の損失に関する非対称性は個体により異なると仮定
予測誤差に関する非対称損失関数
11
𝜓 > 0 過大予想傾向
𝜓が0近辺 対称
𝜓 < 0 過小予想傾向
Capistrán & Timmermann (2008), Chang & Hung (2007)
変数の概要
12
法人企業景気予測調査および法人企業統計調査の調査票情報をリンケージ
予想誤差 :
𝜑𝑋𝑡−1,𝑖
∗
𝑘 = 1 𝑖𝑓 𝑋𝑡,𝑖 > 𝑋𝑡−1,𝑖
∗
(過小予想)
𝑘 = 2 𝑖𝑓 𝑋𝑡,𝑖 = 𝑋𝑡−1,𝑖
∗
一致
𝑘 = 3 𝑖𝑓 𝑋𝑡,𝑖 < 𝑋𝑡−1,𝑖
∗
(過大予想)
属性変数 : 𝑍 log従業員数,自己資本比率,売上高経常利益率
分析期間 : 国内需要 FY2008Q1~FY2009Q4(リーマンショック2008Q2-Q3) 273社
販売価格 FY2011Q4~FY2013Q3(アベノミクス2012Q3) 403社
(欠損値は除く)
実績値 𝑋𝑡𝑋𝑡−1
予想値 𝑋𝑡
∗𝑋𝑡−1
∗
𝜑𝑋𝑡−1
𝑋𝑡−1
∗
: 𝑡 − 1期における𝑡期予想
予想誤差に関する非対称損失の異質性の捕捉
Step1. 分散𝜎𝑡,𝑖
2
の推定(階層ベイズ推定・順序ロジットモデル) Qui et. al. (2002)
𝜆 𝑡,𝑖 = 𝑃 𝑋𝑡,𝑖 ≤ 𝑗 , 𝑗 = 1,2,3
𝑙𝑜𝑔𝑖𝑡(𝜆 𝑡,𝑖) = 𝑟0 + 𝑟1 𝑋𝑡−1,𝑖,1 + 𝑟2 𝑋𝑡−1,𝑖,3 + 𝑟3 𝑋𝑡−2,𝑖,1 + 𝑟4 𝑋𝑡−2,𝑖,3 + 𝜐𝑡,𝑖
𝜐𝑡,𝑖 ~ 𝑁(0, 𝜎𝑡,𝑖
2
)
𝑝𝑟𝑖𝑜𝑟: 𝜎𝑡,𝑖
2
= 1 𝜏 , 𝜏~𝑔𝑎𝑚𝑚𝑎 1,0.001 , 𝛾ℎ~ 𝑁 0, 10002 , ℎ = 0, … 4
Step2. 非対称損失ウェイト 𝜓𝑖の推定 (階層ベイズ推定・順序ロジットモデル)
𝜆 𝑡,𝑖 = 𝑃 𝜑𝑋𝑡+1,𝑡,𝑖 ≤ 𝑗 , 𝑗 = 1,2,3
𝑙𝑜𝑔𝑖𝑡(𝜆 𝑡,𝑖) = 𝑐0 + 𝑐1,𝑖 𝜎𝑡,𝑖
2
+ 𝜀𝑡,𝑖, 𝑗 = 1,2,3
𝑐1,𝑡,𝑖~ 𝑁(𝜓 𝑡,𝑖, 𝑠2)
𝜓 𝑡,𝑖 = 𝒛 𝑡,𝑖
′
𝜷 𝒕
𝑝𝑟𝑖𝑜𝑟: 𝑠~𝑈𝑛𝑖𝑓𝑜𝑟𝑚 0,100 , 𝛽 𝑘~ 𝑁 0, 10002
13𝑛𝑢𝑚𝑏𝑒𝑟 𝑜𝑓 𝑐ℎ𝑎𝑖𝑛𝑠 = 2, 𝑖𝑡𝑒𝑟𝑎𝑡𝑖𝑜𝑛 = 10000, 𝑏𝑢𝑟𝑛 − 𝑖𝑛 𝑠𝑎𝑚𝑝𝑙𝑒 = 10000
[51, 2]
[52, 2]
[53, 2]
[54, 2]
[55, 2]
[56, 2]
[57, 2]
[58, 2]
[59, 2]
[60, 2]
[61, 2]
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[63, 2]
[64, 2]
[65, 2]
[66, 2]
[67, 2]
[68, 2]
[69, 2]
[70, 2]
[71, 2]
[72, 2]
[73, 2]
[74, 2]
[75, 2][76, 2]
[77, 2]
[78, 2]
[79, 2]
[80, 2]
[81, 2]
[82, 2]
[83, 2][84, 2]
[85, 2]
[86, 2]
[87, 2]
[88, 2]
[89, 2]
[90, 2]
[91, 2][92, 2]
[93, 2]
[94, 2]
[95, 2][96, 2]
[97, 2]
[98, 2]
[99, 2]
[100,2]
box plot: phai[51:100,2]
-2.0
-1.0
0.0
1.0
2.0
[51, 1]
[52, 1]
[53, 1]
[54, 1]
[55, 1]
[56, 1]
[57, 1]
[58, 1]
[59, 1]
[60, 1]
[61, 1]
[62, 1][63, 1][64, 1]
[65, 1]
[66, 1]
[67, 1]
[68, 1]
[69, 1]
[70, 1]
[71, 1]
[72, 1]
[73, 1]
[74, 1]
[75, 1]
[76, 1]
[77, 1]
[78, 1]
[79, 1]
[80, 1]
[81, 1]
[82, 1]
[83, 1]
[84, 1]
[85, 1]
[86, 1]
[87, 1]
[88, 1]
[89, 1]
[90, 1]
[91, 1]
[92, 1]
[93, 1]
[94, 1]
[95, 1][96, 1]
[97, 1]
[98, 1]
[99, 1]
[100,1]
box plot: phai[51:100,1]
-1.0
-0.5
0.0
0.5
1.0
1.5
𝜓 𝑡,𝑖の時点別平均値
結果の概要 国内需要
非対称損失ウェイト𝜓 𝑡,𝑖
2008 Q1 企業51~100
2008 Q3 企業51~100
過小予想
過大予想
mean sd
ψ 2008Q1 0.0073 0.1672
ψ 2008Q2 -0.0013 0.1682
ψ 2008Q3 -0.0103 0.1649
ψ 2008Q4 0.0291 0.1640
ψ 2009Q1 0.0095 0.1539
ψ 2009Q2 -0.0036 0.1644
ψ 2009Q3 0.0111 0.1806
ψ 2009Q4 0.0037 0.1411
node
結果の概要 国内需要 非対称損失ウェイトψ
[81, 1]
[81, 2]
[81, 3]
[81, 4]
[81, 5]
[81, 6]
[81, 7]
[81, 8]
box plot: phai[81,]
-0.6
-0.4
-0.2
0.2
0.4
[70, 1]
[70, 2]
[70, 3]
[70, 4]
[70, 5] [70, 6]
[70, 7]
[70, 8]
box plot: phai[70,]
-1.0
-0.5
0.0
0.5
1.0
2008Q1
2008Q2
2008Q3
2008Q4
2009Q1
2009Q2
2009Q3
2009Q4
2008Q1
2008Q2
2008Q3
2008Q4
2009Q1
2009Q2
2009Q3
2009Q4
企業A 企業B
結果の概要 国内需要 非対称損失ウェイトと属性の関係
16
従業員数(対数値) 自己資本比率 売上高経常利益率
[1]
[2]
[3] [4]
[5]
[6]
[7] [8]
box plot: CapitalRatio
-0.5
-0.25
0.0
0.25
0.5
0.75
[1]
[2]
[3]
[4]
[5]
[6]
[7]
[8]
box plot: ProfitSales
-2.0
-1.0
0.0
1.0
2.0
[1]
[2]
[3]
[4]
[5]
[6]
[7]
[8]
box plot: employee
-0.5
0.0
0.5
1.0
2008Q1
2008Q2
2008Q3
2008Q4
2009Q1
2009Q2
2009Q3
2009Q4
2008Q1
2008Q2
2008Q3
2008Q4
2009Q1
2009Q2
2009Q3
2009Q4
2008Q1
2008Q2
2008Q3
2008Q4
2009Q1
2009Q2
2009Q3
2009Q4
企業規模が大きいほど,ショック後
の予想誤差は過大傾向
安全性が高い企業ほど,ショック後
の予想誤差は過大傾向
収益性の高い企業ほど,ショック後
の予想誤差は過小傾向
結果の概要 販売価格 予想誤差と非対称損失ウェイトの分析結果
17
node mean sd
ψ 2011Q4 0.0094 0.1737
ψ 2012Q1 -0.0002 0.1676
ψ 2012Q2 -0.0041 0.1920
ψ 2012Q3 -0.0012 0.1966
ψ 2012Q4 0.0014 0.1863
ψ 2013Q1 -0.0061 0.1794
ψ 2013Q2 -0.0003 0.1873
ψ 2013Q3 0.0006 0.1962
ウェイトΨ推定値の時点別平均値
[100,4]
[101,4]
[102,4][103,4]
[104,4]
[105,4]
[106,4]
[107,4]
[108,4]
[109,4]
[110,4]
[111,4]
[112,4]
[113,4]
[114,4]
[115,4]
[116,4]
[117,4]
[118,4]
[119,4]
[120,4][121,4]
[122,4]
[123,4]
[124,4][125,4][126,4]
[127,4]
[128,4][129,4][130,4][131,4]
[132,4]
[133,4]
[134,4]
[135,4][136,4][137,4]
[138,4]
[139,4]
[140,4]
[141,4]
[142,4]
[143,4]
[144,4]
[145,4]
[146,4]
[147,4]
[148,4][149,4][150,4]
box plot: phai[100:150,4]
-1.0
0.0
1.0
2.0
[100,1]
[101,1]
[102,1]
[103,1]
[104,1]
[105,1]
[106,1][107,1][108,1][109,1]
[110,1]
[111,1]
[112,1]
[113,1]
[114,1]
[115,1]
[116,1]
[117,1]
[118,1]
[119,1]
[120,1]
[121,1]
[122,1]
[123,1]
[124,1]
[125,1]
[126,1]
[127,1]
[128,1]
[129,1]
[130,1]
[131,1][132,1]
[133,1]
[134,1]
[135,1]
[136,1]
[137,1][138,1]
[139,1]
[140,1]
[141,1][142,1]
[143,1]
[144,1]
[145,1]
[146,1]
[147,1]
[148,1]
[149,1]
[150,1]
box plot: phai[100:150,1]
-1.0
-0.5
0.0
0.5
1.0
[1] [2]
[3]
[4] [5]
[6] [7]
[8]
box plot: ProfitSales
-0.5
0.0
0.5
1.0
[1]
[2]
[3]
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[5]
[6] [7]
[8]
box plot: employee
-1.0
-0.5
0.0
0.5
1.0
[1]
[2]
[3]
[4]
[5] [6]
[7]
[8]
box plot: CapitalRatio
-1.0
-0.5
0.0
0.5
1.0
結果の概要 販売価格 非対称損失ウェイトと属性の関係
18
従業員数(対数値) 自己資本比率 売上高経常利益率
2011Q4
2012Q1
2012Q2
2012Q3
2012Q4
2013Q1
2013Q2
2013Q3
2012年11月中旬(2012Q3),衆院解散決定時,企
業規模が大きいほど,予想誤差は過小傾向にある
(予想よりも販売価格は低くない)
2011Q4
2012Q1
2012Q2
2012Q3
2012Q4
2013Q1
2013Q2
2013Q3
2011Q4
2012Q1
2012Q2
2012Q3
2012Q4
2013Q1
2013Q2
2013Q3
おわりに
• 平常時であれば,企業の予想判断はかなり高い確率で一致している。過大・過小予
想傾向にそれほど大きな相違はない。
• 予期せぬ外生的ショック下においては,過大予想傾向にあり(景気の後追い),実態
経済を捕らえられるまでに1年近くかかる。
• 予期せぬ外生的ショック下において,企業属性により,企業の予想判断の調整プロ
セスは異なっている。
【謝辞】
本研究は,「一橋大学経済研究所 共同利用共同研究拠点事業プロジェクト研究;立地要因を考慮した企業・事
業所活動の経時的特性に関する研究」(研究代表者:法政大学 森博美,平成26年度)の成果の一部である。ま
た,本研究は,財務省から「法人企業統計調査1983年4-7月期~2014年1-3月期」および財務省・内閣府から「法
人企業景気予測調査2004年4-7月期~2014年1-3月期」の調査票情報の提供を受け,個票データに基づいて分
析を行っている。記して関係諸機関への謝辞とします。
19
【参考文献】
上野有子・難波了一(2013),「我が国家計のインフレ期待形成における異質性とバイアス」,ESRI Discussion Paper Series, No.300, pp.1-37.
加納悟(2006),『マクロ経済分析とサーベイデータ』,岩波書店.
栗原由紀子(2012),『疑似景況パネルによる予測パフォーマンスの計測-マハラノビス・マッチングの適用から-』,法政大学日本統計研究所,オケージョ
ナル・ペーパー,No.35,pp.1-38.
栗原由紀子・坂田幸繁(2015),「企業判断の情報特性と期待形成モデルの比較―法人企業景気予測調査および法人企業統計調査のリンケージデータ
から―」,統計研究参考資料,No.116,法制大学日本統計研究所.
坂田幸繁(2001),「景況データのミクロベースの回答特性とその予測的利用について」,『中央大学経済研究所年報』,第32-2号,pp.63-80.
資料(2011)「資料法人企業統計調査の変遷と概要」,『フィナンシャル・レビュー』,107号,pp.97-120.
志築徹朗・武藤恭彦(1981),『合理的期待とマネタリズム』,日本経済新聞社.
丹後俊郎(2011),『ベイジアン統計解析の実際』,朝倉書店.
馬場正雄(1961),『景気予測と企業行動』,創文社.
馬場正雄(1968),「第5章 事前データによる予測」,内田忠夫・辻村江太郎・宮沢健一・宮下藤太郎編『近代経済学講座2 計量分析篇 予測と政策』,有斐
閣.
原田信行(2007), 「中小企業の景気と景況感」,浅子和美・宮川努編『日本経済の構造変化と景気循環』,東京大学出版会.
Chang, Y.C. & W.L. Hung (2007), “LINEX Loss Function with Applications to Determining the Optimum Process Parameters,” Quality & Quantity, No.41,
pp.291-301.
Capistrán, C. & A. Timmermman(2008), “Disagreement Biases in Inflation Expectation,” Journal of Money, Credit and Banking, vol.41, no.2-3, pp.1-39.
Kawasaki,S & K.F.Zimmermann(1981), “Measuring relationships in the log-linear probability model by some compact measures of association,” Statistische
Hefte, 22, 82-109.
Kawasaki,S. & K.F.Zimmermann(1986), “Testing the rationality of price expectations for manufacturing firms,” Applied Economics,18,1335-1347.
König,H., M.Nerlove, and G.Oudiz(1981), “On the formation of price expectations: An analysis of Business Test Data by Log-Linear Probability Models
,” European Economic Review,16,103-138.
Nerlove,M.(1983), “Expectations, plans, and realizations in theory and practice,” Econometrica, 51, 1251-1279.
Qui, Z. P. X.-K. Song & M. Tang (2002), “Bayesian Hierarchical Models for Multi-Level Repeated Ordinal Data Using WinBUGS,” Journalof
Biopharmaceutical Statistics, Vol.12, No.2, pp.121-135.
Theil,H.(1961), Economic forecasts and policy, Amsterdam: North-Holland. ( 岡本哲治訳(1964)『経済の予測と政策』,創文社.)
Zimmermann,K.F.(1997), “Analysis of Business Surveys,” Handbook of applied econometrics, 407-441.
20

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150903 kurihara

  • 5. サンプルサイズ 資本金(億円) 従業員数 分析対象サンプルの特徴 5 500100015002000500100015002000 05Q1 07Q1 09Q1 11Q1 13Q1 リーマンショック 大震災 全サンプル( 1499 ) 5期パネル( 1339 ) 11期パネル( 1096 ) 809010011012080901001101208090100110120 p0 p5 p11 05Q1 07Q1 09Q1 11Q1 13Q1 shock shock 100012001400100012001400100012001400 p0 p5 p11 05Q1 07Q1 09Q1 11Q1 13Q1 shock shock 分析対象: 製造業・大企業(資本金20億以上は全数調査) パネル期間: 5期以上連続パネル -分析時点から過去に4期以上連続回答している 11期以上連続パネル -分析時点から過去に11期以上連続回答している
  • 6. 予想パフォーマンスと予想バイアスの計測 𝑋𝑡 𝑋𝑡−1 ∗ 1(-) 2(=) 3(+) 1(-) 𝑝11,𝑡 𝑝12,𝑡 𝑝13,𝑡 2(=) 𝑝21,𝑡 𝑝22,𝑡 𝑝23,𝑡 3(+) 𝑝31,𝑡 𝑝32,𝑡 𝑝33,𝑡 一致率 𝜃ℎ𝑖𝑡,𝑡 = 𝑝11,𝑡 + 𝑝22,𝑡 + 𝑝33,𝑡 過大予想率 𝜃 𝑜𝑒,𝑡 = 𝑝21,𝑡 + 𝑝31,𝑡 + 𝑝32,𝑡 過小予想率 𝜃 𝑢𝑒,𝑡 = 𝑝12,𝑡 + 𝑝13,𝑡 + 𝑝23,𝑡 予想バイアス指標 𝜃 𝐵𝐼𝐴𝑆,𝑡 = 𝜃 𝑜𝑒,𝑡 − 𝜃 𝑢𝑒,𝑡 𝜃 𝑜𝑒,𝑡 + 𝜃 𝑢𝑒,𝑡 予想-実績値表 {𝑋𝑡 × 𝑋𝑡−1 ∗ } Kawasaki & Zimmerman(1986)より ※ 2期先予想値を用いても同様の分析を行う { 𝑋𝑡 × 𝑋𝑡−2 ∗∗ } 6
  • 7. 国内需要の予想誤差に関する特性 7 0.00.20.40.60.81.00.00.20.40.60.81.0 05Q1 07Q1 09Q1 11Q1 13Q1 shock shock 1期 先 予 想 ( 0.72 ) 2期 先 予 想 ( 0.68 ) -1.0-0.50.00.51.0-1.0-0.50.00.51.0 05Q1 07Q1 09Q1 11Q1 13Q1 shock shock 1期 先 予 想 ( 0.13 ) 2期 先 予 想 ( 0.17 ) 一致率の推移 予想バイアス指標の推移 1期先予想の一致率は,ショック後に低 下し,一致率の回復までに1年前後か かっている 1期先予想のバイアスは,ショック後に過 大となるが,その後,反動減で過小とな る
  • 8. 国内需要の予想誤差に関するパネル的特性 8 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 0 1 2 3 4 5 6 7 8 相対度数(%) 8期パネルの一致回数 増加 不変 減少 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 0 1 2 3 4 5 6 7 8 相対度数(%) 8期パネルの一致回数 増加 不変 減少 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 0 1 2 3 4 5 6 7 8 相対度数(%) 8期パネルの一致回数 増加 不変 減少 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 0 1 2 3 4 5 6 7 8 相対度数(%) 8期パネルの一致回数 増加 不変 減少 0 5 10 15 20 25 30 35 40 -1 (-1,-0.5] (-0.5,0) 0 (0,0.5) [0.5,1) 1 相対度数(%) 0 5 10 15 20 25 30 35 40 -1 (-1,-0.5] (-0.5,0) 0 (0,0.5) [0.5,1) 1 相対度数(%) 0 5 10 15 20 25 30 35 40 -1 (-1,-0.5] (-0.5,0) 0 (0,0.5) [0.5,1) 1 相対度数(%) 0 5 10 15 20 25 30 35 40 -1 (-1,-0.5] (-0.5,0) 0 (0,0.5) [0.5,1) 1 相対度数(%) 2004Q3-2006Q1 2008Q1-2009Q4 2010Q3-2012Q2 2011Q4-2013Q リーマン・ショック期 震災期 アベノミクス前後 一致率 予想バイアス指標
  • 9. 販売価格の予想誤差に関する特性 9 0.00.20.40.60.81.00.00.20.40.60.81.0 05Q1 07Q1 09Q1 11Q1 13Q1 shock shock 1期 先 予 想 ( 0.81 ) 2期 先 予 想 ( 0.79 ) -1.0-0.50.00.51.0-1.0-0.50.00.51.0 05Q1 07Q1 09Q1 11Q1 13Q1 shock shock 1期 先 予 想 ( 0.01 ) 2期 先 予 想 ( -0.05 ) 一致率の推移 予想バイアス指標の推移 1期先予想の一致率は,ショック後に低 下するが,その幅は国内需要ほどでは ない 平常時には過小予想傾向にあるが, ショック期には過大予想傾向となる
  • 10. 10 販売価格の予想誤差に関するパネル的特性 0 10 20 30 40 50 60 70 0 1 2 3 4 5 6 7 8 相対度数(%) 8期パネルの一致回数 増加 不変 減少 0 10 20 30 40 50 60 70 0 1 2 3 4 5 6 7 8 相対度数(%) 8期パネルの一致回数 増加 不変 減少 0 10 20 30 40 50 60 70 0 1 2 3 4 5 6 7 8 相対度数(%) 8期パネルの一致回数 増加 不変 減少 0 10 20 30 40 50 60 70 0 1 2 3 4 5 6 7 8 相対度数(%) 8期パネルの一致回数 増加 不変 減少 0 5 10 15 20 25 30 35 40 -1 (-1,-0.5] (-0.5,0) 0 (0,0.5) [0.5,1) 1 相対度数(%) 0 5 10 15 20 25 30 35 40 -1 (-1,-0.5] (-0.5,0) 0 (0,0.5) [0.5,1) 1 相対度数(%) 0 5 10 15 20 25 30 35 40 -1 (-1,-0.5] (-0.5,0) 0 (0,0.5) [0.5,1) 1 相対度数(%) 0 5 10 15 20 25 30 35 40 -1 (-1,-0.5] (-0.5,0) 0 (0,0.5) [0.5,1) 1 相対度数(%) 2004Q3-2006Q1 2008Q1-2009Q4 2010Q3-2012Q2 2011Q4-2013Q一致率一致率 予想バイアス指標
  • 11.  損失関数 Linex(Linear exponential) Loss Function 予測者は,良い予測をするために何らかの損失関数 𝐿 ・ に従い予測している。その損失関数Lには, 予想誤差により発生するコストがウェイトとして含まれている。 𝐿 𝑒𝑡+1,𝑡; 𝜓 = 1 𝜓2 exp 𝜓𝑒𝑡+1,𝑡 − 𝜓𝑒𝑡+1,𝑡 − 1 予測誤差: 𝑒𝑡+1,𝑡 = 𝜋 𝑡+1 − 𝑓𝑡+1,𝑡 実績値: 𝜋 𝑡+1, 予測値: 𝑓𝑡+1,𝑡 非対称損失ウェイト: 𝜓 ここで, 𝜋 𝑡+1|Ω 𝑡 ~𝑁(𝜇 𝑡+1,𝑡, 𝜎𝑡+1,𝑡 2 ) ,Ω 𝑡: t期の情報 損失を最小とする解は,𝑓𝑡+1,𝑡 = 𝜇 𝑡+1,𝑡 + 𝜓 2 𝜎𝑡+1,𝑡 2 さらに,予測は実績から一定の乖離(𝜋 𝑏)があると仮定する 𝑓𝑡+1,𝑡 = 𝜇 𝑡+1,𝑡 + 𝜓 2 𝜎𝑡 2 − 𝜋 𝑏 予測誤差: 𝑏𝑖𝑎𝑠𝑡+1,𝑡,𝑖(𝑓𝑡+1,𝑡 − 𝜇 𝑡+1,𝑡) = −𝜋 𝑏 + 𝜓 𝑖 2 𝜎𝑡 2 , ※個体の損失に関する非対称性は個体により異なると仮定 予測誤差に関する非対称損失関数 11 𝜓 > 0 過大予想傾向 𝜓が0近辺 対称 𝜓 < 0 過小予想傾向 Capistrán & Timmermann (2008), Chang & Hung (2007)
  • 12. 変数の概要 12 法人企業景気予測調査および法人企業統計調査の調査票情報をリンケージ 予想誤差 : 𝜑𝑋𝑡−1,𝑖 ∗ 𝑘 = 1 𝑖𝑓 𝑋𝑡,𝑖 > 𝑋𝑡−1,𝑖 ∗ (過小予想) 𝑘 = 2 𝑖𝑓 𝑋𝑡,𝑖 = 𝑋𝑡−1,𝑖 ∗ 一致 𝑘 = 3 𝑖𝑓 𝑋𝑡,𝑖 < 𝑋𝑡−1,𝑖 ∗ (過大予想) 属性変数 : 𝑍 log従業員数,自己資本比率,売上高経常利益率 分析期間 : 国内需要 FY2008Q1~FY2009Q4(リーマンショック2008Q2-Q3) 273社 販売価格 FY2011Q4~FY2013Q3(アベノミクス2012Q3) 403社 (欠損値は除く) 実績値 𝑋𝑡𝑋𝑡−1 予想値 𝑋𝑡 ∗𝑋𝑡−1 ∗ 𝜑𝑋𝑡−1 𝑋𝑡−1 ∗ : 𝑡 − 1期における𝑡期予想
  • 13. 予想誤差に関する非対称損失の異質性の捕捉 Step1. 分散𝜎𝑡,𝑖 2 の推定(階層ベイズ推定・順序ロジットモデル) Qui et. al. (2002) 𝜆 𝑡,𝑖 = 𝑃 𝑋𝑡,𝑖 ≤ 𝑗 , 𝑗 = 1,2,3 𝑙𝑜𝑔𝑖𝑡(𝜆 𝑡,𝑖) = 𝑟0 + 𝑟1 𝑋𝑡−1,𝑖,1 + 𝑟2 𝑋𝑡−1,𝑖,3 + 𝑟3 𝑋𝑡−2,𝑖,1 + 𝑟4 𝑋𝑡−2,𝑖,3 + 𝜐𝑡,𝑖 𝜐𝑡,𝑖 ~ 𝑁(0, 𝜎𝑡,𝑖 2 ) 𝑝𝑟𝑖𝑜𝑟: 𝜎𝑡,𝑖 2 = 1 𝜏 , 𝜏~𝑔𝑎𝑚𝑚𝑎 1,0.001 , 𝛾ℎ~ 𝑁 0, 10002 , ℎ = 0, … 4 Step2. 非対称損失ウェイト 𝜓𝑖の推定 (階層ベイズ推定・順序ロジットモデル) 𝜆 𝑡,𝑖 = 𝑃 𝜑𝑋𝑡+1,𝑡,𝑖 ≤ 𝑗 , 𝑗 = 1,2,3 𝑙𝑜𝑔𝑖𝑡(𝜆 𝑡,𝑖) = 𝑐0 + 𝑐1,𝑖 𝜎𝑡,𝑖 2 + 𝜀𝑡,𝑖, 𝑗 = 1,2,3 𝑐1,𝑡,𝑖~ 𝑁(𝜓 𝑡,𝑖, 𝑠2) 𝜓 𝑡,𝑖 = 𝒛 𝑡,𝑖 ′ 𝜷 𝒕 𝑝𝑟𝑖𝑜𝑟: 𝑠~𝑈𝑛𝑖𝑓𝑜𝑟𝑚 0,100 , 𝛽 𝑘~ 𝑁 0, 10002 13𝑛𝑢𝑚𝑏𝑒𝑟 𝑜𝑓 𝑐ℎ𝑎𝑖𝑛𝑠 = 2, 𝑖𝑡𝑒𝑟𝑎𝑡𝑖𝑜𝑛 = 10000, 𝑏𝑢𝑟𝑛 − 𝑖𝑛 𝑠𝑎𝑚𝑝𝑙𝑒 = 10000
  • 14. [51, 2] [52, 2] [53, 2] [54, 2] [55, 2] [56, 2] [57, 2] [58, 2] [59, 2] [60, 2] [61, 2] [62, 2] [63, 2] [64, 2] [65, 2] [66, 2] [67, 2] [68, 2] [69, 2] [70, 2] [71, 2] [72, 2] [73, 2] [74, 2] [75, 2][76, 2] [77, 2] [78, 2] [79, 2] [80, 2] [81, 2] [82, 2] [83, 2][84, 2] [85, 2] [86, 2] [87, 2] [88, 2] [89, 2] [90, 2] [91, 2][92, 2] [93, 2] [94, 2] [95, 2][96, 2] [97, 2] [98, 2] [99, 2] [100,2] box plot: phai[51:100,2] -2.0 -1.0 0.0 1.0 2.0 [51, 1] [52, 1] [53, 1] [54, 1] [55, 1] [56, 1] [57, 1] [58, 1] [59, 1] [60, 1] [61, 1] [62, 1][63, 1][64, 1] [65, 1] [66, 1] [67, 1] [68, 1] [69, 1] [70, 1] [71, 1] [72, 1] [73, 1] [74, 1] [75, 1] [76, 1] [77, 1] [78, 1] [79, 1] [80, 1] [81, 1] [82, 1] [83, 1] [84, 1] [85, 1] [86, 1] [87, 1] [88, 1] [89, 1] [90, 1] [91, 1] [92, 1] [93, 1] [94, 1] [95, 1][96, 1] [97, 1] [98, 1] [99, 1] [100,1] box plot: phai[51:100,1] -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 𝜓 𝑡,𝑖の時点別平均値 結果の概要 国内需要 非対称損失ウェイト𝜓 𝑡,𝑖 2008 Q1 企業51~100 2008 Q3 企業51~100 過小予想 過大予想 mean sd ψ 2008Q1 0.0073 0.1672 ψ 2008Q2 -0.0013 0.1682 ψ 2008Q3 -0.0103 0.1649 ψ 2008Q4 0.0291 0.1640 ψ 2009Q1 0.0095 0.1539 ψ 2009Q2 -0.0036 0.1644 ψ 2009Q3 0.0111 0.1806 ψ 2009Q4 0.0037 0.1411 node
  • 15. 結果の概要 国内需要 非対称損失ウェイトψ [81, 1] [81, 2] [81, 3] [81, 4] [81, 5] [81, 6] [81, 7] [81, 8] box plot: phai[81,] -0.6 -0.4 -0.2 0.2 0.4 [70, 1] [70, 2] [70, 3] [70, 4] [70, 5] [70, 6] [70, 7] [70, 8] box plot: phai[70,] -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 2008Q1 2008Q2 2008Q3 2008Q4 2009Q1 2009Q2 2009Q3 2009Q4 2008Q1 2008Q2 2008Q3 2008Q4 2009Q1 2009Q2 2009Q3 2009Q4 企業A 企業B
  • 16. 結果の概要 国内需要 非対称損失ウェイトと属性の関係 16 従業員数(対数値) 自己資本比率 売上高経常利益率 [1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] box plot: CapitalRatio -0.5 -0.25 0.0 0.25 0.5 0.75 [1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] box plot: ProfitSales -2.0 -1.0 0.0 1.0 2.0 [1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] box plot: employee -0.5 0.0 0.5 1.0 2008Q1 2008Q2 2008Q3 2008Q4 2009Q1 2009Q2 2009Q3 2009Q4 2008Q1 2008Q2 2008Q3 2008Q4 2009Q1 2009Q2 2009Q3 2009Q4 2008Q1 2008Q2 2008Q3 2008Q4 2009Q1 2009Q2 2009Q3 2009Q4 企業規模が大きいほど,ショック後 の予想誤差は過大傾向 安全性が高い企業ほど,ショック後 の予想誤差は過大傾向 収益性の高い企業ほど,ショック後 の予想誤差は過小傾向
  • 17. 結果の概要 販売価格 予想誤差と非対称損失ウェイトの分析結果 17 node mean sd ψ 2011Q4 0.0094 0.1737 ψ 2012Q1 -0.0002 0.1676 ψ 2012Q2 -0.0041 0.1920 ψ 2012Q3 -0.0012 0.1966 ψ 2012Q4 0.0014 0.1863 ψ 2013Q1 -0.0061 0.1794 ψ 2013Q2 -0.0003 0.1873 ψ 2013Q3 0.0006 0.1962 ウェイトΨ推定値の時点別平均値 [100,4] [101,4] [102,4][103,4] [104,4] [105,4] [106,4] [107,4] [108,4] [109,4] [110,4] [111,4] [112,4] [113,4] [114,4] [115,4] [116,4] [117,4] [118,4] [119,4] [120,4][121,4] [122,4] [123,4] [124,4][125,4][126,4] [127,4] [128,4][129,4][130,4][131,4] [132,4] [133,4] [134,4] [135,4][136,4][137,4] [138,4] [139,4] [140,4] [141,4] [142,4] [143,4] [144,4] [145,4] [146,4] [147,4] [148,4][149,4][150,4] box plot: phai[100:150,4] -1.0 0.0 1.0 2.0 [100,1] [101,1] [102,1] [103,1] [104,1] [105,1] [106,1][107,1][108,1][109,1] [110,1] [111,1] [112,1] [113,1] [114,1] [115,1] [116,1] [117,1] [118,1] [119,1] [120,1] [121,1] [122,1] [123,1] [124,1] [125,1] [126,1] [127,1] [128,1] [129,1] [130,1] [131,1][132,1] [133,1] [134,1] [135,1] [136,1] [137,1][138,1] [139,1] [140,1] [141,1][142,1] [143,1] [144,1] [145,1] [146,1] [147,1] [148,1] [149,1] [150,1] box plot: phai[100:150,1] -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0
  • 18. [1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] box plot: ProfitSales -0.5 0.0 0.5 1.0 [1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] box plot: employee -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 [1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] box plot: CapitalRatio -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 結果の概要 販売価格 非対称損失ウェイトと属性の関係 18 従業員数(対数値) 自己資本比率 売上高経常利益率 2011Q4 2012Q1 2012Q2 2012Q3 2012Q4 2013Q1 2013Q2 2013Q3 2012年11月中旬(2012Q3),衆院解散決定時,企 業規模が大きいほど,予想誤差は過小傾向にある (予想よりも販売価格は低くない) 2011Q4 2012Q1 2012Q2 2012Q3 2012Q4 2013Q1 2013Q2 2013Q3 2011Q4 2012Q1 2012Q2 2012Q3 2012Q4 2013Q1 2013Q2 2013Q3
  • 19. おわりに • 平常時であれば,企業の予想判断はかなり高い確率で一致している。過大・過小予 想傾向にそれほど大きな相違はない。 • 予期せぬ外生的ショック下においては,過大予想傾向にあり(景気の後追い),実態 経済を捕らえられるまでに1年近くかかる。 • 予期せぬ外生的ショック下において,企業属性により,企業の予想判断の調整プロ セスは異なっている。 【謝辞】 本研究は,「一橋大学経済研究所 共同利用共同研究拠点事業プロジェクト研究;立地要因を考慮した企業・事 業所活動の経時的特性に関する研究」(研究代表者:法政大学 森博美,平成26年度)の成果の一部である。ま た,本研究は,財務省から「法人企業統計調査1983年4-7月期~2014年1-3月期」および財務省・内閣府から「法 人企業景気予測調査2004年4-7月期~2014年1-3月期」の調査票情報の提供を受け,個票データに基づいて分 析を行っている。記して関係諸機関への謝辞とします。 19
  • 20. 【参考文献】 上野有子・難波了一(2013),「我が国家計のインフレ期待形成における異質性とバイアス」,ESRI Discussion Paper Series, No.300, pp.1-37. 加納悟(2006),『マクロ経済分析とサーベイデータ』,岩波書店. 栗原由紀子(2012),『疑似景況パネルによる予測パフォーマンスの計測-マハラノビス・マッチングの適用から-』,法政大学日本統計研究所,オケージョ ナル・ペーパー,No.35,pp.1-38. 栗原由紀子・坂田幸繁(2015),「企業判断の情報特性と期待形成モデルの比較―法人企業景気予測調査および法人企業統計調査のリンケージデータ から―」,統計研究参考資料,No.116,法制大学日本統計研究所. 坂田幸繁(2001),「景況データのミクロベースの回答特性とその予測的利用について」,『中央大学経済研究所年報』,第32-2号,pp.63-80. 資料(2011)「資料法人企業統計調査の変遷と概要」,『フィナンシャル・レビュー』,107号,pp.97-120. 志築徹朗・武藤恭彦(1981),『合理的期待とマネタリズム』,日本経済新聞社. 丹後俊郎(2011),『ベイジアン統計解析の実際』,朝倉書店. 馬場正雄(1961),『景気予測と企業行動』,創文社. 馬場正雄(1968),「第5章 事前データによる予測」,内田忠夫・辻村江太郎・宮沢健一・宮下藤太郎編『近代経済学講座2 計量分析篇 予測と政策』,有斐 閣. 原田信行(2007), 「中小企業の景気と景況感」,浅子和美・宮川努編『日本経済の構造変化と景気循環』,東京大学出版会. Chang, Y.C. & W.L. Hung (2007), “LINEX Loss Function with Applications to Determining the Optimum Process Parameters,” Quality & Quantity, No.41, pp.291-301. Capistrán, C. & A. Timmermman(2008), “Disagreement Biases in Inflation Expectation,” Journal of Money, Credit and Banking, vol.41, no.2-3, pp.1-39. Kawasaki,S & K.F.Zimmermann(1981), “Measuring relationships in the log-linear probability model by some compact measures of association,” Statistische Hefte, 22, 82-109. Kawasaki,S. & K.F.Zimmermann(1986), “Testing the rationality of price expectations for manufacturing firms,” Applied Economics,18,1335-1347. König,H., M.Nerlove, and G.Oudiz(1981), “On the formation of price expectations: An analysis of Business Test Data by Log-Linear Probability Models ,” European Economic Review,16,103-138. Nerlove,M.(1983), “Expectations, plans, and realizations in theory and practice,” Econometrica, 51, 1251-1279. Qui, Z. P. X.-K. Song & M. Tang (2002), “Bayesian Hierarchical Models for Multi-Level Repeated Ordinal Data Using WinBUGS,” Journalof Biopharmaceutical Statistics, Vol.12, No.2, pp.121-135. Theil,H.(1961), Economic forecasts and policy, Amsterdam: North-Holland. ( 岡本哲治訳(1964)『経済の予測と政策』,創文社.) Zimmermann,K.F.(1997), “Analysis of Business Surveys,” Handbook of applied econometrics, 407-441. 20