近年,日本へのインバウンド観光客の増加を背景に,各地の観光地で多国籍の観光客向けに様々な観光情報サービスが提供されるようになっている.こうした観光情報サービスは,観光地に不慣れな観光客に適切な情報を提供することで,行動を支援することを目的としている.観光庁もインバウンド観光客向けの観光情報サービス提供を促進している.こうしたサービスの多くは,予約サービスを除けば,時間によって大きく変化しない地図,観光ガイド,時刻表といったコンテンツを主に提供しており,静的コンテンツ型観光情報サービスと言える.一方,センサ技術や機械学習技術の進展により,センサやSNSが得た実時間データから公的交通機関の混雑や運行,災害といった状況を推定して活用するデータ駆動型観光情報サービスが提案されており,バルセロナなどでは観光客の移動状況分析の実装も始まっている.データ駆動型観光情報サービスの実装には多様な実時間データやコンテンツが必要であり,サービスの種類も多いので,静的コンテンツ型観光情報サービスに比べて提供が難しいが,観光客の利便性の観点から,今後観光地が提供すべきサービスとみなされるようになると予測される.そこで本研究では,観光地が提供する観光情報サービスをポートフォリオと捉え,データ収集,分析,サービス提供の各段階において,地域の複数の主体が連携して提供するアーキテクチャを提案する.