第27回近畿小児科学会で発表した内容です。

1. 育児中の病院勤務小児科医に
出来る父母会・PTA活動
大阪赤十字病院 新生児・未熟児科
坂本晴子

2. はじめに
育児中の病院勤務小児科医の重要課題
＝仕事と家事・育児の両立
↓
 職場でのバックアップ：複数主治医制、短時間勤務制
度、日当直の減免、フレックスタイム、院内保育施設
など
 地域の体制：保育所、学童保育所・児童館、学校など
→父母会・PTA活動に参加することも必要
→負担大？
 これまでに演者が取り組んだ活動を紹介する

3. 認可保育所の父母会活動
 民間保育園の父母会活動：有志保護者の参加による
総会、親睦会の開催
 神戸市立保育所の父母会活動：有志保護者の参加によ
る
総会
親睦を深める行事（夏祭り、カレー大会、餅つき）の
開催
お便りの発行
保護者の要望をまとめて保育所に伝える
修了関連行事（お礼の会の開催、記念品贈呈、懇親
会）
父母会ブログの立ち上げ、情報共有

4. 小児科医であることを生かした
父母会活動
 こどもの感染症や事故予防について保育士さんにお話
 こどもの突然死について父母会連絡会でお話
← 2013年に神戸市内で保育中の心肺停止が２例 （いずれも
その後死亡） 発生したため
 保育所耐震改修工事への対応
保護者の不安や疑問、要望をまとめて市の担当者に提出・
協議
アスベスト問題の勉強会の開催
工事に伴う騒音・粉塵・アスベストなどの問題の予防対策
や健康相談の実施を提案
市・業者・保護者での定例会議への参加（２週に１回）
→発注時期が迫っていた工事関係の会議、および定例会議は
平日夜に開催、その他は基本的に休日に準備、実施した。

5. 神戸市立小学校でのPTA活動
 小学校のPTA：全保護者と全教職員からなる組織、
全保護者が参加。こども一人につき原則として一
度はPTA役員の仕事をする。
 本部（渉外活動、庶務、会計）、企画運営部（講
演会やコンサートの企画）、広報部（広報誌作
成）、地域・育成部（登校見守り）、サポーター
部（ラジオ体操、校庭開放、プール開放、卒業関
連、ベルマーク）、選考委員会（本部役員選出）、
パパレンジャー（パパの会）
→平日日中の活動が多い。今年度は活動のスリム
化に取り組んだ。

6. 小児科医としてのPTA活動
 プール開放専任指導員を担当：救命処置の実施
が可能な者が必要、夏休みの土日に実施
 専任指導員マニュアルの救命処置の項を監修：
JRC蘇生ガイドライン2010準拠
 ６年生へのキャリア教育授業で「小児科医のお
仕事」を紹介：日曜日のオープンスクール
→主に休日に準備、実施が可能

7. キャリア教育授業の様子

8. 民間学童保育所での親子救命処置講習
日曜日に実施

9. 活動から得た学び
〜保育所での突然死について〜
 SIDS：０歳児の死因の第３位(14%)
（平成24年人口動態統計より）
 平成２５年の全国の保育施設での死亡数 19例
睡眠中の死亡 16例、うちうつぶせ寝であったものは９
例。
（厚労省報道用資料より）
 保育所では未だにうつぶせ寝をさせているところが多い。
神戸市は2014年１月、「保育所における睡眠時の安全対
策の手引き」を発行し、０歳児のうつぶせ寝を禁止、1-2
歳児でのうつぶせ寝は避ける、とした。

10. 活動から得た学び
〜改修工事のこどもへの影響について
〜
 保育所や学校の工事に伴うアスベスト、騒音、粉塵、化学物質
による健康問題に関する医学論文は少ない。
（由良ら、新築・改築小学校における室内空気汚染と児童の健康影響実
態調査.日本公衆衛生雑誌52巻8号 Page715-726）
 平成11年 東京都文京区さしがや保育園
園舎の天井裏等に存在した吹付けアスベストを飛散させ、隣接する保
育室の園児等がアスベストにばく露
→健康リスク相談、心理相談、高校入学時胸部X線写真の読影・保管
事業
平成24年 大阪府立金岡高校
外壁改修工事の際に、アスベスト飛散事故が発生
 今回、建材中のアスベスト分析を父母会からの要望で行い、当
初市が予測していなかった建材からもアスベストが検出された。

11. まとめ
 こどもたちが伸びやかに成長するためには地域社
会の力が欠かせない。
 共働き世帯の増加→働きながらも地域社会のつな
がりを支えて行く人が必要。
 育児中の病院勤務小児科医も、父母会・PTA活動
を通して自分の住む地域社会への貢献活動が可能
であり、小児科医としての学びも得られる。
 職場のバックアップと、活動時間や内容の柔軟化
が望まれる。