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もったいない学会 WEB 学会誌 Volume 1, pp. 01-08
An Electronic Journal of The MOTTAINAI Society
Online ISSN 1882-2975

各種暖房の EPR を考える
早坂
投稿受付:2009 年 8 月 5 日

房次

受理日:2009 年 月 日 WEB 公開日: 月 日

要旨
省エネ性・環境性などについて、世の中では様々な数値が飛び交い理解をしにくくしている。と
りわけ、家庭におけるエネルギー消費について一般に誤解が多い。家庭における冷房のエネルギー
消費は僅か3%しかない。これに対し、暖房は22%、給湯は30%と両者で過半を占める。暖房
と給湯におけるヒートポンプ利用に家庭の大きなエネルギー削減余地がある。そこで、本論文では
暖房に焦点を当て EPR(エネルギー収支比)を検討したい。今回の分析で特徴的なのは経営学など
の財務分析における比率分析を応用している点である。以上を通じ、最終的には社会システムのあ
り方を考える上での一石となれば幸いである。
【キーワード】
:暖房、エアコン(ヒートポンプ)
、EPR、電気、ガス

1.

はじめに

家庭におけるエネルギー消費について一般

図1

家庭におけるエネルギー消費

に誤解が多い。図1は平成20年度エネルギ
ー白書にある家庭のエネルギー消費である。
これを見てわかることは2007年度で家庭
における冷房に関するエネルギー消費はわず
か3%しかない。意外に思う方も多いことで
あろう。これに対し、暖房は22%、給湯は3
0%と両者で過半を占める。家庭における省
エネルギーにはここに多くの削減余地がある。
1

早坂 房次(はやさか
学修士(MBA)

ふさじ)

(出典)平成20年度エネルギー白書

東京電力株式会社、再開発コーディネーター協会個人正会員、経営管理

© もったいない学会
もったいない学会 WEB 学会誌 Volume 1, pp. 30-35
暖房と給湯におけるヒートポンプ利用に家
図3

庭の大きなエネルギー削減余地があるのだが、

LNG(天然ガス)のEPR

本論文では暖房に焦点を当て EPR(エネルギ
ー収支比)を見てみたい。
100

ガス田

下の図2は一般的に用いられる空調システ

パイプライン

液化施設

タンカー

気化施設

運営

2

2

24

5

2

設備

ムの効率を比較した図である。この分析で欠

3

3

3

3

3

けている視点が二点ある。第一に燃料の質の

100
EPR=      =2
50

問題である。この場合はLNG(液化天然ガ
ス)であるが、あくまでも国内で燃焼させた

を説明したものである。
(数字は説明のため便

場合の熱量を100として計算している。本

宜的に仮に置いたものである。
)

来はこの100の熱量を得るために海外で採

ガス田を例に取ると、設備を作るのに3の

掘し、冷却して液化した上、専用のタンカー

エネルギーが必要で、運営に2のエネルギー

で国内に持ってきて気化しなければならない。

が必要なことを示す。ガス田で採取されたガ

この過程でエネルギーが投入されており、他

スはパイプラインで液化施設まで送られ、液

のエネルギー源との違いは表に出てこない。

化されLNGとなる。そうして、タンカーで

第二に社会システムの構築に伴うエネルギー

運ばれ、
気化施設で気体に戻される。
つまり、

投入が考慮されていないことである。

同じ100の熱量を得るために必要とされる
エネルギー投入は木材(薪)なり、炭なり、

この点を考慮したものがEPR分析である。
この点を改めて説明してみたいので右上の図

石炭なり、石油(原油・重油・灯油)なり、

3をご覧いただきたい。

ガスなり、水力なり、原子力なりでそれぞれ
異なる。これがエネルギーの質(EPR)の

これは図2のLNG(都市ガス)の熱量1

問題である。

00を得るために必要としたエネルギー投入

図2

一般に用いられる空調システム間の効率比較

2
もったいない学会 WEB 学会誌 Volume 1, pp. 30-35
2.計算の範囲

たものである。しかし、途中で熱として損失

図4は発電所から電気が届くまでを説明し

するものがある。これが、送配電ロスで、そ

たものである。
図4

の比率を「送配電ロス率」
(θ)とすると(I
-I2)/I3と定義できる。この式はI3=

3

発電所から電気が届くまで

I2 /(1-θ)と変形でき、後ほどの計算で
使う。
送配電設備にも建設や運営にエネルギー投
入がかかる。これを“I4”とする。これと家
庭の消費電力“I2”との比を「送配電エネル
ギー率」
(η)=I4/I2と定義すると、I4
=ηI2と表せる。

家庭内の機器についてエアコンを例にとっ
て説明したのが図6である。
図6

エアコンのEPRを考える

図5は電気のEPRを考えるために図4を
整理したものである。
図5

電気のEPRを考える

送配電エネルギー率:η=I4/I2
∴I4=ηI2
送配電設備の
建設・運用エネ
ルギー:I4

配電線

送電線

エアコンの冷房なり暖房なりの能力であ
変電所

る熱量を“W0”とすると消費電力“I2”と

エアコン運転時
消費電力:I2

の比が一般にエアコンの効率として言われ

変電所

発電所

送配電ロス率:θ=(I3-I2)/I3
I =I2 /(1-θ)

∴ 3

る“COP”
(Coefficient Of Performance:
成績係数) “APF”Annual Performance
なり
(
Factor:通年エネルギー消費効率)である。

送電端電力量:I3

現在、省エネルギー評価基準は、全て通年エ
家庭で使われる電気(この場合はエアコン

ネルギー消費効率(APF)に統一されてい

運転時の消費電力“I2”
)は、発電所で作ら

る。この値を“α”とするとW0/I2で定義

れた電気“I3”が送電線や配電線を通ってき

できる。

3
もったいない学会 WEB 学会誌 Volume 1, pp. 30-35
と言う。一方、発電所内でも電気を使う。こ

一方、エアコンの製造にもエネルギーが必
要となる。資材まで含めたエネルギー消費を

れを「所内電力量」と言う。
「発電端電力量」

“I1”とする。そして、エアコンのライフサ

から「所内電力量」を差し引いたものを「送

イクルエネルギー消費のうち、運転時のエネ

電端電力量」
と言う。
図7では
“I3”
になる。

ルギー消費の割合を“β”とすると、β=I2

従って、各種電源のEPRを比較する場合

/(I1+I2)となり、I1=I2(1/βー1)

は下記で定義される。

と表せる。この式は後ほど使う。
各種電源のEPR=I3/(I5+ I7)
3.考察
ここで、今までのことを整理したい。燃料

空調熱量“W0”を得るためには、エアコン

の採掘・輸送へエネルギー投入することによ

の消費する電力“I2”とエアコンの製造のた

って私たちは国内で燃料を使えるようになる。

めの投入エネルギー“I1”が必要となる。エ

図7を見てもらいたい。

アコンの消費する電力
“I2”
を得るためには、
発電所で作りだされる電力“I3”のほかに、

図7

I7

概念整理図

送・配電線の施設・保守・補修への投入エネ
ルギー“I4”が必要となる。発電所で作りだ

燃料の採掘輸送への投入エネルギー

される電力
(送電端) 3”
“I を得るためには、

I5

I6

発電設備等への投入エネルギー

燃料“I6”と発電所の施設・保守・補修への
投入エネルギー “I5”が必要になる。燃料

I3

発電された電力
(送電端)

I4

“I6”を得るためには、燃料の採掘・輸送へ

送・配電線の建設・保守・補修
への投入エネルギー

“I7”というエネルギーを投入される。

I2

エアコンの
消費電力

I1

エアコン製造のための
投入エネルギー

従って、空調熱量“W0”を得るために、純
粋に投入されるエネルギーは、燃料の採掘・

W0

輸送への投入エネルギー“I7”と、発電所の

空調熱量

施設・保守・補修への投入エネルギー“I5”
、
“I6”を得るために “I7”が投入され

送・配電線の施設・保守・補修への投入エネ

る。図3でいうと“I7”が「50」“I6”
、

ルギー“I4”
、エアコンの製造のための投入

が「100」ということになる。発電所では

エネルギー“I1”ということになる。

この“I6”を使って発電するが、発電所の建

以上により、エアコンを例にとると、各種

設、運営にもエネルギーが投入される。これ

空調のEPRは下記になる。

を発電所全体のライフサイクルで見て、発電
された電力量単位で割り戻した値が“I5”に

エアコンのEPR

なる。発電機でどのくらい発電したかという

=W0/(I1+I4+I5+ I7)

発電電力量を電力業界では「発電端電力量」

4
もったいない学会 WEB 学会誌 Volume 1, pp. 30-35
これを展開し、整理すると次式になる。
図8

エアコンの運転エネルギーと製造エネルギー

エアコンのEPR:γ=W0/(I1+I4+I5 +I7)
=W0/{I2(1/β-1)+ηI2+I3/ε}
=W0/[I2(1/β-1)+ηI2+I2/{(1-θ)/ε}]
=W0/I2[(1/β-1)+η+1/{(1-θ)ε}]
=α/[(1/β-1)+η+1/{(1-θ)ε}]

I1=I2(1/βー1)
I4=ηI2
I5=I3/ε
I3=I2 /(1-θ)
COP・APF:α=W0/I2

4.

パラメーターについて

4.1

エアコンのAPF(α)
APFとは、1年間を通して実使用

4.3

に近い、ある一定の条件のもと、エア

各種電源のEPR(ε)
各種電源の定義は既に述べた。図9

コンを運転したときの消費電力量1

は電力中央研究所の天野治氏の研究

kWhあたりの冷房・暖房能力(kW

結果である。

h)を表したものである。この値が高
いほど効率が良いといえる。2008
図9

冷房年における高級機種ではこの値
が6.2程度の機種が出てきているの
でこの値を用いる。

4.2

ランニング比率(β)
エアコンの運転エネルギーと製造

エネルギーについてだが、CO2に着
目 し た L C A ( Life

Cycle

Assessment)分析が株式会社サンヨー
で行われていた。ここの諸元をもとに

これを、平成18年度の電力10社

推計したのが右上の図8である。

の発受電実績から加重平均して求め

運転エネルギーの占める割合が9

たEPRは表1の通り9.45となる。

6%程度であることがわかる。

5
もったいない学会 WEB 学会誌 Volume 1, pp. 30-35
表1

電気(送電端)の加重平均EPR

LNG
石油
石炭
その他ガス
地熱
その他新エネ
水力
原子力

EPR 構成比 10社計
2.14
26.2% 2,605
7.9
7.8%
779
6.55
24.5% 2,444
7
1.0%
99
6.8
0.3%
31
5
0.6%
61
15.3
9.1%
905
16.9
30.5% 3,034
9,958

9.45

注意:構成比は平成18年度電力10社発受電実績
    その他「新エネ」と「その他ガス」のEPRは暫定値

4.4

ネルギー0、国内インフラ設備に関係するエ

送配電ロス率(θ)

ネルギー投入0、途中でのガス損失0とガス

図10は電力10社の火力発電設

ストーブに有利な前提を置いてある。

備の熱効率(高位発熱量)と送配電ロ
ス率の時系列的推移のグラフである。

<ガスのEPRについて>

1955年度には18.4%あった送

ガスストーブのEPRを計算するに当たっ

配電ロス率も低減し、近年は5%前後

て、国内で使われる天然ガスのEPRを試算

の数字となっている。計算では200

した。

5年度の5.1%を用いた。

結果は下の図11の通りであり、全ての投
入エネルギーを採録している訳ではない。計

図10

算の諸元は、内山洋司・山本博巳、
「発電プラ
ントのエネルギー収支分析」

電力中央研究

所報告 Y90015(1991)による。

図 11

5.

計算結果

以上からエアコンのEPRを計算した結
果が右上となる。エアコンのEPR39.7
という数字がどのような意味を持つかを比較
するためにガスストーブのEPRも試算した。
ガスストーブのEPRの計算においては熱効
率100%、ガスストーブの製造エ

6

天然ガスのEPR
もったいない学会 WEB 学会誌 Volume 1, pp. 30-35
6.

これからの課題と考察
表2

以上からEPRからみた暖房におけるヒー

平成 30 年の電気(送電端)の加重平均EPR

トポンプの優位性がわかったかと思う。ここ
LNG
石油
石炭
その他ガス
地熱
その他新エネ
水力
原子力

で、今後の研究の方向と課題について述べた
い。
① EPR分析の原価計算との類似性と財務
分析(比率分析)の有用性が確認できた

EPR 構成比 10社計
2.14
23.5% 2,615
7.9
5.3%
590
6.55
21.0% 2,337
7
0.0%
0
6.8
0.3%
31
5
1.2%
134
15.3
8.7%
965
16.9
40.1% 4,475
11,147

10.48

注意:構成比は平成21年度電力施設計画に基ずく平成
30年度電力10社発受電計画値
その他「新エネ」と「その他ガス」のEPRは暫定値

② 原価計算における石油製品のような連産
品問題(工程別原価計算と言う)から、
灯油を燃料とする石油ストーブ・石油フ

うに火力発電所の熱効率も上昇すると考えら

ァンヒーターのようなものへのEPR分

れる。ヒートポンプの効率もAFP現在の6

析

程度から倍以上に伸ばす計画である。
(詳しく

③ 現在のEPR分析が建設から全てのエネ

は参考文献の総合科学技術会議資料、Cool

ルギー投入(原価計算における全部原価

Earth-エネルギー革新技術計画を参照)

計算と言われるもの)を考えているが、

仮に、電気の加重平均EPRを10.4

すでにあるものを使うという場合は異な

8、AFPを12.5とした場合、ほかのパ

ってくるという「意思決定における経済

ラメーターに変化がなければ、エアコンのE

性分析」
(直接原価計算など)の検討

PRは86程度になる。
(ただし、エアコンの
消費電力が半減することからランニング比率

以上の様なEPR分析の垂直的深耕化を図る

が0.9になるとEPRは58.2に下がる)

一方、

このような分析(センシティビティ・テス
ト=感度分析)ができることも比率分析の有

④ 地域冷暖房システムなどへの検討範囲の

用性の一つである。

拡大
⑤ 住宅など建築物への検討範囲の拡大

7.まとめ(再生可能エネルギー導入指標に

⑥ 社会システムの分析

ヒートポンプ)
麻生内閣総理大臣は 2009 年 4 月 9 日に日
本の新たな成長戦略に関する考え方として

と言った、水平的拡大も試みていきたい。

「新たな成長に向けて」を発表した。これを
受け、
2009 年第 10 回経済財政諮問会議
(2009

なお、表2は現在公表されている最も先の
電力10社の発電電力量計画値である。EP

年 4 月 17 日)で公表された「未来開拓戦略」

Rの高い原子力の構成比が上昇することから

(Jリカバリー・プラン)では、
「再生可能エ

平成18年度の9.45から平成30年度に

ネルギー導入指標」について、EU方式を踏

は10.48に上昇する。また、図10のよ

まえ、最終エネルギー消費に対する比率(ヒ

7
もったいない学会 WEB 学会誌 Volume 1, pp. 30-35
ートポンプ等を含む)
として 2020 年頃に 20%

参考文献

程度(2005 年 10%程度)を目指す」と明記さ

天野治(2007) エネルギーの質から、将来の石

れた。これは、政府がヒートポンプを再生可

油代替エネルギーを考える、電中研ニュース

能エネルギー利用技術として初めて公式に示

No.439,http://criepi.denken.or.jp/jp/pub

したものである。

/news/pdf/den439.pdf

総合資源エネルギー調査会第33回新エネ

天野治(2008)石油ピーク後のエネルギー、愛

ルギー部会(2009 年 3 月 26 日柏木孝夫部会

智出版

長)では再生可能エネルギー等の導入量とし

日本エネルギー学会(2006) 講座ライフサイ

て 2020 年見通し(
「長期エネルギー需給見通

クルアセスメント(LCA)
、日本エネルギー学

し」最大導入ケース)の試算結果を公表して

会

おり、ヒートポンプ利用により得られた再生

内山洋司・山本博巳(1991)、発電プラントの

可能エネルギー導入量は 2,361 万klとして

エネルギー収支分析、電力中央研究所報告

いる。この値は表3の通り、再生可能エネル

Y90015

ギー等導入量合計に対し約 3 割を占める。

日本建築学会(2006)建物の LCA 指針、丸善

また、海外の動向では、EUは既に 2007 年

総

合

科

学

技

術

会

議

(2008)

に 2020 年までに最終エネルギー消費に占め

http://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihu73

る再生可能エネルギー利用比率を 20%に向上

/siryo3.pdf

させることを決定している。この目標達成に

総

向けて、
「再生可能エネルギー推進に関する指

http://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihu79

令」
を含む気候-エネルギー政策パッケージが

/sanko2.pdf

欧州議会(2008 年 12 月 17 日)
、欧州理事会

資源エネルギー庁(2008)Cool Earth-エネル

(2009 年 4 月 6 日)でそれぞれ採決された。

ギ

この再生可能エネルギー推進に関する指令の

http://www.enecho.meti.go.jp/policy/cool

中で、ヒートポンプ利用により得られた熱エ

earth_energy/coolearth-roadmap.pdf

ネルギー(空気・地中・水)を再生可能エネ

資源エネルギー庁(2009)平成 21 年度電力供

ルギーとして扱うことが明記されている。

給

このように、ヒートポンプ(エアコン)の

合

科

ー

計

革

学

新

画

技

術

技

の

会

術

概

議

計

(2009)

画

要

、

、

http://www.meti.go.jp/press/20090403005/

利用拡大の重要性は世界的な潮流となりつつ

20090403005-2.pdf

あるが、わが国はヒートポンプ利用において

財団法人ヒートポンプ・蓄熱センター(2009)

先端的な地位を占めていることから更なる啓

再生可能エネルギー導入指標にヒートポンプ、

蒙に努める必要がある。

http://www.hptcj.or.jp/chikunetu_lib/wha
tsnew_bn/doc/newsrelease090422.pdf

8
もったいない学会 WEB 学会誌 Volume 1, pp. 30-35
表3

長期エネルギー需給見通し資料

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200908暖房のepr

  • 1. もったいない学会 WEB 学会誌 Volume 1, pp. 01-08 An Electronic Journal of The MOTTAINAI Society Online ISSN 1882-2975 各種暖房の EPR を考える 早坂 投稿受付:2009 年 8 月 5 日 房次 受理日:2009 年 月 日 WEB 公開日: 月 日 要旨 省エネ性・環境性などについて、世の中では様々な数値が飛び交い理解をしにくくしている。と りわけ、家庭におけるエネルギー消費について一般に誤解が多い。家庭における冷房のエネルギー 消費は僅か3%しかない。これに対し、暖房は22%、給湯は30%と両者で過半を占める。暖房 と給湯におけるヒートポンプ利用に家庭の大きなエネルギー削減余地がある。そこで、本論文では 暖房に焦点を当て EPR(エネルギー収支比)を検討したい。今回の分析で特徴的なのは経営学など の財務分析における比率分析を応用している点である。以上を通じ、最終的には社会システムのあ り方を考える上での一石となれば幸いである。 【キーワード】 :暖房、エアコン(ヒートポンプ) 、EPR、電気、ガス 1. はじめに 家庭におけるエネルギー消費について一般 図1 家庭におけるエネルギー消費 に誤解が多い。図1は平成20年度エネルギ ー白書にある家庭のエネルギー消費である。 これを見てわかることは2007年度で家庭 における冷房に関するエネルギー消費はわず か3%しかない。意外に思う方も多いことで あろう。これに対し、暖房は22%、給湯は3 0%と両者で過半を占める。家庭における省 エネルギーにはここに多くの削減余地がある。 1 早坂 房次(はやさか 学修士(MBA) ふさじ) (出典)平成20年度エネルギー白書 東京電力株式会社、再開発コーディネーター協会個人正会員、経営管理 © もったいない学会
  • 2. もったいない学会 WEB 学会誌 Volume 1, pp. 30-35 暖房と給湯におけるヒートポンプ利用に家 図3 庭の大きなエネルギー削減余地があるのだが、 LNG(天然ガス)のEPR 本論文では暖房に焦点を当て EPR(エネルギ ー収支比)を見てみたい。 100 ガス田 下の図2は一般的に用いられる空調システ パイプライン 液化施設 タンカー 気化施設 運営 2 2 24 5 2 設備 ムの効率を比較した図である。この分析で欠 3 3 3 3 3 けている視点が二点ある。第一に燃料の質の 100 EPR=      =2 50 問題である。この場合はLNG(液化天然ガ ス)であるが、あくまでも国内で燃焼させた を説明したものである。 (数字は説明のため便 場合の熱量を100として計算している。本 宜的に仮に置いたものである。 ) 来はこの100の熱量を得るために海外で採 ガス田を例に取ると、設備を作るのに3の 掘し、冷却して液化した上、専用のタンカー エネルギーが必要で、運営に2のエネルギー で国内に持ってきて気化しなければならない。 が必要なことを示す。ガス田で採取されたガ この過程でエネルギーが投入されており、他 スはパイプラインで液化施設まで送られ、液 のエネルギー源との違いは表に出てこない。 化されLNGとなる。そうして、タンカーで 第二に社会システムの構築に伴うエネルギー 運ばれ、 気化施設で気体に戻される。 つまり、 投入が考慮されていないことである。 同じ100の熱量を得るために必要とされる エネルギー投入は木材(薪)なり、炭なり、 この点を考慮したものがEPR分析である。 この点を改めて説明してみたいので右上の図 石炭なり、石油(原油・重油・灯油)なり、 3をご覧いただきたい。 ガスなり、水力なり、原子力なりでそれぞれ 異なる。これがエネルギーの質(EPR)の これは図2のLNG(都市ガス)の熱量1 問題である。 00を得るために必要としたエネルギー投入 図2 一般に用いられる空調システム間の効率比較 2
  • 3. もったいない学会 WEB 学会誌 Volume 1, pp. 30-35 2.計算の範囲 たものである。しかし、途中で熱として損失 図4は発電所から電気が届くまでを説明し するものがある。これが、送配電ロスで、そ たものである。 図4 の比率を「送配電ロス率」 (θ)とすると(I -I2)/I3と定義できる。この式はI3= 3 発電所から電気が届くまで I2 /(1-θ)と変形でき、後ほどの計算で 使う。 送配電設備にも建設や運営にエネルギー投 入がかかる。これを“I4”とする。これと家 庭の消費電力“I2”との比を「送配電エネル ギー率」 (η)=I4/I2と定義すると、I4 =ηI2と表せる。 家庭内の機器についてエアコンを例にとっ て説明したのが図6である。 図6 エアコンのEPRを考える 図5は電気のEPRを考えるために図4を 整理したものである。 図5 電気のEPRを考える 送配電エネルギー率:η=I4/I2 ∴I4=ηI2 送配電設備の 建設・運用エネ ルギー:I4 配電線 送電線 エアコンの冷房なり暖房なりの能力であ 変電所 る熱量を“W0”とすると消費電力“I2”と エアコン運転時 消費電力:I2 の比が一般にエアコンの効率として言われ 変電所 発電所 送配電ロス率:θ=(I3-I2)/I3 I =I2 /(1-θ) ∴ 3 る“COP” (Coefficient Of Performance: 成績係数) “APF”Annual Performance なり ( Factor:通年エネルギー消費効率)である。 送電端電力量:I3 現在、省エネルギー評価基準は、全て通年エ 家庭で使われる電気(この場合はエアコン ネルギー消費効率(APF)に統一されてい 運転時の消費電力“I2” )は、発電所で作ら る。この値を“α”とするとW0/I2で定義 れた電気“I3”が送電線や配電線を通ってき できる。 3
  • 4. もったいない学会 WEB 学会誌 Volume 1, pp. 30-35 と言う。一方、発電所内でも電気を使う。こ 一方、エアコンの製造にもエネルギーが必 要となる。資材まで含めたエネルギー消費を れを「所内電力量」と言う。 「発電端電力量」 “I1”とする。そして、エアコンのライフサ から「所内電力量」を差し引いたものを「送 イクルエネルギー消費のうち、運転時のエネ 電端電力量」 と言う。 図7では “I3” になる。 ルギー消費の割合を“β”とすると、β=I2 従って、各種電源のEPRを比較する場合 /(I1+I2)となり、I1=I2(1/βー1) は下記で定義される。 と表せる。この式は後ほど使う。 各種電源のEPR=I3/(I5+ I7) 3.考察 ここで、今までのことを整理したい。燃料 空調熱量“W0”を得るためには、エアコン の採掘・輸送へエネルギー投入することによ の消費する電力“I2”とエアコンの製造のた って私たちは国内で燃料を使えるようになる。 めの投入エネルギー“I1”が必要となる。エ 図7を見てもらいたい。 アコンの消費する電力 “I2” を得るためには、 発電所で作りだされる電力“I3”のほかに、 図7 I7 概念整理図 送・配電線の施設・保守・補修への投入エネ ルギー“I4”が必要となる。発電所で作りだ 燃料の採掘輸送への投入エネルギー される電力 (送電端) 3” “I を得るためには、 I5 I6 発電設備等への投入エネルギー 燃料“I6”と発電所の施設・保守・補修への 投入エネルギー “I5”が必要になる。燃料 I3 発電された電力 (送電端) I4 “I6”を得るためには、燃料の採掘・輸送へ 送・配電線の建設・保守・補修 への投入エネルギー “I7”というエネルギーを投入される。 I2 エアコンの 消費電力 I1 エアコン製造のための 投入エネルギー 従って、空調熱量“W0”を得るために、純 粋に投入されるエネルギーは、燃料の採掘・ W0 輸送への投入エネルギー“I7”と、発電所の 空調熱量 施設・保守・補修への投入エネルギー“I5” 、 “I6”を得るために “I7”が投入され 送・配電線の施設・保守・補修への投入エネ る。図3でいうと“I7”が「50」“I6” 、 ルギー“I4” 、エアコンの製造のための投入 が「100」ということになる。発電所では エネルギー“I1”ということになる。 この“I6”を使って発電するが、発電所の建 以上により、エアコンを例にとると、各種 設、運営にもエネルギーが投入される。これ 空調のEPRは下記になる。 を発電所全体のライフサイクルで見て、発電 された電力量単位で割り戻した値が“I5”に エアコンのEPR なる。発電機でどのくらい発電したかという =W0/(I1+I4+I5+ I7) 発電電力量を電力業界では「発電端電力量」 4
  • 5. もったいない学会 WEB 学会誌 Volume 1, pp. 30-35 これを展開し、整理すると次式になる。 図8 エアコンの運転エネルギーと製造エネルギー エアコンのEPR:γ=W0/(I1+I4+I5 +I7) =W0/{I2(1/β-1)+ηI2+I3/ε} =W0/[I2(1/β-1)+ηI2+I2/{(1-θ)/ε}] =W0/I2[(1/β-1)+η+1/{(1-θ)ε}] =α/[(1/β-1)+η+1/{(1-θ)ε}] I1=I2(1/βー1) I4=ηI2 I5=I3/ε I3=I2 /(1-θ) COP・APF:α=W0/I2 4. パラメーターについて 4.1 エアコンのAPF(α) APFとは、1年間を通して実使用 4.3 に近い、ある一定の条件のもと、エア 各種電源のEPR(ε) 各種電源の定義は既に述べた。図9 コンを運転したときの消費電力量1 は電力中央研究所の天野治氏の研究 kWhあたりの冷房・暖房能力(kW 結果である。 h)を表したものである。この値が高 いほど効率が良いといえる。2008 図9 冷房年における高級機種ではこの値 が6.2程度の機種が出てきているの でこの値を用いる。 4.2 ランニング比率(β) エアコンの運転エネルギーと製造 エネルギーについてだが、CO2に着 目 し た L C A ( Life Cycle Assessment)分析が株式会社サンヨー で行われていた。ここの諸元をもとに これを、平成18年度の電力10社 推計したのが右上の図8である。 の発受電実績から加重平均して求め 運転エネルギーの占める割合が9 たEPRは表1の通り9.45となる。 6%程度であることがわかる。 5
  • 6. もったいない学会 WEB 学会誌 Volume 1, pp. 30-35 表1 電気(送電端)の加重平均EPR LNG 石油 石炭 その他ガス 地熱 その他新エネ 水力 原子力 EPR 構成比 10社計 2.14 26.2% 2,605 7.9 7.8% 779 6.55 24.5% 2,444 7 1.0% 99 6.8 0.3% 31 5 0.6% 61 15.3 9.1% 905 16.9 30.5% 3,034 9,958 9.45 注意:構成比は平成18年度電力10社発受電実績     その他「新エネ」と「その他ガス」のEPRは暫定値 4.4 ネルギー0、国内インフラ設備に関係するエ 送配電ロス率(θ) ネルギー投入0、途中でのガス損失0とガス 図10は電力10社の火力発電設 ストーブに有利な前提を置いてある。 備の熱効率(高位発熱量)と送配電ロ ス率の時系列的推移のグラフである。 <ガスのEPRについて> 1955年度には18.4%あった送 ガスストーブのEPRを計算するに当たっ 配電ロス率も低減し、近年は5%前後 て、国内で使われる天然ガスのEPRを試算 の数字となっている。計算では200 した。 5年度の5.1%を用いた。 結果は下の図11の通りであり、全ての投 入エネルギーを採録している訳ではない。計 図10 算の諸元は、内山洋司・山本博巳、 「発電プラ ントのエネルギー収支分析」 電力中央研究 所報告 Y90015(1991)による。 図 11 5. 計算結果 以上からエアコンのEPRを計算した結 果が右上となる。エアコンのEPR39.7 という数字がどのような意味を持つかを比較 するためにガスストーブのEPRも試算した。 ガスストーブのEPRの計算においては熱効 率100%、ガスストーブの製造エ 6 天然ガスのEPR
  • 7. もったいない学会 WEB 学会誌 Volume 1, pp. 30-35 6. これからの課題と考察 表2 以上からEPRからみた暖房におけるヒー 平成 30 年の電気(送電端)の加重平均EPR トポンプの優位性がわかったかと思う。ここ LNG 石油 石炭 その他ガス 地熱 その他新エネ 水力 原子力 で、今後の研究の方向と課題について述べた い。 ① EPR分析の原価計算との類似性と財務 分析(比率分析)の有用性が確認できた EPR 構成比 10社計 2.14 23.5% 2,615 7.9 5.3% 590 6.55 21.0% 2,337 7 0.0% 0 6.8 0.3% 31 5 1.2% 134 15.3 8.7% 965 16.9 40.1% 4,475 11,147 10.48 注意:構成比は平成21年度電力施設計画に基ずく平成 30年度電力10社発受電計画値 その他「新エネ」と「その他ガス」のEPRは暫定値 ② 原価計算における石油製品のような連産 品問題(工程別原価計算と言う)から、 灯油を燃料とする石油ストーブ・石油フ うに火力発電所の熱効率も上昇すると考えら ァンヒーターのようなものへのEPR分 れる。ヒートポンプの効率もAFP現在の6 析 程度から倍以上に伸ばす計画である。 (詳しく ③ 現在のEPR分析が建設から全てのエネ は参考文献の総合科学技術会議資料、Cool ルギー投入(原価計算における全部原価 Earth-エネルギー革新技術計画を参照) 計算と言われるもの)を考えているが、 仮に、電気の加重平均EPRを10.4 すでにあるものを使うという場合は異な 8、AFPを12.5とした場合、ほかのパ ってくるという「意思決定における経済 ラメーターに変化がなければ、エアコンのE 性分析」 (直接原価計算など)の検討 PRは86程度になる。 (ただし、エアコンの 消費電力が半減することからランニング比率 以上の様なEPR分析の垂直的深耕化を図る が0.9になるとEPRは58.2に下がる) 一方、 このような分析(センシティビティ・テス ト=感度分析)ができることも比率分析の有 ④ 地域冷暖房システムなどへの検討範囲の 用性の一つである。 拡大 ⑤ 住宅など建築物への検討範囲の拡大 7.まとめ(再生可能エネルギー導入指標に ⑥ 社会システムの分析 ヒートポンプ) 麻生内閣総理大臣は 2009 年 4 月 9 日に日 本の新たな成長戦略に関する考え方として と言った、水平的拡大も試みていきたい。 「新たな成長に向けて」を発表した。これを 受け、 2009 年第 10 回経済財政諮問会議 (2009 なお、表2は現在公表されている最も先の 電力10社の発電電力量計画値である。EP 年 4 月 17 日)で公表された「未来開拓戦略」 Rの高い原子力の構成比が上昇することから (Jリカバリー・プラン)では、 「再生可能エ 平成18年度の9.45から平成30年度に ネルギー導入指標」について、EU方式を踏 は10.48に上昇する。また、図10のよ まえ、最終エネルギー消費に対する比率(ヒ 7
  • 8. もったいない学会 WEB 学会誌 Volume 1, pp. 30-35 ートポンプ等を含む) として 2020 年頃に 20% 参考文献 程度(2005 年 10%程度)を目指す」と明記さ 天野治(2007) エネルギーの質から、将来の石 れた。これは、政府がヒートポンプを再生可 油代替エネルギーを考える、電中研ニュース 能エネルギー利用技術として初めて公式に示 No.439,http://criepi.denken.or.jp/jp/pub したものである。 /news/pdf/den439.pdf 総合資源エネルギー調査会第33回新エネ 天野治(2008)石油ピーク後のエネルギー、愛 ルギー部会(2009 年 3 月 26 日柏木孝夫部会 智出版 長)では再生可能エネルギー等の導入量とし 日本エネルギー学会(2006) 講座ライフサイ て 2020 年見通し( 「長期エネルギー需給見通 クルアセスメント(LCA) 、日本エネルギー学 し」最大導入ケース)の試算結果を公表して 会 おり、ヒートポンプ利用により得られた再生 内山洋司・山本博巳(1991)、発電プラントの 可能エネルギー導入量は 2,361 万klとして エネルギー収支分析、電力中央研究所報告 いる。この値は表3の通り、再生可能エネル Y90015 ギー等導入量合計に対し約 3 割を占める。 日本建築学会(2006)建物の LCA 指針、丸善 また、海外の動向では、EUは既に 2007 年 総 合 科 学 技 術 会 議 (2008) に 2020 年までに最終エネルギー消費に占め http://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihu73 る再生可能エネルギー利用比率を 20%に向上 /siryo3.pdf させることを決定している。この目標達成に 総 向けて、 「再生可能エネルギー推進に関する指 http://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihu79 令」 を含む気候-エネルギー政策パッケージが /sanko2.pdf 欧州議会(2008 年 12 月 17 日) 、欧州理事会 資源エネルギー庁(2008)Cool Earth-エネル (2009 年 4 月 6 日)でそれぞれ採決された。 ギ この再生可能エネルギー推進に関する指令の http://www.enecho.meti.go.jp/policy/cool 中で、ヒートポンプ利用により得られた熱エ earth_energy/coolearth-roadmap.pdf ネルギー(空気・地中・水)を再生可能エネ 資源エネルギー庁(2009)平成 21 年度電力供 ルギーとして扱うことが明記されている。 給 このように、ヒートポンプ(エアコン)の 合 科 ー 計 革 学 新 画 技 術 技 の 会 術 概 議 計 (2009) 画 要 、 、 http://www.meti.go.jp/press/20090403005/ 利用拡大の重要性は世界的な潮流となりつつ 20090403005-2.pdf あるが、わが国はヒートポンプ利用において 財団法人ヒートポンプ・蓄熱センター(2009) 先端的な地位を占めていることから更なる啓 再生可能エネルギー導入指標にヒートポンプ、 蒙に努める必要がある。 http://www.hptcj.or.jp/chikunetu_lib/wha tsnew_bn/doc/newsrelease090422.pdf 8
  • 9. もったいない学会 WEB 学会誌 Volume 1, pp. 30-35 表3 長期エネルギー需給見通し資料 1