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実行時のデータ型の表現手法	
  
     Ver.	
  1.02	
  
    2012-­‐11-­‐24	
       前田敦司
このスライドの目的	
•  64bit	
  ARMアーキテクチャのTagged	
  Pointer機
   能が話題になった	
  
•  よい機会なので,実行時にデータ型を判別す
   るためのデータ表現をまとめておこうと思った	
  
•  ホットなトピックというより,大昔からの,いわ
   ば教科書的な話題だが,教科書にはあんまり
   載ってない	
  
•  手法の選択にはGCやメモリ管理との相互作
   用も絡むのだが,ほぼバッサリ省略
実行時になぜデータ型を判別する	
  
     必要があるのか?	
•  動的型付き言語	
  
  –  変数に静的な(=実行前の・コンパイル時の)型
     が付いていない	
  
  –  実行するまで,どんな型のデータが入るかわから
     ない	
  
•  多相型とGC	
  
  –  整数のリストも文字列のリストも受け取れる関数
     の引数…GCが,ポインタを追跡する手がかり
実行時の型判別の基本操作	
•  is_type(x,	
  t)	
  	
  
     –  データxの型はtか?	
  
     –  真偽値を返す.エラーは起きない.	
  
•  typecase(x)	
  case	
  t1=>…;	
  case	
  t2=>…;	
  …	
  
     –  データxの型に応じて多方向分岐	
  
     –  エラーは起きない	
  
•  型エラーの動的チェック(check_type)	
  
     –  データxが期待した型(たとえば,整数加算に対して整
        数オペランド)なら正常に演算を行う	
  
     –  そうでないならエラー
前提:データ表現の一様性	
•  動的データ型や多相型では,一般に,すべて
   のデータが一様に表現されている必要がある	
  
 –  変数の記憶領域はすべて同じサイズ	
  
 –  配列やリストの要素も同じサイズ	
  
 –  データ型の表現法も標準化	
  
 –  boxed表現などという(cf.	
  boxing,	
  unboxing)	
  
•  効率を考えると,サイズは1ワード(CPUが自
   然に扱える特定のサイズ)に揃えるのが便利	
  
•  1ワードに収まらないデータは?
データサイズの一様化とポインタ	
•  すべてのデータのサイズを1ワードに揃える
   手法の例(仮にオブジェクトタグと呼ぶ):	
  
 –  変数や配列にはポインタを入れる	
  
 –  実際のデータ本体は,別の場所(ヒープ)に置く	
  
 –  本体のヘッダに,型やサイズの情報を入れる	
  
                型・サイズ	
 変数x	
                 データ	

 変数y	
              型・サイズ	

                     データ
オブジェクトタグでの基本操作	
•  is_type(x,	
  t)	
  
    –  xのポインタをたどり,ヘッダの型コードを読みだし
       てtと照合	
  
•  typecase(x)	
  
    –  xのポインタをたどり,ヘッダの型コードを読みだし
       て多方向分岐(テーブルジャンプ等)	
  
•  check_type	
  
    –  is_type(x,	
  t)で型を確認してから演算を実行	
  
オブジェクトタグの欠点	
•  メモリのオーバーヘッドが大きい	
 –  ポインタとヘッダの領域がオーバーヘッドとなる	
  
 –  本体が1ワードなら,計3ワードが必要	
  
•  速度的なオーバーヘッド	
  
 –  整数をこの形式で表すと,たとえば加算は…	
  
   •  左辺のポインタをたどり,ヘッダを読んで整数であることを
      確認し,本体の整数データを読み出す	
  
   •  右辺も同様	
  
   •  加算命令の結果にヘッダを付けてヒープにアロケートし,そ
      の領域へのポインタを結果とする…ゴミが大量に出る	
  
改良手法1:イミディエイトデータのアド
       レスへのマップ	
  •  たとえば値の小さな整数などを,ヒープ以外
     のアドレスを指すポインタにマップする	

                     例)	
  
                     ポインタ値pがboundaryより小さい時,整数
boundary	
           boundary-­‐pを表していると見なす.	
  
                     	
  
                     •  メモリの節約:小さい整数は1ワード	
  
                     •  速度の節約:整数演算は速くなる	
  
             ヒープ	
   •  その他のデータの操作には「ヒープを指して
                          いる事」を確認するオーバーヘッドがかかる
手法2:BIBOP	
•  Big	
  Bag	
  of	
  Pagesの略;たぶんビーバップと読む	
  
•  ヒープを2のべき乗サイズ(たとえば4KiB)の
   ページに分ける	
  
•  1つのページには,1つの型のデータだけ入
   れる	
 ページ0	
                  ヒープのbase	

         	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  1	
     整数データが入るページ	
          	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  2	
    浮動小数点数データが入るページ	

          	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  3	
    リストデータが入るページ	
           	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  4
BIBOPでの型判別基本操作	
•  ページ管理表に型情報を入れておく	
  
•  ポインタ値	
  x	
  からヒープのbaseアドレスを引き,
   右にシフトしてページ管理表を引く	
  
                                                        ヒープのbase	
ページ0	
                                                                      x	
  -­‐	
  base	
	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  1	
     ポインタx	
                                                                                 ページ番号	
   オフセット12bit	


 	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  2	
       ページ管理表	
                                                            0	
  
                                                            1	
       補注:文献[3]のマシンは1ワード36bit,	
  
 	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  3	
                                                            2	
       アドレスはワード単位18bitなので,	
  
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  	
  4	
       3	
       •  1ワードにポインタ2個が入る	
  
                                                            4	
       •  ポインタ中のbitは全く空きがない	
  
                                                                          (後述のポインタタグには向かない)
BIBOPの利点	
•  メモリ効率はオブジェクトタグよりずっとよい	
  
 –  オブジェクトごとに型情報を保つ必要はない	
  
•  型判別操作の速度もそう遅くない	
  
 –  メモリアクセス回数は1回のまま	
  
•  多種類の型の領域をかなり柔軟に管理できる	
  
•  速度オーバーヘッドは?	
  
 –  小さな整数は,あらかじめ順序良く並べて割り当てて
    おけばアドレスと簡単にマッピングできる(ポインタを
    たどって普通に本体を取り出すこともできる)
手法3:ポインタタグ	
•  Tagged	
  pointer…ポインタ内に型情報を埋め
   込む	
  
•  観察:ポインタのすべてのビットが有効な情報
   を表しているわけではない	
  
       –  たとえば,最近のバイトアドレスマシンで,ワード
          以上のサイズのデータを指すポインタは,下位の
          2〜3bitがたいていゼロ	
  
       –  また,64bitマシンでも,アドレス空間はそんなに
          なかったりする(上位ビットは実際は使ってない)	
  
	
  
ポインタタグ(Tagged	
  Pointer)とは	
•  ポインタ中の,使っていないビットに型情報を
   埋め込む	
  
•  残りのビットで,データの値を表す	
  
 –  ポインタの指すアドレス	
  
 –  文字や小さい整数等のイミディエイトデータ	
  
•  メモリアクセスなしで型を判別できる事が多い	
  
•  イミディエイトデータはヒープに割り当てずに
   すむ…メモリ効率,速度効率の向上	
  
バリエーション:ポインタの上位ビット
         にタグ	
•  例:	
  IBM	
  System	
  360,	
  Motorola	
  MC68000等は,
   ポインタが32bitだが,アドレス空間は24bitで,
   上位8bitは無視される	
  
   →	
  上位8bitに型を表すコードを入れることができる	
  
   	
   型タグ8bit	
         有効なアドレス24bit	
   	
  
   typecase操作:シフトして型タグを取り出す	
  
   is_type,	
  check_type:比較1回〜2回	
  
上位ビットポインタタグの比較	
 型タグ8bit	
   有効なアドレス24bit	


•  型タグが上位にあるので,シフトは不要で単
   に大小比較すればよい	
  
•  符号なし,符号付き比較,型の包含関係を工
   夫すれば,多くの場合1回の比較ですむ	
•  たとえば「型タグが0x00か」の検査は,
   「0x01000000より符号なし比較で小さいか」を
   調べれば良い	
  
上位ビットポインタタグの例	
タグの値	
 型	
0x00	
   小さな整数	
                      Lisp系言語での架空の	
  
0x01	
   Bignum	
      整数	
           タグ値の例	
  
                              数値	
    	
  
0x02	
   Float	
                      •  小さな整数は(符号
0x03	
   複素数	
                             なしで良いなら)変
                                           換なしで演算できる	
  
…	
      …	
                                      •  整数,数値,配列,
0x7d	
   多次元配列	
                           1次元配列,文字
0x7e	
   ベクター	
               配列	
         列,シンボル,リス
                                           ト,リストのノード等
0x7f	
   文字列	
                                           は1回の比較で判
0x80	
   シンボル	
                            別できる	
  
0x81	
   構造体	
                        •  (実際は,ベンチ
                                           マークでどの型を
…	
      …	
                                           優先するか決める)	
0xfe	
   空リスト(nil)	
0xff	
    リストのノード	
            リスト
上位ビットポインタタグの得失	
•  32bitワード,24bitアドレスの時代には,かな
   り多くのビットが型判別に使えた	
  
•  オブジェクトタグよりメモリアクセスが少ないの
   は大きな利点	
  
•  欠点	
  
 –  上位bitを無視してくれるCPUでないと,ポインタア
    クセス毎に比較的大きなオーバーヘッドがかかる	
  
 –  無視してくれるCPUでも,数年するとアドレス空間
    が足りなくなったりする(実際,そうなった)
バリエーション:ポインタの下位ビット
        にタグ	
•  たとえば32bitのバイトアドレスマシン(1ワー
   ド4バイト)で,データオブジェクトのサイズが1
   ワード以上なら,下位に2bit以上使わないビッ
   トができる	
  
 –  間接アクセス時に,インデックスでタグを打ち消す
    ことにより,マスクしないでアクセス可能	
  
 例)	
  	
  リストのノード(CONS対)のタグが2進数01のとき
 2つの要素を読み出すには,それぞれ	
  p	
  –	
  1,	
  p	
  +	
  3	
  
 番地を読み出せばよい
下位ビットポインタタグの利点	
•  小さな整数に下位	
  00	
  (2)	
  のタグを割り当てると	
  
  –  30bit符号付き…加減算はマスクもシフトも不要	
  
  –  ワードのインデックスに使う際も便利	
  
  –  SPARCのtadcc	
  (tagged	
  add	
  set	
  condi`on	
  code)命令は,
     オペランドの下位2ビットが00(2)でないとトラップを引
     き起こす整数加算…check_typeの命令が不要	
  
•  CPUによっては,アラインされていないメモリアク
   セスをトラップできる(バスエラー等)	
  
  –  タグ付きポインタアクセスのcheck_typeの命令が不要
下位ビットポインタタグの得失	
•  is_type,	
  type_case	
  
   –  下位ビットのみマスクして取り出す	
  
   –  上位ビット ポインタタグより少し手間	
  
•  check_type	
  
   –  前述のとおり,CPUによっては,事実上コスト無しで行
      える場合がある	
  
•  使えるbit数が少ないのが欠点	
  
   –  型判別のごく一部にしか使えない	
  
   –  オブジェクトタグを併用する,可変長のタグにするな
      どの工夫が必要	
  
下位ビットポインタタグの例	
タグの値	
 型	
             架空の処理系の下位ビットポ
  000(2)	
 小さな整数	
     インタタグの例	
  
  001(2)	
 その他の数	
  010(2)	
 リストのノード	
   •  データオブジェクトは8バイ
  011(2)	
 シンボル	
         ト境界に整列して割り付け
 0100(2)	
 真理値	
          られるとする(3bitが空き)	
  
01100(2)	
 空リスト	
11100(2)	
 文字	
                       •  イミディエイトデータは,3bit
  101(2)	
 文字列	
          より多くのタグを使える	
  
  110(2)	
 関数	
        •  これ以外の型はオブジェクト
  111(2)	
 それ以外	
                          タグで表現	
  
64bit	
  ARMのTagged	
  Pointer機能	
•  ついったーでいろいろ教わったところによると	
  
 –  64bit	
  ARMアーキテクチャのアドレス空間は48bit	
  
 –  しかし,通常は64bitのポインタの上位16bitに,好
    き勝手な値を入れられるわけではなく,0x0000か
    0xFFFFでないとFaultが起きる	
  
 –  Tagged	
  Pointerを設定すると,上位8bitに好きな値
    を入れられるようになる…らしい	
  
 –  hap://www.arm.com/ja/files/downloads/
    ARMv8_Architecture.pdf	
  (p.16)
参考文献	
1.     Fred	
  W.	
  Blair,	
  James	
  H.	
  Griesmer,	
  Joseph	
  Harry,	
  and	
  Mark	
  Pivovonsky.	
  
       Design	
  and	
  Development	
  Document	
  for	
  LISP	
  on	
  Several	
  S/360	
  Opera`ng	
  
       Systems.	
  IBM	
  Research,	
  Yorktown	
  Heights,	
  New	
  York,	
  revised	
  June	
  24,	
  
       1971	
  
      hap://www.sonwarepreserva`on.org/projects/LISP/ibm/Blair-­‐LISP360.pdf/view	
  
      手法1の解説がある	
  
2.     M.	
  Nakanishi,	
  C.	
  Hishinuma,	
  K.	
  Yamashita,	
  and	
  T.	
  Sakai.	
  A	
  Design	
  of	
  Lisp	
  
       Interpreter	
  for	
  Minicomputers,	
  Proceedings	
  of	
  the	
  IFIP	
  TC-­‐2	
  Working	
  
       Conference	
  on	
  Sonware	
  for	
  Minicomputers,	
  pp.89-­‐95,	
  Lake	
  Balaton,	
  
       Hungary,	
  September	
  1975	
  
      これも手法1を使っていると伝え聞いているが,読んでいない	
  
3.     Guy	
  Steele,	
  Jr.	
  Data	
  representa`on	
  in	
  PDP-­‐10	
  MACLISP.	
  MIT	
  AI	
  Memo	
  
       421,	
  Massachuseas	
  Ins`tute	
  of	
  Technology,	
  September	
  1977.	
  	
  
      hap://ntrs.nasa.gov/archive/nasa/casi.ntrs.nasa.gov/
      19780016892_1978016892.pdf	
  
      BIBOPを使った代表的処理系MacLISPのデータ表現の説明	
  
参考文献	
4.  R.	
  Kent	
  Dybvig,	
  David	
  Eby,	
  Carl	
  Bruggeman,	
  Don't	
  Stop	
  the	
  BIBOP:	
  
    Flexible	
  and	
  Efficient	
  Storage	
  Management	
  for	
  Dynamically-­‐Typed	
  
    Languages.	
  Indiana	
  University	
  Computer	
  Science	
  Department	
  
    Technical	
  Report	
  #400,	
  March	
  1994	
  
     hap://www.cs.indiana.edu/cgi-­‐bin/techreports/TRNNN.cgi?trnum=TR400	
  
5.  近山 隆 U`lispシステムの開発 IPSJ	
  Journal	
  24(5),	
  599-­‐604,	
  
    1983-­‐09-­‐15	
  Informa`on	
  Processing	
  Society	
  of	
  Japan	
  
     hap://ci.nii.ac.jp/naid/110002723809	
  
     上位ビットポインタタグを用いたLispシステム	
  
6.  J.	
  P.	
  Fitch,	
  A.	
  C.	
  Norman	
  Implemen`ng	
  LISP	
  in	
  a	
  high-­‐level	
  
    language,	
  Sonware:	
  Prac`ce	
  and	
  ExperienceVolume	
  7,	
  Issue	
  6,	
  
    pages	
  713–725,	
  November/December	
  1977	
  
     [5]から,上位ビットポインタタグを用いた先行システムとして参照されて
     いる	
  
参考文献	
7.  Adele	
  Goldberg	
  and	
  David	
  Robson,	
  Smalltalk-­‐80:	
  The	
  Language	
  
    and	
  its	
  Implementa`on,	
  Addison	
  Wesley,	
  1983.	
  	
  
     hap://wiki.squeak.org/squeak/64	
  
     下位1ビットのタグを用いている	
  
8.  Glenn	
  S.	
  Burke,	
  George	
  J.	
  Carreae,	
  and	
  Christopher	
  R.	
  Eliot.	
  NIL	
  
    Reference	
  Manual	
  corresponding	
  to	
  Release	
  0.286.	
  Report	
  MIT/
    LCS/TR-­‐311,	
  January	
  1984	
  
     hap://www.sonwarepreserva`on.org/projects/LISP/MIT/Burke_et_al-­‐
     NIL_Reference_Manual_0286-­‐1984.pdf/view	
  
     下位2ビットのタグを用いていると[9]で解説されている処理系NIL(New	
  
     Implementa`on	
  of	
  Lisp)のマニュアル.データ表現の解説はない.	
  
9.  Richard	
  P.	
  Gabriel,	
  Performance	
  and	
  Evalua`on	
  of	
  Lisp	
  Systems,	
  
    The	
  MIT	
  Press,	
  August,	
  1985	
  
     NILを含むさまざまなLispシステムの実装の概要と,有名なGabriel	
  
     Benchmarkによる性能評価結果	
  

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実行時のデータ型の表現手法

  • 1. 実行時のデータ型の表現手法   Ver.  1.02   2012-­‐11-­‐24 前田敦司
  • 2. このスライドの目的 •  64bit  ARMアーキテクチャのTagged  Pointer機 能が話題になった   •  よい機会なので,実行時にデータ型を判別す るためのデータ表現をまとめておこうと思った   •  ホットなトピックというより,大昔からの,いわ ば教科書的な話題だが,教科書にはあんまり 載ってない   •  手法の選択にはGCやメモリ管理との相互作 用も絡むのだが,ほぼバッサリ省略
  • 3. 実行時になぜデータ型を判別する   必要があるのか? •  動的型付き言語   –  変数に静的な(=実行前の・コンパイル時の)型 が付いていない   –  実行するまで,どんな型のデータが入るかわから ない   •  多相型とGC   –  整数のリストも文字列のリストも受け取れる関数 の引数…GCが,ポインタを追跡する手がかり
  • 4. 実行時の型判別の基本操作 •  is_type(x,  t)     –  データxの型はtか?   –  真偽値を返す.エラーは起きない.   •  typecase(x)  case  t1=>…;  case  t2=>…;  …   –  データxの型に応じて多方向分岐   –  エラーは起きない   •  型エラーの動的チェック(check_type)   –  データxが期待した型(たとえば,整数加算に対して整 数オペランド)なら正常に演算を行う   –  そうでないならエラー
  • 5. 前提:データ表現の一様性 •  動的データ型や多相型では,一般に,すべて のデータが一様に表現されている必要がある   –  変数の記憶領域はすべて同じサイズ   –  配列やリストの要素も同じサイズ   –  データ型の表現法も標準化   –  boxed表現などという(cf.  boxing,  unboxing)   •  効率を考えると,サイズは1ワード(CPUが自 然に扱える特定のサイズ)に揃えるのが便利   •  1ワードに収まらないデータは?
  • 6. データサイズの一様化とポインタ •  すべてのデータのサイズを1ワードに揃える 手法の例(仮にオブジェクトタグと呼ぶ):   –  変数や配列にはポインタを入れる   –  実際のデータ本体は,別の場所(ヒープ)に置く   –  本体のヘッダに,型やサイズの情報を入れる   型・サイズ 変数x データ 変数y 型・サイズ データ
  • 7. オブジェクトタグでの基本操作 •  is_type(x,  t)   –  xのポインタをたどり,ヘッダの型コードを読みだし てtと照合   •  typecase(x)   –  xのポインタをたどり,ヘッダの型コードを読みだし て多方向分岐(テーブルジャンプ等)   •  check_type   –  is_type(x,  t)で型を確認してから演算を実行  
  • 8. オブジェクトタグの欠点 •  メモリのオーバーヘッドが大きい –  ポインタとヘッダの領域がオーバーヘッドとなる   –  本体が1ワードなら,計3ワードが必要   •  速度的なオーバーヘッド   –  整数をこの形式で表すと,たとえば加算は…   •  左辺のポインタをたどり,ヘッダを読んで整数であることを 確認し,本体の整数データを読み出す   •  右辺も同様   •  加算命令の結果にヘッダを付けてヒープにアロケートし,そ の領域へのポインタを結果とする…ゴミが大量に出る  
  • 9. 改良手法1:イミディエイトデータのアド レスへのマップ •  たとえば値の小さな整数などを,ヒープ以外 のアドレスを指すポインタにマップする 例)   ポインタ値pがboundaryより小さい時,整数 boundary boundary-­‐pを表していると見なす.     •  メモリの節約:小さい整数は1ワード   •  速度の節約:整数演算は速くなる   ヒープ •  その他のデータの操作には「ヒープを指して いる事」を確認するオーバーヘッドがかかる
  • 10. 手法2:BIBOP •  Big  Bag  of  Pagesの略;たぶんビーバップと読む   •  ヒープを2のべき乗サイズ(たとえば4KiB)の ページに分ける   •  1つのページには,1つの型のデータだけ入 れる ページ0 ヒープのbase                        1 整数データが入るページ                        2 浮動小数点数データが入るページ                        3 リストデータが入るページ                        4
  • 11. BIBOPでの型判別基本操作 •  ページ管理表に型情報を入れておく   •  ポインタ値  x  からヒープのbaseアドレスを引き, 右にシフトしてページ管理表を引く   ヒープのbase ページ0 x  -­‐  base                        1 ポインタx ページ番号 オフセット12bit                        2 ページ管理表 0   1   補注:文献[3]のマシンは1ワード36bit,                          3 2   アドレスはワード単位18bitなので,                          4 3   •  1ワードにポインタ2個が入る   4 •  ポインタ中のbitは全く空きがない   (後述のポインタタグには向かない)
  • 12. BIBOPの利点 •  メモリ効率はオブジェクトタグよりずっとよい   –  オブジェクトごとに型情報を保つ必要はない   •  型判別操作の速度もそう遅くない   –  メモリアクセス回数は1回のまま   •  多種類の型の領域をかなり柔軟に管理できる   •  速度オーバーヘッドは?   –  小さな整数は,あらかじめ順序良く並べて割り当てて おけばアドレスと簡単にマッピングできる(ポインタを たどって普通に本体を取り出すこともできる)
  • 13. 手法3:ポインタタグ •  Tagged  pointer…ポインタ内に型情報を埋め 込む   •  観察:ポインタのすべてのビットが有効な情報 を表しているわけではない   –  たとえば,最近のバイトアドレスマシンで,ワード 以上のサイズのデータを指すポインタは,下位の 2〜3bitがたいていゼロ   –  また,64bitマシンでも,アドレス空間はそんなに なかったりする(上位ビットは実際は使ってない)    
  • 14. ポインタタグ(Tagged  Pointer)とは •  ポインタ中の,使っていないビットに型情報を 埋め込む   •  残りのビットで,データの値を表す   –  ポインタの指すアドレス   –  文字や小さい整数等のイミディエイトデータ   •  メモリアクセスなしで型を判別できる事が多い   •  イミディエイトデータはヒープに割り当てずに すむ…メモリ効率,速度効率の向上  
  • 15. バリエーション:ポインタの上位ビット にタグ •  例:  IBM  System  360,  Motorola  MC68000等は, ポインタが32bitだが,アドレス空間は24bitで, 上位8bitは無視される   →  上位8bitに型を表すコードを入れることができる     型タグ8bit 有効なアドレス24bit   typecase操作:シフトして型タグを取り出す   is_type,  check_type:比較1回〜2回  
  • 16. 上位ビットポインタタグの比較 型タグ8bit 有効なアドレス24bit •  型タグが上位にあるので,シフトは不要で単 に大小比較すればよい   •  符号なし,符号付き比較,型の包含関係を工 夫すれば,多くの場合1回の比較ですむ •  たとえば「型タグが0x00か」の検査は, 「0x01000000より符号なし比較で小さいか」を 調べれば良い  
  • 17. 上位ビットポインタタグの例 タグの値 型 0x00 小さな整数 Lisp系言語での架空の   0x01 Bignum 整数 タグ値の例   数値   0x02 Float •  小さな整数は(符号 0x03 複素数 なしで良いなら)変 換なしで演算できる   … … •  整数,数値,配列, 0x7d 多次元配列 1次元配列,文字 0x7e ベクター 配列 列,シンボル,リス ト,リストのノード等 0x7f 文字列 は1回の比較で判 0x80 シンボル 別できる   0x81 構造体 •  (実際は,ベンチ マークでどの型を … … 優先するか決める) 0xfe 空リスト(nil) 0xff リストのノード リスト
  • 18. 上位ビットポインタタグの得失 •  32bitワード,24bitアドレスの時代には,かな り多くのビットが型判別に使えた   •  オブジェクトタグよりメモリアクセスが少ないの は大きな利点   •  欠点   –  上位bitを無視してくれるCPUでないと,ポインタア クセス毎に比較的大きなオーバーヘッドがかかる   –  無視してくれるCPUでも,数年するとアドレス空間 が足りなくなったりする(実際,そうなった)
  • 19. バリエーション:ポインタの下位ビット にタグ •  たとえば32bitのバイトアドレスマシン(1ワー ド4バイト)で,データオブジェクトのサイズが1 ワード以上なら,下位に2bit以上使わないビッ トができる   –  間接アクセス時に,インデックスでタグを打ち消す ことにより,マスクしないでアクセス可能   例)    リストのノード(CONS対)のタグが2進数01のとき 2つの要素を読み出すには,それぞれ  p  –  1,  p  +  3   番地を読み出せばよい
  • 20. 下位ビットポインタタグの利点 •  小さな整数に下位  00  (2)  のタグを割り当てると   –  30bit符号付き…加減算はマスクもシフトも不要   –  ワードのインデックスに使う際も便利   –  SPARCのtadcc  (tagged  add  set  condi`on  code)命令は, オペランドの下位2ビットが00(2)でないとトラップを引 き起こす整数加算…check_typeの命令が不要   •  CPUによっては,アラインされていないメモリアク セスをトラップできる(バスエラー等)   –  タグ付きポインタアクセスのcheck_typeの命令が不要
  • 21. 下位ビットポインタタグの得失 •  is_type,  type_case   –  下位ビットのみマスクして取り出す   –  上位ビット ポインタタグより少し手間   •  check_type   –  前述のとおり,CPUによっては,事実上コスト無しで行 える場合がある   •  使えるbit数が少ないのが欠点   –  型判別のごく一部にしか使えない   –  オブジェクトタグを併用する,可変長のタグにするな どの工夫が必要  
  • 22. 下位ビットポインタタグの例 タグの値 型 架空の処理系の下位ビットポ 000(2) 小さな整数 インタタグの例   001(2) その他の数 010(2) リストのノード •  データオブジェクトは8バイ 011(2) シンボル ト境界に整列して割り付け 0100(2) 真理値 られるとする(3bitが空き)   01100(2) 空リスト 11100(2) 文字 •  イミディエイトデータは,3bit 101(2) 文字列 より多くのタグを使える   110(2) 関数 •  これ以外の型はオブジェクト 111(2) それ以外 タグで表現  
  • 23. 64bit  ARMのTagged  Pointer機能 •  ついったーでいろいろ教わったところによると   –  64bit  ARMアーキテクチャのアドレス空間は48bit   –  しかし,通常は64bitのポインタの上位16bitに,好 き勝手な値を入れられるわけではなく,0x0000か 0xFFFFでないとFaultが起きる   –  Tagged  Pointerを設定すると,上位8bitに好きな値 を入れられるようになる…らしい   –  hap://www.arm.com/ja/files/downloads/ ARMv8_Architecture.pdf  (p.16)
  • 24. 参考文献 1.  Fred  W.  Blair,  James  H.  Griesmer,  Joseph  Harry,  and  Mark  Pivovonsky.   Design  and  Development  Document  for  LISP  on  Several  S/360  Opera`ng   Systems.  IBM  Research,  Yorktown  Heights,  New  York,  revised  June  24,   1971   hap://www.sonwarepreserva`on.org/projects/LISP/ibm/Blair-­‐LISP360.pdf/view   手法1の解説がある   2.  M.  Nakanishi,  C.  Hishinuma,  K.  Yamashita,  and  T.  Sakai.  A  Design  of  Lisp   Interpreter  for  Minicomputers,  Proceedings  of  the  IFIP  TC-­‐2  Working   Conference  on  Sonware  for  Minicomputers,  pp.89-­‐95,  Lake  Balaton,   Hungary,  September  1975   これも手法1を使っていると伝え聞いているが,読んでいない   3.  Guy  Steele,  Jr.  Data  representa`on  in  PDP-­‐10  MACLISP.  MIT  AI  Memo   421,  Massachuseas  Ins`tute  of  Technology,  September  1977.     hap://ntrs.nasa.gov/archive/nasa/casi.ntrs.nasa.gov/ 19780016892_1978016892.pdf   BIBOPを使った代表的処理系MacLISPのデータ表現の説明  
  • 25. 参考文献 4.  R.  Kent  Dybvig,  David  Eby,  Carl  Bruggeman,  Don't  Stop  the  BIBOP:   Flexible  and  Efficient  Storage  Management  for  Dynamically-­‐Typed   Languages.  Indiana  University  Computer  Science  Department   Technical  Report  #400,  March  1994   hap://www.cs.indiana.edu/cgi-­‐bin/techreports/TRNNN.cgi?trnum=TR400   5.  近山 隆 U`lispシステムの開発 IPSJ  Journal  24(5),  599-­‐604,   1983-­‐09-­‐15  Informa`on  Processing  Society  of  Japan   hap://ci.nii.ac.jp/naid/110002723809   上位ビットポインタタグを用いたLispシステム   6.  J.  P.  Fitch,  A.  C.  Norman  Implemen`ng  LISP  in  a  high-­‐level   language,  Sonware:  Prac`ce  and  ExperienceVolume  7,  Issue  6,   pages  713–725,  November/December  1977   [5]から,上位ビットポインタタグを用いた先行システムとして参照されて いる  
  • 26. 参考文献 7.  Adele  Goldberg  and  David  Robson,  Smalltalk-­‐80:  The  Language   and  its  Implementa`on,  Addison  Wesley,  1983.     hap://wiki.squeak.org/squeak/64   下位1ビットのタグを用いている   8.  Glenn  S.  Burke,  George  J.  Carreae,  and  Christopher  R.  Eliot.  NIL   Reference  Manual  corresponding  to  Release  0.286.  Report  MIT/ LCS/TR-­‐311,  January  1984   hap://www.sonwarepreserva`on.org/projects/LISP/MIT/Burke_et_al-­‐ NIL_Reference_Manual_0286-­‐1984.pdf/view   下位2ビットのタグを用いていると[9]で解説されている処理系NIL(New   Implementa`on  of  Lisp)のマニュアル.データ表現の解説はない.   9.  Richard  P.  Gabriel,  Performance  and  Evalua`on  of  Lisp  Systems,   The  MIT  Press,  August,  1985   NILを含むさまざまなLispシステムの実装の概要と,有名なGabriel   Benchmarkによる性能評価結果