SlideShare a Scribd company logo
1 of 75
Download to read offline
環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部委託
放射性物質の分離による焼却灰及び
汚染土壌の資材化実証調査委託業務
Phase-2
(平成28 年度~29 年度分)
概要報告書
平成30年3月
日 揮 株 式 会 社
目次
I. 実証調査委託業務の概要 .............................................. 1
実証調査委託業務の背景 ........................................... 1
実証調査委託業務の目的 ........................................... 1
仕様書における実証調査委託業務の基本条件及び内容 ................. 1
業務の基本条件 ............................................. 1
業務内容 ................................................... 2
業務期間 ................................................... 2
実証調査委託業務の体制 ........................................... 3
II. 処理対象物の収集・運搬・保管 ........................................ 4
処理対象物の収集・運搬 .......................................... 4
除去土壌 .................................................. 4
焼却灰 .................................................... 4
処理対象物の性状 ................................................ 5
除去土壌 .................................................. 5
焼却灰 .................................................... 6
III. 仮設資材化施設の運転管理、モニタリング ............................ 8
運転管理体制と運転計画 ......................................... 8
運転管理体制 ............................................. 8
運転計画 ................................................. 8
安全管理体制 ................................................... 9
施設の安全管理組織 ....................................... 9
緊急連絡体制 ............................................. 9
緊急時報告内容とそのタイミング ........................... 9
操作及び作業標準とチェックリストの整備 ................... 9
実証運転 ...................................................... 10
資材化実証試験 .......................................... 10
前処理設備棟内での作業状況及びその効果 .................. 12
電気炉試験による検証 .................................... 13
排ガスモニタリング ............................................ 18
地下水等の放射性セシウム濃度 .................................. 18
施設周辺への影響 .............................................. 19
施設敷地内空間線量率 .................................... 19
敷地境界での騒音・振動レベル ............................ 21
作業従事者の安全性 ...................................... 22
IV. 生成物及び副産物の保管管理 ......................................... 27
生成物の保管管理 ............................................... 27
副産物の保管管理 .............................................. 27
V. 生成物の品質調査及び工事資材への活用検討........................... 28
生成物の環境安全性 .............................................. 28
重金属の含有・溶出 ........................................ 28
放射性 Cs の溶出 ........................................... 28
生成物の品質調査 ................................................ 29
未反応石灰量の影響 ........................................ 29
コンクリート用細骨材としての評価 .......................... 31
総合評価運転の生成物の評価 ................................ 32
アルカリ骨材反応性評価 .................................... 34
IL ブロックの製造 ................................................ 35
車道用 IL ブロック製造のための配合検討、物性評価 ........... 35
施設内での IL ブロックの試験製造 ........................... 37
車道用 IL ブロックの製造及び敷設 ........................... 38
IL ブロック大量製造 ........................................ 38
U字溝及びU字溝蓋の試験製造 .................................... 41
試験概要 .................................................. 41
配合 ...................................................... 41
U 字溝及び U 字溝蓋の作製 ................................... 41
盛土の評価 ...................................................... 43
試験盛土の施工 ............................................ 43
混合盛土としての評価 ...................................... 44
農業用資材としての評価 .......................................... 48
ケイ酸肥料としての評価 .................................... 48
酸性土壌改良材としての評価 ................................ 49
VI. 仮設資材化施設の性能、放射性物質の挙動、コスト等の検証............. 52
良品率及び規格外品中の放射性 Cs 濃度 ............................ 52
副産物への濃縮率及び減量率 ..................................... 53
物質収支・放射能収支・熱収支 ................................... 54
物質収支及び放射能収支 ................................... 54
熱収支 ................................................... 57
施設の耐久性 ................................................... 58
補修修繕履歴から見た耐久性評価 ........................... 58
定期点検結果による耐久性評価 ............................. 60
炉耐火物への放射性 Cs 蓄積 ................................ 61
コスト評価 ..................................................... 64
実証施設におけるコスト評価 ............................... 64
実機スケールにおけるコスト評価 ........................... 64
VII. アドバイザリー委員会 ............................................. 66
第 1 回アドバイザリー委員会開催結果 ............................ 66
第 2 回アドバイザリー委員会開催結果 ............................ 66
第 3 回アドバイザリー委員会開催結果 ............................ 67
VIII. 打ち合わせ協議 ................................................... 68
IX. 地元協議会対応 ..................................................... 69
1
I. 実証調査委託業務の概要
実証調査委託業務の背景
福島県内において発生し、仮保管されている放射性セシウム(以降 Cs と称す)汚染廃棄
物のうち、10 万 Bq/kg を超えるものや汚染土壌については、中間貯蔵施設に集約して、一
定期間安定的に貯蔵及び管理を行なった後、最終処分することとされている。最終処分の
方針については、放射性 Cs の効果的な分離等の技術の発展によるところが大きく、そのた
めの技術の開発・実証が重要な課題となっている。
実証調査委託業務の目的
本業務は飯舘村蕨平地区において、焼却灰及び汚染土壌に含まれる放射性 Cs を分離
し、再生利用可能なレベルまで放射性 Cs 濃度を低減させ、工事資材(盛土材、路盤材及び
コンクリート用骨材等)として有効活用することが可能となる生成物を得るための新技術を実
証するものである。
仕様書における実証調査委託業務の基本条件及び内容
業務の基本条件
仮設資材化施設の規模
10t/日程度の処理能力を有する仮設資材化施設を用いる。
処理対象物
焼却灰は同一敷地内に併設された仮設焼却炉から発生したもの、汚染土壌は飯舘村内
の除染作業で発生した除去土壌とし、合計 800t程度を処理する。ただし、処理の進捗状況
に応じた変動はあり得るものとする。
生成物の品質
発生する生成物が工事資材として利用可能となるよう、以下の条件を満足するものとする。
① 道路や河川事業等の屋外での公共事業への利用を想定し、生成物の放射性 Cs
濃度は再生利用可能なレベルとすること。
② 工事資材の代替として利用可能である旨を証明すること。
③ 品質のばらつきがないこと等の条件を満足すること。
2
業務内容
処理対象物の収集・運搬
処理対象物は、飛散、流出、漏出しないよう容器に入れるなど、放射性物質汚染対処特
措法等の各種法令に基づき、保管(発生)場所から仮設資材化施設まで収集・運搬し、保管
する。
仮設資材化施設の運転管理、モニタリング
放射性物質汚染対処特別措置法、電離放射線障害防止規則等の各種法令を遵守した
運転管理計画を作成し、仮設資材化施設の実証調査を行う。実証調査時は、運転管理デ
ータを適切に計測するとともに周辺環境のモニタリングを実施し、生成物及び放射性 Cs が
高濃度に濃縮された副産物の性状や仮設資材化施設の性能、安全性等を確認する。運転
計画を維持するうえで処理対象物に前処理等が必要となる場合には、適切な対応を行う。
生成物及び副産物の保管管理
発生した生成物は、場内の生成物仮設保管施設まで運搬し、品質を損なわないよう適切
に保管管理する。また、副産物は、放射性物質汚染対処特別措置法や電離放射線障害防
止規則等の法令に基づき、適切な容器に封入した上で場内の副産物仮設保管施設まで運
搬し、飛散や流出が生じないよう適切に保管管理する。
生成物の品質調査及び工事資材への活用検討
生成物が、工事資材として活用可能であることを品質調査や試験施工等によって証明す
るとともに、生成物の有効活用に向けて関係諸機関との調整のための資料作成等を行う。
仮設資材化施設の性能、放射性物質の挙動、コスト等の検証
実証調査から得られた様々な結果に基づき、仮設資材化施設の性能、放射性 Cs の挙動、
コスト等を検証し、仮設資材化施設の実用性を評価する。
アドバイザリー委員会による評価
(1)から(5)の各業務を遂行するに当たり、その妥当性を評価するため、外部の有識者な
どを構成員とする非公開のアドバイザリー委員会を、平成 28 年度業務で1回、平成 29 年度
業務で 2 回程度開催する。なお、アドバイザリー委員会で得られた客観的な評価は、可能な
限り本業務に反映させる。
打合せ協議
環境省担当官と業務着手時、中間時、業務完了前に行うものとし、打合せ後、受託者は
打合せ議事録を環境省担当官に提出する。
報告書とりまとめ
各年度業務における成果を整理し、報告書としてとりまとめる。
地元協議会対応
飯舘村蕨平地区可燃性廃棄物減容化事業に係る協議会等への出席及び資料作成を行
う。
業務期間
平成 28 年 11 月 1 日~平成 30 年 3 月 31 日
3
実証調査委託業務の体制
図 I.4-1 に示す体制及び役割分担により業務を行なった。
図 I.4-1 業務実施体制及び役割分担
業務内容 日揮(株)
太平洋
セメント(株)
太平洋
エンジニア
リング(株)
日本
下水道
事業団
農業・食品産業技術
総合研究機構
東北農業研究センター
農業・食品産業技術
総合研究機構
中央農業研究センター
全体総括・プロジェクト管理 ◎ ― ― ― ― ―
(1)処理対象物の収集・運搬・保管 - ◎ ― ― ― ―
(2)仮設資材化施設の運転管理、モニタリング ○ ◎ ○ アドバイス アドバイス アドバイス
(3)生成物及び副産物の保管管理 ○ ◎ ― ― ― ―
(4)生成物の品質調査及び工事資材への活用
検討
○ ◎ ― アドバイス
○
生成物の品質調査及び
工事資材への活用検討
○
有機系除染物の燃料
利用技術検討
(5)仮設資材化施設の性能、放射性セシウム挙
動、コスト等の検証
○ ◎ ○ ― ― ―
(6)アドバイザリー委員会による評価 ○ ○ ○ ― ○ ○
(7)打ち合わせ関連 ◎ ○ ○
◎
運営・取り纏め
― ―
(8)報告書とりまとめ ◎ ○ ○
(9)地元協議会対応 ◎ ○ ○
環境省
日揮(株)
太平洋
セメント(株)
太平洋
エンジニア
リング(株)
日本
下水道
事業団
農業・食品産業技術
総合研究機構
東北農業研究センター
農業・食品産業技術
総合研究機構
中央農業研究センター
◎は主担当、○は担当を意味する
代表企業 : 日揮㈱
業務実施体制
各者役割分担
4
II. 処理対象物の収集・運搬・保管
処理対象物の収集・運搬
除去土壌
Phase-1 では小宮仮置場に保管中の小宮地区、草野地区、長泥地区の農地除染で発生
した除去土壌を収集・運搬した。Phase-2 においては蕨平仮置場に保管中の宅地除染で発
生した除去土壌を収集・運搬した。
運搬は、『除去土壌の収集・運搬に関するガイドライン(平成 25 年 5 月 第 2 版)』及び
『特定廃棄物関係ガイドライン(平成 25 年 3 月 第 2 版)』に従い、要件として「運搬車両の
表面から1m離れた位置での最大空間線量率が 100μSv/h を超えないこと」を確認し、あわ
せて搬送対象フレキシブルコンテナ(以下コンテナバッグと称す)の表面線量率の測定を行
なった。表 II.1-1 に Phase-2 で運搬した除去土壌の量を示す。受入れた除去土壌は 92 袋
(125.9t)であった。
表 II.1-1 除去土壌の運搬量
焼却灰
焼却灰は、Phase1 と同様に、隣接する仮設焼却炉から発生した流動床飛灰及びストーカ
主灰を収集・運搬した。運搬は、除去土壌と同様の方法で実施した。表 II.1-2 に運搬した
焼却灰の量を示す。Phase-2 に隣接する仮設焼却炉から受入れた焼却灰は 132 袋(144.8t)
であった。内訳は、流動床飛灰が 102 袋(106.4t)、ストーカ主灰が 30 袋(38.4t)であった。
表 II.1-2 焼却灰の運搬量
運搬日
コンテナバッグ数
(袋)
重量
(kg・湿)
平成 28 年度
1 回目 平成 28 年 11 月 03 日 12 16,835
2 回目 平成 28 年 11 月 29 日 16 22,526
3 回目 平成 28 年 12 月 19 日 8 10,437
4 回目 平成 29 年 03 月 29 日、30 日 24 32,704
平成 29 年度 5 回目 平成 29 年 06 月 02 日、05 日 32 43,354
合計 92 125,855
運搬日
コンテナバッグ数
(袋)
重量
(湿・kg)
灰種
平成28年度
1 回目 平成 28 年 11 月 04 日 12 11,460 流動床飛灰
2 回目 平成 28 年 12 月 03 日 15 16,372 流動床飛灰
3 回目 平成 28 年 12 月 22 日 10 10,069 流動床飛灰
平成29年度
1 回目 平成 29 年 04 月 20 日 35 34,299 流動床飛灰
2 回目 平成 29 年 07 月 12 日
8 8,868 流動床飛灰
10 11,486 ストーカ主灰
3 回目 平成 29 年 09 月 12 日 7 7,463 流動床飛灰
4 回目 平成 29 年 09 月 20 日 7 8,642 ストーカ主灰
5 回目 平成 29 年 11 月 13 日 13 18,253 ストーカ主灰
6 回目 平成 29 年 12 月 15 日 15 17,911 流動床飛灰
合計 132 144,823
5
処理対象物の性状
除去土壌
蕨平仮置場に保管してある除去土壌を運搬する際、事前にコンテナバッグ表層物を確認
し、コンテナバッグ側面の触感で、大石・草木類等夾雑物の多いコンテナバッグや水分が多
いコンテナバッグは排除した。さらに前処理設備棟内で輸送機等でのトラブルを回避するた
め、岩石や草木類の伐根は排除した。事前に除去した夾雑物の割合は、草木類が全体の
0.06%、岩石類が 0.1%となった。
コンテナバッグごとに除去土壌を採取し、水分量、放射性 Cs 濃度及び化学組成を測定し
た。表 II.2-1 にその結果を示す。さらに Phase-1 で使用した小宮仮置場のそれもあわせて
示す。
水分量は Phase-1 と Phase-2 で大差なかった。放射性 Cs 濃度は Phase-1 では長泥地
区の除去土壌が高く、約 60,000Bq/kg-湿の除去土壌も存在したが、Phase-2 で使用した除
去土壌は放射性 Cs 濃度がすべて 30,000Bq/kg-湿以下で、平均値も Phase-1 より低かっ
た。
化学組成は SiO2 量及び強熱減量はコンテナバッグごとに差があったものの、他の成分に
関してはコンテナバッグごとの差は小さかった。また、Phase-1 で使用した除去土壌と比べて、
SiO2 量、Na2O 量、K2O 量が高く、Al2O3 量、Fe2O3 量、CaO 量が少なかったが、反応促進剤
の混合量が極端に変動するほどの差ではないと判断された。
表 II.2-1 受入除去土壌の水分量、放射性 Cs 濃度及び化学組成
水分量
放射性
Cs濃度*
化学組成 強熱
減量SiO2 Al2O3 Fe2O3 CaO MgO SO3 Na2O K2O P2O5 Cl
mass% Bq/kg 湿 mass%
Phase-2
平成
29 年度
平均 33.8 11,600 57.8 15.2 3.9 1.5 0.9 0.1 1.4 2.5 0.4 0.0 15.9
最大 44.5 28,300 63.8 17.5 6.1 2.0 1.1 0.2 2.1 3.2 0.5 0.0 19.9
最小 24.3 7,800 53.3 13.5 3.0 1.0 0.6 0.0 0.7 2.0 0.1 0.0 10.5
標準偏差 5.8 3,700 2.3 0.9 0.7 0.2 0.1 0.0 0.3 0.3 0.1 0.0 2.2
平成
28 年度
下期
平均 32.9 12,700 58.1 14.4 3.8 1.6 0.9 0.1 1.5 2.5 0.4 0.0 16.2
最大 44.4 24,000 64.6 16.2 4.8 2.6 1.2 0.4 2.2 3.1 0.7 0.0 36.2
最小 15.6 2,640 46.4 6.8 3.2 0.9 0.7 0.0 1.1 2.0 0.1 0.0 9.4
標準偏差 7.3 4,800 3.5 1.5 0.3 0.3 0.1 0.1 0.2 0.3 0.1 0.0 4.6
Phase-1
平成
28 年度
上期
平均 32.9 15,600 54.2 16.8 5.6 2.3 2.1 0.2 1.3 1.8 0.3 0.0 14.6
最大 46.9 59,900 58.7 18.4 7.2 3.8 4.1 0.4 1.7 2.4 0.4 0.0 19.9
最小 15.1 1,290 48.6 15.1 4.7 1.7 1.4 0.2 0.9 1.3 0.2 0.0 10.2
標準偏差 5.7 8,370 2.7 0.6 0.5 0.5 0.6 0.1 0.2 0.3 0.0 0.0 2.3
*放射性 Cs 濃度値は 2 桁のものは 2 桁、3 桁のものは上から 2 桁、4 桁以上のものは上から 3 桁にしている。
6
焼却灰
仮設焼却炉で受入れた焼却灰はコンテナバッグ内で硬化していたため、新設された前処
理設備棟内に設置した破砕設備等を用いて破砕した。さらにストーカ主灰に含まれた釘等の
金属が原料粉砕機の定量供給機に詰まるトラブルが頻発したため、乾燥機出口に磁選機を
設置した。この結果、焼却灰乾燥・粉砕の際のトラブルは大幅に減少した。しかし、磁選機で
除去できなかった SUS(ステンレス)等の金属も存在した。これらが原料粉砕機内で噛み込み
等悪影響を与える場合があったことから、実用機では SUS やアルミニウムなどを除去できる選
別機が必要と考えられる。
受入れた焼却灰はコンテナバッグごとに水分量を測定した。さらにロットごとに焼却灰の原
灰(水及びキレート剤を添加していない焼却灰)を入手し、放射性 Cs 濃度及び化学組成を
測定した。表 II.2-2 に流動床飛灰、表 II.2-3 にストーカ主灰の水分量、放射性 Cs 濃度
及び化学組成をそれぞれ示す。Phase-1 の焼却灰のそれもあわせて示す。Phase-1 では水
分量の多い灰により輸送系統での排出不良を生じる場合があったが、Phase-2 では水分量
25%を超えるような焼却灰はなかった。その結果ホッパ内への付着等、排出不良を生じるケ
ースはなかった。流動床飛灰とストーカ主灰を比べると、流動床飛灰のほうが水分量は多か
った。
Phase-2 では放射性 Cs 濃度の高い流動床飛灰を用いた実証試験を行なった関係もあり、
Phase-1 より放射性 Cs 濃度の平均値は高くなった。
化学組成は流動床飛灰、ストーカ主灰いずれも、SiO2 量、CaO 量、P2O5 量、Cl 量等に若
干の増減はあり、それに応じて、反応促進剤の添加量を調整した。
流動床飛灰とストーカ主灰を比較すると流動床飛灰のほうが、SiO2 量が少なく、Al2O3 量が
多かった。そのため、カルシウム源、リン源、塩素源の添加のみでは、溶融しやすさに影響を
及ぼすケイ酸率〔SiO2/(Al2O3+Fe2O3)、以降 SM と称す〕が流動床飛灰使用時のほうが低く
なる。そこで、ストーカ主灰と SM が同等になるように、流動床飛灰使用時にシリカ源を添加し
た。CaO 量、Cl 量は流動床飛灰のほうがストーカ主灰よりも高かった。
表 II.2-2 流動床飛灰の水分量、放射性 Cs 濃度及び化学組成
水分
量
放射性
Cs濃度
化学組成
SiO2 Al2O3 Fe2O3 CaO MgO SO3 Na2O K2O P2O5 Cl
mass% Bq/kg mass%
Phase-2
平成
29 年度
平均 13.8 78,700 51.0 16.2 5.7 8.6 1.7 1.2 1.3 3.2 0.6 2.2
最大 16.1 130,000 65.2 19.2 6.6 17.4 2.6 4.3 1.8 5.0 0.7 5.2
最小 11.3 29,000 38.3 12.2 4.0 4.1 1.1 0.5 0.7 2.5 0.4 0.3
標準偏差 1.0 36,300 6.2 1.8 0.6 2.9 0.4 0.6 0.3 0.7 1.6 0.6
平成
28 年度
下期
平均 14.9 35,800 53.3 13.6 5.4 9.0 1.7 1.4 1.3 3.1 2.9 1.1
最大 22.5 102,000 60.7 16.0 6.1 12.0 2.0 2.2 1.7 4.0 5.2 2.6
最小 11.3 11,300 48.2 10.2 3.6 6.6 1.3 0.7 1.1 2.5 0.9 0.2
標準偏差 2.5 29,400 2.8 1.6 0.7 1.4 0.2 0.4 0.2 0.5 1.3 0.8
Phase-1
平成
28 年度
上期
平均 15.2 23,600 52.4 13.8 5.3 9.7 1.7 1.4 1.3 3.1 3.4 0.9
最大 28.0 59,000 65.8 17.2 6.6 18.7 2.3 3.6 2.2 3.9 7.2 6.7
最小 8.8 8,010 36.6 10.9 4.2 3.4 1.0 0.2 1.0 2.3 0.1 0.1
標準偏差 4.2 5.4 1.8 0.6 2.9 0.3 0.7 0.2 0.4 1.8 1.2
7
表 II.2-3 ストーカ主灰の水分量、放射性 Cs 濃度及び化学組成
水分
量
放射性
Cs濃度
化学組成
SiO2 Al2O3 Fe2O3 CaO MgO SO3 Na2O K2O P2O5 Cl
mass% Bq/kg mass%
Phase-2
平成
29 年度
平均 6.9 37,700 59.5 14.0 5.5 4.4 1.7 0.0 1.2 3.2 3.8 0.0
最大 10.5 56,000 61.6 14.7 6.2 5.0 2.0 0.2 1.3 3.5 5.6 0.0
最小 5.6 20,000 53.5 13.2 4.7 4.2 1.2 0.0 1.0 2.9 1.4 0.0
標準偏差 1.8 6,440 2.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0.1 0.1 0.2 0.9 0.0
Phase-1
平成
28 年度
上期
平均 3.5 29,700 58.1 14.4 6.9 5.4 1.8 0.2 1.4 3.1 3.2 0.0
最大 - 48,000 60.2 15.0 7.4 6.0 2.0 0.2 1.4 3.5 4.4 0.1
最小 - 12,400 55.6 13.6 6.1 4.5 1.5 0.1 1.3 2.6 1.3 0.0
標準偏差 - 14,700 2.0 0.6 0.6 0.6 0.2 0.1 0.1 0.4 1.3 0.0
8
III. 仮設資材化施設の運転管理、モニタリング
運転管理体制と運転計画
運転管理体制
運転管理及び実証試験の実施体制を図 III.1-1 に示す。
資材化施設運転担当では、休日対応のためにオペレータ、分析員、重機オペレータを各
1 名増員し、23 名体制となった。また、平成 29 年度下期より、新たに生成物を利用したイン
ターロッキングブロック(以下、IL ブロックと記載)の製造を開始した。この対応として、IL ブロッ
ク製造担当として 8 名増員し対応した。その結果、総勢 46 名体制となった。
図 III.1-1 施設の運転管理体制図
運転計画
Phase-2 では 15 回(RUN12~RUN26)、生成物規格外品(処理対象物を資材化したが Cs
濃度が 100Bq/kg 以下とならなかったもの)の再処理を 2 回(RUNⅢ、Ⅳ)計画した。RUN13
までの運転は、前処理設備(原料乾燥+原料調合)を 5 日間連続、資材化設備を 7 日間連
続とし、これを1サイクル(RUN)としていた。しかし、施設の立上げ、立下げの頻度が増加する
ことにより規格外品の発生量が増加するという課題が生じた。そのため、RUN14 以降は、1 回
当たりの運転(RUN)で調合ブレンダ 3~4 基分の調合原料を製造(17.5t/基)し、資材化実証
運転を行なった。
また、昨年度の課題のひとつであった、“施設の立上げ・立下げ時に所定の熱負荷量に達
していない原料が排出され、輸送系統を汚染する”ことに対し、立上げ・立下げに使用する原
料を放射性 Cs 濃度の低い規格外品にすることで、輸送系統の汚染を防止し、新たな規格
外品の発生を抑制することとした。
総勢:45名
:2名
:2名
:3名
:1名 :1名
:5名 :2名
:5名 :5名
:8名
:4名
平成30年2月15日現在 
施設責任者(1名)
施設責任者代理(1名)
運転管理(7名)放射線管理責任者(1名) 業務担当(1名)
放射線管理者(4名)
係長
オペレータ
分析員
運転
設備
技術
運転補助員
重機オペレータ
ILブロック製造担当(8名)
職長
粒度調整
ブロック製造
資材化施設運転担当(23名)
総勢:46 名
9
なお、資材化施設は 24 時間連続運転として、運転担当及び放射線管理要員の勤務形
態は 4 直 3 交替で実証試験を実施した。
平成 29 年度下期より運転を開始した IL ブロック製造施設は、常駐勤務帯で 6 日/週の稼
動、製造目標は 240 個/日とした。
安全管理体制
施設の安全管理組織
当該施設は労働安全衛生法第 12 条の(2)により常時 10 人以上 50 人未満の労働者を使
用する事業所に相当し、労働基準監督署への報告義務は無いが、「安全衛生推進者」また
は「衛生推進者」を選任する事業所に該当するため「衛生推進者」を選任し、安全管理組織
を編成して安全管理を徹底した。
なお、平成 28 年度 Phase-2 では施設運営業務の一部を請け負っている請負会社代表
者からの推進委員は1名であったが、IL ブロック施設の稼動を開始したことから、推進委員 2
名とした。
緊急連絡体制
業務に係る事故や災害発生時の緊急連絡に速やかに対応するため、緊急時連絡体制を
構築した。これを作業従事者に徹底するため、全ての作業従事者の入構教育時に配布説
明すると同時に緊急時対応マニュアルに掲載し、施設内各所に掲示した。
緊急時報告内容とそのタイミング
緊急時連絡体制に従い、緊急事象ごとに適切なタイミングで報告連絡を行うこととした。
操作及び作業標準とチェックリストの整備
前処理設備の運用開始に伴い、平成 28 年度に作成した作業標準書とチェックリストに加
え、下記に示す作業標準書を作成した上で運用した。
資材化炉内耐火物張替え作業における放射線管理
平成 29 年 8 月末に耐火物の張替え工事を実施したが、これに先立ち放射線管理要綱を
作成し、作業者の放射線障害防止と環境保全に対応した。
IL ブロック製造設備作業標準書
IL ブロック製造施設の運用開始に合わせ作業標準書を作成した。
車両系荷役運搬機械作業計画書
IL ブロック製造施設運用に際し、バックホウでの生成物の荷卸、フォークリフトでの移動作
業が発生することとなり、事前に『車両系荷役運搬機械作業計画書』を作成し作業に取り掛
かることとした。
10
実証運転
資材化実証試験
Phase-2 では RUN12~RUN26 の計 15 回の資材化実証試験を実施し、除去土壌 127t、
流動床飛灰 119t、ストーカ主灰 50t、計 296t処理した。さらに RUNⅢ、RUNⅣにおいては実
証試験中に生じた 100Bq/kg を超過する生成物(規格外品と称す)の再処理を行なった。生
成物(良品)は 719.1t、副産物は 32.0t発生した。
Phase-2 全体の運転概要を表 III.3-1 に示す。RUN ごとの運転概要を表 III.3-2 に示
す。
表 III.3-1 Phase-2 運転概要
期間 運転概要 生じた課題
平成 28 年
4 月~10 月
(Phase-1、RUN1
~11)
・除去土壌 100%処理時においては安定して 100Bq/kg 以
下となったが、流動床飛灰 100%処理時はコーチング付着
により、安定運転できない状況となった。除去土壌と流動床
飛灰の混合品の処理においても良品率は低い状態であっ
た。
・ 焼 却 灰 使 用 時 の 安
定運転方法の検討。
平成 28 年
11 月~12 月
(RUN12~14)
・除去土壌と流動床飛灰の混合原料を用いて、最適運転を
試みたが、装置トラブル(調合ブレンダからの曳出不良等)
により安定運転ができなかった。
・ 焼 却 灰 使 用 時 の 安
定運転方法の検討。
・設備修繕。
平成 29 年
1 月~3 月
(RUN15~17)
・電気炉試験の結果に基づき原料の CaO/SiO2(以降 C/S と
称す)を上げて(C/S=3.2)運転した。その結果、土壌だけで
なく流動床飛灰 100%においても高い良品率が得られた。
・立上げ・立下げ時に発生する規格外品量を低減し、かつ長
期運転の影響を確認するために設備改造を実施した。その
結果 1RUN あたりの原料量が増加した(36t⇒72t)。
・前処理設備(土壌改質、焼却灰破砕)が稼働した(RUN17
以降)。その結果、処理対象物の乾燥・粉砕時のトラブルが
大幅に減少した。
・ストーカ主 灰 を 用 い
た運転では、輸送系
トラブル等が生じ、安
定 運 転 で き て い な
い。
・C/S を上 げたことに
伴 い 生 成 物 中 に 多
量の未反応石 灰(f-
CaO と称す)が残留。
平成 29 年
4 月~11 月
(RUN18~23)
・調合原料送入スクリューコンベアの修繕によりストーカ主灰
においても安定供給できるようになった(RUN23 以降)。
・最適運転方法を検討した結果、コーチングが成長した際に
も温度 1300℃以上を維持することにより、コーチングがある
程度の厚さになると、バーナ炎に炙られるようになり軟化し
て、自然落下。その結果、焼却灰使用時にも生成物を安定
して 100Bq/kg 以下にできることを確認した。
・C/S を徐々に下げた運転を実施した。その結果、安定して
生成物を 100Bq/kg 以下にでき、かつ生成物のf-CaO を
1%以下にできる条件は以下のとおりとなった。
除去土壌 C/S=2.1
流動床飛灰 C/S=2.5
ストーカ主灰 C/S=2.7
・放射性 Cs 濃度 10 万 Bq/kg 以上の焼却灰においても、生
成 物 を安 定 して 100Bq/kg 以 下 にできることを実 証 した
(RUN22)。
特になし。
平成 28 年 11 月
~
平成 29 年 1 月
(RUN24~26)
・総合評価運転
除去土壌 100%(RUN24)
C/S=2.1 で良品率 99%、f-CaO 量 0.5%
ストーカ主灰 100%(RUN25)
C/S=2.9 で良品率 99%、f-CaO 量 1.3%
流動床飛灰 100%(RUN26)
C/S=2.6 で良品率 95%、f-CaO 量 0.5%
特になし。
11
表 III.3-2 RUN ごとの運転概要
12
前処理設備棟内での作業状況及びその効果
Phase-1 において、除去土壌及び焼却灰の前処理工程時に輸送系統のトラブルが生じ、
運転が困難になるケースが頻発した。そこで新たに前処理設備棟を新設し、「振動篩設備
(波動式スクリーン)」と「破砕設備(二軸ロール式解砕機)」を設置した。さらに重機(バック
ホウ)を用いて除去土壌の改質や焼却灰を破砕するスペースを設けた。写真 III.3-1 に前
処理設備棟内の状況を示す。各設備は平成 29 年 2 月末(RUN17 以降)より稼動した。
写真 III.3-1 前処理設備棟内の状況
除去土壌の改質
Phase-1 において除去土壌の前処理工程時、水分が多い場合にホッパ等に付着し、排
出不良が生じるケースや、砕石や伐根等の夾雑物による詰まりや噛み込みによる輸送系の
トラブルが頻発した。そこで、前処理設備棟内で異物除去及び土壌の改質を実施した。
作業内容を以下に示す。
① 土壌を改質エリアに搬入し、除去土壌を広げた。
② 人海にて夾雑物を除去した。
③ バックホウにて振動篩に投入し篩い分けにより、人海で除去できなかった伐根等を除去
した。
④ 再び改質エリアに広げた後、改質材(主に規格外品)を投入し、バックホウで均一に混合
することにより水分量を 25%以下にした。
⑤ 十分に混合した後、コンテナバッグに投入した。
焼却灰の破砕
Phase-1 において隣接する仮設焼却炉から提供された焼却灰がコンテナバッグ内で硬化
しており、重機や人力での破砕作業が生じ、多大な労力を要した。そこで、硬化した焼却灰
を破砕する設備を導入し、前処理設備棟内で硬化した焼却灰の破砕を行なった。
13
作業内容を以下に示す。
① 焼却灰を破砕エリアに搬入した。
② 硬化した焼却灰はコンテナバッグごとバックホウを用いて破砕した。
③ ある程度破砕された状態で破袋したコンテナバッグから焼却灰を取り出した。
④ 焼却灰をバックホウで可能な限り破砕した。
⑤ 破砕できずに大塊として残った焼却灰を破砕機に投入して破砕した。
⑥ 破砕した焼却灰をコンテナバッグに投入した。
いずれにおいても、前処理設備稼働後、処理対象物の乾燥工程において輸送系のトラ
ブル(ホッパへの付着、詰まり等)の頻度が大幅に減少し、安定して乾燥できるようになった。
その結果、前処理設備導入前は運転補助員が常時監視していたのに対し、前処理設備導
入後は定期的に監視するのみとなり、監視作業に係る負担も大幅に軽減された。
電気炉試験による検証
Phase-2 においては、資材化実証試験と並行して電気炉試験も実施し、原料調合条件
が Cs の除去特性に及ぼす影響等について評価を行なった。
C/S の影響
(a) Cs 除去特性
試験条件
 処理対象物 流動床飛灰(放射性 Cs 濃度 27,200Bq/kg)
 Cl/K=1.1
 保持時間 1時間
 C/S 及び熱処理温度を変化
結果
 C/S が 2.0 以上では熱処理温度 1300℃で生成物の放射性 Cs 濃度が 100Bq/kg 程
度、1350℃で 50Bq/kg 以下となり、C/S による顕著な差は認められなかった(図 III.
3-1)。
 低 CaO 領域では、C/S=1.8 及び C/S=2.0 は大差ない挙動であった(図 III.3-2)。
 C/S=1.5 以下の場合、生成物が溶融しない範囲で温度を上げた場合には、温度の増加
に伴い生成物中の放射性 Cs 濃度が徐々に低下したが、生成物が溶融する温度になる
と生成物中の放射性 Cs 濃度は高くなり、生成物を 100Bq/kg 以下にできなかった(図
III.3-2)。
 カルシウム源、塩素源無添加の場合には温度を上げても放射性 Cs は揮発せず、熱処
理前の原料とほぼ同程度の放射性 Cs 濃度となった。
14
図 III.3-1 原料の C/S と生成物中の放射性 Cs 濃度の関係
図 III.3-2 低 C/S 領域での温度と生成物中の放射性 Cs 濃度の関係
15
(b) 耐火物との付着
試験条件
C/S を変化させて作製したペレットをアルミナ質レンガの上に載せて、種々の温度で1時
間熱処理した際のアルミナ質レンガとの付着性を評価
結果
 1300℃で熱処理後に取り出した場合には、いずれのペレットも耐火物面から容易に剥が
せた。
 1350℃では C/S=2.5 の試料では耐火物面に付着して容易に剥がせなかったのに対し、
C/S=3.0、3.5 の試料では耐火物面との間に跡は残るものの、耐火物面から容易に剥
がすことができた(写真 III.3-2)。
 資材化実証試験においては C/S を上げることにより耐火物に付着しにくくなり、安定運
転しやすくなると推察された。
写真 III.3-2 1350℃で熱処理後のアルミナ質レンガとペレットの付着状況
Cl/K の影響
試験条件
 処理対象物 流動床飛灰(放射性 Cs 濃度 27,200Bq/kg)
 C/S=2.5
 保持時間 1時間
 Cl/K 及び熱処理温度を変化
結果
 カリウムに対して塩素が少なくなると、放射性 Cs 除去率は低下し、Cl/K=0.2 では 1350℃
まで温度を上げても生成物の放射性 Cs 濃度は 1,000Bq/kg 以上となった(図 III.3-3)。
 Cl/K を 1.1 より多くしても生成物中の放射性 Cs 濃度は大差ない結果となった。
 原料の塩素量を多くすることは溶融性や生成物の品質面で好ましくないことから、原料
Cl/K は 1.1 前後が適切と判断した。
16
図 III.3-3 原料の Cl/K(モル比)と生成物中の Cs の関係
ストーカ主灰・飛灰混合原料の評価
目的
一般的にストーカ飛灰は溶融しやすいこと、また塩素量が多く生成物中に塩素が残留し、
有効利用するための用途が限定されることが懸念されたため、資材化実証試験においては
ストーカ飛灰を用いた試験は実施しなかった。そこで、電気炉試験でストーカ飛灰 100%及
びストーカ主灰に対してストーカ飛灰を混合した原料の試験を実施し、放射性 Cs 及び塩素
の除去特性を評価した。
試験方法
 処理対象物 ストーカ主灰とストーカ飛灰(表 III.3-3)を種々の割合で混合
 C/S=2.2
 熱処理温度 1300℃、1350℃
 保持時間 1時間
結果
 ストーカ飛灰の割合を増加させても生成物中の放射性 Cs 濃度に大きな変化はなく、スト
ーカ飛灰 100%でも熱処理温度 1350℃で生成物を 100Bq/kg 以下となった(図 III.
3-4)。
 ストーカ飛灰 100%では熱処理温度 1350℃でも生成物中に 1000mg/kg 程度塩素が残
留する結果となり、塩素量が規定されている用途にでは使用できない可能性がある(図
III.3-5)。
表 III.3-3 評価に用いたストーカ主灰・飛灰の特性
放射性
Cs 濃度
粒度分布 化学組成(XRF)
強熱
減量100
μmR
32
μmR
SiO2 Al2O3 Fe2O3 CaO MgO SO3 Na2O K2O P2O5 Cl
Bq/kg mass% mass%
ストーカ主灰 42,000 20.3 49.0 59.6 13.5 5.15 4.7 1.80 0.10 1.59 3.11 5.09 0.00 4.49
ストーカ飛灰 141,000 14.6 51.4 43.5 15.1 4.90 15.1 1.41 3.38 1.42 2.42 1.25 4.54 5.80
>99.9
99.8
99.3
96.0
99.8 99.8
1
10
100
1000
10000
0 0.5 1 1.5 2
生成物中の放射性Cs濃度
(Bq/kg)
Cl/K(モル比)
1275℃
1300℃
1325℃
1350℃
17
図 III.3-4 ストーカ飛灰の割合と生成物中の放射性 Cs 濃度
図 III.3-5 ストーカ飛灰の割合と生成物中の塩素濃度
放射性 Cs 濃度の影響
試験方法
 資材化実証試験に用いた放射性 Cs 濃度の異なる調合原料使用(C/S=3.2、2.7)
 熱処理温度 1300℃、1350℃
 保持時間 1時間
結果
 熱処理温度 1300℃では処理対象物中の放射性 Cs 濃度が高いほど、生成物中の放射
性 Cs 濃度が高くなる傾向にあった(図 III.3-6)。
 熱処理温度 1350℃では処理対象物中の放射性 Cs 濃度と生成物中の放射性 Cs 濃度
に明確な相関はなく、生成物中の放射性 Cs 濃度はいずれも 100Bq/kg 以下となった(図
III.3-6)。
18
図 III.3-6 処理対象物中の放射性 Cs 濃度と生成物中の放射性 Cs 濃度の関係
排ガスモニタリング
前処理施設運転時/資材化施設運転時の各々について最終排ガス(No.2 ろ過式集塵
機出口排ガス)中の放射性 Cs 濃度、ばいじん濃度、硫黄酸化物濃度、窒素酸化物濃度、
塩化水素濃度及び No.1 ろ過式集塵機出口のばいじん濃度をモニタリング装置で連続監
視した。さらに、資材化施設運転時に「放射能濃度等測定方法ガイドライン(平成 25 年 3 月
第 2 版)」に準拠した方法で最終排ガス中の放射性 Cs 濃度と大気汚染防止法に規定のば
いじん濃度、硫黄酸化物濃度、窒素酸化物濃度、塩化水素濃度を月に 1 回測定した。ま
た、除去土壌・焼却灰乾燥時の排ガス中の放射性 Cs 濃度、ばいじん濃度、硫黄酸化物濃
度、窒素酸化物濃度及び設備棟換気ファン出口の放射性濃度、ばいじん濃度も定期的に
測定した。さらに、前処理設備(破砕・篩い分け設備)が稼動した平成 29 年 2 月以降、前
処理設備棟換気ファン出口の放射性 Cs 濃度、ばいじん濃度も測定した。
各々の排ガス中の放射性 Cs 濃度はいずれも検出下限値未満となった。ばいじん濃度、
硫黄酸化物濃度、窒素酸化物濃度、塩化水素濃度も管理基準値をクリアした。
地下水等の放射性セシウム濃度
周辺環境への影響を確認する目的で、副産物置場上流部及び下流部にサンプリング井
戸を掘り、「放射能濃度等測定方法ガイドライン(平成 25 年 3 月第 2 版)」に準拠して放射
性 Cs 濃度を測定し、地下水等への影響を確認した。さらに、月に一度降雨の際に、資材
化施設(設備棟周囲)と生成物置場の U 字溝より採水し、放射性 Cs 濃度を測定した。サン
プリングポイントを図 III.5-1 に示す。資材化施設(設備棟周囲)の雨水は 3 箇所、生成物
置場の雨水は 2 箇所から採水し、まとめたものを測定した。地下水及び雨水共に放射性 Cs
濃度は検出限界値未満であった。
19
図 III.5-1 サンプリングポイント
施設周辺への影響
施設敷地内空間線量率
施設周辺への影響を評価するため、施設敷境界空間線量 4 箇所及び生成物置場南側
境界 1 箇所の計 5 箇所の空間線量率を 1 回/日測定した。図 III.6-1 施設内空間線量
率測定ポイントを示す。図 III.6-2 に施設周辺境界空間線量率の推移を、図 III.6-3 に
生成物置場南側境界空間線量率の推移を示す。なお、処理対象物である除去土壌は、平
成 28 年 4 月 7 日に受入れを開始し副産物置場に保管した。また、除去土壌を使用した実
証試験の開始は平成 28 年 4 月 26 日から、生成物置場の運用開始は平成 28 年 5 月 3
日から、副産物の副産物置場への持ち込みは平成 28 年 5 月 11 日からである。季節や天
候等の影響により変動はあるものの、資材化実証試験開始後も施設周辺境界に上昇傾向
は認められなかった。
⑤生成物置場南側の線量率推移を図 III.6-3 に示す。この測定点は他の測定点に比
べて高い値を示した。この原因は施設稼働前から高線量率であることから判断して、隣接す
る山林が除染されていないため、その線源の影響を受けていることによるものと考えられた。
●雨水:資材化施設
●雨水:生成物置場
●地下水:資材化施設
20
図 III.6-1 施設内空間線量率測定ポイント
図 III.6-2 施設周辺境界空間線量率の推移
図 III.6-3 ⑤生成物置場南側境界空間線量率の推移
21
敷地境界での騒音・振動レベル
施設稼動による騒音・振動の施設周辺への影響を確認するため、3 ヶ月ごとに、図 III.
6-4 に示す 4 箇所で、振動及び騒音測定を行なった。当該施設は特に法令に拘束されて
いないことから、測定時間は、福島県生活環境の保全等に関する条例施行規則の「時間
区分」に従った。騒音の測定結果はすべての敷地境界で騒音規制法の第 3 種区域の規制
値を下回った。振動の評価値も、すべての敷地境界で規制値を下回った。
図 III.6-4 騒音・振動測定ポイント
22
作業従事者の安全性
外部被ばく線量
外部被ばく線量はガラスバッチ及び電子線量計により測定した。平成 28 年度及び 29 年
度における作業従事者の積算被ばく線量の一例を図 III.6-5 に示す。作業従事者の外
部被ばく線量は、電離放射線障害防止規則(電離則)の定める年限度である 20mSv と比較
した場合、そのラインを大きく下回っており、外部被ばくに関する安全性は十分に確保され
ているものと判断している。
図 III.6-5 資材化施設における作業従事者の積算被ばく線量
内部被ばく線量
当該施設で作業する際には作業内容に応じて適切な保護具の明確化と着用を義務付
け、体内への取り込みを防止した。
さらに、「事故由来廃棄物等処分業務に従事する労働者の放射線障害防止のためのガ
イドライン」に準じて、管理区域内で作業する作業従事者全員に対し、3 ヶ月以内ごとに 1
回、立位型ホールボディーカウンタを用いて内部被ばく量の測定を行なった。その結果、作
業従事者全員がいずれも検出限界値未満となった。
23
作業環境
管理区域に設定し、事故由来廃棄物取扱施設である、設備棟内及び前処理設備棟内
において、「事故由来廃棄物等処分業務に従事する労働者の放射線障害防止のためのガ
イドライン」に準じて、空気中の放射性物質濃度、空間線量率、放射性物質の表面密度及
び粉じん濃度の測定を行なった。
(a) 設備棟
空気中の放射性物質濃度
試料調整室、設備棟北(土壌・焼却灰受入れ設備周囲)、設備棟南(No.1 ろ過式集塵
機周囲)、出入り管理室の 4 箇所について、法定測定回数 1 月以内ごとに 1 回以上、空気
中放射性物質濃度を測定した。いずれの場所においても検出限界値未満となった。
空間線量率
設備棟内各所について、1 月以内ごとに1回空間線量率を測定した。表 III.6-1 及び表
III.6-2 に結果を示す。10 万 Bq/kg 超の流動床飛灰を取扱った際、空間線量率が管理
区域設定の判断に使用される 2.5μSv/h(3ヶ月間の労働で 1.3mSv を超える恐れのある区
域)を超えたが、一時的であり、通常時はおおむね 1μSv/h 以下の空間線量率となった。
表 III.6-1 設備棟内における空間線量率の測定結果〔μSv/h〕
測定日
処理対象物受入室
乾燥機
大塊
除去篩
粉砕機
No.1
BT*
No.2
BT
焼却灰
受入ホッパ
大塊
受入ホッパ
土壌
受入ホッパ
① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧
H28/11/21 0.23 0.17 0.20 0.12 0.13 0.29 0.21 0.11
H28/12/26 0.17 0.24 0.14 0.13 0.11 0.18 0.10 0.15
H29/1/24 0.14 0.17 0.16 0.11 0.13 0.18 0.57 0.65
H29/2/27 0.19 0.16 0.16 0.23 0.23 0.26 1.32 0.82
H29/3/27 0.14 0.16 0.25 0.13 0.13 0.17 0.39 0.10
H29/4/25 0.18 0.55 0.86 0.10 0.15 0.37 0.30 0.14
H29/5/25 0.20 0.20 0.36 0.18 0.25 0.42 3.20 2.90
H29/6/23 0.31 0.57 0.28 0.12 0.12 0.19 0.45 0.87
H29/7/27 0.18 0.19 0.29 0.16 0.13 0.11 1.10 1.23
H29/8/10 0.23 0.21 0.35 0.16 0.12 0.16 0.18 0.67
H29/9/21 0.40 4.23 0.45 0.20 0.12 0.12 0.19 0.38
H29/10/26 0.20 0.20 0.31 0.14 0.14 0.21 1.15 1.90
H29/11/16 0.20 0.17 0.23 0.10 0.12 0.14 0.19 0.12
H29/12/22 0.16 0.14 0.23 0.17 0.12 0.13 0.29 1.32
H30/1/25 0.13 0.14 0.21 0.12 0.12 0.21 0.09 0.14
H30/2/22 0.13 0.14 0.18 0.10 0.12 0.13 0.23 0.11
H30/3/19 0.10 0.15 0.19 0.10 0.10 0.14 0.12 0.10
*BT:調合ブレンダ
24
表 III.6-2 設備棟内における空間線量率の測定結果(その 2)〔μSv/h〕
測定日
乾燥機
集塵機
調合原料
タンク
排ガス
冷却塔
サイクロン
No.1
集塵機上
No.1
集塵機横
副産物
成型機
試料
調整室
⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ⑭ ⑮ ⑯
H28/11/21 1.10 0.44 0.20 0.92 0.45 1.92 0.35 0.19
H28/12/26 1.21 0.18 0.20 0.26 0.54 2.29 0.43 0.18
H29/1/24 1.13 0.18 0.16 0.18 0.47 1.38 0.45 0.19
H29/2/27 0.35 0.57 0.20 0.28 0.48 1.00 0.24 0.25
H29/3/27 0.95 0.45 0.20 0.20 0.45 1.47 0.26 0.27
H29/4/25 1.65 0.32 0.23 0.23 0.40 1.20 0.28 0.37
H29/5/25 1.58 0.27 0.23 0.21 0.58 2.74 0.48 0.37
H29/6/23 1.55 0.20 0.21 0.20 0.63 1.73 0.37 0.30
H29/7/27 1.36 0.28 0.19 0.22 0.73 2.54 0.33 0.30
H29/8/10 1.54 0.16 0.21 0.20 0.70 2.20 0.41 0.40
H29/9/21 1.34 0.70 0.26 0.38 0.75 1.54 0.49 0.34
H29/10/26 1.49 0.37 0.22 0.38 0.84 3.73 0.30 0.28
H29/11/16 1.45 0.42 0.22 0.34 0.77 1.82 0.48 0.33
H29/12/22 1.85 0.19 0.23 0.37 0.78 2.97 0.48 0.27
H30/1/25 1.65 0.32 0.23 0.23 0.40 1.20 0.28 0.19
H30/2/22 0.74 0.20 0.28 0.31 0.60 2.28 0.30 0.20
H30/3/19 0.69 0.15 0.28 0.32 0.60 1.31 0.45 0.26
放射性物質の表面密度
設備棟東西南北壁 4 箇所、風除室床、受入れ室床 2 箇所、乾燥機床、振動篩床、粉砕
機床、調合ブレンダ床 2 箇所、資材化炉床、排ガス冷却搭床、サイクロン下床、No.1 ろ過
式集塵機下床、副産物成型機床及び充填機床、PIC 容器、試料調整室 2 箇所、分析室 2
箇所、出入管理室の計 25 箇所において1月以内ごとに 1 回、放射性物質の表面密度を測
定した。副産物成型機床及び充填機床において一時的に高くなったが、表面汚染限度
(40Bq/cm 2
)の 1/10(4Bq/cm2
)を超える場合はなく、また、放射性物質が検知された後、清
掃を実施した結果、検出限界値未満となった。
作業環境(粉じん濃度)
設備棟内 31 箇所について A 測定を、さらに原料粉砕機周辺 1 箇所について B 測定を
実施した。表 III.6-3 に作業環境(粉じん)測定結果を示す。ともに「区分Ⅰ」となったことか
ら、当該作業場は『作業環境が適切に管理されている作業場』となる第 1 管理区分であっ
た。また、「事故由来廃棄物等処分業務に従事する労働者の放射線障害防止のためのガ
イドライン」では粉じん濃度が 10mg/m3
を超える作業を高濃度粉じん作業としているが、
10mg/m3
を大きく下回った。
表 III.6-3 設備棟内における作業環境測定(粉じん)結果
測定日 測定物質
管理濃度
〔mg/m3
〕
A 測定 B 測定結果
管理区分測定結果
〔mg/m3
〕
区分
測定結果
〔mg/m3
〕
区分
H29/3/7 粉じん 0.75 0.02 Ⅰ - - 第 1 管理区分
H29/8/28 粉じん 3.00 0.04 Ⅰ 0.06 Ⅰ 第 1 管理区分
H30/2/20 粉じん 3.00 0.04 Ⅰ 0.08 Ⅰ 第 1 管理区分
25
(b) 前処理設備棟
空気中の放射性物質濃度
除去土壌改質作業、焼却灰破砕等前処理設備での作業時に、空気中の放射性物質濃
度を測定した。Cs134 の放出限界値である 20Bq/m3
を管理値とした。図 III.6-6 に空気中
の放射性物質濃度を示す。ばらつきはあるものの空気中の放射性物質濃度は管理値であ
る 20Bq/m3
を下回った。また平成 29 年 4 月末及び 8 月上旬に放射性 Cs 濃度の高い焼
却灰を使用したが、空気中の放射性物質濃度が上昇する傾向は見られなかった。
図 III.6-6 前処理設備棟内における空気中の放射性物質濃度
空間線量率
前処理棟内2箇所(北側、南側)について毎週 1 回空間線量率を測定した。表 III.6-4
に月初の前処理設備棟内の空間線量率を示す。放射性物質を含む処理対象物が保管さ
れている場合には、その周辺の空間線量率が1μSv/h を超えるが、それ以外は1μSv/h 以
下となった。
表 III.6-4 前処理設備棟内の空間線量率〔μSv/h〕
北側
R1
南側
R2
備考
H29/2/24 0.24 0.30
H29/3/3 0.15 0.15
H29/4/7 0.20 0.80
H29/5/4 0.18 0.22
H29/6/5 0.91 0.24
H29/7/3 0.28 0.18
H29/08/7 0.25 1.72 南側付近に処理対象物を納めたコンテナバッグ有り
H29/9/4 0.21 0.51
H29/10/16 0.26 0.36
H29/11/6 0.25 0.18
H29/12/4 0.16 0.15
H30/1/9 0.16 0.14
H30/2/6 0.12 0.46 南側付近に規格外品を納めたコンテナバッグ有り
H30/3/6 0.14 0.13
26
放射性物質の表面密度
空気中放射性物質を測定する際に同時に風除室、出入り管理室、振動篩、破砕機、集
塵機等 8 箇所の放射性物質の表面密度を測定した。放射性物質の表面密度はいずれも
検出限界値未満となり 4Bq/cm 2
を大幅に下回った。
作業環境(粉じん濃度)
前処理設備棟内 11 箇所について A 測定を実施した。表 III.6-5 に設備棟内の粉じん
濃度測定結果を示す。当該作業場は『作業環境濃度には点検や改善の余地があると判断
される』となる第 2 管理区分であった。また、「事故由来廃棄物等処分業務に従事する労働
者の放射線障害防止のためのガイドライン」では粉じん濃度が10mg/m3
を超える作業を高
濃度粉じん作業としているが、10mg/m3
を下回った。
表 III.6-5 前処理設備棟内における粉じん測定結果
測定日 測定物質
管理濃度
〔mg/m3
〕
A 測定 B 測定
管理区分測定結果
〔mg/m3
〕
区分
測定結果
〔mg/m3
〕
区分
H30/2/20 粉じん 3.00 0.93 Ⅰ - - 第 2 管理区分
27
IV. 生成物及び副産物の保管管理
生成物の保管管理
生成物は下記手順で管理を行なった。
① クリアランスモニタで生成物の放射性 Cs 濃度を連続監視しながら、放射性 Cs 濃度が
100Bq/kg 以下の生成物は良品用コンテナバッグに、100Bq/㎏を超える生成物は規格
外品用コンテナバッグに振り分けた。
② コンテナバッグが満量となったらコンテナバッグの表面線量率を測定するとともに、その
間に自動サンプラにて定期的に採取していた生成物を代表試料として、その放射性 Cs
濃度をゲルマニウム半導体検出器(以下 Ge 検出器と称す)で測定し、最終の良否判断
を行なった。
③ 発生時間、重量、表面線量をコンテナバッグに記載し、Ge 検出器で合格となった生成
物は生成物置場に保管した。不合格となった生成物は副産物置場(コンクリート擁壁で
囲ったテント倉庫)に保管し再度資材化処理を行なった。
④ 生成物管理台帳に、発生日時、測定データ、保管先を記録し管理した。
⑤ 100Bq/kg 以下の生成物の入ったコンテナバッグはパレットの上に 2 段積みし、屋外で遮
水シートを掛けて保管した。
Phase-2(RUN12~RUN26)に発生した生成物の量は 689.4t(良品:539.0t、規格外品:
150.4t)であった。また、本業務(RUN1~RUN26)において発生した規格外品は RUNⅠ~Ⅳ
で再処理したため、最終的には良品 949.4t、規格外品 1.4t であった。
副産物の保管管理
副産物は下記手順で管理を行なった。
①副産物は飛散防止のためにプレス成型し、それをチャック付きコンテナバッグに密閉充填
した後、通常のコンクリートに比べ強度、気密性、不透水性、化学的安定性に優れた
PIC(Polymer Impregnated Concrete :ポリマー含浸コンクリート)容器に保管した。
②PIC 容器ごとに副産物の放射性 Cs 濃度と容器の表面線量率を測定した。
③副産物管理台帳に、回収期間、測定データ等を記録し保管管理した。
④PIC 容器側面に副産物管理台帳と同一データを記載し、ラミネート加工を施したデータ
シートを容器側面に貼り付けた。
⑤PIC 容器は副産物置場(コンクリート擁壁で囲ったテント倉庫)に保管した。
なお、分析のための副産物の採取はステンレス製密閉容器をスクリュー式サンプラに
取り付け、手動でスクリュー式サンプラを回転させることにより、密閉した状態で行なった。
本事業における副産物発生量は 44.5t であり、これを 68 個の PIC 容器に充填し、保管
した。
28
V. 生成物の品質調査及び工事資材への活用検討
生成物の環境安全性
重金属の含有・溶出
総合評価運転を行なった RUN24~26 の生成物について、環境省告示第 18 号法、第
19 号法に基づき生成物の重金属の含有量及び溶出量を測定した。
表 V.1-1 に RUN24~26 の重金属の含有量を、表 V.1-2 に重金属の溶出量及びpH
をそれぞれ示す。いずれの重金属含有量及び溶出量は基準値をクリアした。
表 V.1-1 重金属含有量(環境省告示 19 号法、mg/kg)
試料名 砒素 セレン 鉛 水銀 カドミウム 6 価クロム フッ素 ホウ素
RUN24 <10 <10 10 <1 <10 <10 260 130
RUN25 <10 <10 <10 <1 <10 <10 <100 <100
RUN26 <10 <10 <10 <1 <10 <10 160 <100
基準値 <150 <150 <150 <15 <150 <10 <4000 <4000
表 V.1-2 重金属溶出量(環境省告示18号法、mg/L)及び pH
試料名 砒素 セレン 鉛 水銀 カドミウム 6価クロム フッ素 ホウ素 pH
RUN24 <0.001 <0.001 0.002 <0.0005 <0.001 <0.005 0.37 0.1 12.7
RUN25 <0.001 <0.001 <0.001 <0.0005 <0.001 <0.005 <0.08 <0.1 12.8
RUN26 <0.001 <0.001 <0.001 <0.0005 <0.001 <0.005 0.23 <0.1 12.6
基準値 <0.01 <0.01 <0.01 <0.0005 <0.01 <0.05 <0.8 <1.0 -
放射性 Cs の溶出
「第 5 部放射能濃度測定方法ガイドライン(環境省)」に準拠し、JIS K 0058-1 で採取し
た検液について、Ge 検出器を用いて放射性 Cs 濃度を測定した。ガイドラインでは検出下
限値が 10~20Bq/L 程度になるような分析条件が記載されているが、本試験では放射性 Cs
含有量に対する溶出量の割合についても評価するため、検出下限値を下げた条件で測定
を行なった。表 V.1-3 に生成物からの放射性 Cs の溶出量を示す。いずれも規定値であ
る 10Bq/kg を大幅に下回った。水溶性の放射性 Cs 濃度の割合が高い場合もあったが、高
温で製造した、RUN23、25、26 生成物は水溶性の Cs の割合が低かった。高温で製造した
生成物は水溶性である塩化セシウムがすべて揮発したと推察される。
表 V.1-3 生成物からの放射性 Cs の溶出量
試料名 処理対象物
含有量(Bq/kg) 溶出量(Bq/L) 水 溶 性 放 射 性
Cs の割合(%)*3
Cs137 Cs134 合計 Cs137 Cs134 Cs*2
RUN19 流動床飛灰 100% 54 7 61 2.4 ND*1
2.8 46
RUN20 除去土壌 100% 45 6 51 2.2 ND 2.6 51
RUN23 ストーカ主灰 100% 67 7 75 ND(<0.56) ND ND(<0.67) -
RUN24 除去土壌 100% 54 5 59 1.3 ND 1.6 27
RUN25 ストーカ主灰 100% 15 3 18 ND(<0.69) ND ND(<0.83) -
RUN26 流動床飛灰 100% 19 2 21 ND(<0.83) ND ND(<1.0) -
*1 測定結果が検出限界値未満であった場合は「ND」と表示する。
*2Cs134 のみ検出限界値未満の場合には Cs134 は Cs137 の 1/5 として計算した。
*3 水溶性の放射性 Cs 割合=(Cs 溶出量×10)/Cs 含有量×100
29
生成物の品質調査
未反応石灰量の影響
生成物中の未反応石灰(以下、f-CaOと称す)は水和反応によりCa(OH)2に変化し、これ
により体積が約2倍となるため、膨張圧が生じ膨張破壊する場合がある。セメントクリンカ製
造炉においては、f-CaO量がおよそ1%以下になるように熱処理温度、滞留時間等を管理
しており、本資材化実証試験においても、1%以下を目標に現場にて放射性Cs濃度に加え
て、f-CaO量を測定し、運転に反映させたが、資材化炉の規模が小さいため、コーチングに
よる閉塞等の問題が生じ、f-CaO量を下げるための十分な熱量が加えられずに、特に原料
のC/Sが高い場合などに多量のf-CaOが残存する場合が生じた。
そこで、f-CaO 量の異なる生成物を用いて、膨張量やポップアウトの発生有無について
以下の評価を行なった。
① 吸水膨張 JIS A 1211 に準拠
② 水浸膨張 JIS A 5015:2013 付属書 B に準拠
③ ポップアウト JIS A 5031:2016 付属書 C に準拠
吸水膨張・水浸膨張
f-CaO 量の異なる 3 種類の生成物について吸水膨張、水浸膨張の評価を行なった結果
を表 V.2-1 に示す。吸水膨張は平成 24 年 3 月国土交通省より発行された「迅速な復旧・
復興に資する再生資材の宅地造成盛土への活用に向けた基本的な考え方」に 3%以下と
規定されており、水浸膨張は JIS A 5015:2013 道路用鉄鋼スラグに 1.5%と規定されてい
る。生成物中のf-CaO 量が 3.2%の場合においても吸水膨張、水浸膨張は規格値をクリア
した。
表 V.2-1 生成物の吸水膨張、水浸膨張
生成物① 生成物② 生成物③ 規格値
生成物
f-CaO 量(%) 1.5 3.2 0.6 -
CaO/SiO2 2.4 2.1 2.1 -
絶乾密度(g/cm3
) 2.68 2.13 2.78 -
試験
項目
最大乾燥密度(g/cm3
) 1.617 1.536 1.768 -
最適含水比(%) 23.6 25.3 20.3 -
吸水
膨張(%)
突固め
回数
(回/層)
17 0.003 0.005 0.048
3.0 以下*1
42 0.056 0.037 0.061
92 0.048 0.043 0.069
水浸
膨張(%)
92 0.19 0.26 0.19 1.5 以下*2
*1 国土交通省「迅速な復旧・復興に資する再生資材の宅地造成盛土への活用に向けた基本的な考え方」
*2 JIS A 5015 道路用鉄鋼スラグ
30
ポップアウト
2006年7月にJIS A 5031「一般廃棄物、下水汚泥又はそれらの焼却灰を溶融固化したコ
ンクリート用溶融スラグ骨材」ならびにJISA 5032「一般廃棄物、下水汚泥又はそれらの焼却
灰を溶融固化した道路用溶融スラグ」が制定され、溶融スラグがコンクリート構造物等に利
用されたが、一部の溶融スラグにおいてコンクリート表面にポップアウトが生じる問題が生じ
た。そのため試験方法が開発され、2016年の改正によりJIS A 5031付属書Cにポップアウト
の試験方法が規定された。生成物にも本試験方法を適用し、f-CaO量及び密度の異なる4
種類の生成物についてポップアウトの発生の有無の確認を行なった。表 V.2-2に評価に
用いた生成物を示す。
試験は生成物を用いたモルタル供試体を各3本作製し、1日水中養生後に90分間煮沸後
の表面を目視で確認した。写真 V.2-1にその一例を示す。ポップアウトと判定される箇所
は「生石灰による核が認められ、かつ、目視または指触によって凹部と確認された箇所」「ひ
び割れが認められた場合に表面部分を剥がし内部に核が認められた箇所」であるが、いず
れの供試体も煮沸前後で変化なく、ポップアウトと判定される箇所はなかった。
表 V.2-2 ポップアウト評価に用いた生成物
f-CaO量(%) C/S 絶乾密度(g/cm3
)
生成物④ 1.8 2.1 2.20
生成物⑤ 3.2 2.0 2.66
生成物⑥ 0.9 2.3 2.63
生成物⑦ 1.8 2.4 2.66
写真 V.2-1 煮沸前後の供試体の外観(試料⑤)
煮沸前
煮沸後
31
コンクリート用細骨材としての評価
Phase-1 生成物を IL ブロック用細骨材として使用するため、粒度調整設備を用いて篩
い分けを行い、5mm 以下の生成物について細骨材としての物性を評価した。表 V.2-3 に
結果を示す。絶乾密度、吸水率の平均値はレディーミクストコンクリート用骨材の基準を満
足するが、生成物ごとに変動が大きく再生骨材 M にも合致しない生成物も存在した。安定
性試験、微粉分量はいずれもレディーミクストコンクリート用骨材の基準を合致した。なお、
IL ブロック製造の際には、絶乾密度及び吸水率に基準値を設定し(表 V.3-5 に記載)、基
準に合致した生成物を細骨材として使用した。
表 V.2-3 生成物(5mm 以下品)の絶乾密度、吸水率、安定性及び微粒分量
*1 JIS A 5308:2014 付属書 A レディーミクストコンクリート用骨材
*2 JIS A 5005:2009 コンクリート用砕石及び砕砂
*3 JIS A 5011-1:2013 コンクリート用スラグ骨材第 1 部高炉スラグ骨材
*4 JIS A 5021:2011 コンクリート用再生骨材 H
*5 JIS A 5022:2012 付属書 A コンクリート用再生骨材 M
*6 JIS A 5023:2012 付属書 A コンクリート用再生骨材 L
項目 単位 測定結果
測定
点数
規格(参考)
砂*1
砕砂*2 高炉スラグ
骨材*3
再生
骨材 H*4
再生
骨材 M*5
再生
骨材 L*6
絶乾密度 g/cm3 2.56
(1.99~2.96)
86
2.5
以上
2.5
以上
2.5
以上
2.5
以上
2.2
以上
-
吸水率 %
3.3
(0.3~11.8)
86
3.5
以下
3.0
以下
3.0
以下
3.5
以下
7.0
以下
13.0
以下
安定性試験 %
4.7
(2.0~5.5)
6
10
以下
10
以下
- - - -
微粒分量 %
1.0
(0.1~2.2)
6
3.0
以下
3.0
以下
-
7.0
以下
8.0
以下
10.0
以下
32
総合評価運転の生成物の評価
粒度分布
図 V.2-1 に RUN24~RUN26 で得られた生成物の粒度分布を示す。RUN24 生成物は
5mm以下が 94%と粒度が細かいが、高い温度で製造した RUN25、RUN26 は 5mm 以上が
50%程度と粒度が粗いものも多い。篩い分けにより粗骨材、路盤材で規定されている粒度
に調整することも可能となることから、RUN25、RUN26 生成物については粗骨材、路盤材と
しての評価も実施した。
図 V.2-1 生成物の粒度分布
路盤材
表 V.2-4 に RUN25、26 で得られた生成物を路盤材(C-20)の規定に合致するよう粒度
調整した試料の路盤材としての評価結果を示す。RUN26 は下層路盤材の基準に合致する
ものの、RUN25 はすりへり減量が基準値を超過した。粒度が粗い場合においても得られた
生成物がすべて路盤材の基準に合致するわけではなく、品質を確認しながら、利用する必
要があると考えられる。
表 V.2-4 路盤材としての評価結果
項目 単位
生成物 規定値
RUN25 RUN26 道路用砕石
道路用鉄鋼
スラグ
日本道路協会
舗装施工指針
すりへり減量 % 51.0 37.0 40 以下 (30 以下) -
単位容積重量 kg/l 1.64 1.61 - 1.50 以上 -
最大乾燥密度 g/cm3
1.902 1.778 - - -
最適含水比 % 11.8 7.4 - - -
吸水膨張 % 0.000 0.000 - - -
水浸膨張比 % 0.00 0.00 - 1.5 以下 -
修正 CBR % 51.5 49.2 - -
上層路盤材:80 以上
下層路盤材:20 以上
33
コンクリート用骨材
表 V.2-5 に粗骨材としての評価結果を、表 V.2-6 に細骨材としての評価結果を示
す。RUN25、26 ともにこれまでよりは高温で製造したものの粗骨材としては密度が低く、吸水
率が高かった。細骨材としては高温で製造した RUN25、26 生成物のほうが RUN24 生成物
より乾燥密度が高く、吸水率は低く、単位容積重量が大きいが、レディーミクストコンクリート
用骨材や砕石骨材の基準には合致せず、再生骨材 L の規定に相当する細骨材となった。
表 V.2-5 粗骨材としての評価結果
項目 単位
生成物(5mm 以上) 規定値
RUN25 RUN26 砂利*1
砕石*2 再生骨材
M*3
再生骨材
L*4
絶乾密度 g/cm3
2.32 2.24 2.5 以上 2.5 以上 2.2 以上 -
吸水率 % 10.1 9.1 3.0 以下 3.0 以下 5.0 以下 7.0 以下
単位容積重量 kg/l 1.39 1.34 - - 1.25 以上 1.35 以上
粒径判定実績率 % 58.9 59.4 - 56 以上 - -
すりへり減量 % 51.0 37.0 35 以下 40 以下 - -
安定性 % 7.3 8.0 12 以下 12 以下 - -
微粒分量 % 0.0 0.0 1.0 以下 3.0 以下 5.0 以下 5.0 以下
*1 砂利 JIS A 5308:2014 付属書 A レディーミクストコンクリート用骨材
*2 砕石 JIS A 5005:2009 コンクリート用砕石及び砕砂
*3 再生骨材 M JIS A 5022:2012 付属書 A コンクリート用再生骨材 M
*4 再生骨材 L JIS A 5023:2012 付属書 A コンクリート用再生骨材 L
表 V.2-6 細骨材としての評価結果
項目 単位
生成物(5mm 以下) 規定値
RUN24 RUN25 RUN26 砂*1
砕砂*2 再生骨
材 M*3
再生骨
材 L*4
絶乾密度 g/cm3
2.35 2.75 2.26 2.5 以上 2.5 以上 2.3 以上 -
吸水率 % 6.99 3.45 9.1 3.5 以下 3.0 以下 7.0 以下 13.0 以下
単位容積重量 kg/L 1.24 1.6 1.34 - - - -
粒径判定実績率 % 30.9 48.0 59.4 - 54%以上 - -
安定性 % 8.9 4.2 37.0 10 以下 10 以下 - -
微粒分量 % 1.6 -0.1 8.0 3.0 以下 9.0 以下 - -
塩分量 % 0.004 0.003 0.0 0.04 以下 - - -
*1 砂利 JIS A 5308:2014 付属書 A レディーミクストコンクリート用骨材
*2 砕石 JIS A 5005:2009 コンクリート用砕石及び砕砂
*3 再生骨材 M JIS A 5022:2012 付属書 A コンクリート用再生骨材 M
*4 再生骨材 L JIS A 5023:2012 付属書 A コンクリート用再生骨材 L
盛土としての評価検討
表 V.2-7 に盛土としての評価結果を示す。コーン指数は国土交通省「迅速な復旧・復
興に資する再生資源の宅地造成盛土への活用に向けた基本的考え方」の基準に合致した。
表 V.2-7 盛土としての評価結果
項目 単位
生成物(5mm 以下) 規定値
RUN24 RUN25 RUN26
最適含水比 % 26.9 11.2 10.7
最大乾燥密度 g/cm3
1.404 1,754 1.662
コーン指数 kN/m2
4,487 3,357 1,783 400 以上*
*国土交通省:迅速な復旧・復興に資する再生資源の宅地造成盛土への活用に向けた基本的考え方
34
アルカリ骨材反応性評価
生成物のアルカリ骨材反応性を評価するため、4 種類の生成物について JIS A 1145:
2007「骨材のアルカリシリカ反応性試験方法(化学法)」に準拠した方法で溶解シリカ量及
びアルカリ濃度減少量の測定を行なった。さらにそのうちの 2 種について JIS A 1146:2007
「骨材のアルカリシリカ反応性評価方法(モルタルバー法)」に準拠した方法で、生成物を用
いたモルタルを各 3 本作製し、26 週までの長さ変化を測定した。
表 V.2-8 に化学法によるアルカリシリカ反応評価結果を示す。なお、JIS A 1145:2007
「骨材のアルカリシリカ反応性試験方法(化学法)」によれば、この規格は、人工軽量骨材に
は適用しない」との記載があるため、本試験結果の中でアルカリシリカ反応性を判定できな
いが、表中に記載した反応性の判定基準に照らすと、本試験結果は「無害」に該当する。
表 V.2-9 にモルタルバー法による評価結果を示す。モルタルバー法においては 3 本
の平均膨張率が 26 週後に 0.100%未満の場合に無害と判定されるが、本試験ではいずれ
の供試体においても 0.100%未満であり、「無害」と判定された。
表 V.2-8 アルカリシリカ反応(化学法)評価結果
試料名
溶解シリカ量(Sc)
[mmol/L]
アルカリ濃度減少量(Rc)
[mmol/L]
生成物① 0 26
生成物② 0 0
生成物③ 0 73
生成物④ 0 79
<アルカリシリカ反応性判定>
・溶解シリカ量(Sc)が 10mmol/L 以上で、アルカリ濃度減少量(Rc)が 700mmol/L 未
満の範囲では、溶解シリカ量(Sc)がアルカリ濃度減少量(Rc)未満となる場合、そ
の骨材を“無害”と判定し、溶解シリカ量(Sc)がアルカリ濃度減少量(Rc)以上とな
る場合、その骨材を“無害でない”と判定する。
・溶解シリカ量(Sc)が 10mmol/L 未満で、アルカリ濃度減少量(Rc)が 700mmol/L 未
満の場合、その骨材を“無害”と判定する。
・アルカリ濃度減少量(Rc)が700mmol/L以上の場合は判定しない。
表 V.2-9 アルカリシリカ反応(モルタルバー法)評価結果
膨張率(%)
判定
2 週 4 週 8 週 13 週 26 週
生成物②
No.1 0.017 0.020 0.026 0.029 0.034
無害
No.2 0.014 0.016 0.022 0.025 0.031
No.3 0.015 0.016 0.023 0.028 0.029
平均 0.015 0.017 0.024 0.027 0.031
生成物③
No.1 0.028 0.033 0.038 0.041 0.051
無害
No.2 0.029 0.033 0.038 0.0442 0.051
No.3 0.029 0.034 0.036 0.041 0.051
平均 0.029 0.033 0.037 0.041 0.051
35
IL ブロックの製造
資材化実証施設で得られた生成物は粒度が細かいことから、工事資材の主要な用途と
してコンクリート用細骨材が考えられた。そこで、代表例として IL ブロックについて配合検
討・物性評価を行なった。さらに実用性、安全性を評価・検証することを目的に、生成物を
細骨材として用いた IL ブロックを実証施設内で試験製造し、資材化実証施設内や飯舘村
内に敷設した。表 V.3-1 に概要を示す。
表 V.3-1 IL ブロック製造概要
時期 概要 配合
平成 29 年
1~3 月
IL ブロックの配合検討・試作
歩道用 IL ブロック 420 個製造
資材化施設内設備棟入口に敷設
曲げ強度:3N/mm2
細骨材置換率:100%配合
平成 29 年
5~9 月
車道用 IL ブロックの配合検討、物性評価
車道用 IL ブロック 1,000 個製造
飯舘村交流センター前駐車場に敷設
曲げ強度:5N/mm2
細骨材置換率:50%配合
平成 29 年 10 月
~平成 30 年 3 月
車道用 IL ブロック 22,000 個製造
(240 個/日)
飯舘村公共工事に使用
曲げ強度:5N/mm2
細骨材置換率:50%配合
車道用 IL ブロック製造のための配合検討、物性評価
曲げ強度区分 5N/mm2
及び 3N/mm2
の IL ブロックを製造するための配合選定試験を平
成 29 年 1 月及び 5 月に実施した。あわせて、凍結融解抵抗性の評価を行なった。
配合選定試験
表 V.3-2 に IL ブロックの基層の配合を示す。基層の配合については曲げ強度区分が
5N/mm2
の生成物未使用の普通 IL ブロック配合を基準とし、①細骨材への生成物置換
率、②単位水量の増加、③水セメント比(W/C)の大小が曲げ強度に及ぼす影響を検討し
た。
表 V.3-2 IL ブロックの配合(基層)
検討要因 記号
容積置換率(%) W/C
(%)
単位量(kg/m3
)
S G W C S G P
基準 N5 - - 32.8 131 400 1136 775 0
置換率
S50 50 0 32.8 131 400 568 775 606
S100 100 0 32.8 131 400 0 775 1212
単位水量
S100+W4kg 100 0 32.8 135 412 0 767 1199
S100+W9kg 100 0 32.8 140 427 0 757 1183
W/C
S100+W/C5% 100 0 37.8 151 400 0 754 1179
S100-W/C5% 100 0 27.8 111 400 0 796 1244
得られた結果を以下に示す。
 生成物容積 250L/m3
(細骨材置換率:50%)の場合に曲げ強度が最大値を示し、それ以
上生成物を使用すると曲げ強度が低下した(図 V.3-1)。
 細骨材置換率 100%の際に曲げ強度を向上させるため、単位水量増及び W/C の調整
36
を行なったが、いずれの場合も強度は低下した。
 充填率(コンクリートに用いた各材料の密度から計算される重量に対する、実際のコンク
リートの重量の割合)の増加に伴い、曲げ強度が増加した。
 平成 29 年 1 月と 5 月の検討結果を比較すると、同一置換率では平成 29 年 5 月の方
が充填率は低くなり、その結果、曲げ強度も低くなった(図 V.3-2)。同じ配合であって
も、充填率が変化するのは,生成物のロットが異なることによる物理的性質(形状や粒度
分布など)や,ミキサの種類のちがい (ホバートと強制パン型)や練混ぜ環境の変化(屋内
と屋外)などが影響した可能性が考えられる。
 生成物の細骨材置換率 100%で、歩道用 IL ブロックの曲げ強度の基準 3N/mm2
以上
を確保できるが、車道用 IL ブロックの曲げ基準 5N/mm2
以上を確保するためには生成
物の細骨材置換率は 50%となる。
図 V.3-1 IL ブロックに使用した生成物容積置換率と曲げ強度の関係
図 V.3-2 IL ブロックの充填率と曲げ強度の関係
37
凍結融解抵抗性
IL ブロックの凍結融解抵抗性を評価する方法として、ASTM C 1645 に凍結 16±1 時間
(供試体温度-5±3℃)-融解 8±1 時間(供試体温度+5℃)を繰り返した場合の質量損失量
を測定する方法が規定されている。表 V.3-3 に IL ブロックの凍結融解の質量損失量を示
す。凍結融解抵抗性を判定する 25 サイクル時の質量損失量は、判定基準となる 200g/m2
を下回った。これにより,本検討で対象とした範囲の生成物を使用した IL ブロックは、十分
な凍結融解抵抗性を有していると判断された。
表 V.3-3 IL ブロックの凍結融解試験結果
記号
質量損失量(g/m2
) 凍結融解抵抗性の
判定基準10 サイクル 25 サイクル
N5 15 30
25 サイクル時の
質量損失量≦200g/m2S50 10 20
S100 15 30
施設内での IL ブロックの試験製造
製造概要
 IL ブロック : 歩道用 IL ブロック
 製造日 : 平成 29 年 2 月
 製造場所 : 仮設資材化実証施設設備棟内
 IL ブロック寸法 : 100×200×60mm
 製造数 : 420 個
 配合 : 生成物置換率 100%、W/C=32.8%(表 V.3-2、S100)
 製造方法
混練 : ホバートミキサ(アインリッヒ社製)
成型 : 振動プレス成型機
敷設
平成 29 年 3 月に設備棟入口に敷設した。写真 V.3-1 に製造した IL ブロックを設備
棟入口の敷設後の状況を示す。敷設後 1 年経過しても、劣化等は見られていない。
写真 V.3-1 IL ブロック敷設後の状況
38
車道用 IL ブロックの製造及び敷設
製造概要
 IL ブロック : 車道用 着色 IL ブロック (表層 黒)
 製造日 : 平成 29 年 7 月
 製造場所 : 仮設資材化実証施設内(No.2 ろ過式集塵機下)
 IL ブロック寸法 : 100×200×80mm(表層 6mm 含む)
 製造数 : 1,000 個
 配合 : 生成物置換率 50%、W/C=32.8%(表 V.3-2、S50)
 製造方法
混練 : 強制パン型ミキサ
成型 : 振動プレス成型機
敷設
飯舘村にご協力いただき、飯舘村交流センター駐車場入口に敷設した。写真 V.3-2
に飯舘村交流センター駐車場の敷設状況を示す。
写真 V.3-2 飯舘村交流センター駐車場入口 IL ブロック敷設
IL ブロック大量製造
生成物を用いたILブロックを、飯舘村のご協力により公共工事で使用することとなった。
そこで、粒度調整設備棟内に IL ブロック製造設備を設置し、現地作業員を雇用し、コンク
リート二次製品メーカーである太平洋プレコン社協力のもと、22,000 個製造した。その概要
を示す。
IL ブロック製造設備
生成物置場東側に粒度調整設備棟を新設し、粒度調整棟内に粒度調整設備に加えて、
IL ブロック製造設備を設置した。写真 V.3-3 に IL ブロック製造設備を示す。基層を製造
するための強制パン型ミキサ、表層を製造するためのモルタル用ホバートミキサ、IL ブロック
を成型するための振動成型機、IL ブロックを養生するための養生槽(恒温恒湿機)を設置し
た。
39
写真 V.3-3 IL ブロック製造設備
IL ブロックの配合・管理値
表 V.3-4 に IL ブロックの製造管理値を示す。曲げ強度は充填率と相関があることから、
充填率の管理値を設定し、現場にて確認した。硬化後の IL ブロックを太平洋セメント株式
会社中央研究所に送付し、材齢 14 日の曲げ強度の測定を行なった。
表 V.3-5 に IL ブロック製造に使用する生成物の管理値を示す。生成物は粒度調整設
備にて 5mm 以下に調整し、物性を確認後、管理値に合致したものを IL ブロック製造に使
用した。絶乾密度は JIS A 5308 レディーミクストコンクリート用骨材に規定されている値を設
定した。吸水率はこれまでの検討実績より 5%以下と設定した。
生成物の粒度分布等の変動によって充填率が変動することから、生成物のロットごと(コ
ンテナバッグごと)にコンクリート配合を調整した。表 V.3-6 に配合の一例を示す。
表 V.3-4 IL ブロック製造管理値
管理項目 管理値
充填率 90%(目安)
曲げ強度(14 日強度) 5N/mm2
以上
寸法精度 ±3mm
表 V.3-5 生成物管理値
管理項目 管理値
f-CaO 1%以下
絶乾密度 2.5g/cm2
以上
吸水率 5%以下
表 V.3-6 コンクリート配合
記号
容積置換率(%) W/C
(%)
細骨材率
s/a(%)
単位量(kg/m3
)
S G W C S G P
配合例① 50 0 33 60.0 131 400 570 840 604
配合例② 50 0 35 55.0 153 436 499 903 529
40
IL ブロック製造状況
IL ブロック製造は以下の手順で実施した。
① 生成物、砂、粗骨材を表乾状態になるように水分を調整した。
② パン型ミキサによる基層コンクリートの練混ぜを行なった。この際、コンクリートの状態によ
って水量や混和剤量等を調整した。
③ モルタルミキサによる表層モルタルの練混ぜを実施した。
④ 基層コンクリートを詰込み、成型した。
⑤ 表層モルタルを詰込み、成型した。
⑥ IL ブロックを養生棚にいれて、養生槽で養生した(1 昼夜)。
⑦ 翌日、養生槽から取り出し、室内で養生した。
写真 V.3-4 に製造した IL ブロックを示す。平成 30 年 3 月末までに 23,019 個製造し
た。
写真 V.3-4 製造した IL ブロック
41
U字溝及びU字溝蓋の試験製造
試験概要
U字溝は道路側溝、用水路等広く用いられる。IL ブロックは流動性が小さい、硬練りとい
われる状態で加圧即脱で製造されるのに対し、U字溝はある程度の流動性を有する軟練り
といわれる状態で型枠への流し込み成型によって製造される。そこで IL ブロックに加えて、
施設内の展示用サンプルとしてU字溝(鉄筋コンクリート)及びU字溝蓋(無筋コンクリート)
の試験製造を行なった。
配合
表 V.4-1 に配合を示す。細骨材に対し、生成物を 25%、50%と置換した配合で練混
ぜを行なった。生成物を置換することでスランプが低下し、空気量が増加して材料分離する
傾向があったため、生成物量の増加に応じて単位水量を増加し、細骨材率(s/a)を増加さ
せて分離抵抗性を維持した。
表 V.4-1 U 字溝の配合
記号
容積置換率(%) 単位水量
(kg/m3
)
W/C
(%)
s/a
(%)細骨材 粗骨材
S0-G0 0 0 163 50.0 45.0
S25-G0 25 0 169 50.0 47.0
S50-G0 50 0 175 50.0 49.0
U 字溝及び U 字溝蓋の作製
表 V.4-2 にフレッシュコンクリートのスランプ、スランプフロー、空気量を示す。生成物置
換率 25%ではコンクリートのフレッシュ性状は生成物未使用とほぼ同等であるが、置換率
50%では流動性が悪化し、空気量も多くなった。さらに置換率を増加させることは流動性、
空気量の面から困難と判断し、置換率 25%を U 字溝の基本配合とし、置換率 50%におい
ても U 字溝及び U 字溝蓋を作製した。
所定の配合で混練後、U 字溝型枠及び U 字蓋型枠にコンクリートを流し込み後、バイブ
レータによる締固めを実施した。1 週間養生後、脱型して U 字溝及び U 字溝蓋を作製し
た。写真 V.4-1 に作製したU字溝及びU字溝蓋を示す。ジャンカ(コンクリートの打設不良
により、モルタルと粗骨材が分離して粗骨材だけが集まり、空隙が生じて硬化した状態)等の
発生もなく良好な充填性であった。置換率 50%では空気量が増加した影響もあり表面気
泡がやや目立つが、置換率 25%では生成物未使用品と同等の外観であった。
図 V.4-1 に硬化後のコンクリート供試体の圧縮強度を示す。強度特性には生成物置
換の影響は認められず、50%置換においても未使用品と同等の強度が得られた。
42
表 V.4-2 フレッシュコンクリートのスランプ、スランプフロー、空気量
記号
スランプ
(cm)
スランプフロー
(cm)
空気量
(%)
温度
(℃)
S0-G0 22.5 52.5 2.4 6.4
S25-G0 22.3 45 2.8 6.7
S50-G0 7 - 4.5 8.4
写真 V.4-1 作製したU字溝及びU字溝蓋
図 V.4-1 コンクリート供試体の圧縮強度
0
10
20
30
40
50
60
S0‐G0 S25‐G0 S50‐G0
14d圧縮強度(MPa)
S0-G0
(比較品)
S25-G0
S50-G0
14d圧縮強度(N/mm2
)
43
盛土の評価
試験盛土の施工
生成物が盛土として活用できるかどうかを評価するため、生成物に対し含水比を変動さ
せ、サイドローラで転圧回数を増加させ締固め度等の強度試験を中心に試験を実施した。
以下に概要を示す。
盛土試験施工場所
生成物置場西側を整地、地盤改良して試験盛土を施工した。
試験盛土施工に用いた生成物
RUN4 及び RUN5 の生成物 (含水比 1.35%、湿潤密度 1.15g/cm3
)
試験盛土大きさ
1 層目 4.0m×8.0m 高さ 30cm 勾配 1:1.5
2 層目 3.1m×7.1m 高さ 30cm 勾配 1:1.5
試験方法
生成物に所定の含水比になるように散水混練した。
含水比設定値 6%(1 層目)、4%、8%(2 層目)
含水比 4%の盛土施工後撤去して、含水比 8%の盛土を施工
盛土成型後、サイドローラを用いて所定の回数転圧
測定項目
含水比
RI 試験(締固め度):10 ヶ所
コーン指数試験:3 ヶ所
試験結果
(a) 測量・転圧後の含水比
表 V.5-1 に施工後の測量及び含水比試験結果を示す。1 層目、2 層目ともに目標の
厚さ(30cm)、含水比が得られた。
表 V.5-1 測量・転圧後の含水比
天端高(m) 転圧後の含水比(%)
1 層目(含水比 6%) 0.352 5.16
2 層目(含水比 4%) 0.669 3.78
2 層目(含水比 8%) 0.630 7.74
(b) 締固め試験
盛土層ごとの転圧回数と締固め度及びコーン指数の関係を、図 V.5-1 及び図 V.5-2
にそれぞれ示す。転圧回数が増えることでコーン指数、締固め度が高くなる傾向が確認さ
れた。コーン指数は盛土の基準である 400kN/m2
を超えるが、締固め度は 85%程度まで向
上するものの、福島県の共通仕様書に規定されている締固め度として 90%以上を満足する
ことができなかった。この理由として、盛土として使用するには細粒分が少ないことがあげら
れた。
44
図 V.5-1 転圧回数と締固め度の関係
図 V.5-2 転圧回数とコーン指数の関係
混合盛土としての評価
上述したように、生成物を用いた盛土は締固め度 90%以上を達成しなかった。細粒分が
少ないことが原因と考えられ、粒度調整や破砕等により細粒分を補充することにより、生成
物 100%でも締め固め度を 90%以上にすることも可能であると推察される。しかし、生成物
に固結性がある等の性質を考慮すると、粘土分(細粒分)の多い土壌に混合して、混合盛
土として使用することにより、粘土単体より締め固め度も高くなるなど改質されると考えられる。
そこで混合盛土としての評価を行なった。
45
試験概要
使用材料
試験に使用した生成物の物性を表 V.5-2 に、粒度分布を表 V.5-3 に、対象土の物
性を表 V.5-4 に、粒度分布を表 V.5-5 にそれぞれ示す。なお、生成物は、IL ブロック製
造に使用している 5mm 以下生成物を使用した。対象土には土質分類の異なる2種類の土
壌を使用した。
表 V.5-2 評価に用いた生成物の物性
項目 単位 試験値 試験規格
表乾密度 (g/cm3
) 2.69
JIS A 1109:2006
細骨材の密度及び吸水率試験方法
絶乾密度 (g/cm3
) 2.62
吸水率 (g/cm3
) 2.58
f-CaO (%) 0.22 JIS R 5202:2015 セメントの化学分析方法
含水比 (%) 0.44 JIS A 1203:2009 土の含水比試験方法
湿潤密度 (g/cm3
) 1.33 JIS A 1225:2009 土の湿潤密度試験方法
懸濁液 pH - 11.99 JGS 0211 土懸濁液の pH 試験
表 V.5-3 評価に用いた生成物の粒度分布*
ふるいを通過する質量分率(%)
0.075mm 0.15mm 0.3mm 0.6mm 1.2mm 2.5mm 5mm 10mm
9.8 24.4 48.7 77.8 92.5 98.2 100.0 100.0
*JIS A 1102:2014 骨材のふるい分け試験
表 V.5-4 対象土の物性試験結果
名称 産地
自然含水比
(%)
湿潤密度
(g/cm3
)
懸濁液*
pH
粘性土 宮城県仙台市 38.3 1.773 8.0
火山灰質粘性土 埼玉県入間市 133.3 1.285 6.1
*JGS 0211 土壌濁液のpH 試験
表 V.5-5 対象土の粒度分布*
名称
礫分
2~75mm
砂分
0.075~2mm
シルト分
0.005~0.075mm
粘土分
0.005mm 未満
粘性土 0.0 10.2 54.8 35.0
火山灰質粘性土 1.6 5.3 57.8 35.3
*JIS A 1204:2009 土の粒度試験方法
試験項目
(a) コーン指数試験(JIS A 1228)
試験水準を表 V.5-6 に示す。対象土への生成物の混合量は重量比で 0~50%とした。
表 V.5-6 試験水準
項目 水準
対象土 粘性土、火山灰質粘性土
生成物の混合量(%) 0、10、20、30、50
試験材齢(日) 1
46
(b) 締固め試験(JIS A 1210)及び修正CBR試験
試験水準を表 V.5-7 に示す。対象土への生成物の混合量は、コーン指数試験で最も
コーン指数が高くなる混合量(後述の図 V.5-3 より 50%)に設定した。
表 V.5-7 試験水準
項目 水準
対象土 粘性土、火山灰質粘性土
生成物の混合量(%) 50
試験材齢(日)
締固め試験:混合1日
修正 CBR :水浸 4 日後
試験結果
(a) コーン指数試験
試験結果を図 V.5-3 に示す。いずれの対象土においても、生成物の添加量に伴って、
コーン指数が増加することが確認された。特に泥土に規定される火山灰質粘性土に生成物
を 20%以上混合することによりコーン指数 400kN/m2
以上となり、国土交通省より発行され
た「迅速な復旧・復興に資する再生資材の宅地造成盛土への活用に向けた基本的な考え
方」に規定されている、コーン指数の規定をクリアした。また、コーン指数約 600kN/m2
の粘
性土に混合することによりさらにコーン指数が向上する傾向が得られた。生成物には粘土分
の多い土壌を良質な土質材料に改質する効果があると考えられる。
図 V.5-3 生成物混合量と強度(コーン指数)の関係
(b) 締固め試験
対象土に対し、生成物混合量を 50%とした水準で締固め試験を実施した結果を図 V.
5-4 に示す。最適含水比は粘性土で 19.7%、火山灰質粘性土で 42.5%となった。
47
図 V.5-4 締固め試験 (左)粘性土 (右)火山灰質粘性土
(c) 修正CBR試験
CBR は路床や路盤材料の表面に直径 5.0cm のピストンが 2.5mm、5mm 貫入したときの
荷重を、標準荷重に対する百分率で表した値であり、締固め度による土壌の物性値の変化
を評価する上で最適と考えられた。そこで対象土に対して生成物を 50%混合した改質土に
ついて、締固め度 90%の場合と 95%の場合について CBR 試験を実施した。表 V.5-8
に結果を示す。
生成物を添加した改質土の修正CBRは、高速道路の路床材料として使用可能であるこ
とが確認された。また、設定する締固め度によっては、路盤(下部)など工事資材にも使用
可能な修正 CBR を示すことが確認された。
表 V.5-8 修正CBR試験結果
対象土
(未処理)
生成物
混合量
(%)
最大乾燥
密度
(g/cm3
)
締固め度
(%)
修正
CBR
(%)
高速道路*1
路床 路盤(下部)
粘性土 50 1.582
90 28.9
上部:10%以上
下部: 5%以上
30%以上95 47.7
火山灰質
粘性土
50 1.142
90 24.5
95 34.0
*1:日本道路公団編:設計要領第一集土工編、p.2~40、1998.
1.30
1.35
1.40
1.45
1.50
1.55
1.60
1.65
1.70
0 10 20 30 40
乾燥密度(g/cm3)
含水比(%)
対象⼟:粘性⼟
1.00
1.05
1.10
1.15
1.20
30 40 50 60
乾燥密度(g/cm3)
含水比(%)
対象⼟:⽕⼭灰質粘性⼟
48
農業用資材としての評価
ケイ酸肥料としての評価
背景
ケイ酸肥料は水稲等のケイ酸植物に対して以下の肥効が期待でき、汎用的に利用され
ている。
 けい化細胞をつくり、病害虫に対する抵抗力を増加させる。
 稲体を丈夫にさせ、倒伏、高温障害、冷害などに強い稲にする。
 根の活力を増し生育を早め、品質を向上させる。
 受光態勢がよくなり、光合成を盛んにさせる。
表 V.6-1 に生成物及びケイ酸肥料であるケイカル(高炉スラグ肥料)の化学組成、肥料
分析法に準拠して測定したケイ酸量を示す。生成物はケイカルと成分が類似している。そこ
で、最初に水稲への生成物施用試験を行い、水稲の成育に異常がないかを確認し、さらに
可溶性ケイ酸など肥料としての成分分析を行なった。
表 V.6-1 生成物及びケイカルの化学組成
試料名
放射性
Cs 濃度
(Bq/kg)
化学組成(XRF、mass%) ケイ酸量*1
(mass%)
SiO2 CaO MgO ケイ酸全量 可溶性ケイ酸 水溶性ケイ酸
生成物① 20 26.6 56.1 1.2 25.8 25.2 <0.1
生成物② 1.8 26.6 56.1 1.2 - - -
生成物③ 20 27.5 56.2 1.1 26.8 24.8 <0.1
ケイカル - 30.0 44.0 3.0 33.9 30.9 <0.1
*1 肥料分析法
試験方法
ポットによる水稲栽培試験により、肥料としての評価を行なった。最初に水田土壌で実施
したが、ケイ酸肥料としての効果が判定しにくくなったため、可給態ケイ酸量が水田土壌より
少ない黒ボク土を用いた試験を実施した。施用条件を表 V.6-2 に示す。
供試土壌
黒ボク土 (可給態ケイ酸 11.1mg-SiO2/100g)
試験方法
 ポット(φ113×140mm)による水稲栽培試験
 標準肥料として窒素・リン・カリウムはいずれにも通常量を施用
 標準肥料のみ施用を「対照」、比較用として市販ケイ酸資材(ケイカル)添加を設置
 ポット当り 2g の生成物・ケイカルを添加(ケイカルの推奨最大量 200kg/10 アールに相当)
表 V.6-2 肥料の施用条件
試料名 供試土壌
施用した肥料
窒素・リン・カリウム 生成物① ケイカル
対照
黒ボク土
○
生成物① ○ ○
ケイカル ○ ○
49
試験結果
表 V.6-3 に移植後 41 日後の生育調査結果を示す。本試験においても生育阻害は認
められなかった。茎数、全乾量は対照区(ケイ酸質肥料無添加)と比べて有意に大きく、ケ
イ素吸収量は生成物で有意に多かった。したがって、生成物はケイカル肥料と同様にケイ
酸肥料として肥効があり、利用することができると判断された。
表 V.6-3 移植 41 日後の生育調査の調査結果(平均±SE、n = 3)
茎数
(本/ポット)
全乾重
(g/ポット)
ケイ素含量
(mg-Si/g)
ケイ素吸収量
(mg-Si/ポット)
対照 14.7±0.7a 6.83±0.08b 32.2±0.6a 220±6b
生成物① 17.3±0.3a 8.41±0.23a 30.0±1.2a 252±8a
ケイカル 16.3±0.9a 7.74±0.25a 31.8±1.1a 245±3ab
酸性土壌改良材としての評価
背景
土壌のpH は微量元素の可給性(植物にとっての吸収しやすさ)に影響し、pH が低い場
合に酸性矯正資材を添加する酸性矯正がよく行われる。福島県施肥基準では、水田では
5.5~6.5、普通畑では 6.0~6.5 が改良目標値であり、普通畑、特に野菜栽培では石灰質
肥料による酸性矯正がよく行われている。
生成物中は多量のカルシウムを含んでいることから、石灰質肥料と同様、酸性矯正資材
として期待できる。そこで、酸性資材としての評価を行うため、緩衝曲線の測定及びコマツ
ナを用いた生物施用試験を行なった。
試験方法
(a) 緩衝曲線
緩衝曲線の測定試験に用いた土壌を表 V.6-4 に示す。生成物は表 V.6-1 に示した
生成物①、②を用いた。
表 V.6-4 試験に用いた土壌
名称 状態
黒土(酸性土壌) 風乾 こげ茶色土壌
一般畑土壌(中性土壌) 風乾 茶色土壌
酸性土壌改良資材としての評価は「土壌、水質及び植物体分析法」内の中和石灰量-
緩衝曲線法に準拠して、土壌 10gに対して、生成物をそれぞれ 0、10、25、50、70、100mg
添加して実施した。
(b) 生物施用試験
供試土壌
淡色黒ボク土 (pH 5.4)
放射性物質の分離による焼却灰及び汚染土壌の資材化実証調査委託業務 phase-2
放射性物質の分離による焼却灰及び汚染土壌の資材化実証調査委託業務 phase-2
放射性物質の分離による焼却灰及び汚染土壌の資材化実証調査委託業務 phase-2
放射性物質の分離による焼却灰及び汚染土壌の資材化実証調査委託業務 phase-2
放射性物質の分離による焼却灰及び汚染土壌の資材化実証調査委託業務 phase-2
放射性物質の分離による焼却灰及び汚染土壌の資材化実証調査委託業務 phase-2
放射性物質の分離による焼却灰及び汚染土壌の資材化実証調査委託業務 phase-2
放射性物質の分離による焼却灰及び汚染土壌の資材化実証調査委託業務 phase-2
放射性物質の分離による焼却灰及び汚染土壌の資材化実証調査委託業務 phase-2
放射性物質の分離による焼却灰及び汚染土壌の資材化実証調査委託業務 phase-2
放射性物質の分離による焼却灰及び汚染土壌の資材化実証調査委託業務 phase-2
放射性物質の分離による焼却灰及び汚染土壌の資材化実証調査委託業務 phase-2
放射性物質の分離による焼却灰及び汚染土壌の資材化実証調査委託業務 phase-2
放射性物質の分離による焼却灰及び汚染土壌の資材化実証調査委託業務 phase-2
放射性物質の分離による焼却灰及び汚染土壌の資材化実証調査委託業務 phase-2
放射性物質の分離による焼却灰及び汚染土壌の資材化実証調査委託業務 phase-2
放射性物質の分離による焼却灰及び汚染土壌の資材化実証調査委託業務 phase-2
放射性物質の分離による焼却灰及び汚染土壌の資材化実証調査委託業務 phase-2
放射性物質の分離による焼却灰及び汚染土壌の資材化実証調査委託業務 phase-2
放射性物質の分離による焼却灰及び汚染土壌の資材化実証調査委託業務 phase-2
放射性物質の分離による焼却灰及び汚染土壌の資材化実証調査委託業務 phase-2
放射性物質の分離による焼却灰及び汚染土壌の資材化実証調査委託業務 phase-2

More Related Content

Similar to 放射性物質の分離による焼却灰及び汚染土壌の資材化実証調査委託業務 phase-2

資料1 フクシマエコテッククリーンセンター埋立処分計画案について
資料1 フクシマエコテッククリーンセンター埋立処分計画案について資料1 フクシマエコテッククリーンセンター埋立処分計画案について
資料1 フクシマエコテッククリーンセンター埋立処分計画案について
Kazuhide Fukada
 
フクシマエコテッククリーンセンター埋立処分計画(案)について
フクシマエコテッククリーンセンター埋立処分計画(案)についてフクシマエコテッククリーンセンター埋立処分計画(案)について
フクシマエコテッククリーンセンター埋立処分計画(案)について
Kazuhide Fukada
 
【海洋研究開発機構】平成18年環境報告書
【海洋研究開発機構】平成18年環境報告書【海洋研究開発機構】平成18年環境報告書
【海洋研究開発機構】平成18年環境報告書
env03
 
平成26年度飯舘村蕨平地区対策地域内 廃棄物等処理業務(減容化処理)に係る 生活環境影響調査 概 要 版
平成26年度飯舘村蕨平地区対策地域内 廃棄物等処理業務(減容化処理)に係る 生活環境影響調査 概  要  版 平成26年度飯舘村蕨平地区対策地域内 廃棄物等処理業務(減容化処理)に係る 生活環境影響調査 概  要  版
平成26年度飯舘村蕨平地区対策地域内 廃棄物等処理業務(減容化処理)に係る 生活環境影響調査 概 要 版
Kazuhide Fukada
 
環境保全対策の基本方針
環境保全対策の基本方針環境保全対策の基本方針
環境保全対策の基本方針
Kazuhide Fukada
 
【(独)中小企業基盤整備機構】平成18年環境報告書
【(独)中小企業基盤整備機構】平成18年環境報告書【(独)中小企業基盤整備機構】平成18年環境報告書
【(独)中小企業基盤整備機構】平成18年環境報告書
env16
 
中間貯蔵施設に関する住民説明会の配布資料について【更新 ...
中間貯蔵施設に関する住民説明会の配布資料について【更新 ...中間貯蔵施設に関する住民説明会の配布資料について【更新 ...
中間貯蔵施設に関する住民説明会の配布資料について【更新 ...
Kazuhide Fukada
 
相馬市仮設焼却炉 解体撤去工事入札
相馬市仮設焼却炉 解体撤去工事入札相馬市仮設焼却炉 解体撤去工事入札
相馬市仮設焼却炉 解体撤去工事入札
コーヒー プリン
 
平成27年度相馬市・新地町災害廃棄物代行処理施設解体撤去工事
平成27年度相馬市・新地町災害廃棄物代行処理施設解体撤去工事平成27年度相馬市・新地町災害廃棄物代行処理施設解体撤去工事
平成27年度相馬市・新地町災害廃棄物代行処理施設解体撤去工事
Kazuhide Fukada
 
Kankyou Houkoku 2009
Kankyou Houkoku 2009Kankyou Houkoku 2009
Kankyou Houkoku 2009
env15
 
2008農業・食品産業技術総合研究機構
2008農業・食品産業技術総合研究機構2008農業・食品産業技術総合研究機構
2008農業・食品産業技術総合研究機構
env20
 
福島第一原子力発電所事故に係る避難区域等における除染実証業務 【除染技術実証試験事業編】報告書
福島第一原子力発電所事故に係る避難区域等における除染実証業務 【除染技術実証試験事業編】報告書福島第一原子力発電所事故に係る避難区域等における除染実証業務 【除染技術実証試験事業編】報告書
福島第一原子力発電所事故に係る避難区域等における除染実証業務 【除染技術実証試験事業編】報告書
Kazuhide Fukada
 
20 08
20 0820 08
20 08
env20
 
私達の飲み水が危ない
私達の飲み水が危ない私達の飲み水が危ない
私達の飲み水が危ない
onokonomizu
 
Kankyou Houkoku 2008
Kankyou Houkoku 2008Kankyou Houkoku 2008
Kankyou Houkoku 2008
env15
 

Similar to 放射性物質の分離による焼却灰及び汚染土壌の資材化実証調査委託業務 phase-2 (18)

資料1 フクシマエコテッククリーンセンター埋立処分計画案について
資料1 フクシマエコテッククリーンセンター埋立処分計画案について資料1 フクシマエコテッククリーンセンター埋立処分計画案について
資料1 フクシマエコテッククリーンセンター埋立処分計画案について
 
フクシマエコテッククリーンセンター埋立処分計画(案)について
フクシマエコテッククリーンセンター埋立処分計画(案)についてフクシマエコテッククリーンセンター埋立処分計画(案)について
フクシマエコテッククリーンセンター埋立処分計画(案)について
 
【海洋研究開発機構】平成18年環境報告書
【海洋研究開発機構】平成18年環境報告書【海洋研究開発機構】平成18年環境報告書
【海洋研究開発機構】平成18年環境報告書
 
平成26年度飯舘村蕨平地区対策地域内 廃棄物等処理業務(減容化処理)に係る 生活環境影響調査 概 要 版
平成26年度飯舘村蕨平地区対策地域内 廃棄物等処理業務(減容化処理)に係る 生活環境影響調査 概  要  版 平成26年度飯舘村蕨平地区対策地域内 廃棄物等処理業務(減容化処理)に係る 生活環境影響調査 概  要  版
平成26年度飯舘村蕨平地区対策地域内 廃棄物等処理業務(減容化処理)に係る 生活環境影響調査 概 要 版
 
環境保全対策の基本方針
環境保全対策の基本方針環境保全対策の基本方針
環境保全対策の基本方針
 
【(独)中小企業基盤整備機構】平成18年環境報告書
【(独)中小企業基盤整備機構】平成18年環境報告書【(独)中小企業基盤整備機構】平成18年環境報告書
【(独)中小企業基盤整備機構】平成18年環境報告書
 
中間貯蔵施設に関する住民説明会の配布資料について【更新 ...
中間貯蔵施設に関する住民説明会の配布資料について【更新 ...中間貯蔵施設に関する住民説明会の配布資料について【更新 ...
中間貯蔵施設に関する住民説明会の配布資料について【更新 ...
 
平成27年度相馬市・新地町災害廃棄物代行処理施設解体撤去工事
平成27年度相馬市・新地町災害廃棄物代行処理施設解体撤去工事平成27年度相馬市・新地町災害廃棄物代行処理施設解体撤去工事
平成27年度相馬市・新地町災害廃棄物代行処理施設解体撤去工事
 
相馬市仮設焼却炉 解体撤去工事入札
相馬市仮設焼却炉 解体撤去工事入札相馬市仮設焼却炉 解体撤去工事入札
相馬市仮設焼却炉 解体撤去工事入札
 
平成27年度相馬市・新地町災害廃棄物代行処理施設解体撤去工事
平成27年度相馬市・新地町災害廃棄物代行処理施設解体撤去工事平成27年度相馬市・新地町災害廃棄物代行処理施設解体撤去工事
平成27年度相馬市・新地町災害廃棄物代行処理施設解体撤去工事
 
乾燥汚泥の搬出関連調査委託
乾燥汚泥の搬出関連調査委託乾燥汚泥の搬出関連調査委託
乾燥汚泥の搬出関連調査委託
 
Kankyou Houkoku 2009
Kankyou Houkoku 2009Kankyou Houkoku 2009
Kankyou Houkoku 2009
 
2008農業・食品産業技術総合研究機構
2008農業・食品産業技術総合研究機構2008農業・食品産業技術総合研究機構
2008農業・食品産業技術総合研究機構
 
福島第一原子力発電所事故に係る避難区域等における除染実証業務 【除染技術実証試験事業編】報告書
福島第一原子力発電所事故に係る避難区域等における除染実証業務 【除染技術実証試験事業編】報告書福島第一原子力発電所事故に係る避難区域等における除染実証業務 【除染技術実証試験事業編】報告書
福島第一原子力発電所事故に係る避難区域等における除染実証業務 【除染技術実証試験事業編】報告書
 
20 08
20 0820 08
20 08
 
南相馬市議会全員協議会公開資料
南相馬市議会全員協議会公開資料南相馬市議会全員協議会公開資料
南相馬市議会全員協議会公開資料
 
私達の飲み水が危ない
私達の飲み水が危ない私達の飲み水が危ない
私達の飲み水が危ない
 
Kankyou Houkoku 2008
Kankyou Houkoku 2008Kankyou Houkoku 2008
Kankyou Houkoku 2008
 

More from コーヒー プリン

飯舘から始まる森林再生と未来志向型農業体系(木質バイオマス施設)緊急整備事業実施主体の募集について 実施要領
飯舘から始まる森林再生と未来志向型農業体系(木質バイオマス施設)緊急整備事業実施主体の募集について 実施要領飯舘から始まる森林再生と未来志向型農業体系(木質バイオマス施設)緊急整備事業実施主体の募集について 実施要領
飯舘から始まる森林再生と未来志向型農業体系(木質バイオマス施設)緊急整備事業実施主体の募集について 実施要領
コーヒー プリン
 

More from コーヒー プリン (20)

中間貯蔵施設 搬入量と費用
中間貯蔵施設 搬入量と費用中間貯蔵施設 搬入量と費用
中間貯蔵施設 搬入量と費用
 
災害廃棄物の再生利用にかかる契約別支出済み額
災害廃棄物の再生利用にかかる契約別支出済み額災害廃棄物の再生利用にかかる契約別支出済み額
災害廃棄物の再生利用にかかる契約別支出済み額
 
災害廃棄物の再生利用にかかる契約済み収入済み額
災害廃棄物の再生利用にかかる契約済み収入済み額災害廃棄物の再生利用にかかる契約済み収入済み額
災害廃棄物の再生利用にかかる契約済み収入済み額
 
田村バイオマス訴訟支援の会ニュースレター第8号
田村バイオマス訴訟支援の会ニュースレター第8号田村バイオマス訴訟支援の会ニュースレター第8号
田村バイオマス訴訟支援の会ニュースレター第8号
 
飯舘から始まる森林再生と未来志向型農業体系(木質バイオマス施設)緊急整備事業実施主体の募集について 実施要領
飯舘から始まる森林再生と未来志向型農業体系(木質バイオマス施設)緊急整備事業実施主体の募集について 実施要領飯舘から始まる森林再生と未来志向型農業体系(木質バイオマス施設)緊急整備事業実施主体の募集について 実施要領
飯舘から始まる森林再生と未来志向型農業体系(木質バイオマス施設)緊急整備事業実施主体の募集について 実施要領
 
原発ゼロの会 木質バイオマスに関するヒアリング回答
原発ゼロの会 木質バイオマスに関するヒアリング回答原発ゼロの会 木質バイオマスに関するヒアリング回答
原発ゼロの会 木質バイオマスに関するヒアリング回答
 
飯舘村バイオマス発電撤回を求める要請
飯舘村バイオマス発電撤回を求める要請飯舘村バイオマス発電撤回を求める要請
飯舘村バイオマス発電撤回を求める要請
 
Saigaivolunteerreport
SaigaivolunteerreportSaigaivolunteerreport
Saigaivolunteerreport
 
田村バイオマスエナジー地域協議会
田村バイオマスエナジー地域協議会田村バイオマスエナジー地域協議会
田村バイオマスエナジー地域協議会
 
20190906田村バイオマス訴訟記者会見資料
20190906田村バイオマス訴訟記者会見資料20190906田村バイオマス訴訟記者会見資料
20190906田村バイオマス訴訟記者会見資料
 
20180525田村市議会向け事業者説明資料抜粋
20180525田村市議会向け事業者説明資料抜粋20180525田村市議会向け事業者説明資料抜粋
20180525田村市議会向け事業者説明資料抜粋
 
田村バイオマス訴訟提起の経緯と趣旨、活動経過(大越町の環境を守る会)
田村バイオマス訴訟提起の経緯と趣旨、活動経過(大越町の環境を守る会)田村バイオマス訴訟提起の経緯と趣旨、活動経過(大越町の環境を守る会)
田村バイオマス訴訟提起の経緯と趣旨、活動経過(大越町の環境を守る会)
 
令和元年度クリーンセンターふたば線量低減措置等工事
令和元年度クリーンセンターふたば線量低減措置等工事 令和元年度クリーンセンターふたば線量低減措置等工事
令和元年度クリーンセンターふたば線量低減措置等工事
 
鮫川村実証実験仕様書
鮫川村実証実験仕様書鮫川村実証実験仕様書
鮫川村実証実験仕様書
 
Osen inawara.2014
Osen inawara.2014Osen inawara.2014
Osen inawara.2014
 
楢葉町仮設焼却炉・セメント固形化施設 住民説明会資料
楢葉町仮設焼却炉・セメント固形化施設 住民説明会資料楢葉町仮設焼却炉・セメント固形化施設 住民説明会資料
楢葉町仮設焼却炉・セメント固形化施設 住民説明会資料
 
田村市情報公開審査会
田村市情報公開審査会田村市情報公開審査会
田村市情報公開審査会
 
Baiomass20190305
Baiomass20190305Baiomass20190305
Baiomass20190305
 
20180722 gomibenren
20180722 gomibenren20180722 gomibenren
20180722 gomibenren
 
20180729oogoe machi aoki
20180729oogoe machi aoki20180729oogoe machi aoki
20180729oogoe machi aoki
 

放射性物質の分離による焼却灰及び汚染土壌の資材化実証調査委託業務 phase-2

  • 2. 目次 I. 実証調査委託業務の概要 .............................................. 1 実証調査委託業務の背景 ........................................... 1 実証調査委託業務の目的 ........................................... 1 仕様書における実証調査委託業務の基本条件及び内容 ................. 1 業務の基本条件 ............................................. 1 業務内容 ................................................... 2 業務期間 ................................................... 2 実証調査委託業務の体制 ........................................... 3 II. 処理対象物の収集・運搬・保管 ........................................ 4 処理対象物の収集・運搬 .......................................... 4 除去土壌 .................................................. 4 焼却灰 .................................................... 4 処理対象物の性状 ................................................ 5 除去土壌 .................................................. 5 焼却灰 .................................................... 6 III. 仮設資材化施設の運転管理、モニタリング ............................ 8 運転管理体制と運転計画 ......................................... 8 運転管理体制 ............................................. 8 運転計画 ................................................. 8 安全管理体制 ................................................... 9 施設の安全管理組織 ....................................... 9 緊急連絡体制 ............................................. 9 緊急時報告内容とそのタイミング ........................... 9 操作及び作業標準とチェックリストの整備 ................... 9 実証運転 ...................................................... 10 資材化実証試験 .......................................... 10 前処理設備棟内での作業状況及びその効果 .................. 12 電気炉試験による検証 .................................... 13 排ガスモニタリング ............................................ 18 地下水等の放射性セシウム濃度 .................................. 18 施設周辺への影響 .............................................. 19 施設敷地内空間線量率 .................................... 19 敷地境界での騒音・振動レベル ............................ 21 作業従事者の安全性 ...................................... 22 IV. 生成物及び副産物の保管管理 ......................................... 27 生成物の保管管理 ............................................... 27
  • 3. 副産物の保管管理 .............................................. 27 V. 生成物の品質調査及び工事資材への活用検討........................... 28 生成物の環境安全性 .............................................. 28 重金属の含有・溶出 ........................................ 28 放射性 Cs の溶出 ........................................... 28 生成物の品質調査 ................................................ 29 未反応石灰量の影響 ........................................ 29 コンクリート用細骨材としての評価 .......................... 31 総合評価運転の生成物の評価 ................................ 32 アルカリ骨材反応性評価 .................................... 34 IL ブロックの製造 ................................................ 35 車道用 IL ブロック製造のための配合検討、物性評価 ........... 35 施設内での IL ブロックの試験製造 ........................... 37 車道用 IL ブロックの製造及び敷設 ........................... 38 IL ブロック大量製造 ........................................ 38 U字溝及びU字溝蓋の試験製造 .................................... 41 試験概要 .................................................. 41 配合 ...................................................... 41 U 字溝及び U 字溝蓋の作製 ................................... 41 盛土の評価 ...................................................... 43 試験盛土の施工 ............................................ 43 混合盛土としての評価 ...................................... 44 農業用資材としての評価 .......................................... 48 ケイ酸肥料としての評価 .................................... 48 酸性土壌改良材としての評価 ................................ 49 VI. 仮設資材化施設の性能、放射性物質の挙動、コスト等の検証............. 52 良品率及び規格外品中の放射性 Cs 濃度 ............................ 52 副産物への濃縮率及び減量率 ..................................... 53 物質収支・放射能収支・熱収支 ................................... 54 物質収支及び放射能収支 ................................... 54 熱収支 ................................................... 57 施設の耐久性 ................................................... 58 補修修繕履歴から見た耐久性評価 ........................... 58 定期点検結果による耐久性評価 ............................. 60 炉耐火物への放射性 Cs 蓄積 ................................ 61 コスト評価 ..................................................... 64 実証施設におけるコスト評価 ............................... 64 実機スケールにおけるコスト評価 ........................... 64
  • 4. VII. アドバイザリー委員会 ............................................. 66 第 1 回アドバイザリー委員会開催結果 ............................ 66 第 2 回アドバイザリー委員会開催結果 ............................ 66 第 3 回アドバイザリー委員会開催結果 ............................ 67 VIII. 打ち合わせ協議 ................................................... 68 IX. 地元協議会対応 ..................................................... 69
  • 5. 1 I. 実証調査委託業務の概要 実証調査委託業務の背景 福島県内において発生し、仮保管されている放射性セシウム(以降 Cs と称す)汚染廃棄 物のうち、10 万 Bq/kg を超えるものや汚染土壌については、中間貯蔵施設に集約して、一 定期間安定的に貯蔵及び管理を行なった後、最終処分することとされている。最終処分の 方針については、放射性 Cs の効果的な分離等の技術の発展によるところが大きく、そのた めの技術の開発・実証が重要な課題となっている。 実証調査委託業務の目的 本業務は飯舘村蕨平地区において、焼却灰及び汚染土壌に含まれる放射性 Cs を分離 し、再生利用可能なレベルまで放射性 Cs 濃度を低減させ、工事資材(盛土材、路盤材及び コンクリート用骨材等)として有効活用することが可能となる生成物を得るための新技術を実 証するものである。 仕様書における実証調査委託業務の基本条件及び内容 業務の基本条件 仮設資材化施設の規模 10t/日程度の処理能力を有する仮設資材化施設を用いる。 処理対象物 焼却灰は同一敷地内に併設された仮設焼却炉から発生したもの、汚染土壌は飯舘村内 の除染作業で発生した除去土壌とし、合計 800t程度を処理する。ただし、処理の進捗状況 に応じた変動はあり得るものとする。 生成物の品質 発生する生成物が工事資材として利用可能となるよう、以下の条件を満足するものとする。 ① 道路や河川事業等の屋外での公共事業への利用を想定し、生成物の放射性 Cs 濃度は再生利用可能なレベルとすること。 ② 工事資材の代替として利用可能である旨を証明すること。 ③ 品質のばらつきがないこと等の条件を満足すること。
  • 6. 2 業務内容 処理対象物の収集・運搬 処理対象物は、飛散、流出、漏出しないよう容器に入れるなど、放射性物質汚染対処特 措法等の各種法令に基づき、保管(発生)場所から仮設資材化施設まで収集・運搬し、保管 する。 仮設資材化施設の運転管理、モニタリング 放射性物質汚染対処特別措置法、電離放射線障害防止規則等の各種法令を遵守した 運転管理計画を作成し、仮設資材化施設の実証調査を行う。実証調査時は、運転管理デ ータを適切に計測するとともに周辺環境のモニタリングを実施し、生成物及び放射性 Cs が 高濃度に濃縮された副産物の性状や仮設資材化施設の性能、安全性等を確認する。運転 計画を維持するうえで処理対象物に前処理等が必要となる場合には、適切な対応を行う。 生成物及び副産物の保管管理 発生した生成物は、場内の生成物仮設保管施設まで運搬し、品質を損なわないよう適切 に保管管理する。また、副産物は、放射性物質汚染対処特別措置法や電離放射線障害防 止規則等の法令に基づき、適切な容器に封入した上で場内の副産物仮設保管施設まで運 搬し、飛散や流出が生じないよう適切に保管管理する。 生成物の品質調査及び工事資材への活用検討 生成物が、工事資材として活用可能であることを品質調査や試験施工等によって証明す るとともに、生成物の有効活用に向けて関係諸機関との調整のための資料作成等を行う。 仮設資材化施設の性能、放射性物質の挙動、コスト等の検証 実証調査から得られた様々な結果に基づき、仮設資材化施設の性能、放射性 Cs の挙動、 コスト等を検証し、仮設資材化施設の実用性を評価する。 アドバイザリー委員会による評価 (1)から(5)の各業務を遂行するに当たり、その妥当性を評価するため、外部の有識者な どを構成員とする非公開のアドバイザリー委員会を、平成 28 年度業務で1回、平成 29 年度 業務で 2 回程度開催する。なお、アドバイザリー委員会で得られた客観的な評価は、可能な 限り本業務に反映させる。 打合せ協議 環境省担当官と業務着手時、中間時、業務完了前に行うものとし、打合せ後、受託者は 打合せ議事録を環境省担当官に提出する。 報告書とりまとめ 各年度業務における成果を整理し、報告書としてとりまとめる。 地元協議会対応 飯舘村蕨平地区可燃性廃棄物減容化事業に係る協議会等への出席及び資料作成を行 う。 業務期間 平成 28 年 11 月 1 日~平成 30 年 3 月 31 日
  • 7. 3 実証調査委託業務の体制 図 I.4-1 に示す体制及び役割分担により業務を行なった。 図 I.4-1 業務実施体制及び役割分担 業務内容 日揮(株) 太平洋 セメント(株) 太平洋 エンジニア リング(株) 日本 下水道 事業団 農業・食品産業技術 総合研究機構 東北農業研究センター 農業・食品産業技術 総合研究機構 中央農業研究センター 全体総括・プロジェクト管理 ◎ ― ― ― ― ― (1)処理対象物の収集・運搬・保管 - ◎ ― ― ― ― (2)仮設資材化施設の運転管理、モニタリング ○ ◎ ○ アドバイス アドバイス アドバイス (3)生成物及び副産物の保管管理 ○ ◎ ― ― ― ― (4)生成物の品質調査及び工事資材への活用 検討 ○ ◎ ― アドバイス ○ 生成物の品質調査及び 工事資材への活用検討 ○ 有機系除染物の燃料 利用技術検討 (5)仮設資材化施設の性能、放射性セシウム挙 動、コスト等の検証 ○ ◎ ○ ― ― ― (6)アドバイザリー委員会による評価 ○ ○ ○ ― ○ ○ (7)打ち合わせ関連 ◎ ○ ○ ◎ 運営・取り纏め ― ― (8)報告書とりまとめ ◎ ○ ○ (9)地元協議会対応 ◎ ○ ○ 環境省 日揮(株) 太平洋 セメント(株) 太平洋 エンジニア リング(株) 日本 下水道 事業団 農業・食品産業技術 総合研究機構 東北農業研究センター 農業・食品産業技術 総合研究機構 中央農業研究センター ◎は主担当、○は担当を意味する 代表企業 : 日揮㈱ 業務実施体制 各者役割分担
  • 8. 4 II. 処理対象物の収集・運搬・保管 処理対象物の収集・運搬 除去土壌 Phase-1 では小宮仮置場に保管中の小宮地区、草野地区、長泥地区の農地除染で発生 した除去土壌を収集・運搬した。Phase-2 においては蕨平仮置場に保管中の宅地除染で発 生した除去土壌を収集・運搬した。 運搬は、『除去土壌の収集・運搬に関するガイドライン(平成 25 年 5 月 第 2 版)』及び 『特定廃棄物関係ガイドライン(平成 25 年 3 月 第 2 版)』に従い、要件として「運搬車両の 表面から1m離れた位置での最大空間線量率が 100μSv/h を超えないこと」を確認し、あわ せて搬送対象フレキシブルコンテナ(以下コンテナバッグと称す)の表面線量率の測定を行 なった。表 II.1-1 に Phase-2 で運搬した除去土壌の量を示す。受入れた除去土壌は 92 袋 (125.9t)であった。 表 II.1-1 除去土壌の運搬量 焼却灰 焼却灰は、Phase1 と同様に、隣接する仮設焼却炉から発生した流動床飛灰及びストーカ 主灰を収集・運搬した。運搬は、除去土壌と同様の方法で実施した。表 II.1-2 に運搬した 焼却灰の量を示す。Phase-2 に隣接する仮設焼却炉から受入れた焼却灰は 132 袋(144.8t) であった。内訳は、流動床飛灰が 102 袋(106.4t)、ストーカ主灰が 30 袋(38.4t)であった。 表 II.1-2 焼却灰の運搬量 運搬日 コンテナバッグ数 (袋) 重量 (kg・湿) 平成 28 年度 1 回目 平成 28 年 11 月 03 日 12 16,835 2 回目 平成 28 年 11 月 29 日 16 22,526 3 回目 平成 28 年 12 月 19 日 8 10,437 4 回目 平成 29 年 03 月 29 日、30 日 24 32,704 平成 29 年度 5 回目 平成 29 年 06 月 02 日、05 日 32 43,354 合計 92 125,855 運搬日 コンテナバッグ数 (袋) 重量 (湿・kg) 灰種 平成28年度 1 回目 平成 28 年 11 月 04 日 12 11,460 流動床飛灰 2 回目 平成 28 年 12 月 03 日 15 16,372 流動床飛灰 3 回目 平成 28 年 12 月 22 日 10 10,069 流動床飛灰 平成29年度 1 回目 平成 29 年 04 月 20 日 35 34,299 流動床飛灰 2 回目 平成 29 年 07 月 12 日 8 8,868 流動床飛灰 10 11,486 ストーカ主灰 3 回目 平成 29 年 09 月 12 日 7 7,463 流動床飛灰 4 回目 平成 29 年 09 月 20 日 7 8,642 ストーカ主灰 5 回目 平成 29 年 11 月 13 日 13 18,253 ストーカ主灰 6 回目 平成 29 年 12 月 15 日 15 17,911 流動床飛灰 合計 132 144,823
  • 9. 5 処理対象物の性状 除去土壌 蕨平仮置場に保管してある除去土壌を運搬する際、事前にコンテナバッグ表層物を確認 し、コンテナバッグ側面の触感で、大石・草木類等夾雑物の多いコンテナバッグや水分が多 いコンテナバッグは排除した。さらに前処理設備棟内で輸送機等でのトラブルを回避するた め、岩石や草木類の伐根は排除した。事前に除去した夾雑物の割合は、草木類が全体の 0.06%、岩石類が 0.1%となった。 コンテナバッグごとに除去土壌を採取し、水分量、放射性 Cs 濃度及び化学組成を測定し た。表 II.2-1 にその結果を示す。さらに Phase-1 で使用した小宮仮置場のそれもあわせて 示す。 水分量は Phase-1 と Phase-2 で大差なかった。放射性 Cs 濃度は Phase-1 では長泥地 区の除去土壌が高く、約 60,000Bq/kg-湿の除去土壌も存在したが、Phase-2 で使用した除 去土壌は放射性 Cs 濃度がすべて 30,000Bq/kg-湿以下で、平均値も Phase-1 より低かっ た。 化学組成は SiO2 量及び強熱減量はコンテナバッグごとに差があったものの、他の成分に 関してはコンテナバッグごとの差は小さかった。また、Phase-1 で使用した除去土壌と比べて、 SiO2 量、Na2O 量、K2O 量が高く、Al2O3 量、Fe2O3 量、CaO 量が少なかったが、反応促進剤 の混合量が極端に変動するほどの差ではないと判断された。 表 II.2-1 受入除去土壌の水分量、放射性 Cs 濃度及び化学組成 水分量 放射性 Cs濃度* 化学組成 強熱 減量SiO2 Al2O3 Fe2O3 CaO MgO SO3 Na2O K2O P2O5 Cl mass% Bq/kg 湿 mass% Phase-2 平成 29 年度 平均 33.8 11,600 57.8 15.2 3.9 1.5 0.9 0.1 1.4 2.5 0.4 0.0 15.9 最大 44.5 28,300 63.8 17.5 6.1 2.0 1.1 0.2 2.1 3.2 0.5 0.0 19.9 最小 24.3 7,800 53.3 13.5 3.0 1.0 0.6 0.0 0.7 2.0 0.1 0.0 10.5 標準偏差 5.8 3,700 2.3 0.9 0.7 0.2 0.1 0.0 0.3 0.3 0.1 0.0 2.2 平成 28 年度 下期 平均 32.9 12,700 58.1 14.4 3.8 1.6 0.9 0.1 1.5 2.5 0.4 0.0 16.2 最大 44.4 24,000 64.6 16.2 4.8 2.6 1.2 0.4 2.2 3.1 0.7 0.0 36.2 最小 15.6 2,640 46.4 6.8 3.2 0.9 0.7 0.0 1.1 2.0 0.1 0.0 9.4 標準偏差 7.3 4,800 3.5 1.5 0.3 0.3 0.1 0.1 0.2 0.3 0.1 0.0 4.6 Phase-1 平成 28 年度 上期 平均 32.9 15,600 54.2 16.8 5.6 2.3 2.1 0.2 1.3 1.8 0.3 0.0 14.6 最大 46.9 59,900 58.7 18.4 7.2 3.8 4.1 0.4 1.7 2.4 0.4 0.0 19.9 最小 15.1 1,290 48.6 15.1 4.7 1.7 1.4 0.2 0.9 1.3 0.2 0.0 10.2 標準偏差 5.7 8,370 2.7 0.6 0.5 0.5 0.6 0.1 0.2 0.3 0.0 0.0 2.3 *放射性 Cs 濃度値は 2 桁のものは 2 桁、3 桁のものは上から 2 桁、4 桁以上のものは上から 3 桁にしている。
  • 10. 6 焼却灰 仮設焼却炉で受入れた焼却灰はコンテナバッグ内で硬化していたため、新設された前処 理設備棟内に設置した破砕設備等を用いて破砕した。さらにストーカ主灰に含まれた釘等の 金属が原料粉砕機の定量供給機に詰まるトラブルが頻発したため、乾燥機出口に磁選機を 設置した。この結果、焼却灰乾燥・粉砕の際のトラブルは大幅に減少した。しかし、磁選機で 除去できなかった SUS(ステンレス)等の金属も存在した。これらが原料粉砕機内で噛み込み 等悪影響を与える場合があったことから、実用機では SUS やアルミニウムなどを除去できる選 別機が必要と考えられる。 受入れた焼却灰はコンテナバッグごとに水分量を測定した。さらにロットごとに焼却灰の原 灰(水及びキレート剤を添加していない焼却灰)を入手し、放射性 Cs 濃度及び化学組成を 測定した。表 II.2-2 に流動床飛灰、表 II.2-3 にストーカ主灰の水分量、放射性 Cs 濃度 及び化学組成をそれぞれ示す。Phase-1 の焼却灰のそれもあわせて示す。Phase-1 では水 分量の多い灰により輸送系統での排出不良を生じる場合があったが、Phase-2 では水分量 25%を超えるような焼却灰はなかった。その結果ホッパ内への付着等、排出不良を生じるケ ースはなかった。流動床飛灰とストーカ主灰を比べると、流動床飛灰のほうが水分量は多か った。 Phase-2 では放射性 Cs 濃度の高い流動床飛灰を用いた実証試験を行なった関係もあり、 Phase-1 より放射性 Cs 濃度の平均値は高くなった。 化学組成は流動床飛灰、ストーカ主灰いずれも、SiO2 量、CaO 量、P2O5 量、Cl 量等に若 干の増減はあり、それに応じて、反応促進剤の添加量を調整した。 流動床飛灰とストーカ主灰を比較すると流動床飛灰のほうが、SiO2 量が少なく、Al2O3 量が 多かった。そのため、カルシウム源、リン源、塩素源の添加のみでは、溶融しやすさに影響を 及ぼすケイ酸率〔SiO2/(Al2O3+Fe2O3)、以降 SM と称す〕が流動床飛灰使用時のほうが低く なる。そこで、ストーカ主灰と SM が同等になるように、流動床飛灰使用時にシリカ源を添加し た。CaO 量、Cl 量は流動床飛灰のほうがストーカ主灰よりも高かった。 表 II.2-2 流動床飛灰の水分量、放射性 Cs 濃度及び化学組成 水分 量 放射性 Cs濃度 化学組成 SiO2 Al2O3 Fe2O3 CaO MgO SO3 Na2O K2O P2O5 Cl mass% Bq/kg mass% Phase-2 平成 29 年度 平均 13.8 78,700 51.0 16.2 5.7 8.6 1.7 1.2 1.3 3.2 0.6 2.2 最大 16.1 130,000 65.2 19.2 6.6 17.4 2.6 4.3 1.8 5.0 0.7 5.2 最小 11.3 29,000 38.3 12.2 4.0 4.1 1.1 0.5 0.7 2.5 0.4 0.3 標準偏差 1.0 36,300 6.2 1.8 0.6 2.9 0.4 0.6 0.3 0.7 1.6 0.6 平成 28 年度 下期 平均 14.9 35,800 53.3 13.6 5.4 9.0 1.7 1.4 1.3 3.1 2.9 1.1 最大 22.5 102,000 60.7 16.0 6.1 12.0 2.0 2.2 1.7 4.0 5.2 2.6 最小 11.3 11,300 48.2 10.2 3.6 6.6 1.3 0.7 1.1 2.5 0.9 0.2 標準偏差 2.5 29,400 2.8 1.6 0.7 1.4 0.2 0.4 0.2 0.5 1.3 0.8 Phase-1 平成 28 年度 上期 平均 15.2 23,600 52.4 13.8 5.3 9.7 1.7 1.4 1.3 3.1 3.4 0.9 最大 28.0 59,000 65.8 17.2 6.6 18.7 2.3 3.6 2.2 3.9 7.2 6.7 最小 8.8 8,010 36.6 10.9 4.2 3.4 1.0 0.2 1.0 2.3 0.1 0.1 標準偏差 4.2 5.4 1.8 0.6 2.9 0.3 0.7 0.2 0.4 1.8 1.2
  • 11. 7 表 II.2-3 ストーカ主灰の水分量、放射性 Cs 濃度及び化学組成 水分 量 放射性 Cs濃度 化学組成 SiO2 Al2O3 Fe2O3 CaO MgO SO3 Na2O K2O P2O5 Cl mass% Bq/kg mass% Phase-2 平成 29 年度 平均 6.9 37,700 59.5 14.0 5.5 4.4 1.7 0.0 1.2 3.2 3.8 0.0 最大 10.5 56,000 61.6 14.7 6.2 5.0 2.0 0.2 1.3 3.5 5.6 0.0 最小 5.6 20,000 53.5 13.2 4.7 4.2 1.2 0.0 1.0 2.9 1.4 0.0 標準偏差 1.8 6,440 2.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0.1 0.1 0.2 0.9 0.0 Phase-1 平成 28 年度 上期 平均 3.5 29,700 58.1 14.4 6.9 5.4 1.8 0.2 1.4 3.1 3.2 0.0 最大 - 48,000 60.2 15.0 7.4 6.0 2.0 0.2 1.4 3.5 4.4 0.1 最小 - 12,400 55.6 13.6 6.1 4.5 1.5 0.1 1.3 2.6 1.3 0.0 標準偏差 - 14,700 2.0 0.6 0.6 0.6 0.2 0.1 0.1 0.4 1.3 0.0
  • 12. 8 III. 仮設資材化施設の運転管理、モニタリング 運転管理体制と運転計画 運転管理体制 運転管理及び実証試験の実施体制を図 III.1-1 に示す。 資材化施設運転担当では、休日対応のためにオペレータ、分析員、重機オペレータを各 1 名増員し、23 名体制となった。また、平成 29 年度下期より、新たに生成物を利用したイン ターロッキングブロック(以下、IL ブロックと記載)の製造を開始した。この対応として、IL ブロッ ク製造担当として 8 名増員し対応した。その結果、総勢 46 名体制となった。 図 III.1-1 施設の運転管理体制図 運転計画 Phase-2 では 15 回(RUN12~RUN26)、生成物規格外品(処理対象物を資材化したが Cs 濃度が 100Bq/kg 以下とならなかったもの)の再処理を 2 回(RUNⅢ、Ⅳ)計画した。RUN13 までの運転は、前処理設備(原料乾燥+原料調合)を 5 日間連続、資材化設備を 7 日間連 続とし、これを1サイクル(RUN)としていた。しかし、施設の立上げ、立下げの頻度が増加する ことにより規格外品の発生量が増加するという課題が生じた。そのため、RUN14 以降は、1 回 当たりの運転(RUN)で調合ブレンダ 3~4 基分の調合原料を製造(17.5t/基)し、資材化実証 運転を行なった。 また、昨年度の課題のひとつであった、“施設の立上げ・立下げ時に所定の熱負荷量に達 していない原料が排出され、輸送系統を汚染する”ことに対し、立上げ・立下げに使用する原 料を放射性 Cs 濃度の低い規格外品にすることで、輸送系統の汚染を防止し、新たな規格 外品の発生を抑制することとした。 総勢:45名 :2名 :2名 :3名 :1名 :1名 :5名 :2名 :5名 :5名 :8名 :4名 平成30年2月15日現在  施設責任者(1名) 施設責任者代理(1名) 運転管理(7名)放射線管理責任者(1名) 業務担当(1名) 放射線管理者(4名) 係長 オペレータ 分析員 運転 設備 技術 運転補助員 重機オペレータ ILブロック製造担当(8名) 職長 粒度調整 ブロック製造 資材化施設運転担当(23名) 総勢:46 名
  • 13. 9 なお、資材化施設は 24 時間連続運転として、運転担当及び放射線管理要員の勤務形 態は 4 直 3 交替で実証試験を実施した。 平成 29 年度下期より運転を開始した IL ブロック製造施設は、常駐勤務帯で 6 日/週の稼 動、製造目標は 240 個/日とした。 安全管理体制 施設の安全管理組織 当該施設は労働安全衛生法第 12 条の(2)により常時 10 人以上 50 人未満の労働者を使 用する事業所に相当し、労働基準監督署への報告義務は無いが、「安全衛生推進者」また は「衛生推進者」を選任する事業所に該当するため「衛生推進者」を選任し、安全管理組織 を編成して安全管理を徹底した。 なお、平成 28 年度 Phase-2 では施設運営業務の一部を請け負っている請負会社代表 者からの推進委員は1名であったが、IL ブロック施設の稼動を開始したことから、推進委員 2 名とした。 緊急連絡体制 業務に係る事故や災害発生時の緊急連絡に速やかに対応するため、緊急時連絡体制を 構築した。これを作業従事者に徹底するため、全ての作業従事者の入構教育時に配布説 明すると同時に緊急時対応マニュアルに掲載し、施設内各所に掲示した。 緊急時報告内容とそのタイミング 緊急時連絡体制に従い、緊急事象ごとに適切なタイミングで報告連絡を行うこととした。 操作及び作業標準とチェックリストの整備 前処理設備の運用開始に伴い、平成 28 年度に作成した作業標準書とチェックリストに加 え、下記に示す作業標準書を作成した上で運用した。 資材化炉内耐火物張替え作業における放射線管理 平成 29 年 8 月末に耐火物の張替え工事を実施したが、これに先立ち放射線管理要綱を 作成し、作業者の放射線障害防止と環境保全に対応した。 IL ブロック製造設備作業標準書 IL ブロック製造施設の運用開始に合わせ作業標準書を作成した。 車両系荷役運搬機械作業計画書 IL ブロック製造施設運用に際し、バックホウでの生成物の荷卸、フォークリフトでの移動作 業が発生することとなり、事前に『車両系荷役運搬機械作業計画書』を作成し作業に取り掛 かることとした。
  • 14. 10 実証運転 資材化実証試験 Phase-2 では RUN12~RUN26 の計 15 回の資材化実証試験を実施し、除去土壌 127t、 流動床飛灰 119t、ストーカ主灰 50t、計 296t処理した。さらに RUNⅢ、RUNⅣにおいては実 証試験中に生じた 100Bq/kg を超過する生成物(規格外品と称す)の再処理を行なった。生 成物(良品)は 719.1t、副産物は 32.0t発生した。 Phase-2 全体の運転概要を表 III.3-1 に示す。RUN ごとの運転概要を表 III.3-2 に示 す。 表 III.3-1 Phase-2 運転概要 期間 運転概要 生じた課題 平成 28 年 4 月~10 月 (Phase-1、RUN1 ~11) ・除去土壌 100%処理時においては安定して 100Bq/kg 以 下となったが、流動床飛灰 100%処理時はコーチング付着 により、安定運転できない状況となった。除去土壌と流動床 飛灰の混合品の処理においても良品率は低い状態であっ た。 ・ 焼 却 灰 使 用 時 の 安 定運転方法の検討。 平成 28 年 11 月~12 月 (RUN12~14) ・除去土壌と流動床飛灰の混合原料を用いて、最適運転を 試みたが、装置トラブル(調合ブレンダからの曳出不良等) により安定運転ができなかった。 ・ 焼 却 灰 使 用 時 の 安 定運転方法の検討。 ・設備修繕。 平成 29 年 1 月~3 月 (RUN15~17) ・電気炉試験の結果に基づき原料の CaO/SiO2(以降 C/S と 称す)を上げて(C/S=3.2)運転した。その結果、土壌だけで なく流動床飛灰 100%においても高い良品率が得られた。 ・立上げ・立下げ時に発生する規格外品量を低減し、かつ長 期運転の影響を確認するために設備改造を実施した。その 結果 1RUN あたりの原料量が増加した(36t⇒72t)。 ・前処理設備(土壌改質、焼却灰破砕)が稼働した(RUN17 以降)。その結果、処理対象物の乾燥・粉砕時のトラブルが 大幅に減少した。 ・ストーカ主 灰 を 用 い た運転では、輸送系 トラブル等が生じ、安 定 運 転 で き て い な い。 ・C/S を上 げたことに 伴 い 生 成 物 中 に 多 量の未反応石 灰(f- CaO と称す)が残留。 平成 29 年 4 月~11 月 (RUN18~23) ・調合原料送入スクリューコンベアの修繕によりストーカ主灰 においても安定供給できるようになった(RUN23 以降)。 ・最適運転方法を検討した結果、コーチングが成長した際に も温度 1300℃以上を維持することにより、コーチングがある 程度の厚さになると、バーナ炎に炙られるようになり軟化し て、自然落下。その結果、焼却灰使用時にも生成物を安定 して 100Bq/kg 以下にできることを確認した。 ・C/S を徐々に下げた運転を実施した。その結果、安定して 生成物を 100Bq/kg 以下にでき、かつ生成物のf-CaO を 1%以下にできる条件は以下のとおりとなった。 除去土壌 C/S=2.1 流動床飛灰 C/S=2.5 ストーカ主灰 C/S=2.7 ・放射性 Cs 濃度 10 万 Bq/kg 以上の焼却灰においても、生 成 物 を安 定 して 100Bq/kg 以 下 にできることを実 証 した (RUN22)。 特になし。 平成 28 年 11 月 ~ 平成 29 年 1 月 (RUN24~26) ・総合評価運転 除去土壌 100%(RUN24) C/S=2.1 で良品率 99%、f-CaO 量 0.5% ストーカ主灰 100%(RUN25) C/S=2.9 で良品率 99%、f-CaO 量 1.3% 流動床飛灰 100%(RUN26) C/S=2.6 で良品率 95%、f-CaO 量 0.5% 特になし。
  • 15. 11 表 III.3-2 RUN ごとの運転概要
  • 16. 12 前処理設備棟内での作業状況及びその効果 Phase-1 において、除去土壌及び焼却灰の前処理工程時に輸送系統のトラブルが生じ、 運転が困難になるケースが頻発した。そこで新たに前処理設備棟を新設し、「振動篩設備 (波動式スクリーン)」と「破砕設備(二軸ロール式解砕機)」を設置した。さらに重機(バック ホウ)を用いて除去土壌の改質や焼却灰を破砕するスペースを設けた。写真 III.3-1 に前 処理設備棟内の状況を示す。各設備は平成 29 年 2 月末(RUN17 以降)より稼動した。 写真 III.3-1 前処理設備棟内の状況 除去土壌の改質 Phase-1 において除去土壌の前処理工程時、水分が多い場合にホッパ等に付着し、排 出不良が生じるケースや、砕石や伐根等の夾雑物による詰まりや噛み込みによる輸送系の トラブルが頻発した。そこで、前処理設備棟内で異物除去及び土壌の改質を実施した。 作業内容を以下に示す。 ① 土壌を改質エリアに搬入し、除去土壌を広げた。 ② 人海にて夾雑物を除去した。 ③ バックホウにて振動篩に投入し篩い分けにより、人海で除去できなかった伐根等を除去 した。 ④ 再び改質エリアに広げた後、改質材(主に規格外品)を投入し、バックホウで均一に混合 することにより水分量を 25%以下にした。 ⑤ 十分に混合した後、コンテナバッグに投入した。 焼却灰の破砕 Phase-1 において隣接する仮設焼却炉から提供された焼却灰がコンテナバッグ内で硬化 しており、重機や人力での破砕作業が生じ、多大な労力を要した。そこで、硬化した焼却灰 を破砕する設備を導入し、前処理設備棟内で硬化した焼却灰の破砕を行なった。
  • 17. 13 作業内容を以下に示す。 ① 焼却灰を破砕エリアに搬入した。 ② 硬化した焼却灰はコンテナバッグごとバックホウを用いて破砕した。 ③ ある程度破砕された状態で破袋したコンテナバッグから焼却灰を取り出した。 ④ 焼却灰をバックホウで可能な限り破砕した。 ⑤ 破砕できずに大塊として残った焼却灰を破砕機に投入して破砕した。 ⑥ 破砕した焼却灰をコンテナバッグに投入した。 いずれにおいても、前処理設備稼働後、処理対象物の乾燥工程において輸送系のトラ ブル(ホッパへの付着、詰まり等)の頻度が大幅に減少し、安定して乾燥できるようになった。 その結果、前処理設備導入前は運転補助員が常時監視していたのに対し、前処理設備導 入後は定期的に監視するのみとなり、監視作業に係る負担も大幅に軽減された。 電気炉試験による検証 Phase-2 においては、資材化実証試験と並行して電気炉試験も実施し、原料調合条件 が Cs の除去特性に及ぼす影響等について評価を行なった。 C/S の影響 (a) Cs 除去特性 試験条件  処理対象物 流動床飛灰(放射性 Cs 濃度 27,200Bq/kg)  Cl/K=1.1  保持時間 1時間  C/S 及び熱処理温度を変化 結果  C/S が 2.0 以上では熱処理温度 1300℃で生成物の放射性 Cs 濃度が 100Bq/kg 程 度、1350℃で 50Bq/kg 以下となり、C/S による顕著な差は認められなかった(図 III. 3-1)。  低 CaO 領域では、C/S=1.8 及び C/S=2.0 は大差ない挙動であった(図 III.3-2)。  C/S=1.5 以下の場合、生成物が溶融しない範囲で温度を上げた場合には、温度の増加 に伴い生成物中の放射性 Cs 濃度が徐々に低下したが、生成物が溶融する温度になる と生成物中の放射性 Cs 濃度は高くなり、生成物を 100Bq/kg 以下にできなかった(図 III.3-2)。  カルシウム源、塩素源無添加の場合には温度を上げても放射性 Cs は揮発せず、熱処 理前の原料とほぼ同程度の放射性 Cs 濃度となった。
  • 18. 14 図 III.3-1 原料の C/S と生成物中の放射性 Cs 濃度の関係 図 III.3-2 低 C/S 領域での温度と生成物中の放射性 Cs 濃度の関係
  • 19. 15 (b) 耐火物との付着 試験条件 C/S を変化させて作製したペレットをアルミナ質レンガの上に載せて、種々の温度で1時 間熱処理した際のアルミナ質レンガとの付着性を評価 結果  1300℃で熱処理後に取り出した場合には、いずれのペレットも耐火物面から容易に剥が せた。  1350℃では C/S=2.5 の試料では耐火物面に付着して容易に剥がせなかったのに対し、 C/S=3.0、3.5 の試料では耐火物面との間に跡は残るものの、耐火物面から容易に剥 がすことができた(写真 III.3-2)。  資材化実証試験においては C/S を上げることにより耐火物に付着しにくくなり、安定運 転しやすくなると推察された。 写真 III.3-2 1350℃で熱処理後のアルミナ質レンガとペレットの付着状況 Cl/K の影響 試験条件  処理対象物 流動床飛灰(放射性 Cs 濃度 27,200Bq/kg)  C/S=2.5  保持時間 1時間  Cl/K 及び熱処理温度を変化 結果  カリウムに対して塩素が少なくなると、放射性 Cs 除去率は低下し、Cl/K=0.2 では 1350℃ まで温度を上げても生成物の放射性 Cs 濃度は 1,000Bq/kg 以上となった(図 III.3-3)。  Cl/K を 1.1 より多くしても生成物中の放射性 Cs 濃度は大差ない結果となった。  原料の塩素量を多くすることは溶融性や生成物の品質面で好ましくないことから、原料 Cl/K は 1.1 前後が適切と判断した。
  • 20. 16 図 III.3-3 原料の Cl/K(モル比)と生成物中の Cs の関係 ストーカ主灰・飛灰混合原料の評価 目的 一般的にストーカ飛灰は溶融しやすいこと、また塩素量が多く生成物中に塩素が残留し、 有効利用するための用途が限定されることが懸念されたため、資材化実証試験においては ストーカ飛灰を用いた試験は実施しなかった。そこで、電気炉試験でストーカ飛灰 100%及 びストーカ主灰に対してストーカ飛灰を混合した原料の試験を実施し、放射性 Cs 及び塩素 の除去特性を評価した。 試験方法  処理対象物 ストーカ主灰とストーカ飛灰(表 III.3-3)を種々の割合で混合  C/S=2.2  熱処理温度 1300℃、1350℃  保持時間 1時間 結果  ストーカ飛灰の割合を増加させても生成物中の放射性 Cs 濃度に大きな変化はなく、スト ーカ飛灰 100%でも熱処理温度 1350℃で生成物を 100Bq/kg 以下となった(図 III. 3-4)。  ストーカ飛灰 100%では熱処理温度 1350℃でも生成物中に 1000mg/kg 程度塩素が残 留する結果となり、塩素量が規定されている用途にでは使用できない可能性がある(図 III.3-5)。 表 III.3-3 評価に用いたストーカ主灰・飛灰の特性 放射性 Cs 濃度 粒度分布 化学組成(XRF) 強熱 減量100 μmR 32 μmR SiO2 Al2O3 Fe2O3 CaO MgO SO3 Na2O K2O P2O5 Cl Bq/kg mass% mass% ストーカ主灰 42,000 20.3 49.0 59.6 13.5 5.15 4.7 1.80 0.10 1.59 3.11 5.09 0.00 4.49 ストーカ飛灰 141,000 14.6 51.4 43.5 15.1 4.90 15.1 1.41 3.38 1.42 2.42 1.25 4.54 5.80 >99.9 99.8 99.3 96.0 99.8 99.8 1 10 100 1000 10000 0 0.5 1 1.5 2 生成物中の放射性Cs濃度 (Bq/kg) Cl/K(モル比) 1275℃ 1300℃ 1325℃ 1350℃
  • 21. 17 図 III.3-4 ストーカ飛灰の割合と生成物中の放射性 Cs 濃度 図 III.3-5 ストーカ飛灰の割合と生成物中の塩素濃度 放射性 Cs 濃度の影響 試験方法  資材化実証試験に用いた放射性 Cs 濃度の異なる調合原料使用(C/S=3.2、2.7)  熱処理温度 1300℃、1350℃  保持時間 1時間 結果  熱処理温度 1300℃では処理対象物中の放射性 Cs 濃度が高いほど、生成物中の放射 性 Cs 濃度が高くなる傾向にあった(図 III.3-6)。  熱処理温度 1350℃では処理対象物中の放射性 Cs 濃度と生成物中の放射性 Cs 濃度 に明確な相関はなく、生成物中の放射性 Cs 濃度はいずれも 100Bq/kg 以下となった(図 III.3-6)。
  • 22. 18 図 III.3-6 処理対象物中の放射性 Cs 濃度と生成物中の放射性 Cs 濃度の関係 排ガスモニタリング 前処理施設運転時/資材化施設運転時の各々について最終排ガス(No.2 ろ過式集塵 機出口排ガス)中の放射性 Cs 濃度、ばいじん濃度、硫黄酸化物濃度、窒素酸化物濃度、 塩化水素濃度及び No.1 ろ過式集塵機出口のばいじん濃度をモニタリング装置で連続監 視した。さらに、資材化施設運転時に「放射能濃度等測定方法ガイドライン(平成 25 年 3 月 第 2 版)」に準拠した方法で最終排ガス中の放射性 Cs 濃度と大気汚染防止法に規定のば いじん濃度、硫黄酸化物濃度、窒素酸化物濃度、塩化水素濃度を月に 1 回測定した。ま た、除去土壌・焼却灰乾燥時の排ガス中の放射性 Cs 濃度、ばいじん濃度、硫黄酸化物濃 度、窒素酸化物濃度及び設備棟換気ファン出口の放射性濃度、ばいじん濃度も定期的に 測定した。さらに、前処理設備(破砕・篩い分け設備)が稼動した平成 29 年 2 月以降、前 処理設備棟換気ファン出口の放射性 Cs 濃度、ばいじん濃度も測定した。 各々の排ガス中の放射性 Cs 濃度はいずれも検出下限値未満となった。ばいじん濃度、 硫黄酸化物濃度、窒素酸化物濃度、塩化水素濃度も管理基準値をクリアした。 地下水等の放射性セシウム濃度 周辺環境への影響を確認する目的で、副産物置場上流部及び下流部にサンプリング井 戸を掘り、「放射能濃度等測定方法ガイドライン(平成 25 年 3 月第 2 版)」に準拠して放射 性 Cs 濃度を測定し、地下水等への影響を確認した。さらに、月に一度降雨の際に、資材 化施設(設備棟周囲)と生成物置場の U 字溝より採水し、放射性 Cs 濃度を測定した。サン プリングポイントを図 III.5-1 に示す。資材化施設(設備棟周囲)の雨水は 3 箇所、生成物 置場の雨水は 2 箇所から採水し、まとめたものを測定した。地下水及び雨水共に放射性 Cs 濃度は検出限界値未満であった。
  • 23. 19 図 III.5-1 サンプリングポイント 施設周辺への影響 施設敷地内空間線量率 施設周辺への影響を評価するため、施設敷境界空間線量 4 箇所及び生成物置場南側 境界 1 箇所の計 5 箇所の空間線量率を 1 回/日測定した。図 III.6-1 施設内空間線量 率測定ポイントを示す。図 III.6-2 に施設周辺境界空間線量率の推移を、図 III.6-3 に 生成物置場南側境界空間線量率の推移を示す。なお、処理対象物である除去土壌は、平 成 28 年 4 月 7 日に受入れを開始し副産物置場に保管した。また、除去土壌を使用した実 証試験の開始は平成 28 年 4 月 26 日から、生成物置場の運用開始は平成 28 年 5 月 3 日から、副産物の副産物置場への持ち込みは平成 28 年 5 月 11 日からである。季節や天 候等の影響により変動はあるものの、資材化実証試験開始後も施設周辺境界に上昇傾向 は認められなかった。 ⑤生成物置場南側の線量率推移を図 III.6-3 に示す。この測定点は他の測定点に比 べて高い値を示した。この原因は施設稼働前から高線量率であることから判断して、隣接す る山林が除染されていないため、その線源の影響を受けていることによるものと考えられた。 ●雨水:資材化施設 ●雨水:生成物置場 ●地下水:資材化施設
  • 24. 20 図 III.6-1 施設内空間線量率測定ポイント 図 III.6-2 施設周辺境界空間線量率の推移 図 III.6-3 ⑤生成物置場南側境界空間線量率の推移
  • 25. 21 敷地境界での騒音・振動レベル 施設稼動による騒音・振動の施設周辺への影響を確認するため、3 ヶ月ごとに、図 III. 6-4 に示す 4 箇所で、振動及び騒音測定を行なった。当該施設は特に法令に拘束されて いないことから、測定時間は、福島県生活環境の保全等に関する条例施行規則の「時間 区分」に従った。騒音の測定結果はすべての敷地境界で騒音規制法の第 3 種区域の規制 値を下回った。振動の評価値も、すべての敷地境界で規制値を下回った。 図 III.6-4 騒音・振動測定ポイント
  • 26. 22 作業従事者の安全性 外部被ばく線量 外部被ばく線量はガラスバッチ及び電子線量計により測定した。平成 28 年度及び 29 年 度における作業従事者の積算被ばく線量の一例を図 III.6-5 に示す。作業従事者の外 部被ばく線量は、電離放射線障害防止規則(電離則)の定める年限度である 20mSv と比較 した場合、そのラインを大きく下回っており、外部被ばくに関する安全性は十分に確保され ているものと判断している。 図 III.6-5 資材化施設における作業従事者の積算被ばく線量 内部被ばく線量 当該施設で作業する際には作業内容に応じて適切な保護具の明確化と着用を義務付 け、体内への取り込みを防止した。 さらに、「事故由来廃棄物等処分業務に従事する労働者の放射線障害防止のためのガ イドライン」に準じて、管理区域内で作業する作業従事者全員に対し、3 ヶ月以内ごとに 1 回、立位型ホールボディーカウンタを用いて内部被ばく量の測定を行なった。その結果、作 業従事者全員がいずれも検出限界値未満となった。
  • 27. 23 作業環境 管理区域に設定し、事故由来廃棄物取扱施設である、設備棟内及び前処理設備棟内 において、「事故由来廃棄物等処分業務に従事する労働者の放射線障害防止のためのガ イドライン」に準じて、空気中の放射性物質濃度、空間線量率、放射性物質の表面密度及 び粉じん濃度の測定を行なった。 (a) 設備棟 空気中の放射性物質濃度 試料調整室、設備棟北(土壌・焼却灰受入れ設備周囲)、設備棟南(No.1 ろ過式集塵 機周囲)、出入り管理室の 4 箇所について、法定測定回数 1 月以内ごとに 1 回以上、空気 中放射性物質濃度を測定した。いずれの場所においても検出限界値未満となった。 空間線量率 設備棟内各所について、1 月以内ごとに1回空間線量率を測定した。表 III.6-1 及び表 III.6-2 に結果を示す。10 万 Bq/kg 超の流動床飛灰を取扱った際、空間線量率が管理 区域設定の判断に使用される 2.5μSv/h(3ヶ月間の労働で 1.3mSv を超える恐れのある区 域)を超えたが、一時的であり、通常時はおおむね 1μSv/h 以下の空間線量率となった。 表 III.6-1 設備棟内における空間線量率の測定結果〔μSv/h〕 測定日 処理対象物受入室 乾燥機 大塊 除去篩 粉砕機 No.1 BT* No.2 BT 焼却灰 受入ホッパ 大塊 受入ホッパ 土壌 受入ホッパ ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ H28/11/21 0.23 0.17 0.20 0.12 0.13 0.29 0.21 0.11 H28/12/26 0.17 0.24 0.14 0.13 0.11 0.18 0.10 0.15 H29/1/24 0.14 0.17 0.16 0.11 0.13 0.18 0.57 0.65 H29/2/27 0.19 0.16 0.16 0.23 0.23 0.26 1.32 0.82 H29/3/27 0.14 0.16 0.25 0.13 0.13 0.17 0.39 0.10 H29/4/25 0.18 0.55 0.86 0.10 0.15 0.37 0.30 0.14 H29/5/25 0.20 0.20 0.36 0.18 0.25 0.42 3.20 2.90 H29/6/23 0.31 0.57 0.28 0.12 0.12 0.19 0.45 0.87 H29/7/27 0.18 0.19 0.29 0.16 0.13 0.11 1.10 1.23 H29/8/10 0.23 0.21 0.35 0.16 0.12 0.16 0.18 0.67 H29/9/21 0.40 4.23 0.45 0.20 0.12 0.12 0.19 0.38 H29/10/26 0.20 0.20 0.31 0.14 0.14 0.21 1.15 1.90 H29/11/16 0.20 0.17 0.23 0.10 0.12 0.14 0.19 0.12 H29/12/22 0.16 0.14 0.23 0.17 0.12 0.13 0.29 1.32 H30/1/25 0.13 0.14 0.21 0.12 0.12 0.21 0.09 0.14 H30/2/22 0.13 0.14 0.18 0.10 0.12 0.13 0.23 0.11 H30/3/19 0.10 0.15 0.19 0.10 0.10 0.14 0.12 0.10 *BT:調合ブレンダ
  • 28. 24 表 III.6-2 設備棟内における空間線量率の測定結果(その 2)〔μSv/h〕 測定日 乾燥機 集塵機 調合原料 タンク 排ガス 冷却塔 サイクロン No.1 集塵機上 No.1 集塵機横 副産物 成型機 試料 調整室 ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ⑭ ⑮ ⑯ H28/11/21 1.10 0.44 0.20 0.92 0.45 1.92 0.35 0.19 H28/12/26 1.21 0.18 0.20 0.26 0.54 2.29 0.43 0.18 H29/1/24 1.13 0.18 0.16 0.18 0.47 1.38 0.45 0.19 H29/2/27 0.35 0.57 0.20 0.28 0.48 1.00 0.24 0.25 H29/3/27 0.95 0.45 0.20 0.20 0.45 1.47 0.26 0.27 H29/4/25 1.65 0.32 0.23 0.23 0.40 1.20 0.28 0.37 H29/5/25 1.58 0.27 0.23 0.21 0.58 2.74 0.48 0.37 H29/6/23 1.55 0.20 0.21 0.20 0.63 1.73 0.37 0.30 H29/7/27 1.36 0.28 0.19 0.22 0.73 2.54 0.33 0.30 H29/8/10 1.54 0.16 0.21 0.20 0.70 2.20 0.41 0.40 H29/9/21 1.34 0.70 0.26 0.38 0.75 1.54 0.49 0.34 H29/10/26 1.49 0.37 0.22 0.38 0.84 3.73 0.30 0.28 H29/11/16 1.45 0.42 0.22 0.34 0.77 1.82 0.48 0.33 H29/12/22 1.85 0.19 0.23 0.37 0.78 2.97 0.48 0.27 H30/1/25 1.65 0.32 0.23 0.23 0.40 1.20 0.28 0.19 H30/2/22 0.74 0.20 0.28 0.31 0.60 2.28 0.30 0.20 H30/3/19 0.69 0.15 0.28 0.32 0.60 1.31 0.45 0.26 放射性物質の表面密度 設備棟東西南北壁 4 箇所、風除室床、受入れ室床 2 箇所、乾燥機床、振動篩床、粉砕 機床、調合ブレンダ床 2 箇所、資材化炉床、排ガス冷却搭床、サイクロン下床、No.1 ろ過 式集塵機下床、副産物成型機床及び充填機床、PIC 容器、試料調整室 2 箇所、分析室 2 箇所、出入管理室の計 25 箇所において1月以内ごとに 1 回、放射性物質の表面密度を測 定した。副産物成型機床及び充填機床において一時的に高くなったが、表面汚染限度 (40Bq/cm 2 )の 1/10(4Bq/cm2 )を超える場合はなく、また、放射性物質が検知された後、清 掃を実施した結果、検出限界値未満となった。 作業環境(粉じん濃度) 設備棟内 31 箇所について A 測定を、さらに原料粉砕機周辺 1 箇所について B 測定を 実施した。表 III.6-3 に作業環境(粉じん)測定結果を示す。ともに「区分Ⅰ」となったことか ら、当該作業場は『作業環境が適切に管理されている作業場』となる第 1 管理区分であっ た。また、「事故由来廃棄物等処分業務に従事する労働者の放射線障害防止のためのガ イドライン」では粉じん濃度が 10mg/m3 を超える作業を高濃度粉じん作業としているが、 10mg/m3 を大きく下回った。 表 III.6-3 設備棟内における作業環境測定(粉じん)結果 測定日 測定物質 管理濃度 〔mg/m3 〕 A 測定 B 測定結果 管理区分測定結果 〔mg/m3 〕 区分 測定結果 〔mg/m3 〕 区分 H29/3/7 粉じん 0.75 0.02 Ⅰ - - 第 1 管理区分 H29/8/28 粉じん 3.00 0.04 Ⅰ 0.06 Ⅰ 第 1 管理区分 H30/2/20 粉じん 3.00 0.04 Ⅰ 0.08 Ⅰ 第 1 管理区分
  • 29. 25 (b) 前処理設備棟 空気中の放射性物質濃度 除去土壌改質作業、焼却灰破砕等前処理設備での作業時に、空気中の放射性物質濃 度を測定した。Cs134 の放出限界値である 20Bq/m3 を管理値とした。図 III.6-6 に空気中 の放射性物質濃度を示す。ばらつきはあるものの空気中の放射性物質濃度は管理値であ る 20Bq/m3 を下回った。また平成 29 年 4 月末及び 8 月上旬に放射性 Cs 濃度の高い焼 却灰を使用したが、空気中の放射性物質濃度が上昇する傾向は見られなかった。 図 III.6-6 前処理設備棟内における空気中の放射性物質濃度 空間線量率 前処理棟内2箇所(北側、南側)について毎週 1 回空間線量率を測定した。表 III.6-4 に月初の前処理設備棟内の空間線量率を示す。放射性物質を含む処理対象物が保管さ れている場合には、その周辺の空間線量率が1μSv/h を超えるが、それ以外は1μSv/h 以 下となった。 表 III.6-4 前処理設備棟内の空間線量率〔μSv/h〕 北側 R1 南側 R2 備考 H29/2/24 0.24 0.30 H29/3/3 0.15 0.15 H29/4/7 0.20 0.80 H29/5/4 0.18 0.22 H29/6/5 0.91 0.24 H29/7/3 0.28 0.18 H29/08/7 0.25 1.72 南側付近に処理対象物を納めたコンテナバッグ有り H29/9/4 0.21 0.51 H29/10/16 0.26 0.36 H29/11/6 0.25 0.18 H29/12/4 0.16 0.15 H30/1/9 0.16 0.14 H30/2/6 0.12 0.46 南側付近に規格外品を納めたコンテナバッグ有り H30/3/6 0.14 0.13
  • 30. 26 放射性物質の表面密度 空気中放射性物質を測定する際に同時に風除室、出入り管理室、振動篩、破砕機、集 塵機等 8 箇所の放射性物質の表面密度を測定した。放射性物質の表面密度はいずれも 検出限界値未満となり 4Bq/cm 2 を大幅に下回った。 作業環境(粉じん濃度) 前処理設備棟内 11 箇所について A 測定を実施した。表 III.6-5 に設備棟内の粉じん 濃度測定結果を示す。当該作業場は『作業環境濃度には点検や改善の余地があると判断 される』となる第 2 管理区分であった。また、「事故由来廃棄物等処分業務に従事する労働 者の放射線障害防止のためのガイドライン」では粉じん濃度が10mg/m3 を超える作業を高 濃度粉じん作業としているが、10mg/m3 を下回った。 表 III.6-5 前処理設備棟内における粉じん測定結果 測定日 測定物質 管理濃度 〔mg/m3 〕 A 測定 B 測定 管理区分測定結果 〔mg/m3 〕 区分 測定結果 〔mg/m3 〕 区分 H30/2/20 粉じん 3.00 0.93 Ⅰ - - 第 2 管理区分
  • 31. 27 IV. 生成物及び副産物の保管管理 生成物の保管管理 生成物は下記手順で管理を行なった。 ① クリアランスモニタで生成物の放射性 Cs 濃度を連続監視しながら、放射性 Cs 濃度が 100Bq/kg 以下の生成物は良品用コンテナバッグに、100Bq/㎏を超える生成物は規格 外品用コンテナバッグに振り分けた。 ② コンテナバッグが満量となったらコンテナバッグの表面線量率を測定するとともに、その 間に自動サンプラにて定期的に採取していた生成物を代表試料として、その放射性 Cs 濃度をゲルマニウム半導体検出器(以下 Ge 検出器と称す)で測定し、最終の良否判断 を行なった。 ③ 発生時間、重量、表面線量をコンテナバッグに記載し、Ge 検出器で合格となった生成 物は生成物置場に保管した。不合格となった生成物は副産物置場(コンクリート擁壁で 囲ったテント倉庫)に保管し再度資材化処理を行なった。 ④ 生成物管理台帳に、発生日時、測定データ、保管先を記録し管理した。 ⑤ 100Bq/kg 以下の生成物の入ったコンテナバッグはパレットの上に 2 段積みし、屋外で遮 水シートを掛けて保管した。 Phase-2(RUN12~RUN26)に発生した生成物の量は 689.4t(良品:539.0t、規格外品: 150.4t)であった。また、本業務(RUN1~RUN26)において発生した規格外品は RUNⅠ~Ⅳ で再処理したため、最終的には良品 949.4t、規格外品 1.4t であった。 副産物の保管管理 副産物は下記手順で管理を行なった。 ①副産物は飛散防止のためにプレス成型し、それをチャック付きコンテナバッグに密閉充填 した後、通常のコンクリートに比べ強度、気密性、不透水性、化学的安定性に優れた PIC(Polymer Impregnated Concrete :ポリマー含浸コンクリート)容器に保管した。 ②PIC 容器ごとに副産物の放射性 Cs 濃度と容器の表面線量率を測定した。 ③副産物管理台帳に、回収期間、測定データ等を記録し保管管理した。 ④PIC 容器側面に副産物管理台帳と同一データを記載し、ラミネート加工を施したデータ シートを容器側面に貼り付けた。 ⑤PIC 容器は副産物置場(コンクリート擁壁で囲ったテント倉庫)に保管した。 なお、分析のための副産物の採取はステンレス製密閉容器をスクリュー式サンプラに 取り付け、手動でスクリュー式サンプラを回転させることにより、密閉した状態で行なった。 本事業における副産物発生量は 44.5t であり、これを 68 個の PIC 容器に充填し、保管 した。
  • 32. 28 V. 生成物の品質調査及び工事資材への活用検討 生成物の環境安全性 重金属の含有・溶出 総合評価運転を行なった RUN24~26 の生成物について、環境省告示第 18 号法、第 19 号法に基づき生成物の重金属の含有量及び溶出量を測定した。 表 V.1-1 に RUN24~26 の重金属の含有量を、表 V.1-2 に重金属の溶出量及びpH をそれぞれ示す。いずれの重金属含有量及び溶出量は基準値をクリアした。 表 V.1-1 重金属含有量(環境省告示 19 号法、mg/kg) 試料名 砒素 セレン 鉛 水銀 カドミウム 6 価クロム フッ素 ホウ素 RUN24 <10 <10 10 <1 <10 <10 260 130 RUN25 <10 <10 <10 <1 <10 <10 <100 <100 RUN26 <10 <10 <10 <1 <10 <10 160 <100 基準値 <150 <150 <150 <15 <150 <10 <4000 <4000 表 V.1-2 重金属溶出量(環境省告示18号法、mg/L)及び pH 試料名 砒素 セレン 鉛 水銀 カドミウム 6価クロム フッ素 ホウ素 pH RUN24 <0.001 <0.001 0.002 <0.0005 <0.001 <0.005 0.37 0.1 12.7 RUN25 <0.001 <0.001 <0.001 <0.0005 <0.001 <0.005 <0.08 <0.1 12.8 RUN26 <0.001 <0.001 <0.001 <0.0005 <0.001 <0.005 0.23 <0.1 12.6 基準値 <0.01 <0.01 <0.01 <0.0005 <0.01 <0.05 <0.8 <1.0 - 放射性 Cs の溶出 「第 5 部放射能濃度測定方法ガイドライン(環境省)」に準拠し、JIS K 0058-1 で採取し た検液について、Ge 検出器を用いて放射性 Cs 濃度を測定した。ガイドラインでは検出下 限値が 10~20Bq/L 程度になるような分析条件が記載されているが、本試験では放射性 Cs 含有量に対する溶出量の割合についても評価するため、検出下限値を下げた条件で測定 を行なった。表 V.1-3 に生成物からの放射性 Cs の溶出量を示す。いずれも規定値であ る 10Bq/kg を大幅に下回った。水溶性の放射性 Cs 濃度の割合が高い場合もあったが、高 温で製造した、RUN23、25、26 生成物は水溶性の Cs の割合が低かった。高温で製造した 生成物は水溶性である塩化セシウムがすべて揮発したと推察される。 表 V.1-3 生成物からの放射性 Cs の溶出量 試料名 処理対象物 含有量(Bq/kg) 溶出量(Bq/L) 水 溶 性 放 射 性 Cs の割合(%)*3 Cs137 Cs134 合計 Cs137 Cs134 Cs*2 RUN19 流動床飛灰 100% 54 7 61 2.4 ND*1 2.8 46 RUN20 除去土壌 100% 45 6 51 2.2 ND 2.6 51 RUN23 ストーカ主灰 100% 67 7 75 ND(<0.56) ND ND(<0.67) - RUN24 除去土壌 100% 54 5 59 1.3 ND 1.6 27 RUN25 ストーカ主灰 100% 15 3 18 ND(<0.69) ND ND(<0.83) - RUN26 流動床飛灰 100% 19 2 21 ND(<0.83) ND ND(<1.0) - *1 測定結果が検出限界値未満であった場合は「ND」と表示する。 *2Cs134 のみ検出限界値未満の場合には Cs134 は Cs137 の 1/5 として計算した。 *3 水溶性の放射性 Cs 割合=(Cs 溶出量×10)/Cs 含有量×100
  • 33. 29 生成物の品質調査 未反応石灰量の影響 生成物中の未反応石灰(以下、f-CaOと称す)は水和反応によりCa(OH)2に変化し、これ により体積が約2倍となるため、膨張圧が生じ膨張破壊する場合がある。セメントクリンカ製 造炉においては、f-CaO量がおよそ1%以下になるように熱処理温度、滞留時間等を管理 しており、本資材化実証試験においても、1%以下を目標に現場にて放射性Cs濃度に加え て、f-CaO量を測定し、運転に反映させたが、資材化炉の規模が小さいため、コーチングに よる閉塞等の問題が生じ、f-CaO量を下げるための十分な熱量が加えられずに、特に原料 のC/Sが高い場合などに多量のf-CaOが残存する場合が生じた。 そこで、f-CaO 量の異なる生成物を用いて、膨張量やポップアウトの発生有無について 以下の評価を行なった。 ① 吸水膨張 JIS A 1211 に準拠 ② 水浸膨張 JIS A 5015:2013 付属書 B に準拠 ③ ポップアウト JIS A 5031:2016 付属書 C に準拠 吸水膨張・水浸膨張 f-CaO 量の異なる 3 種類の生成物について吸水膨張、水浸膨張の評価を行なった結果 を表 V.2-1 に示す。吸水膨張は平成 24 年 3 月国土交通省より発行された「迅速な復旧・ 復興に資する再生資材の宅地造成盛土への活用に向けた基本的な考え方」に 3%以下と 規定されており、水浸膨張は JIS A 5015:2013 道路用鉄鋼スラグに 1.5%と規定されてい る。生成物中のf-CaO 量が 3.2%の場合においても吸水膨張、水浸膨張は規格値をクリア した。 表 V.2-1 生成物の吸水膨張、水浸膨張 生成物① 生成物② 生成物③ 規格値 生成物 f-CaO 量(%) 1.5 3.2 0.6 - CaO/SiO2 2.4 2.1 2.1 - 絶乾密度(g/cm3 ) 2.68 2.13 2.78 - 試験 項目 最大乾燥密度(g/cm3 ) 1.617 1.536 1.768 - 最適含水比(%) 23.6 25.3 20.3 - 吸水 膨張(%) 突固め 回数 (回/層) 17 0.003 0.005 0.048 3.0 以下*1 42 0.056 0.037 0.061 92 0.048 0.043 0.069 水浸 膨張(%) 92 0.19 0.26 0.19 1.5 以下*2 *1 国土交通省「迅速な復旧・復興に資する再生資材の宅地造成盛土への活用に向けた基本的な考え方」 *2 JIS A 5015 道路用鉄鋼スラグ
  • 34. 30 ポップアウト 2006年7月にJIS A 5031「一般廃棄物、下水汚泥又はそれらの焼却灰を溶融固化したコ ンクリート用溶融スラグ骨材」ならびにJISA 5032「一般廃棄物、下水汚泥又はそれらの焼却 灰を溶融固化した道路用溶融スラグ」が制定され、溶融スラグがコンクリート構造物等に利 用されたが、一部の溶融スラグにおいてコンクリート表面にポップアウトが生じる問題が生じ た。そのため試験方法が開発され、2016年の改正によりJIS A 5031付属書Cにポップアウト の試験方法が規定された。生成物にも本試験方法を適用し、f-CaO量及び密度の異なる4 種類の生成物についてポップアウトの発生の有無の確認を行なった。表 V.2-2に評価に 用いた生成物を示す。 試験は生成物を用いたモルタル供試体を各3本作製し、1日水中養生後に90分間煮沸後 の表面を目視で確認した。写真 V.2-1にその一例を示す。ポップアウトと判定される箇所 は「生石灰による核が認められ、かつ、目視または指触によって凹部と確認された箇所」「ひ び割れが認められた場合に表面部分を剥がし内部に核が認められた箇所」であるが、いず れの供試体も煮沸前後で変化なく、ポップアウトと判定される箇所はなかった。 表 V.2-2 ポップアウト評価に用いた生成物 f-CaO量(%) C/S 絶乾密度(g/cm3 ) 生成物④ 1.8 2.1 2.20 生成物⑤ 3.2 2.0 2.66 生成物⑥ 0.9 2.3 2.63 生成物⑦ 1.8 2.4 2.66 写真 V.2-1 煮沸前後の供試体の外観(試料⑤) 煮沸前 煮沸後
  • 35. 31 コンクリート用細骨材としての評価 Phase-1 生成物を IL ブロック用細骨材として使用するため、粒度調整設備を用いて篩 い分けを行い、5mm 以下の生成物について細骨材としての物性を評価した。表 V.2-3 に 結果を示す。絶乾密度、吸水率の平均値はレディーミクストコンクリート用骨材の基準を満 足するが、生成物ごとに変動が大きく再生骨材 M にも合致しない生成物も存在した。安定 性試験、微粉分量はいずれもレディーミクストコンクリート用骨材の基準を合致した。なお、 IL ブロック製造の際には、絶乾密度及び吸水率に基準値を設定し(表 V.3-5 に記載)、基 準に合致した生成物を細骨材として使用した。 表 V.2-3 生成物(5mm 以下品)の絶乾密度、吸水率、安定性及び微粒分量 *1 JIS A 5308:2014 付属書 A レディーミクストコンクリート用骨材 *2 JIS A 5005:2009 コンクリート用砕石及び砕砂 *3 JIS A 5011-1:2013 コンクリート用スラグ骨材第 1 部高炉スラグ骨材 *4 JIS A 5021:2011 コンクリート用再生骨材 H *5 JIS A 5022:2012 付属書 A コンクリート用再生骨材 M *6 JIS A 5023:2012 付属書 A コンクリート用再生骨材 L 項目 単位 測定結果 測定 点数 規格(参考) 砂*1 砕砂*2 高炉スラグ 骨材*3 再生 骨材 H*4 再生 骨材 M*5 再生 骨材 L*6 絶乾密度 g/cm3 2.56 (1.99~2.96) 86 2.5 以上 2.5 以上 2.5 以上 2.5 以上 2.2 以上 - 吸水率 % 3.3 (0.3~11.8) 86 3.5 以下 3.0 以下 3.0 以下 3.5 以下 7.0 以下 13.0 以下 安定性試験 % 4.7 (2.0~5.5) 6 10 以下 10 以下 - - - - 微粒分量 % 1.0 (0.1~2.2) 6 3.0 以下 3.0 以下 - 7.0 以下 8.0 以下 10.0 以下
  • 36. 32 総合評価運転の生成物の評価 粒度分布 図 V.2-1 に RUN24~RUN26 で得られた生成物の粒度分布を示す。RUN24 生成物は 5mm以下が 94%と粒度が細かいが、高い温度で製造した RUN25、RUN26 は 5mm 以上が 50%程度と粒度が粗いものも多い。篩い分けにより粗骨材、路盤材で規定されている粒度 に調整することも可能となることから、RUN25、RUN26 生成物については粗骨材、路盤材と しての評価も実施した。 図 V.2-1 生成物の粒度分布 路盤材 表 V.2-4 に RUN25、26 で得られた生成物を路盤材(C-20)の規定に合致するよう粒度 調整した試料の路盤材としての評価結果を示す。RUN26 は下層路盤材の基準に合致する ものの、RUN25 はすりへり減量が基準値を超過した。粒度が粗い場合においても得られた 生成物がすべて路盤材の基準に合致するわけではなく、品質を確認しながら、利用する必 要があると考えられる。 表 V.2-4 路盤材としての評価結果 項目 単位 生成物 規定値 RUN25 RUN26 道路用砕石 道路用鉄鋼 スラグ 日本道路協会 舗装施工指針 すりへり減量 % 51.0 37.0 40 以下 (30 以下) - 単位容積重量 kg/l 1.64 1.61 - 1.50 以上 - 最大乾燥密度 g/cm3 1.902 1.778 - - - 最適含水比 % 11.8 7.4 - - - 吸水膨張 % 0.000 0.000 - - - 水浸膨張比 % 0.00 0.00 - 1.5 以下 - 修正 CBR % 51.5 49.2 - - 上層路盤材:80 以上 下層路盤材:20 以上
  • 37. 33 コンクリート用骨材 表 V.2-5 に粗骨材としての評価結果を、表 V.2-6 に細骨材としての評価結果を示 す。RUN25、26 ともにこれまでよりは高温で製造したものの粗骨材としては密度が低く、吸水 率が高かった。細骨材としては高温で製造した RUN25、26 生成物のほうが RUN24 生成物 より乾燥密度が高く、吸水率は低く、単位容積重量が大きいが、レディーミクストコンクリート 用骨材や砕石骨材の基準には合致せず、再生骨材 L の規定に相当する細骨材となった。 表 V.2-5 粗骨材としての評価結果 項目 単位 生成物(5mm 以上) 規定値 RUN25 RUN26 砂利*1 砕石*2 再生骨材 M*3 再生骨材 L*4 絶乾密度 g/cm3 2.32 2.24 2.5 以上 2.5 以上 2.2 以上 - 吸水率 % 10.1 9.1 3.0 以下 3.0 以下 5.0 以下 7.0 以下 単位容積重量 kg/l 1.39 1.34 - - 1.25 以上 1.35 以上 粒径判定実績率 % 58.9 59.4 - 56 以上 - - すりへり減量 % 51.0 37.0 35 以下 40 以下 - - 安定性 % 7.3 8.0 12 以下 12 以下 - - 微粒分量 % 0.0 0.0 1.0 以下 3.0 以下 5.0 以下 5.0 以下 *1 砂利 JIS A 5308:2014 付属書 A レディーミクストコンクリート用骨材 *2 砕石 JIS A 5005:2009 コンクリート用砕石及び砕砂 *3 再生骨材 M JIS A 5022:2012 付属書 A コンクリート用再生骨材 M *4 再生骨材 L JIS A 5023:2012 付属書 A コンクリート用再生骨材 L 表 V.2-6 細骨材としての評価結果 項目 単位 生成物(5mm 以下) 規定値 RUN24 RUN25 RUN26 砂*1 砕砂*2 再生骨 材 M*3 再生骨 材 L*4 絶乾密度 g/cm3 2.35 2.75 2.26 2.5 以上 2.5 以上 2.3 以上 - 吸水率 % 6.99 3.45 9.1 3.5 以下 3.0 以下 7.0 以下 13.0 以下 単位容積重量 kg/L 1.24 1.6 1.34 - - - - 粒径判定実績率 % 30.9 48.0 59.4 - 54%以上 - - 安定性 % 8.9 4.2 37.0 10 以下 10 以下 - - 微粒分量 % 1.6 -0.1 8.0 3.0 以下 9.0 以下 - - 塩分量 % 0.004 0.003 0.0 0.04 以下 - - - *1 砂利 JIS A 5308:2014 付属書 A レディーミクストコンクリート用骨材 *2 砕石 JIS A 5005:2009 コンクリート用砕石及び砕砂 *3 再生骨材 M JIS A 5022:2012 付属書 A コンクリート用再生骨材 M *4 再生骨材 L JIS A 5023:2012 付属書 A コンクリート用再生骨材 L 盛土としての評価検討 表 V.2-7 に盛土としての評価結果を示す。コーン指数は国土交通省「迅速な復旧・復 興に資する再生資源の宅地造成盛土への活用に向けた基本的考え方」の基準に合致した。 表 V.2-7 盛土としての評価結果 項目 単位 生成物(5mm 以下) 規定値 RUN24 RUN25 RUN26 最適含水比 % 26.9 11.2 10.7 最大乾燥密度 g/cm3 1.404 1,754 1.662 コーン指数 kN/m2 4,487 3,357 1,783 400 以上* *国土交通省:迅速な復旧・復興に資する再生資源の宅地造成盛土への活用に向けた基本的考え方
  • 38. 34 アルカリ骨材反応性評価 生成物のアルカリ骨材反応性を評価するため、4 種類の生成物について JIS A 1145: 2007「骨材のアルカリシリカ反応性試験方法(化学法)」に準拠した方法で溶解シリカ量及 びアルカリ濃度減少量の測定を行なった。さらにそのうちの 2 種について JIS A 1146:2007 「骨材のアルカリシリカ反応性評価方法(モルタルバー法)」に準拠した方法で、生成物を用 いたモルタルを各 3 本作製し、26 週までの長さ変化を測定した。 表 V.2-8 に化学法によるアルカリシリカ反応評価結果を示す。なお、JIS A 1145:2007 「骨材のアルカリシリカ反応性試験方法(化学法)」によれば、この規格は、人工軽量骨材に は適用しない」との記載があるため、本試験結果の中でアルカリシリカ反応性を判定できな いが、表中に記載した反応性の判定基準に照らすと、本試験結果は「無害」に該当する。 表 V.2-9 にモルタルバー法による評価結果を示す。モルタルバー法においては 3 本 の平均膨張率が 26 週後に 0.100%未満の場合に無害と判定されるが、本試験ではいずれ の供試体においても 0.100%未満であり、「無害」と判定された。 表 V.2-8 アルカリシリカ反応(化学法)評価結果 試料名 溶解シリカ量(Sc) [mmol/L] アルカリ濃度減少量(Rc) [mmol/L] 生成物① 0 26 生成物② 0 0 生成物③ 0 73 生成物④ 0 79 <アルカリシリカ反応性判定> ・溶解シリカ量(Sc)が 10mmol/L 以上で、アルカリ濃度減少量(Rc)が 700mmol/L 未 満の範囲では、溶解シリカ量(Sc)がアルカリ濃度減少量(Rc)未満となる場合、そ の骨材を“無害”と判定し、溶解シリカ量(Sc)がアルカリ濃度減少量(Rc)以上とな る場合、その骨材を“無害でない”と判定する。 ・溶解シリカ量(Sc)が 10mmol/L 未満で、アルカリ濃度減少量(Rc)が 700mmol/L 未 満の場合、その骨材を“無害”と判定する。 ・アルカリ濃度減少量(Rc)が700mmol/L以上の場合は判定しない。 表 V.2-9 アルカリシリカ反応(モルタルバー法)評価結果 膨張率(%) 判定 2 週 4 週 8 週 13 週 26 週 生成物② No.1 0.017 0.020 0.026 0.029 0.034 無害 No.2 0.014 0.016 0.022 0.025 0.031 No.3 0.015 0.016 0.023 0.028 0.029 平均 0.015 0.017 0.024 0.027 0.031 生成物③ No.1 0.028 0.033 0.038 0.041 0.051 無害 No.2 0.029 0.033 0.038 0.0442 0.051 No.3 0.029 0.034 0.036 0.041 0.051 平均 0.029 0.033 0.037 0.041 0.051
  • 39. 35 IL ブロックの製造 資材化実証施設で得られた生成物は粒度が細かいことから、工事資材の主要な用途と してコンクリート用細骨材が考えられた。そこで、代表例として IL ブロックについて配合検 討・物性評価を行なった。さらに実用性、安全性を評価・検証することを目的に、生成物を 細骨材として用いた IL ブロックを実証施設内で試験製造し、資材化実証施設内や飯舘村 内に敷設した。表 V.3-1 に概要を示す。 表 V.3-1 IL ブロック製造概要 時期 概要 配合 平成 29 年 1~3 月 IL ブロックの配合検討・試作 歩道用 IL ブロック 420 個製造 資材化施設内設備棟入口に敷設 曲げ強度:3N/mm2 細骨材置換率:100%配合 平成 29 年 5~9 月 車道用 IL ブロックの配合検討、物性評価 車道用 IL ブロック 1,000 個製造 飯舘村交流センター前駐車場に敷設 曲げ強度:5N/mm2 細骨材置換率:50%配合 平成 29 年 10 月 ~平成 30 年 3 月 車道用 IL ブロック 22,000 個製造 (240 個/日) 飯舘村公共工事に使用 曲げ強度:5N/mm2 細骨材置換率:50%配合 車道用 IL ブロック製造のための配合検討、物性評価 曲げ強度区分 5N/mm2 及び 3N/mm2 の IL ブロックを製造するための配合選定試験を平 成 29 年 1 月及び 5 月に実施した。あわせて、凍結融解抵抗性の評価を行なった。 配合選定試験 表 V.3-2 に IL ブロックの基層の配合を示す。基層の配合については曲げ強度区分が 5N/mm2 の生成物未使用の普通 IL ブロック配合を基準とし、①細骨材への生成物置換 率、②単位水量の増加、③水セメント比(W/C)の大小が曲げ強度に及ぼす影響を検討し た。 表 V.3-2 IL ブロックの配合(基層) 検討要因 記号 容積置換率(%) W/C (%) 単位量(kg/m3 ) S G W C S G P 基準 N5 - - 32.8 131 400 1136 775 0 置換率 S50 50 0 32.8 131 400 568 775 606 S100 100 0 32.8 131 400 0 775 1212 単位水量 S100+W4kg 100 0 32.8 135 412 0 767 1199 S100+W9kg 100 0 32.8 140 427 0 757 1183 W/C S100+W/C5% 100 0 37.8 151 400 0 754 1179 S100-W/C5% 100 0 27.8 111 400 0 796 1244 得られた結果を以下に示す。  生成物容積 250L/m3 (細骨材置換率:50%)の場合に曲げ強度が最大値を示し、それ以 上生成物を使用すると曲げ強度が低下した(図 V.3-1)。  細骨材置換率 100%の際に曲げ強度を向上させるため、単位水量増及び W/C の調整
  • 40. 36 を行なったが、いずれの場合も強度は低下した。  充填率(コンクリートに用いた各材料の密度から計算される重量に対する、実際のコンク リートの重量の割合)の増加に伴い、曲げ強度が増加した。  平成 29 年 1 月と 5 月の検討結果を比較すると、同一置換率では平成 29 年 5 月の方 が充填率は低くなり、その結果、曲げ強度も低くなった(図 V.3-2)。同じ配合であって も、充填率が変化するのは,生成物のロットが異なることによる物理的性質(形状や粒度 分布など)や,ミキサの種類のちがい (ホバートと強制パン型)や練混ぜ環境の変化(屋内 と屋外)などが影響した可能性が考えられる。  生成物の細骨材置換率 100%で、歩道用 IL ブロックの曲げ強度の基準 3N/mm2 以上 を確保できるが、車道用 IL ブロックの曲げ基準 5N/mm2 以上を確保するためには生成 物の細骨材置換率は 50%となる。 図 V.3-1 IL ブロックに使用した生成物容積置換率と曲げ強度の関係 図 V.3-2 IL ブロックの充填率と曲げ強度の関係
  • 41. 37 凍結融解抵抗性 IL ブロックの凍結融解抵抗性を評価する方法として、ASTM C 1645 に凍結 16±1 時間 (供試体温度-5±3℃)-融解 8±1 時間(供試体温度+5℃)を繰り返した場合の質量損失量 を測定する方法が規定されている。表 V.3-3 に IL ブロックの凍結融解の質量損失量を示 す。凍結融解抵抗性を判定する 25 サイクル時の質量損失量は、判定基準となる 200g/m2 を下回った。これにより,本検討で対象とした範囲の生成物を使用した IL ブロックは、十分 な凍結融解抵抗性を有していると判断された。 表 V.3-3 IL ブロックの凍結融解試験結果 記号 質量損失量(g/m2 ) 凍結融解抵抗性の 判定基準10 サイクル 25 サイクル N5 15 30 25 サイクル時の 質量損失量≦200g/m2S50 10 20 S100 15 30 施設内での IL ブロックの試験製造 製造概要  IL ブロック : 歩道用 IL ブロック  製造日 : 平成 29 年 2 月  製造場所 : 仮設資材化実証施設設備棟内  IL ブロック寸法 : 100×200×60mm  製造数 : 420 個  配合 : 生成物置換率 100%、W/C=32.8%(表 V.3-2、S100)  製造方法 混練 : ホバートミキサ(アインリッヒ社製) 成型 : 振動プレス成型機 敷設 平成 29 年 3 月に設備棟入口に敷設した。写真 V.3-1 に製造した IL ブロックを設備 棟入口の敷設後の状況を示す。敷設後 1 年経過しても、劣化等は見られていない。 写真 V.3-1 IL ブロック敷設後の状況
  • 42. 38 車道用 IL ブロックの製造及び敷設 製造概要  IL ブロック : 車道用 着色 IL ブロック (表層 黒)  製造日 : 平成 29 年 7 月  製造場所 : 仮設資材化実証施設内(No.2 ろ過式集塵機下)  IL ブロック寸法 : 100×200×80mm(表層 6mm 含む)  製造数 : 1,000 個  配合 : 生成物置換率 50%、W/C=32.8%(表 V.3-2、S50)  製造方法 混練 : 強制パン型ミキサ 成型 : 振動プレス成型機 敷設 飯舘村にご協力いただき、飯舘村交流センター駐車場入口に敷設した。写真 V.3-2 に飯舘村交流センター駐車場の敷設状況を示す。 写真 V.3-2 飯舘村交流センター駐車場入口 IL ブロック敷設 IL ブロック大量製造 生成物を用いたILブロックを、飯舘村のご協力により公共工事で使用することとなった。 そこで、粒度調整設備棟内に IL ブロック製造設備を設置し、現地作業員を雇用し、コンク リート二次製品メーカーである太平洋プレコン社協力のもと、22,000 個製造した。その概要 を示す。 IL ブロック製造設備 生成物置場東側に粒度調整設備棟を新設し、粒度調整棟内に粒度調整設備に加えて、 IL ブロック製造設備を設置した。写真 V.3-3 に IL ブロック製造設備を示す。基層を製造 するための強制パン型ミキサ、表層を製造するためのモルタル用ホバートミキサ、IL ブロック を成型するための振動成型機、IL ブロックを養生するための養生槽(恒温恒湿機)を設置し た。
  • 43. 39 写真 V.3-3 IL ブロック製造設備 IL ブロックの配合・管理値 表 V.3-4 に IL ブロックの製造管理値を示す。曲げ強度は充填率と相関があることから、 充填率の管理値を設定し、現場にて確認した。硬化後の IL ブロックを太平洋セメント株式 会社中央研究所に送付し、材齢 14 日の曲げ強度の測定を行なった。 表 V.3-5 に IL ブロック製造に使用する生成物の管理値を示す。生成物は粒度調整設 備にて 5mm 以下に調整し、物性を確認後、管理値に合致したものを IL ブロック製造に使 用した。絶乾密度は JIS A 5308 レディーミクストコンクリート用骨材に規定されている値を設 定した。吸水率はこれまでの検討実績より 5%以下と設定した。 生成物の粒度分布等の変動によって充填率が変動することから、生成物のロットごと(コ ンテナバッグごと)にコンクリート配合を調整した。表 V.3-6 に配合の一例を示す。 表 V.3-4 IL ブロック製造管理値 管理項目 管理値 充填率 90%(目安) 曲げ強度(14 日強度) 5N/mm2 以上 寸法精度 ±3mm 表 V.3-5 生成物管理値 管理項目 管理値 f-CaO 1%以下 絶乾密度 2.5g/cm2 以上 吸水率 5%以下 表 V.3-6 コンクリート配合 記号 容積置換率(%) W/C (%) 細骨材率 s/a(%) 単位量(kg/m3 ) S G W C S G P 配合例① 50 0 33 60.0 131 400 570 840 604 配合例② 50 0 35 55.0 153 436 499 903 529
  • 44. 40 IL ブロック製造状況 IL ブロック製造は以下の手順で実施した。 ① 生成物、砂、粗骨材を表乾状態になるように水分を調整した。 ② パン型ミキサによる基層コンクリートの練混ぜを行なった。この際、コンクリートの状態によ って水量や混和剤量等を調整した。 ③ モルタルミキサによる表層モルタルの練混ぜを実施した。 ④ 基層コンクリートを詰込み、成型した。 ⑤ 表層モルタルを詰込み、成型した。 ⑥ IL ブロックを養生棚にいれて、養生槽で養生した(1 昼夜)。 ⑦ 翌日、養生槽から取り出し、室内で養生した。 写真 V.3-4 に製造した IL ブロックを示す。平成 30 年 3 月末までに 23,019 個製造し た。 写真 V.3-4 製造した IL ブロック
  • 45. 41 U字溝及びU字溝蓋の試験製造 試験概要 U字溝は道路側溝、用水路等広く用いられる。IL ブロックは流動性が小さい、硬練りとい われる状態で加圧即脱で製造されるのに対し、U字溝はある程度の流動性を有する軟練り といわれる状態で型枠への流し込み成型によって製造される。そこで IL ブロックに加えて、 施設内の展示用サンプルとしてU字溝(鉄筋コンクリート)及びU字溝蓋(無筋コンクリート) の試験製造を行なった。 配合 表 V.4-1 に配合を示す。細骨材に対し、生成物を 25%、50%と置換した配合で練混 ぜを行なった。生成物を置換することでスランプが低下し、空気量が増加して材料分離する 傾向があったため、生成物量の増加に応じて単位水量を増加し、細骨材率(s/a)を増加さ せて分離抵抗性を維持した。 表 V.4-1 U 字溝の配合 記号 容積置換率(%) 単位水量 (kg/m3 ) W/C (%) s/a (%)細骨材 粗骨材 S0-G0 0 0 163 50.0 45.0 S25-G0 25 0 169 50.0 47.0 S50-G0 50 0 175 50.0 49.0 U 字溝及び U 字溝蓋の作製 表 V.4-2 にフレッシュコンクリートのスランプ、スランプフロー、空気量を示す。生成物置 換率 25%ではコンクリートのフレッシュ性状は生成物未使用とほぼ同等であるが、置換率 50%では流動性が悪化し、空気量も多くなった。さらに置換率を増加させることは流動性、 空気量の面から困難と判断し、置換率 25%を U 字溝の基本配合とし、置換率 50%におい ても U 字溝及び U 字溝蓋を作製した。 所定の配合で混練後、U 字溝型枠及び U 字蓋型枠にコンクリートを流し込み後、バイブ レータによる締固めを実施した。1 週間養生後、脱型して U 字溝及び U 字溝蓋を作製し た。写真 V.4-1 に作製したU字溝及びU字溝蓋を示す。ジャンカ(コンクリートの打設不良 により、モルタルと粗骨材が分離して粗骨材だけが集まり、空隙が生じて硬化した状態)等の 発生もなく良好な充填性であった。置換率 50%では空気量が増加した影響もあり表面気 泡がやや目立つが、置換率 25%では生成物未使用品と同等の外観であった。 図 V.4-1 に硬化後のコンクリート供試体の圧縮強度を示す。強度特性には生成物置 換の影響は認められず、50%置換においても未使用品と同等の強度が得られた。
  • 46. 42 表 V.4-2 フレッシュコンクリートのスランプ、スランプフロー、空気量 記号 スランプ (cm) スランプフロー (cm) 空気量 (%) 温度 (℃) S0-G0 22.5 52.5 2.4 6.4 S25-G0 22.3 45 2.8 6.7 S50-G0 7 - 4.5 8.4 写真 V.4-1 作製したU字溝及びU字溝蓋 図 V.4-1 コンクリート供試体の圧縮強度 0 10 20 30 40 50 60 S0‐G0 S25‐G0 S50‐G0 14d圧縮強度(MPa) S0-G0 (比較品) S25-G0 S50-G0 14d圧縮強度(N/mm2 )
  • 47. 43 盛土の評価 試験盛土の施工 生成物が盛土として活用できるかどうかを評価するため、生成物に対し含水比を変動さ せ、サイドローラで転圧回数を増加させ締固め度等の強度試験を中心に試験を実施した。 以下に概要を示す。 盛土試験施工場所 生成物置場西側を整地、地盤改良して試験盛土を施工した。 試験盛土施工に用いた生成物 RUN4 及び RUN5 の生成物 (含水比 1.35%、湿潤密度 1.15g/cm3 ) 試験盛土大きさ 1 層目 4.0m×8.0m 高さ 30cm 勾配 1:1.5 2 層目 3.1m×7.1m 高さ 30cm 勾配 1:1.5 試験方法 生成物に所定の含水比になるように散水混練した。 含水比設定値 6%(1 層目)、4%、8%(2 層目) 含水比 4%の盛土施工後撤去して、含水比 8%の盛土を施工 盛土成型後、サイドローラを用いて所定の回数転圧 測定項目 含水比 RI 試験(締固め度):10 ヶ所 コーン指数試験:3 ヶ所 試験結果 (a) 測量・転圧後の含水比 表 V.5-1 に施工後の測量及び含水比試験結果を示す。1 層目、2 層目ともに目標の 厚さ(30cm)、含水比が得られた。 表 V.5-1 測量・転圧後の含水比 天端高(m) 転圧後の含水比(%) 1 層目(含水比 6%) 0.352 5.16 2 層目(含水比 4%) 0.669 3.78 2 層目(含水比 8%) 0.630 7.74 (b) 締固め試験 盛土層ごとの転圧回数と締固め度及びコーン指数の関係を、図 V.5-1 及び図 V.5-2 にそれぞれ示す。転圧回数が増えることでコーン指数、締固め度が高くなる傾向が確認さ れた。コーン指数は盛土の基準である 400kN/m2 を超えるが、締固め度は 85%程度まで向 上するものの、福島県の共通仕様書に規定されている締固め度として 90%以上を満足する ことができなかった。この理由として、盛土として使用するには細粒分が少ないことがあげら れた。
  • 48. 44 図 V.5-1 転圧回数と締固め度の関係 図 V.5-2 転圧回数とコーン指数の関係 混合盛土としての評価 上述したように、生成物を用いた盛土は締固め度 90%以上を達成しなかった。細粒分が 少ないことが原因と考えられ、粒度調整や破砕等により細粒分を補充することにより、生成 物 100%でも締め固め度を 90%以上にすることも可能であると推察される。しかし、生成物 に固結性がある等の性質を考慮すると、粘土分(細粒分)の多い土壌に混合して、混合盛 土として使用することにより、粘土単体より締め固め度も高くなるなど改質されると考えられる。 そこで混合盛土としての評価を行なった。
  • 49. 45 試験概要 使用材料 試験に使用した生成物の物性を表 V.5-2 に、粒度分布を表 V.5-3 に、対象土の物 性を表 V.5-4 に、粒度分布を表 V.5-5 にそれぞれ示す。なお、生成物は、IL ブロック製 造に使用している 5mm 以下生成物を使用した。対象土には土質分類の異なる2種類の土 壌を使用した。 表 V.5-2 評価に用いた生成物の物性 項目 単位 試験値 試験規格 表乾密度 (g/cm3 ) 2.69 JIS A 1109:2006 細骨材の密度及び吸水率試験方法 絶乾密度 (g/cm3 ) 2.62 吸水率 (g/cm3 ) 2.58 f-CaO (%) 0.22 JIS R 5202:2015 セメントの化学分析方法 含水比 (%) 0.44 JIS A 1203:2009 土の含水比試験方法 湿潤密度 (g/cm3 ) 1.33 JIS A 1225:2009 土の湿潤密度試験方法 懸濁液 pH - 11.99 JGS 0211 土懸濁液の pH 試験 表 V.5-3 評価に用いた生成物の粒度分布* ふるいを通過する質量分率(%) 0.075mm 0.15mm 0.3mm 0.6mm 1.2mm 2.5mm 5mm 10mm 9.8 24.4 48.7 77.8 92.5 98.2 100.0 100.0 *JIS A 1102:2014 骨材のふるい分け試験 表 V.5-4 対象土の物性試験結果 名称 産地 自然含水比 (%) 湿潤密度 (g/cm3 ) 懸濁液* pH 粘性土 宮城県仙台市 38.3 1.773 8.0 火山灰質粘性土 埼玉県入間市 133.3 1.285 6.1 *JGS 0211 土壌濁液のpH 試験 表 V.5-5 対象土の粒度分布* 名称 礫分 2~75mm 砂分 0.075~2mm シルト分 0.005~0.075mm 粘土分 0.005mm 未満 粘性土 0.0 10.2 54.8 35.0 火山灰質粘性土 1.6 5.3 57.8 35.3 *JIS A 1204:2009 土の粒度試験方法 試験項目 (a) コーン指数試験(JIS A 1228) 試験水準を表 V.5-6 に示す。対象土への生成物の混合量は重量比で 0~50%とした。 表 V.5-6 試験水準 項目 水準 対象土 粘性土、火山灰質粘性土 生成物の混合量(%) 0、10、20、30、50 試験材齢(日) 1
  • 50. 46 (b) 締固め試験(JIS A 1210)及び修正CBR試験 試験水準を表 V.5-7 に示す。対象土への生成物の混合量は、コーン指数試験で最も コーン指数が高くなる混合量(後述の図 V.5-3 より 50%)に設定した。 表 V.5-7 試験水準 項目 水準 対象土 粘性土、火山灰質粘性土 生成物の混合量(%) 50 試験材齢(日) 締固め試験:混合1日 修正 CBR :水浸 4 日後 試験結果 (a) コーン指数試験 試験結果を図 V.5-3 に示す。いずれの対象土においても、生成物の添加量に伴って、 コーン指数が増加することが確認された。特に泥土に規定される火山灰質粘性土に生成物 を 20%以上混合することによりコーン指数 400kN/m2 以上となり、国土交通省より発行され た「迅速な復旧・復興に資する再生資材の宅地造成盛土への活用に向けた基本的な考え 方」に規定されている、コーン指数の規定をクリアした。また、コーン指数約 600kN/m2 の粘 性土に混合することによりさらにコーン指数が向上する傾向が得られた。生成物には粘土分 の多い土壌を良質な土質材料に改質する効果があると考えられる。 図 V.5-3 生成物混合量と強度(コーン指数)の関係 (b) 締固め試験 対象土に対し、生成物混合量を 50%とした水準で締固め試験を実施した結果を図 V. 5-4 に示す。最適含水比は粘性土で 19.7%、火山灰質粘性土で 42.5%となった。
  • 51. 47 図 V.5-4 締固め試験 (左)粘性土 (右)火山灰質粘性土 (c) 修正CBR試験 CBR は路床や路盤材料の表面に直径 5.0cm のピストンが 2.5mm、5mm 貫入したときの 荷重を、標準荷重に対する百分率で表した値であり、締固め度による土壌の物性値の変化 を評価する上で最適と考えられた。そこで対象土に対して生成物を 50%混合した改質土に ついて、締固め度 90%の場合と 95%の場合について CBR 試験を実施した。表 V.5-8 に結果を示す。 生成物を添加した改質土の修正CBRは、高速道路の路床材料として使用可能であるこ とが確認された。また、設定する締固め度によっては、路盤(下部)など工事資材にも使用 可能な修正 CBR を示すことが確認された。 表 V.5-8 修正CBR試験結果 対象土 (未処理) 生成物 混合量 (%) 最大乾燥 密度 (g/cm3 ) 締固め度 (%) 修正 CBR (%) 高速道路*1 路床 路盤(下部) 粘性土 50 1.582 90 28.9 上部:10%以上 下部: 5%以上 30%以上95 47.7 火山灰質 粘性土 50 1.142 90 24.5 95 34.0 *1:日本道路公団編:設計要領第一集土工編、p.2~40、1998. 1.30 1.35 1.40 1.45 1.50 1.55 1.60 1.65 1.70 0 10 20 30 40 乾燥密度(g/cm3) 含水比(%) 対象⼟:粘性⼟ 1.00 1.05 1.10 1.15 1.20 30 40 50 60 乾燥密度(g/cm3) 含水比(%) 対象⼟:⽕⼭灰質粘性⼟
  • 52. 48 農業用資材としての評価 ケイ酸肥料としての評価 背景 ケイ酸肥料は水稲等のケイ酸植物に対して以下の肥効が期待でき、汎用的に利用され ている。  けい化細胞をつくり、病害虫に対する抵抗力を増加させる。  稲体を丈夫にさせ、倒伏、高温障害、冷害などに強い稲にする。  根の活力を増し生育を早め、品質を向上させる。  受光態勢がよくなり、光合成を盛んにさせる。 表 V.6-1 に生成物及びケイ酸肥料であるケイカル(高炉スラグ肥料)の化学組成、肥料 分析法に準拠して測定したケイ酸量を示す。生成物はケイカルと成分が類似している。そこ で、最初に水稲への生成物施用試験を行い、水稲の成育に異常がないかを確認し、さらに 可溶性ケイ酸など肥料としての成分分析を行なった。 表 V.6-1 生成物及びケイカルの化学組成 試料名 放射性 Cs 濃度 (Bq/kg) 化学組成(XRF、mass%) ケイ酸量*1 (mass%) SiO2 CaO MgO ケイ酸全量 可溶性ケイ酸 水溶性ケイ酸 生成物① 20 26.6 56.1 1.2 25.8 25.2 <0.1 生成物② 1.8 26.6 56.1 1.2 - - - 生成物③ 20 27.5 56.2 1.1 26.8 24.8 <0.1 ケイカル - 30.0 44.0 3.0 33.9 30.9 <0.1 *1 肥料分析法 試験方法 ポットによる水稲栽培試験により、肥料としての評価を行なった。最初に水田土壌で実施 したが、ケイ酸肥料としての効果が判定しにくくなったため、可給態ケイ酸量が水田土壌より 少ない黒ボク土を用いた試験を実施した。施用条件を表 V.6-2 に示す。 供試土壌 黒ボク土 (可給態ケイ酸 11.1mg-SiO2/100g) 試験方法  ポット(φ113×140mm)による水稲栽培試験  標準肥料として窒素・リン・カリウムはいずれにも通常量を施用  標準肥料のみ施用を「対照」、比較用として市販ケイ酸資材(ケイカル)添加を設置  ポット当り 2g の生成物・ケイカルを添加(ケイカルの推奨最大量 200kg/10 アールに相当) 表 V.6-2 肥料の施用条件 試料名 供試土壌 施用した肥料 窒素・リン・カリウム 生成物① ケイカル 対照 黒ボク土 ○ 生成物① ○ ○ ケイカル ○ ○
  • 53. 49 試験結果 表 V.6-3 に移植後 41 日後の生育調査結果を示す。本試験においても生育阻害は認 められなかった。茎数、全乾量は対照区(ケイ酸質肥料無添加)と比べて有意に大きく、ケ イ素吸収量は生成物で有意に多かった。したがって、生成物はケイカル肥料と同様にケイ 酸肥料として肥効があり、利用することができると判断された。 表 V.6-3 移植 41 日後の生育調査の調査結果(平均±SE、n = 3) 茎数 (本/ポット) 全乾重 (g/ポット) ケイ素含量 (mg-Si/g) ケイ素吸収量 (mg-Si/ポット) 対照 14.7±0.7a 6.83±0.08b 32.2±0.6a 220±6b 生成物① 17.3±0.3a 8.41±0.23a 30.0±1.2a 252±8a ケイカル 16.3±0.9a 7.74±0.25a 31.8±1.1a 245±3ab 酸性土壌改良材としての評価 背景 土壌のpH は微量元素の可給性(植物にとっての吸収しやすさ)に影響し、pH が低い場 合に酸性矯正資材を添加する酸性矯正がよく行われる。福島県施肥基準では、水田では 5.5~6.5、普通畑では 6.0~6.5 が改良目標値であり、普通畑、特に野菜栽培では石灰質 肥料による酸性矯正がよく行われている。 生成物中は多量のカルシウムを含んでいることから、石灰質肥料と同様、酸性矯正資材 として期待できる。そこで、酸性資材としての評価を行うため、緩衝曲線の測定及びコマツ ナを用いた生物施用試験を行なった。 試験方法 (a) 緩衝曲線 緩衝曲線の測定試験に用いた土壌を表 V.6-4 に示す。生成物は表 V.6-1 に示した 生成物①、②を用いた。 表 V.6-4 試験に用いた土壌 名称 状態 黒土(酸性土壌) 風乾 こげ茶色土壌 一般畑土壌(中性土壌) 風乾 茶色土壌 酸性土壌改良資材としての評価は「土壌、水質及び植物体分析法」内の中和石灰量- 緩衝曲線法に準拠して、土壌 10gに対して、生成物をそれぞれ 0、10、25、50、70、100mg 添加して実施した。 (b) 生物施用試験 供試土壌 淡色黒ボク土 (pH 5.4)