b35_2022sli_【極東大】キルギスの食生活.pdf

1. キルギスの
食生活
チームメンバー
中澤純 上野真由 鈴木貴大
岡本菜弥波 金城柊人
チーム名
From ビシュケク
ロシア極東連邦総合大学函館校

2. テーマを選んだ理由
今年は国際情勢の変化のため、卒業要件とされているロシアのウラ
ジオストク本学への留学へ行くことができませんでした。そのため公
用語がロシア語であるキルギスへ留学することになりました。
留学前の私たちはキルギスについてほとんど何も知りませんでした。
また大多数の日本人にも知られていないと思い、皆さんにキルギスに
ついてもっと知って頂きたいと考えたので、現地に行って調査を行い
ました。さらに実際にキルギスで生活してキルギスと日本の食事や食
文化に大きな違いがあると感じたので、今回のテーマであるキルギス
の食生活を選びました。

3. キルギス共和国のデータ
面積：19万8,500平方キロメートル（日本の約半分）
人口：670万人（2022年：国連人口基金）
首都：ビシュケク（約98万人）
民族：キルギス系（73.8％）、ウズベク系（14.8％）、ロシア系（5.1％）、ドゥンガン系（1.1％）、ウイグル系
（0.9％）、タジク系（0.9％）、その他タタール系、ウクライナ系など（2021年：キルギス統計委データ）
宗教：イスラム教スンニ派 (75%)、キリスト教正教会（20％）等
一人当たりGDP：1,283ドル（161位、2021年：IMF推定値）
©OpenStreetMap contributors / CC BY-SA
キルギス共和国国旗
キルギス共和国
ウラジオストク

4. キルギス共和国の主な歴史
年月 略史
18世紀後半～19世紀前半 コーカンド・ハン国による支配
1855年 ロシア帝国に併合
1918年 ロシア連邦共和国内の一部としてトルキスタン自治ソビエト社会主義共和国成立
1926年 キルギス自治ソビエト社会主義共和国成立
1936年
ロシア連邦共和国から分離し、
ソ連を構成するキルギス・ソビエト社会主義共和国に昇格
1990年12月15日 「キルギスタン共和国」に改名、国家主権宣言
1993年5月 国名を「キルギス共和国」に変更
出典：外務省「キルギス基礎データ」 https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/kyrgyz/data.html#section1

5. キルギス市民が集う
オシュ・バザール
オシュ・バザールとは、キルギスの首都ビシュケクに位置する中央ア
ジア最大規模のマーケットです。ビシュケクを訪れた際は必ずとも
耳にする観光名所でもあります。バザール内は食料品から日用品・
雑貨、衣料品など生活必需品はほとんど揃っているといってもいい
でしょう。平日の昼間でも人混みで、たくさんの市民が集い、活気づ
いています。そんなオシュ・バザールを歩いているとキルギスの食生
活が垣間見えます。
食料品は精肉から果物・野菜、香
辛料までキルギス料理に欠かせな
いものはすべて売られています。
バザールで買えるものすべては市
内のスーパーよりも比較的安い
値段で購入することができます。
一玉のスイカが15ソム(約27円)
であることには驚きました。キルギ
ス人の主食はパンが一般的です。
その中でも«Нан（ナン）» と呼ば
れる丸くてモチモチした大きなパ
ンもありました。そしてキルギス料
理は主にお肉がメインなので羊の
頭部や内臓系の部位、大量の羊
肉など…日本では見られない光
景が広がっていました。

6. キルギスではコンビニがない代わりに、スーパーの店舗数は多かったように思います。
どの店も現金・クレジットカードでの支払いが可能です。
米やスパイス、塩、砂糖などは量り売りの場合が多
かったです。菓子類の量り売りも充実しています。
魚は多くが缶詰の形態で販売されており、塩漬けや
パックの形での販売も一部ありましたが、鮮魚はほ
とんど見かけることがありませんでした。
ペットボトル飲料はどの店舗でも同じ商品しか陳列
されておらず、その多くがコカ・コーラやファンタ、ペ
プシなどの日本でも広く見かけることができる大手
メーカーの商品でした。
乳製品コーナーはとても大きく種類が豊富で、ヨー
グルト部門では特に«Чудо(チューダ)»というロシア
の会社が多くの商品を販売していました。
スーパーマーケット

7. Максым(マクシム)
水に大麦、とうもろこし、小麦、溶
かしバター、酵母などを加え作ら
れます。キルギスの伝統的な飲み
物で、ソ連時代は家庭でのみ作
られました。チャイのような見た目
で黒い繊維が混じっており、胡麻
ドレッシングのような風味を感じ
られます。
«Шоро（ショロ）»という会社が製造しているドリンクが数百メートルおきに露店で売ら
れています。値段が書かれており、注文すると紙コップに注いで渡してくれます。どれも
酸味と塩味が強く独特の風味を持っていますが、栄養価が高く、多くの市民が露店を
利用していました。しかし日本人の舌には全く馴染みのない味でした。
Чалап（チャラプ)
牛乳を発酵させてつくった飲料で
す。中央アジアで広く親しまれてい
ます。見た目は牛乳と全く違いが
ありませんが、ヨーグルト系飲料特
有の発酵した香りがとても強いで
す。
Квас(クワス)
パン酵母を発酵させて作ら
れる微アルコール性飲料で
す。歴史も古く原型は
2000年前古代エジプトで
出現したと言われています。
アルコール臭が強く香る一
方で味自体のクセはそれ
ほどきつくはありません。
飲み物

8. キルギスに住む人々の
食生活に関するアンケート
主な対象者は語学研修先のキル
ギス国際大学の東洋学部で日本
語を含む東アジアの言語を学ぶ
キルギスの学生と先生です。
私達若者とキルギスの若者の間
でどのような食生活の違いがあ
るのかを見ていきたいと思います。
キルギスの人々の食生活を調べるために、キルギス人だけではなく、民族や人種にこだわらず、現地に住む
17歳～73歳の男女33人に対してGoogleフォームを使用してアンケートを実施しました。

9. (歳)
(男性)
(女性)
「何歳ですか？」
「性別はなんですか？」
アンケート中では女性の比率が高かっ
たです。理由は、調査を行った大学で東
アジアの言語を学ぶ学生がほぼ女学生
だったからです。
今回のアンケートではキルギス滞在中
に知り合った東洋学部の学生達に聞い
たため、私達と同年代の17歳～21歳が
90%以上を占めています。
(キルギスでは17歳から大学へ行くこと
が可能です。)
年齢層
性別
男性
女性
歳
人

10. 「外国人にどのような
キルギス料理を
おすすめしますか？」
※33人中（複数回答あり）
1位 Бешбармак（ベシュバルマク） - 17人
2位 Плов（プロフ） - 10人
3位 Куурдак（クールダク） - 5人
4位 Манты（マンティ） - 4人
5位 Лагман（ラグマン） - 3人
Бешбармак（ベシュバルマク）
本来は右手で食べられていたた
め「5本指」という意味の名前を
持つキルギスの料理です。地域
によって様々ですが、主な材料と
しては馬肉か羊肉ときしめんの
ような自家製の麺です。宴会で
出される料理で、まずは羊の屠
畜を行い、最後のメインディッ
シュとして客などに振舞われます。
このレストランで食べたベシュバ
ルマクは油を大量に使っていて、
汁に見えるものは全てひまわり
油とバターを混ぜたものでした。
日本人にとっては油が多すぎて
胃がもたれます。
投票の男女比は6人:11人で男女
問わず、全員がベシュバルマク
をキルギスの代表的な料理だと
考えていることがわかりました。

11. Плов（プロフ）
鍋に大量の油で炒めた肉と味付きの人参を入れ、その炒めた油と水で米を炊いた
中央アジア全体の代表的な米料理です。
米の黄色さは人参から出る色素によるもので、油に溶け出た肉のうまみが米に染
みてとても美味しいです。店によって人参の切り方がぶつ切りのものや、細切りの
ものがあり、また肉も羊肉や牛肉などの違いがあります。多くのレストランではウズ
ベキスタンの米を使ったプロフと、ジャポニカ米ほどではないものの多少粘り気の
ある米の二種類を提供しているところが多かったです。
投票の男女比は3人:7人で、プロフもベシュバルマクと同じく、男女問わず全員が
キルギスを代表する料理だと考えていることがわかりました。
Куурдак（クールダク）
キルギス語で「揚げる」を意味するジャガイモと肉を使った伝統的なキルギス料理
です。ベシュバルマクは製麺をするなど時間がかかるため、客が早く帰ってしまう
場合やベシュバルマクを準備してるときにサッと作る料理です。
ジャガイモには大量の油が染みており、ベシュバルマクと同じで胃もたれします。
今回食べたレストランでは羊のあばら肉が使われていました。

12. Манты（マンティ）
見た目の通り、中国の影響を強く受けた蒸し料理です。漢語の「饅頭」という言
葉が語源ですが、現在の中国で饅頭というと蒸しパンのことを指します。それに
対してマンティは中国の包子のように中に羊のひき肉と玉ねぎが入っており、味
付けは塩と胡椒のみでシンプルです。小麦粉に塩を加えた生地のなかに餡を入
れて蒸して作られます。
形は店や家庭によって色々で、写真のように丸いマンティもあれば、日本のコン
ビニでよく見る肉まんに似た形もあれば、餃子のような半月型も存在します。ま
たロシアでよく食べられるペリメニの5倍ほどの大きさがあり、どこでも1セット
で5つのマンティが入っています。一人でプロフとマンティを食べようとしたとき、
マンティの大きさに驚いたのをよく覚えています。さらに時間がたつと中の油が
固まってしまうため、基本的に出来立てを食べることをおすすめします。
Лагман（ラグマン）
中国語の「拉麺」が由来の東アジアの特徴を表した
麺料理です。日本のラーメンとは全く違い、固い細
いうどんにトマトにセロリや牛肉、または羊肉を加え
たスープがかけられているとイメージすると味の想
像がし易いと思います。また焼きラグマンなどがあ
り、バリエーションも豊富です。
先崎将弘『食の宝庫 キルギス』群像社、2019年、64-87頁

13. 「朝食には普段
何を食べますか？」
「昼食には普段
何を食べますか？」
・軽いサンドイッチとお茶かコーヒー
・お茶かコーヒーのみ
・パン（チーズ入り）やサンドイッチ
・目玉焼き
などと日本人とさほど変わらないラインナップが多
かったです。他にロシアでもよく食べられるそばの
実と答える人もいました。
・スープ
・そばの実のおかゆ
・パン
・マカロニ
・ピザ
・マンティ
などと小麦で作られたものが多かったです。そのほか
にフリカッセ（フランスの煮込み料理）やファストフード
を食べるといった答えもありました。
ホテルでの朝食

14. 「夕食には普段
何を食べますか？」
「おやつには普段
何を食べますか？」
フルーツ（特にりんご）の回答が多かったです。
またそのほかの回答として
・スナック菓子
・クッキー
・ケーキ
・チョコ
などの回答もありました。さらに何も食べない人も半
分近くいました。
・スープ
・肉（ジャガイモなどの付け合わせ付）
・クールダク
・マカロニ
・プロフ
・ケフィア（コーカサス地方などで食べられる乳酸料）
などと朝昼晩ともに軽い食べ物と重い食べ物を食べる人
とかなり二極化された回答でした。

15. 「外食で1日に
いくら使いますか？」
この質問に33人全員に回答してもらったところ、20
歳の実家住まいの女学生一人と66歳と73歳の女
性のお年寄り2人は外食に行かないという結果が出
ましたその理由として考えられるのは、食料品の物
価の上昇と健康への意識です。回答者と話をする機
会を設けたときに、彼女らは物価の上昇を訴えてお
り、また食品添加物のような化学成分を含む食品を
毛嫌いしていることが分かりました。
それ以外の大学生ら30人は1日に平均で233キル
ギスソム(424円)を使っていました。男女別で比べ
てみると女性が1日に外食で消費する金額は211キ
ルギスソム(382円)、男性は214キルギスソム
(389円)というところから男女にあまり変化はない
ということが分かりました。
※1キルギス・ソム=1.82円で計算
私達が研修を行ったキルギス国際大学の食堂で食べたサムサとКомпот（コンポート）と呼ばれる東欧
圏で人気のある１Lのベリーのジュースです。2つで150キルギスソム(273円)と格安でした。そのた
め、キルギスの大学生が外食で少ない金額を使っているので全く食べることができないというわけで
はなく、日本人にとっては少ないお金でも十分にお腹を満たすことが可能だと想像することができます。
年齢 同居者 1日に消費する金額
66 子供 0
18 妹 100
20 兄妹 250
18 叔母 400
20 0
18 100
19 100
17 125
17 150
18 175
18 200
18 250
21 250
17 500
19 750
73 0
17 85
17 150
21 150
20 150
20 250
21 500
※値段はすべてキルギスソム
両親
一人暮らし
女性 男性
年齢 同居者 1日に消費する金額
28 妹 250
18 55
18 100
18 100
18 250
17 250
20 275
17 275
18 300
20 150
17 350
※値段はすべてキルギスソム
両親
一人暮らし

16. まとめ
今回キルギスへ語学研修に行き、多くの日本との違いを感じました。そ
の中で食生活に注目した今回の発表でしたが、遊牧民時代の名残か
ら肉料理が主流であることや、内陸国であるため海産物を食べない、
またほとんどのキルギス料理が塩のみの味付けで淡泊だが、油が大量
に使われているなど多くの発見がありました。
またアンケート調査を実施してみて、キルギスと日本の若者の食生活
にはあまり大きな違いは見られませんでしたが、ケフィアやパン中心の
食事など旧ソ連・東欧の文化が深く浸透していることがわかりました。
アンケートでは男性の比率が少なく、若者ばかりの回答になってしまっ
たので、平均的な調査をすることの難しさを感じました。