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Writing
3(c)2020 Syoubu Doc Lab. & Koichi HayashiGROW_FW_Lecture_20200809rev
⾃⼰紹介
■ 武蔵野⼤学教授 / ピースミール・テクノロジー株式会社前社⻑
- ⼤阪⼤学基礎⼯学部出⾝。富⼠ゼロックス、外資系データベース会社を経て、
ウルシステムズに参画。
- 2004年、⼤阪⼤学⼤学院にて博⼠(⼯学)取得。テーマはXMLドキュメント処
理による企業間コラボレーションに関する研究。
- コンサルティング事業部⻑として、プログラマ・SEをコンサルタントとして養成し、多
数の提案・プロジェクトを実施。
- 2009年、産総研と共同で利⽤者主導のシステム開発⽀援のために、ピースミー
ル・テクノロジー設⽴、初代社⻑に就任 (現在は顧問)。
- 2020年、勝負ドキュメント研究所を開設。武蔵野⼤学の教授に就任。
林 浩⼀
主な著作
– 「ITエンジニアのロジカル・シンキング・テクニック (新装版)」 (⽇経BP社)
「Java/Webでできる⼤規模オープンシステム開発⼊⾨」 (丸善出版社) 等
– ⽇経SYSTEMS誌「読み⼿が納得する勝負ドキュメント作成術」他多数
4. Strategic
Writing
4(c)2020 Syoubu Doc Lab. & Koichi HayashiGROW_FW_Lecture_20200809rev
はじめに
■ 技術者・研究者向けのロジカルシンキング研修
- プログラマやSEに対し、コンサルティングスキルをつける
■ 経営者や他の業務担当者への報告・提案⼒をつける
- ロジカルシンキングを情報構造変換として再定義
→ Strategic Writing
■ ⼯学系⼤学の⼤学院⽣向けに研修内容を拡充
- 卒論内容を他分野に説明するための概要作成の授業を実施 (4年間)
■ 専⾨外の⼈に理解できるように書き換えるためのフレームワークを導⼊
- 異なる分野でも同じ指針で記述の改善が可能であることを確認
■ コンピュータサイエンス、バイオニクス、メディアサイエンス
■ 本⽇お話したいこと
- 理系学⽣の⽂書⼒向上に有⽤な体系的な授業の枠組みを紹介
- 検証・発展・展開のためのアイデアをいただけると幸甚です
6. Strategic
Writing
6(c)2020 Syoubu Doc Lab. & Koichi HayashiGROW_FW_Lecture_20200809rev
Ⅰ.数理論理学
Ⅱ.議論モデル
タテの論理
Ⅲ.ロジカルシンキング
タテとヨコの論理
■ ⽇本では論理思考は3段階で普及
- 現在のビジネス現場で普及しているのは第Ⅲ世代 (ロジカルシンキング)
■ コンサルタント由来の論理思考がデファクトという現実
- ⼤学などアカデミックなコミュニティで「論理思考は当然できている」という⼈は多い
■ しかし、第Ⅰ、第Ⅱ世代の論理思考であり、現在のビジネス現場では不⼗分
■ 学⽣が社会に出てから困るので、第Ⅲ世代のものを在学中に教えるべき
- 理系教育を受けた⼈には粗雑な内容だが、ビジネス現場まで普及できたのはこれだけ
⼤学で教えられるロジカルシンキングを⽬指して
1980s1960s 2000s
理論性⾼
適⽤範囲狭
C
D W
理論性低
適⽤範囲広
7. Strategic
Writing
7(c)2020 Syoubu Doc Lab. & Koichi HayashiGROW_FW_Lecture_20200809rev
Strategic Writing
ロジカルシンキングを情報構造の変換として再定義
■ ビジネス現場に普及している論理思考に理論付けをしていくアプローチ
- ソフトウェア⼯学で扱う情報構造を使えば体系化できる
- 理系⼈材がより習得しやすく、ビジネス現場でより活⽤しやすく
結論
根拠
論理構造
現状分析から論理構造へ 論理構造から表現へ
ピラミッド構造 結論
根拠 根拠
根拠根拠 根拠
コンテキスト
分類構造
⼤分類⼤分類
分類
⼩分類⼩分類
要素要素
課題解決構造
⽬的
⼩⽬的
⼩⽬的
⼿段
⼿段
⼿段
結果
原因
原因
原因
原因
原因
⽂書構造
1.1
はじめに
1章
2.1
2章
2.2
図表構造
8. Strategic
Writing
8(c)2020 Syoubu Doc Lab. & Koichi HayashiGROW_FW_Lecture_20200809rev
ロジカルシンキングには学術的なルーツはない
■ マッキンゼー社由来の情報の構造化⼿法(ピラミッド原則)のこと
- 論理学や数学に基礎がありそうな⽤語ではあるが無関係
- 和製英語。ベストセラーとなったビジネス書の書名に由来
2000年頃から国内に急速に普及、経営企画・コンサル領域ではデファクト
■ 資料作成のための現場的実践テクニックで主に次のような概念からなる
- So What? / Why So?
- MECE
- ピラミッド構造
- ロジックツリー
- フレームワーク
■ 多数の書籍とセミナーを通じて広く普及
- 書籍の多くは、ピラミッド原則をベースに各著者による活⽤ノウハウを追加説明したもの
照屋華⼦、岡⽥恵⼦ 著
「ロジカル・シンキング」
バーバラ・ミント著
「考える技術・書く技術」
9. Strategic
Writing
9(c)2020 Syoubu Doc Lab. & Koichi HayashiGROW_FW_Lecture_20200809rev
フレームワークアプローチ
■ コンサルティング系ロジカルシンキングの特徴
- ⼤局的で単純な構造を使って資料を組み⽴てる
- 緻密な議論に踏み込まないビジネス上位層には受けが良い
■ ビジネスフレームワーク
- 分野や⽬的に応じて使われる汎⽤性の⾼い情報構造の雛形
- コンサルタントは⾼品質の資料を効率的に作るために活⽤
■ よく例⽰されるビジネスフレームワーク
- 3C、4P、バリューチェーン、等多数
10. Strategic
Writing
10(c)2020 Syoubu Doc Lab. & Koichi HayashiGROW_FW_Lecture_20200809rev
卒論概要フレームワークの設計
(GROW: Graduation Research Overview Writer)
■ コンサルティング⼿法で卒論概要のフレームワークを作成
- 学⽣に社会に出る前にロジカルシンキングを理解させる
- ⾃分の研究内容を客観的に分析・説明する⽅法を⾝につける
■ 異なる専⾨分野でも理解できることを⽬的とする
- 学部内・専⾨分野内で評価される通常の卒論とは基準は異なる
- 他にも書き⽅はあるが、定⽯を⼀つ覚えてから拡充することを提案
■ 卒論概要を構成する6種類の基本フレームワーク
- 卒業研究活動を根拠にした主張が⽰されるべき
■ ①論理構造(簡易論証図)と②ピラミッド構造を利⽤
- 上位の⽬的の提⽰は他分野の⼈による理解を助ける
■ ③⽬的の上位展開の構造を利⽤
- ⼯学系研究の多くは課題の解決を⽬的としている
■ 課題解決のための構造 (④⽬的の下位展開・⑤問題の原因探索) を利⽤
- ⼯学系研究の多くは仮説検証のプロセスを踏んでいる
■ ⑥仮説検証プロセスのフレームワークを利⽤
11. Strategic
Writing
11(c)2020 Syoubu Doc Lab. & Koichi HayashiGROW_FW_Lecture_20200809rev
卒論概要テキスト (サンプル)
■ テーマ︓復習時の講義動画利⽤のためのシーン選択機能の開発
- 講義動画を⽤いた授業を提供する学校が増えているが、復習で利⽤することが難しいため
講義コンテンツの有効活⽤がされていない。この原因は復習時に確認したいシーンを部分
的に視聴するための⼿間が⼤きいことである。本研究の⽬的は、復習時に学習者の視点
から必要なシーンの再視聴を可能にするために、授業時に学習者がとる⼿書きの講義ノー
トを⽤いたシーン選択機能を実現することである。この機能は、授業中に学習者がとった講
義ノートの内容を記録時間とともに保存しておき、復習時には、講義ノート中の選択された
内容から関連するシーンを再⽣する。プロトタイプを作成して実験を⾏った結果、必要な
シーンを視聴するまでの時間を⼤幅に短縮でき、復習での動画利⽤を効率化できることを
確認した。学習者視点での動画視聴を可能にすることで、講義動画の復習時の活⽤を促
進し、⾼度な知識を誰もが学べる社会の実現に寄与したい。
12. Strategic
Writing
12(c)2020 Syoubu Doc Lab. & Koichi HayashiGROW_FW_Lecture_20200809rev
卒論概要フレームワーク (サンプル)
■ 単なるテンプレートではなく、構造の意味を理解して内容を埋める
講義ノートを⽤いたシーン選択機能により、復習時の動画利⽤を効率化できる。
本研究の⽬的は、復習時に学習
者の視点から必要なシーンの再視
聴を可能にするため、授業時に学
習者がとる⼿書きの講義ノートを⽤
いたシーン選択機能を実現すること
である。
原因特定 復習で利⽤することが難しいため講義コンテ
ンツの有効活⽤がされていない。この原因は
復習時に確認したいシーンを部分的に視聴
するための⼿間が⼤きいことである。
検証結果
講義動画を⽤いた授業を提供する
学校が増えているが、復習で利⽤
することが難しいためコンテンツの有
効活⽤がされていない。
【⽬的】
【上位⽬的】
学習者視点での動画視聴を可能
にすることで、講義動画の復習での
活⽤を促進し、⾼度な知識を誰も
が学べる社会の実現に寄与したい。
【経緯・背景・問題意識】 プロトタイプを作成して実験を⾏った結果、
必要なシーンを視聴するまでの時間を⼤幅
に短縮でき、復習時の動画利⽤を効率化
できることを確認した。
シーン選択機能は、授業中に学習者がとっ
た講義ノートの内容を記録時間とともに保
存しておき、復習時には、講義ノート中の選
択された内容から関連するシーンを再⽣する。
解決⼿段
テーマ︓ 復習時の講義動画利⽤のためのシーン選択機能の開発
13. Strategic
Writing
13(c)2020 Syoubu Doc Lab. & Koichi HayashiGROW_FW_Lecture_20200809rev
卒論概要フレームワークの設計
結論(主張)
研究⽬的
【⽬的】
【上位⽬的】
【経緯・背景】
社会的
意義 上位
⽬的 研究
⽬的
問題
問題
施策原因
原因 施策
①論理構造
②ピラミッド構造
状況の
観察・分析
仮説の
⽴案
仮説の
検証
原因特定
検証結果
解決⼿段
⼩⽬的
⼩⽬的
研究
⽬的
施策
施策
③⽬的の上位展開
④問題の原因探索
⑤⽬的の下位展開
⑥仮説検証プロセス
15. Strategic
Writing
15(c)2020 Syoubu Doc Lab. & Koichi HayashiGROW_FW_Lecture_20200809rev
ロジカルシンキングの基本構成
■ 結論と根拠によるタテの論理 (So what? / Why?)
■ 根拠を分割するヨコの論理 (MECE)
■ ピラミッド構造
A
B
C
結論(主張)
根拠
So what? Why?
MECE =
Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive
結論(主張)
根拠
MECE 根拠 根拠 根拠
根拠
根拠 根拠 根拠
根拠
根拠 根拠 根拠
MECE
16. Strategic
Writing
16(c)2020 Syoubu Doc Lab. & Koichi HayashiGROW_FW_Lecture_20200809rev
反転論証図 (簡易型上下反転論証図) の提案
■ 論証図が論理学・⼼理学分野の先⽣により提案されている
- 数理論理学、議論モデルの両⽅に親和性がある
■ 「論理トレーニング」 野⽮茂樹
■ 「論理的思考最⾼の教科書」 福澤⼀吉
■ 簡易型上下反転論証図
- 上下反転させてロジカルシンキングへ橋渡しする (第Ⅲ世代まで統合)
- 結合論証と合流論証の区別はビジネス現場では難しすぎるので簡易化
①
②
単純論証
①
③
根拠
結論
②+
結合論証
①
③
②
合流論証
結論(主張)
根拠
結論(主張)
根拠
根拠 根拠 根拠
根拠
根拠 根拠 根拠
根拠
根拠 根拠 根拠
17. Strategic
Writing
17(c)2020 Syoubu Doc Lab. & Koichi HayashiGROW_FW_Lecture_20200809rev
論⽂の①論理構造と②ピラミッド構造
■ 研究活動の結果を根拠にして論⽂の主張を⽀える論理構造を作る
■ 活動内容の構成要素によってできるピラミッド構造が⾻格になる
- 主張を直接⽀えない記述はコンテキストとして構造の外にまとめる
■ 世の中の流れ、⽤語の定義、問題設定など
結論
根拠
論⽂の主張
研究活動の結果
論⽂の主張
仮説 評価
検証活動現象 現象
課題設定
結論
根拠 根拠
根拠根拠 根拠
コンテキスト
(背景・経緯・⽬的)
ピラミッド構造
研究仮説
検証作業
技術背景・研究経緯
19. Strategic
Writing
19(c)2020 Syoubu Doc Lab. & Koichi HayashiGROW_FW_Lecture_20200809rev
研究活動の⾻格となる課題解決の型
■ ⼯学系の研究の⽬的は何らかの社会的な課題の解決になる
- 課題解決につながらない研究もあるが対象外
■ 3つの型に分けられる
- 品質管理(QC)の分野他、複数のところで考案
- 使い分けを覚えることで課題解決を効率的に進められる
課題分析・施策⽴案課題設定
Ⅰ.原因探索型
(根治療法)
Ⅲ.⽬的展開型
(理想追求)
Ⅱ.逐次解決型
(対症療法)
20. Strategic
Writing
20(c)2020 Syoubu Doc Lab. & Koichi HayashiGROW_FW_Lecture_20200809rev
原因探索型は根治療法
■ 発⽣している問題の原因を特定し、その原因を解消する施策を⽴案する
- 「頭痛の原因となっている病気を特定し、それを治療する」
- 同じ種類の問題が継続的に起きる場合に特に効果的
問題
施策1原因
原因
原因
原因 施策2
原因を分析する問題を設定する
原因を解消できる施策
仮説を⽴案する
21. Strategic
Writing
21(c)2020 Syoubu Doc Lab. & Koichi HayashiGROW_FW_Lecture_20200809rev
逐次解決型は対症療法
■ 発⽣している問題に対して直接的に解決する施策を適⽤する
- 「頭痛の原因を探らずに頭痛薬を飲む」
- 問題を分析する時間の余裕がなく迅速に対応したい場合
- 問題を裏返す程度で有効な施策が出せる場合
問題1 施策1
問題2 施策2
問題を解決できる
施策仮説を⽴案する
問題を設定する
22. Strategic
Writing
22(c)2020 Syoubu Doc Lab. & Koichi HayashiGROW_FW_Lecture_20200809rev
⽬的展開型は理想の追求
■ ⽬標をより⼩さな⽬的に展開し、それらを実現する施策を⽴案する
- 「体調不良を起こさない健康状態を⽬指して⽣活改善する」
- 問題が発⽣していない状態で進むべき⽅向を決めたい場合
- 問題を⼩さな視点で捉えずより⼤きな視点で課題解決したい場合
⽬標
中⽬的
中⽬的 ⼩⽬的
⼩⽬的
⼩⽬的
施策1
施策2
施策3
⽬的を展開する⽬標を設定する
⽬的を達成できる
施策仮説を⽴案する
23. Strategic
Writing
23(c)2020 Syoubu Doc Lab. & Koichi HayashiGROW_FW_Lecture_20200809rev
■ 研究⽬的には必ず上位⽬的があり社会意義に繋がる (③)
- この構造により他の専⾨でも研究意義を理解できる
■ (⼯学)研究⽬的の多くは現実社会で顕在化している問題の解決 (④)
- このために問題の原因を探索することが多い (しないこともある)
■ 問題が顕在化しておらず、より良い⽬標を追究する場合もある
■ 研究⽬的を達成するために⽬的を具体施策まで細分化して実施する (⑤)
研究⽬的を中⼼とした課題解決構造③④⑤
社会的意義
上位⽬的
問題
原因
原因
顕在化した問題
がなければ省略
阻害
③⽬的の上位展開
⼩⽬的
⼩⽬的
研究⽬的
具体
施策
具体
施策
解決施策が単純であれ
ば具体施策が直結
原因探索が不要な
ら逐次解決
⑤⽬的の下位展開
④問題の原因探索
24. Strategic
Writing
24(c)2020 Syoubu Doc Lab. & Koichi HayashiGROW_FW_Lecture_20200809rev
■ 整理ができない学⽣は多く、論⽂執筆に苦労する要因と思われる
課題解決構造の整理 (サンプル)
講義動画の復習時の
活⽤を促進
復習時に学習者の視点
から必要なシーンの再視
聴を可能にする
授業時に学習者がとる⼿
書きの講義ノートを⽤いた
シーン選択機能を実現する
研究⽬的
1段上位⽬的
2段上位⽬的
⾼度な知識を誰もが学
べる社会の実現
3段上位⽬的
講義コンテン
ツの有効活
⽤がされてい
ない
復習で利⽤
することが難
しい
確認したいシーン
を部分的に視聴す
るための⼿間が⼤
きい
問題 原因 原因
授業中に学習者がとった講義ノー
トの内容を記録時間とともに保存
しておく
復習時には、講義ノート中の選
択された内容から関連するシーン
を再⽣する 施策
施策
授業時に学習者がとる⼿
書きの講義ノートを⽤いた
シーン選択機能を実現する
授業時に学習者がとる⼿
書きの講義ノートを⽤いた
シーン選択機能を実現する
研究⽬的
施策=研究⽬的
※詳しくは以下の論⽂等を参照
「ロジカルシンキングにおいて⽬的と⼿段が反転する誤り事例の分析」
情報処理学会研究報告, 2018-CE-145(1),1-8 (2018-06-02) , 2188-8930
https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/ej/?action=repository_uri&item_id=189622
25. Strategic
Writing
25(c)2020 Syoubu Doc Lab. & Koichi HayashiGROW_FW_Lecture_20200809rev
卒論概要テキスト (サンプル)
■ テーマ︓復習時の講義動画利⽤のためのシーン選択機能の開発
- 講義動画を⽤いた授業を提供する学校が増えているが、復習で利⽤することが難しいため
講義コンテンツの有効活⽤がされていない。この原因は復習時に確認したいシーンを部分
的に視聴するための⼿間が⼤きいことである。本研究の⽬的は、復習時に学習者の視点
から必要なシーンの再視聴を可能にするために、授業時に学習者がとる⼿書きの講義ノー
トを⽤いたシーン選択機能を実現することである。この機能は、授業中に学習者がとった講
義ノートの内容を記録時間とともに保存しておき、復習時には、講義ノート中の選択された
内容から関連するシーンを再⽣する。プロトタイプを作成して実験を⾏った結果、必要な
シーンを視聴するまでの時間を⼤幅に短縮でき、復習での動画利⽤を効率化できることを
確認した。学習者視点での動画視聴を可能にすることで、講義動画の復習時の活⽤を促
進し、⾼度な知識を誰もが学べる社会の実現に寄与したい。
26. Strategic
Writing
26(c)2020 Syoubu Doc Lab. & Koichi HayashiGROW_FW_Lecture_20200809rev
課題解決構造と論理構造の対応
■ 課題解決の構造が組み⽴てられると全体の論理構造の⾻格ができる
- ⽬的の上位展開はコンテキストの記述に対応
- 課題解決の構造 (問題の原因探索・⽬的の下位展開)は仮説⽴案に対応
- 仮説検証、結論を追記することでフレームワークの記述が完成
施策は有効である
課題解決の仮説が
組み⽴てられる
解決すべき課題がある
実施して効果が
確認できた
社会的意義
上位⽬的
問題
原因
原因
⼩⽬的
⼩⽬的
研究⽬的
具体
施策
具体
施策
技術背景・研究経緯
28. Strategic
Writing
28(c)2020 Syoubu Doc Lab. & Koichi HayashiGROW_FW_Lecture_20200809rev
構造を伝えるためのドキュメントは3つの形態をとる
■ 論理構造を伝えるためのドキュメントを作る
- 読んでもらうために順序を付けレイアウトする
■ 形態は変わっても伝えたい本質の構造は同じ
■ 論理構造、⽂書アウトライン、レイアウト済み⽂書
- 論理的なドキュメントに共通の原理
■ メール、論⽂、報告書、提案書
⽂書アウトライン
結論
根拠
情報A
情報B
情報C
⽬的・前提
論理構造
結論
根拠
情報A 情報B 情報C
コンテキスト
(⽬的・前提)
レイアウト済み⽂書
タイトル
1. 導⼊
2. 結論
3. 根拠
3.1 情報A
3.2 情報B
3.3 情報C
29. Strategic
Writing
29(c)2020 Syoubu Doc Lab. & Koichi HayashiGROW_FW_Lecture_20200809rev
⽂書アウトラインから様々な資料を作る
■ ⽂書アウトラインができれば、レイアウト次第で様々な資料になる
タイトル
1. 導⼊
タイトル
1. 導⼊
2. 結論
3. 根拠
3.1 情報A
3.2 情報B
3.3 情報C
2. 結論
3. 根拠
3.1 情報A
3.2 情報B
3.3 情報C
1段組 2段組
・⽬的
・結論
・根拠
⽬次
タイトル
導⼊ 根拠結論
・情報A
・情報B
・情報C
プレゼン資料
⽂書アウトライン
結論
根拠
情報A
情報B
情報C
⽬的・前提
30. Strategic
Writing
30(c)2020 Syoubu Doc Lab. & Koichi HayashiGROW_FW_Lecture_20200809rev
コンサルティング活動⽤のアウトライン検討シート
■ 課題解決のための⽂書アウトラインの組⽴てまでを俯瞰する
- どこまでを前提として⽰すか、何を根拠として⽰すかを検討する
- 作成したいドキュメントの種類ごとにカスタマイズできる
- 卒論概要を対象にカスタマイズすることでテンプレートを作成できる
結論・主張
背景 (コンテキスト) 根拠
⽬的
課題 施策検討
施策検討
課題
課題
施策検討
施策検討
施策検討
施策検討
テーマ︓
経緯・前提
課題認識
アウトライン検討シート
31. Strategic
Writing
31(c)2020 Syoubu Doc Lab. & Koichi HayashiGROW_FW_Lecture_20200809rev
課題分析から⽂書アウトラインへ
結論・主張
背景・⽬的
(コンテキスト)
根拠・事実
論理構造
(ピラミッドストラクチャ)
課題設定 課題分析
施策⽴案
施策評価
課題解決プロセス
⽬的
課題
施策検討
施策検討
課題
施策検討
施策検討
課題 施策検討
施策検討
MECE
ゴールツリー
アウトライン検討シート
結論
課題・施策検討
課題・施策検討
背景・⽬的
課題・施策検討
根拠
⽂書アウトライン構造
33. Strategic
Writing
33(c)2020 Syoubu Doc Lab. & Koichi HayashiGROW_FW_Lecture_20200809rev
卒論における⑥仮説検証プロセス
■ コンサルタントの作業ステップの枠組み (研究活動からの逆輸⼊)
- 卒論の根拠付けの⾻格となる
■ 各学⽣が卒業研究で全ステップを含むとはかぎらない
■ 実施ステップによって可能な主張が異なる
■ 実施ステップごとの主張
- 状況の観察・分析
■ 課題解決につながる分析ができたことまでを主張
- 仮説の⽴案
■ 課題解決に有望な⼿段を考案できたことまでを主張
- 仮説の検証
■ 考案した⼿段で課題の解決ができることまでを主張
状況の
観察・分析
仮説の
⽴案
仮説の
検証
仮説検証プロセス
論⽂の主張
状況の
分析
仮説
⽴案
課題設定
技術背景・研究経緯
仮説
検証
34. Strategic
Writing
34(c)2020 Syoubu Doc Lab. & Koichi HayashiGROW_FW_Lecture_20200809rev
卒論概要フレームワーク (サンプル)
■ 単なるテンプレートとしてではなく構造の意味を理解して内容を埋める
講義ノートを⽤いたシーン選択機能により、復習時の動画利⽤を効率化できる。
本研究の⽬的は、復習時に学習
者の視点から必要なシーンの再視
聴を可能にするため、授業時に学
習者がとる⼿書きの講義ノートを⽤
いたシーン選択機能を実現すること
である。
原因特定 復習で利⽤することが難しいためコンテンツの
有効活⽤がされていない。この原因は復習
時に確認したいシーンを部分的に視聴する
ための⼿間が⼤きいことである。
検証結果
講義動画を⽤いた授業を提供する
学校が増えているが、復習で利⽤
することが難しいためコンテンツの有
効活⽤がされていない。
【⽬的】
【上位⽬的】
学習者視点での動画視聴を可能
にすることで、講義動画の復習での
活⽤を促進し、⾼度な知識を誰も
が学べる社会の実現に寄与したい。
【経緯・背景・問題意識】 プロトタイプを作成して実験を⾏った結果、
必要なシーンを視聴するまでの時間を⼤幅
に短縮でき、復習時の動画利⽤を効率化
できることを確認した。
シーン選択機能は、授業中に学習者がとっ
た講義ノートの内容を記録時間とともに保
存しておき、復習時には、講義ノート中の選
択された内容から関連するシーンを再⽣する。
解決⼿段
テーマ︓ 復習時の講義動画利⽤のためのシーン選択機能の開発
35. Strategic
Writing
35(c)2020 Syoubu Doc Lab. & Koichi HayashiGROW_FW_Lecture_20200809rev
卒論概要テキスト (サンプル)
■ テーマ︓復習時の講義動画利⽤のためのシーン選択機能の開発
- 講義動画を⽤いた授業を提供する学校が増えているが、復習で利⽤することが難しいため
講義コンテンツの有効活⽤がされていない。この原因は復習時に確認したいシーンを部分
的に視聴するための⼿間が⼤きいことである。本研究の⽬的は、復習時に学習者の視点
から必要なシーンの再視聴を可能にするために、授業時に学習者がとる⼿書きの講義ノー
トを⽤いたシーン選択機能を実現することである。この機能は、授業中に学習者がとった講
義ノートの内容を記録時間とともに保存しておき、復習時には、講義ノート中の選択された
内容から関連するシーンを再⽣する。プロトタイプを作成して実験を⾏った結果、必要な
シーンを視聴するまでの時間を⼤幅に短縮でき、復習での動画利⽤を効率化できることを
確認した。学習者視点での動画視聴を可能にすることで、講義動画の復習時の活⽤を促
進し、⾼度な知識を誰もが学べる社会の実現に寄与したい。
36. Strategic
Writing
36(c)2020 Syoubu Doc Lab. & Koichi HayashiGROW_FW_Lecture_20200809rev
授業の概要
■ 2016年度から4年間実施 (40名〜80名)
- 90分授業2回連続を4回 (後期は研究計画書を題材に実施)
■ 授業内容
- 1⽇⽬︓①論理構造と②ピラミッドストラクチャ
- 2⽇⽬︓MECEとロジックツリー (③⽬的の上位展開)
- 3⽇⽬︓課題解決の型 (④問題の原因探索・⑤⽬的の下位展開)
- 4⽇⽬︓⽂書構造の組み⽴て (⑥仮説検証・卒論概要フレームワーク)
■ 各回の内容
- 前半(90分)︓構造についての説明と基本演習の繰り返し
- 後半(90分)︓グループ課題を与えて分析・検討・提出
■ 演習に使⽤する題材は前年度の先輩が作成した修了レポート
■ 修了レポート
- 各⾃の卒論について構造を検討し、概要を書き直したものを提出
37. Strategic
Writing
37(c)2020 Syoubu Doc Lab. & Koichi HayashiGROW_FW_Lecture_20200809rev
GROWフレームワークのカバー率
■ 提出された論⽂概要について、フレームワークで表現できるかどうかを検討
- ⼯学系の3専攻については、94~98%の⾼いカバー率
- 事例整理など課題解決を⽬指さないテーマでの適⽤は難しい
件数 カバー 割合 観察分析 仮説⽴案 仮説検証
バイオ 22 22 100% 0 1 21
コンピュータ 6 6 100% 0 1 5
メディア 19 16 84% 1 1 14
合計 47 44 94% 1 3 40
件数 カバー 割合 観察分析 仮説⽴案 仮説検証
バイオ 16 16 100% 2 4 10
コンピュータ 8 8 100% 0 3 5
メディア 18 17 94% 0 4 13
合計 42 41 98% 2 11 28
2017年度
2018年度
38. Strategic
Writing
38(c)2020 Syoubu Doc Lab. & Koichi HayashiGROW_FW_Lecture_20200809rev
まとめ
■ コンサルタント由来のロジカルシンキングの⼿法を卒論概要に応⽤
- ⽬標は他の専⾨分野の⼈にも理解できるようにすること
- 卒論概要の説明に必要な構造を選定
■ 論理構造、ピラミッド構造、課題解決の構造、仮説検証プロセス
- 選定した構造からアウトライン検討シートを卒論向けにカスタム化
■ ⼯学系専攻のテーマは卒論概要を他分野に理解しやすく書き換え可能
- フレームワークのカバー率は90%を超える
- 研究内容に固有の指導をすることなく書き換えができた
■ 指導教官のドキュメント作成指導を不要にできる
■ 先輩の卒論概要の構造を分析することで⾃律的にスキル向上できる
- 多くの学⽣が基本的な論理的な関係を扱えていないことが判明
■ 結論と根拠、⽬的と⼿段、問題と原因
■ 今後に向けて
- GROWフレームワークの展開を進めフィードバックを得る