6. 米国アカデミー医学研究所(Institute of Medicine of the National
Academies:IOM)による診療ガイドラインの定義
「診療ガイドライン」は、「エビデンス」の「システマティックレビュー」と「複数
の治療選択肢」の「利益と害の評価」に基づいて「患者ケアを最適化」
するための「推奨」を含む文書である。
この定義に厳密に従っている診療ガイドラインは、質が高く、信頼できる
と考えられる
この定義に厳密に従っている診療ガイドラインの作成方法が、
GRADEアプローチである
22. EBMに基づくARDSガイドライン
エビデンスのレベル 内容
Ia RCTのメタアナリシス
Ib RCT
IIa 良くデザインされた比較研究
IIb 良くデザインされた準実験的研究
III 良くデザインされた非実験的記述研究
IV 専門家の報告・意見・経験
推奨グレード
A 行うよう強く勧められる Iaまたは少なくとも1つ以上のレベルIbの結果
B 行うよう勧められる 1つ以上のレベルIIの結果
C1 行うことを考慮しても良いか、十分な科学的根拠がない
C2 科学的根拠がないので、勧められない
D 行わないよう勧められる
126. システマティックレビュー作成
P
I
C
O
T
S
アウトカム
アウトカム
アウトカム
アウトカム
重大
重要
重大
Evidence Profile
RCTは「高」から、観察研究は「低」から開始し、エビデンスを確実性の程度で紐付きにする
1.研究の限界(risk of bias)
2.非一貫性(inconsistency)
3.非直接性(indirectness)
4.不精確さ(imprecision)
5.出版バイアス(publication bias)
グレードを下げる5要因 グレードを上げる3要因
1.大きな効果(large magnitude)
2.用量反応(dose response
gradient)
3.交絡因子(confounders)
アウトカムごとに集めた各研究
のrisk of biasを評価
高(High)/中(Moderate)/低(Low)/非常に低(Very low)
推奨の作成:以下を考慮して判断
エビデンスの確実性
利益と害のバランス
価値観と好み
資源の利用(コスト)
パネル会議前に1回目投票
パネル会議でディスカッション必要に応じて再度投票
できる限り「推奨なし」としない
診療ガイドライン完成
アウトカムごとのエビデンス(body of evidence)の確実性を評価
Risk of bias summary
Risk of bias graph
各アウトカムに
関する効果推定値
と結果の要約
=メタアナリシス
(Forest plot作成)
推奨度と推奨文の決定
推奨:抗凝固療法の適応がない癌患
者に対して、非経口的抗凝固療法を
行うことを提案する(GRADE 2B,
推奨の強さ「弱い推奨」/ エビデ
ンスの確実性「中」)
Summary of Findings(SoF)
様々な介入に
対する推奨を
盛り込む
診療ガイドライン作成
Clinical Question(CQ)
→Analytic Frameworks
→Key Questions
下記の表・
図の証拠の
提示が必須
/効果推定
値の確実性
が強い・弱
いと独断で
判断するも
のではない
1.ランダム割り付け順番の生成
2.割り付けの隠蔽化
3.研究参加者と治療提供者の盲検化
4.アウトカム評価者の盲検化
5.不完全なアウトカムデータ
6.選択されたアウトカムの報告
7.その他のバイアス(COIなど)
Evidence-to-Decisionテーブル
推奨の強さと方向:強く・弱く/推奨する・推奨しない(しないことを推奨)
Strong recommendation FOR an intervention:1 (・・・することを推奨する)
Weak recommendation FOR an intervention:2(・・・することを提案する、条件付き)
Strong recommendation AGAINST an intervention:1(・・・しないことを推奨する)
Weak recommendation AGAINST an intervention:2
(・・・しないことを提案する、・・・しないことを条件付きで推奨する)
利益相反(COI)に対して工夫すること
診療ガイドラインパネル会議による合意形成
医療消費者などあらゆるステークホルダーが参加する
全体的なエビデンスの確実性(certainty of the
evidence←overall quality of evidence across outcomes:
「質」より「確実性」のが誤解が少ない)
重大(critical) なアウトカムごとの確実性をまとめる
原則として,重大なアウトカムに関するエビデンスの確実性の中で
最も低いものとする(各アウトカムが同じ方向ならば最も高いも
の)
A 「高」/B 「中」/C 「低」/D 「非常に低」
127. システマティックレビュー作成
P
I
C
O
T
S
アウトカム
アウトカム
アウトカム
アウトカム
推奨の作成:以下を考慮して判断
エビデンスの確実性
利益と害のバランス
価値観と好み
資源の利用(コスト)
パネル会議前に1回目投票
パネル会議でディスカッション必要に応じて再度投票
できる限り「推奨なし」としない
診療ガイドライン完成
アウトカムごとのエビデンス(body of evidence)の確実性を評価
各アウトカムに
関する効果推定値
と結果の要約
=メタアナリシス
(Forest plot作成)
推奨度と推奨文の決定
推奨:抗凝固療法の適応がない癌患
者に対して、非経口的抗凝固療法を
行うことを提案する(GRADE 2B,
推奨の強さ「弱い推奨」/ エビデ
ンスの確実性「中」)
様々な介入に
対する推奨を
盛り込む
診療ガイドライン作成
Clinical Question(CQ)
→Analytic Frameworks
→Key Questions
Evidence-to-Decisionテーブル
推奨の強さと方向:強く・弱く/推奨する・推奨しない(しないことを推奨)
Strong recommendation FOR an intervention:1 (・・・することを推奨する)
Weak recommendation FOR an intervention:2(・・・することを提案する、条件付き)
Strong recommendation AGAINST an intervention:1(・・・しないことを推奨する)
Weak recommendation AGAINST an intervention:2
(・・・しないことを提案する、・・・しないことを条件付きで推奨する)
利益相反(COI)に対して工夫すること
診療ガイドラインパネル会議による合意形成
医療消費者などあらゆるステークホルダーが参加する
全体的なエビデンスの確実性(certainty of the
evidence←overall quality of evidence across outcomes:
「質」より「確実性」のが誤解が少ない)
重大(critical) なアウトカムごとの確実性をまとめる
原則として,重大なアウトカムに関するエビデンスの確実性の中で
最も低いものとする(各アウトカムが同じ方向ならば最も高いも
の)
A 「高」/B 「中」/C 「低」/D 「非常に低」
次に非直接性です。薬効の差では、あまり人種差はないようですね。人種差にこだわりすぎると間違えることがあることを、少し意識してください。
特に、人種差は、ベースラインリスクに違いはあることが多いですが、それは、ベースラインリスクごとに考えれば良いので、非直接性を下げる要因にはなりにくいです。そして、先ほど述べたように、A薬とB薬の効果の相対的な違い、いわゆる相対危険度などは、人種差が少ないでしょう。もっとも、日本人のエビデンスと言いながら、動物実験とか、risk of biasの大きい観察研究をエビデンスとしては、いけないのは言うまでもありません。
(7)必要とされるコストや資源(Resource use )は、どれだけか?
日本の患者のための診療ガイドラインならば、その患者の直接的なコストを考えます。よって、コストが小さければ望ましい効果、コストが大きければ望ましくない効果など、バランスに含めて考える場合もおおいです。
今回は仮想例のため、日本の保険治療内ならば、コストを考慮しても、望ましい効果が望ましくない効果を逆転するほどのことはないと考える方が多いとして進めます。もっとも、個人向けの診療ガイドラインということで、コストを、推奨度の判断に用いなくても、実際にこの診療ガイドラインを使う時は、その患者のコストを考える、EBMの基本は忘れてはなりません。
そして、合意形成します。最近では、推奨するしないを投票するのでなく、推奨草案が適切であるかどうかの合意形成を行うことが多いですね。
ここでポイントを2つ述べます。
1つは、この並んでいる順番ですが、againstから並んでいます。これは、なるべく、無駄な医療を行いたくないということを、診療ガイドラインを作る、最大の目的であるからです。これは、日本に取っても切実な問題でしょう。
2つめは、Conditional recommendation for either the intervention or the comparisonという真ん中のチェックがあります。以前は、ありませんでした。今回のように、A薬と標準薬の比較ならば、これを使うことは、ほとんどないでしょう。しかし、ただしhead to head で介入同士を比較する場合。たとえば2薬の比較、A薬とB薬の効果比較の場合は、真ん中の選択肢をつくって5段階とします。プラセボや介入なしと比較する場合は4段階を使用すると考えると良いでしょう。