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PAT法
(Physiological and Anatomical Triage)
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PAT法トリアージデモビデオ
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PAT法
(Physiological and Anatomical Triage)
生理学的 解剖学的
 2分程度で実施
 START法で黄・赤タッグの患者に対して実施
 繰り返し再評価の実施
 2人1組で実施(評価者と記録者)
PAT法
生理学的評価
意識 JCS2桁以上
呼吸 9回/分以下
または
30回/分以上
脈拍 50回/分未満
または
120回/分以上
血圧 収縮期血圧90mmHg未満
または
200mmHg以上
SpO2
90%未満
その他 ショック症状
低体温(35℃以下)
解剖学的評価
開放性頭蓋骨陥没骨折
外頸静脈の著しい怒張
頸部または胸部の皮下気腫
胸郭動揺,フレイルチェスト
開放性気胸
腹部膨隆,腹壁緊張
骨盤骨折
両側大腿骨骨折
四肢切断
四肢麻痺
穿通性外傷
デグロービング損傷
15%以上の熱傷を合併する外傷
顔面気道熱傷の合併
(Physiological and Anatomical Triage)
いずれかに該当すれば 赤▶▶▶
解剖学的評価について
PAT法
解剖学的評価の流れ
①頭部
②頸部
③胸部
④腹部
⑤骨盤
⑥大腿
⑦下腿
⑦上肢
解剖学的評価
開放性頭蓋骨陥没骨折
外頸静脈の著しい怒張
頸部または胸部の皮下気腫
胸郭動揺,フレイルチェスト
開放性気胸
腹部膨隆,腹壁緊張
骨盤骨折
両側大腿骨骨折
四肢切断
四肢麻痺
穿通性外傷
デグロービング損傷
15%以上の熱傷を合併する外傷
顔面気道熱傷の合併
▶
該当すれば 赤
頭の先から
足の先まで
診察は,
視診→聴診→触診
の順番で実施
聴診・触診は損傷
のない側(痛みの
ない側から)実施
Point
Point
▶▶▶
▶▶▶▶
頭部・顔面
トリアージ実施者
観察項目・質問
黄 赤 赤 診断 緊急処置
頭部・顔面
見ます
見た目の外傷は
耳・鼻・口腔内出血は
□なし
□なし
□あり
□あり
・頭蓋骨骨折
(開放性)
・頭蓋底骨折
・頭部CT
頭部・顔面
触ります
前額部・上顎部・
下顎部に圧痛は
□なし □あり ・頭蓋底骨折 ・頭部CT
観察項目と考えられる診断・処置
表参照元:https://shiseikaidai2.crayonsite.net/p/266/
頭部・顔面の観察
腫脹/変形・動揺・圧痛の有無
▶ 頭蓋骨・顔面骨折の可能性
耳と鼻の穴の観察
(髄液耳鼻漏の有無)
▶ 頭蓋底骨折の可能性
鼻腔,口腔内の煤の有無
▶ 気道熱傷の可能性
前額
上顎
下顎
口腔内出血の有無
▶ 誤嚥による気道閉塞の可能性
下顎骨多発骨折を生
じると,舌が背側に落
ち込んで気道閉塞をき
たすことがある.
Point
穴は全て確認
Point
耳・鼻・口
Point
頭部の後ろま
で手で触り,
手に血液の付
着がないか確
認する.
頸部・胸部
トリアージ実施者
観察項目・質問
黄 赤 赤 診断 緊急処置
頸部
見ます
見た目の外傷は □なし □あり ・気管/気道損
傷
・確実な気道確保
頸静脈怒張は □なし □あり ・心タンポナー
デ
・FAST(エコー)
頸部
触ります
気管の偏位は □なし □あり ・緊張性気胸 (後述)
頸部
触りながら
これ痛いですか □痛み
なし
□痛み
あり
・上位脊髄損傷 (後述)
両側鎖骨部
触りながら
皮下気腫は □なし □あり ・緊張性気胸 ・酸素投与
・確実な気道確保
・胸腔穿刺
・胸腔ドレナージ
観察項目と考えられる診断・処置
トリアージ実施者
観察項目・質問
黄 赤 赤 診断 緊急処置
胸部
見ます
見た目の外傷は □なし □あり ・重要臓器/大血管損
傷に至る穿通外傷
・フレイルチェスト
・緊張性気胸
(ショック)
(気管の偏位)
(皮下気腫)
(胸郭運動左右差)
・大量血胸
・ショックの管理
・確実な気道確保
・陽圧換気
(NPPV/レスピ)
・酸素投与
・確実な気道確保
・胸腔穿刺
・胸腔ドレナージ
・ショックの管理
・胸腔ドレナージ
・ショックの管理
胸郭の変形は □なし □あり
胸郭の上がりの
左右差は
□なし □あり
奇異性呼吸は
(フレイルチェスト)
□なし □あり
呼吸音
聴取します
呼吸音左右差は □なし □あり
胸部
触ります
両手で4箇所押す □異常なし
(疼痛・
肋骨動揺)
□異常あり
(疼痛・
肋骨動揺)
皮下気腫は □なし □あり
観察項目と考えられる診断・処置
見逃してはいけない致死的胸部外傷
③緊張性気胸①フレイルチェスト
②大量血胸 ④開放性気胸
頸部と胸部では,上記を見逃さないよう
に身体観察を行う!
⑤心タンポナーデ
フレイルチェストに見られる身体所見
① 胸壁動揺(フレイルセグメント)
② 胸郭運動の左右差
③ 患側の呼吸音減弱・消失
④ 圧痛,轢音,動揺
開放性気胸に見られる身体所見
① 胸郭運動の左右差
② 吸い込み創(Sucking chest wound)
③ 患側の呼吸音減弱・消失
空気
大量血胸に見られる身体所見
① 胸郭運動の左右差
② 患側の呼吸音減弱・消失
緊張性気胸に見られる身体所見
① 胸郭運動の左右差(患側の膨隆と運動低下)
② 気管の健側への偏位
③ 頸静脈の怒張
④ 患側呼吸音の減弱・消失
⑤ 皮下気腫 →
→
→
①④⑤
③
②
 Beckの3徴
・血圧低下
・頸静脈怒張(静脈圧上昇)
・心音減弱
 Kussmaulサイン
(吸気時の頸静脈怒張)
特徴的な所見
 心電図:全誘導で低電位
心タンポナーデに見られる身体所見
① 頸静脈怒張
② 血圧低下
• 両側の頸静脈 ▶ 怒張の有無を確認
• 胸鎖乳突筋 ▶ 呼吸補助筋使用の有無を確認
①視診
②触診
頸部の観察
• 舌骨 → 甲状軟骨 → 輪状軟骨 → 気管軟骨の順に
▶ 偏位の有無を確認
• 頸部全体〜両鎖骨周辺 ▶ 握雪感の有無を確認
• 胸郭挙上の左右差,開放創・打撲痕,胸壁運動
①視診
②聴診(損傷のない側から)
▶ 圧痛,轢音,動揺,皮下気腫の有無を確認
胸部の観察
• 前胸部(左右):第4肋間鎖骨中線内側
• 側胸部(左右):第6肋間中腋窩線
▶ 肺音減弱・消失,左右差がないかを確認
③触診(損傷のない側から愛護的に)
• 胸部の上部→下部の順で片側ずつ
腹部
トリアージ実施者
観察項目・質問
黄 赤 赤 診断 緊急処置
腹部
見ます
見た目の外傷は □なし □あり ・腹腔内出血
・腹部臓器損傷
・FAST(エコー)
・ショックの管理
膨隆は □なし □あり
腹部
触ります
両手で4箇所押す □圧痛
なし
□圧痛
あり
観察項目と考えられる診断・処置
腹部の観察
• 腹部膨隆の有無
• 穿通創,腸管脱出の有無
• 打撲痕の有無
• 圧痛,腹壁緊張の有無
▶ 腹腔内出血の可能性
①視診
②触診
Point
明らかに膨隆しており外傷によ
る腹腔内出血が疑われる場合は,
触診は省略する.
骨盤
トリアージ実施者
観察項目・質問
黄 赤 赤 診断 緊急処置
骨盤部
見ます
見た目の外傷は □なし □あり ・骨盤骨折 ・骨盤簡易固定
(シーツラッピング)
・ショックの管理
骨盤を両外側から中
心に向かって押す
□異常なし
(疼痛,骨の
動揺)
□異常あり
(疼痛,骨の
動揺)
骨盤部
触ります
恥骨を上から押す □異常なし
(疼痛,骨の
動揺)
□異常あり
(疼痛,骨の
動揺)
観察項目と考えられる診断・処置
骨盤の観察
• 下肢長差の有無
• 両側腸骨稜,恥骨結合部の圧痛,動揺の有無
※両側腸骨稜で圧痛があれば,恥骨結合は省略する
• 打撲痕,外傷の有無
▶ 骨盤骨折の可能性
Point
骨折と出血量のおおよその目安
• 閉鎖骨折2.000〜2.500ml
• 開放骨折4.000ml
①視診
②触診
四肢
トリアージ実施者
観察項目・質問
黄 赤 赤 診断 緊急処置
大腿部
見ます
見た目の外傷は □なし □あり
大腿部
触ります
両側大腿部を両手
で押す(交互にク
ロスさせて1箇所
につき2回押す)
□異常なし
(疼痛,動揺)
□異常あり
(疼痛,動揺)
・両側大腿骨骨折
・専門医の治療を
要する切断肢
・クラッシュ症候
群
・整復・固定(副木)
・圧迫/駆血止血
・ショックの管理
・急速輸液
(カリウムフリー)
・膀胱留置カテ挿入
・ECGモニタリング
・致死的不整脈に備
えた準備(除細動
器,抗不整脈薬)
観察項目と考えられる診断・処置
トリアージ実施者
観察項目・質問
黄 赤 赤 診断 緊急処置
下腿部
見ます
見た目の外傷は □なし □あり
下腿部
触ります
両下腿を両手で
同時に上から下
まで押す
□異常なし
(疼痛,動揺)
□異常あり
(疼痛,動揺)
・デグロービング
損傷
・クラッシュ症候
群
・感染/皮膚壊死の
管理
・急速輸液
(カリウムフリー)
・膀胱留置カテ挿入
・ECGモニタリング
・致死的不整脈に備
えた準備(除細動
器,抗不整脈薬)
両足先
を同時に触り
足触っているの
分かりますか?
□分かる □分からない ・上位脊髄損傷 ・頚椎カラー装着
・呼吸筋麻痺
→人工呼吸
・神経原性ショック
→ショックの管理
両足を動かして下さい
□麻痺なし □麻痺あり
観察項目と考えられる診断・処置
トリアージ実施者
観察項目・質問
黄 赤 赤 診断 緊急処置
上腕部・前腕部を
見ます
見た目の外傷 □なし □あり ・専門医の治療を
要する切断肢
・デグロービング
損傷
・圧迫/駆血止血
・ショックの管理
・感染/皮膚壊死の
管理
上腕部・前腕部を
触ります
両上腕〜前腕
〜手を,両側
同時に上から
下まで押す
□異常なし
(疼痛,動揺)
□異常あり
(疼痛,動揺)
・クラッシュ症候
群
・急速輸液
(カリウムフリー)
・膀胱留置カテ挿入
・ECGモニタリング
・致死的不整脈に備
えた準備(除細動
器,抗不整脈薬)
両手を同時に触り 手を触ってる
の分かります
か?
□分かる □分からない ・上位脊髄損傷 ・頚椎カラー装着
・呼吸筋麻痺
→人工呼吸
・神経原性ショック
→ショックの管理
手を握って下さい,離して下さい □麻痺なし □麻痺あり
観察項目と考えられる診断・処置
四肢の観察
• 外傷,四肢切断の有無
• 下肢長差の有無
• 四肢変形の有無
①視診 ②触診
• 自発痛の有無
• 動揺,轢音の有無
• 圧痛の有無
Point
骨折部位とそれに伴う出血量
• 上腕骨=約300〜500ml
• 大腿骨=約1.000〜2.000ml
• 下腿骨=約500〜1.000ml
神経症状の観察
▶ 脊髄損傷の可能性
• 痺れ,感覚障害,四肢麻痺の有無
+後頚部痛,徐脈がある場合
Point
意識障害があり神経症状が確認
できない場合は,脊髄損傷があ
るものとして,頚椎保護を行う.
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