情報技術フォーラム（FIT2018@福岡工業大学）での講演資料です。

1. IT化と法化の交錯
エンパワメントされる個人をめぐって
九州大学大学院法学研究院
入江秀晃

2. 本日の話題
エンパワーメントとしてのIT化と法化
(1)交渉、紛争解決をオンラインで行う動き
(2)災害後の法律相談と紛争解決
(3)リーガルサービスのアンバンドル化
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3. 3

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AI弁護士

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6. 6
エンパワーメント

7. エンパワメント
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• 本来、本人が持っている力だが、社会的な制約等で
発揮されていなかったものを、発揮できるようにする
こと。
• 苦労を取り戻すこと。（向谷地生良）
• 良い意味で（？）「寝た子を起こす」こと。
たとえば、
精神障害者の当事者運動
科学技術政策への一般市民の意見反映
いじめ被害者・加害者の対話
ワークショップ型＝参加型のクラス運営

8. 代替か？拡張か？
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ITも法律家も、代替的ツールにも拡張的
ツールにもなり得る

9. 新しい調停の特徴
• 口頭手続の重視：書面中心主義からの反省
• 当事者の自己決定の重視：専門家へのお任
せ主義からの反省
→ 処理でなく支援としての紛争解決手続。
当事者の能力による主体的解決を目指す。
ボイス（声）とチョイス（選択肢）を
当事者に取り戻す
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10. 書面を検討する
閻魔様
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11. 借家の明け渡し
出て行かない
出て行け
借地借家法上の要件
家主の自己使用？
修繕
滞納分の分割払い
生活保護の受給
手続申請方法
明け渡しの実行に関する
調整
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裁定型調停
対話型調停
リーガルソーシャルワーク
権利義務確定 当事者間関係調整 社会的資源・環境調整
標準化による
解決
個別化による
解決

12. 解決のイメージ
金銭等要求
の調整
当事者間の
相互行為・交
換の調整
社会的資源を
活用した当事
者支援環境
の構築
裁定型調停
対話型調停
リーガルソーシャルワーク
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13. バイステックによる援助者定義
• 個別化、意図的な感情の表出、統制された情
緒的関与、受容、非審判的態度、クライエント
の自己決定、秘密保持。（7原則）
• 理想主義と現実主義の両立を目指すケース
ワーカー像。
バイステック『ケースワークの原則』
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14. 専門家像の転換
専門家
当事者
Q
質問
A
回答
当
事
者
専
門
家
問題
Q
質問
伝統的な専門家モデル：
当事者が状況に関する情報
を提供し、専門家が正解として
の行動指針を示す。
当事者専門家協働モデル：
当事者と専門家が問題解決
に協働する。
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15. 専門家像転換の背景
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専門家の
役割変化
消費者主権
と情報化
消費者が意識・能力共
に高くなり「お任せ」をよ
しとしなくなった。
家族、会社、地域社会
で完結していた機能も
専門家の助けを求める
ようになった。
専門的
サービス
の日常化
市民が強くなった 市民が弱くなった

16. (1)交渉、紛争解決をオンライ
ンで行う動き
2018年3月30日 「裁判手続等のＩＴ化検討会」
3つのe :
e提出 (e-Filing) 主張証拠提出、電子納付
e事件管理 (e-Case management)
期日調整、進行状況確認、資料確認
e法廷 (e-Court) ウェブ会議、争点整理
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効率化するツールとしてのITという文脈

17. オンラインでの交渉・紛争解決
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構造化された
交渉
Structured negotiation

18. eBay解決センター
• 両当事者が自身らでプラットフォーム上で交
渉する。
– 交渉履歴が残る。言った言わないになりづらい。
– 選択肢を選ぶコミュニケーション。炎上化のリスク
を減らす。
• 交渉で解決できなかったもののみ第三者とし
てのeBayが出てくる。
– 調停人のアサイン。
– 被害の救済。金銭給付。
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19. 紛争システムデザイン
コスト 低→高
当事者コントロール 高→低
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(ループバック)
連続的な手続配置

20. (2)災害後の法律相談と紛争解決
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• 銀行の通帳と印鑑がなくなっても、通帳の再
発行は可能である。
• 土地の権利証がなくなっても、土地の権利が
失われるわけではない。
• 健康保険証がなくなっても、病院に行ける。
常識的な情報提供が命を救うことも

21. 熊本地震法律相談データ分析
21日本弁護士連合会（2016）第二次分析
両当事者が被災者の類型

22. 災害後の簡易な申立て支援
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23. 災害ADRの典型例
1. 災害後にアパートから出て行ってくれと言われる（賃貸借）
見たところそれほど大きな被害がないので、水回りなど少し
だけ修理してくれれば、これからも住み続けられそうなのに、
大家さんからかなり強硬に出て行って欲しいと言われて当惑
している。
2. お隣さんの壁や瓦が原因で住宅や自動車に被害が出た
（相隣関係）
主観的には相手が加害者でこちらが被害者に見えるが、相
手は災害が原因だからお互い様と逃げようとするといったパ
ターン。
3. 災害後のリフォームがずさん（建築関係）
4. 災害を理由に雇用を打ち切られた（雇用関係）
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24. 災害後の法律家の関わり
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25. (3)リーガルサービスのアンバンドル化
アンバンドルとは？
束ねられパッケージ化されたサービスをバラ
売りすること。
例）パック旅行 → 航空券、宿泊、現地ツアー
リーガルサービスのアンバンドリングとは？
法情報提供、書面作成、法廷での弁論、相手
当事者への交渉などの諸機能をバラ売りする
こと。 25

26. 26
メリーランド州裁判所のセルフヘルプセンター

27. 結論
• ITと法の接点で一般には、法律家の扱うデー
タや思考をIT・AIで代替、効率化されるのかと
議論されている。
• むしろ、当事者=法律家関係の将来像を考え
ていくと、より広く深い変化の途上にあること
がわかる。
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