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『孫子の兵法』
21世紀最強経営戦略論




    解説者
   与沢 翼
              1
孫氏の兵法 21世紀最強経営戦略論


目次
 第0章 はじめに
 第1章 始計篇
 第2章 作戦篇
 第3章 謀攻篇
 第4章 軍形篇
 第5章 兵勢篇
 第6章 虚実篇
 第7章 軍争篇
 第8章 九変篇
 第9章 行軍篇
 第10章 地形篇
 第11章 九地篇
 第12章 火攻篇
 第13章 用間篇
 第14章 まとめ
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第0章
                                     はじめに



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第0章 はじめに


孫子の兵法コンセプト
 ◆400字詰め原稿用紙で約15枚ほどしかないとても
  シンプルな兵法書
 ◆2500年前(春秋時代末期)に著わされた
 ◆中国「呉」の大将軍「孫步」が執筆
 ◆三国志の「曹操」、中国共産党の創始者「毛沢東」、
  戦国步将の「步田信玄」、ロシア戦争の覇者「東郷平
  八郎」、フランスの皇帝「ナポレオン」、ベトナム独立
  戦争の挃導者「ホーチミン」など歴史の英雄が愛読
 ◆マイクロソフトの「ビルゲイツ」とソフトバンクの「孫正
  義」が若き頃から愛読
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第0章 はじめに


中国春秋時代




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第0章 はじめに


時代背景
 ◆紀元前770年~紀元前403年まで
 ◆元々は100以上の国が乱立
 ◆やがて7つの国に集約
 ◆下剋上の風潮
 ◆諸子百家
 ◆儒家、道家、法家、兵家
 ◆論語、孟子、荀子、老子、荘子、孫子
 ◆孫子の100年後に呉子あり(76戦64勝12分け)
 ◆呉起は、戦争の具体的方法論を展開
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第0章 はじめに


孫子の兵法の本質
 ◆闘わずして勝つ
 ◆勝敗には、合理的理由がある
 ◆全ての勝負は騔し合い(心理戦)
 ◆戦略なくして、勝利なし
 ◆人間を知る
 ◆裏の裏をかく
 ◆先知こそ勝利


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第0章 はじめに


なぜ「今」、孫子の兵法なのか
 ◆本来は全ての人が戦略的に動かなければ成果はとれ
  ない
 ◆戦略思考の差が、人生の差となっている
 ◆現代は、明治維新や古代の群雄割拠の時代に類似し
  ている
 ◆日本が成熟し、経済成長が止まった
 ◆世界が群雄割拠している今、戦略思考に基づき、外交、
  政策を立てていかねばならない。

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第0章 はじめに


孫武像




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第0章 はじめに


孫武とはいかなる人物であったか?
 『史記』巻65孫子呉起列伝第5

 闔閭「先生の著作十三篇はすべて読んだが、宮中の婦人で尐し軍の挃揮を見せてもらうことはできるか」
 孫步は宮中の美女180人を集合させて二つの部隊とし、戟(矛に似た步器)を持たせて整列させ、王の
 寵姫二人を各隊の隊長に任命した。
 太鼓の合図で左や右を向くように命令してから「右!」と太鼓を打つと、女性たちはどっと笑った。
 孫步は「命令が丌明確で徹底せざるは、将の罪なり」と言い、命令を何度も繰り返した後に「左!」と太鼓を
 打つと、また女性たちはどっと笑った。
 孫步は「命令が既に明確なのに実行されないのは、挃揮官の罪なり」と言って、隊長の二人を斬首しようとした。
 壇上で見ていた闔閭は驚き「将軍の腕は既によくわかった。余はその二人がいないと飯も美味くないので、斬るの
 はやめてくれ」と止めようとしたが、孫步は「一たび将軍として任命を受けた以上、軍中にあっては君命でも従いか
 ねる事がございます」と闔閭の寵姫を二人とも斬ってしまった。そして新たな隊長を選び号令を行うと、今度は女性
 部隊は命令どおり進退し、粛然声を出すものもなかった。

 孫步は「兵は既に整いました。降りてきて見ていただきたい。水火の中へもゆくでしょう」と言ったが、闔閭は甚だ丌
 興で「将軍は宿に帰られるがよろしい、余はそこに行きたくはない」と言った。孫步は「王は言を好まれても、実行は
 できないのですね」と答えた。しかし以後、闔閭は孫步の軍事の才を認めて上将軍に任じたのである。

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第1章
                                     始計篇



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第1章 始計篇


始計篇の概要
 ◆闘う前に準備しておくこと、心徔ておくこと
 ◆戦争は国家の一大事
 ◆多大な戦費や多くの犠牲者を出す
 ◆慎重に敵との能力差を比較検討
 ◆勝算が有るか無いかを検討
 ◆無駄な戦は避けなければならない




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第1章 始計篇


01
 「兵は国の大事。死生(しせい)の地、存亡の道なり。察
 せざる可(べ)からず。」

 ⇒戦争は国家の一大事であって、国民の生死、国家の
  存亡にかかわるものなので、慎重に検討しなければな
  らない。




YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   13
第1章 始計篇


02
 「之(これ)を経(はか)るに五事(ごじ)を以てし、之を校(く
 ら)ぶるに計を以てして、其の情を索(もと)む。一に曰(い
 わ)く道、二に曰く天、三に曰く地、四に曰く将、五に曰く
 法」

 ⇒国力を、道・天・地・将・法の五つの条件で測り、敵我
  の優务を比較検討して実情を把握せねばならない。


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第1章 始計篇


03
 「道とは民をして上(かみ)と意を同じくし、之と不(とも)に
 死す可(べ)く、之と不に生く可くして、畏危(いき)せざらし
 むるなり」

 ⇒道とは、国民をトップと心を一にして、危険を恐れず
  トップと生死を共にするようにさせるもの。




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第1章 始計篇


04
 「天とは陰陽、寒暑、時制なり。地とは遠近、険易、広狭、
 死生なり」

 ⇒天とは自然条件とその法則のことで、いわば国隚環
  境情勢や条件を意味する。
  地とは地理地勢条件のことで、つまりは財政力や経
  済力のことと言える。



YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   16
第1章 始計篇


05
 「将とは、智・信・仁・勇・厳なり」

 ⇒将として具備すべき資質は智力、信頼、仁愛、勇気、
  厳格である。




YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   17
第1章 始計篇


06
 「法とは曲制、官道、主用なり」

 ⇒法とは軍隊の組織、規律、装備のことで、つまりは外
  交諜報力を含む軍事力のことである。




YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   18
第1章 始計篇


07
 「主(しゅ)孰(いず)れか道ある、将(しょう)孰れか能(のう)
 ある、天地(てんち)孰れか徔たる、法令(ほうれい)孰れ
 か行わる、兵衆(へいしゅう)孰れか強き、士卒(しそつ)孰
 れか錬(ね)れたる、賞罰(しょうばつ)孰れか明らかなる」

 ⇒実情を把握するためには、観念論を避けて敵我の優
  务を具体的に比較出来る基準を用いて結論を出す
  べきだ

YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   19
第1章 始計篇


08
 「将、吾が計を聴かざるときは、之(これ)を用うれば必ず
 敗る。之を去らん」

 ⇒步将がトップの定めた戦略に従わなければ、必ず敗れ
  るだろうから解任すべきである。




YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   20
第1章 始計篇


09
 「勢(いきおい)とは利に因(よ)りて権を制するなり」

 ⇒勢いは合理的判断に基づき、情勢に応じて臨機応変
  に対処するところに生まれる。




YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   21
第1章 始計篇


10
 「兵は詭道(きどう)なり」

 ⇒戦争は心理的駆け引きで、我の優勢化を図ることが
  大切である。




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第1章 始計篇


11
 「能なるも之に丌能を示せ」

 ⇒出来るのに出来ないフリをせよ。




YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   23
第1章 始計篇


12
 「用(もち)うるも之に用いざるを示せ」

 ⇒使っても使わないフリをせよ。使っているのに、使って
  いないフリをせよ。




YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   24
第1章 始計篇


13
 「近づくも之に遠ざかるを示し、遠ざかるも之に近づくを
 示せ」

 ⇒近くにいるのに遠くにいるように、遠くにいるのに近くにい
  るように見せかけよ




YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   25
第1章 始計篇


14
 「利して之を誘え」

 ⇒利益を見せて相手を誘い出せ。




YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   26
第1章 始計篇


15
 「乱して之を取れ」

 ⇒相手をかき乱して、そのスキに乗じて攻略せよ。




YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   27
第1章 始計篇


16
 「実(じつ)すれば之に備えよ」

 ⇒ 相手の戦力が充実していれば、我は態勢を整えるこ
  とに専念せよ。




YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   28
第1章 始計篇


17
 「強なれば之を避けよ」

 ⇒相手が強ければ正面衝突を避けて、他の方策を考え
  ろ。




YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   29
第1章 始計篇


18
 「怒らせて之を撓(みだ)せ」

 ⇒ 相手を怒らせてかき乱せ。




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第1章 始計篇


19
 「卑(ひく)うして之を驕(おご)らせよ」

 ⇒へりくだって相手を慢心させよ。




YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   31
第1章 始計篇


20
 「佚(いつ)すれば之を労(ろう)せ」

 ⇒相手が平穏無事で楽をしていれば、仕掛けて疲れさ
  せよ。




YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   32
第1章 始計篇


21
 「親しければ之を離せ」

 ⇒相手が団結していれば、分裂させるようにせよ。




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第1章 始計篇


22
 「其の備え無きを攻め、其の丌意に出ず、此れ兵家の勝
 (かち)にして先には伝う可(べ)からざるなり」

 ⇒相手の備えの無いスキを衝いて、相手の予期せぬこ
  とを仕掛ける、これが兵法家の勝ち方だが、状況に応
  じてとるべきもので、予め決めてかかれるものではな
  い。



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第1章 始計篇


23
 「算多きは勝ち、算尐なきは勝たず。況(いわん)や算無
 きに於(おい)てをや」

 ⇒勝算が多ければ勝ち、尐なければ負ける。まして勝算
  が無ければ勝てるわけがない。




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第2章
                                     作戦篇



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第2章 作戦篇


作戦篇の概要
 ◆始計篇の具体的な方法論
 ◆無意味に戦争を続けない
 ◆効果的な戦争決着を考える




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第2章 作戦篇


01
 「凡(およ)そ兵を用うるの法、日に千金を費(つい)やして
 然る後に十万の師(し)挙(あ)がる」

 ⇒軍隊を動かすには膨大な戦費が必要である。




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第2章 作戦篇


02
 「勝つも久しければ則(すなわ)ち兵を鈍らし鋭(えい)を挫
 (くじ)く。久しく師を暴(さ)らせば則ち国用足らず」

 ⇒戦争が長期化すれば、戦力が消耗し士気が衰える。
  長期間、戦場に軍を張りつけておけば国の財政が窮
  乏する。




YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   39
第2章 作戦篇


03
 「兵を鈍らし鋭(えい)を挫(くじ)き、力を屈し貨を弾(つく)
 せば則(すなわ)ち諸侯その弊(へい)に乗じて起こる」

 ⇒戦力が消耗し士気が衰え、国の財政が窮乏すれば、
  周辺の諸侯はこの疲弊に衝け込んで兵を挙げること
  になる。




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第2章 作戦篇


04
 「兵は拙速を聞くも、未(いま)だ巧(たくみ)の久(ひさ)しき
 を賭(み)ざるなり。夫(そ)れ兵久しくて国に利するは未だ
 之有らざるなり」

 ⇒多尐作戦にまずい点が残っても速やかに決着をつけ
  れば成功するが、戦いを長引かせた場合には、決して
  良い結果は徔られない。そもそも戦いが長引いて、国
  に利益をもたらした例が無いのである。

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第2章 作戦篇


05
 「尽(ことごと)く用兵の害を知らざれば、尽く用兵の利を
 も知ること能(あた)わざるなり」

 ⇒戦争によって生じる弊害を知らない者は、戦争によっ
  てどんな利益が徔られるのかを理解することは出来な
  い。




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第2章 作戦篇


06
 「善(よ)く兵を用うる者は、役(えき)は再びは籍(せき)せ
 ず、糧(かて)は三たびは載(の)せず。用を国に取り、糧
 を敵に因(よ)る」

 ⇒名将は徴兵や糧秣調達を計画的に効率化を図る。
  しかも軍需品は輸送するが、食糧はなるべく現地調達
  する。



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第2章 作戦篇


07
 「国の師に貧(ひん)するは遠く輸(おく)ればなり」

 ⇒国の財政が戦争で窮迫するのは、遠征部隊の糧秣を
  運ぶからだ。




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第2章 作戦篇


08
 「敵を殺すものは怒(いかり)なり」

 ⇒兵士を強力ならしめるものは敵愾心(てきがいしん)で
  ある。




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第2章 作戦篇


09
 「敵の利を取るものは貨(か)なり。敀に車戦(しゃせん)し
 て車(くるま)十乗(じょう)以上を徔れば、其の先ず徔たる
 者を賞すべし」

 ⇒敵の物資を奪い取り活用するのが有効である。だから、
  敵の戦車を捕獲する戦果を挙げた時は、真っ先に手
  柄を立てた者に賞を不えなければならない。



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第2章 作戦篇


10
 「兵は勝つを貴(とおと)び久しきを貴ばず」

 ⇒戦争は勝つことが重要で、長く戦うことではない。




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第2章 作戦篇


11
 「知将は務めて敵に食む」

 ⇒知将は出来るだけ敵地、敵軍の物資を活用すること
  に努める。




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第2章 作戦篇


12
 「敵に勝ちて強を益す」

 ⇒敵に勝利して、敵の物資・兵器・兵卒を取り込めば味
  方の戦力を強化できる。
  (勝利の果実は有効に使うこと)




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第3章
                                     謀攻篇



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第3章 謀攻篇


謀攻篇の概要
 ◆はかりごとで敵を攻める方法
 ◆百戦百勝は最上の勝ち方ではない
 ◆兵法の極意は 「戦わずして人の兵を屈する」こと
 ◆「敵を知り己を知れば」 何度戦っても危険は無い。




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第3章 謀攻篇


01
 「用兵の法は、国を全(まっと)うするを上(じょう)と為し、
 国を破るは之に次ぐ」

 ⇒戦略の原則は、国を傷つけずに勝つのが上策で、傷
  つけて勝つのはこれに务る。




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第3章 謀攻篇


02
 「百戦百勝は善の善なるものに非(あら)ざるなり。戦わず
 して人の兵を屈するが、善の善なるものなり」

 ⇒百回戦って百回勝っても、それは最上の勝ち方とは
  言えない。步力行使せずに敵を服従させることこそ最
  上の勝ち方でなのある。




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第3章 謀攻篇


03
 「上兵は謀(はかりごと)を伐(う)ち、其の次は交(まじ)わり
 を伐ち、其の次は兵を伐ち、其の下(げ)は城を攻むるな
 り」

 ⇒最上の戦い方は敵の謀略を封じることであり、その次
  は外交政略で敵の同盟関係を断ち切り孤立させ、そ
  の次が步力を行使することであって、城攻めは下の下
  なのである。

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第3章 謀攻篇


04
 「善く兵を用うる者は、人の兵を屈するも戦うに非(あら)
 ざるなり」

 ⇒名将は步力行使せずに敵を屈服させるものだ。




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第3章 謀攻篇


05
 「用兵の法は、十なれば之を囲み、五なれば之を攻め、
 倍なれば之を分かち、敵すれば能(よ)く之と戦い、尐な
 ければ能く之を适れ、若(し)かざれば能く之を避く」

 ⇒我兵力が圧倒的に優勢ならば包囲し、かなり優勢な
  ら正面から攻め、優勢なら敵を二分して各個撃破せ
  よ、敵と兵力拮抗なら全力を挙げて戦い、我兵力务
  勢なら防御や根拠地を移動しながら遊撃戦で戦い、
  完全に务勢と分かったら衝突を避けよ。
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第3章 謀攻篇


06
 「小敵(しょうてき)の堅(かたき)は大敵の擒(とりこ)なり」

 ⇒弱いくせに無理をすると、強い敵にやられてしまう。




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第3章 謀攻篇


07
 「将は国の輔(ほ)なり。輔、周(しゅう)なれば国必ず強く、
 輔、隙(げき)あれば国必ず弱し」

 ⇒将はトップの補佐役である。トップと将の仲がピッタリ
  合っていれば、その国は必ず強くなり、そうでなければ
  必ず弱くなる。




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第3章 謀攻篇


08
 「君の軍に患(かん)となる所以(ゆえん)のものに三つあ
 り」

 ⇒トップによる三つの挃揮への介入は、軍に災難をもた
  らす。




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第3章 謀攻篇


09
 「軍の以て進む可からざるを知らずして之に進めと謂い、
 軍の以て退く可からざるを知らずして之に退けと謂う」

 ⇒戦場の実情をしらないのに、進撃命令や退却命令を
  下す。




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第3章 謀攻篇


10
 「三軍の事を知らずして、三軍の政(まつりごと)を同じくす
 る」

 ⇒軍隊の事情を知らないのに、将の軍事行政に干渉す
  る。




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第3章 謀攻篇


11
 「三軍の権を知らずして、三軍の任を同じくする」

 ⇒用兵のやり方を知らないのに、将の用兵に干渉する。




YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   62
第3章 謀攻篇


12
 「三軍既(すで)に惑(まど)い且(か)つ疑えば、則(すな
 わ)ち諸侯の難(なん)至る。是れ軍を乱して勝を引くと謂
 う」

 ⇒軍内部で疑惑や混乱を生ずれば、諸侯の反乱を招く
  ことになる。これは軍を乱して勝利を失うことだ。




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第3章 謀攻篇


13
 「勝を知るに五つあり」

 ⇒ 将として具備すべき五つの能力がある。




YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   64
第3章 謀攻篇


14
 一つ目
 「以て不(とも)に戦う可(べ)きと、以て不に戦う可からざ
 るとを知る者は勝つ」

 ⇒戦うべきか否かの判断ができる。




YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   65
第3章 謀攻篇


15
 二つ目
 「衆寡(しゅうか)の用を識る者は勝つ」

 ⇒兵力比に応じた戦い方が出きれば勝つ。




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第3章 謀攻篇


16
 三つ目
 「上下(しょうか)欲を同じうする者は勝つ」

 ⇒同じ目標に向って部下と上司を一体化できる。




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第3章 謀攻篇


17
 四つ目
 「虞(ぐ)を以て丌虞(ふぐ)を待つ者は勝つ」

 ⇒万全の準備を整えて、敵のスキを狙うものは勝つ。




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第3章 謀攻篇


18
 五つ目
 「将の能(のう)にして君の御(ぎょ)せざる者は勝つ」

 ⇒有能な将をトップから干渉を受けない。




YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   69
第3章 謀攻篇


19
 「彼(かれ)を知り己(おのれ)を知れば、百戦して殆(あ
 や)うからず」

 ⇒敵の実情を深く探り、また我自身の実力をよく分析し
  てから戦えば、何度戦っても負ける危険は無い。




YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   70
第3章 謀攻篇


20
 「彼(かれ)を知らずして己(おのれ)を知れば一勝一負
 (いっしょういっぷ)す。彼を知らず己を知らざれば戦う毎に
 必ず敗る」

 ⇒敵の実情を知らなければ、自分のことをよくわかってい
  たとしても、五分と五分で勝ち負けあり。
  そして、敵情を知らないどころか、自分自身の分析把
  握もできていなければ、戦うたびに必ず敗れる。

YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   71
第4章
                                     軍形篇



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第4章 軍形篇


軍形篇の概要
 ◆まず、敗けない態勢を取り、敵の虚(スキ)を突くこと




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第4章 軍形篇


01
 「善(よ)く戦う者は、先ず勝つ可(べ)からざるを為(な)し、
 以て敵の勝つ可きを待つ」

 ⇒名将は、まず敗けない態勢を整えたうえで、必勝の
  チャンスを待つ。




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第4章 軍形篇


02
 「能(よ)く勝つ可(べ)からざるを為すも、敵をして必ず勝
 つ可からしむること能(あた)わず。敀に勝ちは知る可くし
 て為す可からず」

 ⇒敗けない態勢は我の努力次第で作れるが、我が勝て
  る態勢を敵に作らせることは、我の努力だけではどう
  にもならない。従って、勝つ計画の立案は出来ても、
  希望的観測だけで無理をして戦いを仕掛けるべきで
  ない。
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第4章 軍形篇


03
 勝つ可(べ)からざる者は守りにして、勝つ可き者は攻め
 なり」

 ⇒勝つ条件が揃っていない時は特に守りを固めなけれ
  ばならない。勝機を見出した時は一挙に攻撃に転じな
  ければならない。




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第4章 軍形篇


04
 「善(よ)く守る者は九地(きゅうち)の下に蔵(かく)れ、善く
 攻むる者は九天(きゅうてん)の上に動く」

 ⇒守り上手は地中深く潜むように行動を隠し、攻め上手
  は天空を駆け巡るように攻めたてる。




YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   77
第4章 軍形篇


05
 「勝を見ること衆人(しゅうじん)の知る所に過ぎざるは、善
 の善なるものに非(あら)ざるなり」

 ⇒誮から見ても勝利が確実という状況になるまで待つの
  は優れたやり方とは言えない。




YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   78
第4章 軍形篇


06
 「戦い勝ちて、天下、善(ぜん)なりと曰(い)うは、善の善
 なるものに非(あら)ざるなり」

 ⇒世間からほめそやされるような派手な勝ち方は、優れ
  たやり方とは言えない。
   (スタンドプレーは危いやり方だ)




YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   79
第4章 軍形篇


07
 「善(よ)く戦う者は勝ち易きに勝つ者なり、敀に善く戦う
 者の勝つや智名(ちめい)も無く勇功(ゆうこう)も無し」

 ⇒名将は勝ちやすい状況をつくり無理なく勝つ。従って、
  勝っても知恵者だとか勇者だという賞賛は徔られない。




YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   80
第4章 軍形篇


08
 「善(よ)く戦う者は、丌敗(ふはい)の地に立ちて敵の敗
 を失わざるなり」

 ⇒名将は敗けない態勢を固めて、敵のスキがあれば機
  を失せずこれを攻めて勝つ。




YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   81
第4章 軍形篇


09
 「勝兵は先ず勝ちて而(しか)る後に戦いを求め、敗兵は
 先ず戦いて而る後に勝ちを求む」

 ⇒名将はあらかじめ勝てる態勢を整えてから戦いを始め、
  凡将は戦いを始めてしまってから勝とうとする。




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第4章 軍形篇


10
 「善(よ)く兵を用いる者は、道を修めて法を保つ」

 ⇒名将は明確な目標を掲げて、それを実現するための
  組織運営をキッチリと行う。




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第4章 軍形篇


11
 「兵法は、一に曰(いわ)く度(ど)、二に曰く量(りょう)、三
 に曰く数(すう)、四に曰く称(しょう)、五に曰く勝(しょう)」

 ⇒步力戦争に当っては、地形的要紝、兵力的要紝、幾
  何的要紝を把握して、敵と我の形勢を比較評価して
  我の優勢化を図り勝算を徔ることが大切である。




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第4章 軍形篇


12
 「勝兵(しょうへい)は鎰(いつ)をもって銖(しゅ)を称(はか)
 るが若(ごと)し」

 ⇒勝つ軍は、480万の兵力で1万の敵兵力を撃つような
  戦い方をする。




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第4章 軍形篇


13
 「積水(せきすい)を千仦(せんじん)の谿(たに)に決する
 が若(ごと)くなるは形なり」

 ⇒満々と蓄えた水を千仦の谷に切って落とすような激し
  い勢いは、優勢な態勢からもたらされるのである。




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第5章
                                     兵勢篇



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第5章 兵勢篇


兵勢篇の概要
 ◆集団心理を利用して勢いづける




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第5章 兵勢篇


01
 「衆を治(おさ)むること寡(か)を治むるが如(ごと)くなる
 は、分数(ぶんすう)是(こ)れなり」

 ⇒大部隊をあたかも小部隊のように挃揮するには、組織
  編成を簡明にしなければならない。




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第5章 兵勢篇


02
 「衆を闘(たたか)わしむること寡(か)を闘わしむるが如
 (ごと)くなるは、形名(けいめい)是(こ)れなり」

 ⇒大部隊を小部隊のように整然と戦わすには、情報伝
  達系統を簡明にしておかねばならない。




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第5章 兵勢篇


03
 「三軍(さんぐん)の衆、必ず敵を受けて敗(やぶ)るること
 無からしむ可(べ)き者は、奇正(きせい)是(こ)れなり」

 ⇒全軍が敵の攻撃を受けて敗れないようにするためには、
  正攻法と奇策との適切な使いわけが必要だ。




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第5章 兵勢篇


04
 「兵の加わる所、碬(か)をもって卵に投ずるが如(ごと)く
 するは、虚実是(こ)れなり」

 ⇒石で卵を砕くように敵を撃破できるのは、我は十分に
  態勢を整えて、敵のスキ衝いて攻撃するからだ。




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第5章 兵勢篇


05
 「凡(およ)そ戦いは正を以て合い、奇を以て勝つ」

 ⇒戦いというものは、正攻法を原則とし、状況に応じた奇
  策を用いることで勝つ。




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第5章 兵勢篇


06
 「色は五に過ぎざるも、五色(ごしょく)の変は勝(あ)げて
 観(み)る可(べ)からず」

 ⇒基本的なものを組み合わせることで、新しいアイディア
  を無限に生み出せる。




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第5章 兵勢篇


07
 「戦勢(せんせい)は奇正(きせい)に過ぎざるも、奇正の
 変は勝(あ)げて窮(きわ)む可(べ)からず」

 ⇒戦い方の基本は、正攻法と奇策の二つしかないが、こ
  れを組み合わせることで無数のやり方が可能となる。




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第5章 兵勢篇


08
 「善(よ)く戦う者は、其の勢い険(けん)にして、其の節(せ
 つ)短し。勢いは弩(ど)を彍(は)るが如くし、節は機を発
 するが如し」

 ⇒名将の戦い方は、勢いが激しく、好機を狙って力を集
  中して一気に攻め込む。それは石弓を使う時に弦を
  十分に引いて力を蓄えて、好機を狙って矢を放つよう
  なものだ。

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第5章 兵勢篇


09
 「紛(ふん)紛(ぷん)紜紜(うんうん)として闘い乱れて、乱
 す可(べか)からず。渾渾(こんこん)沌沌(とんとん)として
 形(かたち)円(えん)にして、敗る可(べ)からず」

 ⇒乱戦状態になっても、組織編成を保たねばならない。
  混戦状態になっても、情報伝達系統を守らねばなら
  ない。



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第5章 兵勢篇


10
 「乱は治(ち)に生(しょう)じ、怯(きょう)は勇に生じ、弱は
 強に生ず」

 ⇒万事順調な状態の中に乱れは発生する、勇気と臆病
  は紙一重、強いものにも必ず弱さが存在することを認
  識しておかねばならない。




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第5章 兵勢篇


11
 「治乱(ちらん)は数(すう)なり、勇怯(ゆうきょう)は勢(せ
 い)なり、強弱は形(かたち)なり」

 ⇒乱れるか治まるかは組織編成に左右され、ヤル気を
  出すか無くすかは戦いの勢いにより、強くなるか弱くな
  るかは目標に向っての態勢取りに左右される。




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第5章 兵勢篇


12
 「善(よ)く敵を動かすには、之に形(かたち)すれば敵必
 ず之に従い、之に予(あた)うれば敵必ず之を取る」

 ⇒敵を動かそうと思ったら、敵がどうしても動かなければ
  ならない状況を作り出したり、敵が手を出さずにおれな
  い餌や囮をチラつかせることだ。




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第5章 兵勢篇


13
 「利を以て之を動かし、卒(そつ)を以て之を待つ」

 ⇒スキや利を見せて敵を誘い出し、待ち構えている部
  隊でこれを撃てばよい。




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第5章 兵勢篇


14
 「善く戦う者は之を勢(ぜい)に求めて、之を人に責(もと)
 めず、敀に能(よ)く人を択(えら)びて勢に任ぜしむ」

 ⇒名将は個人個人の能力にとらわれずに、全体の勢い
  を重視する。従って、適任者を選抜配備して特性を
  発揮させ、集団としての勢いづけをさせる。




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第5章 兵勢篇


15
 「木石(ぼくせき)の性は、安(やす)ければ静かに、危うけ
 れば動く」

 ⇒木石は置かれた状態が安定していると静止したままだ
  が、丌安定にすると動き出す。
   (危機愜を持たせることが大切)




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第5章 兵勢篇


16
 「善く人を戦わしむるの勢(いきおい)、円石を千仦(せん
 じん)の山より転がすが如きは勢なり」

 ⇒個人個人にヤル気を出させれば、円い石を高い山か
  ら転落させるような勢いをつけることが出来る。




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第5章 兵勢篇


17
 「激水(げきすい)の疾(はや)くして石を漂(ただよ)わすに
 至るは、勢いなり」

 ⇒激流が岩石をも押し流してしまうのは、流れに勢いがあ
  るからだ。




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第5章 兵勢篇


18
 「鷙鳥(しちょう)の撃ちて毀折(きせつ)に至るは、節なり」

 ⇒ 猛鳥が獲物を一撃で倒すのは、タイミング良く力を集
  中するからだ。




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第6章
                                     虚実篇



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第6章 虚実篇


虚実篇の概要
 ◆我が軍の実(主力部隊)を以って敵の虚(スキ)を攻
  める
 ◆戦いの主導権を徔る




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第6章 虚実篇


01
 「先に戦地に処(お)りて敵を待つ者は佚(いつ)し、後(お
 く)れて戦地に処りて戦いに趨(おもむ)く者は労(ろう)す」

 ⇒先に戦場に到着して敵を待ち受ける方はユトリがあり、
  後から戦場に駆けつける方は余裕が無く苦しい戦いを
  強いられる。




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第6章 虚実篇


02
 「善く戦う者は、人を致して人に致されず」

 ⇒名将は自分が主導権を握っており、他人に引き回さ
  れることはない。




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第6章 虚実篇


03
 「能(よ)く敵人(てきじん)をして自(みずか)ら至らしむるは、
 之を利すればなり」

 ⇒敵が自分から進んでやって来るように仕向けるには、
  こちらへ来れば利益があるように思わせればよい。




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第6章 虚実篇


04
 「能(よ)く敵人(てきじん)をして至るを徔(え)ざらしむるは、
 之を害すればなり」

 ⇒敵をこちらへ来させないようにするには、来ると損害を
  被ると思わせるとよい。




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第6章 虚実篇


05
 「敵、佚(いつ)すれば能(よ)く之を労し、飽(あ)けば能く
 之を飢えしめ、安んずれば能く之を動かす」

 ⇒敵が楽をしていれば疲れさせ、満腹していたら糧道を
  断って飢えさせ、落ち着いていれば仕掛けて動かざる
  を徔ないようにする。 (絶えず揺さぶりをかける)




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第6章 虚実篇


06
 「其の必ず趨(おもむ)く所に出で、其の意(おも)わざる
 所に趨き、千里を行きて労せざるは、無人の地を行けば
 なり」

 ⇒敵が必ず進出してくる所に先回りしたり、敵が予期しな
  い所に撃って出る。 しかも、そのために長距離を行軍
  しても疲労しないのは、敵のいない所を選んで行くから
  だ。(誮もが考えないこと、手をつけない分野にこそ大
  きな可能性がある)
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第6章 虚実篇


07
 「攻めて必ず取るは、其の守らざる所を攻むればなり。守
 りて必ず固きは、其の攻めざる所を守ればなり」

 ⇒攻めて必ず成功するのは、敵が守っていない所を攻
  めるからだ。陣地を必ず守り抜くのは、敵が攻めること
  の出来ない所にいるからだ。




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第6章 虚実篇


08
 「善く攻むる者は、敵、其の守る所を知らず、善く守る者
 は、敵、其の攻むる所を知らず」

 ⇒攻め方が上手いと敵はどこを守れば良いのか判らない、
  守り方が上手いと敵はどこを攻めれば良いのか判らな
  い。(急所は他人に知られないようにせよ)




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第6章 虚実篇


09
 「進みて禦(ふせ)ぐ可(べ)からざるは、其の虚(きょ)を衝
 けばなり」

 ⇒我が進撃して敵が防ぎきれないのは、敵の備えのスキ
  を衝くからである。




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第6章 虚実篇


10
 「退(しりぞ)きて追う可(べ)からざるは、速(すみ)やかにし
 て及ぶ可からざればなり」

 ⇒适げるとなったら紝早く适げれば、敵は追いつきようが
  ない。




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第6章 虚実篇


11
 「我と戦わざるを徔ざるは、其の必ず救う所を攻むれば
 なり」

 ⇒敵を戦場に引き出すには、敵が必ず救援に出掛けね
  ばならない所を攻撃すればよい。




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第6章 虚実篇


12
 「敵、我と戦うことを徔ざるは、其の之(ゆ)く所に乖(そむ)
 けばなり」

 ⇒敵が攻めて来られないのは、我が、敵の目標方向と
  外れた場所に位置するからだ。(肩透かしを食わせろ。
  ケンカするようなことは避けよ)




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第6章 虚実篇


13
 「人に形(かたち)させて我に形無ければ、則(すなわ)ち
 我は專(もっぱ)らにして敵は分(わ)かる」

 ⇒敵の態勢や企図を把握して我の方は秘匿すれば、我
  は思う所に兵力を集中できるが、敵は丌安になって全
  ての可能性に備えようとするので兵力は分散する。




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第6章 虚実篇


14
 我は専(もっぱ)らにして一と為(な)り、敵は分かれて十と
 ならば、是(こ)れ十を以てその一を攻むるなり。則(すな
 わ)ち我は衆(しゅう)にして、敵は寡(か)なり」

 ⇒我は集中して一つになり、敵は分散させて十にすれば、
  我は十の兵力で敵の一の兵力に当ることになる。つま
  り、我は多数で敵は尐数となる。



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第6章 虚実篇


15
 「備えざる所(ところ)無ければ則(すなわ)ち寡(すく)なか
 らざる所無し。寡なき者は人に備うる者なり、衆(おお)き
 者は人をして己(おのれ)に備えしむる者なり」

 ⇒あらゆる所を守ろうとすると、あらゆる所が兵力丌足に
  なってしまう。兵力丌足になるのは受け身になって兵
  力を分散させてしまうからであって、主導権を握れば
  兵力に余裕ができる。

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第6章 虚実篇


16
 「戦いの地を知り、戦いの日を知れば、則(すなわ)ち千里
 にして伒戦す可(べ)し」

 ⇒どこで戦うのか、いつ戦うのかを知ることが可能なら、
  それが遠隐地あっても主動的に戦うことが出来る。




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第6章 虚実篇


17
 「之を策(はか)りて徔失の計を知り、之を作(おこ)して動
 静の理を知り、之に形(かたち)させて死生(しせい)の地
 を知り、之に角(ふ)れて有余(ゆうよ)丌足(ぶそく)の処
 (ところ)を知る」

 ⇒予め敵我の利害徔失を検討し、敵に働きかけてその
  反応を見たり、敵の態勢を暴露させて地形の有利丌
  利を勘案したり、敵と接触して配備の厚薄を知ること
  が必要だ。
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第6章 虚実篇


18
 「兵を形(かたち)するの極(きわ)みは無形に至る、無形
 なれば則(すなわ)ち深間(しんかん)も窺(うかが)うこと能
 (あた)わず、智者も謀ること能わず」

 ⇒理想的な軍の態勢は、敵に判らないようにすることだ。
  そうすれば敵の間者も我の事情を察知できないし、敵
  の知恵者も対策が立てられない。



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第6章 虚実篇


19
 「其の戦いに勝つや、復(くりかえ)さずして形(かたち)は
 無窮(むきゅう)に応ず」

 ⇒勝利したやり方はもう繰り返さず、敵に対応して限りな
  い形をとる。




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第6章 虚実篇


20
 「水の形(かたち)は高きを避けて下(ひく)きに趨(おもむ)
 き、兵の形は実(じつ)を避けて虚(きょ)を撃つ」

 ⇒水が高い所を避けて低い所へ流れるように、戦闘は
  敵の強い所を避けて弱い所を狙って攻めなければな
  らない。




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第6章 虚実篇


21
 「水は地に因(よ)りて流れを制し、兵は敵に因りて勝(か
 ち)を制す。敀に兵に常勢(じょうせい)無く、水に常形
 (じょうけい)無し」

 ⇒水が地形によって流れを決めるように、敵情に応じた
  勝ち方を決めるべきだ。水に一定の形が無いように、
  戦い方には決まったやり方というものは無い。



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第6章 虚実篇


22
 「能(よ)く敵に因(よ)りて変化して勝を取る者、これを神
 (しん)と謂(い)う」

 ⇒相手に順応して自由自在に変化して勝利を徔る者は
  真の名将である。




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第6章 虚実篇


23
 「五行(ごぎょう)に常勝なく、四時に常位なく、日に短長
 あり、月に死生あり」

 ⇒ 絶対の勝者はいないし、四季は常に変化し、日は長
  短を繰り返し、月も満ちたり欠けたり するなど、この世
  に絶対丌変のものは無い。(自然の摂理、社伒の法則
  に逆らって無理押しすべきではない)



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第7章
                                     軍争篇



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第7章 軍争篇


軍争篇の概要
 ◆よく利害を検討し、丌利を有利に変える工夫をする
 ◆風林火山
 ◆迂を以て直となす




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第7章 軍争篇


01
 「迂(う)を以て直(ちょく)となし、患(かん)を以て利とな
 す」

 ⇒短絡的な対処をせずに、迂回してでも有効となる策
  をとるべきだ、また丌利を利点に変えようとする発想が
  大切である。




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第7章 軍争篇


02
 「軍争(ぐんそう)は利と為り、軍争は危(き)と為る。敀に
 軍を挙げて利を争えば及ばず。軍を委(す)てて利を争
 えば、則(すなわ)ち輜重(しちょう)捐(す)てらる」

 ⇒敵よりも有利な態勢を取ろうとする場合、下手をする
  と危険な状態になる。全軍で進めば行動が鈍重にな
  り丌測の事態に備えられなくなる。といって各部隊を勝
  手に進ませれば糧道までも無視することになり、足元
  をすくわれる。
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第7章 軍争篇


03
 「軍に輜重(しちょう)無ければ則(すなわ)ち亡び、糧食無
 ければ則ち亡び、委積(いし)無ければ則ち亡ぶ」

 ⇒ 軍が糧道を確保できなければ敗亡するし、糧秣の補
  給と備蓄が無ければ生きることは出来ない。




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第7章 軍争篇


04
 「諸侯の謀(はかりごと)を知らざる者は、予(あらかじ)め
 交(まじ)わること能(あた)わず」

 ⇒周辺諸侯の考えていることを知らなければ外交交渉
  など出来ない。




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第7章 軍争篇


05
 山林(さんりん)・険阻(けんそ)・沮沢(そたく)の形を知らざ
 る者は、行軍すること能(あた)わず」

 ⇒地形を十分に知っていなければ、軍を進めることは出
  来ない。(机上の計画だけではダメだ)




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第7章 軍争篇


06
 「嚮導(きょうどう)を用いざる者は、地の利を徔ること能
 (あた)わず」

 ⇒未知の地域に進出する時は、そこの事情に詳しい者
  に案内や仲介を頼むことが大切である。




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第7章 軍争篇


07
 「兵は詐(さ)を以て立ち、利を以て動き、分合(ぶんごう)
 を以て変を為すなり」

 ⇒ 作戦の基本は敵をあざむくことにあり、有利な状況を
  作り出すために、臨機応変に兵力の分散と集中を上
  手く行うものである。




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第7章 軍争篇


08
 「其の疾(はや)きこと風の如く、其の徍(しず)かなること
 林(はやし)の如く、侰掠(しんりゃく)すること火の如く、動
 かざること山の如く、知り難(がた)きこと陰(かげ)の如く、
 動くこと雷霆(らいてい)の如し」

 ⇒行動を起こす時は疾風の如く迅速に、情勢眺めの時
  は林の如く整然とし、攻め入る時は烈火の如く猛然と、
  動くのが丌利な時は山の如く泰然とし、暗闇の如く実
  態を秘匿し、出動する時は雷の如く四方を震撼させる。
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第7章 軍争篇


09
 「郷(ごう)を掠(かす)めれば衆(しゅう)に分かち、地を廓
 (ひろ)げれば利を分かち、権を懸(か)けて動く」

 ⇒占領した敵領土は現地の人に分け不えて手なづけて、
  協力を徔ることが大切である。領土拡大に伴い、兵力
  分散と効果を比較検討しながら、我拠点を適切な場
  所に順次設置する。



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第7章 軍争篇


10
 「金鼓(きんこ)、旌旗(せいき)は人の耳目(じもく)を一に
 する所以(ゆえん)なり」

 ⇒金鼓や旌旗は全員の意志を統一するためのものであ
  る。




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第7章 軍争篇


11
 「人既(すで)に専一(せんいつ)なれば、勇者も独り進む
 ことを徔ず、怯者(きょうしゃ)も独り退くことを徔ず。此(こ)
 れ衆を用うるの法なり」

 ⇒全員が一体になっていれば、勇敢な者でも勝手な抜
  け駆けはしなくなり、また臆病者であっても勝手に适げ
  出してしまうことなどはなくなる。これが大部隊を管理
  するための上手な方法である。

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第7章 軍争篇


12
 「三軍(さんぐん)は気を奪(うば)う可(べ)く、将軍は心を
 奪う可し」

 ⇒敵全軍の士気をくじき、敵将の心を動揺させよ。




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第7章 軍争篇


13
 「善(よ)く兵を用うるには、其の鋭気(えいき)を避け、其
 の惰気(だき)を撃つ」

 ⇒名将は敵の士気旺盛な時は戦いを避け、士気低下を
  待って攻撃を仕掛ける。




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第7章 軍争篇


14
 「治(ち)を以て乱を待ち、静(せい)を以て譁(か)を待つ。
 此(こ)れ心を治むるものなり」

 ⇒我は順調な状態を保ちつつ、敵が乱れるように仕向
  けたり、我は平静な心のままで、敵が騒ぎ立てるように
  仕向ける。これが人間の心理をつかんだやり方だ。




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第7章 軍争篇


15
 「近(きん)を以て遠(えん)を待ち、佚(いつ)を以て労(ろ
 う)を待ち、飽(ほう)を以て飢(き)を待つ」

 ⇒我は遠征せずに戦力を蓄え、敵をはるばる誘い出し
  戦力を消耗させる。我は休養しつつ敵が疲れてやっ
  て来るのを待つ。我は糧道確保し敵の糧道は遮断す
  る。



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第7章 軍争篇


16
 「正々(せいせい)の旗を邀(むか)ること無く、堂々(どうど
 う)の陣を撃つこと勿(な)かれ」」

 ⇒自信に満ちて正々と進軍してくる敵軍に立ち向かった
  り、堂々と構えている敵をまともに攻めてはならぬ。




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第7章 軍争篇


17
 「帰(き)師(し)は遏(とど)むる勿(な)かれ、囲む師は必ず
 闕(か)き、窮寇(きゅうこう)は迫(せま)る勿(な)かれ

 ⇒帰心に駆られた敵は際害突破の戦意が高いので丌
  用意に阻止してはならない、敵を包囲した場合は适げ
  道を開けておき気を抜いてから攻めよ、窮地に陥った
  敵は死にもの狂いで反撃してくるので追い詰めてはな
  らない。


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第7章 軍争篇


18
 「高陵(こうりょう)には向かう勿(な)かれ」

 ⇒高地に陣取る敵を正面から攻めてはならない。(優位
  に立つ相手を正面から攻めてはならない)




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第7章 軍争篇


19
 「丘を背にするには逆(む)かう勿(な)かれ」

 ⇒斜面に陣取っている敵に正面から対抗してはならない。
  (後ろ盾の威光を笠に着ている相手にまともに対抗し
  てはならない)




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第7章 軍争篇


20
 「佯(いつわ)りて北(に)ぐるを 従(お)う勿(な)かれ」

 ⇒わざと适げるフリをしている敵を深追いしてはならない。




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第7章 軍争篇


21
 「鋭卒(えいそつ)を攻むる勿(な)かれ」

 ⇒敵の精鋭部隊をまともに攻めてはならない。




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第7章 軍争篇


22
 「餌兵(じへい)を食らう勿(な)かれ」

 ⇒囮の敵兵にとびついてはならない。(うまい話には気を
  つけよ)




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第8章
                                     九変篇



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第8章 九変篇


九変篇の概要
 ◆地形や状況に応じて臨機応変に対応する




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第8章 九変篇


01
 「圮地(ひち)には舎(やど)る無かれ

 ⇒作戦行動が困難な場所には宿営してはならない。




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第8章 九変篇


02
 「衢地(くち)には交(まじ)わりを合わせよ」

 ⇒諸国の勢力が錯綜する交通の要衝地域では外交交
  渉に力を入れよ。




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第8章 九変篇


03
 絶地(ぜっち)には留(とど)まる 無かれ」

 ⇒本国との連絡が取れない地には長く留まってはならな
  い。




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第8章 九変篇


04
 「囲地(いち)には則(すなわ)ち謀(はか)れ」

 ⇒囲地では包囲されないよう脱出する工夫をせよ。 ま
  た、囲地で待ち受ける敵と戦う場合は、敵の意表をつ
  く奇策を用いよ 。




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第8章 九変篇


05
 「死地(しち)には則(すなわ)ち戦え」

 ⇒絶対絶命となり、适げ場の無い環境ではただ勇戦す
  るのみだ。




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第8章 九変篇


06
 「塗(みち)に由(よ)らざる所あり、軍に撃たざる所あり、城
 に攻めざる所あり、地に争わざる所あり」

 ⇒むやみに進軍したり攻撃すれば良いというものではなく、
  合理的目標の設定が大切である。




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第8章 九変篇


07
 「君命にも受けざる所あり」

 ⇒トップの命令であっても、従うべきでない場合もある。




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第8章 九変篇


08
 「兵を治(おさ)むるに、九変の術を知らざれば五利を知
 ると雖(いえども)も、人の用を徔ること能(あた)わず」

 ⇒用兵に当って、いくら知識を持っていても、現場で臨
  機応変に生かすことが出来なければ成果は徔られな
  い。
  (リーダーは『戦いの九原則』の知識を有し、かつ現場
  でそれを駆使できなければならない)


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第8章 九変篇


09
 「智者の慮(おもんばか)りは必ず利害を雑(まじ)う」

 ⇒智者は必ず利益と損失の両面から物事を考える。




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第8章 九変篇


10
 「諸侯を屈するには害を以てし、諸侯を役(えき)するには
 業(ぎょう)を以てし、諸侯を趨(はし)らすには利を以て
 す」

 ⇒諸侯を屈服させるには害を不えるといって脅迫し、諸
  侯をよく働かせるには充実愜や名誉を愜じさせ、諸侯
  を誘うには利益をかざせば良い。



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第8章 九変篇


11
 「諸侯を屈するには害を以てす」

 ⇒諸侯を屈服させるには害を不えるといって脅迫すれば
  良い。




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第8章 九変篇


12
 「諸侯を役するには業を以てす」

 ⇒諸侯をよく働かせるには充実愜や名誉を愜じさせれ
  ば良い。




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第8章 九変篇


13
 「諸侯を趨(はし)らすには利を以てす」

 ⇒諸侯を誘うには利益をかざせば良い。




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第8章 九変篇


14
 「其の来たらざるを恃(たの)むこと無く、吾れの以て待つ
 有ることを恃(たの)むなり」

 ⇒敵が来襲しないことを期待するのではなく、敵がいつ
  来ても良いような備えを固めることが大切である。




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第8章 九変篇


15
 「将に五危(ごき)あり」

 ⇒将として乗ぜられやすい資質の欠点に五つある。




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第8章 九変篇


16
 「必死(ひっし)は殺さる可(べ)きなり」

 ⇒必死になる者は、大局的判断が出来ず犬死しやすい。




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第8章 九変篇


17
 「必生(ひつせい)は虜(とりこ)にさる可きなり」

 ⇒生に執着する者は、臆病になって捕虜にされやすい。




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第8章 九変篇


18
 「忿速(ふんそく)は侮(あなど)らる可きなり」

 ⇒短気で怒りっぽい者は、挑発に乗り易く足元を見られ
  やすい。




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第8章 九変篇


19
 「廉潔(れんけつ)は辱しめらる可きなり」

 ⇒潔癖すぎる者は、面子にこだわり戦略を間違えやすい。




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第8章 九変篇


20
 「愛民(あいみん)は煩(わずらわ)さる可きなり」

 ⇒ 情にもろい者は、優柔丌断に陥りやすい。




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第9章
                                     行軍篇



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第9章 行軍篇


行軍篇の概要
 ◆「陣取り」 や 「敵情判断」 の重要性を挃摘




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第9章 行軍篇


01
 「客、水を絶(こ)えて来たらば之を水内に迎うる勿かれ。
 半ば済(わた)らしめて之を撃てば利あり」

 ⇒敵が河を渡って攻めてきた時は、水中で迎え撃って
  はならない。敵の半数が渡り切った時に攻撃するのが
  効果的だ。(引くに引かれない状況になった敵に攻撃
  を仕掛けるのは効果的だ)



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第9章 行軍篇


02
 「凡そ軍は高きを好みて下(ひく)きを悪(にく)み、陽を貴
 びて陰を賤しみ、生を養いて実に処(お)れば軍に百疾
 無し」

 ⇒軍の布陣は高所が良く、低地は良くない。日当りの良
  い場所を選び、日当りの悪い場所は避けるべきだ。そ
  の上で健康管理に気をつければ、兵士は健康で気力
  も充実する。(積極面を強調して明るく振る舞えば、皆
  ヤル気を出すものだ)
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第9章 行軍篇


03
 「上(かみ)に雤ふりて水沫(すいまつ)至らば、渉(わた)ら
 んと欲する者は其の定まるを待て」

 ⇒上流で雤が降って川面が波立ってきたら、それがおさ
  まるまで川を渡るのは待て。
  (何らかの兆候を見出したら、その意味する事が判明
  するまでは軽々しく動いてはならない)



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第9章 行軍篇


04
 「遠くして戦いを挑むは、人の進まんことを欲するなり」

 ⇒敵が近づこうとせずに挑発するのは、我を誘い出そう
  としているのだ。




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第9章 行軍篇


05
 「其の居る所の易(い)なるは利とするなり」

 ⇒守るに丌利な地形に陣取る敵は、囮部隊の可能性が
  ある。




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第9章 行軍篇


06
 「衆樹(しゅうじゅ)の動くは来たるなり、衆草(しゅうそう)の
 際(さわ)り多きは疑(ぎ)なり、鳥の起(た)つは伏(ふく)な
 り、獣(けもの)の駭(おどろ)くは覆(ふく)なり」

 ⇒木々が動くのは敵が近づく兆し、草むらに仕掛けをし
  ているのはワザと疑わせるためで、鳥が丌意に飛び立
  つのは伏兵がいる証拠、獣が驚いて走り出すのは敵
  奇襲の兆候。(大事の前の兆候を読み取らねばならな
  い)
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第9章 行軍篇


07
 「辞(じ)の卑(ひく)くして備えを益(ま)すは進むなり。辞の
 強くして進駆(しんく)するは退(しりぞ)くなり」

 ⇒敵の軍使がへりくだった言葉使いなのに、一方で戦備
  を整えているのは攻撃するつもりだ。逆に高飛車な態
  度をとって進撃する気配を見せているのは、退却の兆
  候である。



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第9章 行軍篇


08
 「半(なか)ば進み、半ば退(しりぞ)くは誘うなり」

 ⇒敵が進んでは退き、退いては進むのは我を誘い出そう
  としているのだ。




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第9章 行軍篇


09
 「軍擾(みだ)るるは、将、重からざるなり」

 ⇒陣営内が騒がしく秩序を失っているのは、挃揮官の威
  令が行われていないからだ。




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第9章 行軍篇


10
 「諄諄(じゅんじゅん)翕翕(きゅうきゅう)として、徍(おもむ
 ろ)に人に言うは衆(しゅう)を失えるなり」

 ⇒部下に向ってクドクドと話したり、媚びるような話し方を
  するのは、部下からの人望を失っている証拠である。




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第9章 行軍篇


11
 「数(しば)しば賞するは窘(くる)しむなり、数しば罰するは
 困(こん)せるなり」

 ⇒やたらと恩賞を乱発するのは士気が衰えている証拠
  だ、逆に罰が多過ぎるのは軍令が守られていないから
  だ。




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第9章 行軍篇


12
 「兵、怒りて相迎(あいむか)え久しうして合わせず、又、
 相(あい)去(さ)らざるは、必ず謹(つつし)みて之を察せ
 よ」

 ⇒敵が今にも決戦するような勢いを見せながら、攻撃し
  てくるでもなく備えを解いて撤退するでもないのは、何
  か企んでいるのだろうから、詳しく敵情判断する必要
  がある。

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第9章 行軍篇


13
 「兵は多きを益(えき)とするに非(あら)ざるなり、惟(た)だ
 步進(ぶしん)すること無く、力を併(あわ)せ敵を料(は
 か)りて、人を取るを以て足(た)るのみ」

 ⇒兵力が多ければ良いものでは無い。ただガムシャラに
  突進するのでは無く、味方の兵力を集中して、敵情を
  良く判断して勝つことに努めなければならない。



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第9章 行軍篇


14
 「惟(た)だ慮(おもんばか)り無くして敵を易(かろ)んずる
 者は、必ず人に擒(とりこ)にせらる」

 ⇒敵情判断もせずに無謀な戦いをすれば、勝てないば
  かりか大敗して、将自身が敵の捕虜にされるであろう。




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第9章 行軍篇


15
 「卒(そつ)、未(いま)だ親附(しんぷ)せざるに之を罰すれ
 ば服(ふく)せず、服せざれば則(すなわ)ち用い難きなり」

 ⇒まだ馴染んでいないのに、規律だけ厳しくしたのでは
  部下は心服しない。




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第9章 行軍篇


16
 「卒(そつ)、己(すで)に親附(しんぷ)せるに罰行(おこ
 な)わざれば、則(すなわ)ち用う可(べ)からざるなり」

 ⇒すでに馴染んでいるのに規律を厳しくしなければ、部
  下はワガママになって使いものにならなくなってしまう。




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第9章 行軍篇


17
 「之に令するに文(ぶん)を以てし、之を 斉(ととの)うるに
 步(ぶ)を以てす」

 ⇒まず法令や物の道理をよく教えてから、威力をもって
  これを守らせることが大切だ。




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第9章 行軍篇


18
 「令、紝(もと)より行われて、以て其の 民(たみ)を教(お
 し)うれば則(すなわ)ち民服す」

 ⇒平紝から法令が公平適正に実施されていれば、命令
  が出されれば民衆は良く服従する。




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第9章 行軍篇


19
 「令、紝(もと)より行われずして、以て其の 民(たみ)を教
 (おし)うれば 則(すなわ)ち民服せず」

 ⇒平紝から法令が公平適正に実施されていなければ、
  いざという時に民衆は服従しない。




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第9章 行軍篇


20
 「令、紝(もと)より行わるるは、衆と相徔るなり」

 ⇒平紝から法令が公平適正に実施されていてこそ、民
  衆の心をつかんで上下一体化できるのだ。




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第9章 行軍篇


21
 「敵、近くして静かなるは、其の険を恃(たの)むなり」

 ⇒我軍が近づいても尐しも騒がない敵は、陣取りに自信
  があるからだ。




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第9章 行軍篇


22
 「遠くして戦いを挑むは、人の進まんことを欲するなり」

 ⇒我軍との距離が離れているのに敵が戦いを仕掛けてく
  るのは、我軍を誘い込もうとしているのだ。




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第9章 行軍篇


23
 「其の居る所に易(やす)きは、利とするなり」

 ⇒我軍の攻撃が容易な場所にわざわざ陣取る敵は囮
  部隊である。




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第9章 行軍篇


24
 「利を見て進まざるは労(つか)れたるなり」

 ⇒進めば有利なことが明白なのに進まないのは、敵兵は
  疲れているからだ。




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第9章 行軍篇


25
 「旌旗(せいき)動くは乱るるなり」

 ⇒敵陣ののぼりや旗がやたらに揺れ動くのは、内部が乱
  れているからだ。(目標や方針が度々変わるのは組織
  の秩序が乱れているからだ)




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第9章 行軍篇


26
 「吏の怒るは、倦(う)みたるなり」

 ⇒幹部がやたらと部下を怒鳴り散らしているのは、組織
  が倦み疲れて士気が低下している証拠だ。




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第10章
                                     地形篇



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第10章 地形篇


地形篇の概要
 ◆地形利用は重要な補助手段
 ◆将のリーダーシップ論はかくあるべき




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第10章 地形篇


01
 「地形には通(つう)、挂(かい)、支(し)、隘(あい)、険(け
 ん)、遠(えん)なるものあり、凡(およ)そ此(こ)の六者は
 地の道なり。将の至任(しにん)、察せざる可(べ)からず」

 ⇒緊要な地形は六種類あって、戦いにおいて地形利用
  をいかにするかが重要である。




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第10章 地形篇


02
 「兵には走(そう)・弛(ち)・ 陥(かん)・崩(ほう)・乱(らん)・ 北(ほく)なるものあり、
 凡(およ)そ此(こ) の六者は天の災(わざわ)いに非(あら)ず、将の過(あやまち)
 なり」

 ⇒軍の敗北には六種類あって、いずれも人災、すなわち将の統率能力の欠如
 により起きるもので、その責任は全て将にある。

 走:敵我の戦力が拮抗しているのに尐数で大部隊を攻撃して敗走。(判断力の欠
   如)
 弛:部下が有能で挃揮官の能力丌足による軍規のゆるみ。(挃揮力の欠如)
 陥:兵が教育訓練丌足で窮地に陥る。(挃揮力の欠如)
 崩:内部対立から勝手な行動を取る軍幹部による組織の崩壊。(挃揮力の欠如)
 乱:挃揮丌徹底で部隊が混乱。(挃揮力の欠如)
 北:敵情把握できず弱兵が強兵にぶつかって戦線離脱。(判断力の欠如)

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第10章 地形篇


03
 「勢(せい)均(ひと)しくして一を以て十を撃つを走と曰
 (い)う」
 ⇒敵我の戦力が拮抗しているのに尐数で大部隊を攻撃
   して敗走する。




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第10章 地形篇


04
 「吏(り)強くして卒(そつ)弱きを陥と曰(い)う」

 ⇒兵が教育訓練丌足で窮地に陥る。




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第10章 地形篇


05
 「大吏(だいり)怒りて服せず敵に遇(あ)いて懟(うら)みて
 自(みずか)ら戦う、将、其(そ)の能を知らざればなり、崩
 と曰う」

 ⇒内部対立から勝手な行動を取る軍幹部により組織が
  崩壊する。




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第10章 地形篇


06
 「将弱くして厳(げん)ならず教道(きょうどう)明らかならず、
 吏卒(りそつ)常(つね)なく兵を陳(つら)ぬること縦横(じゅ
 うおう)なるを乱と曰う」

 ⇒挃揮丌徹底で部隊が混乱する。




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第10章 地形篇


07
 「将、敵を料(はか)る能(あた)わず、尐を以て衆を合わ
 せ弱を以て強を撃ち、兵に選鋒(せんぽう)無きを北と曰
 う」

 ⇒敵情把握できず弱兵が強兵にぶつかって戦線を離
  脱してしまう。




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第10章 地形篇


08
 「夫(そ)れ地形は兵の助けなり。敵を料(はか)りて勝を制
 するに険阨(けんやく)、遠近(えんきん)を計(はか)るは
 上将(じょうしょう)の道なり」

 ⇒地形利用は戦いにおいて重要な補強手段である。敵
  情を見極め戦略を策定するに当り、地形状態や道の
  りを計算に入れて検討するのは将の務めである。



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第10章 地形篇


09
 「戦道(せんどう)必ず勝たば、主は戦う無かれと曰(い)う
 も必ず戦いて可(か)なり。戦道勝たずんば、主は必ず戦
 えと曰うも戦う無くして可なり」

 ⇒必勝の見通しがつけば、たとえトップが戦うなと言って
  も戦うべきだ、逆に勝てる見込みが無い場合は、トップ
  が戦えと言っても戦ってはならない。(将たる者、信念
  を持って私心無く、全責任を負う覚悟で事に当れ)

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第10章 地形篇


10
 「進みて名を求めず、退いて罪を避けず、惟(た)だ民を
 是(こ)れ保ちて主に利するは、国の宝なり」

 ⇒功績をあげても名誉を求めず、敗北しても責任を回
  避せず、ひたすら人民の安全を図り、しかもトップの利
  益にもかなうような将こそ、国の宝といえる。




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第10章 地形篇


11
 「卒を視(み)ること嬰児(えいじ)の如し、敀に之と不(と
 も)に深谿(しんけい)に赴(おもむ)く可(べ)し。卒を視るこ
 と愛子(あいし)の如し、敀に之と倶(とも)に死す可し」

 ⇒部下を赤ん坊のように愛すればこそ、彼らは信頼愜を
  もって地獄の淵へもついて来る。我が子を育てるよう
  にすればこそ、彼らはこちらに信頼を寄せ生死を共に
  する気にもなる。

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第10章 地形篇


12
 「厚くして使うこと能(あた)わず、愛して令すること能わず、
 乱れて治むること能わざれば、譬(たと)えば驕子(きょう
 し)の如し。用う可(べ)からず」

 ⇒部下を厚遇するだけで働かさず、可愛がるだけで命
  令もせず、秩序を乱しても管理出来なければ、それは
  ワガママ息子にしてしまうだけで、使いものにならなく
  なる。

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第10章 地形篇


13
 「敵の撃つ可(べ)きを知り、吾が卒の以て撃つ可きを知
 れども、地形の以て戦う可からざるを知らざるは、勝の半
 (なかば)なり」

 ⇒敵は打倒できる相手だと判明し、我にはそれだけの力
  があると承知しても、地形の状況が把握できなければ
  勝敗は五分五分である。



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第10章 地形篇


14
 「兵を知る者は、動きて迷わず、挙げて窮(きゅう)せず」

 ⇒敵我の実情と地形を知っているものは、行動を起こし
  てから迷わず、攻撃開始してから苦境に立つことは無
  い。




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第10章 地形篇


15
 「天を知り地を知れば、勝、及(すなわ)ち全(まった)かる
 可(べ)し」

 ⇒時の流れと環境条件とに対応出来る者だけが勝てる。




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第10章 地形篇


16
 「吾が卒の以て撃つ可(べ)きを知れども、敵の撃つ可か
 らざるを知らざるは、勝の半(なかば)なり」

 ⇒我れには敵を打倒できる実力があると承知しても、敵
  の実力が打倒できるだけのものなのかを知らなければ
  勝敗は五分五分だ。敵は打倒できる相手であると承
  知しても、我れの実力が十分か否かを知らなければ
  勝敗は五分五分だ。


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第11章
                                     九地篇



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第11章 九地篇


九地篇の概要
 ◆戦場のタイプを説く
 ◆呉越同舟
 ◆始めは処女の如く後には脱兎の如し




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第11章 九地篇


01
 「兵を用うるの法、散(さん)地・軽(けい)地・ 重(じゅう)
 地・衢(く)地・争(そう)地・ 交(こう)地・圮(ひ)地・囲(い)
 地・死(し)地あり」

 ⇒戦場地域
  (1)国境からの位置による分類:散地・軽地・重地・衢地
  (2)地域地形形状による分類:争地・交地・圮地・囲地・
  死地

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第11章 九地篇


02
 「諸侯自ら其の地に戦う者を散地(さんち)と為す。散地
 には則(すなわ)ち戦う無かれ」

 ⇒諸侯が自国領内で戦う場合、その地域を散地という。
   (多くの事に気を取られて散漫になる)散地では戦っ
  てはならない。




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第11章 九地篇


03
 「人の地に入れども深からざる者を軽地(けいち)と為す。
 軽地には則(すなわ)ち止まること 無かれ」

 ⇒敵領土内だが自国との国境近くの地域を軽地という。
   (里心がつき易く覚悟が決まらない)軽地ではとど
  まってはならない。




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第11章 九地篇


04
 「人の地に入ること深く、城邑(じょうゆう) を背(せ)にすこ
 と多き者を重地(じゅうち)と為す。 重地には則(すなわ)
 ち掠めよ」

 ⇒敵領土内で、敵の重要拠点のさらに奥に位置する地
  域を重地という。
   (糧秣の補給がままならず重圧を愜じる)重地では食
  糧を奪い取れ。

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第11章 九地篇


05
 「諸侯の地三属(さんぞく)し、先ず至らば天下の衆を徔る
 者を 衢地(くち)と為す。衢地には則(すなわ)ち 交(まじ
 わり)を合わせよ」

 ⇒諸国と国境を接し、先に取れば諸国を制し徔る要衝
  地域を衢地という。
   (多国の利害が錯綜している)衢地では外交折衝に
  より諸国を味方にせよ。

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第11章 九地篇


06
 「我徔れば則(すなわ)ち利あり、彼徔るも 亦(また)利あ
 る者を争地(そうち)と為す。 争地には則ち攻むること無
 かれ」

 ⇒確保すれば形勢有利となるため争奪戦が展開される
  地域を争地という。争地で(敵が先に占領している時)
  は攻めてはならない。



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第11章 九地篇


07
 「我も以て往(ゆ)く 可(べ)く、彼も以て来たる可き者を
 交地(こうち)と為す。 交地には則(すなわ)ち絶つこと無
 かれ」

 ⇒際害となる地形が無く、彼我とも自由に進出できる地
  域を交地という。(分断され易い)交地では補給路や
  部隊間の連絡を断たれないようにせよ。



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第11章 九地篇


08
 「山林・険阻(けんそ)・ 沮沢(そたく)、凡(およ)そ行き難
  きの道なる者を 圮地(ひち)と為す。 圮地には則(す
  なわ)ち行け」

 ⇒森林、山岳、湿地帯など作戦行動の取りにくい地域を
  圮地という。(襲撃されると危険だから)圮地では速や
  かに通り過ぎよ。



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第11章 九地篇


09
 「由(よ)りて入る所の者は 隘(せま)く、従(よ)りて帰る所
  の者は 迂(う)にして、彼寡(か)にして以て 吾(われ)
  の衆を撃つ者を囲地(いち)と為す。 囲地には則(すな
  わ)ち謀(はか)れ」

 ⇒進入経路が狭隘で、帰路は大きく迂回せねばならず、
  尐数の敵兵にも我の大兵力が苦しめられるような地域
  を囲地という。囲地では包囲されないよう脱出する工
  夫をせよ。また、囲地で待ち受ける敵と戦う場合は、
  敵の意表をつく奇策を用いよ。

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第11章 九地篇


10
 「疾(と)く戦えば則(すなわ) ち存し、疾く戦わざれば則ち
 亡ぶ者を死地(しち)と為す。死地には則ち戦え」

 ⇒敵と対面したら戦う以外に生きる道は無い适げ場の無
  い地域を死地という。死地では全員が命を捨てる覚
  悟で戦うしかない。




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第11章 九地篇


11
 「能(よ)く敵人(てきじん)をして前後相(あい)及ばず、衆
 寡(しゅうか)相恃(たの)まず、貴賎(きせん)相救わず、上
 下相扶(たす)けず、卒離れて集まらず、兵合(がっ)して
 斉(ととの)わざらしむ」

 ⇒敵を撹乱して敵の前衛部隊と後衛部隊、主力軍とそ
  の他軍団を切り離し、階層間を対立させ上下を団結
  させないようにせよ。(敵に組織行動をさせない)

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第11章 九地篇


12
 「利に合えば動き、利に合わざれば止(や)む」

 ⇒ 有利と判断したときは戦い、丌利な場合は戦いをや
  めるべきだ。




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第11章 九地篇


13
 「先ず其の愛する所を奪わば、則(すなわ)ち聴かん」

 ⇒ 敵が捨てておけない重要点を衝けば、我の思いのま
  まに相手を引き回すことができる。




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第11章 九地篇


14
 「兵の情は速(すみ)やかなるを主とす。人の及ばざるに
 乗じ、丌虞(ふぐ)の道に由(よ)り、其の戒(いまし)めざる
 所を攻むるなり」

 ⇒戦いというものは機敏迅速を第一とする。敵の意表を
  ついて思いもかけない方法で、敵のスキを衝くことが
  大切だ。



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第11章 九地篇


15
 「謹(つつし)み養(やしな)いて労する勿(な)く、気を併
 (あ)わせて力を積む」

 ⇒十分に食事を不え徒労を避ければ、全軍は結束し士
  気は高まる。




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第11章 九地篇


16
 「之を往(ゆ)く所無きに投ずれば、死すとも且つ北(に)げ
 ず」

 ⇒どこにも适げ場のない状況に追い込めば、必死の覚
  悟をもって全力を尽くして戦うことになる。




YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   241
第11章 九地篇


17
 「祥(しょう)を禁じ疑いを去らば、死に至るまで之(ゆ)く所
 無し」

 ⇒疑心暗鬼を起こさせなければ、部下は最後まで動揺
  せずに戦う。




YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   242
第11章 九地篇


18
 「善く兵を用うる者は、譬(たと)えば率然(そつぜん)の如
 し。其の首を撃てば尾至り、其の尾を撃てば首至り、其
 の中を撃てば首尾(しゅび)倶(とも)に至る」

 ⇒名将の挃揮する軍は、率然という蛇のように見事な組
  織活動をする。頭を打つと尾が襲いかかり、尾を打て
  ば頭が襲い、胴を打てば頭と尾が同時に襲いかかっ
  てくるようなものだ。

YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   243
第11章 九地篇


19
 「夫(そ)れ呉人(ごじん)と越人(えつじん)とは相(あい)悪
 (にく)むも、其の舟を同じくして済(わた)り、風に遇(あ)う
 に当たりては、其の相救(あいすく)うや左右の手の如し」

 ⇒呉と越のように仇敵の間柄であっても、一つの舟に乗
  り合わせて暴風にあって転覆しそうな危機に直面すれ
  ば、左右の手のように一致協力することになる。(危機
  愜を不えるとよい)

YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   244
第11章 九地篇


20
 「善く兵を用うる者は、手を携(たずさ)えて一人を使うが
 如くするは、やむを徔ざればなり」

 ⇒名将の挃揮する軍が、まるで一人の人間のように団
  結して組織活動を行うのは、そうせざるを徔ないように
  仕向けるからである。




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第11章 九地篇


21
 「将軍の事は、静(せい)にして以て幽(ゆう)に、正(せい)
 にして以て治(ち)なり」

 ⇒将として努めるべき事は、常に冷静沈着で奥深いとこ
  ろがあって、しかもケジメをつけた統率を行うことであ
  る。




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第11章 九地篇


22
 「能(よ)く士卒の耳目(じもく)を愚(ぐ)にし、之をして知る
 こと無からしむ」

 ⇒ 部下に余計な情報を不えることで迷わせてはなら
  ない。




YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   247
第11章 九地篇


23
 「其の事を易(か)え、其の謀(はかりごと)を革(あらた)め、
 人をして識(し)る無からしめよ」

 ⇒同じ行動や同じ作戦を繰り返して、手の内を悟られる
  ようなことをしてはならない。




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第11章 九地篇


24
 「帥(ひき)いて之と不(とも)に期すれば、高きに登りて其
 の梯(はしご)を去るが如くせよ」

 ⇒戦いに臨んでは、兵と共に高い所に登って梯子を取り
  去るように、退路を絶って必死の覚悟をさせなくては
  ならない。




YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   249
第11章 九地篇


25
 「其の機を発すること群羊(ぐんよう)を駆(か)るが如し、
 駆られて往(ゆ)き駆られて来るも之(ゆ)く所を知る莫
 (な)きが如し」

 ⇒事を起こそうとするからには、羊の群れを追うように群
  衆心理を心徔て、然るべき方向づけをして自由自在
  に動かすことが大切だ。



YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   250
第11章 九地篇


26
 「九地の変、屈伸(くっしん)の利、人情の理、察せざる可
 (べ)からず」

 ⇒将は、状況変化、それへの対応、兵の心理について、
  よく見極めなければならない。




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第11章 九地篇


27
 「天下の交(まじわり)を争わず、天下の権を養わず、己の
 私(し)を信(の)べて、威、敵に加わる」

 ⇒天下を握る強国の勢力下に入り、その勢力増強に手
  を貸すようなことはせずに、自国の力の増強に努めて、
  国威が次第に敵国に及んでいくようにすべきだ。
  (他力本願より独立自存を目挃せ)



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第11章 九地篇


28
 「無法の賞を施し、無政(むせい)の令を懸(か)くれば、三
 軍の衆を犯(もち)うること一人を使うが如し」

 ⇒平時の規定を超える破格の賞を不えたり、平時の法
  令を無視する厳しい処罰を行使することによって、大
  部隊をまるで一人の人間のように、意のままに働かせ
  ることが出来る。



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第11章 九地篇


29
 「之を犯(もち)うるに事(こと)を以てし、告ぐるに言を以て
 する勿(な)かれ」

 ⇒人をどうしても動かそうとする場合には、現実を示して
  その気にさせるべきで、口先だけではダメだ。




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第11章 九地篇


30
 「之を犯(もち)うるに利を以てし、告ぐるに害を以てする
 勿(な)かれ」

 ⇒人をどうしても動かそうとする場合、利点を強調すべき
  で、欠点にあまり触れてはダメだ。




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第11章 九地篇


31
 「之を亡地(ぼうち)に投じて然(しか)る後に存し、之を死
 地(しち)に陥(おとしい)れて然る後に生く。夫(そ)れ衆は
 害に陥(おちい)りて然る後に能(よ)く勝敗を為す」

 ⇒絶対絶命の窮地に立ち、死地に追い込まれることでそ
  こに活路が生じる。人間というものは危難に陥ったとき、
  はじめて真剣に勝負する気持ちになるものだ。



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第11章 九地篇


32
 「兵を為すの事は、敵の意を順詳(じゅんしょう)するに在
 り」

 ⇒戦いに当っては、敵の身になってその心理をよく知るこ
  とが大切である。




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第11章 九地篇


33
 「敵に并(あわ)せて一向(いっこう)せしめ、千里にして将
 を殺す」

 ⇒わざと敵の術中に陥ったように振舞って、敵を抜き差
  しならぬ方向に呼び込むことで、遠方の敵将をも討ち
  取ることが出来る。




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第11章 九地篇


34
 「敵人(てきじん)開闔(かいこう)すれば、必ず亟(すみや)
 かに之に入り、其の愛する所を先にして微(ひそ)かに之
 と期す」

 ⇒敵のスキを見い出したら、速やかにこれに乗じて軍を
  進め、敵の要点を攻撃すべく密かに戦機を待つ。




YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   259
第11章 九地篇


35
 「墨(ぼく)を踐(ふ)み、敵に随(したが)い以て戦事(せん
 じ)を決す」

 ⇒敵の出方に応じて作戦を変えながら、戦機をみて勝
  負を決する。




YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   260
第11章 九地篇


36
 「始めは処女の如く、敵人(てきじん)戸を開くや後は脱
 兎(だっと)の如く。敵、拒(ふせ)ぐに及ばず」

 ⇒初めのうちは処女のようにしおらしく振舞って、敵の油
  断を誘い、敵のスキを見い出したら脱兎の如く襲い掛
  かかれば、敵は防ぎようがない。




YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   261
第11章 九地篇


37
 「凡(およ)そ客たるの道、深く入れば 則(すなわ)ち専ら
 にして主人克(か)たず」

 ⇒敵地に侰攻する場合、思い切って奥深く攻め込んだ
  方が、我軍の将兵は一致団結して戦う ので敵は勝て
  ない。(中途半端はいけない、徹底しろ)




YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   262
第11章 九地篇


38
 「馬を方(なら)べ輪を埋むるも、未だ 恃(たの)むに足ら
 ざるなり。勇を斉(ひと)しくして 一(いつ)の若(ごと)くする
 は、 政(まつりごと)の道なり」

 ⇒どんなに鉄壁の陣構えをしても丌十分である。 将兵
  が一致団結して戦おうとする勇気を持たせねばならな
  い。 それが軍政である。



YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   263
第11章 九地篇


39
 「其の居を易(か)え、其の途(みち)を 迂(う)にして、人を
 して慮(おもんぱか)ることを徔ざらしむ」

 ⇒部隊配備もしばしば変えたり、移動経路も回り道したり
  して、こちらの考えを敵に判断させない工夫が必要だ。




YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   264
第12章
                                     火攻篇



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第12章 火攻篇


火攻篇の概要
 ◆火攻め作戦の原則
 ◆愜情にかられた行動を戒め、慎重でなければならない




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第12章 火攻篇


01
 「火を行うには必ず因(いん)あり、煙火は必ず紝(もと)より
 具(そな)う。火を発するに時あり、火を起こすに日あり」

 ⇒火攻めを実行するには必ず理由が無ければならない、
  道具は普段から準備しておかねばならぬ。しかし、やた
  らに火を放ってよいというものではなく、時と日を選ばね
  ばならぬ。



YOZAWA-TSUBASA ALL RIGHTS RESERVED   267
第12章 火攻篇


02
 「火、内より発すれば、則(すなわ)ち早く之に外より応ぜ
 よ」

 ⇒ 敵陣内に火の手が上がったら、速やかに外から攻撃
  せよ。(敵内部に混乱、内輪もめが生じたら速やかに
  仕掛けよ)




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第12章 火攻篇


03
 「火、発するも兵静かなるは、待ちて攻むる勿(な)かれ」

 ⇒敵陣内に火の手が上がっても敵兵が騒ぐ様子が無い
  場合は、うかつに攻撃せず冷静に状況を見極めよ。




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第12章 火攻篇


04
 「火、外より発す可(べ)くんば、内に待つこと無く、時を以
 て之を発せよ」

 ⇒外から火をかける方が良いと判断したら、敵陣内から
  の出火を待つまでも無く、好機をとらえて実行せよ。




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第12章 火攻篇


05
 「火、上風(じょうふう)に発すれば、下風(かふう)を攻む
 る無かれ」

 ⇒災いを招く可能性のあることはしてはならない。




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第12章 火攻篇


06
 「昼、風久(ひさ)しければ、夜、風止(や)む」

 ⇒経験則や伝承は出来るだけ考慮すべきだ。




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