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制作:NPO法人キャンサーネットジャパン 制作協力:日本イーライリリー株式会社
肺がんと診断された方へ肺がんと診断された方へ
肺の構造と機能
肺がん患者さんは抗がん剤の「治療効果」と
「QOL(生活の質)の維持」に期待する
NPO 法人キャンサーネットジャパンが実施した
「肺がん治療に関するアンケート」結果報告
血液中の酸素と
二酸化炭素を交換します
監修:日本医科大学付属病院 化学療法科 部長 久保田 馨・東京大学医学部附属病院 呼吸器内科 助教 後藤 悌
アンケート総回答数130 有効回答数123
●文書でのアンケート回答 61
●インターネットでの回答 69
調査方法:1. 患者会へのアンケート協力依頼
2. セミナー会場でのアンケート依頼
3. インターネット回答サイト利用
調査期間:2010 年 9 月 21 日∼ 10 月 25 日
2011年12月作成
●この冊子は右記のURLからダウンロードできます。http://www.cancernet.jp/publish
※本冊子の無断転載・複写は禁じられています。内容を引用する際には出典を明記してください。
参考 : 国立がん研究センター がん対策情報センター「がん情報サービス」http://ganjoho.jp
   ASCO ANSWERS LUNG CANCER(米国臨床腫瘍学会)
肺がんは日本人に多いがんの 1つで、喫煙や受動喫煙がその大きな原因です。喫煙開始後、
20 ∼30年経過すると、肺がんの発生確率が上がっていきます。近年、新しい治療薬が登場し、
手術や放射線療法の研究も進んで、肺がんの治療は着実に進歩しています。
扁平上皮がん 腺がん 大細胞がん
 肺は胸郭に広がる大きな臓器です。右肺は上葉・中葉・下葉、
左肺は上葉・下葉の 5 つの肺葉に分かれています。気管は左右に
分かれて気管支となり、奥に向かってさらに細い細気管支になり
ます。気管支には肺動脈が沿っており、毛細血管となって細気管
支の先にある肺胞の周りを覆っています。この肺胞で静脈の赤血
球から二酸化炭素が取り除かれます。そして、呼吸によって得ら
れた酸素が送り込まれて動脈血となります。
肺がんの種類と治療
種類と病期によって
治療法が異なります
 肺がんは、がん細胞の組織型(形状や性質)によって、「小細胞
肺がん」と「非小細胞肺がん(扁平上皮がん、腺がん、大細胞が
ん)」に大別されます。また、肺がんの発生した部位、がんの大きさ、
広がり(病期)、出ている症状などによって、治療法は異なります。
小細胞肺がん
図 1:抗がん剤治療に期待することは何ですか?(上位3つを選択、単位:人)
●肺がん全体の約15% ●男性に多い
●患者のほとんどが喫煙者 ●中心型(肺門型) 
●進行や転移が非常に速い
●薬物療法や放射線療法が効きやすい
非小細胞肺がん
●男性の肺がんの約40%、
 女性の肺がんの約15%
●男性に多い
●患者のほとんどが
 喫煙者
●中心型(肺門型)
●日本人の肺がんの中で最も多い
 男性の肺がんの約40%、女性の肺がんの約70%以上
●女性患者の多くは非喫煙者
●末梢型(肺野型) 
●早期では症状が出にくい
●進行や転移の速さに個人差が大きい
●比較的まれ
●男性に多い
●末梢型(肺野型)
●進行や転移が速い
 場合がある
抗がん剤の気になる副作用は、
吐き気・嘔吐、脱毛、体のだるさなど
 NPO 法人キャンサーネットジャパンでは、2010年秋に肺が
ん患者さんを対象に、治療や医師・看護師ら医療スタッフとの
かかわりに関するアンケートを行いました。
 回答者の年代は 60代が 30%、70代が33%とほぼ同率で、
50代は16%、40代以下は合計で12%でした。手術後に薬物療
法を受けた人が55名で、手術をせずに薬物療法を受けた人と
再発後に薬物療法を受けた人が68 名でした。
 「抗がん剤治療への期待」を聞いたところ、「生存期間が延び
ること」(63.4%)が最も多く、「副作用が少ないこと」(57.7%)、
「がんが小さくなること」(52%)、「これまでと同じ生活が維持
できること」(51.2%)と「治療効果」と「QOL(生活の質)の維持」
に期待が高いことがわかりました(図1)。抗がん剤の気になる
副作用は、「吐き気・嘔吐」が最も多く、次いで「脱毛」「体のだ
るさ」「検査値の異常」がほぼ同数でした(図2)。
医師には治療法や病気について質問・相談し、
半数以上が回答に満足している
 医療従事者に質問・相談したいことは、医師に対しても、看
護師や薬剤師など医師以外の医療従事者に対しても「治療方法
について」「病気について」が最も多く、「心のケア」「医療費・
医療制度について」などが続きました。質問・相談に対する回
答への満足度は、医師に対しては半数以上が「満足している」
と回答したのに対し、医師以外の医療従事者に対しては「満足
している」と「わからない」との回答数がほぼ同数でした。
 医療従事者以外からのサ
ポートで一番期待されたのは
「病気や治療についての知識
を得る機会」が1位で、次いで
「心のケア」「体験者からのア
ドバイス」「医療制度について
の説明」がほぼ同数でした。
① 生存期間が延びること
② 副作用が少ないこと
③ がんが小さくなること
④ これまでと同じ生活が維持できること
⑤ 再発を予防する・再発までの期間を延ばす
⑥ 痛みが減ること
⑦ コスト(経済的負担)が少ないこと
⑧ 外来治療であること
⑨ その他
その他の記述:①湿疹 ②全部です ③発疹、かゆみ ④軟便 ⑤肌あれ ⑥色素沈着など ⑦皮膚炎 ⑧しびれ ⑨精神障害 ⑩咳
⑪見た目の変化。もともと痩せ型のため、食欲不振によりすごく細くなり、見た目がすごく変わってしまう
図 2:気になる抗がん剤の副作用は何ですか? (上位3つを選択、単位:人)
●手術・薬物療法・放射線療法を単独、あるいは組み合わせて治療
64
78
30
71
63
42
11
21
2
51
18
73
46
53
22
52
18
10
14
3
① 吐き気や嘔吐
② 脱毛
③ 体のだるさ
④ 検査値(白血球数、好中球数など)の異常
⑤ 食欲不振
⑥ 手足のしびれ
⑦ 発熱
⑦ 味覚障害、嗅覚障害
⑨ 爪の変色、はがれ
⑩ 血管痛、血管炎
⑪ その他
for Patients with lung cancer
パールリボン
右肺
胸膜
上葉
上葉
下葉
中葉
縦隔
心臓
横隔膜
気管支
気管
胸腔
下葉
左肺
肺の入り口に近い、
太い気管支にできる
中心型(肺門型)肺がん
肺の奥のほうにできる
喀痰の中にがん細胞はあるものの、病巣の位置がわからない
気管支を覆う細胞の一部のみにがんがある
原発巣にとどまって転移がない
リンパ節か肺を覆う胸膜・胸壁に転移
原発巣から近くのリンパ節に転移し、ほかの臓器には転移がない
肺のほかの部位やほかの臓器に転移
潜伏がん
0 期
Ⅰ期
Ⅱ期
Ⅲ期
Ⅳ期
末梢型(肺野型)肺がん
◎肺がんの病期
肺の中や近くのリンパ節にがんがとどまっている
肺の外に広がっている
限局型
進展型
◎小細胞肺がんの病期
医師に質問することリスト
肺がんと診断されたら
病状を把握し、「標準治療」を
基準に治療を選びます
〈がんの治療や肺がんに関する情報源〉
■国立がん研究センター がん対策情報センター「がん情報サービス」
http://ganjoho.jp
■日本肺癌学会
・診療ガイドライン(医療者向け)
http://www.haigan.gr.jp/modules/guideline/
index.php?content_id=3
■ NPO 法人西日本がん研究機構
・ハンドブック『よくわかる肺がん』
(1冊1000 円で配布もしています)
http://www.wjog.org/library/library07.html
■医療情報サービス Minds(マインズ)肺癌 一般向け/やさしい解説
http://minds.jcqhc.or.jp/stc/0007/5/0007_
G0000249_GL.html
 肺がんと診断されたら、それを受け止めるまでには時間がかかり
ます。強い衝撃を受けた後、「なぜ自分ががんになるのか」という
怒りや「間違っているに違いない」という否認の感情などが沸いてき
ます。そして、不安や抑うつが襲ってきます。それから少しずつ落
ち着きを取り戻し、自分の状態を見つめられるようになるのです。
 肺がんは部位や病期によっては気管支鏡や内視鏡による手術や光
線力学療法(PDT)なども行われており、治療の選択肢が比較的多
いがんです。治療の選択にあたっては、担当医に右のような質問を
して病状を把握し、「標準治療」を聞きましょう。「標準治療」とは、
ある時点での、科学的根拠に基づいた、多くの患者さんに行える、
最も安全で効果的な治療法で、日本肺癌学会をはじめ、世界のさ
まざまな学会や団体が診療ガイドラインとしてまとめ、一部をホー
ムページで公表しています。治療の選択に迷うときには、セカンド
オピニオンを聞きに行ってもいいでしょう。
 各都道府県にある、がん診療連携拠点病院内の相談支援センター
では、セカンドオピニオンを受けられる医療機関を紹介したり、精
神的なケアの相談に乗ったりしています。
肺がんを理解するための用語集
◆腫瘍
組織のかたまり。良性と悪性がある。
◆良性腫瘍
がんではない腫瘍のこと。無限に増殖したり、
ほかの臓器に転移したりすることはない。
◆悪性腫瘍
がん化した腫瘍のこと。無限に増殖し、ほかの
臓器に転移して生命に著しい影響を及ぼす。
◆病期(ステージ)
がんの広がりの程度を示す言葉で、Ⅰ(組織内
にとどまっている)からⅣ(ほかの臓器に転移し
ている)の数字で表される。治療が進んで、が
んが小さくなっても病期(ステージ)が若い数
字になることはなく、最初の診断のままで用
いられる。
◆組織型
がん細胞やがんの組織の「顔つき」。主に病理
■ 肺がんの状態
◎私の肺がんはどのようなタイプでしょうか。
◎病理検査の結果を詳しく教えてください。
◎病期(ステージ)はいくつでしょうか。
◎がんはどこにできていますか。
◎がんはリンパ節やほかの部位に広がっていますか。
◎今後の見通しはどんなものでしょうか。
■ 治療について
◎治療の選択肢を教えてください。
◎どの治療法を推薦しますか? その理由は?
◎その治療法は、日常生活にどのように影響しますか。
 仕事や運動、日々の活動に支障はないでしょうか。
◎治療は、妊娠や出産、性生活にどのように影響しますか。
◎がんを取り除く治療のほかに、がんそのものによって
 出てくる症状に対して、どんな治療がありますか。
◎治療に伴う長期的な副作用はどんなものがありますか。
◎私が参加できる臨床試験はありますか。
■ 連絡や相談
◎私の治療に携わる医療スタッフはどんな人たちですか。
◎疑問や問題が出てきたときには
 誰に連絡すればいいでしょうか。
◎私や家族の精神的なサポートは
 誰に相談すればいいでしょうか。
◎治療費に関する不安は誰に相談すればいいでしょうか。
◎ほかに私が聞いておくべきことはありますか。
ゲフィチニブやエルロチニブの単独療法は、
EGFR 遺伝子変異のある患者さんに有効
 日本を含むアジア9か国共同で、喫煙歴がない、または
軽度の進行肺腺がん患者を対象に、分子標的薬ゲフィチ
ニブとカルボプラチン+パクリタキセル併用療法とを比較
する大規模な臨床試験が行われました。その結果、上皮
成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異が陽性の患者さんで
はゲフィチニブ群の無増悪生存期間や症状改善の割合が
明らかに良好でしたが、EGFR 遺伝子変異陰性の患者さ
んでは、ゲフィチニブはほとんど効果がなく、逆にカルボ
プラチン+パクリタキセルのほうが良好でした。また、エ
ルロチニブも同様に EGFR 遺伝子変異がある患者さんに、
より効果があることがわかっています。これらの薬を効果
的に使うために、日本では EGFR遺伝子変異の有無を見る
細胞検査が保険適応されています。
 ゲフィチニブは現在、EGFR変異のある進行肺がん患者
さんに対する初回治療の選択肢の1つと考えられています。
しかし、初回で用いる場合と化学療法後に用いる場合とで
ゲフィチニブの効果には変わりがないため、初回化学療法
後に増悪した時点でゲフィチニブによる治療が行われるこ
ともあります。病気の全経過を通して、肺がんによる症状、
合併するそのほかの病気、副作用や患者さんの希望を含
めてゲフィチニブを用いる時期を検討することになります。
非小細胞肺がんでは、組織型の違いによって
抗がん剤を使い分ける時代になってきた
 非小細胞肺がん(扁平上皮がん、腺がん、大細胞がん)
の薬物療法では、抗がん剤のシスプラチン、カルボプラチ
ンなどのプラチナ(白金)製剤にもう1 種類の抗がん剤、例
えばパクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビンなどを
組み合わせるのが標準治療とされていました。プラチナ製
剤とこれらの抗がん剤の組み合わせによる治療効果は組織
型を問わず、ほぼ同等と考えられていました。
 2009年から非小細胞肺がんに使えるようになったペメ
トレキセドナトリウム水和物(以下ペメトレキセド)をシス
プラチンと組み合わせて、シスプラチン+ゲムシタビンと
比較した試験では、扁平上皮がんではシスプラチン+ゲム
シタビンのほうが、腺がんと大細胞がんではシスプラチン
+ペメトレキセドのほうが生存期間を延ばす効果がより高
いことが明らかになりました。
 また、分子標的薬の1つであるベバシズマブは、非扁平
上皮がんにカルボプラチン+パクリタキセルと一緒に使う
と効果があることもわかっています。
 このような結果から、非小細胞肺がんにおいて、組織型に
よって抗がん剤の使い分けができるようになってきました。
標準的併用化学療法で効果のあった患者さんは
薬物療法を引き続き行うとよい結果に
 同じ抗がん剤を長く使い続けると、がんが耐性(その薬
剤に効果がなくなること)を持ってしまい、効果が落ちてく
る上に、副作用も強く出るようになります。そのため、一
定期間使った後、休薬するのが一般的です。しかし、初
回化学療法で効果があった患者さんでは、より積極的な
治療として、有効な抗がん剤を使い続ける「維持療法」が
行われる場合があります。
 プラチナ製剤を含む併用化学療法で病巣が安定したり、
縮小したりするなどの効果があった非小細胞肺がんの患者
に引き続きペメトレキセドやエルロチニブを投与すると無
増悪生存期間(がんが進行せず、病状が安定している期間)
や生存期間が延びることが報告され、2009年、米国でも
維持療法薬として承認されました。ペメトレキセドやエル
ロチニブは日本でも維持療法薬として使うことができま
す。現在もほかの薬との組み合わせなどで、よりよい治療
法を目指した研究が行われています。
医が診断する。組織型によって治療が異なる。
肺がんでは、組織型がはっきりとは決められな
い場合がある。
◆浸潤(しんじゅん)
がん細胞が増殖して、その場から周囲に侵入
して組織を壊していくこと。
◆転移
がん細胞がリンパ液や血液の流れに乗ってほ
かの臓器に移動し、そこで広がること。
◆原発巣と転移巣
がんが最初にできたと考えられる部分が「原発
巣」で、そのがんが転移した部分が「転移巣」。
転移巣のがんは原発巣のがんに準じた治療を
する。
◆予後
「がんの状態や病状の見通し」で、どのような
経過をたどるのかの予測。
◆生存率
診断や治療開始から一定期間(1年、5 年など)
経過したときに生存している患者の比率(割
合)。病期や治療ごとに過去の数値から計算
する。
◆生存期間中央値
診断や治療開始から生存率が50%になるまで
の期間。「平均値」という言葉の替わりに使わ
れる。患者個人個人の予後や余命を示すもの
ではない。
◆化学療法
薬剤(抗がん剤)を使って、がん細胞を攻撃す
る治療法。
◆分子標的薬
がん細胞に特有の、あるいは正常細胞よりも
がん細胞に多い分子に結合する物質を用いて、
がん細胞の分裂を止めたり、がん細胞を壊し
たりする薬。
肺がんの最新トピックス肺がんの最新トピックス
医師に質問することリスト
肺がんと診断されたら
病状を把握し、「標準治療」を
基準に治療を選びます
〈がんの治療や肺がんに関する情報源〉
■国立がん研究センター がん対策情報センター「がん情報サービス」
http://ganjoho.jp
■日本肺癌学会
・診療ガイドライン(医療者向け)
http://www.haigan.gr.jp/modules/guideline/
index.php?content_id=3
■ NPO 法人西日本がん研究機構
・ハンドブック『よくわかる肺がん』
(1冊1000 円で配布もしています)
http://www.wjog.org/library/library07.html
■医療情報サービス Minds(マインズ)肺癌 一般向け/やさしい解説
http://minds.jcqhc.or.jp/stc/0007/5/0007_
G0000249_GL.html
 肺がんと診断されたら、それを受け止めるまでには時間がかかり
ます。強い衝撃を受けた後、「なぜ自分ががんになるのか」という
怒りや「間違っているに違いない」という否認の感情などが沸いてき
ます。そして、不安や抑うつが襲ってきます。それから少しずつ落
ち着きを取り戻し、自分の状態を見つめられるようになるのです。
 肺がんは部位や病期によっては気管支鏡や内視鏡による手術や光
線力学療法(PDT)なども行われており、治療の選択肢が比較的多
いがんです。治療の選択にあたっては、担当医に右のような質問を
して病状を把握し、「標準治療」を聞きましょう。「標準治療」とは、
ある時点での、科学的根拠に基づいた、多くの患者さんに行える、
最も安全で効果的な治療法で、日本肺癌学会をはじめ、世界のさ
まざまな学会や団体が診療ガイドラインとしてまとめ、一部をホー
ムページで公表しています。治療の選択に迷うときには、セカンド
オピニオンを聞きに行ってもいいでしょう。
 各都道府県にある、がん診療連携拠点病院内の相談支援センター
では、セカンドオピニオンを受けられる医療機関を紹介したり、精
神的なケアの相談に乗ったりしています。
肺がんを理解するための用語集
◆腫瘍
組織のかたまり。良性と悪性がある。
◆良性腫瘍
がんではない腫瘍のこと。無限に増殖したり、
ほかの臓器に転移したりすることはない。
◆悪性腫瘍
がん化した腫瘍のこと。無限に増殖し、ほかの
臓器に転移して生命に著しい影響を及ぼす。
◆病期(ステージ)
がんの広がりの程度を示す言葉で、Ⅰ(組織内
にとどまっている)からⅣ(ほかの臓器に転移し
ている)の数字で表される。治療が進んで、が
んが小さくなっても病期(ステージ)が若い数
字になることはなく、最初の診断のままで用
いられる。
◆組織型
がん細胞やがんの組織の「顔つき」。主に病理
■ 肺がんの状態
◎私の肺がんはどのようなタイプでしょうか。
◎病理検査の結果を詳しく教えてください。
◎病期(ステージ)はいくつでしょうか。
◎がんはどこにできていますか。
◎がんはリンパ節やほかの部位に広がっていますか。
◎今後の見通しはどんなものでしょうか。
■ 治療について
◎治療の選択肢を教えてください。
◎どの治療法を推薦しますか? その理由は?
◎その治療法は、日常生活にどのように影響しますか。
 仕事や運動、日々の活動に支障はないでしょうか。
◎治療は、妊娠や出産、性生活にどのように影響しますか。
◎がんを取り除く治療のほかに、がんそのものによって
 出てくる症状に対して、どんな治療がありますか。
◎治療に伴う長期的な副作用はどんなものがありますか。
◎私が参加できる臨床試験はありますか。
■ 連絡や相談
◎私の治療に携わる医療スタッフはどんな人たちですか。
◎疑問や問題が出てきたときには
 誰に連絡すればいいでしょうか。
◎私や家族の精神的なサポートは
 誰に相談すればいいでしょうか。
◎治療費に関する不安は誰に相談すればいいでしょうか。
◎ほかに私が聞いておくべきことはありますか。
ゲフィチニブやエルロチニブの単独療法は、
EGFR 遺伝子変異のある患者さんに有効
 日本を含むアジア9か国共同で、喫煙歴がない、または
軽度の進行肺腺がん患者を対象に、分子標的薬ゲフィチ
ニブとカルボプラチン+パクリタキセル併用療法とを比較
する大規模な臨床試験が行われました。その結果、上皮
成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異が陽性の患者さんで
はゲフィチニブ群の無増悪生存期間や症状改善の割合が
明らかに良好でしたが、EGFR 遺伝子変異陰性の患者さ
んでは、ゲフィチニブはほとんど効果がなく、逆にカルボ
プラチン+パクリタキセルのほうが良好でした。また、エ
ルロチニブも同様に EGFR 遺伝子変異がある患者さんに、
より効果があることがわかっています。これらの薬を効果
的に使うために、日本では EGFR遺伝子変異の有無を見る
細胞検査が保険適応されています。
 ゲフィチニブは現在、EGFR変異のある進行肺がん患者
さんに対する初回治療の選択肢の1つと考えられています。
しかし、初回で用いる場合と化学療法後に用いる場合とで
ゲフィチニブの効果には変わりがないため、初回化学療法
後に増悪した時点でゲフィチニブによる治療が行われるこ
ともあります。病気の全経過を通して、肺がんによる症状、
合併するそのほかの病気、副作用や患者さんの希望を含
めてゲフィチニブを用いる時期を検討することになります。
非小細胞肺がんでは、組織型の違いによって
抗がん剤を使い分ける時代になってきた
 非小細胞肺がん(扁平上皮がん、腺がん、大細胞がん)
の薬物療法では、抗がん剤のシスプラチン、カルボプラチ
ンなどのプラチナ(白金)製剤にもう1 種類の抗がん剤、例
えばパクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビンなどを
組み合わせるのが標準治療とされていました。プラチナ製
剤とこれらの抗がん剤の組み合わせによる治療効果は組織
型を問わず、ほぼ同等と考えられていました。
 2009年から非小細胞肺がんに使えるようになったペメ
トレキセドナトリウム水和物(以下ペメトレキセド)をシス
プラチンと組み合わせて、シスプラチン+ゲムシタビンと
比較した試験では、扁平上皮がんではシスプラチン+ゲム
シタビンのほうが、腺がんと大細胞がんではシスプラチン
+ペメトレキセドのほうが生存期間を延ばす効果がより高
いことが明らかになりました。
 また、分子標的薬の1つであるベバシズマブは、非扁平
上皮がんにカルボプラチン+パクリタキセルと一緒に使う
と効果があることもわかっています。
 このような結果から、非小細胞肺がんにおいて、組織型に
よって抗がん剤の使い分けができるようになってきました。
標準的併用化学療法で効果のあった患者さんは
薬物療法を引き続き行うとよい結果に
 同じ抗がん剤を長く使い続けると、がんが耐性(その薬
剤に効果がなくなること)を持ってしまい、効果が落ちてく
る上に、副作用も強く出るようになります。そのため、一
定期間使った後、休薬するのが一般的です。しかし、初
回化学療法で効果があった患者さんでは、より積極的な
治療として、有効な抗がん剤を使い続ける「維持療法」が
行われる場合があります。
 プラチナ製剤を含む併用化学療法で病巣が安定したり、
縮小したりするなどの効果があった非小細胞肺がんの患者
に引き続きペメトレキセドやエルロチニブを投与すると無
増悪生存期間(がんが進行せず、病状が安定している期間)
や生存期間が延びることが報告され、2009年、米国でも
維持療法薬として承認されました。ペメトレキセドやエル
ロチニブは日本でも維持療法薬として使うことができま
す。現在もほかの薬との組み合わせなどで、よりよい治療
法を目指した研究が行われています。
医が診断する。組織型によって治療が異なる。
肺がんでは、組織型がはっきりとは決められな
い場合がある。
◆浸潤(しんじゅん)
がん細胞が増殖して、その場から周囲に侵入
して組織を壊していくこと。
◆転移
がん細胞がリンパ液や血液の流れに乗ってほ
かの臓器に移動し、そこで広がること。
◆原発巣と転移巣
がんが最初にできたと考えられる部分が「原発
巣」で、そのがんが転移した部分が「転移巣」。
転移巣のがんは原発巣のがんに準じた治療を
する。
◆予後
「がんの状態や病状の見通し」で、どのような
経過をたどるのかの予測。
◆生存率
診断や治療開始から一定期間(1年、5 年など)
経過したときに生存している患者の比率(割
合)。病期や治療ごとに過去の数値から計算
する。
◆生存期間中央値
診断や治療開始から生存率が50%になるまで
の期間。「平均値」という言葉の替わりに使わ
れる。患者個人個人の予後や余命を示すもの
ではない。
◆化学療法
薬剤(抗がん剤)を使って、がん細胞を攻撃す
る治療法。
◆分子標的薬
がん細胞に特有の、あるいは正常細胞よりも
がん細胞に多い分子に結合する物質を用いて、
がん細胞の分裂を止めたり、がん細胞を壊し
たりする薬。
肺がんの最新トピックス肺がんの最新トピックス
制作:NPO法人キャンサーネットジャパン 制作協力:日本イーライリリー株式会社
肺がんと診断された方へ肺がんと診断された方へ
肺の構造と機能
肺がん患者さんは抗がん剤の「治療効果」と
「QOL(生活の質)の維持」に期待する
NPO 法人キャンサーネットジャパンが実施した
「肺がん治療に関するアンケート」結果報告
血液中の酸素と
二酸化炭素を交換します
監修:日本医科大学付属病院 化学療法科 部長 久保田 馨・東京大学医学部附属病院 呼吸器内科 助教 後藤 悌
アンケート総回答数130 有効回答数123
●文書でのアンケート回答 61
●インターネットでの回答 69
調査方法:1. 患者会へのアンケート協力依頼
2. セミナー会場でのアンケート依頼
3. インターネット回答サイト利用
調査期間:2010 年 9 月 21 日∼ 10 月 25 日
2011年12月作成
●この冊子は右記のURLからダウンロードできます。http://www.cancernet.jp/publish
※本冊子の無断転載・複写は禁じられています。内容を引用する際には出典を明記してください。
参考 : 国立がん研究センター がん対策情報センター「がん情報サービス」http://ganjoho.jp
   ASCO ANSWERS LUNG CANCER(米国臨床腫瘍学会)
肺がんは日本人に多いがんの 1つで、喫煙や受動喫煙がその大きな原因です。喫煙開始後、
20 ∼30年経過すると、肺がんの発生確率が上がっていきます。近年、新しい治療薬が登場し、
手術や放射線療法の研究も進んで、肺がんの治療は着実に進歩しています。
扁平上皮がん 腺がん 大細胞がん
 肺は胸郭に広がる大きな臓器です。右肺は上葉・中葉・下葉、
左肺は上葉・下葉の 5 つの肺葉に分かれています。気管は左右に
分かれて気管支となり、奥に向かってさらに細い細気管支になり
ます。気管支には肺動脈が沿っており、毛細血管となって細気管
支の先にある肺胞の周りを覆っています。この肺胞で静脈の赤血
球から二酸化炭素が取り除かれます。そして、呼吸によって得ら
れた酸素が送り込まれて動脈血となります。
肺がんの種類と治療
種類と病期によって
治療法が異なります
 肺がんは、がん細胞の組織型(形状や性質)によって、「小細胞
肺がん」と「非小細胞肺がん(扁平上皮がん、腺がん、大細胞が
ん)」に大別されます。また、肺がんの発生した部位、がんの大きさ、
広がり(病期)、出ている症状などによって、治療法は異なります。
小細胞肺がん
図 1:抗がん剤治療に期待することは何ですか?(上位3つを選択、単位:人)
●肺がん全体の約15% ●男性に多い
●患者のほとんどが喫煙者 ●中心型(肺門型) 
●進行や転移が非常に速い
●薬物療法や放射線療法が効きやすい
非小細胞肺がん
●男性の肺がんの約40%、
 女性の肺がんの約15%
●男性に多い
●患者のほとんどが
 喫煙者
●中心型(肺門型)
●日本人の肺がんの中で最も多い
 男性の肺がんの約40%、女性の肺がんの約70%以上
●女性患者の多くは非喫煙者
●末梢型(肺野型) 
●早期では症状が出にくい
●進行や転移の速さに個人差が大きい
●比較的まれ
●男性に多い
●末梢型(肺野型)
●進行や転移が速い
 場合がある
抗がん剤の気になる副作用は、
吐き気・嘔吐、脱毛、体のだるさなど
 NPO 法人キャンサーネットジャパンでは、2010年秋に肺が
ん患者さんを対象に、治療や医師・看護師ら医療スタッフとの
かかわりに関するアンケートを行いました。
 回答者の年代は 60代が 30%、70代が33%とほぼ同率で、
50代は16%、40代以下は合計で12%でした。手術後に薬物療
法を受けた人が55名で、手術をせずに薬物療法を受けた人と
再発後に薬物療法を受けた人が68 名でした。
 「抗がん剤治療への期待」を聞いたところ、「生存期間が延び
ること」(63.4%)が最も多く、「副作用が少ないこと」(57.7%)、
「がんが小さくなること」(52%)、「これまでと同じ生活が維持
できること」(51.2%)と「治療効果」と「QOL(生活の質)の維持」
に期待が高いことがわかりました(図1)。抗がん剤の気になる
副作用は、「吐き気・嘔吐」が最も多く、次いで「脱毛」「体のだ
るさ」「検査値の異常」がほぼ同数でした(図2)。
医師には治療法や病気について質問・相談し、
半数以上が回答に満足している
 医療従事者に質問・相談したいことは、医師に対しても、看
護師や薬剤師など医師以外の医療従事者に対しても「治療方法
について」「病気について」が最も多く、「心のケア」「医療費・
医療制度について」などが続きました。質問・相談に対する回
答への満足度は、医師に対しては半数以上が「満足している」
と回答したのに対し、医師以外の医療従事者に対しては「満足
している」と「わからない」との回答数がほぼ同数でした。
 医療従事者以外からのサ
ポートで一番期待されたのは
「病気や治療についての知識
を得る機会」が1位で、次いで
「心のケア」「体験者からのア
ドバイス」「医療制度について
の説明」がほぼ同数でした。
① 生存期間が延びること
② 副作用が少ないこと
③ がんが小さくなること
④ これまでと同じ生活が維持できること
⑤ 再発を予防する・再発までの期間を延ばす
⑥ 痛みが減ること
⑦ コスト(経済的負担)が少ないこと
⑧ 外来治療であること
⑨ その他
その他の記述:①湿疹 ②全部です ③発疹、かゆみ ④軟便 ⑤肌あれ ⑥色素沈着など ⑦皮膚炎 ⑧しびれ ⑨精神障害 ⑩咳
⑪見た目の変化。もともと痩せ型のため、食欲不振によりすごく細くなり、見た目がすごく変わってしまう
図 2:気になる抗がん剤の副作用は何ですか? (上位3つを選択、単位:人)
●手術・薬物療法・放射線療法を単独、あるいは組み合わせて治療
64
78
30
71
63
42
11
21
2
51
18
73
46
53
22
52
18
10
14
3
① 吐き気や嘔吐
② 脱毛
③ 体のだるさ
④ 検査値(白血球数、好中球数など)の異常
⑤ 食欲不振
⑥ 手足のしびれ
⑦ 発熱
⑦ 味覚障害、嗅覚障害
⑨ 爪の変色、はがれ
⑩ 血管痛、血管炎
⑪ その他
for Patients with lung cancer
パールリボン
右肺
胸膜
上葉
上葉
下葉
中葉
縦隔
心臓
横隔膜
気管支
気管
胸腔
下葉
左肺
肺の入り口に近い、
太い気管支にできる
中心型(肺門型)肺がん
肺の奥のほうにできる
喀痰の中にがん細胞はあるものの、病巣の位置がわからない
気管支を覆う細胞の一部のみにがんがある
原発巣にとどまって転移がない
リンパ節か肺を覆う胸膜・胸壁に転移
原発巣から近くのリンパ節に転移し、ほかの臓器には転移がない
肺のほかの部位やほかの臓器に転移
潜伏がん
0 期
Ⅰ期
Ⅱ期
Ⅲ期
Ⅳ期
末梢型(肺野型)肺がん
◎肺がんの病期
肺の中や近くのリンパ節にがんがとどまっている
肺の外に広がっている
限局型
進展型
◎小細胞肺がんの病期

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肺がんと診断された方へ

  • 1. 制作:NPO法人キャンサーネットジャパン 制作協力:日本イーライリリー株式会社 肺がんと診断された方へ肺がんと診断された方へ 肺の構造と機能 肺がん患者さんは抗がん剤の「治療効果」と 「QOL(生活の質)の維持」に期待する NPO 法人キャンサーネットジャパンが実施した 「肺がん治療に関するアンケート」結果報告 血液中の酸素と 二酸化炭素を交換します 監修:日本医科大学付属病院 化学療法科 部長 久保田 馨・東京大学医学部附属病院 呼吸器内科 助教 後藤 悌 アンケート総回答数130 有効回答数123 ●文書でのアンケート回答 61 ●インターネットでの回答 69 調査方法:1. 患者会へのアンケート協力依頼 2. セミナー会場でのアンケート依頼 3. インターネット回答サイト利用 調査期間:2010 年 9 月 21 日∼ 10 月 25 日 2011年12月作成 ●この冊子は右記のURLからダウンロードできます。http://www.cancernet.jp/publish ※本冊子の無断転載・複写は禁じられています。内容を引用する際には出典を明記してください。 参考 : 国立がん研究センター がん対策情報センター「がん情報サービス」http://ganjoho.jp    ASCO ANSWERS LUNG CANCER(米国臨床腫瘍学会) 肺がんは日本人に多いがんの 1つで、喫煙や受動喫煙がその大きな原因です。喫煙開始後、 20 ∼30年経過すると、肺がんの発生確率が上がっていきます。近年、新しい治療薬が登場し、 手術や放射線療法の研究も進んで、肺がんの治療は着実に進歩しています。 扁平上皮がん 腺がん 大細胞がん  肺は胸郭に広がる大きな臓器です。右肺は上葉・中葉・下葉、 左肺は上葉・下葉の 5 つの肺葉に分かれています。気管は左右に 分かれて気管支となり、奥に向かってさらに細い細気管支になり ます。気管支には肺動脈が沿っており、毛細血管となって細気管 支の先にある肺胞の周りを覆っています。この肺胞で静脈の赤血 球から二酸化炭素が取り除かれます。そして、呼吸によって得ら れた酸素が送り込まれて動脈血となります。 肺がんの種類と治療 種類と病期によって 治療法が異なります  肺がんは、がん細胞の組織型(形状や性質)によって、「小細胞 肺がん」と「非小細胞肺がん(扁平上皮がん、腺がん、大細胞が ん)」に大別されます。また、肺がんの発生した部位、がんの大きさ、 広がり(病期)、出ている症状などによって、治療法は異なります。 小細胞肺がん 図 1:抗がん剤治療に期待することは何ですか?(上位3つを選択、単位:人) ●肺がん全体の約15% ●男性に多い ●患者のほとんどが喫煙者 ●中心型(肺門型)  ●進行や転移が非常に速い ●薬物療法や放射線療法が効きやすい 非小細胞肺がん ●男性の肺がんの約40%、  女性の肺がんの約15% ●男性に多い ●患者のほとんどが  喫煙者 ●中心型(肺門型) ●日本人の肺がんの中で最も多い  男性の肺がんの約40%、女性の肺がんの約70%以上 ●女性患者の多くは非喫煙者 ●末梢型(肺野型)  ●早期では症状が出にくい ●進行や転移の速さに個人差が大きい ●比較的まれ ●男性に多い ●末梢型(肺野型) ●進行や転移が速い  場合がある 抗がん剤の気になる副作用は、 吐き気・嘔吐、脱毛、体のだるさなど  NPO 法人キャンサーネットジャパンでは、2010年秋に肺が ん患者さんを対象に、治療や医師・看護師ら医療スタッフとの かかわりに関するアンケートを行いました。  回答者の年代は 60代が 30%、70代が33%とほぼ同率で、 50代は16%、40代以下は合計で12%でした。手術後に薬物療 法を受けた人が55名で、手術をせずに薬物療法を受けた人と 再発後に薬物療法を受けた人が68 名でした。  「抗がん剤治療への期待」を聞いたところ、「生存期間が延び ること」(63.4%)が最も多く、「副作用が少ないこと」(57.7%)、 「がんが小さくなること」(52%)、「これまでと同じ生活が維持 できること」(51.2%)と「治療効果」と「QOL(生活の質)の維持」 に期待が高いことがわかりました(図1)。抗がん剤の気になる 副作用は、「吐き気・嘔吐」が最も多く、次いで「脱毛」「体のだ るさ」「検査値の異常」がほぼ同数でした(図2)。 医師には治療法や病気について質問・相談し、 半数以上が回答に満足している  医療従事者に質問・相談したいことは、医師に対しても、看 護師や薬剤師など医師以外の医療従事者に対しても「治療方法 について」「病気について」が最も多く、「心のケア」「医療費・ 医療制度について」などが続きました。質問・相談に対する回 答への満足度は、医師に対しては半数以上が「満足している」 と回答したのに対し、医師以外の医療従事者に対しては「満足 している」と「わからない」との回答数がほぼ同数でした。  医療従事者以外からのサ ポートで一番期待されたのは 「病気や治療についての知識 を得る機会」が1位で、次いで 「心のケア」「体験者からのア ドバイス」「医療制度について の説明」がほぼ同数でした。 ① 生存期間が延びること ② 副作用が少ないこと ③ がんが小さくなること ④ これまでと同じ生活が維持できること ⑤ 再発を予防する・再発までの期間を延ばす ⑥ 痛みが減ること ⑦ コスト(経済的負担)が少ないこと ⑧ 外来治療であること ⑨ その他 その他の記述:①湿疹 ②全部です ③発疹、かゆみ ④軟便 ⑤肌あれ ⑥色素沈着など ⑦皮膚炎 ⑧しびれ ⑨精神障害 ⑩咳 ⑪見た目の変化。もともと痩せ型のため、食欲不振によりすごく細くなり、見た目がすごく変わってしまう 図 2:気になる抗がん剤の副作用は何ですか? (上位3つを選択、単位:人) ●手術・薬物療法・放射線療法を単独、あるいは組み合わせて治療 64 78 30 71 63 42 11 21 2 51 18 73 46 53 22 52 18 10 14 3 ① 吐き気や嘔吐 ② 脱毛 ③ 体のだるさ ④ 検査値(白血球数、好中球数など)の異常 ⑤ 食欲不振 ⑥ 手足のしびれ ⑦ 発熱 ⑦ 味覚障害、嗅覚障害 ⑨ 爪の変色、はがれ ⑩ 血管痛、血管炎 ⑪ その他 for Patients with lung cancer パールリボン 右肺 胸膜 上葉 上葉 下葉 中葉 縦隔 心臓 横隔膜 気管支 気管 胸腔 下葉 左肺 肺の入り口に近い、 太い気管支にできる 中心型(肺門型)肺がん 肺の奥のほうにできる 喀痰の中にがん細胞はあるものの、病巣の位置がわからない 気管支を覆う細胞の一部のみにがんがある 原発巣にとどまって転移がない リンパ節か肺を覆う胸膜・胸壁に転移 原発巣から近くのリンパ節に転移し、ほかの臓器には転移がない 肺のほかの部位やほかの臓器に転移 潜伏がん 0 期 Ⅰ期 Ⅱ期 Ⅲ期 Ⅳ期 末梢型(肺野型)肺がん ◎肺がんの病期 肺の中や近くのリンパ節にがんがとどまっている 肺の外に広がっている 限局型 進展型 ◎小細胞肺がんの病期
  • 2. 医師に質問することリスト 肺がんと診断されたら 病状を把握し、「標準治療」を 基準に治療を選びます 〈がんの治療や肺がんに関する情報源〉 ■国立がん研究センター がん対策情報センター「がん情報サービス」 http://ganjoho.jp ■日本肺癌学会 ・診療ガイドライン(医療者向け) http://www.haigan.gr.jp/modules/guideline/ index.php?content_id=3 ■ NPO 法人西日本がん研究機構 ・ハンドブック『よくわかる肺がん』 (1冊1000 円で配布もしています) http://www.wjog.org/library/library07.html ■医療情報サービス Minds(マインズ)肺癌 一般向け/やさしい解説 http://minds.jcqhc.or.jp/stc/0007/5/0007_ G0000249_GL.html  肺がんと診断されたら、それを受け止めるまでには時間がかかり ます。強い衝撃を受けた後、「なぜ自分ががんになるのか」という 怒りや「間違っているに違いない」という否認の感情などが沸いてき ます。そして、不安や抑うつが襲ってきます。それから少しずつ落 ち着きを取り戻し、自分の状態を見つめられるようになるのです。  肺がんは部位や病期によっては気管支鏡や内視鏡による手術や光 線力学療法(PDT)なども行われており、治療の選択肢が比較的多 いがんです。治療の選択にあたっては、担当医に右のような質問を して病状を把握し、「標準治療」を聞きましょう。「標準治療」とは、 ある時点での、科学的根拠に基づいた、多くの患者さんに行える、 最も安全で効果的な治療法で、日本肺癌学会をはじめ、世界のさ まざまな学会や団体が診療ガイドラインとしてまとめ、一部をホー ムページで公表しています。治療の選択に迷うときには、セカンド オピニオンを聞きに行ってもいいでしょう。  各都道府県にある、がん診療連携拠点病院内の相談支援センター では、セカンドオピニオンを受けられる医療機関を紹介したり、精 神的なケアの相談に乗ったりしています。 肺がんを理解するための用語集 ◆腫瘍 組織のかたまり。良性と悪性がある。 ◆良性腫瘍 がんではない腫瘍のこと。無限に増殖したり、 ほかの臓器に転移したりすることはない。 ◆悪性腫瘍 がん化した腫瘍のこと。無限に増殖し、ほかの 臓器に転移して生命に著しい影響を及ぼす。 ◆病期(ステージ) がんの広がりの程度を示す言葉で、Ⅰ(組織内 にとどまっている)からⅣ(ほかの臓器に転移し ている)の数字で表される。治療が進んで、が んが小さくなっても病期(ステージ)が若い数 字になることはなく、最初の診断のままで用 いられる。 ◆組織型 がん細胞やがんの組織の「顔つき」。主に病理 ■ 肺がんの状態 ◎私の肺がんはどのようなタイプでしょうか。 ◎病理検査の結果を詳しく教えてください。 ◎病期(ステージ)はいくつでしょうか。 ◎がんはどこにできていますか。 ◎がんはリンパ節やほかの部位に広がっていますか。 ◎今後の見通しはどんなものでしょうか。 ■ 治療について ◎治療の選択肢を教えてください。 ◎どの治療法を推薦しますか? その理由は? ◎その治療法は、日常生活にどのように影響しますか。  仕事や運動、日々の活動に支障はないでしょうか。 ◎治療は、妊娠や出産、性生活にどのように影響しますか。 ◎がんを取り除く治療のほかに、がんそのものによって  出てくる症状に対して、どんな治療がありますか。 ◎治療に伴う長期的な副作用はどんなものがありますか。 ◎私が参加できる臨床試験はありますか。 ■ 連絡や相談 ◎私の治療に携わる医療スタッフはどんな人たちですか。 ◎疑問や問題が出てきたときには  誰に連絡すればいいでしょうか。 ◎私や家族の精神的なサポートは  誰に相談すればいいでしょうか。 ◎治療費に関する不安は誰に相談すればいいでしょうか。 ◎ほかに私が聞いておくべきことはありますか。 ゲフィチニブやエルロチニブの単独療法は、 EGFR 遺伝子変異のある患者さんに有効  日本を含むアジア9か国共同で、喫煙歴がない、または 軽度の進行肺腺がん患者を対象に、分子標的薬ゲフィチ ニブとカルボプラチン+パクリタキセル併用療法とを比較 する大規模な臨床試験が行われました。その結果、上皮 成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異が陽性の患者さんで はゲフィチニブ群の無増悪生存期間や症状改善の割合が 明らかに良好でしたが、EGFR 遺伝子変異陰性の患者さ んでは、ゲフィチニブはほとんど効果がなく、逆にカルボ プラチン+パクリタキセルのほうが良好でした。また、エ ルロチニブも同様に EGFR 遺伝子変異がある患者さんに、 より効果があることがわかっています。これらの薬を効果 的に使うために、日本では EGFR遺伝子変異の有無を見る 細胞検査が保険適応されています。  ゲフィチニブは現在、EGFR変異のある進行肺がん患者 さんに対する初回治療の選択肢の1つと考えられています。 しかし、初回で用いる場合と化学療法後に用いる場合とで ゲフィチニブの効果には変わりがないため、初回化学療法 後に増悪した時点でゲフィチニブによる治療が行われるこ ともあります。病気の全経過を通して、肺がんによる症状、 合併するそのほかの病気、副作用や患者さんの希望を含 めてゲフィチニブを用いる時期を検討することになります。 非小細胞肺がんでは、組織型の違いによって 抗がん剤を使い分ける時代になってきた  非小細胞肺がん(扁平上皮がん、腺がん、大細胞がん) の薬物療法では、抗がん剤のシスプラチン、カルボプラチ ンなどのプラチナ(白金)製剤にもう1 種類の抗がん剤、例 えばパクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビンなどを 組み合わせるのが標準治療とされていました。プラチナ製 剤とこれらの抗がん剤の組み合わせによる治療効果は組織 型を問わず、ほぼ同等と考えられていました。  2009年から非小細胞肺がんに使えるようになったペメ トレキセドナトリウム水和物(以下ペメトレキセド)をシス プラチンと組み合わせて、シスプラチン+ゲムシタビンと 比較した試験では、扁平上皮がんではシスプラチン+ゲム シタビンのほうが、腺がんと大細胞がんではシスプラチン +ペメトレキセドのほうが生存期間を延ばす効果がより高 いことが明らかになりました。  また、分子標的薬の1つであるベバシズマブは、非扁平 上皮がんにカルボプラチン+パクリタキセルと一緒に使う と効果があることもわかっています。  このような結果から、非小細胞肺がんにおいて、組織型に よって抗がん剤の使い分けができるようになってきました。 標準的併用化学療法で効果のあった患者さんは 薬物療法を引き続き行うとよい結果に  同じ抗がん剤を長く使い続けると、がんが耐性(その薬 剤に効果がなくなること)を持ってしまい、効果が落ちてく る上に、副作用も強く出るようになります。そのため、一 定期間使った後、休薬するのが一般的です。しかし、初 回化学療法で効果があった患者さんでは、より積極的な 治療として、有効な抗がん剤を使い続ける「維持療法」が 行われる場合があります。  プラチナ製剤を含む併用化学療法で病巣が安定したり、 縮小したりするなどの効果があった非小細胞肺がんの患者 に引き続きペメトレキセドやエルロチニブを投与すると無 増悪生存期間(がんが進行せず、病状が安定している期間) や生存期間が延びることが報告され、2009年、米国でも 維持療法薬として承認されました。ペメトレキセドやエル ロチニブは日本でも維持療法薬として使うことができま す。現在もほかの薬との組み合わせなどで、よりよい治療 法を目指した研究が行われています。 医が診断する。組織型によって治療が異なる。 肺がんでは、組織型がはっきりとは決められな い場合がある。 ◆浸潤(しんじゅん) がん細胞が増殖して、その場から周囲に侵入 して組織を壊していくこと。 ◆転移 がん細胞がリンパ液や血液の流れに乗ってほ かの臓器に移動し、そこで広がること。 ◆原発巣と転移巣 がんが最初にできたと考えられる部分が「原発 巣」で、そのがんが転移した部分が「転移巣」。 転移巣のがんは原発巣のがんに準じた治療を する。 ◆予後 「がんの状態や病状の見通し」で、どのような 経過をたどるのかの予測。 ◆生存率 診断や治療開始から一定期間(1年、5 年など) 経過したときに生存している患者の比率(割 合)。病期や治療ごとに過去の数値から計算 する。 ◆生存期間中央値 診断や治療開始から生存率が50%になるまで の期間。「平均値」という言葉の替わりに使わ れる。患者個人個人の予後や余命を示すもの ではない。 ◆化学療法 薬剤(抗がん剤)を使って、がん細胞を攻撃す る治療法。 ◆分子標的薬 がん細胞に特有の、あるいは正常細胞よりも がん細胞に多い分子に結合する物質を用いて、 がん細胞の分裂を止めたり、がん細胞を壊し たりする薬。 肺がんの最新トピックス肺がんの最新トピックス
  • 3. 医師に質問することリスト 肺がんと診断されたら 病状を把握し、「標準治療」を 基準に治療を選びます 〈がんの治療や肺がんに関する情報源〉 ■国立がん研究センター がん対策情報センター「がん情報サービス」 http://ganjoho.jp ■日本肺癌学会 ・診療ガイドライン(医療者向け) http://www.haigan.gr.jp/modules/guideline/ index.php?content_id=3 ■ NPO 法人西日本がん研究機構 ・ハンドブック『よくわかる肺がん』 (1冊1000 円で配布もしています) http://www.wjog.org/library/library07.html ■医療情報サービス Minds(マインズ)肺癌 一般向け/やさしい解説 http://minds.jcqhc.or.jp/stc/0007/5/0007_ G0000249_GL.html  肺がんと診断されたら、それを受け止めるまでには時間がかかり ます。強い衝撃を受けた後、「なぜ自分ががんになるのか」という 怒りや「間違っているに違いない」という否認の感情などが沸いてき ます。そして、不安や抑うつが襲ってきます。それから少しずつ落 ち着きを取り戻し、自分の状態を見つめられるようになるのです。  肺がんは部位や病期によっては気管支鏡や内視鏡による手術や光 線力学療法(PDT)なども行われており、治療の選択肢が比較的多 いがんです。治療の選択にあたっては、担当医に右のような質問を して病状を把握し、「標準治療」を聞きましょう。「標準治療」とは、 ある時点での、科学的根拠に基づいた、多くの患者さんに行える、 最も安全で効果的な治療法で、日本肺癌学会をはじめ、世界のさ まざまな学会や団体が診療ガイドラインとしてまとめ、一部をホー ムページで公表しています。治療の選択に迷うときには、セカンド オピニオンを聞きに行ってもいいでしょう。  各都道府県にある、がん診療連携拠点病院内の相談支援センター では、セカンドオピニオンを受けられる医療機関を紹介したり、精 神的なケアの相談に乗ったりしています。 肺がんを理解するための用語集 ◆腫瘍 組織のかたまり。良性と悪性がある。 ◆良性腫瘍 がんではない腫瘍のこと。無限に増殖したり、 ほかの臓器に転移したりすることはない。 ◆悪性腫瘍 がん化した腫瘍のこと。無限に増殖し、ほかの 臓器に転移して生命に著しい影響を及ぼす。 ◆病期(ステージ) がんの広がりの程度を示す言葉で、Ⅰ(組織内 にとどまっている)からⅣ(ほかの臓器に転移し ている)の数字で表される。治療が進んで、が んが小さくなっても病期(ステージ)が若い数 字になることはなく、最初の診断のままで用 いられる。 ◆組織型 がん細胞やがんの組織の「顔つき」。主に病理 ■ 肺がんの状態 ◎私の肺がんはどのようなタイプでしょうか。 ◎病理検査の結果を詳しく教えてください。 ◎病期(ステージ)はいくつでしょうか。 ◎がんはどこにできていますか。 ◎がんはリンパ節やほかの部位に広がっていますか。 ◎今後の見通しはどんなものでしょうか。 ■ 治療について ◎治療の選択肢を教えてください。 ◎どの治療法を推薦しますか? その理由は? ◎その治療法は、日常生活にどのように影響しますか。  仕事や運動、日々の活動に支障はないでしょうか。 ◎治療は、妊娠や出産、性生活にどのように影響しますか。 ◎がんを取り除く治療のほかに、がんそのものによって  出てくる症状に対して、どんな治療がありますか。 ◎治療に伴う長期的な副作用はどんなものがありますか。 ◎私が参加できる臨床試験はありますか。 ■ 連絡や相談 ◎私の治療に携わる医療スタッフはどんな人たちですか。 ◎疑問や問題が出てきたときには  誰に連絡すればいいでしょうか。 ◎私や家族の精神的なサポートは  誰に相談すればいいでしょうか。 ◎治療費に関する不安は誰に相談すればいいでしょうか。 ◎ほかに私が聞いておくべきことはありますか。 ゲフィチニブやエルロチニブの単独療法は、 EGFR 遺伝子変異のある患者さんに有効  日本を含むアジア9か国共同で、喫煙歴がない、または 軽度の進行肺腺がん患者を対象に、分子標的薬ゲフィチ ニブとカルボプラチン+パクリタキセル併用療法とを比較 する大規模な臨床試験が行われました。その結果、上皮 成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異が陽性の患者さんで はゲフィチニブ群の無増悪生存期間や症状改善の割合が 明らかに良好でしたが、EGFR 遺伝子変異陰性の患者さ んでは、ゲフィチニブはほとんど効果がなく、逆にカルボ プラチン+パクリタキセルのほうが良好でした。また、エ ルロチニブも同様に EGFR 遺伝子変異がある患者さんに、 より効果があることがわかっています。これらの薬を効果 的に使うために、日本では EGFR遺伝子変異の有無を見る 細胞検査が保険適応されています。  ゲフィチニブは現在、EGFR変異のある進行肺がん患者 さんに対する初回治療の選択肢の1つと考えられています。 しかし、初回で用いる場合と化学療法後に用いる場合とで ゲフィチニブの効果には変わりがないため、初回化学療法 後に増悪した時点でゲフィチニブによる治療が行われるこ ともあります。病気の全経過を通して、肺がんによる症状、 合併するそのほかの病気、副作用や患者さんの希望を含 めてゲフィチニブを用いる時期を検討することになります。 非小細胞肺がんでは、組織型の違いによって 抗がん剤を使い分ける時代になってきた  非小細胞肺がん(扁平上皮がん、腺がん、大細胞がん) の薬物療法では、抗がん剤のシスプラチン、カルボプラチ ンなどのプラチナ(白金)製剤にもう1 種類の抗がん剤、例 えばパクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビンなどを 組み合わせるのが標準治療とされていました。プラチナ製 剤とこれらの抗がん剤の組み合わせによる治療効果は組織 型を問わず、ほぼ同等と考えられていました。  2009年から非小細胞肺がんに使えるようになったペメ トレキセドナトリウム水和物(以下ペメトレキセド)をシス プラチンと組み合わせて、シスプラチン+ゲムシタビンと 比較した試験では、扁平上皮がんではシスプラチン+ゲム シタビンのほうが、腺がんと大細胞がんではシスプラチン +ペメトレキセドのほうが生存期間を延ばす効果がより高 いことが明らかになりました。  また、分子標的薬の1つであるベバシズマブは、非扁平 上皮がんにカルボプラチン+パクリタキセルと一緒に使う と効果があることもわかっています。  このような結果から、非小細胞肺がんにおいて、組織型に よって抗がん剤の使い分けができるようになってきました。 標準的併用化学療法で効果のあった患者さんは 薬物療法を引き続き行うとよい結果に  同じ抗がん剤を長く使い続けると、がんが耐性(その薬 剤に効果がなくなること)を持ってしまい、効果が落ちてく る上に、副作用も強く出るようになります。そのため、一 定期間使った後、休薬するのが一般的です。しかし、初 回化学療法で効果があった患者さんでは、より積極的な 治療として、有効な抗がん剤を使い続ける「維持療法」が 行われる場合があります。  プラチナ製剤を含む併用化学療法で病巣が安定したり、 縮小したりするなどの効果があった非小細胞肺がんの患者 に引き続きペメトレキセドやエルロチニブを投与すると無 増悪生存期間(がんが進行せず、病状が安定している期間) や生存期間が延びることが報告され、2009年、米国でも 維持療法薬として承認されました。ペメトレキセドやエル ロチニブは日本でも維持療法薬として使うことができま す。現在もほかの薬との組み合わせなどで、よりよい治療 法を目指した研究が行われています。 医が診断する。組織型によって治療が異なる。 肺がんでは、組織型がはっきりとは決められな い場合がある。 ◆浸潤(しんじゅん) がん細胞が増殖して、その場から周囲に侵入 して組織を壊していくこと。 ◆転移 がん細胞がリンパ液や血液の流れに乗ってほ かの臓器に移動し、そこで広がること。 ◆原発巣と転移巣 がんが最初にできたと考えられる部分が「原発 巣」で、そのがんが転移した部分が「転移巣」。 転移巣のがんは原発巣のがんに準じた治療を する。 ◆予後 「がんの状態や病状の見通し」で、どのような 経過をたどるのかの予測。 ◆生存率 診断や治療開始から一定期間(1年、5 年など) 経過したときに生存している患者の比率(割 合)。病期や治療ごとに過去の数値から計算 する。 ◆生存期間中央値 診断や治療開始から生存率が50%になるまで の期間。「平均値」という言葉の替わりに使わ れる。患者個人個人の予後や余命を示すもの ではない。 ◆化学療法 薬剤(抗がん剤)を使って、がん細胞を攻撃す る治療法。 ◆分子標的薬 がん細胞に特有の、あるいは正常細胞よりも がん細胞に多い分子に結合する物質を用いて、 がん細胞の分裂を止めたり、がん細胞を壊し たりする薬。 肺がんの最新トピックス肺がんの最新トピックス
  • 4. 制作:NPO法人キャンサーネットジャパン 制作協力:日本イーライリリー株式会社 肺がんと診断された方へ肺がんと診断された方へ 肺の構造と機能 肺がん患者さんは抗がん剤の「治療効果」と 「QOL(生活の質)の維持」に期待する NPO 法人キャンサーネットジャパンが実施した 「肺がん治療に関するアンケート」結果報告 血液中の酸素と 二酸化炭素を交換します 監修:日本医科大学付属病院 化学療法科 部長 久保田 馨・東京大学医学部附属病院 呼吸器内科 助教 後藤 悌 アンケート総回答数130 有効回答数123 ●文書でのアンケート回答 61 ●インターネットでの回答 69 調査方法:1. 患者会へのアンケート協力依頼 2. セミナー会場でのアンケート依頼 3. インターネット回答サイト利用 調査期間:2010 年 9 月 21 日∼ 10 月 25 日 2011年12月作成 ●この冊子は右記のURLからダウンロードできます。http://www.cancernet.jp/publish ※本冊子の無断転載・複写は禁じられています。内容を引用する際には出典を明記してください。 参考 : 国立がん研究センター がん対策情報センター「がん情報サービス」http://ganjoho.jp    ASCO ANSWERS LUNG CANCER(米国臨床腫瘍学会) 肺がんは日本人に多いがんの 1つで、喫煙や受動喫煙がその大きな原因です。喫煙開始後、 20 ∼30年経過すると、肺がんの発生確率が上がっていきます。近年、新しい治療薬が登場し、 手術や放射線療法の研究も進んで、肺がんの治療は着実に進歩しています。 扁平上皮がん 腺がん 大細胞がん  肺は胸郭に広がる大きな臓器です。右肺は上葉・中葉・下葉、 左肺は上葉・下葉の 5 つの肺葉に分かれています。気管は左右に 分かれて気管支となり、奥に向かってさらに細い細気管支になり ます。気管支には肺動脈が沿っており、毛細血管となって細気管 支の先にある肺胞の周りを覆っています。この肺胞で静脈の赤血 球から二酸化炭素が取り除かれます。そして、呼吸によって得ら れた酸素が送り込まれて動脈血となります。 肺がんの種類と治療 種類と病期によって 治療法が異なります  肺がんは、がん細胞の組織型(形状や性質)によって、「小細胞 肺がん」と「非小細胞肺がん(扁平上皮がん、腺がん、大細胞が ん)」に大別されます。また、肺がんの発生した部位、がんの大きさ、 広がり(病期)、出ている症状などによって、治療法は異なります。 小細胞肺がん 図 1:抗がん剤治療に期待することは何ですか?(上位3つを選択、単位:人) ●肺がん全体の約15% ●男性に多い ●患者のほとんどが喫煙者 ●中心型(肺門型)  ●進行や転移が非常に速い ●薬物療法や放射線療法が効きやすい 非小細胞肺がん ●男性の肺がんの約40%、  女性の肺がんの約15% ●男性に多い ●患者のほとんどが  喫煙者 ●中心型(肺門型) ●日本人の肺がんの中で最も多い  男性の肺がんの約40%、女性の肺がんの約70%以上 ●女性患者の多くは非喫煙者 ●末梢型(肺野型)  ●早期では症状が出にくい ●進行や転移の速さに個人差が大きい ●比較的まれ ●男性に多い ●末梢型(肺野型) ●進行や転移が速い  場合がある 抗がん剤の気になる副作用は、 吐き気・嘔吐、脱毛、体のだるさなど  NPO 法人キャンサーネットジャパンでは、2010年秋に肺が ん患者さんを対象に、治療や医師・看護師ら医療スタッフとの かかわりに関するアンケートを行いました。  回答者の年代は 60代が 30%、70代が33%とほぼ同率で、 50代は16%、40代以下は合計で12%でした。手術後に薬物療 法を受けた人が55名で、手術をせずに薬物療法を受けた人と 再発後に薬物療法を受けた人が68 名でした。  「抗がん剤治療への期待」を聞いたところ、「生存期間が延び ること」(63.4%)が最も多く、「副作用が少ないこと」(57.7%)、 「がんが小さくなること」(52%)、「これまでと同じ生活が維持 できること」(51.2%)と「治療効果」と「QOL(生活の質)の維持」 に期待が高いことがわかりました(図1)。抗がん剤の気になる 副作用は、「吐き気・嘔吐」が最も多く、次いで「脱毛」「体のだ るさ」「検査値の異常」がほぼ同数でした(図2)。 医師には治療法や病気について質問・相談し、 半数以上が回答に満足している  医療従事者に質問・相談したいことは、医師に対しても、看 護師や薬剤師など医師以外の医療従事者に対しても「治療方法 について」「病気について」が最も多く、「心のケア」「医療費・ 医療制度について」などが続きました。質問・相談に対する回 答への満足度は、医師に対しては半数以上が「満足している」 と回答したのに対し、医師以外の医療従事者に対しては「満足 している」と「わからない」との回答数がほぼ同数でした。  医療従事者以外からのサ ポートで一番期待されたのは 「病気や治療についての知識 を得る機会」が1位で、次いで 「心のケア」「体験者からのア ドバイス」「医療制度について の説明」がほぼ同数でした。 ① 生存期間が延びること ② 副作用が少ないこと ③ がんが小さくなること ④ これまでと同じ生活が維持できること ⑤ 再発を予防する・再発までの期間を延ばす ⑥ 痛みが減ること ⑦ コスト(経済的負担)が少ないこと ⑧ 外来治療であること ⑨ その他 その他の記述:①湿疹 ②全部です ③発疹、かゆみ ④軟便 ⑤肌あれ ⑥色素沈着など ⑦皮膚炎 ⑧しびれ ⑨精神障害 ⑩咳 ⑪見た目の変化。もともと痩せ型のため、食欲不振によりすごく細くなり、見た目がすごく変わってしまう 図 2:気になる抗がん剤の副作用は何ですか? (上位3つを選択、単位:人) ●手術・薬物療法・放射線療法を単独、あるいは組み合わせて治療 64 78 30 71 63 42 11 21 2 51 18 73 46 53 22 52 18 10 14 3 ① 吐き気や嘔吐 ② 脱毛 ③ 体のだるさ ④ 検査値(白血球数、好中球数など)の異常 ⑤ 食欲不振 ⑥ 手足のしびれ ⑦ 発熱 ⑦ 味覚障害、嗅覚障害 ⑨ 爪の変色、はがれ ⑩ 血管痛、血管炎 ⑪ その他 for Patients with lung cancer パールリボン 右肺 胸膜 上葉 上葉 下葉 中葉 縦隔 心臓 横隔膜 気管支 気管 胸腔 下葉 左肺 肺の入り口に近い、 太い気管支にできる 中心型(肺門型)肺がん 肺の奥のほうにできる 喀痰の中にがん細胞はあるものの、病巣の位置がわからない 気管支を覆う細胞の一部のみにがんがある 原発巣にとどまって転移がない リンパ節か肺を覆う胸膜・胸壁に転移 原発巣から近くのリンパ節に転移し、ほかの臓器には転移がない 肺のほかの部位やほかの臓器に転移 潜伏がん 0 期 Ⅰ期 Ⅱ期 Ⅲ期 Ⅳ期 末梢型(肺野型)肺がん ◎肺がんの病期 肺の中や近くのリンパ節にがんがとどまっている 肺の外に広がっている 限局型 進展型 ◎小細胞肺がんの病期