日常生活の
データサイエンス:
社会心理学の魅力
三浦麻子(関西学院大学) TWITTER: @ASARIN
3/26/2016
第八回ニコニコ学会βデータ研究会
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自己紹介
 社会心理学者
 コミュニケーションやインタラク
ションが新しい「何か」を生み出す
メカニズムを解明することに関心
 アウトプット:意思決定や創造性
 プロセス:感情表出や対人ネット
ワーク構造
 計量テキスト分析,社会調査...
社会心理学者の仕事
 観察,実験,調査などの方法を通じてデータを入手し,
ほとんどの場合,それを統計的検定ないしは統計モデ
リングによって検証し,認知モデルや社会現象などに
ついて,ある抽象的知識ないしは法則性を見つけ出す
 相手にするのは...
確率的な事象を繰り返し測定する
 サイコロを1200回振るとどの目が何回出たか?
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日常のふとした疑問を種に
人間心理の規則性を発見する
 日常のふとした疑問の多くは,それが確率的事象であるからこそ
生じるものである
 つまり,データを取って統計的に解析することで解決できる可能
性がある
 「心理学研究」とは,
まさしく...
社会心理学の基本的視座
 人間とは社会的動物である
 つまり,人間とは社会と相互作用する存在である
 人間心理(とその表象としての行動)は,個人属性
(性別など)や個人特性(性格など)だけで決まるの
ではなく,あるいはそれよりもむしろ,社...
社会心理学の基本的視座
 人間とは社会的動物である
 つまり,人間とは社会と相互作用する存在である
3/26/2016第八回ニコニコ学会βデータ研究会
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B = f ( P, E )
Behavior Person Environment...
古典的事例:権威への服従
 人間心理を変える「状況の力」
 人は,閉鎖的な環境下においては,
権威者の指示に容易に従い,時に想
像できないほど残虐な行為をするこ
とがある
 例えば,ホロコースト
 人間の本質は善?悪?
 どちらでもな...
社会的要因と社会的行動
 規範(norm)
 集団には,それぞれの集団ごとに「こうあるべきだ」という
行動様式や考え方がある(cf: 規則)
 多元的無知(「自分は「こうあるべきだ」とは思わないけど,たぶ
んみんな「こうあるべきだ」と思っ...
アッシュの実験(1956)
3/26/2016第八回ニコニコ学会βデータ研究会
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A B C
左の図に描かれた線分と同じ長さの線分を
右の図から一つ選びなさい
アッシュの実験(1956)
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12回試行を繰り返させた
が,同調率は37%にも達した
間違いようのないような単
純で簡単な課題で...
ミルグラムの実験(1963)
 「記憶に関する実験」と銘打って一般から参加者
を募集する
 教師役と生徒役のペアで実験をすると言われた参
加者はくじびきをし,必ず教師役が当たる
 生徒役に壁越しに記憶課題を出題し,誤答なら電
気ショックを...
ミルグラムの実験(1963)
 実験の内容を説明して「最大ボルト数までやめ
ない人はどの程度いると思うか」と聞くと,皆
「きっとごくわずかだろう」と予測した
 しかし実際は,参加者の65.0%(26/40)が最後まで
電気ショックを与え続け...
日常生活の
データサイエンス
人間行動に関するふとした
疑問に端を発して,特に状
況要因に着目してそのメカ
ニズムを想定し,データを
収集してそれを検証する
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私の事例:
Twitterの計量テキスト分析
(Miura, Komori, Hiraishi, & Matsumura, in preparation)
 東日本大震災という危機的出来事とそれに引き続いて晒され続け
ている原子力災害リスクに...
私の事例:
Twitterの計量テキスト分析
(Miura, Komori, Hiraishi, & Matsumura, in preparation)
 2011年3月11日~2012年4月16日(通算403日間)に投稿された日
本語によ...
私の事例:
Twitterの計量テキスト分析
(Miura, Komori, Hiraishi, & Matsumura, in preparation)
3/26/2016第八回ニコニコ学会βデータ研究会
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怒りの社会的共有は時間経過の自...
社会心理学の魅力
 人間は自分の周囲を取り巻く状況
に影響を受けやすい社会的動物で
あり,そうであるがゆえに人間心
理はほとんど気紛れにさえ見える
確率的な事象である
 しかしそこに「社会的であるこ
と」のメカニズムを見いださんと
して,デ...
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日常生活のデータサイエンス(20160326第八回ニコニコ学会βデータ研究会)

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社会心理学は優れてデータサイエンスであるという発表をしたつもり

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日常生活のデータサイエンス(20160326第八回ニコニコ学会βデータ研究会)

  1. 1. 日常生活の データサイエンス: 社会心理学の魅力 三浦麻子(関西学院大学) TWITTER: @ASARIN 3/26/2016 第八回ニコニコ学会βデータ研究会 1
  2. 2. 自己紹介  社会心理学者  コミュニケーションやインタラク ションが新しい「何か」を生み出す メカニズムを解明することに関心  アウトプット:意思決定や創造性  プロセス:感情表出や対人ネット ワーク構造  計量テキスト分析,社会調査,実験 室実験,参与観察 3/26/2016第八回ニコニコ学会βデータ研究会 2
  3. 3. 社会心理学者の仕事  観察,実験,調査などの方法を通じてデータを入手し, ほとんどの場合,それを統計的検定ないしは統計モデ リングによって検証し,認知モデルや社会現象などに ついて,ある抽象的知識ないしは法則性を見つけ出す  相手にするのは世の中に溢れる「確率的な事象」  versus 決定論的な事象  繰り返し測定・観測することで,現象の規則性を探る 3/26/2016第八回ニコニコ学会βデータ研究会 3
  4. 4. 確率的な事象を繰り返し測定する  サイコロを1200回振るとどの目が何回出たか? 3/26/2016第八回ニコニコ学会βデータ研究会 4 190 205 203 193 200 209 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220 1 2 3 4 5 6 回 数 サイコロの出目 どの目が出る確率も 「大体200回くらい」 という規則性が あるようだ
  5. 5. 日常のふとした疑問を種に 人間心理の規則性を発見する  日常のふとした疑問の多くは,それが確率的事象であるからこそ 生じるものである  つまり,データを取って統計的に解析することで解決できる可能 性がある  「心理学研究」とは, まさしくこうした行為  すなわち「データサイエンス!」 3/26/2016第八回ニコニコ学会βデータ研究会 5 マイクロソフト開発のAI 「Tay」はツイッターに登場後 わずか1日でヒトラー礼賛を… なんやって? ありえへん… なんでそんなことになるんや…
  6. 6. 社会心理学の基本的視座  人間とは社会的動物である  つまり,人間とは社会と相互作用する存在である  人間心理(とその表象としての行動)は,個人属性 (性別など)や個人特性(性格など)だけで決まるの ではなく,あるいはそれよりもむしろ,社会(他者や 周囲の事物,文化などの環境)からの影響によって決 まる部分も大きい 3/26/2016第八回ニコニコ学会βデータ研究会 6
  7. 7. 社会心理学の基本的視座  人間とは社会的動物である  つまり,人間とは社会と相互作用する存在である 3/26/2016第八回ニコニコ学会βデータ研究会 7 B = f ( P, E ) Behavior Person Environment by Kurt Levin(1936)
  8. 8. 古典的事例:権威への服従  人間心理を変える「状況の力」  人は,閉鎖的な環境下においては, 権威者の指示に容易に従い,時に想 像できないほど残虐な行為をするこ とがある  例えば,ホロコースト  人間の本質は善?悪?  どちらでもない.状況による 3/26/2016第八回ニコニコ学会βデータ研究会 8 なんやって? ありえへん… なんでそんなことするんや…
  9. 9. 社会的要因と社会的行動  規範(norm)  集団には,それぞれの集団ごとに「こうあるべきだ」という 行動様式や考え方がある(cf: 規則)  多元的無知(「自分は「こうあるべきだ」とは思わないけど,たぶ んみんな「こうあるべきだ」と思っているんだろうな,と多くの人が 思っている状況)で維持されている場合もある  同調(conformity)  集団規範がある(と思う)と,人はそれに沿って行動しよう としがち 3/26/2016第八回ニコニコ学会βデータ研究会 9
  10. 10. アッシュの実験(1956) 3/26/2016第八回ニコニコ学会βデータ研究会 10 A B C 左の図に描かれた線分と同じ長さの線分を 右の図から一つ選びなさい
  11. 11. アッシュの実験(1956) 3/26/2016第八回ニコニコ学会βデータ研究会 11 B B B B B … Asch(1956)では同一人物に 12回試行を繰り返させた が,同調率は37%にも達した 間違いようのないような単 純で簡単な課題でも,周囲 が誤答するとそれが「規 範」となり,正答であった としてもそれに反する答は 口に出しにくくなる傾向が ある より複雑な意思決定なら…
  12. 12. ミルグラムの実験(1963)  「記憶に関する実験」と銘打って一般から参加者 を募集する  教師役と生徒役のペアで実験をすると言われた参 加者はくじびきをし,必ず教師役が当たる  生徒役に壁越しに記憶課題を出題し,誤答なら電 気ショックを与える+数に応じて強さを上げるよ う指示される  生徒役はたびたび間違えるため,どんどん強い ショックを与えなければならなくなる(15ボルト ずつ30段階)  やめようとすると実験実施者に「やってくれ」と 言われる 3/26/2016第八回ニコニコ学会βデータ研究会 12 実験実施者 教師役 生徒役
  13. 13. ミルグラムの実験(1963)  実験の内容を説明して「最大ボルト数までやめ ない人はどの程度いると思うか」と聞くと,皆 「きっとごくわずかだろう」と予測した  しかし実際は,参加者の65.0%(26/40)が最後まで 電気ショックを与え続けた  多くの人は,権威をもった立場(と思われる) の人から命令されると,行為の内容に関係な く,思いのほかそれに服従してしまう  道徳性がある程度は発達していて,いくら規範 があってもそれなりには抵抗できるはずでもこ うなんだから,まっさらなAIはひとたまりも… 3/26/2016第八回ニコニコ学会βデータ研究会 13
  14. 14. 日常生活の データサイエンス 人間行動に関するふとした 疑問に端を発して,特に状 況要因に着目してそのメカ ニズムを想定し,データを 収集してそれを検証する 3/26/2016第八回ニコニコ学会βデータ研究会 14
  15. 15. 私の事例: Twitterの計量テキスト分析 (Miura, Komori, Hiraishi, & Matsumura, in preparation)  東日本大震災という危機的出来事とそれに引き続いて晒され続け ている原子力災害リスクに関する日本居住者の情動状態を長期的 かつ探索的に検討する  原発事故災害に関連するツイートを対象に,情動の社会的共有 (Social Sharing of Emotion)の長期的変化と原発事故との近接性 による差異を検討する 3/26/2016第八回ニコニコ学会βデータ研究会 15 なんやって? ありえへん… なんでこんなことになったんや… こんなとき,人間はどうなるんや…
  16. 16. 私の事例: Twitterの計量テキスト分析 (Miura, Komori, Hiraishi, & Matsumura, in preparation)  2011年3月11日~2012年4月16日(通算403日間)に投稿された日 本語による全ツイートから,原子力災害関連語を含むものを抽出  公式/非公式リツイート,リプライ,居住地域を都道府県レベル で特定できないものを除外(全10,471,634件)  怒り/不安語の出現比率を時系列×原発事故との距離で比較 3/26/2016第八回ニコニコ学会βデータ研究会 16
  17. 17. 私の事例: Twitterの計量テキスト分析 (Miura, Komori, Hiraishi, & Matsumura, in preparation) 3/26/2016第八回ニコニコ学会βデータ研究会 17 怒りの社会的共有は時間経過の自然減衰の 影響を受けにくく,この傾向は福島第一原 発からより遠い地域において顕著 怒りは「欲求/接近」動機と関連する情動 →リスクに対峙しようとする意図は減衰し ていない 不安の社会的共有は,原発の立地する地域 でより多く行われていたが,時間経過とと もに減少傾向が観察され,福島第一原発に より近い地域においてその傾向が顕著 不安は「嫌悪/回避」動機と関連する情動 →極限的な状況からの緩やかな回復が果た されつつある
  18. 18. 社会心理学の魅力  人間は自分の周囲を取り巻く状況 に影響を受けやすい社会的動物で あり,そうであるがゆえに人間心 理はほとんど気紛れにさえ見える 確率的な事象である  しかしそこに「社会的であるこ と」のメカニズムを見いださんと して,データを携えてそれを追究 するのが,社会心理学という学問 の面白さであり,醍醐味である 3/26/2016第八回ニコニコ学会βデータ研究会 18 Thank you for your attention.

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