早稲田大学 高度データ関連人材育成コンソーシアム D-DATa ブロックチェーン エンジニアリング 基礎編 第15回 2018/3/11

1. 前回からの質問
● Bitcoin では電子署名を何に対して行うのか？
○ 消費しようとするトランザクション出力 (UTXO) の指定、送金先のアドレスに対して署名します。ま
た実践編の署名を作成する回で扱います。厳密な回答はここにあります
https://bitcoin.stackexchange.com/questions/3374/how-to-redeem-a-basic-tx
● マイニングの作業で行うのは、電子署名の検証ではないのか？
○ すみません、説明の仕方が偏っていました。マイニング作業の冒頭で、電子署名の検証を行いま
す。その上で、検証に合格したトランザクションだけを含めた仮ブロックを作成し、それに対して特定
の条件を満たすハッシュ値を探すという作業をします。 15-2 で言及します
● コンパイラの仕組みがどこで使われていますか
○ 15-2 で言及します
1

2. 第15回
計算機科学からブロックチェーンへ
1. ソフトウェアと知的財産権
2. ブロックチェーンと計算機科学
3. MinChain の紹介
2

3. 15-1ソフトウェアと知的財産権
3

4. オープン ソース
ソース コードが開示されているソフトウェア。以下のようなメリットがある
● 誰もがソース コードを監査できる
● 機能追加、改善、修正などを広く受け付けられる
● 派生ソフトウェアが作りやすくなり、エコ システムの拡大に寄与する
反対はクローズド ソース。以下のケースがある
● 第三者のコードが入っていて法的に開示できない
● 著作権、特許権などの知的財産権を保護したい
● 機密情報を含んでいる
4

5. フリーソフトウェア
ソフトウェアの利用や再頒布に関する権利が不特定多数に許諾されているソフトウェア
のこと。ライセンスによって許諾範囲はさまざま
● パーミッシブ: BSD License, MIT License, Apache License
著作者の表示などをすることで、改変した派生物の配布や、再頒布を許可するライ
センスなど
● コピーレフト: GNU GPL (General Public License), LGPL (Lesser GPL)
無制限での著作物の利用を強制するライセンス。派生物に対して同様の許諾条件
が継承されることを要求する点で、非常に強いライセンス
反対はプロプライエタリ ソフトウェア
5

6. MIT ライセンス
Bitcoin Core などが利用する MIT ライセンスは以下のような内容を記載している
可能なこと
● 商用利用
● 再頒布
● 改変
● 私的利用
制約
● 法的責任
● 動作保証
条件
● 著作権表示
● ライセンス表示
参考: https://tldrlegal.com/license/mit-license
6

7. GPL / LGPL
Linux や Ethereum などが利用する GPL は以下のような内容を記載している
可能なこと
● 商用利用
● 再頒布
● 改変
制約
● 法的責任
● 動作保証
条件
● 著作権表示
● ライセンス表示
● コード開示
● 再適用
参考: https://tldrlegal.com/license/gnu-general-public-license-v3-(gpl-3)
7

8. パブリック ドメイン
ある著作物について、いかなる知的財産権によっても保護されていない状態をパブリッ
ク ドメイン (公有) という
著作者が、著作権を放棄したことを宣言した著作物や、死後 50 年を経過した著作物が
パブリック ドメインとなる
その他、法律や判例などには著作権が発生しない
8

9. 暗号通貨とオープンソース
暗号通貨を稼働させるクライアントは、誰しもがソース コードを確認できなければ信頼で
きないことから、オープンソースであることが事実上必須となる
bitFlyer で取り扱っている暗号通貨の主要クライアントの例
● Bitcoin : https://github.com/bitcoin/bitcoin
● Bitcoin Cash : https://github.com/Bitcoin-ABC/bitcoin-abc
● Ethereum : https://github.com/ethereum/go-ethereum
● Ethereum Classic : https://github.com/ethereumproject/go-ethereum
● Litecoin : https://github.com/litecoin-project/litecoin
● Monacoin : https://github.com/monacoinproject/monacoin
● Lisk : https://github.com/LiskHQ/lisk
9

10. 特許権
特許法で認められた知的財産権の一つ。方式主義をとる。発明を促進させる意図で、発
明に至るまでの投資効果を保護するための制度
発明 : 「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう」
(特許法 第2条)
特許は排他的利用権を最長 20 年間にわたって保護する。特許権者が自ら実施しない
で侵害を訴える場合、パテント トロールの問題となりうる
同業種の複数主体が類似分野の特許権を持ちうる場合、クロス ライセンスによって互
いに実施を可能とするため、パテント プールと呼ばれるコンソーシアムを設立することが
ある
10

11. (余談) ブロックチェーンと法律
● 暗号通貨は、法律上の通貨としてみなせるか
→ 通貨ではなく、支払手段としてみなされる (資金決済法 第2条5項関連)
● 暗号通貨は物か
→ 民85条の有体物にならない (東京地判平27.8.5, 平26ワ33320)
● ブロックチェーンにおける記録は、法律上の記録とみなせるか
○ 電子文書法や、行政手続きの電子署名の活用、住基カードやマイナンバー カードによって、文書
自体の完全性は担保される。しかし公的認証局の存在が前提。ブロックチェーンは？
● スマート コントラクトが一般に利用されるようになったとして、コントラクトの記載内
容にバグがあった場合はどのように処理するか
○ 錯誤無効 (民95)？ 瑕疵？
(参考) 技術と法律 / Smips 技術と法律プロジェクト https://www.amazon.co.jp/dp/4844398091
11

12. 15-2ブロックチェーンと計算機科学
12

13. 計算機科学の諸分野
● 情報数学 (離散数学、暗号学)
● 情報理論 (符号理論)
● 情報論理 (命題論理、述語論理)
● 計算機構成論
● アルゴリズムとデータ構造
● オペレーティング システム
● コンピュータ ネットワーク
● 形式言語理論
● データベース
● コンピュータ グラフィックス
● 情報視覚化
● ユーザ インタフェース
● 自然言語処理
● 知識処理 / 機械学習
● 生物情報科学
● 量子コンピュータ
13

14. ブロックチェーンと計算機科学 (再掲)
(特定のブロックチェーンを
モデルとしているわけではない)
スマート コントラクト
(コンパイラ, 静的解析)
暗号処理
(電子署名, 検証)
トランザクション実行
(排他制御, メモリ処理)
ユーザ インタフェース
ブロックチェーン データ
(RDB, KVS)
マイニング
(ASIC, 回路技術)
コンセンサス アルゴリズム
(通信複雑性理論)
ネットワーク
(P2P, Web 技術)
ウォレット, ストレージ
(IO, ファイル システム)
14

15. 15
ブロックチェーン データ (再掲)
ハッシュ
Block
500002
Block
500001
前のブロック
00000000000000000024fb37…
(ブロック 500000 のダイジェスト)
日時
2017/12/18 18:38:05
トランザクション ID
● 3b584b56fe4539e0…
● 2c9cb45a2f4365f5…
● e7e6117cc5a0d26e…
● …
前のブロック
0000000000000000005c9959…
(ブロック 500001 のダイジェスト)
日時
2017/12/18 18:41:04
トランザクション ID
● 28bbe7d6116fa1a6…
● cbc7c1ceaae25af2…
● e7392c0169fdf5a1…
● …
中身
参考: https://chainflyer.bitflyer.jp/v1/block/height/500001
入力
● cbff7804… の 1 番の出力
に対する電子署名
出力
● 1CF7FStz… 宛に
14.19243084 BTC
● 396gSdz5… 宛に
0.24339573 BTC

16. 実例との比較
Block
500001
前のブロック
00000000000000000024fb37…
(ブロック 500000 のダイジェスト)
日時
2017/12/18 18:38:05
トランザクション ID
● 3b584b56fe4539e0…
● 2c9cb45a2f4365f5…
● e7e6117cc5a0d26e…
● …
中身
16

17. ブロックチェーン データ
Block
500001
前のブロック
00000000000000000024fb37…
(ブロック 500000 のダイジェスト)
日時
2017/12/18 18:38:05
トランザクション ID
● 3b584b56fe4539e0…
● 2c9cb45a2f4365f5…
● e7e6117cc5a0d26e…
● …
中身
ハッシュ値 データ
000000000003ba27... <Block data>
bb28a1a5b3a02e76... <Transaction data>
fbde5d03b027d2b9... <Transaction data>
8131ffb0a2c945ec... <Transaction data>
... ...
ブロックチェーン ストレージ
KVS (Key-Value Store) と呼び、データを特定のキーから呼び出せ
るようなデータベースとして実装する
17

18. ブロックチェーンと計算機科学 (再掲)
(特定のブロックチェーンを
モデルとしているわけではない)
スマート コントラクト
(コンパイラ, 静的解析)
暗号処理
(電子署名, 検証)
トランザクション実行
(排他制御, メモリ処理)
ユーザ インタフェース
ブロックチェーン データ
(RDB, KVS)
マイニング
(ASIC, 回路技術)
コンセンサス アルゴリズム
(通信複雑性理論)
ネットワーク
(P2P, Web 技術)
ウォレット, ストレージ
(IO, ファイル システム)
18

19. 逐次的なトランザクションの実行
Block
500001
前のブロック
00000000000000000024fb37…
(ブロック 500000 のダイジェスト)
日時
2017/12/18 18:38:05
トランザクション ID
● 3b584b56fe4539e0…
● 2c9cb45a2f4365f5…
● e7e6117cc5a0d26e…
● …
マイニング報酬として
アドレスが 34qkc… な人に
16.13 BTC をお送りします。
トランザクション 3b584b...
Nonce
トランザクション cc85… で受け取った資金からア
ドレスが 1A79C… な人に
0.01 BTC をお送りします。
トランザクション 2c9cb4...
署名 1AS9F...
トランザクション d499… で受け取った資金からア
ドレスが 1B4SQ… な人に
6.38 BTC をお送りします。
トランザクション e7e611...
全トランザク
ションは送金が
競合状態を起
こさないように
逐次的に実行
される
19

20. ブロックチェーンと計算機科学 (再掲)
(特定のブロックチェーンを
モデルとしているわけではない)
スマート コントラクト
(コンパイラ, 静的解析)
暗号処理
(電子署名, 検証)
トランザクション実行
(排他制御, メモリ処理)
ユーザ インタフェース
ブロックチェーン データ
(RDB, KVS)
マイニング
(ASIC, 回路技術)
コンセンサス アルゴリズム
(通信複雑性理論)
ネットワーク
(P2P, Web 技術)
ウォレット, ストレージ
(IO, ファイル システム)
20

21. 暗号学的ハッシュ関数 (再掲)
ハッシュ関数は任意のメッセージからダイジェストを生成する
暗号学的ハッシュ関数は暗号用途で使うため次のような性質が求められる
● ダイジェストから元のメッセージを復元できてはいけない (原像計算困難性)
● あるメッセージから、同一のダイジェストを持つ別のメッセージを探すのが困難でな
ければいけない (弱衝突耐性)
● ダイジェストが同一となる、異なるメッセージの組を探すのが困難でなければいけな
い (強衝突耐性)
“ABC” b5d4045c…
SHA-256
21

22. 暗号学的ハッシュ関数
参考
● オンライン SHA-256 計算 http://www.xorbin.com/tools/sha256-hash-calculator
● Google 社による SHA-1 の衝突発見の発表 https://shattered.io/
“ABC” b5d4045c…
SHA-256
“ABD” 69f0fb8c…
SHA-256
入力のわずかな変化が
出力に大きく影響
逆関数の計算は (事実上) 不可能
22

23. 取引内容のブロックへの確定
ba71e921497a45cb09b98a0f…
ハッシュ
前のブロック
000000000003ba27aa200b1c…
日時
2010/12/29 12:06:44
トランザクション ID
● …
前のブロック
00000000000080b66c911bd5…
日時
2010/12/29 12:17:31
前のブロック
000000000003ba27aa200b1c…
日時
2010/12/29 12:34:56
トランザクション ID
● …
ハ
ッシュ
齟齬が生じる
ブロック 100001 ブロック 100002
改竄後のブロックでは、ダイジェストが変化してしまう。
ハッシュ関数の性質により、ダイジェストを変えずに内容
を変更するのは事実上、不可能。
ブロック内容は、ダイジェストに束縛されている。
23

24. Bitcoin のトランザクション
Bitcoin のトランザクションは、手形の裏書き譲渡と似ている
● 元資となる前のトランザクションの指定 (手形)
● 相手の公開鍵から計算した支払先のアドレスと支払額 (受取人)
● BTC 所持者 (= 前のトランザクションの受取人) による秘密鍵を用いて署名
(裏書きの署名)
トランザクション 1234 で受け取った資金からアド
レスが 1ABC… な人に
100 BTC をお送りします。 所持人の署名
24

25. 1. 受取人の公開鍵のハッシュ値がアドレスとして使われる
2. 送金者の秘密鍵でトランザクションに電子署名する
Bitcoin のトランザクション
トランザクション 13d2… で受け取った資金からア
ドレスが 1DEF… な人に
100 BTC をお送りします。
トランザクション 7ff2… で受け取った資金からア
ドレスが 1GHJ… な人に
40 BTC をお送りします。 署名 1DEF...
トランザクション 7ff2…
トランザクション a89b…
署名 1ABC...
25

26. ブロックチェーンと計算機科学 (再掲)
(特定のブロックチェーンを
モデルとしているわけではない)
スマート コントラクト
(コンパイラ, 静的解析)
暗号処理
(電子署名, 検証)
トランザクション実行
(排他制御, メモリ処理)
ユーザ インタフェース
ブロックチェーン データ
(RDB, KVS)
マイニング
(ASIC, 回路技術)
コンセンサス アルゴリズム
(通信複雑性理論)
ネットワーク
(P2P, Web 技術)
ウォレット, ストレージ
(IO, ファイル システム)
26

27. P2P による配布 (再掲)
パブリック ブロックチェーン (後述) では、非中央
集権化を目指すことから、データを保存するた
めの中央サーバを持たない代わり、ピアツーピ
ア (P2P) 通信によって台帳データを近隣ノード
(ネットワークに参加する端末) との間で交換す
る。
新たにネットワークに参加することに
なったノードは、近隣ノードからブロッ
クチェーン データをすべてダウン
ロードし、そのデータを検証し、改竄
の有無を確認する。
27

28. ブロックチェーンと計算機科学 (再掲)
(特定のブロックチェーンを
モデルとしているわけではない)
スマート コントラクト
(コンパイラ, 静的解析)
暗号処理
(電子署名, 検証)
トランザクション実行
(排他制御, メモリ処理)
ユーザ インタフェース
ブロックチェーン データ
(RDB, KVS)
マイニング
(ASIC, 回路技術)
コンセンサス アルゴリズム
(通信複雑性理論)
ネットワーク
(P2P, Web 技術)
ウォレット, ストレージ
(IO, ファイル システム)
28

29. ブロック作成の合意形成問題
新たなブロック作成が誰でも簡単にできると次の問題が生じる
● 改竄ブロックに後続してさらにブロックを作成することで、全体として一貫するチェー
ンが作成できてしまう
● 同一のブロックに続くブロックが同時に複数作成された場合、どれを正とするか決
定できない
● 特定トランザクションをブロックに含めないよう弾くことができてしまう
多数決のような仕組み、および運用ルールが必要
29

30. 単純な多数決の問題点
邪悪なネットワーク
Sybil 攻撃
ネットワーク全体で投票するシ
ステムが作成できたとしても、悪
意のある参加者がいた場合に
は、投票数を水増しできてしまう
ビザンチン将軍問題
ルールに従っているように見せ
かけて、ネットワークを混乱させ
ることができてしまう
30

31. 合意形成問題の (消極的) 解法
次の 2 点に尽きる
● ブロックを作るのを一定程度まで難しくし、代わりに報酬を出した
● もっとも長いチェーンだけを有効とみなすルールにした
(厳密には、difficulty の合計値がもっとも大きいチェーンを正とする)
Proof of Work (PoW) とよばれるコンセンサス アルゴリズムの仕組み
31

32. ブロックチェーンと計算機科学 (再掲)
(特定のブロックチェーンを
モデルとしているわけではない)
スマート コントラクト
(コンパイラ, 静的解析)
暗号処理
(電子署名, 検証)
トランザクション実行
(排他制御, メモリ処理)
ユーザ インタフェース
ブロックチェーン データ
(RDB, KVS)
マイニング
(ASIC, 回路技術)
コンセンサス アルゴリズム
(通信複雑性理論)
ネットワーク
(P2P, Web 技術)
ウォレット, ストレージ
(IO, ファイル システム)
32

33. ブロック内に Nonce と呼ばれる自由領域を用意し、ハッシュ値を調整できるようにした上で、ブロック
のダイジェストは先頭に0 が一定数続かなければいけないというルールを課した。ネットワークの計
算力に応じて、この数を調整することにした。(正確には difficulty パラメータによってダイジェスト値の最大値を指定)
ブロック作成者 (マイナー) は、上記のルールを満たすNonce を探さなければいけない。代わりに、
報酬をもらうことができる
専用ハードウェアにより現在は全世界で 1 秒間に 600 京回 (6×1018
) のダイジェスト計算が行われている。10 分に一度の確率にす
るには 36 垓回に 1 回だけ成功するように調整しなければいけない。これは先頭に 0 が 18 個続くのと同じ難易度
Nonce
1001
1002
1003
1004
1005
ブロック ダイジェスト
5b280ff64934df39…
4b33b9d69b6c53f1…
9fc09514d74d5d78…
f181b5ef17bdeaf2…
000000063f0d8704…
マイニング
前ブロック …
日時 2009/1/3 …
Nonce ?????
トランザクション ID
… OK
前ブロック …
日時 2009/1/3 …
Nonce 1005
トランザクション ID
…
33

34. ブロックチェーンと計算機科学 (再掲)
(特定のブロックチェーンを
モデルとしているわけではない)
スマート コントラクト
(コンパイラ, 静的解析)
暗号処理
(電子署名, 検証)
トランザクション実行
(排他制御, メモリ処理)
ユーザ インタフェース
ブロックチェーン データ
(RDB, KVS)
マイニング
(ASIC, 回路技術)
コンセンサス アルゴリズム
(通信複雑性理論)
ネットワーク
(P2P, Web 技術)
ウォレット, ストレージ
(IO, ファイル システム)
34

35. スマート コントラクトの発明
「スマート コントラクトは、契約条件を実行するための計算的な取引規約です。スマート コントラクトを設計する
にあたっての一般的な目標は、多くの契約に共通する事項（支払条件、抵当権、機密性、さらには強制執行な
ど）を遵守させ、悪意のある濫用や偶発的な例外を最小限に抑えつつ、信頼された仲介者の必要性を最小限に
抑えることです。関連する経済目標には、詐欺による経済損失の抑制、仲裁および執行にかかる費用、および
その他の取引コストの削減が含まれます。」 (参考訳)
“A smart contract is a computerized transaction protocol that executes the terms of a contract. The
general objectives of smart contract design are to satisfy common contractual conditions (such as
payment terms, liens, confidentiality, and even enforcement), minimize exceptions both malicious and
accidental, and minimize the need for trusted intermediaries. Related economic goals include lowering
fraud loss, arbitration and enforcement costs, and other transaction costs.”
– Smart Contracts, Nick Szabo, 1994.
http://web.archive.org/web/20160115074927/http://szabo.best.vwh.net/smart.contracts.html
35

36. Ethereum
Ethereum 仮想マシン (EVM) と呼ばれるスタック マシンが存在し、コントラクト アドレス
へのメッセージをトリガに、コントラクト コードを実行する。チューリング完全な計算能力
を持つ。
● オンラインでのスマートコントラクト作成
https://remix.ethereum.org/
● Ethereum のスマートコントラクト言語 Solidity のコンパイラ
https://github.com/ethereum/solidity/tree/develop/libsolidity
● Ethereum の仮想マシン (EVM) の JIT コンパイラ
https://github.com/ethereum/evmjit/tree/develop/libevmjit
36

37. 15-3MinChain の紹介
37

38. MinChain の紹介
演習のために作成した簡単なブロックチェーンの実装。Bitcoin に類似した最低限の機
能だけを備えたオープン ソース プロジェクト (MIT ライセンス)
https://github.com/yutopio/minchain
● 最低限のデータ構造 : トランザクション、ブロック
● 簡単なネットワーク接続クラス
● ブロック実行をして資産移動を管理
● マイニングをおこなう
たった 2,000 行！ (Bitcoind はだいたい C++ で 8 万行くらい)
38

39. MinChain の全体構成
KeyGenerator
Config
ツール群
Executor
Mining
GenesisInventoryManagerConnectionManager
解釈前のブロック保持
Memory Pool 保持
InventoryMessage 処理
Executor ブロック通知
Listener 新規接続待ち受け
Peer 一覧を保持
特定ピアへの送信
ブロードキャスト
Message 受信コールバック
実行済みブロック保持
UTXO の追跡
未実行ブロック一覧保持
ブロック適用/ 取消
Runner
各モジュールの
初期化 / 終了
Program
エントリ ポイント
コマンド振り分け
39

40. 第15回 まとめ
1. ソフトウェアと知的財産権
● オープン ソース, フリー ソフトウェア (GPL, MIT, Public Domain)
● 暗号通貨クライアントのソース コード
● ブロックチェーンの法律上の可能性
2. ブロックチェーンと計算機科学
● ブロックチェーン データ (KVS), トランザクション逐次実行
● ハッシュ関数と暗号処理
● ネットワーク上での共有および合意形成問題、マイニング
● スマート コントラクトのコンパイラ
3. MinChain の紹介
40

41. 全体まとめ
1. ブロックチェーンと計算機科学/ ブール代数 / 情報理論
2. 計算機の構成 / プログラム実行の仕組み
3. アルゴリズムとデータ構造- 計算量 / 配列, 連結リスト / ハッシュ テーブル / スタック, キュー
4. アルゴリズムとデータ構造- 整列アルゴリズム/ 木 / 探索アルゴリズム
5. グラフ / コンピュータ ネットワーク基礎/ TCP/IP
6. DNS / ソケット通信 / その他
7. OS の基本 / 割り込みとシステムコール / メモリ管理
8. プロセスとスレッド/ 入出力 / シェル
9. 並列処理と排他制御
10. 形式言語とは / 字句解析
11. 文脈自由文法 / 構文解析 / 言語解析プログラミング
12. 関数型言語 / 型理論
13. 型推論 / コード出力と最適化
14. 暗号数理 / RSA
15. ソフトウェアと知的財産権/ ブロックチェーンと計算機科学/ MinChain の紹介
41