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交通ゲーム理論入門
- 1. 2022.3.3 織田 拓磨 (Takuma 0da) 株式会社ディー・エヌ・エー ＋ 株式会社 Mobility Technologies 交通ゲーム理論入門
- 3. 3 01 配分問題
- 4. 4 Sheffi, Y. (1985). Urban transportation networks (Vol. 6). Prentice-Hall, Englewood Cliffs, NJ. 著者が無償公開：https://sheffi.mit.edu/book/urban-transportation-networks 参考⽂献
- 5. 5 (a) ルート選択 ○ 各エージェントはOを出発しDになるべく早く着きたい ○ どのルートを選ぶべきか？到着時間は？ ○ プレイヤー数（交通量）: q = x1 + x2 (b) q < qʼ だと全員１を選ぶ (c) q > qʼ だと１と２の移動時間が同じになるように配分される 道路ゲーム
- 6. 6 l 仮定： 1. OD間の交通需要は⼀定 2. 利⽤者は利⽤可能な経路について完全な情報を持っている 3. 利⽤者は⽬的地までの所要時間を最⼩化するように⾏動する l 均衡状態： ○ どの利⽤者も⾃分⼀⼈だけ経路を変えることで所要時間を短縮できない状態 ○ Wardropの第⼀原則：利⽤される経路の所要時間は皆等しく、利⽤されないどの経路よりも⼩さい ○ 利⽤者均衡配分（UE; User Equilibrium assignment）と呼ばれる Wardropの第⼀原則
- 7. 7 l 全ての有限ゲーム（多くの無限ゲーム）において存在が証明されている l ⼆⼈ゼロサムゲームにおいては、ナッシュ均衡戦略をとるプレイヤーは絶対に平均的に負けない ことが保証されている l ナッシュ均衡戦略を⾒つける効率的なアルゴリズムは特定のゲームにしか証明されておらず、基 本的にはプレイヤーの⼈数が多いほど計算するのが難しい l CFR: Counterfactual Regret minimization l Pluribus: 6⼈プレーポーカーAI ゲーム理論におけるナッシュ均衡
- 8. 8 l 交通ネットワーク利⽤者の移動パターン（主に均衡状態）を推定 l ⼀般的なゲームとは異なり、プレイヤー数が⾮常に多いことから配分を連続量として扱う l ⼟⽊⼯学における研究分野で膨⼤な研究蓄積があり、複雑なネットワークにも分析が及んでいる l 道路交通だけでなく交通モードの選択にも容易に拡張できる ○ 所要時間(時間費⽤)の代わりに⼀般化費⽤を⽤いる ○ 鉄道の場合：駅までのアクセス時間、待ち時間、⾞内混雑の不快感、寒い暑いなど 交通ネットワークにおける交通量配分理論
- 9. 9 l ⽬的：交通施策の効果を予測する ○ 1st stage: 交通シナリオ（インフラ、規制、需要など）を数理モデルとして表現し、実現する交通量を 予測する ○ 2nd stage: 実現した交通量をもとに興味ある指標（移動時間・コスト、交通サービス収⼊、CO2排出量、 アクセシビリティなど）を評価する l アプローチ：交通システムの均衡分析 ○ 例）渋滞緩和のためある道路の拡幅⼯事を⾏なった。初めのうちは渋滞は解消したように思えたが、 次第に利⽤者が増えていき再度渋滞が多発するようになった。 => システム（ネットワーク）全体における均衡分析の重要性 交通ネットワークにおける交通量配分理論
- 10. 10 l 交通ネットワークの表現 ○ ネットワーク：ノードとリンクの集合 ○ ODセントロイド：フローが発⽣/集中するノード（⾚ => ⻘） l リンクパフォーマンス関数 ○ BPR関数：リンクの流量と旅⾏時間の関係式 交通ネットワークにおける交通量配分理論 現実のOD分布ではありません
- 11. 11 l 利⽤者均衡配分（UE; User Equilibrium assignment） ○ どの利⽤者も⾃分⼀⼈だけ経路を変えることで所要時間を短縮できない状態 l システム最適化配分（SO; System Optimum assignment） ○ 道路ネットワーク上の総旅⾏時間が最⼩ l 確率的利⽤者均衡配分（SUE; Stochastic User Equilibrium assignment） ○ どの利⽤者も⾃分⼀⼈だけ経路を変えることで所要時間を短縮できないと信じている状態 均衡の概念
- 12. 12 02 利用者均衡
- 13. l ゴール：均衡状態における各リンクの流量（リンクaの流量: xa）を求めたい l 所与 ○ リンクパフォーマンス関数: t(x) ○ ODトリップレート: qrs ○ ネットワーク l Wardropの原理 13 定式化 流量は⾮負 流量保存 １ ２ ３ ４ １ ２ ３ ４ f14 1 f14 2 流量がゼロでないODペアrs間の経路kの所要 時間crs kは最短所要時間 ursと⼀致 利⽤される経路の所要時間は皆等しく、 利⽤されないどの経路よりも⼩さい =
- 14. 14 定式化 流量xの凸関数 線形制約 ⾮負制約 subject to ⼗分性の証明： ラグランジアンを使ってKKT条件を求める => Wardropの原理！ 各リンクの流量 どうやって解くか？ => 最適化問題へ変換する
- 15. 15 アプローチ： 初期解からx0から降下⽅向dとステップサイズαを探 索し、反復的に解の更新を⾏う xn+1 = xn + αd 解法 流量xの凸関数 線形制約 ⾮負制約 subject to 各リンクの流量 凸計画問題 変数の数が膨⼤でニュートン法では扱えない 例：深さ100程度でも１つのODに対してパス数が10^50くらい => Frank-Wolfe法
- 16. 16 l 降下⽅向d = y ‒ xnの探索 ○ ⽬的関数zをxn周りで線形近似した関数zLを最⼩化する = LP ○ 補助問題 Frank-Wolfe (Convex Combinations) method Þ 各々が最短経路で移動する Þ 最短経路に従って、r -> sにqrsを流すだけ 総旅⾏時間の最⼩化 リンク旅⾏時間が流量の関数ではない（相互 作⽤がない）
- 17. 17 Frank-Wolfe (Convex Combinations) method 降下⽅向dの線分上であれば線形制約を満たす => ⽬的関数を最⼩化するステップサイズαを決定 （１変数なので２分法などで⾼速に探索）
- 19. 19 社会的余剰を最⼤化したい ○ ネットワーク上の総旅⾏時間が最⼩（⽬的関数が変わるだけ） ○ KKT条件 => パフォーマンス関数を読み替えたときのWardrop均衡となっている！ SO subject to 追加項の分を混雑課⾦することで UEをSOに⼀致させられる 他利⽤者の旅⾏時間増分
- 21. 21 計算例 UE SO
- 22. 22 l 変動需要 ○ 別の交通⼿段利⽤、出発時間の変更など、モデル化しているネットワークからの離脱を考慮する l 公共交通ネットワーク ○ 公共交通⼿段の混雑による影響を考慮したい l リンク間相互作⽤ ○ あるリンクの交通量が別のリンクの旅⾏時間に依存する 拡張
- 23. 23 03 タクシー市場均衡
- 24. 24 タクシー探客のナッシュ均衡戦略を求めたい ○ ナッシュ均衡 ： 個々の乗務員がこれ以上空⾞時間を短縮できないような状態 ○ モチベーション：お客さま探索ナビ（Hermes） ○ 全体最適（=SO）ではないが、乗務員にHermes案内経路を離脱するインセンティブが働かないため、 現状の枠組みでは最善 流しタクシー市場
- 25. 25 仮定 ○ 流し以外の需要は考えない ○ 利⽤客側の⾏動変化(需要変動)は考えない ○ 道路混雑(渋滞)による影響は考えない ○ 各⾞両は乗⾞までの空⾞時間を最⼩化するように⾏動する ○ 乗⾞発⽣確率は⾞両数に依存して決まる（⾞両数が増えるに従って減少する） 流しタクシー市場
- 26. 最短経路問題を⼀般化すれば、探客問題は実は最短経路問題になる l 配分問題： ○ ある⼀つの状態の吸収確率が１、その他は０ ○ リンク旅⾏時間が他のエージェントの戦略に依存 l 探客問題： ○ 全ての状態が需要供給に基づいた吸収確率（=乗⾞確率）を持つ ○ リンク吸収確率がのエージェントの戦略に依存 配分問題の解法に従えば、ナッシュ均衡およびその戦略を算出できそう 26 (吸収)マルコフ決定過程 1 − 𝜌! 𝑠" = 𝑠 𝑠"#$! = 𝑠% 𝜌! 𝑎" = 𝑎 Goal State 吸収確率： ⾏動aをとった場合にゴールに 辿り着く確率
- 27. 27 Frank-Wolfe (Convex Combinations) method 再訪 1. 乗⾞確率を更新 2. 最適⽅策を算出 3. ステップサイズ は固定1 / n 4. ⽅策を更新 5. 現在の⽅策に基づき流量 (visitation frequency)を算出
- 28. 28 Value Iteration Policy Propagation Model Update Policy π Flow µ Pickup Probability ρ © Zenrin © Mapbox © Zenrin © Mapbox