With/ Afterコロナ時代の日本における地域再生とモビリティ -官民連携によるワーケーション誘致と地域活性化の提案ー
- 1. With/ Afterコロナ時代の
日本における地域再生とモビリティ
ー 官民連携によるワーケーション誘致と地域活性化の提案 ー
最終更新日:2020年7月4日
熱海エリア
(冬季ワーケーション)
熱海駅
シェアサイクルバス
1カ月利用
シェアサイクルコムス
1カ月利用
軽井沢エリア
(夏季ワーケーション)
サードプレイス
サードプレイス
オフィス
年1往復
カルチャー/
景観の集積地
コンパクトシティ
(居住・食事・趣味)
徒歩
EC
(商品の移動)
居住
サードプレイス
年1往復
地方との会議
リモート化
✖
随時利用
New City駅
(郊外)
乗継駅鉄道
New Town駅
(郊外)
出典:トヨタ自動車
サービスの移動
(動く診療所、動く床屋、
動くレストラン等)
- 4. 4
要旨:官民連携によるワーケーション誘致と地域活性化の提案 1/3
With/Afterコロナ時代の場所と移動のニーズ変化:
◼ 郊外における居住需要及び地方におけるワーケーション需要が増加する
◼ 居住・滞在地を発着地とした自由な移動の需要が増加する(移動目的・経路・手段が多様化)
出社形態
オフィスの立地 居住地の需要
都心 オフィス無し
都心
(オフィス近郊)
郊外
(通勤圏内)
地方
(通勤圏外)
毎日出社 〇 〇
定期的に出社 〇 〇
フレキシブル 〇 〇 〇
完全リモート 〇 〇
② 地方における
ワーケーション需要増加
① 郊外における
居住需要増加
With/Afterコロナ時代の居住地需要の変化
短期移住
With/Afterコロナ時代の移動需要の変化
リモート化が進展
リモート化の加速により
郊外での居住需要及び
ワーケーション需要が増加。
移動手段
利用者
居住・滞在地
主な移動需要の変化
都心 郊外 地方
住民
△
(減)
◎
(増)
〇
◼自宅での商品・サービス受取り需要増加
◼移動目的・経路・手段が多様化
旅行客
(短期移住者含む)
- - 〇
◼日常生活に必要な商品・サービスの受取り需要増加
◼日常生活のための情報・移動需要増加
◼ 必要不可欠な移動(通勤等)が減少し
居住・滞在地を発着点とした
モノ・サービス・人の移動需要が増加。
◼ ビジネス旅行が減少しワーケーション
需要が増加。滞在地での日常生活に
関わる移動需要が高まる。
- 5. 5
要旨:官民連携によるワーケーション誘致と地域活性化の提案 2/3
① EC/ 宅配 ② 動く店舗・サービス ③ ドアツードアの移動手段 ④ 移動情報・予約の統合
居住・滞在先に商品を直接届ける 居住・滞在地の商業施設不足を補完
イメージ画像出典Mellow/ トヨタ自動車
駅・バス停いらずの直接移動
オンデマンドシャトル
移動先のアクティビティ
予約と連結したMaaS注)
With/Afterコロナ時代の移動サービス改善(郊外・地方):
◼ 居住・滞在地の利便性向上に資する個々の移動サービスに加え、MaaS導入促進が地域活性化に有効
◼ 大手リゾートホテル等の主要民間企業と自治体の連携により事業推進の可能性が拡大する
需要増が見込まれる移動サービス:滞在地を軸としたアクティビティ支援
注)Mobility as a Serviceの略であり移動サービスの統合を意味する。With/Afterコロナ時代は移動が複雑化し特に郊外・地方のMaaS需要が高まると考えられる(総論参照)。
MaaS普及促進による地域活性化のための官民連携と役割分担
自治体への提案/
主体的推進
各種調整・
公共費用負担
プラットフォーム
提供
プラットフォームに
参加・協力
郊外居住 不動産事業者等
(開発効果が収益に直結)
地方自治体 MaaS
プラットフォーマー
サービス提供企業/
公共施設等
地方観光 大手リゾートホテル等
(開発効果が収益に直結)
地方自治体 MaaS
プラットフォーマー
サービス提供企業/
公共施設等
地域開発効果が収益に直接影響する
有力民間企業の主体的推進により実現を加速
◼ 既存の取組み:
住宅地での不動産事業者によるMaaS及び
自治体主導の短期滞在者向け観光MaaSの推進。
◼ 新たな取組みの提案:
大手リゾートホテル等と自治体の官民連携に
よるMaaSを活用したワーケーション誘致。 既存の取組み今回の提案
【域内MaaS導入に関する官民連携と役割分担】
- 6. 6
要旨:官民連携によるワーケーション誘致と地域活性化の提案 3/3
宿泊施設と自治体の官民連携によるMaaSを活用したワーケーション誘致:
◼ Afterコロナ時代における観光産業の活性化のための有効施策
◼ 同時に地域住民生活の利便性向上や選択肢拡充に繋がる
宿泊施設のメリット:官民連携によるワーケーション誘致の可能性の拡大
地方自治体のメリット:ワーケーション誘致による住民利便性の拡大
①長期滞在者への移動情報・サービス提供 ②長期滞在者への行政サービス宿泊施設単体では対応が難しい
長期滞在者向けの日常生活サービス提供を
積極的に自治体に提案・推進することで
ワーケーション誘致の可能性が拡大。
地域住民の需要だけでは採算が合わなかった
公共サービスの実現や商業施設の呼び込みも
長期滞在者の増加で可能性が拡大。
①住民への移動情報・サービス提供 ②住民生活の選択肢=豊かさの拡充
イメージ画像出典:
Whim
イメージ画像出典:北海道拓殖バス/ Whim
一定期間以上の宿泊者が行政サービス・
公共施設を利用できるよう自治体と連携
(学校、学童・託児所、公営のスポーツ施設等)
現地でのアクティビティに関する情報と
日常生活の再現に必要な移動サービス情報
を自治体支援により一元化(MaaS活用)
バス
観光スポット 飲食店 病院学校
長期滞在者をターゲットとした飲食店等の
商業施設展開で地域住民の生活の選択肢も拡充
=地方生活がより豊かに
住民と長期滞在者両方を
ターゲットにした
移動サービスと情報の提供
(コミュニティバスやMaaS)
電車
カーシェア/
タクシー
シェア
サイクル
- 8. 8
総論:新時代の地域再生とモビリティ ーWith/Afterコロナ時代の場所と移動のニーズ変化①ー
Afterコロナ時代に向けた場所と移動の提案
現状:生活スタイル/ 消費スキルの変化
■ リモートワーク/遠隔医療・教育
■ EC/宅配需要/デジタル消費
Withコロナ:新たなライフスタイルへの転換
■ デジタル/遠隔サービスの急速な発展
■ 移動最小化のライフスタイルへの順応
Afterコロナ:新たなライフスタイルの定着
■ デジタルとリアルの価値再定義/リバランス
■ デジタル化で増えた時間・資源の再配分
コロナ影響によるライフスタイル変化 場所・移動ニーズの主要変化
① 家にいる時間が長くなる
→居住環境の快適性追求
② 人々は場所に縛られなくなる
→移動はより複雑化
③ 必要不可欠な移動(通勤・通学等)は激減
→人々は移動に快適性を求めるようになる
都心
郊外
郊外
郊外
郊外
イメージ画像出典:MOIA
With/Afterコロナ時代の経済・社会・消費動向と場所と移動ニーズを分析(前提根拠・詳細は各論1~3に掲載)
→ 場所と移動に関する下記の主要変化を整理
地方
居住/ オフィスの立地:
■ 都心よりも安価で広い居住面積(郊外・地方)
■ 一定程度集積したコンパクトシティ
(日常アクティビティに必要な公共商業施設が徒歩圏)
■ 過剰集積回避/ 適度なオープンスペースの配置
■ 三密回避対策に配慮した建築設計・仕組み作り
旅客移動:
■ 複数移動手段の一括検索・予約・決済=MaaS
(不特定経路・複数域内移動等の対応)
■ 既存公共交通の混雑回避・快適性向上
(通勤時間標準化、鉄道指定座席化と料金見直し等)
■ 移動サービスの多様化・快適性追求
(オンデマンドバス、自動運転シェアリングカー等)
物流/ サービスの移動:
■ ECの利便性向上と需要増への対応
(貨客混載の自由化と有効活用等)
■ 動く商業施設・サービスの提供
(動くレストラン、動く診療所、動く床屋等)
■ ドアツードアのモノ移動最適化=物流MaaS
サードプレイス(第3の場所):
■ 地域特有の文化・景観の集積により差別化
(デジタル化により既存都市機能の集積価値減少)
■ ワーケーション、セカンドハウス等の需要取込み
- 10. 10
総論:新時代の地域再生とモビリティ ーWith/Afterコロナ時代の場所と移動のニーズ変化③ー
Beforeコロナ時代の居住と移動:同一経路/ 同一手段/ 同一域内の移動が主流 → 移動軸は定期券ルート
Afterコロナ時代の居住と移動:移動は複雑化 → MaaS(Mobility as a Service)需要の急拡大
移動需要は複雑化し多様な移動サービスの情報提供や利用(予約・決済)の統合が求められる:MaaS需要の急拡大
熱海エリア
(冬季ワーケーション)
熱海駅
シェアサイクルバス
1カ月利用
シェアサイクルコムス
1カ月利用
軽井沢エリア
(夏季ワーケーション)
サードプレイス
サードプレイス
オフィス
年1往復
カルチャー/
景観の集積地
コンパクトシティ
(居住・食事・趣味)
徒歩
EC
(商品の移動)
居住
サードプレイス
年1往復
地方との会議
リモート化
✖
随時利用
New City駅
(郊外)
乗継駅鉄道
New Town駅
(郊外)
出典:トヨタ自動車
サービスの移動
(動く診療所、動く床屋、
動くレストラン等)
乗継駅/ サードプレイス
渋谷駅 品川駅
オフィス
三軒茶屋駅
週6往復 週5往復
買物・食事・趣味
週1往復
(地方出張)
鉄道 鉄道
居住
- 11. ◼ 地域ごとの特性を踏まえた取組み
◼ 地域再生と一体化したMaaS普及促進
◼ モビリティの枠を超えた利便性の提供
◼ 自治体による第三者プラットフォームの導入
11
総論:新時代の地域再生とモビリティ ーMaaS活用による地域再生の提案ー
MaaSを活用した域内外アクティビティの利便性向上によりモビリティ改善と地域活性化が実現可能
日本のMaaS普及促進の方向性(案) MaaS普及促進のための役割(案)
地方自治体:コーディネーター
■ 民間主導の地域再生を支援
■ 第三者プラットフォーム費用の資金負担
地域の有力企業:地域再生を主体的に推進
■ 新サービス等を活用した地域再生を推進
■ 地域開発需要に合致したモビリティ
サービス導入を主体的に促進
サービサー企業(交通事業者等):協力・連携
■ 地域再生・モビリティ改善の取組に協力
■ 自治体の推進するプラットフォームに参加
第三者プラットフォーマー:ファシリテーター
■ MaaSプラットフォームを活用して
地域再生活動をファシリテート
■ 自治体・地場企業の地域開発ニーズ・方針
に応じてMaaSをデザイン
MaaSが実現可能なモビリティ改善
利用可能な全移動オプション情報を提供
→ 最適オプション選択・予約・決済
訪問先と移動手段の一括検索・予約・決済
多様な事業者の提供する移動式店舗・サービスが
いつどこに来るのか情報を一括提供
動く店舗・動くサービス等
多様なモビリティサービスの情報統合
日本のMaaS普及状況
◼ 経路等の一括検索はできるが、統合されてい
るのは路線や時刻表等の基本情報のみ
◼ 一部の交通事業者は自社・グループ会社の
サービス提供を目的とした予約・決済含む
プラットフォームの開発や実証実験を実施
◼ 官民を交えたより多様なサービスの統合を
目的とするプラットフォームをMONET
Technologiesが本格運用開始(2020年4月)
イメージ画像出典:
MONET Technologies
イメージ画像出典:Mellow
※上記の方向性に関する検討は「各論4」に掲載
イメージ画像出典:トヨタ自動車
イメージ画像出典:東急電鉄・JR東日本
観光スポット 飲食店 病院学校
バス/
シャトル 電車
カーシェア/
タクシー
シェア
サイクル
- 12. 12
総論:新時代の地域再生とモビリティ ー地域活性化のための複合的アプローチー
MaaSを活用した地域活性化の複合的アプローチ例:官民連携によるワーケーション誘致の取組みの提案
地域の有力企業
(大手ホテル・空港等)
■ 長期滞在者誘致に必要な自治体の対応を積極的に提案
■ 動く店舗・サービス等の敷地内誘致による利便性向上
■ 自社の運営拠点を発着地とする移動サービス誘致
(乗捨型カーシェア、オンデマンド交通等)
※イメージ例は「各論5」に掲載
地方自治体
■ 域内の観光・生活・移動情報や決済の一元化促進
(MaaSプラットフォーム導入・普及促進)
■ 長期滞在者が利用可能な行政サービスの充実
(公立学校・学童・保育施設の生徒短期受入等)
ワーケーション利用客誘致の取組み(案)
サービサー企業①
交通事業者
■ 自治体が促進するMaaSプラットフォームに参加
■ 商業施設不足を補完する動く店舗等のサービス導入
■ 自動車を保有しない長期滞在者のための移動サービス
オプション提供(カーシェア、オンデマンド交通等)
サービサー企業②
商業・観光・宿泊施設
■ 自治体が促進するMaaSプラットフォームに参加
■ 自治体・観光組合等と連携し長期滞在向けオプション
を充実
(宿泊施設による長期滞在向用品オプションの充実
飲食店によるデリバリーオプションの充実等)
長期滞向け
オプション充実
購入・レンタル品は部屋に届いて使うだけ
EC利用 家具レンタル 衣類レンタル
商業施設や送迎シャトルが定期的にホテルに移動
動く店舗・
サービス
イメージ画像出典:
Mellow/ トヨタ自動車
日常利用施設を滞在先で再現
公共・民営施設
の短期利用
コーワーク
スペース学童・託児所 ジム
貸オフィス
/設備小学校
MaaS
プラットフォーマー
■ 地域開発方針・対象利用者に応じたMaaSのデザイン
■ サービサー企業のオペレーション情報・予約決済オプ
ションを自社プラットフォームを通じて利用者に提供
滞在先での日常生活再現と観光資源活用促進(案)
訪問先と移動手段を一括検索・予約・決済
シェア
サイクル
カーシェア/
タクシー
バス/
シャトル 電車
観光スポット 飲食店 病院
MaaSによる
アクティビティ
の利便性向上 週末観光も
夕食も携帯で
一括予約
アバター画像出典:ZEPETO
- 13. 13
総論:新時代の地域再生とモビリティ ー取組みの方向性提案ー
新時代に向けた場所と移動の価値提供(案) 郊外・地方における新たな価値提供への取組み方向性(案)
商業施設や送迎シャトルが定期的に居住地に移動
①日常アクティビティ(買物等)のための人の移動最小化
イメージ画像出典:Mellow/ トヨタ自動車
MaaS:訪問先と移動手段を一括検索・予約・決済
シェア
サイクル
カーシェア/
タクシー
バス/
シャトル
電車観光スポット飲食店 病院
②体験アクティビティのための移動利便性の向上
従来の経路(鉄道等)に捕らわれない自由な移動サービス提供
◼ オンデマンド交通
◼ カーシェアステーション充実
◼ カープール(相乗り)
◼ 複数移動サービスのパッケージ化
③従来の経路(鉄道等)に捕らわれない自由な移動
◼ 自然や文化等の地域の魅力を活かしたまちづくり
◼ 公共施設等の適度な配置とサービス利用者の利便性向上
◼ 商業施設等の適度な集積と不足を補完する移動式店舗・
サービスの誘致(①と連動)
◼ 居住・長期滞在先を拠点としたアクティビティの利便性
向上(②及び③と連動)
④居住/長期滞在環境の快適性向上
開発効果が収益に影響する企業
(不動産事業者、ホテル、空港等)
地域の有力企業
MaaSプラットフォーマー
イメージ画像出典:MONET Technologies/ Whim
サービサー企業/ 公共施設
動く店舗イメージ画像出典:トヨタ自動車
交通事業者
観光スポット飲食店 病院
動く店舗
公共・商業・観光施設等
サービス利用者
アバター画像出典:ZEPETO
交通事業者との連携
によるモビリティ改善
(自社拠点活用等)
働きかけ
協力
アクティビティに応じた
一括検索・予約・決済
サービスを提供
地域開発方針に沿った
公共・民間サービスを提供
都心
郊外
郊外
郊外
郊外
地方
◼ 場所と移動の需要の詳細は地域特性や開発方針により異なる
→ 各自治体がそれぞれ対象地域の場所と移動の価値向上(地域活性化)を独自に推進
◼ 地方や郊外の地域自治体は規模が小さくリソースが限られる
→ 地域を代表する民間大手企業が自治体と連携し地域活性化の具体案を提案・促進
◼ 域内の公共施設・民間事業者は自治体に協力し開発方針に沿ったサービスを提供
→ 公共・民間の各種施設・サービスの利便性向上のためMaaSプラットフォームを活用
本検討における下記の方向性(案)は、自治体等による既存のMaaS推進の取組みを補完し包括的な在り方を提案するもの
バス/
シャトル
電車カーシェア/
タクシー
シェア
サイクル
- 14. 14
総論:新時代の地域再生とモビリティ ー実現に向けた参考オプションー
◼ MaaSを活用した地域活性化は地域の民間企業と自治体の連携、第三者プラットフォーム活用により実現可能。
◼ 一方で先行事例も少ないことから、政府主導のMaaS推進の枠組みや民間企業等が推進するコンソーシアムの枠組
みを活用して情報収集しつつ事業プラン策定を開始することが有効と考えられる。
◼ 参考情報として政府主導のMaaS推進の枠組み及び主要なMaaSコンソーシアムについて以下に記載する。
日本政府主導の
MaaS推進の枠組み
民間企業等が推進する
MaaSコンソーシアム
◼ 地方自治体と連携した民間企業等が応募可能な補助金事業には、経産省の「地域新MaaS創出推進事業」、
国交省の「日本版MaaS推進・支援事業」等がある。
◼ 「地域新MaaS創出推進事業」の先進パイロット地域には、1千~3千万円の外注費が支給される。
(実証実験の一部、分析、課題抽出等を外注する場合)
◼ 経産省・国交省が主催する「スマートモビリティチャレンジ推進協議会」に参加することで、
自治体・企業間の情報交換・知見共有が可能(2020年4月時点で自治体・民間計228団体参加)。
国内の主要なMaaSコンソーシアムとして下記3つがあげられる。
◼ モビリティ変革コンソーシアム:
JR東日本が2017年9月に設立。交通事業者をはじめとする民間企業や大学・研究機関など153団体が参加
(2020年6月19日現在)。オープンイノベーションによりモビリティ変革を実現することを目的に掲げている。
◼ JCoMaaS:
MaaS及びモビリティサービスに関する産官学での知見共有等を目的として2018年12月に設立された一般社団
法人。学識者が代表理事を務めMaaS研究会を設置するなど高い専門性が伺えるコンソーシアム。
◼ MONETコンソーシアム:
ソフトバンクと日系大手自動車メーカー8社が出資するMonet Technologiesにより2019年3月に設立された。
多業種550社以上が加盟(2020年6月現在)。加盟企業へのMaaSビジネス支援が掲げられている。
- 16. ◼ 直近状況を踏まえWithコロナ時代の長期化(2-3年)シナリオを設定
◼ 上記前提のもと以降主要環境変化と新時代の場所と移動のニーズを分析
◼ コロナ長期化の日本への影響は将来予測された環境変化を加速するもの
→ 仮に製薬開発期間等が短縮されても中長期的に必要な対策は大きく変わらない
各論1:前提条件の設定 ーコロナの日本への影響は起こるべき将来の環境変化を加速するものー
本検討の3つの前提(仮説)
外出制約期間
企業・人々の
認識変化
コロナ長期化
の影響
■ WHOのワクチン開発期間の見立ては「少なくとも12~18カ月」
■ 既存薬のリポジショニングは効果と副作用の側面から明確な目途なし
■ 日本は約2カ月の緊急事態宣言期間を経て解除へ
■ 外出制限解除後の欧州諸国は第二波・第三波を避けるべく外出を
制約しBeforeコロナとは異なる形で徐々に経済活動を再開
直近状況 本検討の仮説
適切な製薬開発に至る期間は2~3年/
企業及び人々は外出を制約した形で
経済活動再開を試みる
■ 大都市等の過密地域のコロナ感染拡大はより深刻
■ 企業は三密を避けるための施策(リモート化等)に投資
■ 世界的にリーマンショックを超える経済打撃が予測されている
コロナ後も過剰集積・三密の不経済
に対する認識と施策が定着
■ 外出自粛により消費需要が激減
■ デジタル化/リモート化が急加速し単純移動需要が激減
■ 脱・労働集約型の設備機能(無人化・AI等)需要急増
コロナ長期化の日本への影響は
人口減少や技術革新により将来予測
された環境変化を加速するもの
16
- 17. 各論2:変貌する経済・社会・消費動向と対応策 -With/ Afterコロナ時代の環境変化予測ー
金融危機を経て更なる経済状況悪化と社会・消費動向大変貌の可能性がある
急激な変化への対応 Withコロナ環境への適応 経済・社会・生活の再構築
外出禁止・自粛による消費需要減少
■ 運輸交通・観光・イベント等の需要激減
■ 衣料・自動車及び原材料等の需要減
景気後退とその影響/対応
■ 倒産/ 事業統合/ M&A
■ 生産性向上/ リストラ
企業統合と合理化
■ 生き残り企業の市場シェア拡大
■ 重複サービスの統合と効率化
企業の経営環境の急変
■ リモート化への急対応・投資
■ 新規事業・海外展開の停滞
新たな経営環境への適応
■ コミュニケーション/信頼形成のあり方変化
■ 企業間の意思決定・適応力のGAP拡大
新たな経営環境の定着/ 企業間競争力変化
■ リモート化定着/ ギルド型働き方の普及
■ 適応力・課題解決力ある企業が優勢化
労働集約的な生産現場の打撃
■ 工場の生産停止
■ 店舗休業
脱・労働集約化の加速
■ ロボット/AI/IoT/ブロックチェーン
■ EC/無人店舗/無人工場/ドローン/自動運転
脱・労働集約化の定着/ 知識集約型産業へ
■ 生産現場の省人化・合理化
■ 知識集約型産業への更なる労働人口移動
経済活動の抑制
■ 工場生産停止・供給不足
■ サービス業の営業縮小
金融危機(金融機関の破綻)
■ 企業の手元資金不足・金融市場の流動性枯渇
■ 投資の抑制・高い失業率
長期経済低迷/ 成長の鈍化
■ 高い失業率が長期化
■ 段階的な投資と緩やかな経済活動の回復
コロナ影響の国別相違
■ ウイルス蔓延・対応状況の相違
■ 社会・経済状況によるインパクトの相違
各国の立ち位置とグローバルSCの変化
■ 経済・社会影響の国・地域差拡大
■ 地産地消型モデルの見直し
各国国際関係及びSCの再構築
■ 国際的な政治社会経済関係が変化/再構築
■ グローバルSCと地産地消のリバランス
生活スタイル/ 消費スキルの変化
■ リモートワーク/遠隔医療・教育
■ EC/宅配需要/デジタル消費
新たなライフスタイルへの転換
■ デジタル/遠隔サービスの急速な発展
■ 移動最小化のライフスタイルへの順応
新たなライフスタイルの定着
■ デジタルとリアルの価値再定義/リバランス
■ デジタル化により増えた時間・資源の再配分
現状 Withコロナ時代(2-3年) Afterコロナ時代(回復期間後の新時代)
17
- 18. Withコロナ時代の主要変化
景気後退とその影響/対応
■ 倒産/ 事業統合/ M&A
■ 生産性向上/ リストラ
新たな経営環境(リモート化)への適応
■ コミュニケーション/信頼形成のあり方変化
■ 企業間の意思決定・適応力のGAP拡大
脱・労働集約化の加速
■ ロボット/AI/IoT/ブロックチェーン
■ EC/無人店舗/無人工場/ドローン/自動運転
金融危機(金融機関の破綻等)
■ 企業の手元資金不足・金融市場の流動性枯渇
■ 投資の抑制・高い失業率
各国の立ち位置とグローバルSCの変化
■ 経済・社会影響の国・地域差拡大
■ 地産地消型モデルの見直し
新たなライフスタイルへの転換
■ デジタル/遠隔サービスの急速な発展
■ 移動最小化のライフスタイルへの順応
企業意思決定プロセス変革支援
国産農業(食料自給率見直し)
Withコロナ変革ニーズへの対応策(事業再生・新規事業機会)
金融業界の転換→金融DX加速
■ 銀行ゼロ時代化加速→Digプラットフォーマー
■ キャッシュレス化/ フィンテックの進展
関連技術/産業用5G/AR/VRソリューション
新プロセス(オンライン)M&A
■ 実地調査を伴わない/ 遠隔の信頼形成構築
物流・旅客移動変化→MaaS(物流・旅客効率化)
■ 交通事業者数の統合・最適化/ 車両活用最適化
■ 国内SCの物流需要増加
■ EC/倉庫の短期的な需要急増
情報セキュリティ強化(テレワーク対応)
■ 認証/ 検知/ 制御/ 防御等の技術やクラウド
生産工場の国内回帰
メンタルケア拡充
■ 時間のもてあましから需要急増を予測
■ オンライン診療解禁/保険適用可能性検討
遠隔医療拡充
■ 初期症状(感染症等)のオンライン診断
在宅用家具・グッズ(椅子/自宅用PC等)
郊外・地方型集積都市のプロモーション
■ 過密回避/ 大都市よりも安価な固定費の魅力
■ 一定程度集積・集約による利便性担保
ワーケーション移行需要への対応
■ 宿泊施設及びセカンドハウス需要への対応
■ 域内交通利便性向上・学校等の行政サービス
オンライン教育拡充
■ 国外での教育機会/場所に縛られない利点最大化
■ 社会性・人間関係作り・コーチング等の課題対応
三密回避の移動手段提供
■ 通勤鉄道の指定座席化/ 新幹線のブース化
■ カーシェアの感染予防対策/ 自動運転
5
5
5
5
2
2
3
3
3
4
4
1
1
1 1
18
Withコロナ時代に必要な5つの対応:
③デジタルコンテンツ/プラットフォーム拡充
①環境変化への適応支援
④SCの国内回帰
②情報技術/技術革新
⑤場所と移動の変革
各論2:変貌する経済・社会・消費動向と対応策 -Withコロナ時代に必要な5つの対応ー
Withコロナ時代の場所と移動の変革需要は主に新たなライフスタイルへの転換によるもの
- 19. 各論3:新時代の場所と移動のニーズ ー①Afterコロナ時代の需要変化ー
Afterコロナ時代の場所と移動の需要変化Afterコロナ時代の主要変化
過剰集積・三密の不経済に対する認識定着
企業統合と合理化
■ 生き残り企業の市場シェア拡大
■ 重複サービスの統合と効率化
新たな経営環境の定着/企業間競争力変化
■ リモート化定着/ ギルド型働き方の普及
■ 適応力・課題解決力ある企業が優勢化
脱・労働集約化の定着/ 知識集約型産業へ
■ 生産現場の省人化・合理化
■ 知識集約型産業への更なる労働人口移動
長期経済低迷/ 成長の鈍化
■ 高い失業率が長期化
■ 段階的な投資と緩やかな経済活動の回復
各国国際関係及びSCの再構築
■ 国際的な政治社会経済関係が変化/再構築
■ グローバルSCと地産地消のリバランス
新たなライフスタイルの定着
■ デジタルとリアルの価値再定義/リバランス
■ デジタル化により増えた時間・資源の再配分
19
Afterコロナ時代を見据えた場所と移動の需要変化をより詳細に以下のとおり分析
居住地選択の自由度増(居住と就業の分離)/世帯数減少・世帯別居住空間増
通勤・通学・買物を目的とした移動需要激減/ 居住近郊の日常アクティビティ増
不動産固定費の抑制
公共交通混雑回避の概念定着 (三密回避可能な時間帯や移動手段を優先)
レジャー・娯楽のための移動需要増(増えた時間再配分後の選択肢)
オフィス立地選択の自由度増
交通事業者の統合・集約(交通情報一元化/ サービス最適化しやすい環境に)
住居・オフィス施設の三密回避対策需要の定着
(大型マンションの宅配、屋内・地下等の換気の仕組み等)
EC需要及び他サービス業×モビリティPKG需要の定着
(動く診療所、動く床屋、動くレストラン等)
国内SCの物流需要の増加
国内・海外出張減少
長期観光滞在・セカンドハウス需要の定着(ワーケーションの定着)
場所の需要①
移動の需要①
場所の需要②
場所の需要③
場所の需要⑥
場所の需要④
自宅で過ごす時間の増加/ 自宅の快適性向上需要増加 場所の需要⑤
移動の需要②
移動の需要③
移動の需要④
移動の需要⑤
移動の需要⑥
移動の需要⑦
- 20. 各論3:新時代の場所と移動のニーズ ー②Afterコロナ時代の場所と移動の提案ー
Afterコロナ時代の場所と移動の提案
居住/ オフィスの立地:
■ 都心よりも安価で広い居住面積(郊外・地方)
■ 一定程度集積したコンパクトシティ
(日常アクティビティに必要な公共商業施設が徒歩圏)
■ 過剰集積回避/ 適度なオープンスペースの配置
■ 三密回避対策に配慮した建築設計・仕組み作り
旅客移動:
■ 複数移動手段の一括検索・予約・決済=MaaS
(不特定経路・複数域内移動等の対応)
■ 既存公共交通の混雑回避・快適性向上
(通勤時間標準化、鉄道指定座席化と料金見直し等)
■ 移動サービスの多様化・快適性追求
(オンデマンドバス、自動運転シェアリングカ等)
物流/ サービスの移動:
■ ECの利便性向上と需要増への対応
(貨客混載の自由化と有効活用等)
■ 動く商業施設・サービスの提供
(動くレストラン、動く診療所、動く床屋等)
■ ドアツードアのモノ移動最適化=物流MaaS
サードプレイス(第3の場所):
■ 地域特有の文化・景観の集積により差別化
(デジタル化により既存都市機能の集積価値減少)
■ 長期滞在型観光・セカンドハウス等の需要取込み
20
居住地選択の自由度増(居住と就業の分離)/世帯数減少・世帯別居住空間増
通勤・通学・買物を目的とした移動需要激減/ 居住近郊の日常アクティビティ増
不動産固定費の抑制
公共交通混雑回避の概念定着 (三密回避可能な時間帯や移動手段を優先)
レジャー・娯楽のための移動需要増(増えた時間再配分後の選択肢)
オフィス立地選択の自由度増
交通事業者の統合・集約(交通情報一元化/ サービス最適化しやすい環境に)
住居・オフィス施設の三密回避対策需要の定着
(大型マンションの宅配、屋内・地下等の換気の仕組み等)
EC需要及び他サービス業×モビリティPKG需要の定着
(動く診療所、動く床屋、動くレストラン等)
国内SCの物流需要の増加
国内・海外出張減少
ワーケーションの定着/ 長期観光滞在・セカンドハウス需要増加
自宅で過ごす時間の増加/ 自宅の快適性向上需要増加
Afterコロナ時代の空間利用と移動需要
居住・オフィスはコンパクトシティに移転し移動頻度は激減する ー場所も移動も量より質の時代へー
場所の需要①
移動の需要①
場所の需要②
場所の需要③
場所の需要⑥
場所の需要④
場所の需要⑤
移動の需要②
移動の需要③
移動の需要④
移動の需要⑤
移動の需要⑥
移動の需要⑦
- 21. 21
各論4:新時代の移動ニーズを満たす日本のMaaS普及促進の方向性
世界的なMaaSの定義 日本のMaaS普及促進の方向性(案)留意すべき日本の交通特性
公共交通事業者数が多く民間比率高い注1)
■ 鉄軌道事業者数(旅客):204社
うち民営:95%(194社)
■ 乗合バス事業者数 :2,267社
大手245社のうち民間:93%(227社)
■ 法人タクシー事業者数 :6,147社
注1)公共交通事業者数出典:国土交通省(鉄軌道事業者数:H31年); 日本バス協会(乗合バス事業者数:H28年); 全国ハイヤー・タクシー連合会(法人タクシー事業者数:H29年)
注2)日本バス協会によれば30両以上保有の乗合バス事業者のうち69%が赤字(H29年時点)
人口密度・土地利用により異なる交通特性
(例)
■ 大都市都心部は地下鉄が発達・道路交通需要低い
■ 大都市郊外は鉄道が限定的(都心から放射線状)
郊外域内及び郊外間はバス・自家用車等を利用
■ 地方圏内移動は一般に道路交通
■ バスの利便性(路線数・運行頻度)も需要と連動
■ 複数交通事業者が競合する高密度エリアと
単一事業者が赤字営業する低密度エリア
独立系バス事業者等は存続自体厳しい環境
■ 都市部は黒字も地方路線の多くは赤字注2)
→ 赤字路線は政府補助金により路線維持
■ 大都市圏は大手私鉄系バス会社が主力
地域ごとの特性を踏まえた取組み:
(例)
■ 都心部は複数公共交通選択肢の使分け需要に配慮
■ 商業施設低密度エリアはサービス移動情報と連携
■ 観光地は観光施設や長期滞在者向けサービスと連携
地域再生と一体化したMaaS普及促進:
■ 各地域単位で域内事業者を取り込みMaaSを普及
■ 地域開発需要・方針に基づくMaaSデザイン
■ 自治体・地域を担う主要民間企業・交通事業者が
官民連携により検討・促進
自治体による第三者プラットフォームの導入:
■ 公共交通事業者間の競合を踏まえ特定公共交通事業
者主導ではなく第三者のプラットフォームを導入
■ 自治体によるプラットフォーム利用料の負担
MaaS普及促進においては日本の交通特性に配慮し需要に合致した対応を検討する必要がある
モビリティの枠を超えた利便性の提供:
■ 移動先(飲食店や娯楽・観光施設等)の情報提供
■ 移動先の予約・決済との連携
→ 競合し合う交通事業者を取り込む付加価値の提供
MaaS レベル1:情報の統合
異なる交通手段の情報を一括検索可能
MaaS レベル2:予約・支払いの統合
異なる交通手段の検索・発券・予約・支払いを
同一プラットフォーム上で行うことが可能
MaaS レベル3:サービス提供の統合
異なる交通手段のサービスを、複数事業者が
存在することを意識せずに利用することが可能
MaaS レベル4:政策の統合
国や自治体が都市計画や政策にMaaSの概念を
組み込み、交通・移動サービスを整備
MaaS レベル0:統合なし
夫々の交通手段の事業者が独立して情報提供
日本はレベル2への移行過程
- 23. 23
各論5:モビリティ改善と一体化した地域再生 ー郊外コンパクトシティのイメージ例 1/2ー
イメージ画像出典:SUUMO
一度住むと
ヤミツキ❤
◼ 1階にスーパーと保育園
◼ 館内にレストラン・飲食店
◼ 各階に24時間ごみ捨て場
◼ 多様な共用施設(フィットネス/
スタディルーム/ ラウンジ等々)
◼ ランドリー等多様なサービス
アバター画像出典:ZEPETO
今どきの都心型タワマンの利便性
エレベーターで移動するだけ!
高層・大規模だから実現できる
敢えて土地のある郊外につくってみる…
都心型タワマン居住のボトルネック
◼ 家賃が高額 ⇔ 広い部屋に住めない
◼ 周囲はオフィスビルばかり
↓
◼ 居住外のオープンペースが狭い
◼ 日常アクティビティのため徒歩圏内の
公共商業施設は意外と不足気味
コロナで自宅滞在時間
が長くなると息苦しいw
複合商業施設
◼ 飲食店・スーパー
◼ クリニック・歯医者
◼ ジム・スポーツ教室
◼ 学習塾・音楽教室
◼ コワーキングスペース/
シェアオフィス
◼ 賃貸オフィス/スペース
等々
タワマン群:
都心と同様の施設・サービス
郊外型タワマン居住のボトルネック
◼ 徒歩圏のみでは商業施設のバラエティーが少ない
◼ 長時間のラッシュ通勤・満員電車
◼ 都心移動時のタクシー料金が高い(深夜帰宅時など)
◼ 郊外型都市間の移動手段が未発達
※ 昼間人口が過密した都心居住との比較
日常生活に必要な公共・商業施設と
豊かなオープンスペースが徒歩圏内に
※ 前提:夜間・昼間人口を同程度に調整した不動産開発
都心
郊外
郊外
郊外
郊外
移動が
特に不便
- 27. 参考資料: Sidewalk Labsのトロント再開発撤退からの教訓
Googleの兄弟会社であるSidewalk Labsによるトロント再開発計画は最先端技術を駆使した
モビリティサービス提供を含む先進的スマートシティ開発事例になり得るものとして着目を集めていた。
そのため、 Sidewalk Labsによる2020年5月の再開発計画中止の発表は関連業界に衝撃を与えた。
ここでは本事例の検証からMaaS活用による地域再生事業の教訓として下記3点を抽出した。
◼ モビリティサービス提供等のスマートシティのビジネス展開には一定以上の用地面積が必要。
当初から充分な開発面積を計画に織り込む必要がある。
◼ MaaSを含む先進的データ活用による域内の高度なサービス提供に際しては自治体がそのメリット
(利便性提供)を住民に充分説明しデータ活用に対する合意形成を図る必要がある。
◼ 大規模再開発事業では 開発により既存事業収益増が見込まれる大手事業者(ディベロッパー等の用
地・不動産所有者、大手リゾートホテル等)が主体的に自治体と連携して推進することが有効である。
- 28. 28
参考資料:Sidewalk Labsのトロント再開発撤退からの教訓 1/3
Sidewalk Labsのトロント再開発計画策定経緯:
◼ 2017年、トロントのウォーターフロントエリアの開発促進を目的とした政府組
織Waterfront Toronto (WT) 公社はキーサイド地区(旧トロント港工業用地
4.8ha )の再開発提案を公募。
◼ 同10月、Sidewalk Labs社(Googleの兄弟会社)の再開発提案が選定され、同社
による開発マスタープラン(Master Innovation and Development Plan: MIDP)
策定が決定。
◼ Sidewalk Labsの提案は、Googleカナダ本社移転による雇用創出・経済活性化、
環境にやさしい開発、手ごろな価格の住宅提供、MaaS等の新たなモビリティサ
ービス、データ活用によるデジタルガバナンスなどを目標に掲げていた。
◼ しかしながら大量の都市データ活用にかかるプライバシー問題が指摘され、
2018年10月以降、プロジェクト委員会に所属する専門家らの辞任表明や、カナ
ダ自由人権協会によるプロジェクト打ち切りを目的とした訴訟が起こりプロジ
ェクトは難航。
◼ 2019年6月17日、 Sidewalk LabsがMIDP(案)をWT公社に提出。計画の内容は
元々の対象地域であるキーサイド地区の開発にとどまらず周辺のIDEA地区
(325ha)に拡大する、壮大な20年間の開発計画に変化していた。
◼ Sidewalk Labsは開発費用回収方法としてTax Increment Financing(TIF:開発に
よる増税収益の民間への還元)を提案。WT公社とは合意に至らず。
環境面・価格面に優れた住宅設計
新たなモビリティマネジメント・システム
環境にやさしく持続可能な開発
出典: Master Innovation and Development Plan(Sidewalk Labs, 2019)
- 29. 29
参考資料:Sidewalk Labsのトロント再開発撤退からの教訓 2/3
WT公社との意見対立とSidewalk Labs撤退:
出典:Googleのスマートシティ開発~狙いとビジネスモデル~(KDDI総研, 2019)
◼ WT公社はSidewalk LabsのMIDP(案)を承認せず、 MIDPの提案に対し
書簡にて下記事項をSidewalk Labsに通知。
➢ IDEA地区への拡大は時期尚早
➢ 政府によるLRTの延伸(政府負担$12億)はコミットできない
➢ 事業の入札管理はWT公社が実施するもの
➢ 知財権・デジタルガバナンス面の不安
◼ 2019年10月31日、Sidewalk Labs社が歩み寄り下記事項をWT公社と合意。
➢ 再開発はキーサイド地区に限定
➢ 開発業者はWT公社が競争入札を通じて選定
➢ 個人データはカナダ国内の信託機関が保管
➢ WT公社との知財権シェア
◼ 2020年5月7日、Sidewalk Labsが再開発計画中止を発表。表向きの理由は
COVID-19により収益確保が難しくなったこと。 出典:Sidewalk Labs
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参考資料:Sidewalk Labsのトロント再開発撤退からの教訓 3/3
Sidewalk Labsの事例から得られる今後のスマートシティ開発/ 都市再開発への教訓:
◼ Sidewalk LabsとWT社の合意形成の一番の認識のズレは開発エリア。
→ スマートシティのビジネス展開(モビリティサービス等)には一定以上の用地面積が必要。
当初から充分な開発面積を計画に織り込む必要がある。
◼ データ活用に関する住民の懸念がプロジェクト難航・遅延の主要因。
→ 民間一事業者ではなく自治体が主体的にデータ活用のメリット(利便性提供)を住民に充分説明し
合意形成を図る必要がある。
◼ Sidewalk LabsはTIFによる開発収益回収を提案もWT公社と合意に至らず。開発費用の還元方法の目途
は立っていなかった。
→ 開発により既存事業収益増が見込まれる大手事業者(ディベロッパー等の用地・不動産所有者、
大手リゾートホテル等)が開発主体となり自治体と連携して再開発を実現することが有効。