1. パズル： 渋谷東急百貨店南館の窓枠にはどんな規則性があるのか？
？ ？ ？
？ ？

2. modulorたちに薦められてこの本を読んでみました。
modulorたち
ル・コルビュジェ著

3. modulorの数学的説明は、ル・コルビュジェの大きな建築
エッセイの中のあちこちに散りばめられていて、最初はさ
っぱりわかりませんでした。でも、何度か読んでいるうちに、
非常にシンプルな事実が見えてきました。
それは、
- modulorの身長は182.9cmであること。
- ヘソの高さは113.0cmであること。
- 上に挙げた手の先は226.0cmであること。
ここで、
ヘソの高さ113.0cmに黄金比(1.618）を掛けた値182.9cm
が身長であり、2倍した値226.0cmが手の先の高さである
こと。
182.9cm
226.0cm
113.0cm

4. ル・コルビュジェは、人体の各部の寸法が黄金比の関係を持ってい
ると考えていたようですが、身長182.9cmはどのようにきめられたの
でしょうか？
「モデュロール Ｉ」の40ページに次のような記述があります。
「いまのModulorは1m75の人間の身長をもとにしていますが、これ
はフランス人の体格でしょう。イギリス人の探偵小説などに出てくる
りっぱな人は、たとえば巡査などは、いつも6フィートであることに気
づかれませんか」
と、ある人に言われたル・コルビュジェは、それ以降、Modulorの身
長を6フィート(182.9cm)に、そしてその黄金分割した113.0cmをヘソ
の高さとし、これをモデュロールの基本単位に変更しました。
（この柔軟性が凄い！）

5. そして、ル・コルビュジェはこの身長182.9cm
を中心に左図のようなmodulor数列を作りま
した。
182.9cmに黄金比1.618を掛けることで、
182.9より大きい項を、黄金比1.618で割るこ
とで、182.9より小さい項を順次作りました。
このルールで作られた数列をmodulor数列
の赤組といいます。
478.8
295.9
182.9
113.0
69.8
43.2
26.7
16.5
10.2
1.618倍
1.618倍
1.618倍
1.618で割る
1.618で割る
1.618で割る
1.618で割る
1.618で割る
1.618で割る
1.618で割る
.

6. この「赤組」に対し、その各項を2倍
すると、もう一つのmodulor数列「青
組」ができます。
さらに、「赤組」と「青組」を合体する
と「赤青混合組」ができます。
この「赤青混合組」が家具、建築、都
市計画など様々なもののデザインの
基本寸法として利用されています。
面白いのは、赤組、青組の各項は、
黄金比の関係になっているので、
同時にフィボナッチ数列にもなって
いること。すなわち、各項の値は、前2
項の和になります。
.
478.8
295.9
182.9
113.0
69.8
43.2
26.7
16.5
10.2
957.6
591.8
365.8
226.0
139.7
86.3
53.4
33.0
20.4
591.8
478.8
365.8
295.9
226.0
182.9
139.7
113.0
86.3
69.8
53.4
43.2
33.0
26.7
20.4
16.5
12.6
10.2
2倍 赤青混合

7. 下図は、「赤青混合組」数列の一部（左図緑枠）を辺の長さと
する長方形を並べたもの（赤青組混合図形）です。
.
591.8
478.8
365.8
295.9
226.0
182.9
139.7
113.0
86.3
69.8
53.4
43.2
33.0
26.7
20.4
16.5
12.6
10.2
295.9 226.0 182.9 139.7 113.0 86.3 69.8 53.4
53.4
69.8
86.3
113.0
139.7
182.9
226.0
295.9
赤青組混合図形

8. さて、この赤青組混合図形と東急百貨店南館の窓枠にはどんな関係が？
？

9. ① ② ③ ④⑤ ⑥⑦
④① ③② ⑥⑤ ⑦
①
① ② ③ ④ ⑤ ⑦⑥
② ④③ ⑤ ⑥⑦
並び替えてみると、南館の窓枠と赤青組混合図形が見事に一致しました！

10. 以上のように南館窓枠と赤青組図形は形状がぴったり一致することがわかりました。では、
絶対寸法はどうなのでしょうか？ 初めは南館に行って、内側から窓の寸法を測ろうと思い
ました。ところが、店内レイアウトで覆われて、内側から窓は見えないことがわかりました。
それで、屋上に上がって柵柱間隔(A)を実測し、(A)と(B)の写真上の比率から、(B)を推測す
ることにしました。その結果、(A)は242cm(実測
値)、(B)は235cm(推測値)。 この寸法は赤青
組図形では、226cmなので4%くらい大きめに出
ています。この誤差は、測定精度を考えると、
許容範囲かなと考えます。
(A)
(B) それにしても、ル・コルビュジェの弟子坂倉順三
が設計した東急百貨店南館、ここまで師の精神
が息づいていたとは、ちょっと驚きでした。
それに、イギリスの探偵小説に出てくる巡査の
身長182.9cmというたった一つの数字から、南
館の全ての窓枠寸法が算出できるというこの
美しき単純性に驚嘆！

11. さて、次なるパズルは？
南館窓枠形状の謎は解けましたが、まだ、解けていない謎がもう一つ。
それは、窓の並び方。大きさ順に並んでいるわけでもないし、等間隔に
並んでいるわけでもない。一体、そこにはどんな規則性があるのだろうか？
いよいよ、クセナキスの登場か？
まだまだ、modulorの旅は続きそう。