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モード解析について
モード解析について
1.振動における理論解析と実験解析
1-1.      1 自由度系
           ①   理論解析

                                                                              x
                                                                k
                                                                          m       摩擦なし




                                                                     図1

 1 自由度系として近似される系の理論解析の場合、図 1 のような力学モデルを仮定し、下記のような運動方程式を解くことにより固

有振動数を求めます。摩擦などの減衰は無視することにします。

自由振動における弾性力と慣性力のつりあいの式を考えて、
    m&= − kx , m :質量 , k :ばね定数
     &
     x
これを式変形して、

          k
    &+
    &
    x       x=0
          m
ここで固有角振動数を ω とすると、上記の方程式は次のようにあらわすことができます。

                                  k
    &+ ω 2 x = 0 , ω =
    &
    x                               (rad sec)
                                  m
さらに固有振動数は

          ω
    f =      (Hz ) = 1            k
                                    (Hz )
          2π        2π            m
とあらわされます。
②      実験解析
 質量や剛性がわかっていない場合、図 2 のような加振実験を行います。FFT アナライザーで収録したデータをもとに図 3 のような
伝達関数を計算し、固有振動数を求めます。

                                            FFT アナライザ                                          注)この伝達関数の形状は、減衰を含

                                                                                               んだ場合を示しています。減衰を含ま
                                                                    振幅比




                      x                                                                        ない場合、ピークが無限大になります。

           ?              &
                          &
                          x                         A ch B ch
                  ?
                              F
                                                                                               周波数    Hz
                                                                                         この周波数は理論での固有振動数fと同等です。

                          図 2 実験解析                                            図 3 伝達関数

 有限要素法(FEM)の基本になっているのがはじめに示した 1 自由度系の理論解析であり、実験モード解析の基本になっているのが上

にあるような 1 自由度系の実験解析です。実際の解析では、対象となる系が多自由度系の場合を想定して行われます。

 実験モード解析では,FFT アナライザーなどの計測機器を使用して実験を行う必要があり、FFT アナライザーなどの原理を知る必

要があります。つぎに FFT アナライザーについて説明します。




                                                                    3-1
2. FFT (高速フーリエ変換)
2-1 FFT とは

 FFT とは計測された時間軸信号にどんな周波数の正弦波が含まれているかを計算する方法です。

 たとえば、図 4-1 のような時間軸信号が計測された場合であれば、目で見るだけで固有振動数がわかります。しかし、図 5-1 のよう

な振動数の高い信号や図 6-1 のような複数の振動がたしあわされた時間軸信号が計測された場合、目で見て固有振動数を求めるのは難

しくなります。FFT を行い時間領域の信号から周波数領域の信号に変換すると、図 5-2 や図 6-2 のように計測された信号に含まれる振

動の周波数を簡単に求めることができます。

                    時間領域                                                       周波数領域

                              3Hz


                                                                 FFT
                                                        [sec]                                       [Hz ]
                                                                           3




                                                   1s


                    図 4-1                                                          図 4-2


                       ? Hz



                                                                FFT
                                                        [sec]                                         [Hz ]
                                                                                    50




                                                   1s


                    図 5-1                                                           図 5-2




                                          [sec ]




                                    1s




                                          [sec ]




                                    1s




                                                        FFT
                                               [sec]                   1                    [Hz ]
                                                                               3




                                         1s



                    図 6-1                                                      図 6-2




                                                           3-2
2-2 伝達関数とは
 2-1 で FFT の簡単な原理を学びましたが、ここではインパルスハンマーを使用した図 2 のような実験を行った場合を例にとり、伝達

関数の算出方法を説明します。伝達関数とは、入力と出力を関係付ける関数で、出力/入力で表されます。

伝達関数のイメージ:
                                       出力
                              伝達関数 =
                                       入力
                                          系
                              入力                                   出力
                                        (伝達関数)




                              ②
             A                ①


                                                           A                ②
                                                                        ①
                                            [sec]                                   [Hz ]

                 図 7-1 加振力の時間軸信号                       図 7-2 加振力のパワースペクトル



                          ②

                          ①



             B                                 [sec]           B                ②
                                                                        ①

                                                                                      [Hz ]




             図 8-1 計測した時間軸信号                             図 8-2 計測した信号のパワースペクトル


                      B
                      A


                                                          Hz 図 9   周波数応答関数

 インパルスハンマーによる加振で図 7-1 のような加振信号が FFT アナライザーの A ch に取り込まれたとします。①と②の違いは加

振力の大きさの違いを示しています。この信号を FFT すると図 7-2 のようなパワースペクトルになります。このパワースペクトルか

らインパルス信号は全周波数帯域のスペクトルを含んでいることがわかります。

 同様に加速度センサーから B ch に図 8-1 のような信号が取り込まれたとします。この信号のパワースペクトルは図 8-2 のようにな

ります。このパワースペクトルがピークになっている周波数が固有振動数を示しています。このことから、応答のパワースペクトルを

計測するだけで、伝達関数を求める必要がないのではないかと思われるかもしれません。しかし、応答信号のパワースペクトルは加振

力の大きさによりその大きさが決まり一定ではありません。その点、伝達関数は入力信号と応答信号の比で表されているので、一定値

になります。伝達関数は複素数で求まります。この複素数について以下に補足説明します




                                            3-3
補足説明)
         複素数
                                 虚部

                                 j                            (r, j )
                                               幅
                                           振
                                               θ
                                                                    実部
                                                          r
  複素数は図のように実部と虚部に分けて表現する場合と、振幅と位相により表現する場合があります。これら二
つの表現方法の関係は次のようになります。

(振幅) =      r2 + j2

                 j
(位相 θ ) =   atan 
                r

3. 伝達関数とモード解析
3-1 伝達関数
         ①     3 自由度系(理論)

              図 10 のように各点に質量がありそれをばねによって結合したものであるというふうにモデル化します。



                                               ①                ②            ③


                                      k1       m1    k2        m2       k3   m3




                               図 10    3 自由度系の力学モデル

         ②     3 自由度系(実験)

            点①を加振したときの点①~点③における周波数応答を計測します。

                                               x1                 x2              x3



                                           ①                     ②                ③


                                               f1


                                                    図 11




                                                    3-4
位相


                                                       ①            ②            ③



振幅



                                     ω1
                                           ω2     ω3

      図 12-1 点①加振の点①における周波数応答( x1 )             図 13-1 モード形(1 次モード, ω   = ω1 )


位相

                                                       ①                ②
                                                                                 ③

振幅




            ω1     ω2    ω3

     図 12-2 点①加振の点②における周波数応答( x2 )              図 13-2 モード形(2 次モード, ω   = ω2 )


位相

                                                       ①                             ③
                                                                        ②


振幅



            ω1      ω2   ω3

      図 12-3 点①加振の点③における周波数応答( x3 )             図 13-3 モード形(3 次モード, ω   = ω3 )


 図 11 のように点①を加振して点①・②・③の計 3 点の伝達関数を計測すると図 12-1~3 のようになります。振幅
が振動の大きさ位相の符号が振動の方向を表していると考えるとこの梁の振動の形は図 13-1~3 のようになること
がわかります。このように簡単なモデルならば伝達関数データのみでモード形を求めることも可能ですが、複雑な
モデルの場合は実際にどのような動きをしているかを求めることは難しく、時間もかかります。上記のような処理
をコンピュータによって計算させ、アニメーションさせるとモード解析となります。つぎに、モード解析ではどの
ような計算を行っているのかを説明します。




                                          3-5
4. モード解析
4-1 カーブフィット(曲線適合)



                                              y = ax + b
                                                                 振
                                                                 幅
                                                                 比




                                                                     ω1 ω 2      周波数


                     図 14                                            図 15 伝達関数


 図 14 のようにデータが分布していて、これが y = ax + b のように近似できるとして、最も確からしい a , b を求
める方法として、各データからの誤差の自乗の和がもっとも小さくなるように各係数を決定する最小自乗法があり
ます。
 伝達関数においてこのような最小自乗法を用いて近似計算を行うことをカーブフィットといいます。 15 の○の
                                              図
ようなデータ列を伝達関数として計測した場合、FFT アナライザーはこの点同士を線で結んでいるだけです。した
がって、そのままでは ω 2 が固有振動数ということになります。そこでカーブフィットを行えばより真の固有振動数
に近いと考えられる ω1 を求めることができます。また、この近似計算により固有減衰比や固有ベクトルなども同定
することができ、それらの計算結果を用いてモード形をアニメーションすることもできます。
                        n
                            φ φ       φ *φ * 
        H lm ( jω ) = ∑  rl rm + rl rm * 
                           
 伝達関数式:               r =1  jω − S r jω − S r 
                                               
              S r = −ω rζ r + jω r 1 − ζ r2

                ω r :固有振動数(Hz)
                ζ r :固有減衰比(%)
                φr :固有ベクトル
この式は l 点加振の m 点応答でモード数が n 個の場合で、*は共役複素数をあらわします。




                                                           3-6
・4-2 カーブフィットの種類


 カーブフィットの種類




                                          MDOF



                                   SDOF




                                                                      MMDOF




                                  図 16 カーブフィットの種類
図 16 のような 3 本の伝達関数に対してカーブフィットを行うことを考えます。この場合、大きく分けて次のような
方法があります。


① SDOF 法(Single Degree Of Freedom method , 1 自由度法)
 1 つの伝達関数の 1 つの共振峰に関して、
                      独立した1自由度系であるとみなしてカーブフィットを行う方法です。
ほかのモードの影響は考慮されていません。あまり精度を要求されない場合や、多自由度法の初期値を求めるため
の方法として用いられます。


② MDOF 法(Multiple Degrees Of Freedom method , 多自由度法)
異なる固有モード同士の影響を考慮しながらカーブフィットを行います。図 16 でいえば 1 つの伝達関数において
3 つの共振峰すべてを考慮して計算を行う方法です。


③MMDOF 法(Multiple Functions Multiple Degrees Of Freedom method , 多点参照多自由度法)
 MDOF 法では 1 つの伝達関数を用いてモード特性の同定を行います。この場合、計測データのずれによってそれ
ぞれの伝達関数から同定された特性にずれが生じます。それに対して、MMDOF 法では複数の伝達関数を同時に参
照してカーブフィットを行うことにより精度を向上させています。


また、上記の分類のほかにもカーブフィットの対象となるグラフが周波数領域で表現されたものであるか、時間領
域で表現されたものであるかによる分類もあります。




                                           3-7
・5 アニメーション
アニメーションとは、コンピュータのグラフィック機能を用いて、対象となる物がどのような形で振動しているか
を視覚的に表現するものです。通常アニメーションといっているのはモードアニメーションのことですが、他にも
いろいろなアニメーションがあります。


①    モードアニメーション
    カーブフィットの対象となった供試体が、それぞれの固有振動数においてどのような形で振動しているかを表現
します。カーブフィットで同定された固有ベクトルをもとにアニメーションします。
②    周波数応答アニメーション
    モードアニメーションでは、各固有振動数における振動の様子しか表現できませんが、周波数応答アニメーショ
ンでは固有振動数以外の任意の周波数での振動の様子が表現できます。また、単位入力あたりの変位量も算出でき
ます。
③    時系列応答アニメーション(過渡応答アニメーション)
    モードアニメーションなどは定常状態(一定の運動状態)における振動の様子を表現します。時系列アニメーション
ではインパルス応答などの過渡状態(時間の経過とともに振動の様子が変化する状態)を表現します。たとえば、時間
の経過とともに振動が収まっていく様子をアニメーションすることが可能です。また、ゴルフクラブにボールがあ
たった場合などのアニメーションが可能となります。
④    周波数スイープアニメーション
    このアニメーションは加振周波数をスイープした場合のアニメーションを行います。
6 シミュレーション
    モード解析により同定したモード特性を用いて、いろいろなシミュレーションを行うことができます。
①    部分構造変更シミュレーション
    モード解析の結果から質量・ばね・減衰などの構造を変更した場合の固有振動数や固有ベクトルを予測し、アニ
メーションを行うことができます。
②    周波数感度解析・レベル感度解析
    現状の固有振動数を下げたり、レベルを下げたりするためにはどのように質量やばねなどの構造を変更すればよ
いかを求めます。
③    最適設計シミュレーション
    たとえば、固有振動数を 10Hz 下げるためにはどのくらい質量を付加すれば、最適に構造変更が可能かを求めて
くれるのが最適設計シミュレーションです。
④    部分構造合成法
    それぞれのコンポーネントに対して実験モード解析を行い、計算上でそれらのコンポーネントを組み合わせた場
合の周波数応答を計算する手法です。
⑤周波数応答シミュレーション
    実験では 1 点加振の周波数応答(伝達関数)を計測しましたがこのシミュレーションを使用することにより他の点
を加振した場合や複数の点を加振した場合の任意の点の周波数応答を算出することができます。


⑥    過渡応答シミュレーション
    ⑤の周波数応答シミュレーションでは周波数領域で計算して表示されましたが、このシミュレーションでは時間
領域で計算して表示します。




                            3-8
・シミュレーションの展開
                シミュレーションの
                シミュレーション


       周波数応答            スイープアニメーション
外力応答
       過渡応答         時系列応答アニメーション




               固有振動数感度

感度解析           固有減衰比感度

                応答レベル




               部分構造変更
構造変更
               部分構造合成



最適設計          固有振動数最適化




                    3-9
7 モード解析と FEM(有限要素法)

7-1 解析手順
                 モード解析
                 モード解析                       FEM


              <座標定義>


             <自由度定義>              <数値モデル作成(質量行列および剛性行列を計算)>


             <伝達関数収録>


            <カーブフィット>                     <固有値計算>


    <アニメーション・シミュレーション>               <アニメーション・シミュレーション>


 有限要素法では理論的に減衰が決まらないので過渡応答などの外力応答シミュレーションが実行できません。一
方モード解析はもともと数値モデルを持っていないので板厚変更などのシミュレーションができません。
 また、モデルのメッシュの数(座標点数)は FEM では非常に大きな意味を持ち、対象となる振動を表現するのに適
切な点数を取らないと満足の行く結果は得られません。一方、モード解析では実験データをもとに解析を行うので、
固有振動数や固有減衰比の算出には座標点数は影響しません。
 最近では、2 つのデータをリンクすることによりお互いのデータの欠点を補う手法も多く開発されています。
7-2 モード解析と FEM の比較
モード解析と FEM を比較した結果を下記の表に示します。
                           モード解析                       FEM

       数値モデル                不必要                        必要

           供試体               必要                       不必要

      試験(ノウハウ)              不必要                        必要

       現実との対応                 有                          無

       減衰の評価                  可                        不可


           自由度              x, y,z            x , y , z , θx , θ y , θz

                         固有振動数・固有減衰比
           座標点数                                 ある程度細かく
                         の解析精度に無関係

           設計変更             m,c,k                  板厚・材質

           計算時間               小                          大




                            3-10
8 データ収録

                                                         FFT アナライザ




                                                                 A ch B ch


                   加速度センサー


                                             インパルスハンマー

                             供試体




                                   図 17 伝達関数測定概略図


 図 17 のように供試体をインパルスハンマーで加振して、加振信号を FFT アナライザーの A ch に入力します。
供試体の応答は加速度センサーで収録し、その応答信号を FFT アナライザーの B ch に入力します。FFT アナライ
ザーでは、入力された時間軸信号をフーリエ変換で周波数関数に変換し、入力から応答までの伝達関数(B ch / A ch)
算出します。算出された伝達関数を GB-IB インターフェイスなどを使用して、パソコンなどに転送し、モード解析
を行います。


8-1 FFT アナライザー


 FFT アナライザーは測定した時間領域のデータを周波数領域のデータに高速フーリエ変換します。図 18 のよう
に時間軸データを表示したり、フーリエ変換したあとの周波数応答を表示することにより測定データがどのような
周波数の正弦波から構成されているかを推定します。

                             3Hz




                                                   3                         [Hz ]



                                        1s


                                         図 18
 モード解析に必要な伝達関数を測定するには、FFT アナライザーの機能について以下の知識が必要になります。
  ① 測定周波数範囲の設定(FREQ)
  ② 入力感度の設定(RANGE)
  ③ トリガーの設定(TRIGGER)
  ④ ウィンドーの設定(WINDOW)
  ⑤ 平均化(AVERAGE)




                                       3-11
8-1-1 測定周波数範囲の設定


 計測を行いたい供試体の問題となっている周波数を設定します。たとえば、稼動状態において問題になっている
周波数が 2kHz に存在している場合は、解析周波数を 5kHz に設定します。それでは、計測を行いたい周波数が 5Hz
の場合、解析周波数を 10Hz に設定すればいいでしょうか?たぶん、きれいなデータは測定でません。低周波数の
測定を行う場合、解析周波数の設定を着目している周波数より高めに設定します。FFT アナライザーは、解析周波
数により設定された測定時間軸範囲においてたとえば 1024 点でサンプリングを行い、そのデータに関してフーリエ
変換を行います。解析周波数を低くすれば測定時間は長くなり、解析周波数を高くすれば測定時間は短くなります。
サンプリング点数が 1024 点の場合は以下のようになります。
                                 解析周波数                                測定時間(サンプリング時間)
                                  40 [kHz]                                           10 [msec]
                                  10 [kHz]                                           40 [msec]
                                       5 [kHz]                                       80 [msec]
                                       1 [kHz]                                      400 [msec]
                                   500 [Hz]                                         800 [msec]
                                   100 [Hz]                                            4 [sec]
                                       50 [Hz]                                         8 [sec]
                                       10 [Hz]                                        40 [sec]
この表より、解析周波数を 50Hz に設定した場合、8 秒間で 1024 点のデータを測定しフーリエ変換を行います。
 ここで、図 19 のように測定時間の前半で振動が収束してしまっている場合、1024 点中 100 点ぐらいにしか実際
にはデータが存在していなく、これをフーリエ変換しても精度のよい解析はできません。このような場合は解析周
波数を高くして測定時間を短くし、測定時間いっぱいにデータが測定できるようにします。




                                                                              サ ンプリング点 数




                     100   200   300    400   500   600   700   800   900   1000




                                                    図 19
8-1-2 入力感度の設定
 入力感度の設定は、時間軸データを表示して縦軸のフルスケールの 50%~80%にデータの最大振幅が測定されるよ
うに設定します。



                   入力感度:小




                   入力感度:適正
                                              図 20 入力感度




                                                3-12
8-1-3 トリガーの設定

                                スロープ(+)
                     プレトリガー

                                    スロープ(-)
                                              トリガーレベル




                         プレトリガー有りの場合の測定範囲

                                 プレトリガーなしの場合の測定範囲




                              図 21 トリガー設定の概略


    トリガーの設定とは、信号の測定を開始する点を設定することです。通常、トリガーを設定しないと(フリートリ
ガー)時間波形は常に取り込まれて表示上では波形は動いて見えます。ここでトリガーの設定を行うと、ある点から
時間波形を測定し、サンプリング時間だけデータを収録するようにできます。トリガーの設定にはトリガーレベル・
トリガーポジション・トリガースロープの 3 つの設定があります。
①    トリガーレベル
    トリガーレベルとは、データ収録を開始する点の振幅の大きさです。時間軸データが設定した振幅を通過したと
きにデータ収録を開始します。


② トリガーポジション
    トリガーポジションは、トリガーレベルにより設定された測定開始点の少し前からデータ収録を開始する設定を
行います。FFT アナライザーはメモリー上に少し前のデータを保存することができるために上記のことが可能とな
ります。


③ トリガースロープ
    トリガーレベルを横切るときの信号の傾きが正(+)か負(-)かを設定します。




                                    3-13
8-1-4 ウィンドーの設定


 FFT では、有限個のデータを測定していますが、分析する際には測定した波形データが連続するようなデータで
あるとしています。したがって、図 22-(a)のように測定範囲に振動波形の周期が一致するような場合は不連続点は
なく問題ありません。しかし、(b)のように測定開始点と終点が一致しない場合は波形と波形のつなぎ目で不連続な
点が存在し周波数分析の結果に悪影響を及ぼします。この現象はリーケージエラーと呼ばれています。このリーケ
ージエラーを少なくする目的で測定開始点と終点をなだらかに減衰させて周期性を持たせるハニング・ウィンドー
が使用されています。このハニング・ウィンドーは実際の実験では加振器を使用して正弦波掃引などの信号で加振
実験を行うときなどに使用されます。このほかに、インパルスハンマーなどの実験に使用されるフォース・ウィン
ドーとエクスポーネンシャル・ウィンドーがあります。フォース・ウィンドーは、図 23 のようにある定められた点
の範囲にウィンドーを設定するもので、加振波形などにこのウィンドーを使用します。エクスポーネンシャル・ウ
ィンドーは図 24 のように信号を指数関数的に減衰させる効果をもっているので時定数を任意に設定することによ
りその効果を調節することができます。

                       回分の
             取 り 込 む 1 回分 の データ   FFTの 演算上で認識する
                                  FFTの 演算上 で 認識 する 波形
                                                する波形    周波数分析結果

                    (a)




                                             不連続点
                    (b)




                    (c)




                                  図 22 ハニングウィンドー




          図 23 フォース・ウィンドー                           図 24 エクスポーネンシャル・ウィンドー




                                         3-14
8-1-5 平均化


 測定データにはノイズが含まれています。このノイズを取り除いて正しい伝達関数を測定するために、平均化処
理を行います。


8-1-6 コヒーレンス
 収録されたデータの信頼性を評価するための基準として、コヒーレンスがあります。コヒーレンスは入力と応答
の関係の強さを表します。入力と応答が互いに無関係ならば 0、応答が入力だけによって一義的に決定されるなら
ば 1 になります。すなわち、1 に近いほど入力と応答の相関性が良いと判断されます。コヒーレンスが小さくなる
のは次のような場合です。
① 系が線形でない場合
② 応答の測定中に系以外から外部雑音が混入する場合
③ 対象とする入力以外にも他の入力があり、出力がこれら両方の影響を受ける場合
④ 系のインパルス応答が観測時間より長い場合
⑤ 応答の大きさが計測器のダイナミックレンジを越える場合




8-2 実験機器


 加振実験の方法はいろいろあります。加振する機器としてはインパルスハンマー、加振機器などがあります。加
振器を用いる場合は加振力を計測するインピーダンスヘッドが必要になります。応答を計測する機器としては、加
速度センサー・変位センサーがあります。計測機器を取り付けることができない供試体に対しては非接触式の光セ
ンサー・レーザー振動計などを使用します。以下に加振器を使用した場合のシステム構成図を示します。




                                                  モード解析システム




                                                  FFTアナライザー
                        加速度センサー


                                        チャージアンプ
                        供試体
                                        チャージアンプ
           インピーダンスヘッド

                        加振器             増幅器        信号発生器




                          図 25 加振実験システム概略図




                                   3-15

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Mode

  • 2. モード解析について 1.振動における理論解析と実験解析 1-1. 1 自由度系 ① 理論解析 x k m 摩擦なし 図1 1 自由度系として近似される系の理論解析の場合、図 1 のような力学モデルを仮定し、下記のような運動方程式を解くことにより固 有振動数を求めます。摩擦などの減衰は無視することにします。 自由振動における弾性力と慣性力のつりあいの式を考えて、 m&= − kx , m :質量 , k :ばね定数 & x これを式変形して、 k &+ & x x=0 m ここで固有角振動数を ω とすると、上記の方程式は次のようにあらわすことができます。 k &+ ω 2 x = 0 , ω = & x (rad sec) m さらに固有振動数は ω f = (Hz ) = 1 k (Hz ) 2π 2π m とあらわされます。 ② 実験解析 質量や剛性がわかっていない場合、図 2 のような加振実験を行います。FFT アナライザーで収録したデータをもとに図 3 のような 伝達関数を計算し、固有振動数を求めます。 FFT アナライザ 注)この伝達関数の形状は、減衰を含 んだ場合を示しています。減衰を含ま 振幅比 x ない場合、ピークが無限大になります。 ? & & x A ch B ch ? F 周波数 Hz この周波数は理論での固有振動数fと同等です。 図 2 実験解析 図 3 伝達関数 有限要素法(FEM)の基本になっているのがはじめに示した 1 自由度系の理論解析であり、実験モード解析の基本になっているのが上 にあるような 1 自由度系の実験解析です。実際の解析では、対象となる系が多自由度系の場合を想定して行われます。 実験モード解析では,FFT アナライザーなどの計測機器を使用して実験を行う必要があり、FFT アナライザーなどの原理を知る必 要があります。つぎに FFT アナライザーについて説明します。 3-1
  • 3. 2. FFT (高速フーリエ変換) 2-1 FFT とは FFT とは計測された時間軸信号にどんな周波数の正弦波が含まれているかを計算する方法です。 たとえば、図 4-1 のような時間軸信号が計測された場合であれば、目で見るだけで固有振動数がわかります。しかし、図 5-1 のよう な振動数の高い信号や図 6-1 のような複数の振動がたしあわされた時間軸信号が計測された場合、目で見て固有振動数を求めるのは難 しくなります。FFT を行い時間領域の信号から周波数領域の信号に変換すると、図 5-2 や図 6-2 のように計測された信号に含まれる振 動の周波数を簡単に求めることができます。 時間領域 周波数領域 3Hz FFT [sec] [Hz ] 3 1s 図 4-1 図 4-2 ? Hz FFT [sec] [Hz ] 50 1s 図 5-1 図 5-2 [sec ] 1s [sec ] 1s FFT [sec] 1 [Hz ] 3 1s 図 6-1 図 6-2 3-2
  • 4. 2-2 伝達関数とは 2-1 で FFT の簡単な原理を学びましたが、ここではインパルスハンマーを使用した図 2 のような実験を行った場合を例にとり、伝達 関数の算出方法を説明します。伝達関数とは、入力と出力を関係付ける関数で、出力/入力で表されます。 伝達関数のイメージ: 出力 伝達関数 = 入力 系 入力 出力 (伝達関数) ② A ① A ② ① [sec] [Hz ] 図 7-1 加振力の時間軸信号 図 7-2 加振力のパワースペクトル ② ① B [sec] B ② ① [Hz ] 図 8-1 計測した時間軸信号 図 8-2 計測した信号のパワースペクトル B A Hz 図 9 周波数応答関数 インパルスハンマーによる加振で図 7-1 のような加振信号が FFT アナライザーの A ch に取り込まれたとします。①と②の違いは加 振力の大きさの違いを示しています。この信号を FFT すると図 7-2 のようなパワースペクトルになります。このパワースペクトルか らインパルス信号は全周波数帯域のスペクトルを含んでいることがわかります。 同様に加速度センサーから B ch に図 8-1 のような信号が取り込まれたとします。この信号のパワースペクトルは図 8-2 のようにな ります。このパワースペクトルがピークになっている周波数が固有振動数を示しています。このことから、応答のパワースペクトルを 計測するだけで、伝達関数を求める必要がないのではないかと思われるかもしれません。しかし、応答信号のパワースペクトルは加振 力の大きさによりその大きさが決まり一定ではありません。その点、伝達関数は入力信号と応答信号の比で表されているので、一定値 になります。伝達関数は複素数で求まります。この複素数について以下に補足説明します 3-3
  • 5. 補足説明) 複素数 虚部 j (r, j ) 幅 振 θ 実部 r 複素数は図のように実部と虚部に分けて表現する場合と、振幅と位相により表現する場合があります。これら二 つの表現方法の関係は次のようになります。 (振幅) = r2 + j2  j (位相 θ ) = atan  r 3. 伝達関数とモード解析 3-1 伝達関数 ① 3 自由度系(理論) 図 10 のように各点に質量がありそれをばねによって結合したものであるというふうにモデル化します。 ① ② ③ k1 m1 k2 m2 k3 m3 図 10 3 自由度系の力学モデル ② 3 自由度系(実験) 点①を加振したときの点①~点③における周波数応答を計測します。 x1 x2 x3 ① ② ③ f1 図 11 3-4
  • 6. 位相 ① ② ③ 振幅 ω1 ω2 ω3 図 12-1 点①加振の点①における周波数応答( x1 ) 図 13-1 モード形(1 次モード, ω = ω1 ) 位相 ① ② ③ 振幅 ω1 ω2 ω3 図 12-2 点①加振の点②における周波数応答( x2 ) 図 13-2 モード形(2 次モード, ω = ω2 ) 位相 ① ③ ② 振幅 ω1 ω2 ω3 図 12-3 点①加振の点③における周波数応答( x3 ) 図 13-3 モード形(3 次モード, ω = ω3 ) 図 11 のように点①を加振して点①・②・③の計 3 点の伝達関数を計測すると図 12-1~3 のようになります。振幅 が振動の大きさ位相の符号が振動の方向を表していると考えるとこの梁の振動の形は図 13-1~3 のようになること がわかります。このように簡単なモデルならば伝達関数データのみでモード形を求めることも可能ですが、複雑な モデルの場合は実際にどのような動きをしているかを求めることは難しく、時間もかかります。上記のような処理 をコンピュータによって計算させ、アニメーションさせるとモード解析となります。つぎに、モード解析ではどの ような計算を行っているのかを説明します。 3-5
  • 7. 4. モード解析 4-1 カーブフィット(曲線適合) y = ax + b 振 幅 比 ω1 ω 2 周波数 図 14 図 15 伝達関数 図 14 のようにデータが分布していて、これが y = ax + b のように近似できるとして、最も確からしい a , b を求 める方法として、各データからの誤差の自乗の和がもっとも小さくなるように各係数を決定する最小自乗法があり ます。 伝達関数においてこのような最小自乗法を用いて近似計算を行うことをカーブフィットといいます。 15 の○の 図 ようなデータ列を伝達関数として計測した場合、FFT アナライザーはこの点同士を線で結んでいるだけです。した がって、そのままでは ω 2 が固有振動数ということになります。そこでカーブフィットを行えばより真の固有振動数 に近いと考えられる ω1 を求めることができます。また、この近似計算により固有減衰比や固有ベクトルなども同定 することができ、それらの計算結果を用いてモード形をアニメーションすることもできます。 n  φ φ φ *φ *  H lm ( jω ) = ∑  rl rm + rl rm *   伝達関数式: r =1  jω − S r jω − S r   S r = −ω rζ r + jω r 1 − ζ r2 ω r :固有振動数(Hz) ζ r :固有減衰比(%) φr :固有ベクトル この式は l 点加振の m 点応答でモード数が n 個の場合で、*は共役複素数をあらわします。 3-6
  • 8. ・4-2 カーブフィットの種類 カーブフィットの種類 MDOF SDOF MMDOF 図 16 カーブフィットの種類 図 16 のような 3 本の伝達関数に対してカーブフィットを行うことを考えます。この場合、大きく分けて次のような 方法があります。 ① SDOF 法(Single Degree Of Freedom method , 1 自由度法) 1 つの伝達関数の 1 つの共振峰に関して、 独立した1自由度系であるとみなしてカーブフィットを行う方法です。 ほかのモードの影響は考慮されていません。あまり精度を要求されない場合や、多自由度法の初期値を求めるため の方法として用いられます。 ② MDOF 法(Multiple Degrees Of Freedom method , 多自由度法) 異なる固有モード同士の影響を考慮しながらカーブフィットを行います。図 16 でいえば 1 つの伝達関数において 3 つの共振峰すべてを考慮して計算を行う方法です。 ③MMDOF 法(Multiple Functions Multiple Degrees Of Freedom method , 多点参照多自由度法) MDOF 法では 1 つの伝達関数を用いてモード特性の同定を行います。この場合、計測データのずれによってそれ ぞれの伝達関数から同定された特性にずれが生じます。それに対して、MMDOF 法では複数の伝達関数を同時に参 照してカーブフィットを行うことにより精度を向上させています。 また、上記の分類のほかにもカーブフィットの対象となるグラフが周波数領域で表現されたものであるか、時間領 域で表現されたものであるかによる分類もあります。 3-7
  • 9. ・5 アニメーション アニメーションとは、コンピュータのグラフィック機能を用いて、対象となる物がどのような形で振動しているか を視覚的に表現するものです。通常アニメーションといっているのはモードアニメーションのことですが、他にも いろいろなアニメーションがあります。 ① モードアニメーション カーブフィットの対象となった供試体が、それぞれの固有振動数においてどのような形で振動しているかを表現 します。カーブフィットで同定された固有ベクトルをもとにアニメーションします。 ② 周波数応答アニメーション モードアニメーションでは、各固有振動数における振動の様子しか表現できませんが、周波数応答アニメーショ ンでは固有振動数以外の任意の周波数での振動の様子が表現できます。また、単位入力あたりの変位量も算出でき ます。 ③ 時系列応答アニメーション(過渡応答アニメーション) モードアニメーションなどは定常状態(一定の運動状態)における振動の様子を表現します。時系列アニメーション ではインパルス応答などの過渡状態(時間の経過とともに振動の様子が変化する状態)を表現します。たとえば、時間 の経過とともに振動が収まっていく様子をアニメーションすることが可能です。また、ゴルフクラブにボールがあ たった場合などのアニメーションが可能となります。 ④ 周波数スイープアニメーション このアニメーションは加振周波数をスイープした場合のアニメーションを行います。 6 シミュレーション モード解析により同定したモード特性を用いて、いろいろなシミュレーションを行うことができます。 ① 部分構造変更シミュレーション モード解析の結果から質量・ばね・減衰などの構造を変更した場合の固有振動数や固有ベクトルを予測し、アニ メーションを行うことができます。 ② 周波数感度解析・レベル感度解析 現状の固有振動数を下げたり、レベルを下げたりするためにはどのように質量やばねなどの構造を変更すればよ いかを求めます。 ③ 最適設計シミュレーション たとえば、固有振動数を 10Hz 下げるためにはどのくらい質量を付加すれば、最適に構造変更が可能かを求めて くれるのが最適設計シミュレーションです。 ④ 部分構造合成法 それぞれのコンポーネントに対して実験モード解析を行い、計算上でそれらのコンポーネントを組み合わせた場 合の周波数応答を計算する手法です。 ⑤周波数応答シミュレーション 実験では 1 点加振の周波数応答(伝達関数)を計測しましたがこのシミュレーションを使用することにより他の点 を加振した場合や複数の点を加振した場合の任意の点の周波数応答を算出することができます。 ⑥ 過渡応答シミュレーション ⑤の周波数応答シミュレーションでは周波数領域で計算して表示されましたが、このシミュレーションでは時間 領域で計算して表示します。 3-8
  • 10. ・シミュレーションの展開 シミュレーションの シミュレーション 周波数応答 スイープアニメーション 外力応答 過渡応答 時系列応答アニメーション 固有振動数感度 感度解析 固有減衰比感度 応答レベル 部分構造変更 構造変更 部分構造合成 最適設計 固有振動数最適化 3-9
  • 11. 7 モード解析と FEM(有限要素法) 7-1 解析手順 モード解析 モード解析 FEM <座標定義> <自由度定義> <数値モデル作成(質量行列および剛性行列を計算)> <伝達関数収録> <カーブフィット> <固有値計算> <アニメーション・シミュレーション> <アニメーション・シミュレーション> 有限要素法では理論的に減衰が決まらないので過渡応答などの外力応答シミュレーションが実行できません。一 方モード解析はもともと数値モデルを持っていないので板厚変更などのシミュレーションができません。 また、モデルのメッシュの数(座標点数)は FEM では非常に大きな意味を持ち、対象となる振動を表現するのに適 切な点数を取らないと満足の行く結果は得られません。一方、モード解析では実験データをもとに解析を行うので、 固有振動数や固有減衰比の算出には座標点数は影響しません。 最近では、2 つのデータをリンクすることによりお互いのデータの欠点を補う手法も多く開発されています。 7-2 モード解析と FEM の比較 モード解析と FEM を比較した結果を下記の表に示します。 モード解析 FEM 数値モデル 不必要 必要 供試体 必要 不必要 試験(ノウハウ) 不必要 必要 現実との対応 有 無 減衰の評価 可 不可 自由度 x, y,z x , y , z , θx , θ y , θz 固有振動数・固有減衰比 座標点数 ある程度細かく の解析精度に無関係 設計変更 m,c,k 板厚・材質 計算時間 小 大 3-10
  • 12. 8 データ収録 FFT アナライザ A ch B ch 加速度センサー インパルスハンマー 供試体 図 17 伝達関数測定概略図 図 17 のように供試体をインパルスハンマーで加振して、加振信号を FFT アナライザーの A ch に入力します。 供試体の応答は加速度センサーで収録し、その応答信号を FFT アナライザーの B ch に入力します。FFT アナライ ザーでは、入力された時間軸信号をフーリエ変換で周波数関数に変換し、入力から応答までの伝達関数(B ch / A ch) 算出します。算出された伝達関数を GB-IB インターフェイスなどを使用して、パソコンなどに転送し、モード解析 を行います。 8-1 FFT アナライザー FFT アナライザーは測定した時間領域のデータを周波数領域のデータに高速フーリエ変換します。図 18 のよう に時間軸データを表示したり、フーリエ変換したあとの周波数応答を表示することにより測定データがどのような 周波数の正弦波から構成されているかを推定します。 3Hz 3 [Hz ] 1s 図 18 モード解析に必要な伝達関数を測定するには、FFT アナライザーの機能について以下の知識が必要になります。 ① 測定周波数範囲の設定(FREQ) ② 入力感度の設定(RANGE) ③ トリガーの設定(TRIGGER) ④ ウィンドーの設定(WINDOW) ⑤ 平均化(AVERAGE) 3-11
  • 13. 8-1-1 測定周波数範囲の設定 計測を行いたい供試体の問題となっている周波数を設定します。たとえば、稼動状態において問題になっている 周波数が 2kHz に存在している場合は、解析周波数を 5kHz に設定します。それでは、計測を行いたい周波数が 5Hz の場合、解析周波数を 10Hz に設定すればいいでしょうか?たぶん、きれいなデータは測定でません。低周波数の 測定を行う場合、解析周波数の設定を着目している周波数より高めに設定します。FFT アナライザーは、解析周波 数により設定された測定時間軸範囲においてたとえば 1024 点でサンプリングを行い、そのデータに関してフーリエ 変換を行います。解析周波数を低くすれば測定時間は長くなり、解析周波数を高くすれば測定時間は短くなります。 サンプリング点数が 1024 点の場合は以下のようになります。 解析周波数 測定時間(サンプリング時間) 40 [kHz] 10 [msec] 10 [kHz] 40 [msec] 5 [kHz] 80 [msec] 1 [kHz] 400 [msec] 500 [Hz] 800 [msec] 100 [Hz] 4 [sec] 50 [Hz] 8 [sec] 10 [Hz] 40 [sec] この表より、解析周波数を 50Hz に設定した場合、8 秒間で 1024 点のデータを測定しフーリエ変換を行います。 ここで、図 19 のように測定時間の前半で振動が収束してしまっている場合、1024 点中 100 点ぐらいにしか実際 にはデータが存在していなく、これをフーリエ変換しても精度のよい解析はできません。このような場合は解析周 波数を高くして測定時間を短くし、測定時間いっぱいにデータが測定できるようにします。 サ ンプリング点 数 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000 図 19 8-1-2 入力感度の設定 入力感度の設定は、時間軸データを表示して縦軸のフルスケールの 50%~80%にデータの最大振幅が測定されるよ うに設定します。 入力感度:小 入力感度:適正 図 20 入力感度 3-12
  • 14. 8-1-3 トリガーの設定 スロープ(+) プレトリガー スロープ(-) トリガーレベル プレトリガー有りの場合の測定範囲 プレトリガーなしの場合の測定範囲 図 21 トリガー設定の概略 トリガーの設定とは、信号の測定を開始する点を設定することです。通常、トリガーを設定しないと(フリートリ ガー)時間波形は常に取り込まれて表示上では波形は動いて見えます。ここでトリガーの設定を行うと、ある点から 時間波形を測定し、サンプリング時間だけデータを収録するようにできます。トリガーの設定にはトリガーレベル・ トリガーポジション・トリガースロープの 3 つの設定があります。 ① トリガーレベル トリガーレベルとは、データ収録を開始する点の振幅の大きさです。時間軸データが設定した振幅を通過したと きにデータ収録を開始します。 ② トリガーポジション トリガーポジションは、トリガーレベルにより設定された測定開始点の少し前からデータ収録を開始する設定を 行います。FFT アナライザーはメモリー上に少し前のデータを保存することができるために上記のことが可能とな ります。 ③ トリガースロープ トリガーレベルを横切るときの信号の傾きが正(+)か負(-)かを設定します。 3-13
  • 15. 8-1-4 ウィンドーの設定 FFT では、有限個のデータを測定していますが、分析する際には測定した波形データが連続するようなデータで あるとしています。したがって、図 22-(a)のように測定範囲に振動波形の周期が一致するような場合は不連続点は なく問題ありません。しかし、(b)のように測定開始点と終点が一致しない場合は波形と波形のつなぎ目で不連続な 点が存在し周波数分析の結果に悪影響を及ぼします。この現象はリーケージエラーと呼ばれています。このリーケ ージエラーを少なくする目的で測定開始点と終点をなだらかに減衰させて周期性を持たせるハニング・ウィンドー が使用されています。このハニング・ウィンドーは実際の実験では加振器を使用して正弦波掃引などの信号で加振 実験を行うときなどに使用されます。このほかに、インパルスハンマーなどの実験に使用されるフォース・ウィン ドーとエクスポーネンシャル・ウィンドーがあります。フォース・ウィンドーは、図 23 のようにある定められた点 の範囲にウィンドーを設定するもので、加振波形などにこのウィンドーを使用します。エクスポーネンシャル・ウ ィンドーは図 24 のように信号を指数関数的に減衰させる効果をもっているので時定数を任意に設定することによ りその効果を調節することができます。 回分の 取 り 込 む 1 回分 の データ FFTの 演算上で認識する FFTの 演算上 で 認識 する 波形 する波形 周波数分析結果 (a) 不連続点 (b) (c) 図 22 ハニングウィンドー 図 23 フォース・ウィンドー 図 24 エクスポーネンシャル・ウィンドー 3-14
  • 16. 8-1-5 平均化 測定データにはノイズが含まれています。このノイズを取り除いて正しい伝達関数を測定するために、平均化処 理を行います。 8-1-6 コヒーレンス 収録されたデータの信頼性を評価するための基準として、コヒーレンスがあります。コヒーレンスは入力と応答 の関係の強さを表します。入力と応答が互いに無関係ならば 0、応答が入力だけによって一義的に決定されるなら ば 1 になります。すなわち、1 に近いほど入力と応答の相関性が良いと判断されます。コヒーレンスが小さくなる のは次のような場合です。 ① 系が線形でない場合 ② 応答の測定中に系以外から外部雑音が混入する場合 ③ 対象とする入力以外にも他の入力があり、出力がこれら両方の影響を受ける場合 ④ 系のインパルス応答が観測時間より長い場合 ⑤ 応答の大きさが計測器のダイナミックレンジを越える場合 8-2 実験機器 加振実験の方法はいろいろあります。加振する機器としてはインパルスハンマー、加振機器などがあります。加 振器を用いる場合は加振力を計測するインピーダンスヘッドが必要になります。応答を計測する機器としては、加 速度センサー・変位センサーがあります。計測機器を取り付けることができない供試体に対しては非接触式の光セ ンサー・レーザー振動計などを使用します。以下に加振器を使用した場合のシステム構成図を示します。 モード解析システム FFTアナライザー 加速度センサー チャージアンプ 供試体 チャージアンプ インピーダンスヘッド 加振器 増幅器 信号発生器 図 25 加振実験システム概略図 3-15